(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143146
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電子部品包装用カバーテープおよび包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 25/08 20060101AFI20241003BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B25/08
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055671
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】丹下 陽平
(72)【発明者】
【氏名】長塚 保則
(72)【発明者】
【氏名】安藤 瑠
(72)【発明者】
【氏名】三原 貴志
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 聡之
(72)【発明者】
【氏名】村田 鮎郎
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
3E086AC07
3E086AC22
3E086AD09
3E086BA04
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3E086BA33
3E086BB22
3E086BB35
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3E086BB66
3E086CA31
3E086DA08
4F100AK12B
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100AK51
4F100AK63C
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4F100AK73C
4F100AN00C
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4F100JL04
4F100JL12B
4F100YY00C
(57)【要約】 (修正有)
【課題】カールを抑制することが可能な電子部品包装用カバーテープを提供する。
【解決手段】基材層2と、上記基材層の一方の面側に配置されたヒートシール層3と、上記基材層と上記ヒートシール層との間に配置された中間層4と、を有する電子部品包装用カバーテープであって、上記中間層は、上記ヒートシール層側から、ゴム系材料を含む第1層41と、第2層42とを、この順に有し、上記電子部品包装用カバーテープの反り量が1.9mm以下である、電子部品包装用カバーテープである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に配置されたヒートシール層と、
前記基材層と前記ヒートシール層との間に配置された中間層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記中間層は、前記ヒートシール層側から、ゴム系材料を含む第1層と、第2層とを、この順に有し、
前記電子部品包装用カバーテープの反り量が1.9mm以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項2】
前記第1層の厚さは、1μm以上、8μm以下である、請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項3】
前記電子部品包装用カバーテープの曲げ弾性率は、950MPa以下である、請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項4】
前記電子部品包装用カバーテープの破断点伸度は、97%以上である、請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項5】
前記ゴム系材料は、スチレン・ブタジエン共重合樹脂である、請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項6】
電子部品を収納する複数の収納部を有するキャリアテープと、
前記収納部に収納された電子部品と、
前記収納部を覆うように配置された、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の電子部品包装用カバーテープと、
を備える、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品包装用カバーテープおよびそれを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC、抵抗、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ、圧電素子レジスタ等の電子部品は、テーピング包装され、表面実装に供せられる。テーピング包装においては、電子部品を収納する収納部を複数有するキャリアテープに電子部品を収納した後に、キャリアテープをカバーテープでヒートシールし、電子部品を保管および搬送するための包装体を得る。電子部品の実装時には、カバーテープをキャリアテープから剥離し、電子部品を自動的に取り出して基板に表面実装する。なお、カバーテープはトップテープとも称される。
【0003】
電子部品包装用のカバーテープとして、例えば特許文献1には、基材層と中間層と、を備え、前記中間層の、23℃における寸法と、80℃で2時間加熱した後の寸法とを対比し、中間層の流れ方向(MD方向)の寸法変化率および幅方向(TD方向)の寸法変化率が、それぞれ所定の範囲であるカバーテープが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カバーテープは、通常、基材層と、ヒートシール層と、基材層とヒートシール層との間に配置される中間層と、を有する。ヒートシール層と中間層との密着性を向上させるために、中間層を2層以上の多層構造とし、ヒートシール層側に位置する第1層に、剛性が高いゴム系材料を配合する場合がある。ゴム系材料が配合されることにより、第1層の剛性は比較的高くなる。このような剛性が高い第1層と、第1層以外の剛性が低い第2層とが積層されることとなり、内部応力(引張応力)に差が生じる可能性が高くなる。その結果、中間層が第1層側に引っ張られ、第1層側が凹となるカールが生じてしまい、カバーテープとした場合においても、ヒートシール層側が凹となるカールが生じる場合がある。カバーテープにカールが生じると、キャリアテープにカバーテープをテーピングする際に位置ずれが生じたり、包装体内でチップが回転し実装不良につながる恐れがある。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、カールを抑制することが可能な電子部品包装用カバーテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態は、基材層と、前記基材層の一方の面側に配置されたヒートシール層と、上記基材層と上記ヒートシール層との間に配置された中間層と、を有する電子部品包装用カバーテープであって、上記中間層は、上記ヒートシール層側から、ゴム系材料を含む第1層と、第2層とを、この順に有し、上記電子部品包装用カバーテープの反り量が1.9mm以下である、電子部品包装用カバーテープである。
