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特開2024-143139聴診装置およびこれを備えた聴診システム、聴診方法、聴診プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143139
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】聴診装置およびこれを備えた聴診システム、聴診方法、聴診プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20241003BHJP
   A61B 7/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61B5/02 350
A61B7/04 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055657
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】森田 洪爾
(72)【発明者】
【氏名】足立 達哉
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 浩之
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA04
4C017AB04
4C017AC04
4C017AC20
4C017AC30
4C017AC40
4C017BD06
4C017FF05
(57)【要約】
【課題】心音の異常の有無を従来よりも高精度に検出することが可能な聴診装置およびこれを備えた聴診システム、聴診方法、聴診プログラムを提供する。
【解決手段】PC20は、通信部21と、演算・判定部28とを備える。通信部21は、聴診器10から心音のデータを取得する。演算・判定部28は、通信部21において取得された心音の1拍に含まれるI音、II音、III音、IV音を含む波形を解析する。演算・判定部28は、解析されたI音、II音、III音、IV音を含む波形の解析結果に基づいて、心音の異常の有無を判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の心音の測定を行う聴診器から前記心音のデータを取得して異常の有無を判定する聴診装置であって、
前記聴診器から前記心音のデータを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部において取得された前記心音の1拍に含まれる第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析するデータ解析部と、
前記データ解析部において解析された前記第1音、前記第2音、前記第3音、前記第4音を含む前記波形の解析結果に基づいて、前記心音の異常の有無を判定する判定部と、
を備えている聴診装置。
【請求項2】
被検者の心音の測定を行い、異常の有無を判定する聴診装置であって、
前記心音のデータを測定するデータ測定部と、
前記データ測定部において測定された前記心音の1拍に含まれる第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析するデータ解析部と、
前記データ解析部において解析された前記第1音、前記第2音、前記第3音、前記第4音を含む前記波形の解析結果に基づいて、前記心音の異常の有無を判定する判定部と、
を備えている聴診装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記データ解析部における解析の結果、前記第1音、前記第2音、前記第3音、前記第4音の少なくとも1つの波形の信号強度、持続時間、前記波形間の間隔、前記波形の特徴のうちの少なくとも1つを用いて、前記心音の異常の有無を判定する、
請求項1または2に記載の聴診装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記データ解析部において解析された前記波形と、前記被検者の過去の心音の波形とを比較して、前記心音の異常の有無を判定する、
請求項1または2に記載の聴診装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記データ解析部において解析された前記波形と、一般的な健常者の心音の波形とを比較して、前記心音の異常の有無を判定する、
請求項4に記載の聴診装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記データ解析部において解析された前記心音の波形と前記過去の心音の波形とを比較して、所定のパラメータの差分値を算出し、前記差分値が所定の閾値以上であるか否かに応じて、前記心音の異常の有無を判定する、
請求項4に記載の聴診装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記データ解析部において解析された前記心音の波形と前記過去の心音の波形とを比較して算出された所定のパラメータの差分値が所定の閾値以上であって、前記一般的な健常者の心音の波形とを比較して算出された所定のパラメータの差分値が所定の閾値未満である場合には、前記被検者の状態が要経過観察であると判定する、
請求項5に記載の聴診装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記データ解析部において解析された前記心音の波形と前記過去の心音の波形とを比較して算出された所定のパラメータの差分値が所定の閾値未満であって、前記一般的な健常者の心音の波形とを比較して算出された所定のパラメータの差分値が所定の閾値以上である場合には、前記被検者の状態が要経過観察であると判定する、
請求項5に記載の聴診装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記データ解析部において解析された前記波形と、一般的な健常者の心音の波形とを比較して、前記心音の異常の有無を判定する、
請求項1または2に記載の聴診装置。
【請求項10】
前記第1音は、心臓の心室が収縮する際に生じる音であって、
前記第2音は、前記心室の拡張が開始した際に生じる音である、
請求項1または2に記載の聴診装置。
【請求項11】
前記第3音は、前記心室の拡張が終了した際に生じる音であって、
前記第4音は、前記心臓の心房が収縮した際に生じる音である、
請求項10に記載の聴診装置。
【請求項12】
前記判定部における判定結果を表示する表示部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の聴診装置。
【請求項13】
前記判定部における判定結果に基づいて、前記心音のデータを再生する心音再生部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の聴診装置。
【請求項14】
前記心音のデータ、前記判定部における判定結果を保存する記憶部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の聴診装置。
【請求項15】
請求項1または2に記載の聴診装置と、
前記聴診装置から前記心音のデータ、前記判定の結果が送信される遠隔地端末と、
を備えている聴診システム。
【請求項16】
被検者の心音の測定を行い、異常の有無を判定する聴診方法であって、
聴診装置のデータ取得部が、前記心音のデータを取得するデータ取得ステップと、
前記聴診装置のデータ解析部が、前記データ取得ステップにおいて取得された前記心音に含まれる第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析するデータ解析ステップと、
