(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143151
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
H01B 5/14 20060101AFI20241003BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01B5/14 A
B32B9/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055676
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 凌祐
(72)【発明者】
【氏名】竹安 智宏
(72)【発明者】
【氏名】藤野 望
(72)【発明者】
【氏名】鴉田 泰介
【テーマコード(参考)】
4F100
5G307
【Fターム(参考)】
4F100AA17A
4F100AA28A
4F100AA33A
4F100AK42B
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AT00
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4F100GB48
4F100JA11A
4F100JA12A
4F100JG01A
4F100JN01B
5G307FA02
5G307FB01
5G307FC10
(57)【要約】
【課題】透明導電層の低抵抗性と屈曲性とを両立するのに適した透明導電性フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の透明導電性フィルムXは、透明基材10と透明導電層20とを厚さ方向Hに順に備える。透明導電層20は、100nm以上の厚さを有する。透明導電層20は、非晶質層21と結晶質層22とを透明基材10側からこの順で有する。非晶質層21は、結晶質層22より厚い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と透明導電層とを厚さ方向に順に備える透明導電性フィルムであって、
前記透明導電層が100nm以上の厚さを有し、
前記透明導電層が、非晶質層と結晶質層とを前記透明基材側からこの順で有し、前記非晶質層が前記結晶質層より厚い、透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記結晶質層の厚さに対する前記非晶質層の厚さの比率が1.2以上である、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記結晶質層の厚さに対する前記非晶質層の厚さの比率が5以下である、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記透明導電層がインジウムスズ複合酸化物層である、請求項1から3のいずれか一つに記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記非晶質層の酸化スズ割合が前記結晶質層の酸化スズ割合より高い、請求項4に記載の透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製の透明基材と透明な導電層(透明導電層)とを厚さ方向に順に備える透明導電性フィルムが知られている。透明導電層は、例えば、ディスプレイパネル、タッチパネル、および太陽電池などの各種デバイスにおける透明電極を形成するための導体膜として用いられる。透明導電層は、例えば、スパッタリング法で透明基材上に導電性酸化物を成膜することにより、結晶質または非晶質の導電性酸化物層として形成される。このような透明導電性フィルムに関する技術については、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透明導電性フィルムの透明導電層には、低抵抗であることが要求される。特に透明電極用の透明導電性フィルムに対し、その要求は強い。低抵抗性の観点からは、透明導電層は、非晶質であるよりも結晶質である方がよい。一方、透明導電性フィルムの透明導電層には、屈曲時にクラックが生じにくいこと(屈曲性)も要求される。特に、繰り返し折り曲げられるデバイス(フォルダブルデバイス)用の透明導電性フィルムには、優れた屈曲性が求められる。屈曲性の観点からは、透明導電層は、結晶質であるよりも非晶質である方がよい。透明導電層の低抵抗性と屈曲性とは、このようなトレードオフの関係にある。
【0005】
本発明は、透明導電層の低抵抗性と屈曲性とを両立するのに適した透明導電性フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明[1]は、透明基材と透明導電層とを厚さ方向に順に備える透明導電性フィルムであって、前記透明導電層が100nm以上の厚さを有し、前記透明導電層が、非晶質層と結晶質層とを前記透明基材側からこの順で有し、前記非晶質層が前記結晶質層より厚い、透明導電性フィルムを含む。
【0007】
本発明[2]は、前記結晶質層の厚さに対する前記非晶質層の厚さの比率が1.2以上である、上記[1]に記載の透明導電性フィルムを含む。
【0008】
本発明[3]は、前記結晶質層の厚さに対する前記非晶質層の厚さの比率が5以下である、上記[1]または[2]に記載の透明導電性フィルムを含む。
【0009】
本発明[4]は、前記透明導電層がインジウムスズ複合酸化物層である、上記[1]から[3]のいずれか一つに記載の透明導電性フィルムを含む。
【0010】