【0008】
本開示の一実施形態は、電子部品を収納する複数の収納部を有するキャリアテープと、上記収納部に収納された電子部品と、上記収納部を覆うように配置された、上述の電子部品包装用カバーテープと、を備える、包装体である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の電子部品包装用カバーテープによれば、カールの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の電子部品包装用カバーテープを例示する概略断面図である。
【
図2】本開示の電子部品包装用カバーテープを例示する概略断面図である。
【
図3】本開示の電子部品包装用カバーテープを例示する概略断面図である。
【
図4】本開示の包装体を例示する概略平面図および断面図である。
【
図5】電子部品包装用カバーテープの反り量の測定方法を説明する図である。
【
図6】電子部品包装用カバーテープの曲げ弾性率を測定するためのインストロン万能試験機の概略図である。
【
図7】実施例及び比較例における中間層の第1層の厚さと、反り量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」、あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0013】
以下、本開示の電子部品包装用カバーテープおよび包装体について、詳細に説明する。なお、本明細書において、「電子部品包装用カバーテープ」を単に「カバーテープ」と称する場合がある。
【0014】
A.電子部品包装用カバーテープ
本開示の電子部品包装用カバーテープは、基材層と、上記基材層の一方の面側に配置されたヒートシール層と、上記基材層と上記ヒートシール層との間に配置された中間層と、
を有する電子部品包装用カバーテープであって、上記中間層は、上記ヒートシール層側から、ゴム系材料を含む第1層と、第2層とを、この順に有し、上記電子部品包装用カバーテープの反り量が1.9mm以下である、電子部品包装用カバーテープである。
【0015】
本開示のカバーテープについて、図面を参照して説明する。
図1は本開示のカバーテープの一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、本開示のカバーテープ1は、基材層2と、基材層2の一方の面側に配置されたヒートシール層3と、基材層2とヒートシール層3との間に配置された中間層4とを有する。中間層4はヒートシール層3側から、ゴム系材料を含む第1層41と、第2層42とを、この順に有する。本開示においては、カバーテープ1の反り量は1.9mm以下である。また、
図2に示すように、第2層42は2層以上(42aおよび42b)から構成されるものであってもよい。また、
図3に示すように、基材層2のヒートシール層3側の面とは反対の面側に、帯電防止層5が配置されていてもよい。
【0016】
図4(a)、(b)は本開示の電子部品包装用カバーテープを用いた包装体の一例を示す概略平面図および断面図であり、
図4(b)は
図4(a)のA-A線断面図である。
図4(a)、(b)に示すように、包装体10は、電子部品13を収納する複数の収納部12を有するキャリアテープ11と、収納部12に収納された電子部品13と、収納部12を覆うように配置されたカバーテープ1と、を備える。キャリアテープ11にはカバーテープ1がヒートシールされており、カバーテープ1のヒートシール層3の両端に所定の幅でライン状にヒートシール部3hが設けられている。また、包装体10において、キャリアテープ11は、送り穴14を有することができる。
【0017】
上述のように、ゴム系材料が配合されることにより、中間層における第1層は、剛性が比較的高くなる。このような剛性が高い第1層と、第1層以外の剛性が低い第2層とが積層されると、内部応力に差が生じる可能性が高くなる。その結果、中間層が第2層側に引っ張られ、第2層側が凹となるカールが生じる場合がある。このようなカールは、中間層の各層の材料の違いによって生じているため、ニップロールで水平に伸ばしたとしても、和らげることは難しい。
【0018】
本開示の発明者らは、中間層がゴム系材料を含む層を有する場合においても、中間層、ヒートシール層、基材層等の厚さや材料を調整、選択することによって、カールが抑制されたカバーテープとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
具体的には、カバーテープの曲げ弾性率が低くなるように、または、カバーテープの破断点伸度が高くなるように、中間層における第1層の厚さの調整、中間層を構成する各層のベース樹脂の種類の選択、ヒートシール層を構成する樹脂の種類の選択等を行うことによって、本開示におけるカバーテープを構成することができる。
以下、本開示のカバーテープについて、パラメータおよび層構成に分けて、詳細に説明する。
【0020】
I.パラメータ
1.反り量
本開示におけるカバーテープは、反り量が、通常、1.9mm以下であり、1.6mm以下であってもよい。本開示において、上記カバーテープの反り量は以下のように測定した値である。まず、
図5(a)に示すように、カバーテープを幅方向にカットすることにより、長さ200mm、幅9.5mmのサンプルS1を得る。次に、
図5(b)に示すように、サンプルS1をヒートシール側を下側にして、滑らかな水平面を有する金属板上に載置する。サンプルS1が動かないことを目視で確認してから、5分間静置する。その後、
図5(c)に示すような、水平面から最も高い、サンプルS1のカール部分の高さHを反り量として得る。なお、
図5(c)は
図5(b)のA-A断面図である。これを同一のカバーテープに対し2回繰り返し、その2回の測定結果の平均値を算出し、記録する。また、測定環境は、23℃±2℃、湿度50%±5%の環境とする。なお、本開示におけるカバーテープは、カバーテープの長さ方向が、中間層形成時のMD方向であり、カバーテープの幅方向が、中間層形成時のTD方向となる。
【0021】
2.曲げ弾性率
本開示におけるカバーテープの曲げ弾性率は、例えば、950MPa以下であり、930MPa以下であることが好ましい。曲げ弾性率が上記値以下であれば、カバーテープの反り量を低減することができるために好ましい。また、カバーテープの曲げ弾性率は、例えば、850MPa以上であり、890MPa以上であってもよい。
