(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143130
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】基板搬送機構の動作判定方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055644
(22)【出願日】2023-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 拓也
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA01
5F131BA19
5F131BA32
5F131DB03
5F131DB54
5F131DB76
5F131DD03
5F131DD33
5F131DD43
5F131DD76
(57)【要約】
【課題】基板搬送機構の動作を早期に判定可能な基板搬送機構の動作判定方法を提供する。
【解決手段】本発明は、基板W1、W2を搬送する基板搬送機構1の動作を判定する方法であって、基板搬送機構の基板を保持する基板保持部12の位置データを取得するためのセンサ2a~2dを配置するセンサ配置工程と、予め決められた所定期間よりも短い評価期間において、センサ配置工程で配置したセンサによって位置データを取得するデータ取得工程と、データ取得工程で取得した評価期間における位置データに基づき、基板搬送機構の動作を判定するための指標値を算出する指標値算出工程と、指標値算出工程で算出した指標値を、予め決められた基準指標と比較する比較工程と、データ取得工程、指標値算出工程及び比較工程を、所定期間が経過するまで繰り返し実行する繰り返し工程と、繰り返し工程において、比較工程で指標値が基準指標を超えない場合、基板搬送機構の動作が合格であると判定する判定工程と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する基板搬送機構の動作を判定する方法であって、
前記基板搬送機構の前記基板を保持する基板保持部の位置データを取得するためのセンサを配置するセンサ配置工程と、
予め決められた所定期間よりも短い評価期間において、前記センサ配置工程で配置した前記センサによって前記位置データを取得するデータ取得工程と、
前記データ取得工程で取得した前記評価期間における前記位置データに基づき、前記基板搬送機構の動作を判定するための指標値を算出する指標値算出工程と、
前記指標値算出工程で算出した前記指標値を、予め決められた基準指標と比較する比較工程と、
前記データ取得工程、前記指標値算出工程及び前記比較工程を、前記所定期間が経過するまで繰り返し実行する繰り返し工程と、
前記繰り返し工程において、前記比較工程で前記指標値が前記基準指標を超えない場合、前記基板搬送機構の動作が合格であると判定する判定工程と、
を有する基板搬送機構の動作判定方法。
【請求項2】
前記比較工程で前記指標値が前記基準指標を超えた場合、前記基板搬送機構を調整し、前記繰り返し工程では、前記基板搬送機構を調整した後、前記所定期間が経過するまで、前記データ取得工程、前記指標値算出工程及び前記比較工程を繰り返し実行する、
請求項1に記載の基板搬送機構の動作判定方法。
【請求項3】
前記指標値算出工程で算出する前記指標値が、前記評価期間における前記位置データの変動を表す指標値、又は、前記評価期間における前記位置データから予測される前記評価期間経過後の予測指標値である、
請求項1又は2に記載の基板搬送機構の動作判定方法。
【請求項4】
前記予測指標値は、機械学習によって生成される学習モデルを用いて予測される、
請求項3に記載の基板搬送機構の動作判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を搬送する基板搬送機構の動作を判定する方法に関する。特に、本発明は、基板搬送機構の動作を早期に判定可能な基板搬送機構の動作判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載のように、基板にエッチングや成膜等の処理を施すためのチャンバに基板を搬送する基板搬送機構が知られている。
図1は、基板搬送機構の一例を模式的に説明する平面図である。
図1(a)は基板搬送機構で基板を保持していない状態を、
図1(b)は基板搬送機構で基板を保持している状態を示す。
図1において、X方向及びY方向は互いに直交する水平方向を意味し、Z方向は鉛直方向を意味する。後述の
図2についても同様である。