本発明[5]は、前記非晶質層の酸化スズ割合が前記結晶質層の酸化スズ割合より高い、上記[4]に記載の透明導電性フィルムを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の透明導電性フィルムにおいては、上記のように、透明導電層が100nm以上の厚さを有し、透明導電層が、非晶質層と結晶質層とを透明基材側からこの順で有し、非晶質層が結晶質層より厚い。透明導電層が100nm以上の厚さを有することは、透明導電層の低抵抗性を確保するのに適する。厚さ100nm以上の透明導電層において、非晶質層が結晶質層より厚いことは、透明導電層の屈曲性を確保するのに適する。透明導電層が、非晶質層と結晶質層とを透明基材側からこの順で有することは、透明導電層の低抵抗性と屈曲性との両立を図るのに適する。このような透明導電性フィルムは、透明導電層の低抵抗性と屈曲性とを両立するのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の透明導電性フィルムの一実施形態の断面模式図である。
【
図2】
図1に示す透明導電性フィルムの製造方法の一例を表す。
図2Aは用意工程を表し、
図2Bは第1層形成工程を表し、
図2Cは第2層形成工程を表し、
図2Dは加熱工程を表す。
【
図3】
図1に示す透明導電性フィルムにおいて、透明導電層がパターニングされた場合を表す。
【
図4】実施例および比較例の透明導電性フィルムの屈曲試験を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態としての透明導電性フィルムXは、透明基材10と、透明導電層20とを、厚さ方向Hに順に備える。透明導電性フィルムXは、厚さ方向Hと直交する方向(面方向)に広がるシート形状を有する。透明導電性フィルムXは、例えば、タッチセンサ装置、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ部材、電磁波シールド部材、ヒーター部材、照明装置、および画像表示装置などに備えられる一要素である。
【0014】
透明基材10は、透明導電性フィルムXの強度を確保する要素である。透明基材10は、第1面11と、当該第1面11とは反対側の第2面12とを有する。
【0015】
透明基材10は、例えば、可撓性を有する透明な樹脂フィルムである。当該樹脂フィルムの材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、およびポリスチレン樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびシクロオレフィンポリマーが挙げられる。アクリル樹脂としては、例えばポリメタクリレートが挙げられる。樹脂フィルムの材料は、透明性および強度の観点から、好ましくはポリエステル樹脂であり、より好ましくはPETである。
【0016】
透明基材10は、樹脂フィルムの片面または両面に硬化樹脂層(図示略)が形成された多層構造を有してもよい。硬化樹脂層としては、例えば、ハードコート層およびアンチブロッキング層が挙げられる。硬化樹脂層は、硬化性樹脂組成物の硬化物である。硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する。硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂(アクリルウレタン樹脂を除く)、ウレタン樹脂(アクリルウレタン樹脂を除く)、アミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、およびメラミン樹脂が挙げられる。これら硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。また、硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型樹脂および熱硬化型樹脂が挙げられる。
【0017】
硬化性樹脂組成物は、粒子を含有してもよい。粒子としては、例えば、無機酸化物粒子および有機粒子が挙げられる。無機酸化物粒子の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、および酸化アンチモンが挙げられる。有機粒子の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル・スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、およびポリカーボネートが挙げられる。
【0018】
硬化樹脂層の厚さは、透明導電性フィルムXにおいて硬化樹脂層の機能を発現させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上である。硬化樹脂層の厚さは、透明導電性フィルムXの透明性を確保する観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは3μm以下である。
【0019】
透明基材10の第1面11(透明導電層20側の表面)は、表面改質処理されていてもよい。表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、およびカップリング剤処理が挙げられる。
【0020】
透明基材10の厚さは、透明導電性フィルムXの強度を確保する観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは50μm以上、一層好ましくは80μm以上、より一層好ましくは90μm以上である。透明基材10の厚さは、ロールトゥロール方式における透明基材10の取り扱い性を確保する観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下、一層好ましくは150μm以下である。
