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特開2024-143129作業支援装置、作業支援システム、作業支援方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143129
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】作業支援装置、作業支援システム、作業支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0633 20230101AFI20241003BHJP
【FI】
G06Q10/0633
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055643
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】501335841
【氏名又は名称】株式会社エム・ソフト
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100166833
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 直子
(72)【発明者】
【氏名】代永 英明
(72)【発明者】
【氏名】合田 秀行
(72)【発明者】
【氏名】塙 人
(72)【発明者】
【氏名】浅野 隆弥
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 結女
(72)【発明者】
【氏名】花本 しのぶ
(72)【発明者】
【氏名】宗宮 優一
(72)【発明者】
【氏名】田島 裕也
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA07
5L049AA07
(57)【要約】
【課題】 作業対象の保守等の作業に際し、準備段階においても容易に作業手順(の項目)等を設定することが可能であり、作業の実行時においても効率よく且つ、漏れや抜けのない確実な作業を行うことが可能な、利便性の高い作業支援装置、作業支援システム、作業支援方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】 作業支援装置10は、入力手段102と、表示手段103と、現実空間における作業対象と該作業対象の位置情報を紐づけた作業対象マスタWMを作成する作業対象マスタ作成手段110と、作業手順情報を少なくとも一つ含むシナリオSを作成するシナリオ作成手段111と、シナリオSを記憶可能な記憶手段104と、外部に対してシナリオSを送受信可能な通信手段105と、を有し、シナリオ作成手段111は、作業対象マスタWMが保持する情報を参照し、作業の手順と、作業対象マスタが保持する情報とを紐付けた作業手順情報を作成可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実空間における作業者による所定の作業を支援する作業支援装置であって、
入力手段と、
表示手段と、
現実空間における作業対象の情報と該作業対象の位置情報とを紐づけた作業対象マスタを作成する作業対象マスタ作成手段と、
前記作業の手順に関する情報群(以下、「作業手順情報」)を少なくとも一つ含むシナリオを作成するシナリオ作成手段と、
前記シナリオを記憶可能な記憶手段と、
外部に対して前記シナリオを送受信可能な通信手段と、を有し、
前記シナリオ作成手段は、前記作業対象マスタが保持する情報を参照し、前記作業の手順と、前記作業対象マスタが保持する情報とを紐付けた前記作業手順情報を作成可能である、
ことを特徴とする作業支援装置。
【請求項2】
前記作業手順情報は、少なくとも一つの作業内容と、該作業の実行状態を示す作業情報と、該作業情報の正当性を判定するための判定情報により構成され、
前記シナリオ作成手段は、前記作業手順情報の内容に応じて前記判定情報を設定可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項3】
前記作業対象マスタ作成手段は、予め前記現実空間において取得した前記作業対象を含む周辺環境の3次元座標データに基づき、該作業対象と前記位置情報を紐づける、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項4】
前記作業対象マスタ作成手段は、予め前記現実空間において取得した前記作業対象を含む周辺環境の3次元形状データに基づき該作業対象と前記位置情報を紐づける、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項5】
前記シナリオを仮想的に実行するシミュレーション手段を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項6】
前記作業者により入力される前記作業情報に応じて、前記シナリオを修正するシナリオ修正手段を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の作業支援装置。
【請求項7】
前記判定情報に対応するコードを生成し、出力可能な判定コード生成手段を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の作業支援装置。
【請求項8】
請求項2に記載の作業支援装置と、
前記作業者が携帯可能な作業端末装置と、
通信回線と、を有する作業支援システムであって、
前記作業端末装置は、表示手段と、作業情報記録手段と、端末側記憶手段と、端末側通信手段と、を有し、
前記シナリオは、前記通信回線を介して前記作業支援装置と前記作業端末装置の間で送受信可能であり、
前記表示手段は前記作業手順情報を表示可能であり、
前記作業情報記録手段は、前記作業者によって入力される情報に基づき前記作業手順情報のそれぞれに対応する前記作業情報を更新する手段であり、
前記端末側記憶手段は、前記作業情報が更新された前記シナリオを記憶可能である、
ことを特徴とする作業支援システム。
【請求項9】
前記作業端末装置は、
作業対象領域の前記現実空間の映像を取得可能な撮像手段と、
前記シナリオに応じた仮想空間映像を生成するナビゲーション手段を有し、
前記表示手段は、前記現実空間の映像と前記仮想空間映像を重畳表示することで前記作業者に前記作業の手順を案内する、
ことを特徴とする請求項8に記載の作業支援システム。
【請求項10】
前記仮想空間映像は、拡張現実映像である、
ことを特徴とする請求項9に記載の作業支援システム。
【請求項11】
前記作業情報記録手段は、一の前記シナリオ内の少なくとも一つの前記作業手順情報に対して一の前記作業者に前記作業情報の更新の実行権を与えるよう排他制御する、
ことを特徴とする請求項8に記載の作業支援システム。
【請求項12】
前記作業端末装置は、3次元情報取得手段を有する、
ことを特徴とする請求項8に記載の作業支援システム。
【請求項13】
前記作業端末装置は、前記判定情報に基づき入力された前記作業情報の正当性を判定する判定手段を有する、
ことを特徴とする請求項8に記載の作業支援システム。
【請求項14】
管理者による前記シナリオに関する承認手段を有する、
ことを特徴とする請求項8に記載の作業支援システム。
【請求項15】
作業支援装置と作業端末装置を用いて現実空間における作業者による所定の作業を支援する作業支援方法であって、
前記作業支援装置が、作業対象の情報と、現実空間における該作業対象の位置情報を紐づけた作業対象マスタを作成する工程と、
前記作業支援装置が、前記作業の手順に関する情報群(以下、「作業手順情報」)を少なくとも一つ含むシナリオを作成する工程と、
前記現実空間における前記作業者の操作に応じて前記作業端末装置が前記シナリオを取得する工程と、
前記作業端末装置が前記シナリオに含まれる前記作業手順情報を表示手段に表示する工程と、
前記作業者によって入力される情報に応じて、前記作業端末装置が、前記作業手順情報のそれぞれに対応する作業情報を更新する工程と、
前記作業端末装置が、前記作業支援装置に前記作業情報が更新された前記シナリオを送信する工程と、を有する、
ことを特徴とする作業支援方法。
【請求項16】
前記作業端末装置が、前記現実空間において前記作業対象を含む3次元情報を取得し、該作業対象の前記位置情報を特定する工程を有する、
ことを特徴とする請求項15に記載の作業支援方法。
【請求項17】
前記作業者によって入力される情報に応じて、前記作業端末装置が、一の前記シナリオ内の少なくとも一つの前記作業手順情報について一の前記作業者に前記作業情報の更新の実行権を与える工程を有する、
ことを特徴とする請求項15に記載の作業支援方法。
【請求項18】
前記作業端末装置が、前記シナリオに設定された判定情報に基づき入力された前記作業情報の正当性を判定する工程を有する、
ことを特徴とする請求項15に記載の作業支援方法。
【請求項19】
管理者による入力に応じて、前記作業支援装置が前記シナリオに関する承認を行う工程を有する、
ことを特徴とする請求項15に記載の作業支援方法。
【請求項20】
前記作業対象マスタが保持する情報を参照し、前記作業の手順と、前記作業対象マスタが保持する情報とを紐付けて前記作業手順情報を作成する工程を有する、
ことを特徴とする請求項15に記載の作業支援方法。
【請求項21】
請求項15から請求項20のいずれか一項に記載の作業支援方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業支援装置、作業支援システム、作業支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場やプラントをはじめとする施設の保守(設備点検)において、近年では予防保全の観点から、日々の保守作業において漏れや抜けなく、定められた手順の通り設備の状態を確認することが求められている。
【0003】
例えば、作業者であるユーザが装着するヘッドマウントディスプレイの表示面に、当該作業者が実行すべき、或る一つの設備(例えば電気設備)に対する作業の手順書を仮想空間内に配置された仮想物体として、実空間の映像に重畳させて表示する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7154501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では未だ改善の余地があった。具体的には例えば、施設内において保守(点検)対象となる作業対象(設備)は多岐に渡ることが一般的である。つまり、例えば特許文献1に記載の技術のように、仮想的な作業手順書を、作業者が視認可能な携帯型端末装置のディスプレイ(例えばヘッドマウントディスプレイ等)に表示する構成において、作業対象(設備)が複数存在する場合にはそれぞれに対応付けた作業手順書を、混乱しないように表示することが求められる。これを実現するためには、仮想的な作業手順書の準備段階として、複数の設備の現実位置に対応する仮想空間における3次元の位置情報(例えば3次元座標データや3次元形状データ等)を取得し、作業手順書と関連付ける必要がある。近年では、3次元スキャン技術は普及しつつあるものの、複数の作業対象(設備)の3次元の位置情報とそれぞれに対応する仮想的な作業手順書の関連付けを行うには、高度な専門技術が必要であるなど、誰もが容易に行えることではない。
【0006】
また、例えば作業者が(仮想的な)作業手順書に従って作業を行い、作業者の主観としては作業が完了したと認識していても、客観的には本来実行すべき作業が完了していない場合には、作業手順書があっても意味をなさないことになる。
【0007】
このように、一つの作業対象(設備)に対する作業手順に加え、複数の設備に渡る作業手順についても、効率よく且つ、漏れや抜けのない確実な作業が行えるとともに、その準備段階においても容易に作業手順(の項目)等を設定することが可能な、利便性の高い作業支援ツールの実現が強く望まれている。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、作業対象の保守等の作業に際し、準備段階においても容易に作業手順(の項目)等を設定することが可能であり、作業の実行時においても効率よく且つ、漏れや抜けのない確実な作業を行うことが可能な、利便性の高い作業支援装置、作業支援システム、作業支援方法およびプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、現実空間における作業者による所定の作業を支援する作業支援装置であって、
【0010】
入力手段と、表示手段と、現実空間における作業対象の情報と該作業対象の位置情報を紐づけた作業対象マスタを作成する作業対象マスタ作成手段と、前記作業の手順に関する情報群(以下、「作業手順情報」)を少なくとも一つ含むシナリオを作成するシナリオ作成手段と、前記シナリオを記憶可能な記憶手段と、外部に対して前記シナリオを送受信可能な通信手段と、を有し、前記シナリオ作成手段は、前記作業対象マスタが保持する情報を参照し、前記作業の手順と、前記作業対象マスタが保持する情報とを紐付けた前記作業手順情報を作成可能である、
ことを特徴とする作業支援装置に係るものである。
【0011】
また、本発明は、上記の作業支援装置と、前記作業者が携帯可能な作業端末装置と、通信回線と、を有する作業支援システムであって、前記作業端末装置は、表示手段と、作業情報記録手段と、端末側記憶手段と、端末側通信手段と、を有し、前記シナリオは、前記通信回線を介して前記作業支援装置と前記作業端末装置の間で送受信可能であり、前記表示手段は前記作業手順情報を表示可能であり、前記作業情報記録手段は、前記作業者によって入力される情報に基づき前記作業手順情報のそれぞれに対応する前記作業情報を更新する手段であり、前記端末側記憶手段は、前記作業情報が更新された前記シナリオを記憶可能である、ことを特徴とする作業支援システムに係るものである。
【0012】
また、本発明は、作業支援装置と作業端末装置を用いて現実空間における作業者による所定の作業を支援する作業支援方法であって、前記作業支援装置が、作業対象の情報と、現実空間における該作業対象の位置情報を紐づけた作業対象マスタを作成する工程と、前記作業支援装置が、前記作業の手順に関する情報群(以下、「作業手順情報」)を少なくとも一つ含むシナリオを作成する工程と、前記現実空間における前記作業者の操作に応じて前記作業端末装置が前記シナリオを取得する工程と、前記作業端末装置が前記シナリオに含まれる前記作業手順情報を表示手段に表示する工程と、前記作業者によって入力される情報に応じて、前記作業端末装置が、前記作業手順情報のそれぞれに対応する作業情報を更新する工程と、前記作業端末装置が、前記作業支援装置に前記作業情報が更新された前記シナリオを送信する工程と、を有する、を有する、ことを特徴とする作業支援方法に係るものである。
【0013】
また、本発明は上記の作業支援方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムに係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業対象の保守等の作業に際し、準備段階においても容易に作業手順(の項目)等を設定することが可能であり、作業の実行時においても効率よく且つ、漏れや抜けのない確実な作業を行うことが可能な、利便性の高い作業支援装置、作業支援システム、作業支援方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る作業支援システムの概要図である。
図2】本発明の実施形態に係る(A)作業支援装置の構成ブロック図、(B)作業端末装置の構成ブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る作業支援システムの機能ブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る3次元座標データを説明する図である。
図5】本発明の実施形態に係る作業支援マスタを説明する図である。
図6】本発明の実施形態に係るシナリオの構成を説明する図である。