【0022】
本開示において、曲げ弾性率は、JIS K 7171:2016に準拠して下記測定条件で3点曲げを実施し、測定された値である。測定装置としては、例えば、
図6に例示されるような、インストロン万能試験機(株式会社インストロン社製)を用いることができる。
図6中、S2はカバーテープのサンプル、hはサンプル(カバーテープ)の厚さ、lは支点間距離、R1およびR2はそれぞれ圧子を示す。また、サンプルS2は、ヒートシール層側を圧子R1側となるように配置する。
(測定条件)
・試験速度 2mm/min
・サンプル規格 80mm×10mm×hmm
・支点間距離 l=16×h(mm)
・圧子半径 R1=R2=5mm
【0023】
3.破断点伸度
本開示におけるカバーテープの破断点伸度は、例えば、80%以上であり、85%以上であってもよく、90%以上であってもよい。破断点伸度の値が大きいほど、カバーテープの柔軟性が高いことを意味する。破断点伸度が上記値以上であれば、カバーテープの反り量を低減することができるために好ましい。一方、本開示におけるカバーテープの破断点伸度は、例えば、100%以下である。
【0024】
カバーテープの破断点伸度は、株式会社エー・アンド・デイ社製 テンシロン万能材料試験機 RTF-1210を用いて、下記測定条件で測定された値である。
(測定条件)
・荷重フルスケール 500N
・試験速度 500mm/min
・サンプル規格 15mm×50mm
【0025】
II.層構成
本開示におけるカバーテープは、基材層、中間層、およびヒートシール層を、厚さ方向において、この順に有する。本開示においては、このような各層を調整することにより、具体的には、中間層における第1層の厚さの調整、中間層を構成する各層の樹脂の種類の選択、ヒートシール層を構成する樹脂の種類の選択、基材層を構成する樹脂の種類、基材層の厚みの調整等をすることにより、カバーテープの反り量を上記値以下に低減することができる。
【0026】
すなわち、カバーテープの曲げ弾性率が高い場合、または、カバーテープの破断点伸度が低い場合は、上記第1層に含まれるゴム材料の種類や量、さらには第1層の厚みに起因して、カバーテープ全体をしての剛性が高くなっている場合がある。このような場合は、上記第2層との関係で、カバーテープの反り量が大きくなると想定される。したがって、カバーテープの曲げ弾性率が低くなるように、または、カバーテープの破断点伸度が高くなるように上記第1層の厚さを調整することにより、カバーテープの反り量を低減することができる。また、第1層に含まれる樹脂を第2層のものと比較して剛性の低い樹脂を選択することによってもカバーテープ全体の反り量を低減することが可能となる。
【0027】
また、ヒートシール層に関しては、ヒートシール特性を維持しつつ、より剛性の低い材料を用いることによりカバーテープ全体の反り量を低減することが可能となる。さらに、基材層に関しては、基材層としての機能を維持しつつ、より剛性の高い材料を用いる、もしくは基材層をより厚い方向に調整することによっても、カバーテープ全体の反り量を低減することが可能となる。
以下、本開示のカバーテープを構成する各層について、説明する。
【0028】
1.中間層
本開示における中間層は、基材層とヒートシール層との間に配置される。上記中間層により、本開示のカバーテープをキャリアテープにヒートシールする際に、クッション性を向上させることができるために、より均一にヒートシール層に熱を与えることができる。
【0029】
本開示における中間層は、多層構造を有し、ヒートシール層側から、第1層と、第2層(第2層は複数の層であってもよい。)とを、この順に有する。
【0030】
(1)第1層
本開示における第1層は、中間層における第2層とヒートシール層との間に位置する。また、第1層のヒートシール層側の面は、通常、中間層のヒートシール層側の面を構成する。中間層における第1層は、ゴム系材料を含むことにより、中間層とヒートシール層との密着性を向上させる機能を有する。
【0031】
本開示における第1層は、ゴム系材料を含む。ゴム系材料としては、ゴム系エラストマーが好ましく、中でも熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとは、常温ではエラストマー、即ち、加硫ゴムの性質を示し、高温では熱可塑性を示す物質を意味する。熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、このようなゴム系材料としては、スチレン・ブタジエン共重合樹脂(SBC)、オレフィン系熱可塑性樹脂(TPO)、ウレタン系熱可塑性樹脂(TPU)、塩化ビニル系熱可塑性樹脂(TPVC)等が挙げられる。ゴム系材料は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0032】
また、第1層は、上述したゴム系材料以外の樹脂を含むことが好ましい。すなわち、第1層は、ゴム系材料、およびゴム系材料以外の樹脂を含む混合組成物であることが好ましい。ゴム系材料以外の樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル系樹脂、ポリエチレンビニルアセテート共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、ポリプロピレン、アイオノマー、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体のいずれかもしくは混合体が挙げられる。中でも、ポリエチレン系樹脂が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が特に好ましい。カバーテープの曲げ弾性率を下げることができるためである。
【0033】
本開示における第1層は、ゴム系材料および上記樹脂の合計に対するゴム系材料の割合が、例えば、35質量%以上であり、40質量%以上であってもよく、45質量%以上であってもよい。一方、上記割合は、例えば、65質量%以下であり、60質量%以下であってもよく、55質量%以下であってもよい。上記割合は、例えば、35質量%以上、65質量%以下であり、40質量%以上、60質量%以下であってもよく、45質量%以上、55質量%以下であってもよい。
【0034】
本開示における第1層の厚さは、8μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。厚さが上記値以下であれば、カバーテープの反り量を低減することができる。一方、第1層の厚さは、例えば、1μm以上である。厚さが上記値以上であれば、中間層とヒートシール層との密着性を向上させることができる。
【0035】
中間層全体の厚さに対する、第1層の厚さの割合(第1層の厚さ(μm)/中間層全体の厚さ(μm))は、好ましくは、0.35以下であり、より好ましくは、0.20以下である。一方、例えば、0.10以上である。