【0021】
透明基材10の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、透明基材10の透明性を確保する観点から、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは88%以上である。透明基材10の全光線透過率は、例えば100%以下である。
【0022】
透明導電層20は、光透過性と導電性とを兼ね備える膜である。透明導電層20は、本実施形態では、透明基材10上に配置されている。具体的には、透明導電層20は、透明基材10の第1面11に接する。また、透明導電層20は、第1層としての非晶質層21と、第2層としての結晶質層22とを、透明基材10側からこの順で有する。非晶質層21は、本実施形態では、透明基材10に接する。結晶質層22は、非晶質層21に対して透明基材10とは反対側に配置されている。結晶質層22は、本実施形態では、非晶質層21に接する。結晶質層22が、非晶質層21に対して透明基材10とは反対側に配置され且つ非晶質層21に接することは、透明導電性フィルムXの屈曲時の結晶質層22の応力緩和の観点から、好ましい。屈曲時の結晶質層22の応力緩和は、屈曲時に透明導電層20にクラックが発生するのを抑制するのに役立つ。
【0023】
非晶質層21は、本実施形態では、非晶質の導電性酸化物から形成されている。導電性酸化物としては、例えば、インジウム含有導電性酸化物およびアンチモン含有導電性酸化物が挙げられる。インジウム含有導電性酸化物としては、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、およびインジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)が挙げられる。アンチモン含有導電性酸化物としては、例えば、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)が挙げられる。透明導電層20の高い透明性と良好な電気伝導性とを実現する観点から、導電性酸化物は、好ましくはインジウム含有導電性酸化物であり、より好ましくはITOである。ITOは、InおよびSn以外の金属または半金属を、InおよびSnのそれぞれの含有量より少ない量で含有してもよい。
【0024】
非晶質層21中のITOにおける酸化インジウム(In2O3)および酸化スズ(SnO2)の合計量に対する酸化スズの量の割合(酸化スズ割合R1)は、非晶質層21の非晶質性を確保する観点から、好ましくは11質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは12.5質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは14質量%以下、更に好ましくは13質量%以下である。非晶質層21の非晶質性を確保する観点から、酸化スズ割合R1は、結晶質層22の後述の酸化スズ割合R2より高いのが好ましい。
【0025】
ITOにおける酸化スズ割合は、例えば次のようにして同定できる。まず、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy)により、測定対象物としてのITOにおけるインジウム原子(In)とスズ原子(Sn)の存在比率を求める。ITO中のInおよびSnの各存在比率から、ITO中のInの原子数に対するSnの原子数の比率を求める。これにより、ITOにおける酸化スズ割合が得られる。また、ITOにおける酸化スズ割合は、スパッタ成膜時に用いるITOターゲットの酸化スズ(SnO2)含有割合からも特定できる。
【0026】
非晶質層21などの膜が非晶質膜であることは、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)による当該膜(対象膜)の断面観察によって判断できる。FE―TEMによる対象膜の断面観察において、結晶粒が確認されずに非晶領域が確認された場合に、当該対象膜が非晶質膜であると判断できる。
【0027】
結晶質層22は、本実施形態では、結晶質の導電性酸化物から形成されている。導電性酸化物としては、非晶質層21について上記した導電性酸化物層が挙げられる。透明導電層20の高い透明性と良好な電気伝導性とを実現する観点から、当該導電性酸化物は、好ましくはインジウム含有導電性酸化物であり、より好ましくはITOである。結晶質層22の材料と、非晶質層21の材料とは、異なる種類であってもよいが、同じ種類であるのが好ましい。非晶質層21と結晶質層22とを有する透明導電層20は、好ましくはインジウム含有導電性酸化物層であり、より好ましくはインジウムスズ複合酸化物層である。
【0028】
結晶質層22中のITOにおける酸化インジウムおよび酸化スズの合計量に対する酸化スズの量の割合(酸化スズ割合R2)は、結晶質層22の結晶質性を確保する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは11質量%未満、より好ましくは10.5質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0029】
結晶質層22などの膜が結晶質膜であることは、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)による当該膜(対象膜)の断面観察によって判断できる。FE―TEMによる対象膜の断面観察において、非晶領域が確認されずに結晶粒が確認された場合に、当該対象膜が結晶質膜であると判断できる。