図7】本発明の実施形態に係る作業支援装置における表示例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る作業支援装置における表示例を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る作業支援装置における表示例を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る作業支援装置における表示例を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る作業支援装置における表示例を示す図である。
図12】本発明の実施形態に係る作業支援装置における表示例を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係る作業端末装置における表示例を示す図である。
図14】本発明の実施形態に係る作業端末装置における表示例を示す図である。
図15】本発明の実施形態に係る作業端末装置における表示例を示す図である。
図16】本発明の実施形態に係る作業端末装置における表示例を示す図である。
図17】本発明の実施形態に係る作業支援装置における表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
<作業支援システム>
図1は、本発明の実施形態の一例である作業支援システム1の全体構成を示す概要図である。図2は、作業支援システム1を構成する作業支援装置10と作業端末装置20のハードウェア構成を示す概略ブロック図である。図2(A)が作業支援装置10の構成を示す図であり、図2(B)が作業端末装置20の構成を示す図である。図3は、作業支援システム1を構成する作業支援装置10と作業端末装置20の機能の概略を示す機能ブロック図である。
【0017】
図1を参照して、本実施形態の作業支援システム1は、現実空間における作業者による所定の作業を支援するシステムであり、作業支援装置10と、作業者が携帯可能な作業端末装置(作業端末)20と、通信回線NWと、サーバ装置30および/またはクラウドサーバ35等を有する。所定の作業とは、例えば作業対象に対する保守(点検、部品等の交換、修理など)である。作業対象は例えば、工場、プラントその他の建造物又は構造物、あるいはそれらの内部の構造や設備(例えば、生産設備)等である。作業支援システム1のユーザは、作業者および管理者である。作業者は、作業領域(現場)において実際の作業を行う者であり、管理者は、作業者および作業を管理する者である。作業者および/または管理者はそれぞれ一人であってもよいし複数人であってもよい。本実施形態では一例として、管理者は例えば、作業および/または作業者の全て又は一部に対して特別な権限を有する者であり、作業者は当該特別な権限を有していない者であるとする。しかしこれに限らず、作業者は管理者と同等の特別な権限を有する者であってもよし、当該特別な権限の一部を有するものであってもよい。また、管理者と作業者は同一人であってもよい。
【0018】
以下の実施形態では、工場やプラント内に配置される複数の作業対象(設備)に対する保守作業を支援する作業支援システム1を例に説明する。
【0019】
作業支援システム1は、作業対象(設備)に対する作業(保守作業)の手順と、現実空間における作業対象(設備)の実位置の位置情報とを紐付けた(関連付けた、以下同様)情報群であるシナリオSを、通信回線NWおよびサーバ装置30および/またはクラウドサーバ35を介して作業支援装置10と作業端末装置20との間で共有し、作業支援を行う。以下、説明の便宜上サーバ装置30および/またはクラウドサーバ35を「サーバ装置30」と総称する。またシナリオSの詳細については後述する。
【0020】
<作業支援装置>
図2(A)を参照して、作業支援装置10は、制御手段101と、入力手段102と、表示手段103、記憶手段104、通信手段105と、出力手段106等とこれらを接続するシステムバス等を有する計算機(情報処理装置)であり、現実空間における作業者による所定の作業を支援する。具体的には、作業支援装置10は例えば、本実施形態に係る作業支援プログラムの一部(作業支援装置側アプリケーションプログラム)がインストールされた、または組み込まれたノート型PC(Personal Computer)あるいはデスクトップ型PCであるが、これに限らず、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話、携帯情報端末(Personal Data Assistant;PDA)、ウェアラブルコンピュータなどであってもよい。
【0021】
作業支援装置側アプリケーションプログラムは例えば、Webアプリケーションプログラム(インターネット上で利用できるアプリケーションプログラム)として提供される。以下、このWebアプリケーションプログラムを「作業支援Webアプリ」という。しかしながらWebアプリケーションプログラム以外のアプリケーションプログラムとして提供されてもよい。
【0022】
制御手段101は例えば、演算処理装置(CPU;central processing unit、MPU;microprocessor unit等)を備え、制御手段101等によって記憶手段104に記憶(インストール)されたオペレーティングシステム(OS;Operating System)、各種アプリケーションプログラム、ブラウザソフトウェアを実行することによって、以下に説明する機能を含む種々の機能を提供し、また、各種プログラムの実行に必要なデータやファイル等を記憶手段104に記憶する処理などを行う。
【0023】
入力手段102は、作業支援装置10(の制御手段101)に対するコマンド等を入力するためのものであり、例えば、キーボード、ポインティングデバイス(マウス等)、タッチパネル等によって構成される。
【0024】
表示手段103は、入力手段102によって入力された値やコマンド、および当該コマンドに対する作業支援装置10の応答出力等(例えば、各種アプリケーションプログラムの実行指示に基づくユーザインターフェイス等)を表示するものである。
【0025】
記憶手段104は、内蔵メモリ(メインメモリ(RAM;Random Access Memory)、ストレージ、ROM(Read Only Memory)など)や、外部記憶装置の総称である。記憶手段104には、OS、基本I/Oプログラム、制御プログラムおよびこれらの関連プログラム、ファームウェア、ブラウザソフトウェア、各種アプリケーションプログラム、各種ドライバの他、各種データ(画像データ、テキストデータ、3次元形状データ、3次元座標データ)など各種アプリケーションプログラムで処理可能なデータ、ドキュメント)などが記憶、保存される。記憶手段104には、シナリオSも記憶可能である。
【0026】
通信手段105は、作業支援装置10が通信回線NWを介して他の装置(作業端末装置20やサーバ装置30、または他の作業支援装置10やPCなど)とデータ通信等を行なうためのインターフェイスである。データ通信は、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)、NFC(Near Field Communication)等による近距離無線通信や、例えば、LTE(Long Term Evolution)方式、3G(3rd Generation)方式、4G(4th Generation)方式、5G(5th Generation)方式、FDMA方式、TDMA方式、CDMA方式、W-CDMAの他、PHS(Personal Handyphone System)などの移動体通信網を介した種々の無線通信方式によって行われる。また一部に有線通信方式を含んでもよい。
【0027】
出力手段106は、入力手段102によって入力されたコマンド等に基づき、作業支援装置10の応答を出力するものであり、例えば印刷装置であるが、これに加えて、音声出力装置(スピーカ)等を含んでもよい。
【0028】
図3を参照して、作業支援装置10の機能について説明する。図3は作業支援システム1の構成を機能の観点から説明する機能ブロック図である。作業支援装置10は、主に、現実空間の作業対象領域(現場)とは離れた場所で利用される装置であり、例えば、作業対象マスタ作成手段110と、シナリオ作成手段111と、シミュレーション手段112と、作業情報分析手段113と、シナリオ修正手段114と、3次元情報表示手段115と、承認手段116と、判定コード生成手段117などを有する。なお、図3に示す各手段(機能)は、作業支援Webアプリその他のソフトウェアおよび/または図2に示す1又は複数のハードウェアの協働により実現される。
【0029】
作業対象マスタ作成手段110は、現実空間における作業対象(設備)の情報と、その実位置の位置情報(具体的には、3次元座標)を紐づけた作業対象マスタWMを作成する。設備の3次元座標は、予め現実空間において取得した、作業対象を含む周辺環境(現場)の3次元情報に基づいて特定される。本実施形態における3次元情報とは、3次元座標データおよび/または3次元形状データである。
【0030】
3次元座標データに基づき、設備の3次元座標を特定する方法については後述するが、例えば、現場において作業対象となる設備を撮影したライブビュー映像に仮想3次元空間(例えば、拡張現実(AR:Augmented Reality)空間)のデジタル付箋(マーク画像、ピン)を付与した3次元座標データを取得することで特定する。
【0031】
3次元形状データに基づき、設備の3次元座標を特定する方法は、例えば、3次元スキャナにより現場をスキャンして3次元形状データを取得し、当該3次元形状データ上の作業対象となる設備に属性を付与することで、特定する。本実施形態の3次元形状データは、少なくとも3次元の位置情報(および数値)を有するデータをいう。3次元形状データの一例としては、3Dスキャナによるスキャンデータ、スキャンデータを加工したデータ、3次元の位置情報(スキャナからの相対的なX,Y,Z情報)をそれぞれに有する点の集合体である3次元点群データや、3次元のコンピューターグラフィックスにおける立体形状を表現するために使われる多角形の面データ(3次元画像、ポリゴンデータ)、3次元CADデータ、BIM(Building Information Modeling)で使用可能なデータ、CIM(Construction Information Modeling)で使用可能なデータ、360度VR(Virtual Reality)システムで使用可能なデータなどである。
【0032】
なお、設備の位置情報は、2次元図面(平面図)から特定してもよい。その場合は、設備の位置情報は、2次元座標、あるいは3次元座標(x、y、z)のうちいずれか1つの座標情報が一定値の座標として特定される。
【0033】
シナリオ作成手段111は、作業の手順に関する情報群(これを以下、「作業手順情報」という。)を少なくとも一つ含むシナリオSを作成する手段である。作業手順情報およびシナリオSについては後述するが、例えば、シナリオ作成手段111は、作業対象マスタWMを参照し、作業の手順と、作業対象マスタWMが保持する情報とを紐付けた作業手順情報を作成することが可能である。具体的には、シナリオ作成手段111は例えば、位置情報を持つ、すなわち3次元座標が特定された作業対象(設備)と、当該設備に対する作業の手順と、を紐付けた作業手順情報を含むシナリオSを作成可能である。このように、或る設備に対する作業の手順と、当該設備の3次元座標とを紐づけることで「どこで」、「何をする」か、を可視化できる。作成されたシナリオSは、表示手段(ディスプレイ)103に、2次元画像としてのリスト(ツリー)形式で表示可能であり、またこれに加え、現場の映像と仮想3次元空間(例えば、VR空間)で生成したオブジェクトを重畳させたナビゲーション形式で表示可能である。また、シナリオ作成手段111は、シナリオSの作成時に、現場での作業に対する判定情報を設定可能である。判定情報は、実際の現場における作業においてシナリオSに基づいた所定の手順で作業が行われたか否か(作業の合否)を判定する情報であるが、詳細は後述する。作業支援装置10は、通信手段105、通信回線NWおよびサーバ装置30を介して、作業端末装置20との間でシナリオSや3次元情報等を送受信可能である。
【0034】
なお、シナリオ作成手段111は、作業対象マスタWMを参照せずに作業手順情報を作成することもできる。具体的には例えば、設備に関する情報を有さない作業の手順に関する情報群(のみ)で構成された作業手順情報(例えば、作業者の身なり装備確認や点呼などの作業手順情報))を作成することもできる。
【0035】
つまり、一つの作業手順情報は、一の設備と一の作業の手順が紐づけられた情報群、複数の設備と一の作業の手順が紐づけられた情報群、一つの設備と複数の作業の手順が紐づけられた情報群、複数の設備と複数の作業の手順が紐づけられた情報群、設備に関する情報を伴わない一または複数の作業の手順に関する情報群、のいずれであってもよい。
【0036】
作業情報分析手段113は、作業者により入力される作業情報に基づき、AI(Artificial Intelligence)等により現場における作業内容を分析する手段である。作業情報についても後述するが、シナリオSの実行状態(作業の進捗状況)を示す情報であり、選択入力ツール(ラジオボタンやチェックボックス等)やテキスト等の入力情報、あるいはデータとして添付可能な画像(映像)・音声などの視聴覚情報等である。
【0037】
例えば、作業情報の入力の時刻に基づいて現場での作業の実行順が把握できるが、それにより作業(保守作業)の手順(ルート)に無駄が生じているか否か、などが分析できる。作業情報分析手段113は、入力された作業情報に基づき、作業手順の見直し、具体的には、作業項目の追加・削除・入れ替え等の必要性を分析する。
【0038】
作業情報分析手段113の分析結果は、表示手段103および/または出力手段106などを介して表示・出力が可能であり、これらを参照することによりシナリオSの作成者は、該当するシナリオSを修正できる。
【0039】
シナリオ修正手段114は、作業情報分析手段113によって分析された作業内容の分析結果に基づき、シナリオSを自動で修正する手段である。つまり作業情報分析手段113の分析結果は、上記のように手動によるシナリオSの修正に利用されるが、これに代えて、あるいは加えて、作業支援装置10による自動のシナリオSの修正に利用される。
【0040】
承認手段116は、作成されたシナリオSの内容に関し、責任者等、特別な権限を有する者の承認を付与する手段である。本実施形態では、シナリオSの作成時、シナリオSに含まれる複数の作業手順の完了時、および一つのシナリオSの完了時のそれぞれに対して、責任者等によるデジタル承認を付与する手段である。
【0041】
3次元情報表示手段115は、仮想空間上に3次元形状データを配置し、3次元座標が特定された作業対象を重畳表示して可視化する手段である。例えば、シナリオ作成手段111において作業対象(設備)の位置情報が必要な場合に、3次元情報表示手段115によって3次元形状データと重畳表示された設備を参照し、また必要に応じて当該設備の情報を取得することができる。また、3次元形状データは位置情報を含むデータであるため、例えば、作業対象マスタ作成手段110に新たな作業対象を追加する場合などにおいて、3次元情報表示手段115が表示する3次元形状データの任意の点について位置情報を取得することができる。3次元情報表示手段115は、作業対象マスタ作成手段110が作成する作業対象マスタを仮想空間で可視化する手段といえる。
【0042】
判定コード生成手段117は、作業者による現場での作業の正当性を判定するためのコード(例えば、QRコード(登録商標)等の2次元コードやバーコード等)を生成し、出力手段106を介して出力(印刷)可能な手段である。
【0043】