【0036】
(2)第2層
本開示における第2層は、中間層における第1層と基材層との間に位置する。第2層は、通常、上述したゴム系材料を含まない。第2層は、上述したゴム系材料以外の樹脂を主成分として含むことが好ましい。第2層における上述したゴム系材料以外の樹脂の含有量としては、80質量%以上であってもよいし、90質量%以上であってもよいし、100質量%であってもよい。
【0037】
第2層に含まれる樹脂としては、第1層に含まれる樹脂として例示したものと同様のものが挙げられる。中でも、ポリエチレン系樹脂が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が特に好ましい。第2層に含まれる樹脂は、第1層に含まれる樹脂と同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0038】
また、第2層は、2層以上から構成されるものであってもよい。第2層は、例えば、
図2に示すように2層構成であってもよい。
【0039】
第2層の厚さは、特に限定されないが、例えば、20μm以上であり、24μm以上であってもよい。第2層の厚さが上記値以上であれば、クッション性が向上する。一方、第2層の厚さは、例えば、29μm以下である。なお、第2層の厚さとは、第2層が2層以上から構成されるものである場合、第2層の総厚さをいう。
【0040】
(3)その他
中間層全体の厚さは、例えば、30μm以上であり、40μm以上であってもよい。一方、中間層全体の厚さは、例えば、200μm以下であり、150μm以下であってもよい。本開示における中間層全体の厚さは、例えば、30μm以上、200μm以下であり、40μm以上、150μm以下であってもよい。
【0041】
中間層の形成方法としては、第1層の樹脂材料および第2層の樹脂材料を選択し、インフレーション法を用いた多層共押出成膜法により、第1層および第2層を含む中間層用フィルムを形成する方法が挙げられる。インフレーション法においては、まず、樹脂材料を融点以上の温度に加熱された溶融押出機に供給して、これらを溶融し、環状ダイのダイにより円筒状に押出しする。このときに、円筒状の溶融樹脂内に下方から空気を送り、円筒の径を所定の大きさに膨張させると共に、円筒外に下方から冷却用空気を送る。この膨張した円筒状体をバブルと呼ぶ。続いて、バブルを、案内板及びピンチロールによってフィルム状に折り畳み、巻き上げ部において巻き取る。折り畳まれたフィルムは、筒状のまま巻き取っても、筒の両端をスリッター等で除去し、2枚のフィルムに切り離してから、それぞれを巻き取ってもよい。これにより第1層および第2層を含む中間層用フィルムを成形することができる。
【0042】
このようなインフレーション法で成形されたフィルムは、フィルム成型時に円筒状に押出しされるためカールが生じやすい。一方、本開示においては、上述したように中間層における第1層の厚さの調整等によって、反り量が低減されたカバーテープとなる。
【0043】
3.ヒートシール層
本開示におけるヒートシール層は、中間層の基材層側の面とは反対の面側に配置される層である。ヒートシール層は、本開示のカバーテープを用いて包装体を製造する際に、キャリアテープに対してヒートシールすることにより、カバーテープとキャリアテープとが接着される。
【0044】
(1)材料
ヒートシール層は熱可塑性樹脂を有するものであり、熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体のいずれか、あるいは、これらを主成分とする樹脂が好ましい。
【0045】
本開示におけるヒートシール層は、主たる樹脂材料として、(メタ)アクリル系樹脂を含むことが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸塩等の(メタ)アクリル基を有するモノマーが(共)重合して生成した(共)重合体である。(メタ)アクリル系樹脂としては、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体、ブチルメタクリレート(BMA)-メチルメタクリレート(MMA)共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0046】
本開示におけるヒートシール層における(メタ)アクリル系樹脂の含有量は、例えば、50質量%以上であり、60質量%以上であってもよい。一方、例えば、100質量%以下であり、80質量%以下であってもよい。本開示においては、上記(メタ)アクリル系樹脂の含有量は、50質量%以上100質量%以下にでき、60質量%以上80質量%以下にできる。この場合、ヒートシール層は、(メタ)アクリル系樹脂以外の他の樹脂として、スチレン樹脂、ポリエチレンやEVAなどのポリオレフィン樹脂等を含んでもよい。
【0047】
また、本開示におけるヒートシール層は、主たる樹脂材料として、エチレン-酢酸ビニル系共重合体を含むことが好ましい。ヒートシール層がエチレン-酢酸ビニル系共重合体を含むことにより、キャリアテープに対するヒートシール性が良好になる。そのため、搬送、保管中等において意図しない剥がれの発生を抑制することができる。
【0048】
本開示においてエチレン-酢酸ビニル系共重合体とは、少なくとも、エチレンモノマー単位と酢酸ビニルモノマー単位とを含む共重合体である。エチレンモノマー単位とは、エチレンモノマー由来の構成単位をいい、酢酸ビニルモノマー単位とは、酢酸ビニルモノマー由来の構成単位をいう。エチレン-酢酸ビニル系共重合体中のエチレンの含有量は、特に限定されないが、例えば、60質量%以上にでき、80質量%以上にできる。一方、例えば、97質量%以下にでき、95質量%以下にできる。エチレン-酢酸ビニル系共重合体中のエチレンの含有量は、60質量%以上97質量%以下にでき、80質量%以上95質量%以下にできる。エチレン-酢酸ビニル系共重合体中の酢酸ビニルの含有量は、特に限定されないが、例えば、3質量%以上にでき、5質量%以上にできる。一方、例えば、40質量%以下にでき、20質量%以下にできる。エチレン-酢酸ビニル系共重合体中の酢酸ビニルの含有量は、3質量%以上40質量%以下にでき、5質量%以上20質量%以下にできる。エチレン-酢酸ビニル系共重合体は、エチレンモノマー単位と酢酸ビニルモノマー単位の他に、第三のモノマー単位を含んでもよい。第三のモノマー単位は帯電防止性能を有する官能基を含んでいてもよい。
【0049】
ヒートシール層におけるエチレン-酢酸ビニル系共重合体の含有量は、特に限定されないが、50質量%以上にでき、60質量%以上にできる。一方、90質量%以下にでき、80質量%以下にできる。ヒートシール層におけるエチレン-酢酸ビニル系共重合体の含有量は、50質量%以上90質量%以下にでき、60質量%以上80質量%以下にできる。エチレン-酢酸ビニル系共重合体の含有量を増やすとヒートシール性能が向上するが、表面タック力が高くなる傾向がある。