前記聴診装置の判定部が、前記データ解析ステップにおいて解析された前記第1音、前記第2音、前記第3音、前記第4音を含む前記波形の解析結果に基づいて、前記心音の異常の有無を判定する判定ステップと、
を備えている聴診方法。
【請求項17】
被検者の心音の測定を行い、異常の有無を判定する聴診プログラムであって、
聴診装置のデータ取得部が、前記心音のデータを取得するデータ取得ステップと、
前記聴診装置のデータ解析部が、前記データ取得ステップにおいて取得された前記心音に含まれる第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析するデータ解析ステップと、
前記聴診装置の判定部が、前記データ解析ステップにおいて解析された前記第1音、前記第2音、前記第3音、前記第4音を含む前記波形の解析結果に基づいて、前記心音の異常の有無を判定する判定ステップと、
を備えた聴診方法をコンピュータに実行させる聴診プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心音の測定を行う聴診装置およびこれを備えた聴診システム、聴診方法、聴診プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、心音を測定して被検者の健康状態に異常がないかを診断するシステムが用いられている。
例えば、特許文献1には、心音データに基づいて心疾患の有無を判断するために、生体の心音に基づく電気信号が入力され予め定められた信号処理を行って心音データを出力する入力信号処理部と、第1区間の心音データを周波数変換して第1区間パワースペクトルを算出し第2区間の心音データを周波数変換して第2区間パワースペクトルを算出し第1区間パワースペクトルと第2区間パワースペクトルとの相違に基づいて生体に心疾患があるかどうかを診断する心音解析部とを備えた心疾患診断装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-188511号公報(特許第6244244号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の心疾患診断装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された心疾患診断装置では、第1区間の心音データを周波数変換して第1区間パワースペクトルを算出し第2区間の心音データを周波数変換して第2区間パワースペクトルを算出し第1区間パワースペクトルと第2区間パワースペクトルとの相違に基づいて生体に心疾患があるかどうかを診断している。
【0005】
このため、1回の心拍に含まれる心音データを、収縮期(第1の区間)と拡張期(第2の区間)とに分けてパワースペクトルが算出されているため、異常の有無を高精度に検出することが困難になるおそれがある。
本発明の課題は、心音の異常の有無を従来よりも高精度に検出することが可能な聴診装置およびこれを備えた聴診システム、聴診方法、聴診プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る聴診装置は、被検者の心音の測定を行う聴診器から心音のデータを取得して異常の有無を判定する聴診装置であって、データ取得部と、データ解析部と、判定部と、を備えている。データ取得部は、聴診器から心音のデータを取得する。データ解析部は、データ取得部において取得された心音の1拍に含まれる第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析する。判定部は、データ解析部において解析された第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形の解析結果に基づいて、心音の異常の有無を判定する。
【0007】
ここで、聴診装置は、例えば、被検者の心音を測定する聴診器と通信可能なPC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレット端末等である。
被検者の心音を測定する聴診器は、例えば、被検者の胸部に貼り付けた状態で使用される装置であってもよいし、医師等によって被検者の心音を測定する聴診器等であってもよい。
【0008】
また、聴診器から心音のデータを取得する際には、例えば、無線通信を介してデータを取得してもよいし、有線通信を介してデータを取得してもよい。
第1音、第2音、第3音、第4音は、心拍1回に含まれる心音であって、被検者の心臓(心室、心房)の動きに起因して生じる。
第1音は、例えば、心臓の心室が収縮する際に生じる音である。第2音は、例えば、心室の拡張が開始した際に生じる音である。第3音は、例えば、心室の拡張が終了した際に生じる音である。第4音は、例えば、心臓の心房が収縮した際に生じる音である。
【0009】
なお、被検者によっては、第1音、第2音、第3音、第4音の全てが検出されることなく、例えば、第1音と第2音のみが検出される場合もあるし、第1音、第2音、第3音のみが検出される場合もあるし、第1音、第2音、第4音のみが検出される場合もあるものとする。
判定部による心音の異常の有無の判定は、例えば、被検者の過去の心音の波形データとの比較、あるいは、一般的な健常者の心音の波形データとの比較を行って行われる。
これにより、心拍1回に含まれる心音データから、第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析し、それぞれの音の過去の被検者の心音データとの差異、一般的な健常者の心音データとの差異等に応じて、心音の異常の有無を判定することができる。
この結果、心音の異常の有無を従来よりも高精度に検出することができる。
【0010】
第2の発明に係る聴診装置は、被検者の心音の測定を行い、異常の有無を判定する聴診装置であって、データ測定部と、データ解析部と、判定部と、を備えている。データ測定部は、心音のデータを測定する。データ解析部は、データ測定部において測定された心音の1拍に含まれる第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析する。判定部は、データ解析部において解析された第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形の解析結果に基づいて、心音の異常の有無を判定する。
【0011】
ここで、被検者の心音を測定する聴診装置は、例えば、被検者の胸部に貼り付けた状態で使用される装置であってもよいし、医師等によって被検者の心音を測定する聴診器等であってもよい。
第1音、第2音、第3音、第4音は、心拍1回に含まれる心音であって、被検者の心臓(心室、心房)の動きに起因して生じる。
【0012】
第1音は、例えば、心臓の心室が収縮する際に生じる音である。第2音は、例えば、心室の拡張が開始した際に生じる音である。第3音は、例えば、心室の拡張が終了した際に生じる音である。第4音は、例えば、心臓の心房が収縮した際に生じる音である。
なお、被検者によっては、第1音、第2音、第3音、第4音の全てが検出されることなく、例えば、第1音と第2音のみが検出される場合もあるし、第1音、第2音、第3音のみが検出される場合もあるし、第1音、第2音、第4音のみが検出される場合もあるものとする。
【0013】
判定部による心音の異常の有無の判定は、例えば、被検者の過去の心音の波形データとの比較、あるいは、一般的な健常者の心音の波形データとの比較を行って行われる。
これにより、心拍1回に含まれる心音データから、第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析し、それぞれの音の過去の被検者の心音データとの差異、一般的な健常者の心音データとの差異等に応じて、心音の異常の有無を判定することができる。