図1に示す基板搬送機構1は、真空環境と大気環境とに切り替え可能な気密搬送室Aと、気密搬送室Aにゲートバルブ(図示せず)を介してX方向及びY方向にそれぞれ連結されたチャンバC1、C2との間で、基板W1、W2を搬送する(気密搬送室A及びチャンバC1、C2が大気環境下のときに搬送する場合を含む。以下、同様)機構である。
図1(a)に示すように、基板搬送機構1は、Z方向に沿った回動軸11周りに回動可能であり、回動軸11を挟んで両端部にそれぞれ位置する2つの基板保持部12を具備する。また、基板搬送機構1は、気密搬送室Aと、チャンバC1、C2との連結方向(すなわち、X方向及びY方向)に進退動可能である。
【0003】
従来、
図1に示すような基板搬送機構1が正常に動作するか否かを予め判定するため、チャンバC1、C2で実際に基板に処理を施す前に、いわゆる慣らし運転が行われている。
図2は、
図1に示す基板搬送機構1の慣らし運転の一例を概略的に説明する平面図である。
図3は、慣らし運転によって
図1に示す基板搬送機構1の動作を判定する従来方法の概略手順を説明するフロー図である。
以下、
図2及び
図3を参照して、従来の基板搬送機構1の動作判定方法について説明する。
【0004】
最初に、
図2を参照して、慣らし運転における基板搬送機構1の動作について説明する。なお、チャンバC1、C2と気密搬送室Aとの間のゲートバルブ(図示せず)は、チャンバC1、C2で実際に基板W1、W2に処理を施す際には、基板W1、W2の搬送時に開閉動作するが、慣らし運転の際には、常時開いた状態(或いは、ゲートバルブを外した状態)で基板W1、W2が搬送される。また、慣らし運転の際には、気密搬送室A及び各チャンバC1、C2が大気環境下とされる。さらに、慣らし運転の際には、基板W1、W2は、基板搬送機構1の基板保持部12に保持されたままの状態であり、チャンバC1、C2で実際に基板W1、W2に処理を施す場合と異なり、基板保持部12からチャンバC1、C2内(チャンバC1、C2が具備する図示しない基板載置台)への基板W1、W2の受け渡しや、処理後の基板W1、W2のチャンバC1、C2内(基板載置台)から基板保持部12への基板W1、W2の受け渡しは行われない。
図2(a)に示すように、気密搬送室A内に位置する基板搬送機構1の基板保持部12に基板W1、W2を保持させる(載置する)。この際、慣らし運転の場合には、基板保持部12に対して基板W1、W2が動かないように、好ましくは、粘着テープや吸着等で基板W1、W2を基板保持部12に固定する。次に、
図2(b)に示すように、基板搬送機構1をチャンバC1に向けてX方向に進動させ、基板W1をチャンバC1内に位置させる。次に、
図2(c)に示すように、基板W1が気密搬送室A内に位置するまで基板搬送機構1をチャンバC1から退動させた後、
図2(d)に示すように、基板W1がチャンバC2に対向するまで、基板搬送機構1を時計回りに90°(又は、反時計回りに270°)回動させる。次に、
図2(e)に示すように、基板搬送機構1をチャンバC2に向けてY方向に進動させ、基板W1をチャンバC2内に位置させる。次に、
図2(f)に示すように、基板W1が気密搬送室A内に位置するまで基板搬送機構1をチャンバC2から退動させた後、
図2(g)に示すように、基板W2がチャンバC2に対向するまで、基板搬送機構1を時計回りに180°(又は、反時計回りに180°)回動させる。次に、
図2(h)に示すように、基板搬送機構1をチャンバC2に向けてY方向に進動させ、基板W2をチャンバC2内に位置させる。次に、
図2(i)に示すように、基板W2が気密搬送室A内に位置するまで基板搬送機構1をチャンバC2から退動させた後、再び
図2(a)に示すように、基板W1がチャンバC1に対向するまで、基板搬送機構1を時計回りに90°(又は、反時計回りに270°)回動させる。慣らし運転では、以上の動作が予め決められた所定期間だけ繰り返し実行される。
【0005】
次に、
図3も参照して、従来の基板搬送機構1の動作判定方法について説明する。
図3に示すように、従来の動作判定方法では、最初に、基板搬送機構1の基板保持部12の位置データを取得するためのセンサを配置する(
図3のステップS1’)。
図2に示す例では、チャンバC1内にセンサ2a、2bを配置し、チャンバC2内にセンサ2c、2dを配置している。チャンバC1、C2で実際に基板に処理を施す際には、センサ2a~2dがチャンバC1、C2内での基板W1、W2の処理に支障を生じるおそれがあるため、慣らし運転を行うときにのみセンサ2a~2dが配置される。