【0050】
本開示におけるヒートシール層がエチレン-酢酸ビニル系共重合体を含む場合、更にポリエチレン樹脂を含んでいることが好ましい。ポリエチレン樹脂を配合することで、良好なヒートシール性を保ちつつ、表面タック性を低くし、高湿熱環境下に置いた後の劣化を抑制することができる。
【0051】
ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の種々のポリエチレンが挙げられるが、分散性の観点から優位であることから、低密度ポリエチレン(LDPE、密度0.910以上0.930未満)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、密度0.910以上0.925以下)が好適に用いられる。
【0052】
また、本開示において、各種ポリエチレンの分類は、旧JIS K6748:1995やJIS K6899-1:2000において定義されたものを指す。ヒートシール層におけるポリエチレン樹脂の含有量は、好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上である。一方、好ましくは50質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以下である。ヒートシール層におけるポリエチレン樹脂の含有量は、10質量%以上50質量%以下とすることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることが更に好ましい。ポリエチレンの含有量を増やすとヒートシール性能が低下するが、表面タック力が低くなる傾向がある。
【0053】
本開示におけるヒートシール層は、反り量を低減する観点においては、柔らかい材料を用いることが好ましい。このように柔らかい材料としては、上述した中でも、上述した(メタ)アクリル基を有するモノマーとスチレンモノマーとの共重合体が好ましい。具体的には、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられ、中でも、スチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体が好ましい。
【0054】
ヒートシール層には、必要に応じて、例えば、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、分散剤、充填剤、可塑剤、着色剤、粘着付与剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0055】
(2)厚さ
ヒートシール層の厚さは、特に限定されず、例えば、1μm以上である。一方、ヒートシール層の厚さは、例えば、30μm以下であり、20μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。ヒートシール層の厚さは、例えば、1μm以上30μm以下であり、1μm以上20μm以下であってもよく、1μm以上10μm以下であってもよく、1μm以上5μm以下であってもよい。ヒートシール層の厚さが薄すぎると、シール性に劣る場合があり、また、均一な膜が得られない場合がある。ヒートシール層の厚さが厚すぎると、カバーテープの透明性が低下するおそれがあり、かつ、ヒートシール層単層での応力増加により、タック力が悪化(増加)するおそれがある。
【0056】
(3)形成方法
ヒートシール層の形成方法としては、例えば、熱可塑性樹脂、帯電防止剤及びその他に添加剤等を溶媒に分散または溶解したヒートシール層用組成物を用い、中間層の基材層とは反対側に上記ヒートシール層用組成物を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。ヒートシール層用組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ロッドコ-ト、キスコート、ナイフコート、ダイコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の塗布法が挙げられる。
【0057】
また、ヒートシール層として、フィルムを用いることができる。この場合、中間層およびヒートシール層の積層方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、熱溶融させたフィルムの原材料を中間層にTダイ等で押出して、ラミロール(冷却用ロール)で急冷固化し、中間層と圧着する方法(押出ラミネート法)が挙げられる。また、中間層およびヒートシール層の積層方法としては、予め製造したフィルムを接着剤で中間層に貼り合せる方法が挙げられる。上記接着剤としては、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等を用いることができる。
【0058】
4.基材層
本開示における基材層は、中間層、ヒートシール層や後述する帯電防止層を支持する層である。基材層としては、保存および搬送時の外力に耐える機械的強度や、製造およびテーピング包装に耐える耐熱性等を有していれば、種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルが、機械的強度が良いため、反り量を低減することができ、好ましく用いられる。また、コスト面でも有利である。
【0059】
また、基材層には、必要に応じて、例えば充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。基材層は、単層であってもよく、同種または異種の複数層の積層体であってもよい。また、基材層は、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。中でも、基材層は、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。
【0060】
基材層の厚さは、例えば、2.5μm以上とすることができ、6μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。一方、300μm以下とすることができ、100μm以下であってもよく、25μm以下であってもよい。基材層の厚さは、具体的には、2.5μm以上300μm以下とすることができ、6μm以上100μm以下であってもよく、10μm以上25μm以下であってもよい。基材層の厚さが上記値以上であれば、機械的強度が得られるため好ましい。また、基材層の厚さが上記値以下であれば、テーピング包装時の剛性が強くなりすぎる恐れがなく、ハンドリング性とコスト面でも有利である。
【0061】
本開示において、基材層の積層方法としては、予め上述の方法で製造した中間層用のフィルムに、接着剤層を介して基材層を貼り合せる方法が挙げられる。
【0062】