シミュレーション手段112は、作業支援装置10内に生成される仮想空間(仮想3次元空間、VR空間)においてシナリオSを仮想的に実施する手段である。具体的には、仮想空間(VR空間)に、現場の3次元形状データ(例えば点群データ)と、作業対象(設備)の位置に対応するデジタル付箋(マーク画像)やシナリオSの手順に対応した設備の位置(作業開始の基準位置からの方向や距離)を示す仮想(VR)オブジェクトと、を重畳表示した(3次元情報表示手段115による重畳表示を利用してもよい)CG(Computer Graphics)等により案内する。これにより現場に赴くことなく、過去のシナリオSまたは、作成したシナリオSに基づき仮想的な作業を行うことができ、過去の作業の見直しや、作成したシナリオSの正確性、効率性等を確認できる。
【0044】
<作業対象の3次元座標を特定する方法>
次に、シナリオS作成の準備段階として、作業対象(設備)の実位置(3次元座標)を特定する方法について、具体例を挙げて説明する。
【0045】
第1の方法は、現場の3次元形状データ上において、作業対象となる設備に属性を付与することで、設備の3次元座標を特定する方法である。
【0046】
この場合、予め現場に赴き、例えば3次元スキャナにより現場をスキャンして3次元形状データ(例えば、点群データ)を取得する。この3次元形状データ上の設備に対応するデータ(点群)には属性を付与することができる。属性として、設備名称やシナリオSで用いる設備番号等の情報を付与することで、現場に対応する点群データ上において、設備の3次元座標を特定することができる。これを作業支援装置10に取り込むことで、設備の情報と、その3次元座標を1対1で紐づけた作業対象マスタを作成することができる。
【0047】
第2の方法は、現場において設備及びその周辺を撮影したライブビュー映像に、AR空間のデジタル付箋(マーク画像、ピン)を付与した3次元座標データを取得することで、設備の3次元座標を特定する方法である。
【0048】
現在、ライブビュー映像を介して認識される現実空間の対象物に対し、ライブビュー映像上でデジタル付箋(マーク画像)を付与し、当該マーク画像の位置情報(3次元座標データ)を記憶(取得)できるアプリケーションが知られている(例えば、出願人の製品「ピンスペクト」など)。このアプリケーションにおけるマーク画像は、ライブビュー映像を撮影する装置内に生成される仮想3次元空間(AR空間)に付与されるものであり、AR空間内での位置を示す3次元座標を有している。つまり、当該マーク画像の位置(3次元座標)と自機の(推定される)位置との相対的(または絶対的)な位置関係に基づき、マーク画像に対応する現実環境の対象物の位置(3次元座標)を特定することができる。また、このアプリケーションではマーク画像に対して情報を関連付けることができるので、マーク画像に対応する現実空間の対象物の位置(3次元座標)及びそれに関連付けされた情報を、3次元座標データとして取得・記憶することができる。このアプリケーションを以下、「3次元座標データ取得アプリケーション」という。
【0049】
図4は、上記の3次元座標データ取得アプリケーションを用いて、現実空間の作業対象(設備)の3次元座標を特定している状態を示す図である。同図に示すように、例えばタブレット端末T(作業端末装置20であってもよい)などにインストールした3次元座標データ取得アプリケーションを現場で起動し、ライブビュー映像を撮影しながら、作業対象(設備)の位置にマーク画像Mを付与する(マーク画像Mは複数付与できる)。また、マーク画像M(の夫々)に設備の情報(設備名称やシナリオSで用いる設備に関する情報など)を格納する。この3次元座標データ取得することにより、マーク画像Mが有する仮想3次元座標と、基準となる点(3次元座標データを展開する自機の位置など)に基づき、マーク画像Mに対応する現実空間の設備の3次元座標を特定することができる。マーク画像Mを含む情報群(3次元座標データ)を取得した作業支援装置10の作業対象マスタ作成手段110は、仮想空間(VR空間)を生成し、原点を合わせた上で取得した3次元座標データを展開し、設備の情報とその3次元座標とを紐づけた作業対象マスタWM(図5(A)参照)を作成する。
【0050】
<作業対象マスタ>
図5を参照して、作業対象マスタ作成手段110により作成される作業対象マスタWMの一例について説明する。同図は作業対象が設備である場合の一例である。図5(A)は作業対象マスタWMのデータ構造の一例を示す図である。作業対象マスタWMは、シナリオSに設備が含まれる場合は、含まれる設備のそれぞれに対し、例えば設備番号(便宜的な番号)、設備名、上記の第1の方法または第2の方法で特定した設備の3次元座標、などが1対1で紐づけて登録される。また、作業対象マスタWMには外部のデータベースが保持する情報を紐づけることもできる。また図示は省略するが、作業対象マスタWMは例えば、設備番号などをキーにして、当該設備に対する過去の作業履歴(後述する作業情報記録手段226によって記録されたシナリオSの実施履歴(作業情報C等))を参照可能である。
【0051】
図5(B)は、3次元情報表示手段115による3次元情報の表示例である。3次元情報表示手段115は、仮想空間上において3次元形状データと上述の3次元座標データ取得アプリケーションにより取得した3次元座標データを重畳表示し可視化する。具体的には、3次元座標データと、別途、3次元スキャナにより取得した3次元形状データ(例えば、点群データ)とを作業支援装置10に取り込み、3次元情報表示手段115によって両者の原点を合わせた上で重畳させる。この結果、図5(B)に示すような3次元情報を表示できる。3次元座標データには設備の位置を示すマーク画像Mが含まれており、これと点群データにおける設備が重畳表示され、点群データ上でマーク画像に関連付けられた情報(例えば、設備番号(便宜的な番号)、設備名称など)を把握できる。
【0052】
3次元情報表示手段115は、所定の操作に応じて作業対象マスタWMを更新することもできる。3次元情報表示手段115が表示する点群データには属性を付与できるため、図5(C)に示すように、点群データに表されている新たな設備について、属性(例えば、設備番号(便宜的な番号)、設備名称などを含む)を付与する。そして所定の操作(例えばボタン操作など)に応じて、3次元情報表示手段115は、変更後の3次元情報(点群データ)に基づき、作業対象マスタWMを更新(設備の情報と位置情報を追加・編集・削除)する。このように点群データにより現場の設備を可視化しつつ、作業対象マスタWMを更新できるので、利便性を高めることができる。
【0053】
また、3次元情報からも作業対象マスタWMを介して或る設備に対する過去の作業履歴(後述する作業情報記録手段226によって記録されたシナリオSの実施履歴(作業情報C等))を参照可能である。これにより現場の作業状況が仮想空間上に反映されるデジタルツインが実現可能になる。
【0054】
<シナリオのデータ構造>
次に、シナリオ作成手段111により作成(生成)されるシナリオSについて説明する。図6はシナリオSのデータ構造を示す概念図である。図6(A)に示すように、作業支援装置10では1以上のシナリオSを扱うことができる。シナリオSは例えば、工場などの1または複数の建物単位、1または複数のフロア単位、1または複数の設備単位、或る(1または複数の)設備に対する処理単位、など任意の単位で作成することができる。具体的には例えば、シナリオS1は、第1工場内における或る設備に対する第1処理の作業手順を示す情報であり、シナリオS2は、第1工場内における或る設備に対する第2処理の作業手順を示す情報であり、シナリオS3は、第2工場の地下フロア内の全体の設備に対する点検の作業手順を示す情報、などである。また、この例では、シナリオS毎に、シナリオSの作成、シナリオSの閲覧、シナリオSの変更、シナリオSの承認などのアクセス権限を設定可能である。
【0055】
ここではシナリオS1のアクセス権限は、アカウントa、bに与えられ、シナリオS2のアクセス権限は、アカウントa、b、cに与えられ、シナリオS3のアクセス権限は、アカウントdに与えられている例を示している。アクセス権限が与えられていないシナリオSは、表示手段103に非表示となり、当然にアクセスはできない。
【0056】
1つのアカウントは、作業者や責任者などのユーザ個人単位に割り当てられてもよいし、複数名のユーザからなるグループ(例えば部署単位や、部署を横断した複数の個人からなるグループ)単位に割り当てられてもよい。また図示は省略するが、シナリオSの作成、シナリオSの閲覧、シナリオSの変更、シナリオSの承認等の夫々に(個別に)アクセス権限を与えるようにするとよい。一例としてアカウントは、管理者アカウントと作業者アカウントを含み、管理者アカウントは特別な権限を有するアカウントであり、作業者アカウントは特別な権限を有しないアカウントである。なお例えば特別な権限を有する作業者アカウントを設定してもよい。
【0057】
それぞれのシナリオSは、少なくとも一つの作業手順情報を含む。ここでは一例として、作業手順情報が階層構造となっている場合について説明する。具体的に、同図(B)に示すように1つのシナリオSは、1以上の第1階層(上層)の作業手順に関する情報(第1階層作業手順情報A)を含む。第1階層作業手順情報Aは、第1階層(上層)の作業手順(以下これを「プロセス」という場合がある。)に関する複数の情報からなる情報群(データユニット)である。ここではシナリオS1には3つの第1階層作業手順情報A1~A3が含まれている場合を示している。
【0058】
また同図(C)に示すように1つ第1階層作業手順情報Aは、1以上の第2階層(下層)の作業手順に関する情報(第2階層作業手順情報B)を含む。第2階層作業手順情報Bは、第1階層の作業手順(プロセス)を、更に細分化した(例えば最小単位の手順に細分化した)ものであり、具体的な作業内容を示す情報となる。第2階層(下層)の作業手順(以下これを「ステップ」という場合がある。)に関する複数の情報からなる情報群(データユニット)である。ここでは第1階層作業手順情報A1に4つの第2階層作業手順情報B1~B4が含まれている場合を示している。
【0059】
第2階層作業手順情報Bは、少なくとも一つの実行すべき作業の内容(作業WK)と、該作業WKの実行状態を示す作業情報Cと、該作業情報Cの正当性を判定するための判定情報Dを含む。また、作業WKがある設備に対するものである場合は、当該作業WKと、設備の位置情報(3次元座標)を少なくとも含む設備情報Uとが紐付けられて保持される。設備情報Uには設備の位置情報の他、識別表示(設備名または設備番号等)が含まれている。一つの第2階層作業手順情報Bに複数の設備情報Uが含まれてもよいし(例えば複数の設備に対して一の作業WKを行う場合)、第2階層作業手順情報Bに設備情報Uが含まれなくてもよい(例えば、作業者の身なり装備に関する作業WKの場合)。
【0060】
作業情報Cは、シナリオSの作成時には現場の作業者による入力枠として設定される。入力枠のタイプ(入力を受け付ける情報のタイプ)としては例えば、選択入力ツール(ラジオボタンやチェックボックス等)によるもの、テキスト・数値、あるいはデータとして添付可能な画像(映像)・音声などの視聴覚情報等である。作業情報Cは現場の作業者にとっては入力情報であり、入力枠のタイプに応じた入力を行うことになる。
【0061】
判定情報Dは、シナリオS作成時に設定され、作業者により入力される作業情報Cの比較対象となる情報である。一例として、作業情報Cが選択入力ツールにより入力される場合は、判定情報Dは選択入力の有無、作業情報Cがテキスト入力(例えば、メータの値を示す数値)により入力される場合は、判定情報Dは作業の正当な完了と判断してよい想定値(例えば、数値範囲等)、作業情報Cが画像(例えば設備の写真等)で添付される場合は、判定情報Dは作業の正当な完了と判断するための比較画像などが設定可能である。また後述するが、判定情報Dは現場における作業時に用いられる。すなわち、作業者が現場で作業端末装置20を操作して作業情報Cを入力した場合、作業端末装置20は、判定情報Dと作業情報Cを比較して入力された作業情報Cの正当性を判定(作業の合否を判定)する。
【0062】
すなわち、作業情報Cは、作業を手順通り行ったか否か、作業を行ったエビデンスとしての画像や数値、メモが付帯したチェックリストとしてシナリオSに記録される。
【0063】
このようなデータ構造を有するシナリオSにより、まず図6(C)に示す一連の第2階層作業手順情報B(B1~B4)に基づき第2階層の作業手順(ステップ)を行って1つの第1階層の作業手順(プロセス)を完了させる。これを順次繰り返してシナリオSに含まれる全てのプロセス(第1階層作業手順情報A2~A3のプロセス)を完了させることで、或るシナリオS(S1)の作業を、漏れなく確実に行うことができる。
【0064】
つまり本実施形態のシナリオSによれば、1つの作業対象(設備)に対する作業手順に加え、複数の設備に渡る作業手順についても、効率よく且つ、漏れや抜けのない確実な作業が行えるとともに、その準備段階においても容易に作業手順(の項目)等を設定することが可能な、利便性の高い作業支援ツール実現できる。
【0065】
なお、シナリオSのデータ構造(例えば上記で説明した2階層構造)は一例であり、一つの階層(例えば、上記の第2階層作業手順情報)のみで構成されていてもよいし、当該一つの階層を任意にグループ化できるようにしてもよい。
【0066】
また、シナリオSには、作業の手順や注意事項を説明するためのマニュアル(PDF、動画、CGなどのファイルまたはURLリンク)を添付可能であり、作業者はこれを作業端末装置20で参照可能である。またマニュアルはシナリオSそのものに関連付けてもいいし、作業手順情報(この例では第1階層作業手順情報A,第2階層作業手順情報B)単位に関連付けてもよい。
【0067】
<作業端末装置>
再び図1図3を参照して、本実施形態の作業端末装置20について説明する。図1に示すように、本実施形態の作業端末装置20は、作業支援装置10とともに作業支援システム1を構成し、現実空間における作業者による所定の作業を支援する。
【0068】
図2(B)を参照して作業端末装置20のハードウェア構成について説明する。作業端末装置20は、制御手段201と、入力手段202と、表示手段203、記憶手段204、通信手段205と、出力手段206と、撮像手段207と、3次元形状データ取得手段208と、各種センサ211等と、これらを接続するシステムバス等を有する携帯型の計算機(情報処理装置)である。
【0069】
具体的には、作業端末装置20は例えば、本実施形態にかかる作業支援プログラムの一部(作業端末装置側アプリケーションプログラム)がインストールされた、または組み込まれたタブレット端末である。作業端末装置側アプリケーションプログラムは例えば、ネイティブアプリケーションプログラムとして提供される。以下、ネイティブアプリケーションプログラムを「端末アプリ」という。作業端末装置20は、作業者が現場に容易に携帯できる装置であることが望ましく、タブレット端末に限らず、スマートフォン、携帯電話、携帯情報端末(Personal Data Assistant;PDA)、ウェアラブルコンピュータ(スマートウォッチ)、ハンディ端末、HMD(Head Mounted Display)、スマートグラス、デジタルカメラ、GPS端末、ノート型PCなどであってもよい。
【0070】
制御手段201は例えば、演算処理装置(CPU、MPU等)を備え、制御手段201等によって記憶手段204に記憶(インストール)されたオペレーティングシステム(OS)、各種アプリケーションプログラム、ブラウザソフトウェアを実行することによって、以下に説明する機能を含む種々の機能を提供し、また、各種プログラムの実行に必要なデータやファイル等を記憶手段204に記憶する処理などを行う。
【0071】
入力手段202は、作業端末装置20(の制御手段201)に対するコマンド等を入力するためのものであり、例えば、タブレット端末のタッチパネルおよび内蔵マイクであるが、キーボード、ポインティングデバイス(マウス等)等であってもよい。入力手段202がタッチパネルである場合、入力手段202の操作としては、表示されている画像を指やタッチスクリーンペンでタッチする(タップ、ドラッグ、ピンチアウト、ピンチイン、スワイプ等の動作をする)ことにより、選択、決定、拡大、縮小、移動等の各種操作を行うことができる。また、入力手段202がタッチスクリーンペンなどの場合、手書きの文字、線画を入力することもできる。また入力手段202は、物理ボタンを含む。物理ボタンは例えば、ホームボタンや、音量調整ボタンなどである。また、ここでの入力手段202には音声入力装置(マイク)も含まれる。