なお、基板搬送機構1に基板保持部12の位置データを取得するためのセンサを取り付けることも考えられるが、基板搬送機構1に常時センサを取り付けると、基板搬送機構1の製造コストが増加したり、センサの重量分だけ基板搬送機構1の負荷が高まることで基板搬送機構1の動作を精度良く判定できないおそれがある。慣らし運転を行うときにのみ、基板搬送機構1にセンサを取り付ける場合であっても、後者の問題が生じる。このため、基板搬送機構1ではなく、前述のようにチャンバC1、C2内に、或いは、気密搬送室A内に、基板保持部12の位置データを取得するためのセンサを配置することが好ましい。また、例えば、チャンバC1、C2の代わりに、慣らし運転専用のダミーチャンバ(センサ2a~2dが配置されたダミーチャンバ)を気密搬送室Aに連結して、慣らし運転を行ってもよい。
【0006】
センサ2a~2dとしては、必ずしもこれに限るものではないが、例えば、投光器と、投光器に対してZ方向に対向配置された受光器と、を備えた光学式のセンサが用いられる。具体的には、センサ2a~2dとして、投光器が線状のレーザ光(位置の測定精度を高める上では、好ましくは多波長レーザ光)を投光し、受光器がCCD等の光電素子を直線状に配列したラインセンサであり、投光器と受光器との間に位置する測定対象物が、投光器から投光されたレーザ光を遮るときの測定対象物の境界(測定対象物に遮られずに透過するレーザ光と、測定対象物に遮られて透過しないレーザ光との境界に相当)の位置(測定対象物のエッジ位置)を受光器で検出するように構成されたセンサが用いられる。センサ2a、2cは、X方向に延びる線状のレーザ光を投光することで、測定対象物のX方向のエッジ位置を検出可能であり、センサ2b、2dは、Y方向に延びる線状のレーザ光を投光することで、測定対象物のY方向のエッジ位置を検出可能である。
図2に示す例では、
図2(b)に示す状態で、センサ2aの投光器が
図2の紙面手前側に配置され、基板W1を挟んでセンサ2aの受光器が
図2の紙面奥側に配置されており、投光器から投光されたレーザ光の一部が基板W1で遮蔽されることで、基板W1のX方向のエッジ位置が検出される。同様に、センサ2bにより基板W1のY方向のエッジ位置が検出される。また、
図2(e)に示す状態で、センサ2cにより基板W1のX方向のエッジ位置が検出され、センサ2dにより基板W1のY方向のエッジ位置が検出される。さらに、
図2(h)に示す状態で、センサ2cにより基板W2のX方向のエッジ位置が検出され、センサ2dにより基板W2のY方向のエッジ位置が検出される。なお、基板W1、W2のエッジ位置の検出は、各搬送位置(
図2(b)、
図2(e)及び
図2(h))において、基板搬送機構1が十分に静止した(つまり、基板W1、W2が十分に静止した)タイミングで行っている。
以上のように、センサ2a~2dは、直接的には基板W1又はW2のエッジ位置を検出するが、基板W1、W2は基板保持部12に固定されているため、間接的に基板保持部12の位置データを取得することになる。なお、
図1(a)に示すように、基板保持部12には、センサ2a~2dの投光器から投光されたレーザ光が、基板W1、W2のエッジ位置に到達するまで、基板W1、W2のエッジ位置よりも外側(基板W1、W2の中心から見て径方向外側)に位置する基板保持部2の部位で遮蔽されずに透過するように、スリット12aが設けられており、これにより、基板W1又はW2のエッジ位置を検出可能である。
【0007】
以上のように、従来の動作判定方法では、センサ2a~2dを用いて、基板保持部12の位置データを逐次取得する(
図3のステップS2’)。具体的には、
図2(b)、
図2(e)及び
図2(h)に示す状態で、基板保持部12の位置データを取得する。
従来の動作判定方法では、
図2(a)~
図2(i)に示す慣らし運転を繰り返し実行する過程で、基板保持部12の位置データの取得を所定期間が経過するまで繰り返し実行する。すなわち、
図3に示すステップS3’で「No」の場合、ステップS2’を繰り返し実行する。この所定期間は、基板搬送機構1を含む基板処理装置の製造者側と購入者側との取り決め等によって、予め決められている(例えば、所定期間=慣らし運転の繰り返し回数5000回など)。
【0008】
次に、従来の動作判定方法では、上記のようにして基板保持部12の位置データの取得を所定期間が経過するまで繰り返し実行した後(
図3のステップS3’で「Yes」の場合)、取得した位置データに基づき、所定期間における基板搬送機構1の動作精度を算出し、この動作精度が予め決められた要求を満たすか否かを判定する(