本開示において、反り量を低減する観点においては、基材層の厚さは厚い方が好ましく、剛性は高い方が好ましい。
【0063】
5.その他構成
(1)帯電防止層
本開示では、基材層の中間層側の面とは反対の面側に、帯電防止層が配置されていることが好ましい。帯電防止層は、基材層の中間層側の面とは反対の面側に配置され、カバーテープが帯電することを防止するための層である。帯電防止層を有することによって、他の面との接触による静電気の発生を防止することや、静電気が帯電してカバーテープの表面へのゴミやチリ等の付着を防止することができる。
【0064】
帯電防止層は、基材層に帯電防止剤をコーティングすることにより形成することができる。帯電防止剤としては、導電性高分子が挙げられ、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。中でも、導電性高分子は、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびポリピロールからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。湿度に依存しない十分な帯電防止性および透明性が得られるからである。ポリチオフェンとしては、例えば、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸))が好ましく用いられる。ポリアニリンとしては、例えば、スルホン化ポリアニリンが好ましく用いられる。上記導電性高分子を含む帯電防止層であれば厚みが薄くとも、低い表面抵抗率を得ることができるために好ましい。帯電防止層の厚みが薄いことで、カバーテープの光の透過率を向上させることができる。また、帯電防止層の厚みが薄いことで、カバーテープの光の吸収率を低くすることができる。そのため、カバーテープの視認性を向上させることができる。
【0065】
また、本開示における帯電防止層は、導電性高分子以外の帯電防止剤を含むことにより帯電防止性を発現するものであっても良い。導電性高分子以外の帯電防止剤としては、例えば、高分子型界面活性剤、低分子型界面活性剤等が挙げられる。それぞれ、ノニオン、カチオン、アニオン型があり、この界面活性剤としては、帯電防止性能、塗工性の観点からカチオン型高分子界面活性剤が好ましい。カチオン型高分子界面活性剤としては、高分子型4級アンモニウム塩が好ましい。4級アンモニウム塩のカウンターアニオンは特に限定されず、例えば、ハロゲンイオン、硫化物イオン等が用いられる。アンモニウムの1位、2位、3位はアリール基、アルキル基が入り、特に限定されないが、溶解性の観点から炭素数が6個以下が好ましい。高分子型4級アンモニウム塩の主鎖にはアクリル主鎖が透明性、基材密着性の観点から好ましい。また、帯電防止層は、樹脂を含んでいてもよい。
【0066】
帯電防止層の形成方法としては、例えば、帯電防止剤等を溶媒に分散または溶解した帯電防止層用組成物を用い、基材層の他方の面側に上記帯電防止層用組成物を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。上記帯電防止層用組成物の塗布方法としては、例えば、エアドクター、ブレードコート、ナイフコート、ロッドコート、バーコート、ダイレクトロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、スライドコート等の公知の塗布法が挙げられる。
【0067】
帯電防止層の厚さは、例えば、0.02μm以上とすることができる。一方、3μm以下とすることができる。帯電防止層の厚さは、具体的には、0.02μm以上3μm以下とすることができる。この程度の厚さの帯電防止層とすることにより、カバーテープに帯電防止性を付与することができる。
【0068】
(2)接着剤層
本開示におけるカバーテープは、基材層と中間層との間に、接着剤層を有していてもよい。接着剤層を基材層に形成することで、基材層が接着力に乏しい場合であっても、基材層と中間層との間の密着性を向上させることができる。接着剤層としては、基材層、中間層に用いられる材料に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。例えば、低密度ポリエチレン、密度0.915g/cm3以上0.940g/cm3以下のエチレン-α・オレフィン共重合体、ポリエチレンビニルアセテート共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリエステル、あるいは、それらの変性物のいずれかであるポリオレフィン、イソシアネート系、イミン系の接着剤等により形成することができる。接着剤層の厚さは、0.2μm以上が好ましい。一方、60μm以下が好ましい。接着剤層の厚さは、例えば、0.2μm以上、60μm以下である。接着剤層は、基材層上に塗布あるいは押出し成形することができ、この接着剤層上に中間層をドライラミネーションすることができる。なお、この層は上述した通り必要に応じて形成される層である。
【0069】
(3)プライマー層
本開示においては、上記ヒートシール層と上記中間層との間にプライマー層を設けてもよい。特に、中間層とヒートシール層との間のデラミネーションを抑制することが要求される場合や、中間層とヒートシール層との接着性を向上させることが要求される場合に、好ましく適用することができる。プライマー層が設けられたカバーテープは、中間層とヒートシール層との間のデラミネーションが抑制されるので、キャリアテープにヒートシールされたカバーテープを剥離した際の美感を向上させることができ、また、中間層とヒートシール層との接着性を向上させることができるので、カバーテープの接着力を適度な強度以上に調整することができる。さらに、カバーテープをキャリアテープにヒートシールする際においては、こうしたプライマー層を設けることによって、デラミネーションや接着力に及ぼすヒートシール条件の影響を緩和することができるという効果もある。
【0070】
このようなプライマー層は、オレフィン、変性オレフィン、ウレタン、変性ウレタン、水素化SBSもしくはこれらの混合物から形成することができる。
【0071】