【0072】
表示手段203は、入力手段202によって入力された値やコマンド、および当該コマンドに対する作業端末装置20の応答出力等(例えば、各種アプリケーションプログラムの実行指示に基づくユーザインターフェイス等)を表示するものである。表示手段203は、この例ではタブレット端末のタッチスクリーン(タッチパネルディスプレイ)であり、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)や有機ELディスプレイ(Organic Electro-Luminescence Display。または、OLEDディスプレイ(Organic Light Emitting Diode Display)ともよばれる。)などの表示手段103に、入力手段202であるタッチパネルが重畳されている。
【0073】
表示手段203はまた、撮像手段207で撮影した画像や、撮影対象の現実映像LVを表示可能である。ここで本実施形態における現実映像LVとは、撮像手段207がレンズ210を通して認識した対象物をリアルタイムに撮像素子上で結像し、撮像素子の光電変換により得られる画像情報を不揮発性の記憶手段204を介さず表示手段203に表示させる映像(画像)で、所謂ライブビュー映像をいう。具体的には、本実施形態における現実映像LVとは、動画や写真の撮影のための撮影ボタン等を操作していない状態で、撮像手段207を介して表示手段203に対象物を含む対象領域の実像をリアルタイム表示させている映像をいう。
【0074】
表示手段203はまた、各種アプリケーションの実行結果としての画像や、3次元形状データ、入力手段102としてのアイコンや、ボタン等の画像、その他画像(文字も含む)を表示可能である。なお、本明細書における「画像」には特に区別して記載しない限り、静止画像および動画像が含まれる。
【0075】
なお、作業端末装置20が例えば携帯電話やノート型PCなどの場合、表示手段(ディスプレイ)203と、入力手段(例えば、キーボード、物理キー)202はそれぞれ独立した構成であってもよい。
【0076】
記憶手段204は、内蔵メモリ(メインメモリ(RAM)、ストレージ、ROMなど)や、外部記憶装置の総称である。記憶手段204には、OS、基本I/Oプログラム、制御プログラムおよびこれらの関連プログラム、ファームウェア、ブラウザソフトウェア、各種アプリケーションプログラム、各種ドライバの他、各種データ(画像データ、テキストデータ、3次元情報)など各種アプリケーションプログラムで処理可能なデータ、ドキュメント)などが記憶、保存される。記憶手段204には、シナリオSも記憶可能である。
【0077】
通信手段205は、作業端末装置20が通信回線NWを介して他の装置(作業支援装置10やサーバ装置または他の作業端末装置20やPCなど)とデータ通信等を行なうためのインターフェイスである。データ通信は、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、BLE、NFC等による近距離無線通信や、例えば、LTE方式、3G方式、4G方式、5G方式、FDMA方式、TDMA方式、CDMA方式、W-CDMAの他、PHSなどの移動体通信網を介した種々の無線通信方式によって行われる。また一部に有線通信方式を含んでもよい。作業端末装置20は通信手段205および通信回線NWを介して、作業支援装置10との間でシナリオSや3次元情報(3次元形状データおよび3次元座標データ)等を送受信可能である。
【0078】
出力手段206は、入力手段202によって入力されたコマンド等に基づき、作業支援装置10の応答を出力するものであり、作業端末装置20がタブレット端末の場合には主として音声出力装置(スピーカ)であるが、これに加えて、作業端末装置20に外部接続する印刷装置などを含んでもよい。
【0079】
撮像手段207は、作業を行う現実空間の映像や、動画・静止画を取得可能な手段である。この例では、撮像用のアプリケーションプログラムと協働してカメラ機能を実現するユニット(タブレット端末のカメラユニット)であり、詳細な図示は省略するが、少なくともレンズと、撮像素子と画像処理プロセッサなどを含む。撮像手段207は、レンズを介して認識した対象を撮像素子上で結像し、撮像素子の光電変換により得られる画像(映像)情報を画像データとして記憶手段204に記憶する。レンズは、表示手段(ディスプレイ)203が設けられている面(前面)とは異なる面(背面)に配置される。
【0080】
また既に述べたように撮像手段207は、現場の現実映像を取得可能である。具体的には、作業端末装置(タブレット端末)20のカメラ機能の起動により、撮像手段207は、実在する作業対象(設備)を含む対象領域をライブビュー映像として表示手段203に表示可能である。そして作業者等が撮影ボタン(例えば、表示手段203に表示されるボタン画像や、物理ボタンなど)を操作すると、現実映像LVで表示中の映像情報を画像データ(静止画または動画)として記憶手段204に記憶する。
【0081】
3次元形状データ取得手段208は、作業対象(設備)を含む作業の対象領域(現場)の3次元形状データを取得する手段であり、対象領域を3次元で計測(スキャン)可能なデータ走査手段である。具体的には3次元形状データ取得手段208は例えばリアルタイム3Dスキャナ(例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)スキャナのほか、ステレオカメラ、単眼カメラ、距離センサーを利用したSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)によるスキャナなど)である。しかしこれに限らず、レーザー、LED、又は赤外線の光、あるいは電波の反射光を検知して離れた物体の距離を測る手段(他の3Dスキャナ)であってもよい。また、3次元形状データ取得手段208は、フォトグラメトリであってもよい。フォトグラメトリは、さまざまな角度から写真や動画を撮影することで、3Dスキャナと同様に3次元形状データを取得できる。
【0082】
また本実施形態の3次元形状データとは、少なくとも3次元の位置情報(および数値)を有するデータをいう。3次元形状データの一例としては、3Dスキャナによるスキャンデータ、スキャンデータを加工したデータ、3次元の位置情報(スキャナからの相対的なX,Y,Z情報)をそれぞれに有する点の集合体である3次元点群データや、3次元のコンピューターグラフィックスにおける立体形状を表現するために使われる多角形の面データ(3次元画像、ポリゴンデータ)、3次元CADデータ、BIM(Building Information Modeling)で使用可能なデータ、CIM(Construction Information Modeling)で使用可能なデータ、360度VR(Virtual Reality)システムで使用可能なデータなどである。つまり本実施形態における仮想(3次元)空間とは、上記の3次元形状データが扱える環境をいい、本実施形態の3次元形状データは、上記の3次元形状データが扱える環境において生成、加工、更新、編集が行える情報である。
【0083】
作業端末装置20がタブレット端末の場合は、上記の構成の他に、例えば、環境光センサ(照度/輝度)、近接センサ、磁力センサ、ジャイロセンサ、指紋認証センサ、触感センサなど既知のセンサ(これらを本実施形態では「各種センサ211」と総称する)と、GPS、加速度計、BLE、NFCなどタブレット端末として既知の構成・機能を有している。
【0084】
また、作業端末装置20がタブレット端末やノート型PC等、Webアプリケーションを実行可能な装置である場合、作業端末装置20にて作業支援Webアプリケーションを実行することもできる。つまり、例えば、作業支援装置10および作業端末装置20はいずれもタブレット端末であってもよい。その場合、作業支援Webアプリケーションの実行により両者が作業支援装置10となり得るが、説明の便宜上、現場で実際の作業に用いる装置を作業端末装置20と称し、現場以外での作業に用いる装置を作業支援装置10と称する。
【0085】
再び図3を参照して作業端末装置20の構成を機能の観点から説明する。作業端末装置20は、位置推定手段221と、仮想視聴覚処理手段222と、3次元情報取得手段223と、作業情報記録手段226と、ナビゲーション手段227と、作業実施判定手段228などを有する。図3に示す各手段は、例えば作業端末装置20にインストールされる端末アプリその他ソフトウェアおよび/または図2に示す1又は複数のハードウェアの協働により実現される。
【0086】
シナリオSは、情報群(データユニット)として作業支援装置10と作業端末装置20の間でサーバ装置30(またはクラウドサーバ35、以下同様)を経由して送受信される。つまり作成されたシナリオSは作業支援装置10からサーバ装置30にアップロードされる。作業者は現場で作業端末装置20の端末アプリを立ち上げ、シナリオSをサーバ装置30からダウンロードする。端末アプリでは、例えば図6に示すようにシナリオSを階層構造で確認できる。また第2階層作業手順情報Bの一覧を表示でき、第2階層作業手順情報B毎に作業情報Cの入力が可能となる。作業情報Cが入力されたシナリオSは作業端末装置20からサーバ装置30にアップロード可能であり、作業支援装置10は当該シナリオSをダウンロードできる。このようにして、例えば作業情報Cが適宜更新されるシナリオSが作業支援装置10と作業端末装置20で共有される。
【0087】
位置推定手段221は、作業端末装置20が自機の位置を推定する手段である。位置推定手段221は、自機の方向(撮像手段207のレンズが向いている方向)や姿勢・位置などの状態を示す情報を取得し、必要に応じて演算等を行い記録する手段であり、これにより自機の状態(レンズが向いている方向、姿勢、位置など)を随時把握する。位置推定手段221は例えば、赤外線やレーザー等の物体からの反射光を検知して自機の姿勢や位置を検出する手段(例えば、LiDARスキャナや、SLAMを用いたスキャナや、ステレオカメラを用いたSLAM)を含んで構成される。また、位置推定手段221は3次元形状データ取得手段208と併用(兼用)であってもよい。
【0088】
また、位置推定手段221は、例えば、3軸方向に対する地磁気を検出して方位を検出する電子コンパスや、3軸方向に対する作業端末装置20の傾き角を検知する加速度センサ、ジャイロ(角速度)センサ、深度センサや、単眼カメラを用いたSLAMなどを含む。作業端末装置20は、電子コンパスにより検出される方位と、3軸加速度センサやジャイロセンサにより検出される自機の傾き角度・姿勢に基づいて(必要に応じて演算を行い)、撮像手段207のレンズが向けられている撮像方向(撮像方位)及び撮像角度(画角)を検出することができる。またSLAMで、自機を基準となる位置(初期位置)から移動させ、撮像手段207により複数の周辺環境の画像を取得することにより、自己位置の推定と周辺環境の地図を作成可能なものであってもよい。
【0089】
また、位置推定手段221は、例えば、携帯電話の無線基地局や、Wi-Fi(登録商標)通信のアクセスポイントからの電波強度などによって自機の方向、姿勢、位置(絶対位置)を検出したり、全地球測位システム(Global Navigation Satellite System))のように、衛星からの信号によって自機の方向、姿勢、位置(絶対位置)を検出することができる絶対位置情報取得モジュールが含まれる。
【0090】
仮想視聴覚処理(または仮想視覚処理、以下同様)手段222は、仮想的な視聴覚(または視覚)処理を実現する手段である。仮想視聴覚処理手段222は例えば、拡張現実(AR)を実現する拡張現実(AR)処理手段であり、具体的には、いわゆるARフレームワークまたはARライブラリである。
【0091】
仮想視聴覚処理手段222は例えば、仮想現実(virtual reality;VR)を実現する拡張現実(AR)処理手段であり、具体的には、いわゆるARフレームワークまたはARライブラリでもよい。
【0092】
また、仮想視聴覚処理手段222は例えば、VRを実現する仮想現実(VR)処理手段であり、具体的には、3次元CG表示ソフトウェア、3次元CG表示ライブラリでもよい。
【0093】
つまり、仮想視聴覚処理手段222は、ARフレームワーク(ARライブラリ)および/または3次元CGソフトウェア(3次元CG表示ライブラリ)を含む手段であり、本実施形態の説明において、「AR処理手段」および「ARフレームワーク」と記載した構成について「3次元CGソフトウェア(3次元CG表示ライブラリ)」と置き換えても同様に実施でき、同様の効果を得られる。
【0094】
仮想視聴覚処理手段222は既知の構成であるので、詳細な説明は省略するが、例えば、撮像手段207や3次元形状データ取得手段208を用いて作業の対象領域(現実空間)や作業対象(設備)を撮影することにより、当該対象領域の空間の情報(対象領域の位置情報や対象領域に含まれる作業対象の情報(3次元形状データを含む)など)の記憶、認識、推定、解析等を行い、その撮影している対象領域(現実空間)の映像に対して情報を付加・削除・強調・減衰させることによって現実空間と同様に仮想的に可視化する技術である。
【0095】
ARフレームワーク(ARライブラリ、以下同様)222の一例としては、米Apple社が提供するARKit(登録商標)や米Google社が提供するARCore(登録商標)、オープンソースのARToolKitなどがあり、本実施形態では仮想視聴覚処理手段(ARフレームワーク)222としてARKit(登録商標)を利用する場合を例に説明する。この場合、ARフレームワーク222は、例えば、3次元情報取得手段223によって取得した、作業対象を含む現実空間に対応する3次元座標データや3次元形状データに沿ってデジタル情報(コンピュータグラフィクス(computer graphics;CG)などによるオブジェクト画像を合成し、例えば作業対象にオブジェクト画像を重畳させるなどして即時に(リアルタイムで)表示手段203に表示することができる。または仮想空間内における作業対象(の3次元形状)が含まれる面(平面(水平面、垂直面など)や曲面)を検出し、当該面にそって、オブジェクト画像を合成し、作業対象にオブジェクト画像を重畳させるなどしてリアルタイムで表示手段103に表示することができる。
【0096】
なお、本実施形態の仮想視聴覚処理手段222は、上記と同様の機能が実現できるものであれば、ARKit(登録商標)に限らず、また特定のフレームワーク(ライブラリ)でなくてもよい(個別に上記機能を有するように作成されたプログラム等であってもよい)。
【0097】
3次元情報取得手段223は、3次元形状データ取得手段208および3次元座標データ取得手段224を含む。3次元座標データ取得手段224は、現場の設備の実位置の3次元座標を取得する手段であり、例えば上述の3次元座標データ取得アプリケーションである。
【0098】
作業情報記録手段226は、現場において実際の作業の進捗(完了したか否か)を記録する手段である。具体的には、作業の完了の有無は、シナリオSの第2階層作業手順情報Bのそれぞれに対応する作業情報C(図6(C)参照)の入力の有無で判断され、作業情報記録手段226は、作業者により入力される作業情報Cを記録する。
【0099】
作業者は、現場で或る第2階層作業手順情報Bに基づく作業を行い、当該第2階層作業が完了すると第2階層作業手順情報Bに対応する作業情報Cを入力する。作業情報Cは、選択入力ツール(ラジオボタンやチェックボックス等)を用いた入力情報、テキスト・数値等の入力情報、あるいはデータとして添付可能な画像(映像)・音声などの視聴覚情報等である。作業端末装置20では、或る第2階層作業手順情報Bについて作業情報Cの入力を受け付けると、作業実施判定手段228が当該第2階層作業手順情報Bに対応して設定されている判定情報Dと作業情報Cを比較し、作業情報Cの正当性を判断する(作業の合否判定を行う)。作業情報Cが正当と判断された場合、作業情報記録手段226は、入力された情報で作業情報C(第2階層作業手順情報B)を更新し、第2階層作業手順情報Bを含むシナリオSを記憶手段204に記憶する。