【0030】
透明導電層20の厚さ(総厚)は、100nm以上である。厚さ100nm以上の透明導電層20は、透明導電層20の低抵抗化に適する。透明導電層20の厚さは、透明導電層20の低抵抗化の観点から、好ましくは110nm以上、より好ましくは120nm以上、一層好ましくは125nm以上である。透明導電層20の厚さは、透明導電性フィルムXの屈曲時に透明導電層20にクラックが生じるのを抑制する観点(透明導電層20の屈曲性の観点)から、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下である。
【0031】
非晶質層21は、結晶質層22より厚い。このような構成は、透明導電層20の屈曲性を確保するのに適する。結晶質層22の厚さT2に対する非晶質層21の厚さT1の比率(T1/T2)は、透明導電層20の屈曲性の観点から、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上である。比率(T1/T2)は、透明導電層20の低抵抗化の観点から、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。
【0032】
透明導電層20の厚さ(総厚)に対する非晶質層21の厚さT1の割合は、透明導電層20の屈曲性の観点から、好ましくは50%超、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上である。同割合は、透明導電層20の低抵抗性の確保の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下である。また、非晶質層21の厚さT1は、透明導電層20の屈曲性の観点から、好ましくは50nm超、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは70nm以上である。厚さT1は、透明導電層20の低抵抗性の確保の観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは100nm以下である。
【0033】
透明導電層20の厚さ(総厚)に対する結晶質層22の厚さT2の割合は、透明導電層20の低抵抗性の確保の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。同割合は、透明導電層20の屈曲性の観点から、好ましくは50%未満、より好ましくは45%以下、更に好ましくは40%以下である。また、結晶質層22の厚さT2は、透明導電層20の低抵抗性の観点から、好ましくは15nm以上、より好ましくは25nm以上、更に好ましくは40nm以上、一層好ましくは50nm以上である。厚さT2は、透明導電層20の屈曲性の観点から、好ましくは70nm以下、より好ましくは65nm以下、更に好ましくは60nm以下である。
【0034】
透明導電層20の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、透明導電層20の透明性を確保する観点から、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは88%以上である。また、透明導電層20の全光線透過率は、例えば100%以下である。
【0035】
透明導電層20の比抵抗は、透明導電層20の低抵抗化の観点から、好ましくは3.5×10-4Ω・cm以下、より好ましくは3.2×10-4Ω・cm以下、更に好ましくは3.0×10-4Ω・cm以下、一層好ましくは2.8×10-4Ω・cm以下である。透明導電層20の比抵抗は、例えば、0.5×10-4Ω・cm以上、1.0×10-4Ω・cm以上、2.0×10-4Ω・cm以上である。比抵抗の測定方法は、実施例に関して後述するとおりである。
【0036】
透明導電性フィルムXの全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは88%以上である。このような構成は、タッチセンサ装置、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ部材、電磁波シールド部材、ヒーター部材、照明装置、および画像表示装置などに透明導電性フィルムXが備えられる場合に当該透明導電性フィルムXに求められる透明性を確保するのに適する。透明導電性フィルムXの全光線透過率は、例えば100%以下である。全光線透過率の測定方法は、実施例に関して後述するとおりである。
【0037】
透明導電性フィルムXは、例えば以下のように製造される。
【0038】
まず、
図2Aに示すように、透明基材10を用意する(用意工程)。
【0039】
次に、
図2Bに示すように、透明基材10上に第1層21’を形成する(第1層形成工程)。第1層21’は、非晶質の第1導電性酸化物層である。この第1導電性酸化物層は、後述の加熱工程(
図2D)の後に非晶質性を維持する層である。本工程では、具体的には、スパッタリング法により、透明基材10の第1面11上に導電性酸化物を成膜して、非晶質の第1導電性酸化物層(第1層21’)を形成する。
【0040】