このうち、プライマー層を形成するための好ましい樹脂組成物としては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)と、酸変性されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体との樹脂組成物を挙げることができる。樹脂組成物中のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)の含有量は、0重量%以上である。一方、100重量%以下である。酸変性されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体の含有量は、0重量%以上である。一方、100重量%以下である。スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体と、酸変性されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体とは、それぞれ単独でも好ましく用いることができるが、それらを上記範囲で混合させて用いることによって、プライマー層と中間層との接着性を顕著に向上させることができると共に、プライマー層とヒートシール層との接着性も向上させることができる。その結果、本開示のカバーテープは、こうしたプライマー層を介することによって、中間層とヒートシール層とを十分な強さで接着することができる。さらに、この樹脂組成物には、アクリルゴムが樹脂組成物全体の60重量%以下の割合で添加されていることが好ましい。アクリルゴムを樹脂組成物全体の60重量%以下の割合で添加することにより、プライマー層の作用をより一層発揮させることができ、接着性をさらに向上させることができる。
【0072】
なお、上記のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体は、水素添加されたスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体のことであり、上記の酸変性されたスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体は、酸変性率が1%以上、100%以下のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体のことである。
【0073】
アクリルゴムは、アクリル酸アルキルエステルを主成分としたゴムのことである。ここで、アクリル酸エステルとしては、一般的に、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリロニトリルなどを挙げることができる。また、アクリルゴムを構成する架橋用官能基としては、2-クロロエチルビニルエーテル、その他活性ハロゲン含有モノマー(モノクロロ酢酸ビニル、アリルクロロアセテートなど)、エポキシ基含有モノマー(アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタアクリレートなど)、エチリデンノルボルネンなどを挙げることができる。
【0074】
プライマー層の塗工量は、0.05g/m2以上が好ましく、0.1g/m2以上が特に好ましい。一方、2.5g/m2以下が好ましく、2.0g/m2以下が特に好ましい。プライマー層の塗工量は、0.05g/m2以上2.5g/m2以下の範囲内が好ましく、特に0.1g/m2以上2.0g/m2以下の範囲内が好ましい。上記範囲より少ない場合は、プライマー層としての効果が十分でなく、また上記範囲より多い場合は、効果が変わらないことからコスト面で問題となるからである。
【0075】
6.カバーテープ
(1)全光線透過率およびヘーズ値
本開示におけるカバーテープは、上述の各層を積層してなるカバーテープにおける全光線透過率が80%以上であることが好ましく、特には85%以上であることが好ましい。また、本開示におけるカバーテープは、上述の各層を積層してなるカバーテープにおけるヘーズ値は、例えば60%以下であり、55%以下であることが好ましく、特には50%以下であることが好ましい。
【0076】
本開示において、全光線透過率およびヘーズ値は、それぞれ、JIS K 7361:1997およびJIS-K-7136:2000に準拠して、ヘーズメーターNDH 7000(日本電色工業製)で測定した値である。このような光学的特性を有するものであれば、視認性の良いカバーテープとなる。
【0077】
本開示におけるカバーテープの幅および長さは、キャリアテープの幅および長さに応じて適宜設定することができる。カバーテープの幅は、例えば、1mm以上であり、5.25mm以上であってもよい。一方、例えば、100mm以下であり、5.5mm以下であってもよい。カバーテープの幅は、具体的には、1mm以上、100mm以下程度であり、5.25mm以上、5.5mm以下であってもよい。カバーテープの長さは、例えば、100m以上である。一方、例えば、10000m以下である。カバーテープの長さは、具体的には、100m以上、10000m以下である。本開示のカバーテープは、使用前(キャリアテープにヒートシールする前)に、通常、トラバース巻きで巻かれた状態で保管される。
【0078】
B.包装体
本開示の包装体は、電子部品を収納する複数の収納部を有するキャリアテープと、上記収納部に収納された電子部品と、上記収納部を覆うように配置された、上述のカバーテープと、を備える。
【0079】
本開示におけるカバーテープはカールが抑制されたものであるため、このようなカバーテープを用いた包装体は、カバーテープの位置ずれを抑制することが可能となる。また、ヒートシール層側が凹となるカール(すなわち、基材層側が凸となるカール)が抑制されるため、包装体内におけるチップの回転等が生じにくくなり、実装不良を抑制することが可能となる。
【0080】
図2(a)、(b)は本開示の包装体の一例を示す概略平面図および断面図である。なお、
図2(a)、(b)については、上記「A.電子部品包装用カバーテープ」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0081】
以下、本開示の包装体の各構成について説明する。
【0082】
1.カバーテープ
本開示におけるカバーテープについては、上記「A.電子部品包装用カバーテープ」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0083】
本開示の包装体においては、カバーテープのヒートシール層とキャリアテープとはヒートシール部で接着されている。ヒートシール部は、例えば、カバーテープのヒートシール層がキャリアテープと接する部分の一部に配置することができる。すなわち、ヒートシール層は、ヒートシール部と非ヒートシール部とを有していてもよい。これにより、キャリアテープに対するカバーテープの剥離性を良くすることができる。
【0084】
2.キャリアテープ
本開示におけるキャリアテープは、電子部品を収納する複数の収納部を有する部材である。
【0085】
キャリアテープとしては、複数の収納部を有するものであればよく、例えば、エンボスキャリアテープ(エンボステープとも称される。)、パンチキャリアテープ(パンチテープとも称される。)、プレスキャリアテープ(プレステープとも称される。)のいずれも用いることができる。中でも、コスト、成形性、寸法精度等の観点から、エンボスキャリアテープが好ましく用いられる。
【0086】
キャリアテープの材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ABS樹脂等のプラスチックや、紙等が挙げられる。本開示において紙とは、セルロースを主成分とするものをいい、更に樹脂成分が含まれていてもよい。