【0100】
また、作業情報記録手段226は、作業情報Cの更新に際し排他制御を行う。一例として作業情報記録手段226は、第1階層作業手順情報A毎に一の作業者のみに作業情報Cの更新の実行権を与え、その期間は同一シナリオS内の第1階層作業手順情報Aについて他の作業者による作業情報Cの更新を不可にする。
【0101】
図6を参照して、具体的に説明する。或る作業者W1が、シナリオS1の第1階層作業手順情報A1に基づく作業(第1階層作業手順情報A1に含まれる第2階層作業手順情報B1~B4の作業)を実行する。このとき作業者W1を、第1階層作業手順情報A1に基づく作業の担当者として端末アプリに登録する。これにより作業者W1は、第1階層作業手順情報A1に含まれる第2階層作業手順情報B1~B4にそれぞれ対応する作業情報C1~C4の更新の実行権を取得する。この作業者W1が第2階層作業手順情報B1~B4に基づく作業、およびその実行結果としての作業情報C1~C4の入力・更新を行っている期間は、他の作業者は、同一の第1階層作業手順情報A1に基づく作業について、作業情報Cの更新を行うことはできない。この場合、同一シナリオS1内の他の第1階層作業手順情報A2、A3に基づく作業については、作業情報Cの更新を行うことができないようにしてもよいし、作業情報Cの更新を許容してもよい。
【0102】
なお、本実施形態において、作業情報Cを更新可能な作業者は、第1階層作業手順情報A毎に一人であるが、当該作業者に同行者があってもよい。すなわち、第1階層作業手順(プロセス)の実行に際し、複数人が現場に立ち入ることは許容される。作業者に同行者がある場合、一の作業者のみが一台の作業端末装置20を現場に持ち込み、これを操作するようにしてもよいし、同行者も作業端末装置20を持ち込み可能としてもよい。一の作業者のみが一台の作業端末装置20を現場に持ち込むとしても同業者がある場合には、同業者も作業端末装置20を操作可能である。この場合、作業者アカウントの認証などにより、厳密に作業者のみに作業端末装置20の操作を認め、同業者には認めないようにしてもよいし、同業者は作業者と同等に作業端末装置20の操作を認めるようにしてもよい。
【0103】
また、同行者も作業端末装置20を持ち込み可能とする場合には、例えば一の作業者アカウントと、一以上の同行者アカウントを設定し、作業者アカウントのみに作業情報Cの更新の実行権を与え、同行者アカウントには更新の実行権を与えないようにしてもよいし、状況に応じて、同行者アカウントにも実行権を与えるようにしてもよい。
【0104】
図3に戻り、作業実施判定手段228は、第2階層作業手順情報Bのそれぞれに対応して設定される判定情報D(図6(C)参照)に基づき、入力された作業情報Cの正当性を判定する。判定情報Dの設定は、第2階層作業手順情報B毎に任意であるが、作業の正確性を高めるには第2階層作業手順情報B毎に判定情報Dを設定する方が望ましい。
【0105】
ナビゲーション手段227は、シナリオSに応じた仮想空間(AR)映像を生成して表示手段203に表示し、作業者に対して作業の手順と作業対象(設備)の位置をナビゲーションする手段である。具体的に、ナビゲーション手段227は、仮想視聴覚処理手段222と協働して、シナリオSの第2階層作業手順情報Bに含まれる設備に対応するARオブジェクトや、現在位置から設備の位置までの方向や距離などを示すARオブジェクトを生成し、現実空間のライブビュー映像に重畳させて表示手段203に表示する。第2階層作業手順情報Bには設備情報Uとして設備の位置情報(3次元座標)が含まれているため、ナビゲーション手段227はこの位置情報に基づき、対応するARオブジェクトを生成して表示する。
【0106】
作業者が現場でシナリオSを表示手段203に表示させて、或る第2階層作業手順情報Bに対する選択操作等を行うと、表示手段203の表示が切り替わり、現場のライブビュー映像を表示するとともに、その作業の対象となる設備の位置、またはその設備までの方向や距離を示すARオブジェクトをライブビュー映像に重畳して作業者に対してナビゲーションすることができる。
【0107】
従来の保守作業などでは、対象となる設備の一覧を示す設備リストや、当該設備に対する作業の一覧を示す作業リストなどを用いて現場での作業を行っていた。例えば作業リストには設備の場所と作業内容とが表形式などで紐づけがされていることはあっても、設備の場所は例えば「1階のA室」など文字の表記に限られ、現場での実際の設備の位置が分かりにくいことで作業効率が向上できない、あるいは同様の設備が近傍に多数ある場合などには、設備の選択ミスなども生じやすいなどの問題があった。本実施形態では設備の位置情報(3次元座標)とその設備に対する作業WKが紐づけられているため、作業手順に沿って対象となる設備のナビゲーションが可能となり、作業の正確性を高め、作業効率を向上させることができる。
【0108】
<作業支援システムによる作業支援の流れ>
以下、作業支援装置10の表示手段103および作業端末装置20の表示手段203に表示される画面の一例を参照しつつ、作業支援システム1における作業支援の流れ(作業支援方法)について説明する。なお、以下の説明で参照する表示画面は説明のための一例に過ぎず、表示項目、入力項目やそれらの配置等は図示の例に限るものではない。
【0109】
<<作業対象マスタ作成>>
まず事前の準備として、作業対象マスタWMを作成するために、現実空間において作業対象(設備)を含む周辺環境(現場)の3次元情報(3次元座標データまたは3次元形状データ)を取得する。ここでは一例として、作業端末装置20の3次元データ取得手段224(3次元座標データ取得アプリケーション)により3次元座標データを取得する場合について説明する。
【0110】
図4に示したように、ユーザ(管理者または作業者)は、予め現場に赴き、ライブビュー映像を撮影しながら作業対象(設備)の位置にマーク画像を付与し、当該マーク画像に設備の情報(設備名称やシナリオSで用いる設備に関する情報など)を格納する。そして、マーク画像Mを含む3次元座標データを記憶手段204に記憶する。
【0111】
その後、通信回線NWやサーバ装置30を介して、作業支援装置10に取得した3次元座標データを取り込む。作業支援装置10では作業対象マスタ作成手段110が、仮想空間(VR空間)を生成し、取得した3次元座標データと原点を合わせてこれを仮想空間(VR空間)に展開し、設備とその3次元座標とを紐づけた作業対象マスタWM(図5(A)参照)を作成する。
【0112】
なお、或る作業端末装置20上で3次元座標データ取得アプリケーションを利用して設備の位置に対応するマーク画像を付した3次元座標データを取得し、同じ作業端末装置20で、仮想空間上の始点(原点)を3次元座標データの取得時と一致させた上で、作業支援Webアプリを実行し、作業対象マスタ作成手段110によって作業対象マスタWMを作成してもよい。
【0113】
このように本実施形態の作業支援システム1では、作業対象となる設備と、その現実空間(現場)における位置(3次元座標)とを紐づける機能(3次元座標データ取得手段224など)、および設備とその3次元座標とを紐づけた状態で作業対象マスタWMとして管理する機能を有している。そして、この作業対象マスタWMを用いて、シナリオSを作成する。
【0114】
<<シナリオ作成>>
次に、作業支援装置10において、作業対象(設備)に対する作業手順と、その設備の3次元座標とを紐付けた情報群であるシナリオSを作成する。
【0115】
図7図11は、作業支援装置10において作業支援Webアプリを実行した場合の画面表示例である。まず新規のシナリオSを登録する流れについて説明する。図7(A)は、シナリオ一覧画面500の表示例である。ここでは、「A工場 定期点検」というタイトルのシナリオS1と「B工場 設備修繕」というタイトルのシナリオS2が既に登録されている。シナリオ一覧画面500は新規作成ボタン501を含む。
【0116】
図7(B)は、シナリオ一覧画面500において新規作成ボタン501を操作(クリック、タップ等)した場合に表示される新規のシナリオSの登録画面502の表示例である。ここではシナリオSのタイトル欄503にタイトル(一例として「高圧器 検査前処理」)を入力する。登録/キャンセルボタン504の操作により、シナリオSの登録またはキャンセルが実行される。
【0117】
同図(C)はシナリオ「高圧器 検査前処理」の基本情報メニューに含まれる基本情報設定画面505の表示例である。ここでは、アクセス権欄506が設けられ、「高圧器 検査前処理」のシナリオSの編集(追加・変更・削除)や承認についてアクセスを許可する者を登録可能である。ここでは一つのアクセス権欄506のみを示しているが、例えば、シナリオSの編集(追加・変更・削除)と、シナリオSの承認とで個別にアクセス権欄506を設け、それぞれ個別にアクセス権を制御するようにしてもよい。また図示は省略するが、シナリオSの実行(作業)予定日や作業目的などの基本情報を設定可能である。
【0118】
図8(A)は、シナリオ「高圧器 検査前処理」の作業計画メニューに含まれる第1階層作業手順情報登録画面507の表示例である。ここでは第1階層作業手順情報A1のタイトル欄508,作業人数欄509、登録/キャンセルボタン504等が設けられる。また一例としてタイトル欄508に例えば「電源オフ」,作業人数欄509に例えば「3(人)」などを入力している。作業人数欄509の「3」は作業者(1人)の他、同行者が2人いることを意味する。登録/キャンセルボタン504の「登録」ボタンを操作すると、第1階層作業手順として「電源オフ」プロセスが登録され、図8(B)に遷移する。
【0119】
図8(B)は第1階層作業手順情報一覧画面510の表示例である。この画面は第1階層作業手順情報欄511を含む。第1階層作業手順情報欄511には、プロセス名(電源オフ)、作業人数(3人)、実行状態(未実施)などの情報が表示される。第1階層作業手順情報欄511を操作すると、「電源オフ」プロセスの詳細(第2階層作業手順情報B)を登録できる。
【0120】
図8(C)は、「電源オフ」プロセスの第2階層作業手順情報Bの登録画面の表示例である。この例では第2階層作業手順情報Bの詳細を登録する作業手順設定ウィンドウ512が表示されている状態である。
【0121】
図9は、図8(C)に示す作業手順設定ウィンドウ512を抜き出して示す表示例である。この作業手順設定ウィンドウ512で、第2階層作業手順情報Bを設定する。ここでは「電源オフ」プロセスの下層の手順として「高圧器の電源がオフであることを確認する」という内容の第2階層の作業手順(ステップ)に関する第2階層作業手順情報B1を登録する場合を例示する。
【0122】
作業手順設定ウィンドウ512は例えば、第2階層作業手順情報Bの作業内容欄513、設備番号欄514、3次元形状データ連携ボタン515、作業情報設定欄516等を有する。
【0123】
設備番号欄514は、第2階層手順の対象となる設備(ここでは高圧器の電源)を設定する欄であり、作業対象マスタWMの設備番号の入力欄である。作業対象マスタWMを参照するなどして設備番号(例えば高圧器の電源の設備番号「20」)が判明している場合は、当該設備番号を直接入力する。これにより、「高圧器の電源がオフであることを確認する」という第2階層の作業手順(ステップ)と、その作業の対象となる高圧器の電源(設備番号「20」)の3次元座標とを容易に紐付けすることができる。
【0124】
あるいは、設備番号は、ユーザによる直接入力ではなく3次元形状データ連携ボタン515の選択(クリック・タップ等)でも入力できる。具体的に説明すると、3次元形状データ連携ボタン515を選択すると、表示手段203の表示が図5(B)に示す3次元情報表示手段115による3次元情報の表示画面(3次元形状データ(例えば点群データ)と3次元座標データの重畳表示の画面)に切り替わる。この画面において、該当の設備、例えば丸印で示した高圧器の電源を選択(クリック・タップ等)すると、画面が作業手順設定ウィンドウ512に戻るとともに、設備番号欄514に、選択した設備(電源)の設備番号「20」が自動入力される。このように対象となる設備(高圧器の電源)の名称や設備番号が不明であっても、現場を示す3次元形状データの上で設備を選択することで、設備番号「20」を作業対象(設備)番号欄514に自動入力することができる。
【0125】
例えば作業対象領域における複数の設備の保守作業などにおいては、従来より作業対象の設備の一覧が例えば表形式などで用意され、それに基づき保守作業を行っていた。しかしながら、現場における設備の実際の位置との紐づけがなされておらず、作業手順書、あるいは作業の正確性に欠ける問題があった。
【0126】
本実施形態によれば、作業手順(第2階層作業手順)と、3次元座標を持つ作業対象(設備)とを紐づけたシナリオSを作成するので、現場での作業の際、ライブビュー映像上に作業対象の位置を重ねて表示することができる。これにより作業とその対象となる設備の把握、設備の位置を正確に把握することができる。
【0127】
また、シナリオSの作成段階で作業手順(第2階層作業手順)と、3次元座標を持つ作業対象(設備)とを紐づける際、3次元情報表示手段115によって設備の位置を可視化することができ、作業手順情報としての正確性を高めることができる。また、作業手順の設定画面(図8(C))と点群データ画面(図9)とを容易に遷移させることができるので、ユーザの利便性が高まる。
【0128】
なお、この場合、設備の位置を可視化することができればよいので、3次元情報表示手段115は、3次元形状データ(例えば点群データ)に代えて、図面(例えば3次元CADの図面データ)と、マーク画像付き3次元座標データを表示手段203に重畳表示する構成でもよい。またマーク画像付き3次元座標データを2次元データに変換し、2次元CADの図面データと重畳表示するようにしてもよい。
【0129】
作業情報設定欄516は、例えば、作業情報欄517と判定情報欄518を有する。作業情報欄517は、作業者による作業が実施された(作業が完了した)場合に作業者に入力させる作業情報Cのタイプを設定する欄であり、判定情報欄518は判定情報Dを設定する欄である。作業手順設定ウィンドウ512で設定された情報は、第2階層作業情報B(シナリオS)として作業端末装置20でも共有される。つまり作業情報欄517の設定内容は、作業者が操作する作業端末装置20の端末アプリの画面(作業情報入力画面)に表示される。また判定情報欄518の内容は、作業端末装置20の作業実施判定手段228による判定に用いられる。つまり判定情報欄518の設定は作業支援装置10側で行うが、入力される作業情報Cの判定は作業端末装置20の作業実施判定手段228によって行うことになる。なお、シナリオSが作業端末装置20との間で共有されるので、第2階層作業情報Bの上層の第1階層作業手順情報Aも作業端末装置20との間で共有される。
【0130】
作業情報欄517について、作業情報Cのタイプとして、ここではチェックボックス、自由テキスト、数値、画像を選択可能である。「チェックボックス」タイプは作業が完了した場合に作業情報入力画面にチェックボックスを表示して作業者にチェックマークの入力を要求するタイプであり、この場合チェックマークが作業情報Cとなる。
【0131】
「自由テキスト」タイプは、作業情報入力画面において任意のテキストの入力を要求するタイプであり、この場合、入力される任意のテキストが作業情報Cとなる。
【0132】
「数値」タイプは、作業情報入力画面において作業者に数値の入力を要求するタイプであり、この場合、入力される任意の数値が作業情報Cとなる。
【0133】
「画像」タイプは、作業情報入力画面において作業者に画像(静止画像または動画像)の入力(添付)を要求するタイプであり、この場合、添付される任意の画像が作業情報Cとなる。
【0134】
使用欄517Aはチェックマークの入力により作業情報Cのタイプを選択する。複数選択可能である。ラベル欄517Bは、作業情報入力画面に表示する単位や入力ガイドなどを入力可能である。
【0135】