図3のステップS4’)。
動作精度が要求を満たす場合(
図3のステップS4’で「Yes」の場合)、基板搬送機構1の動作が合格であると判定する(
図3のステップS5’)。
一方、動作精度が要求を満たさない場合(
図3のステップS4’で「No」の場合)、基板搬送機構1を調整する。例えば、基板搬送機構1をいったん分解し、再度組み立てる等の調整を行う。そして、調整後の基板搬送機構1について、再び、基板保持部12の位置データの取得(
図3のステップS2’)を、基板搬送機構1の調整後から所定期間が経過するまで(
図3のステップS3’で「Yes」になるまで)繰り返し実行し、所定期間における基板搬送機構1の動作精度を算出し、この動作精度が予め決められた要求を満たすか否かを判定する(
図3のステップS4’)。
【0009】
従来の動作判定方法では、基板搬送機構1の動作精度が要求を満たし(
図3のステップS4’で「Yes」になり)、基板搬送機構1の動作が合格であると判定される(
図3のステップS5’)まで、以上の動作を繰り返し実行することになる。
このため、慣らし運転を最初に開始してから(基板搬送機構1の動作を最初に開始してから)所定期間が経過するまでに取得した位置データに基づき算出した動作精度が要求を満たす場合には、所定期間で慣らし運転を終了できる(基板搬送機構1の動作を終了できる)ものの、動作精度が要求を満たさなかった場合には、所定期間の倍数の慣らし運転が必要となり、基板搬送機構の動作を早期に判定できないという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、基板搬送機構の動作を早期に判定可能な基板搬送機構の動作判定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、基板を搬送する基板搬送機構の動作を判定する方法であって、前記基板搬送機構の前記基板を保持する基板保持部の位置データを取得するためのセンサを配置するセンサ配置工程と、予め決められた所定期間よりも短い評価期間において、前記センサ配置工程で配置した前記センサによって前記位置データを取得するデータ取得工程と、前記データ取得工程で取得した前記評価期間における前記位置データに基づき、前記基板搬送機構の動作を判定するための指標値を算出する指標値算出工程と、前記指標値算出工程で算出した前記指標値を、予め決められた基準指標と比較する比較工程と、前記データ取得工程、前記指標値算出工程及び前記比較工程を、前記所定期間が経過するまで繰り返し実行する繰り返し工程と、前記繰り返し工程において、前記比較工程で前記指標値が前記基準指標を超えない場合、前記基板搬送機構の動作が合格であると判定する判定工程と、を有する基板搬送機構の動作判定方法を提供する。
【0013】
本発明において、「基板保持部の位置データを取得する」とは、基板保持部の位置データを直接取得する場合に限らず、基板の位置データを取得することで、間接的に基板保持部の位置データを取得する場合を含む概念である。
本発明によれば、データ取得工程において、予め決められた所定期間よりも短い評価期間において、基板保持部の位置データを取得し、指標値算出工程において、評価期間における位置データに基づき、基板搬送機構の動作を判定するための指標値を算出し、比較工程において、指標値を、予め決められた基準指標と比較する。繰り返し工程では、上記のデータ取得工程、指標値算出工程及び比較工程を、所定期間が経過するまで繰り返し実行する。そして、繰り返し工程において、比較工程で指標値が基準指標を超えない場合、基板搬送機構の動作が合格であると判定する。
本発明によれば、基板搬送機構の動作を最初に開始してから所定期間が経過するまでの間において、評価期間における位置データに基づき算出した指標値が常に基準指標を超えないのであれば、基板搬送機構の動作が合格であると判定して、所定期間で基板搬送機構の動作を終了できる。この点は、従来の動作判定方法と同様である。しかしながら、基板搬送機構の動作を最初に開始してから所定期間が経過するまでの途中で、評価期間における位置データに基づき算出した指標値が基準指標を超えた場合には、所定期間が経過するまで待たずに、基板搬送機構の調整を行うことができる(所定期間より短い評価期間が経過した時点で、基板搬送機構の調整が可能である)。そして、繰り返し工程では、調整後の基板搬送機構について、データ取得工程、指標値算出工程及び比較工程を、調整後から所定期間が経過するまで繰り返し実行すればよい。すなわち、従来の動作判定方法と異なり、指標値が基準指標を超えた場合に、所定期間の倍数の繰り返し動作が不要であり、基板搬送機構の動作を早期に判定可能であるという利点を有する。