【0087】
キャリアテープの厚さは、キャリアテープの材質や、電子部品の厚さ等に応じて適宜選択される。キャリアテープの厚さは、例えば、30μm以上である。一方、1500μm以下とすることができる。キャリアテープの厚さは、具体的には、30μm以上1500μm以下とすることができる。キャリアテープの厚さが厚すぎると、成形性が悪くなり、キャリアテープの厚さが薄すぎると、強度が不足する場合がある。
【0088】
キャリアテープは、複数の収納部を有する。収納部は、通常、キャリアテープの長手方向に所定の間隔をおいて配置される。収納部の大きさ、深さ、ピッチ等としては、電子部品の大きさ、厚さ等に応じて適宜調整される。
【0089】
収納部を有するキャリアテープの形成方法としては、一般的なキャリアテープの成形方法を適用することができ、キャリアテープの種類や材質等に応じて適宜選択される。例えば、プレス成形、真空成形、圧空成形、打抜加工、圧縮加工等が挙げられる。
【0090】
3.電子部品
本開示の包装体に用いられる電子部品としては、特に限定されず、例えば、IC、抵抗、コンデンサ、インダクタ、トランジスタ、ダイオード、LED(発光ダイオード)、液晶、圧電素子レジスタ、フィルター、水晶発振子、水晶振動子、コネクタ、スイッチ、ボリュウム、リレー等が挙げられる。ICの形式についても、特に限定されない。
【0091】
4.包装体
本開示の包装体は、電子部品の保管および搬送のために用いられる。電子部品は、包装体の状態で保管および搬送され、実装に供される。実装時には、カバーテープを剥離し、キャリアテープの収納部に収納されている電子部品を取り出し、基板等へ実装される。
【0092】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0093】
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
【0094】
(実施例1)
・中間層用フィルムの形成
第1層を構成する樹脂としてスチレン・ブタジエン共重合樹脂(製品名:アサフレックス、旭化成社製)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE 製品名:エボリューSP2520、プライムポリマー社製)の混合樹脂を用い、2層構造を有する第2層を構成する樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE 製品名:エボリューSP2520、プライムポリマー社製)を用い、インフレーション法を用いた3層共押出製膜法により、第1層(1μm)および2層構造を有する第2層(29μm)からなる、厚さ30μmの中間層用フィルムを作製した。
【0095】
基材層として、片面にコロナ処理を施した厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製 E7415、以下PETフィルム)を準備した。PETフィルムのコロナ処理面に、ウレタン系アンカーコート剤(タケネート/タケラック=A-12/A-515、質量比A-12:A515=1:10、酢酸エチルで60%希釈)を塗布し、厚さ4μm(乾燥時)の接着剤層(PU層)を形成した。次いで、接着剤層が形成されたPETフィルムに、上記中間層用フィルムを貼り合わせすることにより、基材層に中間層を積層させた。
【0096】
次いで、スチレン-メチルメタクリレート共重合体(St-MMA)を含むヒートシール層用組成物を溶融させて、中間層の基材層側の面とは反対側の表面に塗布し、乾燥することにより、厚さ1μmのヒートシール層を形成した。これによって、基材層(12μm)/接着剤層(4μm)/第2中間層(29μm)/第1中間層(1μm)/ヒートシール層(1μm)からなる構成の、厚さ47μmのカバーテープを作製した。
【0097】
(実施例2、実施例3、比較例1および比較例2)
中間層の総厚さは変更せずに、第1層および第2層の厚さを、表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0098】
(実施例4)
中間層の厚さは変更せずに、第1層および第2層の厚さを、表1に示す値に変更し、さらに、ヒートシール層用組成物をMMA-BMA共重合体(アクリル樹脂系)を含むヒートシール層用組成物に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0099】
[反り量の測定]
実施例1~実施例4、比較例1および比較例2で製造したカバーテープの反り量を、上述した方法により測定した。結果を表1に示す。また、中間層の第1層の厚さ(μm)と、反り量(mm)との関係を
図7に示す。
【0100】
[曲げ弾性率の測定]
実施例1~実施例4、比較例1および比較例2で製造したカバーテープの曲げ弾性率を、上述した方法により測定した。結果を表1に示す。
【0101】
[破断点伸度の測定]
実施例1~実施例4、比較例1および比較例2で製造したカバーテープの破断点伸度を、上述した方法により測定した。結果を表1に示す。
【0102】
【0103】
表1および
図7に示されるように、中間層の第1層の厚さが8μm以下の実施例1~実施例4のカバーテープは、比較例に対し、反り量が低減されたことが確認された。
【0104】
すなわち、本開示においては、以下の発明を提供できる。
【0105】
[1]
基材層と、前記基材層の一方の面側に配置されたヒートシール層と、前記基材層と前記ヒートシール層との間に配置された中間層と、を有する電子部品包装用カバーテープであって、前記中間層は、前記ヒートシール層側から、ゴム系材料を含む第1層と、第2層とを、この順に有し、前記電子部品包装用カバーテープの反り量が1.9mm以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【0106】
[2]
前記第1層の厚さは、1μm以上、8μm以下である、[1]に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【0107】
[3]
前記電子部品包装用カバーテープの曲げ弾性率は、950MPa以下である、[1]または[2]に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【0108】
[4]
前記電子部品包装用カバーテープの破断点伸度は、97%以上である、[1]から[3]までのいずれかに記載の電子部品包装用カバーテープ。
【0109】
[5]
前記ゴム系材料は、スチレン・ブタジエン共重合樹脂である、[1]から[4]までのいずれかに記載の電子部品包装用カバーテープ。
【0110】
[6]
電子部品を収納する複数の収納部を有するキャリアテープと、前記収納部に収納された電子部品と、前記収納部を覆うように配置された、[1]から[5]までのいずれかに記載の電子部品包装用カバーテープと、を備える、包装体。