判定情報欄518について、想定値欄518Aには、作業情報Cのタイプごとに、作業が正当である場合に想定される値(作業の合否判定の判定基準)を設定する。例えば、作業情報Cが「自由テキスト」タイプの場合に「開」・「有」・「〇」等を設定しておくと、これらの文字列と作業情報入力画面に入力された自由テキストが作業実施判定手段228によって比較される。
【0136】
また、作業情報Cが「数値」タイプの場合は数値範囲での入力も可能である。一例として「-5~+10(範囲の指定方法は説明上の一例)」等を設定しておくと、この数値範囲と作業情報入力画面に入力された数値が作業実施判定手段228によって比較される。
【0137】
また、作業情報Cが「画像」タイプの場合は、例えば想定値欄518Aに、画像比較の対象となる画像(比較画像)のパス等を設定可能である。この場合パスで特定される比較画像と作業情報入力画面において添付された画像とが作業実施判定手段228によって画像比較される。
【0138】
必須欄518Bは、作業情報入力画面における入力を必須とするかどうかを設定する欄であり、例えばチェックマークの入力により選択される。つまり必須欄518Bの入力(チェックマーク)がある場合に、判定情報Dが「有」となる。また、必須欄518Bの入力をした場合であっても想定値欄518Aの入力は任意である。例えば、作業情報Cが「画像」タイプについて必須欄518Bにチェックがあり、想定値欄518Aにチェックがない場合、判定情報Dは「有」となるが判定条件は「(画像の内容によらず)任意の画像の添付が有ること」となる。なお、図示は省略するが例えば作業情報Cのタイプとして3Dスキャンデータ等を取得する「3次元情報」や環境音を録音する「音(マイク)」等があってもよい。
【0139】
図9の入力例では、或る第2階層作業手順情報Bとして、第2階層の作業手順(ステップ)の内容(作業内容)が「高圧器の電源がオフであることを確認する。」であり、対象となる設備番号が高圧器の電源に対応する「20」である。これらは作業者が操作する作業端末装置20の作業情報入力画面(図13(B)参照)に表示される。
【0140】
また、作業情報Cとして「チェックボックス」タイプ、「自由テキスト」タイプ、「画像」タイプが選択されている(使用欄517Aのチェックがある)。この結果、作業情報入力画面には、作業情報Cの入力欄としてチェックボックス、自由テキスト入力欄、画像添付手段(カメラ起動ボタンなど)が表示される。
【0141】
また、判定情報Dとして「チェックボックス」タイプと「画像」タイプが選択され(必須欄518Bのチェックがあり)、「画像」タイプについては想定値欄518Aの入力はない。この結果、作業情報入力画面の入力に対して判定情報Dが付与される。具体的には作業情報入力画面におけるチェックボックスの入力有無と、画像の添付の有無が、作業実施判定手段228の判定条件となる。従って作業情報入力画面においてチェックボックスにチェックマークが付与され、何等かの画像が添付された場合、作業実施判定手段228は、「高圧器の電源がオフであることを確認する。」作業について正当に完了した、と判定する。
【0142】
このように本実施形態によれば、シナリオSの作成段階において、作業の状況(完了)を示す作業情報Cのタイプ(チェックボックスやテキスト、画像等)と第2階層作業手順情報Bを紐づけ、また、作業情報Cの正当性を確認する手段(判定情報D)も同様に紐づけることができる。作業情報Cのタイプが複数準備されているので、それぞれの作業に適した作業情報Cを設定することができる。また、判定情報Dを設定した場合には、作業者はこのシナリオSに基づき作業を実行して作業情報Cを入力することで、作業情報Cの入力の正当性が判定されるため、作業の正確性を高めることができる。
【0143】
また、この例では作業情報欄517にコード生成ボタン517Cが設けられている。コード生成ボタンは、作業が完了したこと示す情報(判定情報欄518に設定されている完了報告値518C)に対応する判定コード(例えば、2次元コード)を生成し、出力するボタンである。コード生成ボタン517Cを選択操作すると、作業支援装置10の判定コード生成手段117により完了報告値518Cに対応する判定コードが生成され、作業支援装置10の出力手段106(例えば印刷装置)から出力される。
【0144】
ユーザ(シナリオSの作成者)は例えばコード生成ボタン517Cを選択操作(クリック、タップ等)して2次元コードを出力し、シナリオS作成者(または作業者その他)が作業前に現場の設備等にその2次元コードを付与(貼り付けなど)しておく。作業者は当該現場で作業を行い、作業が完了したら作業端末装置20の作業情報入力画面において2次元コードを読み込む(2次元コードを入力する)。作業端末装置20の作業実施判定手段228は、作業情報入力画面において入力された2次元コードと、完了報告値518C(シナリオSの第2階層作業手順情報Bとして保持している)を比較し、合致していれば作業が正当に完了したと判定する。この場合、読み込まれる(入力される)2次元コードが作業情報Cとなり、完了報告値518Cが判定情報Dとなる。
【0145】
また例えば、「部品を交換する。」という作業内容の第2階層作業手順情報Bがある場合、交換対象となる部品の固有情報(例えば、型番または型番に対応する値)を完了報告値518Cに設定できる。この場合シナリオS作成者はコード生成ボタン517Cにより2次元コードを作成、出力し、シナリオS作成者(または作業者その他)が作業前に現場の設備等にその2次元コードを付与しておく。作業者は、現場で部品を交換し、作業情報Cとして2次元コードを読み込む。作業実施判定手段228は、作業情報入力画面において入力された2次元コードと、完了報告値518C(この場合、部品の固有情報)を比較し、合致していれば交換作業が正当に完了したと判定する。
【0146】
このように作業情報Cのタイプでの設定に代えて、又はこれに加えて判定コードにより作業情報C及び判定情報Dを設定してもよい。
【0147】
以上説明したように本実施形態の第2階層作業手順情報Bは、第2階層作業手順(ステップ)と、対象となる設備(3次元座標を含む)、およびその作業の完了を示す作業情報C、作業情報Cの正当性を判定する判定情報Dを含む情報である。つまり、本実施形態のシナリオSはこれらを紐付けて保持する情報群である。
【0148】
なお、作業情報欄517のみ入力(選択)し、判定情報欄518(必須欄518B)を入力(選択)しない場合は、その作業情報Cのタイプについて任意の入力が許容されるが、作業実施判定手段228による判定は行わない。例えば、当該任意の入力は作業のメモとして記録される。
【0149】
図10(A)は、作業計画メニューにおいて、第2階層作業手順情報Bの登録が完了した状態を示す画面の例であり、第2階層作業手順情報一覧画面520である。同図(A)は、第1階層作業手順情報Aとして「電源オフ」プロセスが、第2階層作業手順情報B1(手順番号No.1)として「電源がオフであることを確認する」手順が、第2階層作業手順情報B2(手順番号No.2)として「ポンプが動作していないことを確認する」手順がそれぞれ登録されている状態である。
【0150】
それぞれの第2階層作業手順情報欄521は、設備番号ボタン522と作業情報確認欄523を含む。設備番号ボタン522はその操作(クリック、タップ等)により設備番号に対応する設備の位置を、図5(B)に示す3次元情報表示手段115による3次元情報の表示画面により確認可能である。また、作業情報確認欄523は、作業情報欄517の設定状態(作業情報Cのタイプなど)がアイコン表示される。第2階層作業手順情報欄521の操作(クリック、タップ等)で作業手順設定ウィンドウ512が表示されるので、対応する第2階層作業手順情報Bの編集も可能である。
【0151】
これを繰り返し、第1階層作業手順情報A(ここでは「電源オフ」プロセス)について全ての第2階層作業手順情報Bを登録し、シナリオSについて全ての第1階層作業手順情報Aを登録する。
【0152】
図10(B)は作業計画メニューにおいて、第1階層作業手順情報Aの登録が完了した状態を示す画面の例であり、第1階層作業手順情報一覧画面524である。第1階層作業手順情報欄525には、第1階層作業手順情報Aのタイトル(プロセス名)とそのプロセスの実行状態(未実施・実行中・完了)などが表示される。
【0153】
<<シナリオの仮想実施(シミュレーション)>>
作成したシナリオSは、作業支援装置10において仮想空間上でシミュレーションすることができる。作業支援装置10のシミュレーション手段112は、特に3次元形状データを取得している場合は、仮想空間(VR空間)に現場の3次元形状データ(例えば点群データ)と、3次元座標データを原点を合わせた上で重畳して表示手段103に表示し(3次元情報表示手段115が生成した重畳表示を利用してもよい)、更にシナリオSの手順に対応した作業対象(設備など)の位置(自機位置など基準位置からの方向や距離)を示すARオブジェクトを重畳表示する。なお、仮想空間上でのシミュレーション方法については、既知の方法が採用できるが、ここでの詳細な説明は省略する。
【0154】
これにより、現場に赴くことなく、作成したシナリオSに基づき仮想的な作業を行うことができ、シナリオSの承認申請の事前確認や、現場での作業の事前準備などを行うことができる。
【0155】
なお新規のシナリオSの作成時の参考のため、あるいは過去の作業の見直し等を目的として、蓄積されているシナリオSをシミュレーションすることもできる。
【0156】
<<シナリオ承認>>
シナリオSの作成が完了した場合、管理者等、特別な権限を有する者により、シナリオSの承認を行う。
【0157】
図11(A)は、登録されているシナリオSの一覧を表示するシナリオ一覧画面540の表示例である。シナリオ表示欄541には、シナリオSのタイトル、シナリオSの状態と、作業の進捗に関する情報(シナリオS内の第1階層作業手順(プロセス)の終了数/第1階層作業手順(プロセス)の全数)などが表示される。この例では、「高圧器 検査前処理」のシナリオS、「高圧器 検査処理」のシナリオS、「高圧器 検査後処理」のシナリオS、の3つが登録されている。
【0158】
シナリオSの状態は、例えば、シナリオSの作成中であることを示す「計画作成中」、作成したシナリオSの承認を申請し、承認待ちの状態であることを示す「計画承認待」、承認されたことを示す「計画承認済」、シナリオSを実行中であることを示す「実行中」、シナリオSの完了に対して承認を申請し、承認待ちの状態である「完了承認待」、シナリオSの実行(完了)が承認されたことを示す「完了承認済」などである。例えば、「高圧器 検査前処理」のシナリオSは「計画作成中」の状態で、進捗情報は、シナリオS内のステップの全数は3,終了数は0であることを示している。
【0159】
このシナリオ一覧画面540から承認申請を行うシナリオS(ここでは「高圧器 検査前処理」のシナリオS)を選択する。
【0160】
図11(B)はシナリオSの承認メニューにおける承認画面550の表示例である。承認画面550には、この例ではシナリオSの作成に関する承認欄(計画承認欄551)と、シナリオSの実行(完了)に関する承認欄(完了承認欄554)と、申請ボタン555などが設けられている。
【0161】
作成したシナリオSの承認を申請するユーザは申請ボタン555を操作する。これにより計画承認欄551に承認ボタン552と差し戻しボタン553が表示され、「高圧器 検査前処理」のシナリオSは「計画承認待」の状態となる。
【0162】
例えば管理者アカウント(特別な権限を有するユーザのアカウント)でログインした者のみが、この画面の表示および承認操作が可能となる。承認ボタン552の操作により、シナリオSの作成に対する承認が行われる。承認が行われると「高圧器 検査前処理」のシナリオSは「計画承認済」の状態となる。
【0163】
このようにして作成・承認されたシナリオSは、作業支援装置10の記憶手段104に記憶され、また通信手段105および通信回線NWを介してサーバ装置30にアップロードされる。
【0164】
<<作業開始>>
次に、作業対象の現実空間(現場)で作業を行う場合の流れについて、作業端末装置20における画面表示例を参照しつつ説明する。
【0165】
まず、作業者は、作業対象の現実空間(現場)において作業端末装置20にインストールされている端末アプリを起動し、実行するシナリオSを取得する。端末アプリでは、連携する作業支援装置10を設定することにより、作業端末装置20の表示手段203に図11(A)に示すシナリオ一覧画面540(これに相当する画面)を表示可能である。なお、本実施形態ではシナリオS毎にアクセス権を設定しているので、作業支援装置10においても作業端末装置20においても、ユーザにはアクセス権を有しているシナリオSのみが表示される。
【0166】
作業者が対象のシナリオSを選択すると、図12(A)に示すシナリオのダウンロード画面600に遷移する。ダウンロード画面600は、例えばシナリオSのタイトル(ここでは「高圧器 検査前処理」)が表示され、ダウンロードボタン601およびキャンセルボタン602等が設けられる。ダウンロードボタン601を操作すると「高圧器 検査前処理」のシナリオSが作業端末装置20にダウンロードされる。
【0167】
次に、作業者はシナリオSの第1階層作業手順(プロセス)毎に作業担当者の割り当てを行う。作業担当者の割り当ては、第2階層作業手順情報Bの作業情報Cを更新する実行権の取得を意味する。
【0168】
図12(B)は、作業端末装置20にダウンロードしたシナリオS(ここでは「高圧器 検査前処理」)の作業担当者割り当て画面604の一例である。作業担当者割り当て画面604は例えば、シナリオS内の第1階層作業手順情報Aを一覧表示し、作業担当者割り当てを行う第1階層作業手順(プロセス)を選択させるプロセス選択欄605と、選択したプロセス(ここでは「電源オフ」プロセス)についての詳細欄606と、選択したプロセスについて担当する作業担当者入力欄609と、担当割り当てボタン610などを有する。詳細欄606は、プロセス名欄607、第2階層作業手順情報欄608を有する。
【0169】
本実施形態では、作業情報記録手段226が、第1階層作業手順情報A毎に、一の作業者(作業担当者)を割り当て、当該作業担当者に作業情報Cの更新の実行権を与える。そして、或る第1階層作業手順情報A1の作業が作業担当者W1に割り当てられている期間は、他の作業担当者W2は、第1階層作業手順情報A1の作業は作業情報Cの更新が行えないよう、排他制御される。また、実行権を取得した作業担当者W1の情報は、当該シナリオSに記録される。
【0170】
ここでは一例として、「高圧器 検査前処理」というシナリオSに、「電源オフ」プロセス、「開閉確認」プロセス、「メータ確認」プロセスに関する3つの第1階層作業手順情報Aが含まれている場合を例示している。また、「電源オフ」プロセスの作業を行う作業担当者として、作業者W1を割り当てている。これにより作業者W1は、「電源オフ」プロセスの作業の実行権を専有する。この「実行権」は具体的には、「電源オフ」プロセスの第1階層作業手順情報Aに含まれる、2つの第2階層作業手順情報Bの作業(「電源がオフであることを確認する」ステップ、「ポンプが動作していないことを確認する」ステップ)について、それぞれ作業情報Cを入力・更新する権利である。
【0171】
他の作業者W2は、作業者W1が上記2つの第2階層作業手順情報Bについて、作業情報Cの入力・更新を完了するまでは、「電源オフ」プロセスの内容(第2階層作業手順情報B)にアクセスできず、他の第1階層作業手順情報A(「開閉確認」プロセスおよび「メータ確認」プロセス)についてもその内容(第2階層作業手順情報B)にアクセスできない。
【0172】
作業者W1が「電源オフ」プロセスについて実行権を解放すると、他の作業者W2は、「電源オフ」プロセス、「開閉確認」プロセスおよび「メータ確認」プロセスについての実行権の取得が可能となる。実行権は、シナリオSをサーバ装置30にアップロードすることで解放される。シナリオSがサーバにアップロードされると、アカウント権限を有する者は誰でも、シナリオSにアクセス(閲覧、ダウンロード等)を行うことができる。
【0173】