この結果、心音の異常の有無を従来よりも高精度に検出することができる。
【0014】
第3の発明に係る聴診装置は、第1または第2の発明に係る聴診装置であって、判定部は、データ解析部における解析の結果、第1音、第2音、第3音、第4音の少なくとも1つの波形の信号強度、持続時間、波形間の間隔、波形の特徴のうちの少なくとも1つを用いて、心音の異常の有無を判定する。
これにより、心音の波形に含まれる第1音、第2音、第3音、第4音のそれぞれの音についての信号強度、持続時間、波形の間隔、波形の特徴(例えば、FFT(Fast Fourier Transformation)解析による周波数特性等)を異常判定のパラメータとして設定することで、従来よりも精度よく、心音の異常の有無を判定することができる。
【0015】
第4の発明に係る聴診装置は、第1または第2の発明に係る聴診装置であって、判定部は、データ解析部において解析された波形と、被検者の過去の心音の波形とを比較して、心音の異常の有無を判定する。
これにより、同一の被検者の過去の心音の波形と現在の波形とを比較して異常の有無を判定することで、被検者の心音の変化に基づいて、異常の有無を容易に判定することができる。
【0016】
第5の発明に係る聴診装置は、第4の発明に係る聴診装置であって、判定部は、データ解析部において解析された波形と、一般的な健常者の心音の波形とを比較して、心音の異常の有無を判定する。
これにより、被検者の心音の波形と、一般的な健常者の心音の波形とを比較して異常の有無を判定することで、被検者の心音の異常の有無を容易に判定することができる。
【0017】
第6の発明に係る聴診装置は、第4の発明に係る聴診装置であって、判定部は、データ解析部において解析された心音の波形と過去の心音の波形とを比較して、所定のパラメータの差分値を算出し、差分値が所定の閾値以上であるか否かに応じて、心音の異常の有無を判定する。
これにより、例えば、現在の心音の波形と同一の被検者の過去の心音の波形とを比較して、波形の信号強度等のパラメータの差分値が所定の閾値以上である場合には、心音の異常があると判定することができる。
【0018】
第7の発明に係る聴診装置は、第5の発明に係る聴診装置であって、判定部は、データ解析部において解析された心音の波形と過去の心音の波形とを比較して算出された所定のパラメータの差分値が所定の閾値以上であって、一般的な健常者の心音の波形とを比較して算出された所定のパラメータの差分値が所定の閾値未満である場合には、被検者の状態が要経過観察であると判定する。
これにより、被検者の現在の心音の波形を、過去の波形と比較した結果と、一般的な健常者の心音の波形と比較した結果とを組み合わせて判定を行うことで、自身の過去の波形との比較では差があるものの、一般的な健常者の波形との比較では差が小さい場合には、被検者の状態を要経過観察として判定することができる。
【0019】
第8の発明に係る聴診装置は、第5の発明に係る聴診装置であって、判定部は、データ解析部において解析された心音の波形と過去の心音の波形とを比較して算出された所定のパラメータの差分値が所定の閾値未満であって、一般的な健常者の心音の波形とを比較して算出された所定のパラメータの差分値が所定の閾値以上である場合には、被検者の状態が要経過観察であると判定する。
これにより、被検者の現在の心音の波形を、過去の波形と比較した結果と、一般的な健常者の心音の波形と比較した結果とを組み合わせて判定を行うことで、自身の過去の波形との比較ではほとんど差がないものの、一般的な健常者の波形との比較では差がある場合には、被検者の状態を要経過観察として判定することができる。
【0020】
第9の発明に係る聴診装置は、第1または第2の発明に係る聴診装置であって、判定部は、データ解析部において解析された波形と、一般的な健常者の心音の波形とを比較して、心音の異常の有無を判定する。
これにより、被検者の心音の波形と、一般的な健常者の心音の波形とを比較して異常の有無を判定することで、被検者の心音の異常の有無を容易に判定することができる。
【0021】
第10の発明に係る聴診装置は、第1または第2の発明に係る聴診装置であって、第1音は、心臓の心室が収縮する際に生じる音であって、第2音は、心室の拡張が開始した際に生じる音である。
これにより、心臓の心室の収縮によって生じる第1音と、心室の拡張が開始した際に生じる第2音とを用いて、被検者の心音の異常の有無を判定することができる。
【0022】
第11の発明に係る聴診装置は、第10の発明に係る聴診装置であって、第3音は、心室の拡張が終了した際に生じる音であって、第4音は、心臓の心房が収縮した際に生じる音である。
これにより、心臓の心室の拡張が終了した際に生じる第3音と、心房が収縮した際に生じる第4音とを用いて、被検者の心音の異常の有無を判定することができる。
【0023】
第12の発明に係る聴診装置は、第1または第2の発明に係る聴診装置であって、判定部における判定結果を表示する表示部を、さらに備えている。
これにより、被検者の心音の異常の有無を判定した結果を表示部に表示させることで、被検者あるいは医療関係者に対して、異常の有無を提示することができる。
【0024】
第13の発明に係る聴診装置は、第1または第2の発明に係る聴診装置であって、判定部における判定結果に基づいて、心音のデータを再生する心音再生部を、さらに備えている。
これにより、例えば、心音の異常があると判定された場合には、異常があると判定された心音を再生することで、被検者自身、あるいは医療関係者が異常があると判定された心音を確認することができる。
【0025】
第14の発明に係る聴診装置は、第1または第2の発明に係る聴診装置であって、心音のデータ、判定部における判定結果を保存する記憶部を、さらに備えている。
これにより、測定された心音のデータ、判定結果を記憶部に保存しておくことで、被検者あるいは医療関係者等が、被検者の心音の変化、過去の判定結果を必要に応じて読みだして確認することができる。
【0026】
第15の発明に係る聴診システムは、第1または第2の発明に係る聴診装置と、聴診装置から心音のデータ、判定の結果が送信される遠隔地端末と、を備えている。
これにより、測定された心音のデータ、判定結果が、例えば、医療機関に設置されたPC等の遠隔地端末に送信されることで、遠隔地にいる医師等と情報を共有して診察を受けることができる。
【0027】
第16の発明に係る聴診方法は、被検者の心音の測定を行い、異常の有無を判定する聴診方法であって、データ取得ステップと、データ解析ステップと、判定ステップと、を備えている。データ取得ステップでは、聴診装置のデータ取得部が、心音のデータを取得する。データ解析ステップでは、聴診装置のデータ解析部が、データ取得ステップにおいて取得された心音に含まれる第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析する。判定ステップでは、聴診装置の判定部が、データ解析ステップにおいて解析された第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形の解析結果に基づいて、心音の異常の有無を判定する。
【0028】
ここで、第1音、第2音、第3音、第4音は、心拍1回に含まれる心音であって、被検者の心臓(心室、心房)の動きに起因して生じる。
第1音は、例えば、心臓の心室が収縮する際に生じる音である。第2音は、例えば、心室の拡張が開始した際に生じる音である。第3音は、例えば、心室の拡張が終了した際に生じる音である。第4音は、例えば、心臓の心房が収縮した際に生じる音である。
【0029】
なお、被検者によっては、第1音、第2音、第3音、第4音の全てが検出されることなく、例えば、第1音と第2音のみが検出される場合もあるし、第1音、第2音、第3音のみが検出される場合もあるし、第1音、第2音、第4音のみが検出される場合もあるものとする。