【0014】
本発明においては、前述のように、前記比較工程で前記指標値が前記基準指標を超えた場合、前記基板搬送機構を調整し、前記繰り返し工程では、前記基板搬送機構を調整した後、前記所定期間が経過するまで、前記データ取得工程、前記指標値算出工程及び前記比較工程を繰り返し実行することが好ましい。
【0015】
本発明において、前記指標値算出工程で算出する前記指標値としては、前記評価期間における前記位置データの変動を表す指標値、又は、前記評価期間における前記位置データから予測される前記評価期間経過後の予測指標値を用いることができる。
【0016】
上記の好ましい構成において、前記予測指標値は、機械学習によって生成される学習モデルを用いて予測される場合を例示できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板搬送機構の動作を早期に判定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】基板搬送機構の一例を模式的に説明する平面図である。
【
図2】
図1に示す基板搬送機構1の慣らし運転の一例を概略的に説明する平面図である。
【
図3】慣らし運転によって
図1に示す基板搬送機構1の動作を判定する従来方法の概略手順を説明するフロー図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る基板搬送機構の動作判定方法の概略手順を説明するフロー図である。
【
図5】所定期間(慣らし運転の繰り返し回数=5000回)においてパラメータd1の最大値を指標値とし、指標値≦0.1mmを基準指標とした場合に、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えなかった場合の例を示す図である。
【
図6】所定期間(慣らし運転の繰り返し回数=5000回)においてパラメータd1の最大値を指標値とし、指標値≦0.1mmを基準指標とした場合に、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えた場合の例を示す図である。
【
図7】所定期間(慣らし運転の繰り返し回数=5000回)においてパラメータd2、d3の最大値・最小値を指標値とし、-0.1mm≦指標値≦0.1mmを基準指標とした場合に、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えなかった場合の例を示す図である。
【
図8】所定期間(慣らし運転の繰り返し回数=5000回)においてパラメータd2、d3の最大値・最小値を指標値とし、-0.1mm≦指標値≦0.1mmを基準指標とした場合に、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えた場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る基板搬送機構の動作判定方法について説明する。本実施形態に係る動作判定方法は、基板搬送機構の慣らし運転における動作判定方法である。なお、本実施形態における基板搬送機構の慣らし運転における動作自体は、
図2を参照して説明した従来の動作判定方法と同じであるため、本実施形態においても、
図2を適宜参照して説明する。
なお、
図2に示す例では、チャンバC1内にセンサ2a、2bを配置し、チャンバC2内にセンサ2c、2dを配置しているため、基板W1又はW2がチャンバC1又はC2内に位置する
図2(b)、
図2(e)及び
図2(h)の状態でエッジ位置を検出しているが、本発明はこれに限るものではない。気密搬送室A内にセンサを配置することで、基板W1及びW2が気密搬送室A内に位置する状態(
図2(a)、
図2(c)、
図2(d)、
図2(f)、
図2(g)、
図2(i)に示す状態)でエッジ位置を検出することも可能である。
図4は、本実施形態に係る基板搬送機構の動作判定方法の概略手順を説明するフロー図である。
図4に示すように、本実施形態に係る動作判定方法では、最初に、
図2に示す基板搬送機構1の基板保持部12の位置データを取得するためのセンサ2a~2dを配置するセンサ配置工程(
図4のステップS1)を実行する。センサ2a~2dの具体的構成は、従来の動作判定方法と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0020】