ここで、作業情報Cの更新の実行権を有する作業者は、形式的に一人の者であるが、現場において当該作業者(作業端末装置20の保持者)に、作業端末装置20を保持しない一以上の同行者があってもよい。また、作業情報Cの更新の実行権を有する作業者(作業端末装置20の保持者)に加え、同行者も別の作業端末装置20を保持してもよいが、その場合の同行者については、それぞれの作業端末装置20の作業情報記録手段226の排他制御により保持する作業端末装置20から作業情報Cを更新することはできない。同行者については例えば不図示の同行者欄などに入力することで、同行者をシナリオSに記録できる。
【0174】
実行権の取得は、当該第1階層作業手順情報Aが含まれるシナリオSについてアクセス権がある者(アカウント)に限られる。また、この例では第1階層作業手順情報A毎に実行権を与えているが、第2階層作業手順情報B毎に実行権を与えるようにしてもよい。
【0175】
<<作業開始>>
或る第1階層作業手順情報Aについて実行権を取得した作業者は、当該作業を開始する。作業端末装置20は、第1階層作業手順情報Aに含まれる第2階層作業手順情報Bを順次表示し、作業者に案内する。第2階層作業手順(ステップ)は、リスト形式、あるいはARナビゲーション形式での表示可能であり、作業者はいずれかを選択して第2階層作業手順(ステップ)を実行可能である。
【0176】
図13(A)は、「電源オフ」プロセス第2階層作業手順(ステップ)の実行モード表示方法を選択する実行モード選択画面620である。ここでは、第2階層作業手順情報BをARナビゲーション形式で表示するARナビモードボタン621と、第2階層作業手順情報Bをリスト形式で表示する通常モードボタン622とが設けられている。
【0177】
図13(B)は、通常モードボタン622を選択操作した場合の、リスト形式表示画面623の表示例である。リスト形式表示画面623は図9を参照して説明した「作業情報入力画面」に対応する。通常モードでは第2階層作業手順情報B(ここでは、手順番号1(No.1)の「電源がオフであることを確認する」ステップ、手順番号2(No.2)の「ポンプが動作していないことを確認する」ステップ)がリスト形式で表示される。リスト形式表示画面623は、例えば、第2階層作業手順情報表示欄624と、作業一次停止ボタン625,作業終了ボタン626、カメラ起動ボタン627などを有する。
【0178】
第2階層作業手順情報表示欄624は、例えば設備番号ボタン628と作業情報入力欄630を有する。設備番号ボタン628の操作(クリック、タップ等)により、リスト形式表示画面623が図5(B)に示す3次元情報表示手段115による3次元情報の表示画面に切り替わり、設備番号に対応する設備の位置を確認できる。また、作業情報入力欄630は、作業情報Cの設定内容(図9に示す作業情報設定欄517の設定内容)に応じた入力領域となる。ここでは例えば、手順番号1については、チェックボックス631、画像添付ボタン632、自由テキスト入力欄633が設けられている。手順番号2については、チェックボックス631と画像添付ボタン632が設けられている。
【0179】
カメラ起動ボタン627は、操作により作業端末装置20の撮像手段(カメラ)が起動し、映像や画像を撮影可能となる。撮影した画像は、画像添付ボタン632の操作により第2階層作業手順情報欄624に添付可能である。
【0180】
作業一次停止ボタン625は作業の一時停止時に操作し、作業終了ボタン626は作業終了時に操作するボタンである。
【0181】
作業者(作業担当者)は例えば、例えば手順番号1に則り作業を行う。この場合適宜、設備番号ボタン628の操作によって図5(B)に示す3次元情報の表示画面を表示し、設備の位置を確認する。なお通常モードの場合、設備までのナビゲーションは行われない。そして、「電源がオフであることを確認する」ステップを実行する。手順番号1の作業を終えた作業者は画像を添付するためカメラ起動ボタン627を操作する。これにより作業端末装置20のカメラが起動し、映像や画像を撮影可能となる。設備の外観等を撮影した後は、リスト形式表示画面623に復帰するので、画像添付ボタン632を操作する。これにより手順番号1の第2階層作業手順情報Bに撮影した画像が添付される。その後、作業者はチェックボックス631に作業の終了を示すチェックマークを入れる。例えば、作業情報Cとして、画像(静止画、動画)の撮影および添付が必須の場合、画像の撮影前にはチェックボックス631への入力ができない、もしくは「写真を撮影してください」等のメッセージを表示するようにすると望ましい。
【0182】
図9に示す設定状態の場合、チェックボックス631へのチェックマークの入力(有り)と画像添付(有り)が判定情報Dとして登録されている。作業終了ボタン626を操作すると、作業端末装置20の作業実施判定手段228は判定情報Dと作業情報入力欄630の入力内容を比較し、合致している場合(この場合は、チェックボックス631へのチェックマークの入力と画像添付が有ると判定した場合)、「高圧器の電源がオフであることを確認する。」作業について正当に完了した(合格)と判定する。
【0183】
作業実施判定手段228は、手順番号1の作業について合格判定を出した場合、作業情報Cを受け付けた旨の表示(例えば、「作業情報を受け付けました」などのメッセージ表示)を行う。一方、例えば、チェックボックス631へのチェックマークの入力がない場合などには、作業実施判定手段228は手順番号1の作業について不合格判定とし、警告表示(例えば、「チェックボックスにチェックしてください」などのメッセージ表示など)を行う。
【0184】
ここで、例えば作業者が、手順番号1の第2階層作業手順情報Bについて、判定コード生成手段117が生成した判定情報Dに対応するコード(例えば、2次元コード等)を印刷し、持参している場合は、手順番号1のステップが終了した後、作業端末装置20によって2次元コードを読み込む。2次元コードの読み込みは作業情報入力欄630の入力となる。作業終了ボタン626の操作により、作業実施判定手段228は読み込まれた2次元コードの値と、手順番号1の第2階層作業手順情報Bに設定されている完了報告値(図9参照)を照合し、一致していれば作業が正当であると判定する。
【0185】
作業実施判定手段228が合格判定をすると、作業情報記録手段226が手順番号1の第2階層作業手順情報Bを、作業端末装置20の記憶手段204に記憶する。これにより、作業者の操作する作業端末装置20のローカル環境において(暫定的に)手順番号1の第2階層作業手順情報Bの作業情報Cが更新される。
【0186】
そして、作業者は次の手順(手順番号2の「ポンプが動作していないことを確認する」ステップ)について第2階層作業手順情報Bに基づき同様の作業を繰り返す。
【0187】
なお、第2階層作業手順(ステップ)は、手順番号の昇順に行うことを必須(手順番号1を正常に完了しないと手順番号2に進めない)としてもよいし、任意の順番で実行可能としてもよい(現場の状況に応じて適宜選択する)。
【0188】
このように設備(設備番号)と、その設備に対する手順とが1対1で紐づき、リスト形式で表示されるので、作業者はこれに従い作業をすることで漏れなく正確な作業が可能となる。
【0189】
図14図16は、図13(A)に示す実行モード選択画面620においてARナビモードボタン621を選択操作した場合の表示手段203の表示例である。作業端末装置20は、位置推定手段221により自機の位置を推定可能であり、ARナビモードでは、現場のライブビュー映像と、シナリオS(第2階層作業手順情報B)に登録されている設備に対応する(設備の位置を示す)マーク画像(ARオブジェクト)とを重畳表示する。ここで、現場の作業端末装置20が撮影するライブビュー映像の内部に生成される仮想空間(AR空間)1と、マーク画像(3次元座標データ取得アプリケーションによってマーク画像を付与した3次元座標データ、又はこれと点群データを重ねたデータ)を取得した際の仮想空間2は、原則、一致していない。このため、仮想空間1,2の仮想3次元座標軸の原点合わせ(位置合わせ)を行う必要がある。
【0190】
仮想空間1,2の仮想3次元座標軸の原点合わせは例えば以下の手順で行う。まず仮想空間2上の点を指定し、基準点1と2を決定する。基準点1は、仮想空間1と仮想空間2に共通の仮想3次元座標軸の原点(始点)で、基準点2は始点からの方向と大きさ(空間ベクトル)ベクトルを特定するものである。実際には、仮想空間1で現場に設けたARマーカ1を読み取る。これが基準点1に相当する。次に仮想空間2で現場に設けた別のARマーカ2を読み取る。これが基準点2に相当する。
【0191】
本実施形態では、一例として上記の原点合わせを、現場に設けられた2次元コードと、2つのARマーカを用いて行う。本実施形態の作業支援システム1は、仮想空間2に、基準点1と基準点2の組(基準点ペア)を複数設定可能である。例えば基準点ペアAは1階入り口ドアの両端、基準点ペアBは2階入り口ドアの両端などである。2次元コードはこれらの基準点ペアA,Bを識別可能な固有値が埋め込まれる。これにより、例えば2階から作業を開始する場合は2階に設置された2次元コードを読み込むことで、これから読み込むARマーカは2階入り口ドアの座標を示していることを特定することができ、1階に戻ることなく作業を開始することができる。
【0192】
具体的に、ARナビモードボタン621を選択操作すると、図14(A)に示すように表示手段203がライブビュー映像LVの撮影モードに切り替わり、表示領域に2次元コード読み取り枠635が表示される。作業者は、図14(B)に示すように、現場に配置された基準点を識別する2次元コード636に2次元コード読み取り枠635を合わせ、これを読み込む。2次元コード636が読み取れた場合、図14(C)に示すように表示領域の中央にガイド637が表示されるので、作業者は現場に配置された第1ARマーカ638の中心にガイド637を合わせる。第1ARマーカ638の中心とガイド637が一致すると、図15(A)に示すように仮想3次元座標軸を示すARオブジェクト639が表示される。引き続き表示領域の中央にガイド637が表示されるので、作業者は現場に配置された第2ARマーカ640の中心にガイド637を合わせる。第2ARマーカ640の中心とガイド637が一致すると、図15(B)に示すように基準線を示すARオブジェクト641が表示される。その後決定ボタン642を選択操作すると、仮想空間1と仮想空間2の原点合わせが完了し、図13(B)に示すリスト形式表示画面623が表示される。
【0193】
作業者は、リスト形式表示画面623から実行する作業(例えば、手順番号1のステップ)を選択する(第2階層作業手順情報表示欄624のタップ等の選択操作を行う)。これにより、図16に示すようにARナビゲーションが起動し、表示手段203がライブビュー映像の撮影モードに切り替わるとともに、現在の作業者の位置(実際の位置)から、選択した第2階層作業手順情報Bに含まれる設備までの距離や経路が、マーク画像やARオブジェクトX(この例では矢印、設備番号表示、距離表示等)によりナビゲーションされる。なお、図16は参考画像であり、図12(B)に示す「開閉確認」ステップの第2階層作業手順情報Bに基づき、例えば設備番号「21」の設備(バルブ)までのARナビゲーションの様子を示している。
【0194】
作業者は対象となる設備(図16の例ではバルブ(設備番号「21」)に十分に近づいた場合、画面切り替えボタン650を操作してリスト形式表示画面623に切り替え、通常モードと同様に第2階層作業手順情報Bの作業を実行する。なお、ARナビゲーション中において画面切り替えボタン650は常時表示してもよいし、例えば対象の設備に近接した場合に表示するようにしてもよい。
【0195】
作業が終了した場合の動作は、通常モードと同様である。すなわち作業情報Cの入力(例えばチェックボックス631への入力や画像添付など)を行い、作業を終了する。その後、判定情報Dが設定されている場合は作業実施判定手段228による判定が行われ、合格判定の場合は作業情報記録手段226が手順番号1の第2階層作業手順情報Bを、作業端末装置20の記憶手段204に記憶する。
【0196】
次の作業手順(例えば手順番号2)に進む場合は、リスト形式表示画面623から実行する作業(例えば、手順番号2のステップ)を選択する。これにより再び、ARナビゲーションが起動し、対応する設備までの案内が行われる。以下同様に処理を繰り返す。
【0197】
ARナビモード、通常モードのいずれであっても、作業情報記録手段226による第2階層作業手順情報Bの記憶およびこれによる作業情報Cの更新は、作業端末装置20のローカル環境における更新(暫定的な更新)に留まる。つまり、作業端末装置20において、例えば、「高圧器 検査前処理」のシナリオSが記憶手段204に記憶された場合、このタイミングでサーバ装置30および作業支援装置10が保持する「高圧器 検査前処理」のシナリオSは更新されず、これらは作業端末装置20が保持するシナリオSの一世代前のシナリオSを保持することになる。
【0198】
作業者は、予定の作業が終了したら、端末アプリが表示する所定のアップロードボタンを操作し、シナリオS(例えば、「高圧器 検査前処理」のシナリオS)をサーバ装置30にアップロードする。つまりサーバ装置30が保持する同一名のシナリオS(例えば、「高圧器 検査前処理」のシナリオS)はリアルタイムで更新されず、作業者による手動のアップロードにより更新される。
【0199】
またこの手動のアップロードにより、作業者W1による作業情報Cの更新の実行権の専有が解放される。つまり図12(B)を参照して、作業者W1が例えば、「高圧器 検査前処理」のシナリオSに含まれる、「電源オフ」プロセスについて(それに含まれる第2階層作業手順情報Bについて)作業情報Cの更新の実行権を専有していた場合(作業担当者となっていた場合)これが解放される。そして他の作業者W2は、「電源オフ」プロセスおよび他のプロセス(例えば、「開閉確認」プロセスや「メータ確認」プロセス)について(それに含まれる第2階層作業手順情報Bについて)、作業情報Cの更新の実行権を取得できる。
【0200】
なお、シナリオSの記憶手段204への記憶、およびサーバ装置30へのアップロードは、例えば、作業情報Cの更新の実行権を有している1つの第1階層作業手順情報Aの作業(例えば、「電源オフ」プロセス)が全て終了した時点であるが、当該プロセスの作業が完了していなくても、また例えば当該プロセス内の或る第2階層作業手順情報Bに設定されている作業(例えば手順番号2の「ポンプが動作していないことを確認する」ステップ)の途中であっても実行可能である。
【0201】
シナリオSをサーバ装置30にアップロードした時点で、作業情報Cの更新の実行権は解放され(専有状態が解除され)、共有されるシナリオSが最新版に更新される。また、シナリオSをサーバ装置30にアップロードした時点で、作業支援装置10または他の作業端末装置20は、最新のシナリオSにアクセス(例えば作業の進捗状況の参照、ダウンロード等)が可能となる。本実施形態では現場から離れた遠隔地であっても、作業の進捗状況の確認が行えるため、工程管理における利便性が高まる。
【0202】
なお、仮想空間1,2の原点合わせの方法は、上記した2次元コードとARマーカを用いる方法、およびARマーカを用いる方法に限らない。例えば、現場の作業端末装置20が撮影するライブビュー映像の内部に生成される仮想空間(AR空間)1内で2点を指定する方法(3次元座標データ取得アプリケーションにより指定可能)や、予め取得した現場の3次元形状データ(点群データ)と、現場の作業端末装置20が撮影するライブビュー映像により取得した形状情報を照合させる方法など、異なる2つの仮想空間1,2の位置合わせ(原点を一致させる)を行うあらゆる方法が採用できる。
【0203】
<<作業完了の承認>>
作業端末装置20がシナリオSをサーバ装置30にアップロードした場合、作業者は管理者等に対し、作業完了について承認申請をすることができる。本実施形態では、作業完了についての管理者等による承認は、第1階層作業手順情報A毎の完了承認(プロセス完了承認)と、シナリオSの完了承認(シナリオ完了承認)の2段階で行われる。
【0204】