判定部による心音の異常の有無の判定は、例えば、被検者の過去の心音の波形データとの比較、あるいは、一般的な健常者の心音の波形データとの比較を行って行われる。
これにより、心拍1回に含まれる心音データから、第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析し、それぞれの音の過去の被検者の心音データとの差異、一般的な健常者の心音データとの差異等に応じて、心音の異常の有無を判定することができる。
この結果、心音の異常の有無を従来よりも高精度に検出することができる。
【0030】
第17の発明に係る聴診プログラムは、被検者の心音の測定を行い、異常の有無を判定する聴診方法であって、データ取得ステップと、データ解析ステップと、判定ステップと、を備えた聴診方法をコンピュータに実行させる。データ取得ステップでは、聴診装置のデータ取得部が、心音のデータを取得する。データ解析ステップでは、聴診装置のデータ解析部が、データ取得ステップにおいて取得された心音に含まれる第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析する。判定ステップでは、聴診装置の判定部が、データ解析ステップにおいて解析された第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形の解析結果に基づいて、心音の異常の有無を判定する。
【0031】
ここで、第1音、第2音、第3音、第4音は、心拍1回に含まれる心音であって、被検者の心臓(心室、心房)の動きに起因して生じる。
第1音は、例えば、心臓の心室が収縮する際に生じる音である。第2音は、例えば、心室の拡張が開始した際に生じる音である。第3音は、例えば、心室の拡張が終了した際に生じる音である。第4音は、例えば、心臓の心房が収縮した際に生じる音である。
【0032】
なお、被検者によっては、第1音、第2音、第3音、第4音の全てが検出されることなく、例えば、第1音と第2音のみが検出される場合もあるし、第1音、第2音、第3音のみが検出される場合もあるし、第1音、第2音、第4音のみが検出される場合もあるものとする。
判定部による心音の異常の有無の判定は、例えば、被検者の過去の心音の波形データとの比較、あるいは、一般的な健常者の心音の波形データとの比較を行って行われる。
【0033】
これにより、心拍1回に含まれる心音データから、第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析し、それぞれの音の過去の被検者の心音データとの差異、一般的な健常者の心音データとの差異等に応じて、心音の異常の有無を判定することができる。
この結果、心音の異常の有無を従来よりも高精度に検出することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る聴診装置によれば、心音の異常の有無を従来よりも高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態に係るPCを含む聴診システムの構成を示す概念図。
図2図1の聴診システムの構成を示す制御ブロック図。
図3図2のPC内の通信部において取得された心音の波形と心電図の波形とを比較したグラフ。
図4図3の心音の波形に含まれるI音、II音、III音およびIV音の波形の以上判定用の各パラメータ(信号強度(Peak-to-Peak)、持続時間、波形間隔時間等)を示すグラフ。
図5図2のPCによって実行される聴診方法の処理の流れを示すフローチャート。
図6】本発明の他の実施形態に係る聴診装置を含む聴診システムの構成示す制御ブロック図。
図7】本発明のさらに他の実施形態に係る聴診装置を含む聴診システムの構成示す制御ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(実施形態1)
本発明の一実施形態に係るPC(聴診装置)20およびこれを備えた聴診システム1について、図1図5を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態では、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
また、出願人は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0037】
(1)聴診システム1の構成
本実施形態に係る聴診システム1は、聴診器10において測定された被検者の心音のデータを取得して解析し、心音の異常の有無を判定するシステムであって、図1に示すように、聴診器10と、PC(Personal Computer)(聴診装置)20と、クラウドサーバ30と、遠隔地端末40と、を備えている。
【0038】
ここで、聴診器10によって心音の測定が行われる被検者は、例えば、医療機関等に入院している、あるいは自宅療養中の患者、高齢者、健康診断を受診した健常者等が含まれる。
聴診器10は、被検者の心音の測定を行う装置であって、例えば、図1に示すように、被検者の胸部に貼り付けた状態で使用され、被検者の心音のデータを取得して、無線あるいは有線で接続されたPC20に対して送信する。
【0039】
また、聴診器10は、図2に示すように、心音検出部11と、制御部12と、通信部13とを備えている。
心音検出部11は、例えば、加速度センサ、圧力センサ、マイクロフォン等であって、被検者の心音振動に応じた心音信号を電気信号として検出し、制御部12へ送信する。
制御部12は、心音検出部11において検出された心音を示す電気信号を、通信部13へと送信する。
【0040】
通信部13は、制御部12から受信した心音を示す電気信号を、心音データとして、PC20へ送信する。通信部13からPC20へのデータの送信は、無線を介して行われてもよいし、有線を介して行われてもよい。
PC(聴診装置)20は、図1に示すように、聴診器10、クラウドサーバ30および遠隔地端末40と通信可能であって、聴診器10において測定された心音のデータを受信して、被検者の心音に異常があるか否かを判定する。
【0041】
なお、PC20の詳細な構成については、後段にて詳述する。
クラウドサーバ30は、図1に示すように、PC20および遠隔地端末40との間で通信可能であって、主に、聴診器10において測定された心音のデータ、PC20における異常判定の結果等を受信して保存する。また、クラウドサーバ30は、図2に示すように、通信部31と、記憶部32と、を備えている。
【0042】
通信部31は、PC20および遠隔地端末40と無線を介して接続されており、被検者ごとの心音のデータ、異常判定の結果等を送受信する。
記憶部32は、通信部31を介してPC20から受信した心音のデータ、異常判定の結果等を保存する。
遠隔地端末40は、例えば、医療機関等に設置されたPC等の端末であって、図1に示すように、PC20およびクラウドサーバ30との間で通信可能であって、主に、聴診器10において測定された心音のデータ、PC20における異常判定の結果等を受信して、医師等に表示する。
【0043】
これにより、医療機関の医師等は、遠隔地端末40に表示された心音のデータおよび異常判定の結果等を表示されることで、患者等の被検者の心音の異常の有無を遠方から確認して確認することができる。
また、遠隔地端末40は、図2に示すように、通信部41と、制御部42と、表示部43と、記憶部44と、音声出力部45と、を備えている。
【0044】
通信部41は、PC20およびクラウドサーバ30と無線を介して接続されており、被検者ごとの心音のデータ、異常判定の結果等を送受信する。