次に、本実施形態に係る動作判定方法では、予め決められた所定期間(例えば、慣らし運転の繰り返し回数=5000回)よりも短い評価期間(例えば、慣らし運転の繰り返し回数=500回)において、センサ2a~2dによって位置データを取得するデータ取得工程(
図4のステップS2)を実行する。具体的には、
図2(b)、
図2(e)及び
図2(h)に示す状態で、それぞれ評価期間における基板保持部12の位置データを逐次取得する。
なお、評価期間は、慣らし運転の繰り返し回数=500回に限るものではなく、500回よりも短い100回や200回に設定することや、逆に500回よりも長い1000回に設定することも考えられる。すなわち、評価期間としては、所定期間よりも短い期間であり、なお且つ、基板搬送機構1の動作を精度良く判定できる限りにおいて、任意の値を設定可能である。
【0021】
次に、本実施形態に係る動作判定方法では、データ取得工程で取得した評価期間における位置データに基づき、基板搬送機構の動作を判定するための指標値を算出する指標値算出工程(
図4のステップS3)を実行する。なお、以下では、
図2(h)に示す状態で取得した、評価期間における基板保持部12の位置データに基づき、指標値を算出する例を説明するが、本発明は、これに限るものではなく、
図2(b)に示す状態で取得した位置データや、
図2(e)に示す状態で取得した位置データに基づき、指標値を算出することも可能である。また、2つ以上の状態で取得した位置データに基づき、指標値を算出することも可能である。
【0022】
指標値としては、例えば、評価期間における位置データの変動を表す指標値を用いることができる。
具体的には、例えば、慣らし運転の繰り返し回数n(n≧1)回目について、センサ2cで取得したX方向の位置データ(X座標)をXnとし、センサ2dで取得したY方向の位置データ(Y座標)をYnとする。また、繰り返し回数n+1回目について、センサ2cで取得したX方向の位置データ(X座標)をXn+1とし、センサ2dで取得したY方向の位置データ(Y座標)をYn+1とする。そして、以下の式(1)で表される、パラメータd1を、評価期間分だけ用いて指標値を算出することが考えられる。
d1={(Xn+1-Xn)2+(Yn+1-Yn)2}1/2 ・・・(1)
上記の式(1)で表されるパラメータd1は、慣らし運転の繰り返し回数n回目からn+1回目までの基板保持部12の位置の移動距離に相当する。
【0023】
或いは、評価期間において、センサ2cで取得したX方向の位置データ(X座標)の最大値及び最小値をそれぞれ、Xmax、Xminとし、センサ2dで取得したY方向の位置データ(Y座標)の最大値及び最小値をそれぞれYmax、Yminとする。そして、以下の式(2)及び式(3)でそれぞれ表されるパラメータd2、d3を、評価期間分だけ用いて指標値を算出することが考えられる。
d2=Xn-(Xmax+Xmin)/2 ・・・(2)
d3=Yn-(Ymax+Ymin)/2 ・・・(3)
【0024】
そして、指標値としては、例えば、評価期間におけるパラメータd1の最大値や、評価期間においてパラメータd1が所定の基準値を超えた回数を算出することが考えられる。また、指標値としては、例えば、評価期間におけるパラメータd2及びd3の最大値・最小値や、評価期間においてパラメータd2及びd3が所定の基準値を超えた回数を算出することが考えられる。
【0025】
次に、本実施形態に係る動作判定方法では、指標値算出工程で算出した指標値を、予め決められた基準指標と比較する比較工程(
図4のステップS4)を実行する。具体的には、例えば、パラメータd1の最大値を指標値とした場合、基準指標として、指標値≦0.1mmを設定することが考えられる。このとき、パラメータd1の最大値である指標値が、基準指標を超えない場合、すなわち、指標値≦0.1mmを満足する場合(
図4のステップS4で「Yes」の場合)には、所定期間が経過しているか否かを判定し(
図4のステップS5)、所定期間が経過していなければ(
図4のステップS5で「No」の場合には)、データ取得工程(
図4のステップS2)、指標値算出工程(
図4のステップS3)及び比較工程(
図4のステップS4)を、所定期間が経過するまで(
図4のステップS5で「Yes」となるまで)繰り返し実行する(本発明の繰り返し工程に相当)。
そして、本実施形態に係る動作判定方法では、上記の繰り返し工程において、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えない場合、基板搬送機構1の動作が合格であると判定する(
図4のステップS6)。
【0026】