つまり作業を終えた作業者はまず、作業端末装置20の承認画面(例えば、図11(B)と同様の画面)から管理者等に対し、プロセス完了承認の申請を行う。図17(A)は、作業支援装置10側でプロセス完了承認を行う場合の、承認対象プロセス一覧画面660の表示例である。承認対象プロセス一覧画面660は、承認対象プロセス欄661を有し、シナリオS単位で承認対象プロセスに対応する第1階層作業手順情報Aを表示する。承認対象プロセス欄661には、承認の申請状態(例えば、未申請、承認待ち、承認済など)が表示される。ここでは、「高圧器 検査前処理」のシナリオSの全てのプロセスに対して承認申請が行われている。該当するプロセスを選択すると、プロセス完了承認画面に遷移する。
【0205】
図17(B)は、プロセス完了承認画面665の表示例である。プロセス完了承認画面665は例えば、第1階層作業手順情報Aが表示されるプロセス欄666と、第2階層作業手順情報Bが表示されるステップ欄667を有する。ステップ欄667は、設備番号ボタン668や作業情報確認欄669を有する。設備番号ボタン668の選択操作によりステップの対象となる設備を表示可能であり(図5(B)),作業情報確認欄669の選択操作により最新の作業情報Cを確認できる。管理者等はこれらを確認し、問題がなければプロセス完了承認ボタン670を操作する。これによりプロセス完了承認が行われる。
【0206】
そして、1つのシナリオSに含まれる全てのプロセスについてプロセス完了承認が行われた場合、管理者等は図11(B)に示す承認画面550において、完了承認欄554の完了承認ボタン556を操作し、当該シナリオSの作業完了を承認する。完了承認ボタン556は例えば、プロセス完了承認が行われた場合に表示されるが、常時表示されてもよい。
【0207】
<<作業情報分析およびシナリオ修正>>
作業支援装置10の作業情報分析手段113は、適宜、作業者によって作業情報Cが更新されたシナリオSを分析する。シナリオ修正手段114は、その分析結果に基づき、シナリオSの内容を自動で修正する。
【0208】
例えば、第2階層作業手順(ステップ)の実行順が限定されていない(任意の順での実行が許容されている)シナリオSの場合、作業者が第2階層作業手順情報B毎に入力する作業情報Cの入力時刻を分析することで、作業者が現場で移動した経路を把握することができる。その結果、例えば、同じ第1階層作業手順(プロセス)を行う複数人(複数回)の移動の履歴から、原則的に決めている第2階層作業手順(ステップ)が効率的でない等の判断が可能となる場合がある。
【0209】
このような場合、シナリオ修正手段114は、自動で、当該第1階層作業手順情報Aに含まれる第2階層作業手順情報Bの手順番号を、効率の良い順番に修正したり、不要と思われる設備についての作業を削除するなど、シナリオSの修正(作業ルートの変更)を行う。
【0210】
以上説明したように、本実施形態の作業支援方法は、作業支援装置10と作業端末装置20を用いて現実空間における作業者による所定の作業を支援する方法であり、作業支援装置10が、作業対象と、現実空間における該作業対象の3次元座標を紐づけた作業対象マスタWMを作成する工程と、作業支援装置10が、作業対象に対する作業の手順と、該作業対象の3次元座標とを紐付けた情報群であるシナリオSを作成する工程と、現実空間における作業者の操作に応じて作業端末装置20がシナリオSを取得する工程と、作業端末装置20がシナリオSに含まれる第1階層作業手順情報Aと第2階層作業手順情報Bを表示手段203に表示する工程と、作業者によって入力される情報に応じて、作業端末装置20が、第2階層作業手順情報Bのそれぞれに対応する作業情報Cを更新する工程と、作業端末装置20が、作業支援装置10に作業情報Cが更新されたシナリオSを送信する工程と、を有する。
【0211】
そして、本実施形態の作業支援プログラムは、作業支援装置10と作業端末装置20に上記方法を実現させるプログラムであり、作業支援Webアプリと端末アプリを含むプログラムである(図3参照)。
【0212】
本実施形態によれば、作業(例えば保守作業)の実行に際し、作業対象(例えば設備)の現実空間での位置に対応する仮想3次元位置情報と、作業手順とを容易に紐付けすることができるため、作業における設備の見逃しを防ぐことができる。また、仮想3次元位置情報と作業手順の紐付けに加え、作業の完了の状態を客観的に判定する手段を有するため、誤った作業手順の実行や、作業の完了判断についての主観的なミスを回避できる。この結果、漏れや抜けの無い作業(保守作業)が可能となり、作業対象(設備)が正常な状態に保たれることで、ダウンタイムや不良品を防ぐことができる。
【0213】
[変形例]
以下、本発明に適用可能な変形例について説明する。
<アカウントおよび作業情報記録手段の排他制御>
上記の実施形態では、作業情報記録手段226は、同じ(一つの)シナリオSについて、第1階層作業手順情報A毎に、一人の作業者に作業情報Cを更新する実行権を与え、或る第1階層作業手順情報A(A1)に対応するプロセスが実行中(作業情報Cの更新の実行権を専有中)は、同一シナリオS内の他の第1階層作業手順情報A(A2)に対応するプロセスの実行(作業情報Cの更新)は不可とする排他制御を行う場合について説明した。しかしこれに限らず、例えば一つのシナリオS内に複数の第1階層作業手順情報Aが含まれる場合、当該複数の第1階層作業手順情報A間にあっては並列的に対応するプロセス(作業情報Cの更新)を許容するようにしてもよい。
【0214】
また、例えば、最新のシナリオS(作業情報C)のサーバ装置30へのアップロードは、作業者による手動操作で行うのではなく、作業端末装置20のローカル環境でシナリオS(作業情報C)の更新がされた場合にリアルタイムでサーバ装置30にアップロードし、共有情報としてのシナリオSを更新するようにしてもよい。しかしながら、その場合作業情報Cを更新する実行権の解放・取得が頻繁に発生するため、現場によっては作業情報Cを更新する実行権の解放にはある程度のタイムラグを確保する方が望ましい場合がある。また、地下など電波の届かない場所ではリアルタイムの作業情報Cの更新が困難となる場合もある。従って、特に作業情報Cを更新する実行権の取得と解放のタイミングについては、現場の状況に応じて適宜選択されることが望ましい。
【0215】
例えば、シナリオSがサーバ装置30にアップロードされない限り、作業情報Cの更新の実行権を有する作業者(作業担当者)以外の者はシナリオSの内容が確認できないとなると、管理者や、後続の作業を行う作業者にとって作業の進捗状況がブラックボックスとなり、スケジュール管理が困難になる。このような場合は、特に通信環境が整っていることを前提として、例えば図12(B)に示す担当者割り当て画面604等に、作業情報Cの更新の実行権の取得ボタンおよび実行権の解放ボタンなどを設け、これらのボタン操作に応じて実行権の取得、解放を行うようにしてもよい。この場合、実行権の有無とは別に作業情報Cの更新の情報(暫定の更新情報)はリアルタイムでサーバ装置30にアップロードする。或る作業者W1が作業情報Cの更新の実行権を有している期間、管理者、および実行権を有さない他の作業者W2は、当該シナリオS(第2階層作業手順情報B)の更新は行えないが、閲覧や承認は可能となりブラックボックス化は解消する。そして実行権の解放ボタンが操作されると、共有情報となるシナリオSが最新の状態に更新される。
【0216】
またこの場合、作業情報Cの更新の実行権の解放ボタンが操作された場合に、特に後続の作業者に向けて、実行権の解放を通知するようにしてもよい。
【0217】
また、通信環境の状態に応じて、シナリオSのアップロードのタイミング(即時に行うか否か)を切り替えるようにしてもよい。
【0218】
<作業情報の入力と判定>
例えば、位置推定手段221により作業端末装置20が自機の位置を推定し、シナリオS(第2階層作業手順情報B)に設定された設備の付近にいると推定された場合、作業実施判定手段228は、自動で、当該第2階層作業手順情報Bの作業情報Cを入力(例えば、チェックリスト欄にチェックマークを入力)するようにしてもよい。また、作業実施判定手段228は、画像処理によって作業者が撮影しているライブビュー映像に対象の設備が写っていること、更にはその設備の状態(例えば、設備のメータの目盛りが想定値欄516Fの値と同等と判断できるか、等を判定し、第2階層作業手順情報Bの作業が正当に完了していると判定した場合には、当該第2階層作業手順情報Bの作業情報入力欄630(図13(B))への入力(例えば、チェックボックス631のチェックマーク入力や、撮影した画像の添付など)を実行してもよい。
【0219】
また、位置推定手段221により自機の位置を推定し、作業対象(設備)の近傍(例えば1m以内など)に移動しない限り、作業情報入力欄630への入力の入力ができないようにしてもよい。
【0220】
<作業対象リストおよびシナリオ>
作業対象リストおよびシナリオSは、作業の対象領域である現場から離れた場所で作成するものでなく、現場で作成するものであってもよい。例えば、現場でシナリオSを作成しながら、作業対象(設備)については、3次元座標データ取得アプリケーションにより、現場のライブビュー映像を表示しながら設備の位置にマーク画像を付与する。これにより設備の実位置に対応した仮想空間における設備の3次元座標を特定できる。
【0221】
<その他の構成>
本実施形態の作業支援プログラムは、ロボットやドローンにも適用できる。
【0222】
また、作業の実施を記録、照明する作業情報Cは、画像(静止画、動画)に限らず、例えば、作業端末装置20の各種センサ211により取得する可能なデータ、または作業端末装置20と連携する機器(例えば、照度温度計など)から取得可能なデータ(例えば、照度、温度、音、振動、(瞬間)流量など)であってもよい。
【0223】
また、例えば作業者にモーションキャプチャを携帯させるなどし、作業者の実際の姿勢、および/または作業端末装置20の向きや姿勢が作業(第2階層作業)で想定される作業者の姿勢(想定値)と大きく異なっている場合は、作業実施判定手段228等により正しい作業ができていないと判定し、警告を表示したり作業情報Cの入力を受け付けないようにしてもよい。
【0224】
また、作業マニュアルについて例えば改訂や新規追加の場合などは特に、作業前に表示手段203に作業マニュアルを表示し、それを最後まで読んだか否かを作業実施判定手段228等により判定し、最後まで読んでいない場合は警告を出す(作業情報Cの入力を不可とする)ようにしてもよい。
【0225】
また、特に作業端末装置20については、手動の操作に加えて(または代えて)、音声認識技術により操作や記録を行うようにしてもよい。
【0226】
また、作業の実施状況をARオブジェクトにより作業端末装置20の表示手段203にリアルタイムで表示し、複数人(作業者と同行者)により同時に作業を行うようにしてもよい。
【0227】
また、位置推定手段221により推定した自機の位置情報に基づき、シナリオSによって設定されている作業ルートを外れた場合に、作業者に対し表示や音声等で警告を報知してもよい。
【0228】
また、作業実施判定手段228は、例えば、位置推定手段221により推定した自機の位置情報に基づき、作業の対象となる設備が正しいか否かを判定してもよい。また、特に作業情報Cが設備の数値(メータや目盛りなど)である場合には、入力された作業情報Cが、(設備としての)各種規定に適合しているか否かを判定してもよい。また、ライブビュー映像と3次元形状データの特徴照合により、設備を識別してもよい。
【0229】
また、シナリオ作成手段111は、BIMプロパティから作業情報Cや判定情報Dを自動生成してもよい。また、過去のシナリオSや、作業中の作業情報Cに基づき、実行中のシナリオSとは異なる対応(緊急対応)が必要と判断した場合は新たなシナリオSを自動生成するようにしてもよい。また、前回の作業(例えば点検など)からの経過日数に基づき、次回の作業を推定し、シナリオSを自動生成するようにしてもよい。
【0230】
また、作業情報分析手段113は、例えば、過去のシナリオS(入力された作業情報)に基づき、作業者の姿勢や位置を算出することにより、作業時の作業者の位置や姿勢を最適化してもよい。また、作業時間の分析からボトルネックを抽出し、問題のある作業方法やルートを解析してもよい。
【0231】
本実施形態の作業支援装置10および作業端末装置20が取得、生成した情報はいずれも、他の作業端末装置20や他の作業端末装置20、それ以外の他の装置(例えば、サーバ装置や他のPC、他のタブレット端末など)と共用可能である。
【0232】
本実施形態の作業支援装置10は単一の装置で構成されるものに限らず、作業支援装置10を構成する手段が複数の装置に分散されるものであってもよい。
【0233】
また、本実施形態の作業端末装置20は単一の装置で構成されるものに限らず、作業端末装置20を構成する手段が複数の装置に分散されるものであってもよい。
ようにしてもよい。
【0234】
上記の実施形態では、3次元座標データや3次元形状データは、作業端末装置20の3次元情報取得手段223によって取得する場合を例に説明したが、これに限らない。すなわち、作業支援装置10は、作業端末装置20とは別の装置によって取得した3次元座標データや3次元形状データに基づき、シナリオSを生成し、および/または仮想作業をシミュレーションするものであってもよい。
【0235】
また上記の実施形態では、作業端末装置20がタブレット端末型の装置である場合を例に説明したが、これに限らず、例えば、ワイヤレスで頭部に装着するヘッドマウントディスプレイ型(あるいは眼鏡型)の装置(眼鏡型のARグラスや、複合現実(MR)プラットフォーム用デバイス(例えば、ホログラフィックコンピューティングを実現するヘッドマウントディスプレイ型デバイス)など)であってもよい。
【0236】
また、以上説明した、作業端末装置20および作業支援システム1を構成する各手段について、ハードウェア資源として説明した手段の一部または全てを、同等の機能を実現するソフトウェア資源に置き換えてもよい。また、作業端末装置20および作業支援システム1を構成する各手段について、ソフトウェア資源として説明した手段の一部または全てを、同等の機能を実現するハードウェア資源に置き換えてもよい。
【0237】
また、上記の実施形態では、仮想視聴覚処理手段222がAR処理手段である場合を例に説明するが、仮想視聴覚処理手段222は例えば、仮想現実(Virtual Reality:VR)を実現する仮想現実(VR)処理手段(VRプラットフォーム)や、複合現実(Mixed Reality:MR)を実現する複合現実(MR)処理手段(MRプラットフォーム)などであってもよい。
【0238】
また、本発明の作業支援装置、作業支援システム、作業支援方法および作業支援プログラムは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0239】
1 作業支援システム
10 作業支援装置
20 作業端末装置(タブレット端末)
30 サーバ装置
35 クラウドサーバ
101 制御手段
102 入力手段
103 表示手段(ディスプレイ)
104 記憶手段
105 通信手段
106 出力手段
110 作業対象マスタ作成手段
111 シナリオ作成手段
112 シミュレーション手段
113 作業情報分析手段
114 シナリオ修正手段
115 3次元情報表示手段
116 承認手段
117 判定コード生成手段
20 作業端末装置
201 制御手段
202 入力手段
203 表示手段(ディスプレイ)
204 記憶手段
205 通信手段
206 出力手段
207 撮像手段
208 3次元形状データ取得手段
210 レンズ
211 各種センサ
221 位置推定手段
222 仮想視聴覚処理手段
223 3次元情報取得手段
224 3次元座標データ取得手段
226 作業情報記録手段
227 ナビゲーション手段
228 作業実施判定手段
S シナリオ
図1
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図3
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