制御部42は、通信部41を介して受信した被検者の心音のデータ、異常判定の結果等を表示するように表示部43を制御するとともに、記憶部44に保存させる。
表示部43は、制御部42によって表示制御されており、心音データや異常判定の結果等を表示する。
【0045】
記憶部44は、通信部41を介してPC20から受信した心音のデータ、異常判定の結果等を保存する。
音声出力部45は、後述するPC20側の演算・判定部28における判定結果に基づいて、通信部41において取得された心音のデータを再生するように、制御部42によって制御される。これにより、遠隔地において、判定結果に応じて、医師等が心音を聴いて確認することができる。
【0046】
本実施形態の聴診システム1では、以上のように、PC20が、聴診器10において測定された被検者の心音のデータを取得して解析し、心音の異常の有無を判定するとともに、クラウドサーバ30および遠隔地端末40において、心音のデータおよび異常判定の結果を共有している。
これにより、聴診器10が測定した心音から正常/異常を判定し、異常時や異常の可能性がある場合には、遠隔地端末40において、医師等がリアルタイムでの診断に限らず、いつでもデータを確認することができる。
この結果、例えば、コロナ禍での来院による感染リスク、高齢化社会に伴う患者数増加、過疎地域での移動手段確保の困難性、遠隔医療が求められている社会的背景等を踏まえ、遠隔での診断を行うことができる。
【0047】
(2)PC20の構成
本実施形態に係るPC(聴診装置)20は、図2に示すように、制御部20aと、通信部(データ取得部)21と、操作部22と、記憶部23と、増幅部24と、増幅度切換部25と、フィルタ部26と、AD変換部27と、演算・判定部(データ解析部、判定部)28と、表示部29aと、音声出力部(心音再生部)29bと、を備えている。
【0048】
制御部20aは、PC20に含まれる各部と接続されており、各部の制御を行う。
通信部(データ取得部)21は、聴診器10の通信部13と無線あるいは有線を介して通信可能であって、上述したように、聴診器10において測定された心音のデータを受信して、制御部20aを介して記憶部23に保存させる。
操作部22は、例えば、PC20に接続されたマウス、キーボード等の操作装置であって、各種操作が入力される。
【0049】
記憶部23は、通信部21を介して受信した被検者の心音のデータを保存するように、制御部20aによって制御される。また、記憶部23は、後述する演算・判定部28において行われた心音の異常判定の結果を保存する。さらに、記憶部23は、後述する演算・判定部28における判定処理に用いられる被検者ごとの過去の心音のデータ、判定結果、一般的な健常者の心音のデータ等の情報を保存する。
【0050】
増幅部24は、通信部21を介して受信した心音のデータを増幅処理して制御部20aへ送信する。
増幅度切換部25は、操作部22を介して使用者から入力される増幅度になるように増幅度を設定する。
フィルタ部26は、通信部21を介して受信した心音のデータをフィルタリング処理して、雑音等を除去する処理を行う。
【0051】
AD(Analog-Digital)変換部27は、通信部21を介して受信した心音のデータをアナログ信号からデジタル信号へ変換するように、制御部20aによって制御される。デジタル信号へ変換された心音のデータは、制御部20aを介して、演算・判定部28へ送信される。
演算・判定部(データ解析部、判定部)28は、AD変換された心音のデータを用いて、心音の波形を解析し、異常の有無を判定する。
【0052】
より具体的には、演算・判定部28は、心音の1拍分のデータに含まれるI音(第1音)、II音(第2音)、III音(第3音)、IV音(第4音)を含む波形を解析し、この解析結果に基づいて、心音の異常の有無を判定する。
ここで、心音の1拍分のデータには、図3に示すように、心電図波形に現れるP波(心臓の心房の電気的興奮)に対応するタイミングで現れるIV音、心電図波形に現れるR波(心室の電気的興奮)に対応するタイミングで現れるI音、心電図波形に現れるT波(心室興奮の電気的回復)に対応するタイミングで現れるII音、およびT波の終わりに対応するタイミングで現れるIII音が、含まれる。
【0053】
なお、図3では、心音検出部11において検出される心音の波形と心電図の波形との関係を示すために、上段に心電図の波形を示しているが、本実施形態では、聴診器10において心電図の波形が取得されることを意味するものではない。
I音は、心臓の心室が収縮する際に生じる音である。II音は、心室の拡張が開始した際に生じる音である。III音は、心室の拡張が終了した際に生じる音である。IV音は、心臓の心房が収縮した際に生じる音である。
【0054】
図3に示すように、I音とII音とは、III音およびIV音と比較して大きな波形として現れやすく、被検者によっては、III音とIV音とが非常に小さい場合もある。
そして、演算・判定部28は、図4に示すように、心音の1拍分のデータに含まれるI音(第1音)、II音(第2音)、III音(第3音)、IV音(第4音)の少なくとも1つの波形の信号強度(Peak-to-Peak)、持続時間、波形間の間隔のうちの少なくとも1つを用いて、心音の異常の有無を判定する。
【0055】
演算・判定部28は、解析されたI音、II音、III音およびIV音の波形と、被検者の過去の心音のI音、II音、III音およびIV音の波形とを比較して、心音の異常の有無を判定する。
演算・判定部28は、解析されたI音、II音、III音およびIV音の波形と、判定の基準となる一般的な健常者の心音のI音、II音、III音およびIV音の波形とを比較して、心音の異常の有無を判定する。
【0056】
さらに、演算・判定部28は、解析された心音のI音、II音、III音およびIV音の波形と過去の心音のI音、II音、III音およびIV音の波形とを比較して、所定のパラメータ(波形の信号強度、波形の持続時間、波形間の間隔、波形の特徴等)の差分値を算出し、差分値が所定の閾値以上であるか否かに応じて、心音の異常の有無を判定する。
【0057】
また、演算・判定部28は、解析された心音のI音、II音、III音およびIV音の波形と過去の心音のI音、II音、III音およびIV音の波形とを比較して算出された所定のパラメータの差分値が所定の閾値以上であって、一般的な健常者の心音の波形とを比較して算出された所定のパラメータの差分値が所定の閾値未満である場合には、被検者の状態が要経過観察であると判定する。
【0058】
演算・判定部28は、解析された心音のI音、II音、III音およびIV音の波形と過去の心音のI音、II音、III音およびIV音の波形とを比較して算出された所定のパラメータの差分値が所定の閾値未満であって、一般的な健常者の心音の波形とを比較して算出された所定のパラメータの差分値が所定の閾値以上である場合には、被検者の状態が要経過観察であると判定する。
【0059】
なお、聴診器10において測定された心音のデータと過去の心音のデータとの差分値を用いた判定に使用される閾値と、聴診器10において測定された心音のデータと一般的な健常者の心音のデータとの差分値を用いた判定に使用される閾値と、は、各パラメータ(波形の信号強度、波形の持続時間、波形間の間隔、波形の特徴等)ごとに設定されている。
【0060】
また、聴診器10において測定された心音のデータと過去の心音のデータとの差分値を用いた判定に使用される閾値と、聴診器10において測定された心音のデータと一般的な健常者の心音のデータとの差分値を用いた判定に使用される閾値と、は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
表示部29aは、PC20の液晶表示パネル等であって、演算・判定部28における判定結果、心音データの波形等を表示するように、制御部20aによって制御される。