なお、例えば、パラメータd1が所定の基準値(例えば、0.1mm)を超えた回数を指標値とした場合、基準指標として、指標値≦N回(Nは所定の自然数)を設定することが考えられる。
また、例えば、パラメータd2及びd3の最大値・最小値を指標値とした場合、基準指標として、-0.1mm≦指標値≦0.1mmを設定することが考えられる。
さらに、例えば、パラメータd2及びd3が所定の基準値(例えば、0.1mm及び-0.1mm)を超えた回数(0.1mmよりも大きくなった回数及び-0.1mmよりも小さくなった回数)を指標値とした場合、基準指標として、指標値≦N回(Nは所定の自然数)を設定することが考えられる。
これらの指標値及び基準指標についても、前述したパラメータd1の最大値を指標値とした場合と同様に、指標値が、基準指標を超えない場合(
図4のステップS4で「Yes」の場合)には、所定期間が経過しているか否かを判定し(
図4のステップS5)、所定期間が経過していなければ(
図4のステップS5で「No」の場合には)、データ取得工程(
図4のステップS2)、指標値算出工程(
図4のステップS3)及び比較工程(
図4のステップS4)を、所定期間が経過するまで(
図4のステップS5で「Yes」となるまで)繰り返し実行する(本発明の繰り返し工程に相当)。
そして、本実施形態に係る動作判定方法では、上記の繰り返し工程において、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えない場合、基板搬送機構1の動作が合格であると判定する(
図4のステップS6)。
【0027】
一方、パラメータd1の最大値である指標値が、指標値>0.1mmである場合など、指標値が基準指標を超える場合(
図4のステップS4で「No」の場合)には、基板搬送機構1を調整する(
図4のステップS7)。
そして、前述の繰り返し工程では、基板搬送機構1を調整した後、所定期間が経過するまで(
図4のステップS5で「Yes」となるまで)、データ取得工程(
図4のステップS2)、指標値算出工程(
図4のステップS3)及び比較工程(
図4のステップS4)を繰り返し実行する。
そして、上記の繰り返し工程において、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えない場合、基板搬送機構1の動作が合格であると判定する(
図4のステップS6)。一方、基板搬送機構1を調整した後の繰り返し工程でも、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えた場合には、再び基板搬送機構1を調整し(
図4のステップS7)、再び繰り返し工程を実行することになる。
【0028】
なお、指標値としては、上記の例に限られるものではなく、評価期間における位置データの変動を表す指標値である限りにおいて、種々の値を用いることができ、用いる指標値に応じて、適宜、適切な基準指標を設定することが可能である。
【0029】
図5は、所定期間(慣らし運転の繰り返し回数=5000回)においてパラメータd1の最大値を指標値とし、指標値≦0.1mmを基準指標とした場合に、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えなかった場合の例を示す図である。
図6は、所定期間(慣らし運転の繰り返し回数=5000回)においてパラメータd1の最大値を指標値とし、指標値≦0.1mmを基準指標とした場合に、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えた場合の例を示す図である。なお、
図6に示す例は、比較工程で指標値が基準指標を超えた場合にも、基板搬送機構1の調整(
図4のステップS7)を行わなかったときの結果を示している。
図5に示すように、所定期間が経過するまで、指標値が基準指標を超えない状態が継続する場合には、基板搬送機構1の動作が合格であると判定される。
図6(a)に示す場合には、例えば、慣らし運転の繰り返し回数=500回を評価期間とすると、4500回(評価期間の9回分)だけ慣らし運転を繰り返した後に、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えることになる。同様に、
図6(b)に示す場合には、2500回(評価期間の5回分)だけ慣らし運転を繰り返した後に、