音声出力部(心音再生部)29bは、演算・判定部28における判定結果に基づいて、通信部21において取得された心音のデータを再生するように、制御部20aによって制御される。
【0061】
<聴診方法>
本実施形態のPC20は、以上のような構成を備えており、図5に示すフローチャートに従って、聴診方法を実施する。
すなわち、ステップS11では、聴診器10が、心音検出部11において検出された心音のデータを、通信部13を介して、PC20へ送信する。
【0062】
次に、ステップS12では、PC20が、通信部21を介して、聴診器10から送信された心音のデータ(I音~IV音を特定可能な波形)を受信する。
次に、ステップS13では、PC20の演算・判定部28が、I音~IV音を含む波形のそれぞれの信号強度(Peak-to-Peak)、持続時間、波形間の時間間隔、波形の特徴(FFT)を演算処理によって算出する。
【0063】
次に、ステップS14では、PC20の制御部20aが、記憶部23から、同一の被検者の過去に聴診器10によって測定された心音のデータを読み出す。
次に、ステップS15では、PC20の制御部20aが、記憶部23から、一般的な健常者の心音のデータを読み出す。
次に、ステップS16では、演算・判定部28が、聴診器10において測定されPC20が取得した心音のデータと、制御部20aによって記憶部23から読み出された同一の被検者の過去の心音のデータおよび一般的な健常者の心音のデータとを比較するためにセットする。
【0064】
次に、ステップS17では、演算・判定部28が、PC20が聴診器10から取得した心音のデータと、制御部20aによって記憶部23から読み出された同一の被検者の過去の心音のデータおよび一般的な健常者の心音のデータとを比較して、その差分値を算出する。
次に、ステップS18では、PC20が聴診器10から取得した心音のデータと、制御部20aによって記憶部23から読み出された同一の被検者の過去の心音のデータとの差分値が所定の閾値以上であるか否かを判定する。
ここで、差分値が所定の閾値以上である場合には、ステップS19へ進み、閾値未満である場合には、ステップS20へ進む。
【0065】
次に、ステップS19では、ステップS18において、差分値が所定の閾値以上であると判定されたため、演算・判定部28が、PC20が聴診器10から取得した心音のデータと制御部20aによって記憶部23から読み出された一般的な健常者の心音のデータとの差分値が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。
ここで、差分値が所定の閾値以上である場合には、ステップS22へ進み、閾値未満である場合には、ステップS21へ進む。
【0066】
次に、ステップS20では、ステップS18において、差分値が所定の閾値未満であると判定されたため、演算・判定部28が、PC20が聴診器10から取得した心音のデータと制御部20aによって記憶部23から読み出された一般的な健常者の心音のデータとの差分値が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。
ここで、差分値が所定の閾値以上である場合には、ステップS21へ進み、閾値未満である場合には、ステップS23へ進む。
【0067】
次に、ステップS21では、ステップS18において、PC20が聴診器10から取得した心音のデータと制御部20aによって記憶部23から読み出された同一の被検者の過去の心音のデータとの差分値が所定の閾値未満であって、ステップS20において、PC20が聴診器10から取得した心音のデータと制御部20aによって記憶部23から読み出された一般的な健常者の心音のデータとの差分値が所定の閾値以上と判定されたため、演算・判定部28が、“要経過観察”という判定を行う。
【0068】
同様に、ステップS21では、ステップS18において、PC20が聴診器10から取得した心音のデータと制御部20aによって記憶部23から読み出された同一の被検者の過去の心音のデータとの差分値が所定の閾値以上であって、ステップS19において、PC20が聴診器10から取得した心音のデータと制御部20aによって記憶部23から読み出された一般的な健常者の心音のデータとの差分値が所定の閾値未満と判定されたため、演算・判定部28が、“要経過観察”という判定を行う。
【0069】
次に、ステップS22では、ステップS18において、PC20が聴診器10から取得した心音のデータと制御部20aによって記憶部23から読み出された同一の被検者の過去の心音のデータとの差分値が所定の閾値以上であって、ステップS19において、PC20が聴診器10から取得した心音のデータと制御部20aによって記憶部23から読み出された一般的な健常者の心音のデータとの差分値が所定の閾値以上と判定されたため、演算・判定部28が、“要受診”という判定を行う。
【0070】
次に、ステップS23では、ステップS18において、PC20が聴診器10から取得した心音のデータと制御部20aによって記憶部23から読み出された同一の被検者の過去の心音のデータとの差分値が所定の閾値未満であって、ステップS20において、PC20が聴診器10から取得した心音のデータと制御部20aによって記憶部23から読み出された一般的な健常者の心音のデータとの差分値が所定の閾値未満と判定されたため、演算・判定部28が、“異常なし”という判定を行う。
【0071】
次に、ステップS24では、PC20の制御部20aが、ステップS21~ステップS23における判定結果(要経過観察、要受診、異常なし)を表示するように、表示部29aを制御する。
次に、ステップS25では、PC20の制御部20aが、聴診器10において測定され取得した心音のデータの波形を表示するように、表示部29aを制御する。
【0072】
次に、ステップS26では、PC20の制御部20aが、判定結果に対応する心音のデータを再生するように、音声出力部29bを制御する。
次に、ステップS27では、PC20の制御部20aが、記憶部23に保存されている同一被検者の過去の心音のデータ、一般的な健常者の心音のデータを読み出して比較した表示を行うように、表示部29aを制御する。
【0073】
次に、ステップS28では、PC20の制御部20aが、演算・判定部28による判定結果と、判定結果に対応する心音のデータとを、記憶部23に保存させる。
次に、ステップS29では、ステップS21~ステップS23における判定結果が“要受診”であった(ステップS22)か否かを判定する。
ここで、判定結果が“要受診”であった場合には、ステップS30へ進み、“要受診”以外であった場合には、そのまま処理を終了する。
【0074】
次に、ステップS30では、ステップS29において、ステップS21~ステップS23における判定結果が“要受診”であったと判定されたため、医師への情報提供を図るために、PC20が、通信部21を介して、クラウドサーバ30および遠隔地端末40へ、“要受診”に対応する心音のデータ、判定結果等の情報を送信するために、通信を開始する。
【0075】
次に、ステップS31では、クラウドサーバ30および遠隔地端末40が、PC20から受信した判定結果および心音のデータを、記憶部32、記憶部44にそれぞれ保存する。
次に、ステップS32では、PC20が、クラウドサーバ30および遠隔地端末40との通信を終了し、処理を終了する。
【0076】
<主な特徴>
本実施形態のPC20は、図2に示すように、通信部21と、演算・判定部28とを備える。通信部21は、聴診器10から心音のデータを取得する。演算・判定部28は、通信部21において取得された心音の1拍に含まれるI音、II音、III音、IV音を含む波形を解析する。演算・判定部28は、解析されたI音、II音、III音、IV音を含む波形の解析結果に基づいて、心音の異常の有無を判定する。
【0077】
これにより、心拍1回に含まれる心音データから、I音、II音、III音、IV音を含む波形を解析し、それぞれの音の過去の被検者の心音データとの差異、一般的な健常者の心音データとの差異等に応じて、心音の異常の有無を判定することができる。
この結果、心音の異常の有無を従来よりも高精度に検出することができる。
また、PC20では、心音のデータに含まれるI音、II音、III音、IV音を特定可能な特徴のある波形を取得してI~IV音の波形のそれぞれの信号強度(Peak-to-Peak)、波形の持続時間、各波形間の時間間隔、波形特徴(FFT解析等)を演算処理によって算出することができる。
【0078】
これにより、得られたデータを過去の被検者自身のデータ、または一般の健常者のデータと比較することで、過去・一般のデータとの差分値を算出して、差分値が予め設定された閾値未満であれば正常、閾値以上であれば異常と判定する。
この結果、異常と判定された場合には、例えば、判定結果をユーザに表示して知らせる、判定結果を医師等が使用する遠隔地端末40へ送信する等の対応を採ることができる。
【0079】
(実施形態2)
本発明の他の実施形態に係る聴診器(聴診装置)110およびこれを備えた聴診システム101について、図6を用いて説明すれば以下の通りである。
本実施形態の聴診システム101では、心音のデータを用いた異常判定を行う主体が、PC120ではなく、聴診器110である点において、上記実施形態1の構成とは異なっている。
【0080】
なお、上記相違点以外の構成は、基本的に上記実施形態1と同様であることから、上記実施形態1で登場した構成については、同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
すなわち、本実施形態の聴診器110は、図6に示すように、PC120、クラウドサーバ30および遠隔地端末40とともに、聴診システム101を構成する。
PC120は、図6に示すように、通信部21と、操作部22と、記憶部23と、制御部120aと、を備えている。
【0081】
制御部120aは、通信部21、操作部22、記憶部23および表示部29aを制御する。
聴診器110は、図6に示すように、心音検出部(データ測定部)11と、増幅部111と、制御部(データ解析部、判定部)112と、AD変換部113と、増幅度切換部114と、フィルタ部115と、通知部116と、通信部13と、音声出力部(心音再生部)117と、表示部118と、を備えている。
【0082】
増幅部111は、心音検出部11において検出された心音のデータを増幅処理してAD変換部113へ送信する。
制御部(データ解析部、判定部)112は、上記実施形態1のPC20に設けられた演算・判定部28に対応する構成であって、AD変換部113においてAD変換された心音のデータを用いて、心音の波形を解析し、異常の有無を判定する。
【0083】
より具体的には、制御部112は、心音の1拍分のデータに含まれるI音(第1音)、II音(第2音)、III音(第3音)、IV音(第4音)を含む波形を解析し、この解析結果に基づいて、心音の異常の有無を判定する。
AD(Analog-Digital)変換部113は、心音検出部11において検出された心音のデータをアナログ信号からデジタル信号へ変換するように、制御部112によって制御される。
【0084】
増幅度切換部114は、使用者から入力される増幅度になるように増幅度を設定する。
フィルタ部115は、心音検出部11において検出された心音のデータをフィルタリング処理して、雑音等を除去する処理を行う。
なお、フィルタ部115として、デジタルフィルタが用いられる場合には、制御部112に接続されていればよい。また、フィルタ部115として、アナログフィルタが用いられる場合には、図6に示すように、心音検出部11と増幅部111との間に挿入されていればよい。
【0085】
通知部116は、制御部112における異常判定の結果に応じて、音声出力部117および/または表示部118において、判定結果に応じた通知を行うように、制御部112によって制御される。
音声出力部(心音再生部)117は、制御部112における判定結果に基づいて、心音検出部11において検出された心音のデータを再生するように、制御部112によって制御される。
【0086】
表示部118は、聴診器110に設けられた液晶表示パネル等であって、制御部112における判定結果、心音データの波形等を表示するように、制御部112によって制御される。
本実施形態の聴診器110は、以上のように、聴診器110内において心音検出部11において検出された心音の異常の有無を判定する。
【0087】
すなわち、聴診器110は、被検者の心音の測定を行い、異常の有無を判定する装置であって、心音検出部(データ測定部)11と、制御部112と、を備えている。心音検出部11は、心音のデータを測定する。制御部112は、心音検出部11において測定された心音の1拍に含まれる第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析する。制御部112は、解析された第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形の解析結果に基づいて、心音の異常の有無を判定する。
これにより、心拍1回に含まれる心音データから、第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析し、それぞれの音の過去の被検者の心音データとの差異、一般的な健常者の心音データとの差異等に応じて、心音の異常の有無を判定することができる。
この結果、心音の異常の有無を従来よりも高精度に検出することができる。
【0088】
(実施形態3)
本発明のさらに他の実施形態に係る聴診器(聴診装置)210、PC(聴診装置)220およびこれを備えた聴診システム201について、図7を用いて説明すれば以下の通りである。
【0089】
本実施形態の聴診システム201では、心音のデータの検出からAD変換までの処理を、PC220ではなく聴診器210側において行い、AD変換後のデータをPC220へ送信して、PC220側において心音データの異常判定処理を行う点において、上記実施形態1,2の構成とは異なっている。
なお、上記相違点以外の構成は、基本的に上記実施形態1,2と同様であることから、上記実施形態1,2で登場した構成については、同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0090】
すなわち、本実施形態の聴診器210は、図7に示すように、PC220、クラウドサーバ30および遠隔地端末40とともに、聴診システム201を構成する。
聴診器210は、図7に示すように、心音検出部(データ測定部)11と、フィルタ部115と、増幅部111と、制御部12と、AD変換部113と、増幅度切換部114と、通信部13と、を備えている。
【0091】
このため、聴診器210では、心音検出部11において検出された心音のデータは、フィルタ部115によってフィルタリング処理され、増幅部111において増幅処理され、AD変換部113においてアナログデータからデジタルデータに変換された後、通信部13を介して、PC220へ送信される。
これにより、心音検出部11において検出された心音のデータを増幅処理してからPC220へ送信することで、心音検出部11において検出された心音のデータをそのままPC220へ送信する構成と比較して、ノイズが混入してしまうことを抑制することができる。
【0092】
PC220は、図7に示すように、通信部21と、操作部22と、記憶部23と、演算・判定部28と、表示部29aと、音声出力部29bと、制御部120aと、を備えている。
制御部120aは、通信部21、操作部22、記憶部23、演算・判定部28、表示部29aおよび音声出力部29bを制御する。