図6(c)に示す場合には、4500回(評価期間の9回分)だけ慣らし運転を繰り返した後に、それぞれ比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えることになる。本実施形態に係る動作判定方法によれば、指標値が基準指標を超えた時点で(評価期間よりも長い所定期間が経過する前に)、基板搬送機構1を調整することができるため、所定期間の倍数の繰り返し動作が不要であり、基板搬送機構の動作を早期に判定可能である。
【0030】
図7は、所定期間(慣らし運転の繰り返し回数=5000回)においてパラメータd2、d3の最大値・最小値を指標値とし、-0.1mm≦指標値≦0.1mmを基準指標とした場合に、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えなかった場合の例を示す図である。
図8は、所定期間(慣らし運転の繰り返し回数=5000回)においてパラメータd2、d3の最大値・最小値を指標値とし、-0.1mm≦指標値≦0.1mmを基準指標とした場合に、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を超えた場合の例を示す図である。なお、
図8に示す例は、比較工程で指標値が基準指標を超えた場合にも、基板搬送機構1の調整(
図4のステップS7)を行わなかったときの結果を示している。
図7に示すように、所定期間が経過するまで、指標値が基準指標を超えない状態が継続する場合には、基板搬送機構1の動作が合格であると判定される。
図8に示す場合には、例えば、慣らし運転の繰り返し回数=500回を評価期間とすると、4500回(評価期間の9回分)だけ慣らし運転を繰り返した後に、比較工程(
図4のステップS4)で指標値が基準指標を最初に超える(パラメータd2の最大値が基準指標を超える)ことになる。本実施形態に係る動作判定方法によれば、指標値が基準指標を超えた時点で(評価期間よりも長い所定期間が経過する前に)、基板搬送機構1を調整することができるため、所定期間の倍数の繰り返し動作が不要であり、基板搬送機構の動作を早期に判定可能である。
【0031】
指標値としては、以上に説明した、評価期間における位置データの変動を表す指標値を用いることに限るものではなく、例えば、評価期間における位置データから予測される評価期間経過後の予測指標値(例えば、評価期間経過後から所定期間が経過するまでの任意の時点での予測指標値)を用いることも可能である。
予測指標値は、例えば、機械学習によって生成される学習モデルを用いて予測される。
指標値として予測指標値を用いる場合にも、前述したものと同様に、例えば、評価期間経過後のパラメータd1の最大値や、評価期間経過後にパラメータd1が所定の基準値を超える回数を予測指標値として算出することが考えられる。また、例えば、評価期間経過後のパラメータd2及びd3の最大値・最小値や、評価期間経過後にパラメータd2及びd3が所定の基準値を超える回数を予測指標値として算出することが考えられる。さらに、評価期間経過後にパラメータd1が所定の基準値を超える確率(又は、パラメータd2及びd3が所定の基準値を超える確率)を予測指標値として算出することも考えられる。基準値を超える確率を予測指標値として算出する場合には、基準指標として、確率≦70%や、確率≦80%などを設定することが考えられる。
【0032】
なお、以上に説明した本実施形態では、実際に基板W1、W2に処理を行う際に使われるチャンバC1、C2や気密搬送室Aを用いて慣らし運転を行う場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、チャンバC1、C2や気密搬送室Aとは別に、センサを配置した慣らし運転専用の筐体を用意して、この筐体内に基板搬送機構1を配置し、慣らし運転を行いながら、センサで基板保持部12の位置データを取得し、基板搬送機構1の動作を判定することも可能である。
【0033】
また、本実施形態では、チャンバに基板を搬送する基板搬送機構1について慣らし運転を行う場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、チャンバに基板を搬送すること以外に、他の基板搬送機構を有する搬送室(例えば、特許文献1における大気搬送部)に基板を搬送することや、基板を収容する基板収容室に基板を搬送することなどを実行できる基板搬送機構についての慣らし運転であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1・・・基板搬送機構
2a,2b,2c,2d・・・センサ
11・・・回転軸
12・・・基板保持部
A・・・気密搬送室
C1,C2・・・チャンバ
W1,W2・・・基板