【0093】
演算・判定部28は、通信部21を介して、聴診器210側において増幅処理およびAD変換処理が行われた心音のデータを取得し、比較的ノイズの少ない心音データを用いて異常の有無を判定する。
これにより、上記実施形態1,2と同様に、心拍1回に含まれる心音データから、第1音、第2音、第3音、第4音を含む波形を解析し、それぞれの音の過去の被検者の心音データとの差異、一般的な健常者の心音データとの差異等に応じて、心音の異常の有無を判定することができる。
この結果、心音の異常の有無を従来よりも高精度に検出することができる。
【0094】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、聴診器10および聴診方法として、本発明を実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上述した聴診方法をコンピュータに実行させる聴診プログラムとして本発明を実現してもよい。
【0095】
この聴診プログラムは、聴診装置に搭載されたメモリ(記憶部)に保存されており、CPUがメモリに保存された聴診プログラムを読み込んで、ハードウェアに各ステップを実行させる。より具体的には、CPUが聴診プログラムを読み込んで、上述したデータ取得ステップと、データ解析ステップと、判定ステップと、を実行することで、上記と同様の効果を得ることができる。
また、本発明は、聴診プログラムを保存した記録媒体として実現されてもよい。
【0096】
(B)
上記実施形態では、PC20の演算・判定部28あるいは聴診器110の制御部112において、同一の被検者の過去の心音のデータおよび一般的な健常者の心音のデータと、聴診器10,110において測定された心音のデータとを比較して、異常の有無を判定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、聴診器において測定された心音のデータと比較する対象は、同一の被検者の過去のデータおよび一般的な健常者の心音のデータのいずれか1つであってもよい。
この場合でも、被検者の心音に異常があるか否かを判定することができる。
【0097】
(C)
上記実施形態では、聴診器10において測定された心音のデータに関する判定の結果として、要受診、要経過観察、異常なしの3段階での判定を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、判定用の閾値を複数段階で設定し、要受診、要経過観察、異常なしという3段階の判定結果に加えて、より細かく4段階以上で判定してもよい。
【0098】
(D)
上記実施形態では、心音の異常の有無を判定するために用いられるパラメータとして、図4に示すように、心音の波形に含まれるI音、II音、III音およびIV音の波形の信号強度、持続時間、波形の間隔等を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、心音の波形に含まれるI音、II音、III音およびIV音の波形の特徴(例えば、FFT(Fast Fourier Transformation)解析による周波数特性等)が、異常判定のパラメータとして用いられてもよい。
【0099】
(E)
上記実施形態1では、聴診器10から心音のデータを受信して異常の有無を判定する聴診装置として、PC20を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、PCの代わりに、スマートフォン、タブレット端末等の装置が、聴診装置として用いられてもよい。
【0100】
(F)
上記実施形態では、被検者の心音の異常の有無を判定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、被検者の異常の有無は、心音に限定されるものではなく、呼吸音、肺音、腸音等の他の生体音の波形を用いて判定されてもよい。
【0101】
(G)
上記実施形態では、被検者の胸部に貼り付けた状態で使用される聴診器10を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、医師等によって被検者の胸部等に聴診部を当てて心音のデータを取得するデジタル聴診器に、本発明が適用されてもよい。
【0102】
<付記>
第4の本発明に係る聴診装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る聴診装置であって、前記判定部は、前記データ解析部において解析された前記波形と、前記被検者の過去の心音の波形とを比較して、前記心音の異常の有無を判定してもよい。
【0103】
第5の発明に係る聴診装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る聴診装置であって、前記判定部は、前記データ解析部において解析された前記波形と、一般的な健常者の心音の波形とを比較して、前記心音の異常の有無を判定してもよい。
第9の発明に係る聴診装置は、第1から第8の発明のいずれか1つに係る聴診装置であって、前記第1音は、心臓の心室が収縮する際に生じる音であって、前記第2音は、前記心室の拡張が開始した際に生じる音である。
【0104】
第10の発明に係る聴診装置は、第1から第9の発明のいずれか1つに係る聴診装置であって、前記第3音は、前記心室の拡張が終了した際に生じる音であって、前記第4音は、前記心臓の心房が収縮した際に生じる音である。
第11の発明に係る聴診装置は、第1から第10の発明のいずれか1つに係る聴診装置であって、前記判定部における判定結果を表示する表示部を、さらに備えている。
【0105】
第12の発明に係る聴診装置は、第1から第11の発明のいずれか1つに係る聴診装置であって、前記判定部における判定結果に基づいて、前記データ取得部において取得された心音のデータを再生する心音再生部を、さらに備えている。
第13の発明に係る聴診装置は、第1から第12の発明のいずれか1つに係る聴診装置であって、前記データ取得部において取得された前記心音のデータ、前記判定部における判定結果を保存する記憶部を、さらに備えている。
【0106】
第14の発明に係る聴診システムは、第1から第13の発明のいずれか1つに係る聴診装置と、前記聴診装置から前記心音のデータ、前記判定結果が送信される遠隔地端末と、を備えている。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の聴診装置は、心音の異常の有無を従来よりも高精度に検出することができるという効果を奏することから、心音データを測定して解析を行う各種装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 聴診システム
10 聴診器
11 心音検出部
12 制御部
13 通信部
20 PC(聴診装置)
20a 制御部
21 通信部(データ取得部)
22 操作部
23 記憶部
24 増幅部
25 増幅度切換部
26 フィルタ部
27 AD変換部
28 演算・判定部(データ解析部、判定部)
29a 表示部
29b 音声出力部(心音再生部)
30 クラウドサーバ
31 通信部
32 記憶部
40 遠隔地端末
41 通信部
42 制御部
43 表示部
44 記憶部
101 聴診システム
110 聴診器(聴診装置)
111 増幅部
112 制御部(データ解析部、判定部)
113 AD変換部
114 増幅度切換部
115 フィルタ部
116 通知部
117 音声出力部(心音再生部)
118 表示部
120 PC
120a 制御部
201 聴診システム
210 聴診器
220 PC(聴診装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7