スパッタリング法では、ロールトゥロール方式で成膜プロセスを実施できるスパッタ成膜装置を使用するのが好ましい。第1層形成工程において、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置を使用する場合、ワークフィルムとしての長尺の透明基材10を、装置が備える繰出しロールから巻取りロールまで走行させつつ、当該ワークフィルム上に材料を成膜して第1層21’を形成する。ワークフィルムの走行速度は、例えば0.5~5m/分である。また、当該スパッタリング法では、一つの成膜室を備えるスパッタ成膜装置を使用してもよいし、透明基材10の走行経路に沿って順に配置された複数の成膜室を備えるスパッタ成膜装置を使用してもよい(後述の第2層形成工程でも同様である)。
【0041】
スパッタリング法では、具体的には、スパッタ成膜装置が備える成膜室内に真空条件下でスパッタリングガス(不活性ガス)を導入しつつ、成膜室内のカソード上に配置されたターゲットにマイナスの電圧を印加する。これにより、グロー放電を発生させてガス原子をイオン化し、当該ガスイオンを高速でターゲット表面に衝突させ、ターゲット表面からターゲット材料を弾き出し、弾き出たターゲット材料をワークフィルム(透明基材10)上に堆積させる。ターゲットの材料としては、例えば、非晶質層21に関して上述した導電性酸化物の焼結体が用いられる。スパッタリングガスとしては、例えば、アルゴン、クリプトン、キセノン、およびこれらの混合ガスが挙げられる。スパッタリング法は、好ましくは、反応性スパッタリング法である。反応性スパッタリング法では、例えば、スパッタリングガスに加えて反応性ガスとしての酸素が、成膜室内に導入される。
【0042】
第1層形成工程でのスパッタリング法による成膜(スパッタ成膜)に関する条件(第1スパッタ成膜条件)は、後述の加熱工程(
図2D)の後に非晶質性を維持する第1導電性酸化物層を適切に形成する観点から、次のとおりである。
【0043】
スパッタ成膜前の成膜室内の到達真空度は、好ましくは0.9×10
-4Pa以下である。反応性スパッタリング法において成膜室に導入されるスパッタリングガスおよび酸素の合計導入量に対する、酸素の導入量の割合は、好ましくは1流量%以上、より好ましくは2流量%以上であり、また、好ましくは8流量%以下、より好ましくは5流量%以下である。成膜温度(第1層21’が形成される透明基材10の温度)は、好ましくは-50℃以上、より好ましくは-25℃以上であり、また、好ましくは20℃以下、より好ましくは0.0℃以下である。第1層形成工程における到達真空度、酸素導入割合、成膜温度、および、成膜時の気圧の調整により、加熱工程(
図2D)後に非晶質性を維持する第1導電性酸化物層を形成できる。
【0044】
第1層形成工程において、ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、例えば、DC電源、AC電源、MF電源、およびRF電源が挙げられる。電源としては、DC電源とRF電源とを併用してもよい。スパッタ成膜中の放電電圧の絶対値は、例えば50V以上であり、また、例えば500V以下である。ターゲット上の水平磁場強度は、例えば10mT以上であり、また、例えば100mT以下である。
【0045】
次に、
図2Cに示すように、第1層21’上に第2層22’を形成する(第2層形成工程)。第2層22’は、非晶質の第2導電性酸化物層である。この第2導電性酸化物層は、後述の加熱工程(
図2D)によって結晶化される層である。本工程では、具体的には、スパッタリング法により、第1層21’上に導電性酸化物を成膜して、非晶質の第2導電性酸化物層(第2層22’)を形成する。第1層21’および第2層22’により、非晶質の透明導電層20’が形成される。
【0046】
スパッタリング法では、ロールトゥロール方式で成膜プロセスを実施できるスパッタ成膜装置を使用するのが好ましい。第2層形成工程において、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置を使用する場合、ワークフィルムとしての、長尺の第1層21’付き透明基材10を、装置が備える繰出しロールから巻取りロールまで走行させつつ、当該ワークフィルム上に材料を成膜して第2層22’を形成する。スパッタリング法の実施方法、および、スパッタリング法としては反応性スパッタリング法が好ましいことは、第1層形成工程に関して上述したのと同様である。
【0047】
第2層形成工程でのスパッタ成膜に関する条件(第2スパッタ成膜条件)は、後述の加熱工程(
図2D)によって結晶化される第2導電性酸化物層を適切に形成する観点から、次のとおりである。
【0048】
スパッタ成膜前の成膜室内の到達真空度は、好ましくは5.0×10
-4Pa以下である。反応性スパッタリング法において成膜室に導入されるスパッタリングガスおよび酸素の合計導入量に対する、酸素の導入量の割合は、酸素の導入量の割合は、好ましくは1流量%以上、より好ましくは1.5流量%以上であり、また、好ましくは6流量%以下、より好ましくは3流量%以下である。成膜温度(第2層22’が形成されるワークフィルムの温度)は、好ましくは-50℃以上、より好ましくは-25℃以上であり、また、好ましくは20℃以下、より好ましくは0.0℃以下である。第2層形成工程における到達真空度、酸素導入割合、成膜温度、および、成膜時の気圧の調整により、加熱工程(
図2D)によって結晶化される第2導電性酸化物層を形成できる。
【0049】
第2層形成工程において、ターゲットに電圧印加するための電源、スパッタ成膜中の放電電圧の絶対値、および、ターゲット上の水平磁場強度は、第1層形成工程に関して上記したのと同様である。
【0050】
本製造方法では、次に、
図2Dに示すように、第2層22’を加熱によって結晶化させて結晶質層22を形成する(加熱工程)。加熱手段としては、例えば、赤外線ヒーターおよびオーブンが挙げられる。加熱オーブンとしては、例えば、熱媒加熱式オーブンおよび熱風加熱式オーブンが挙げられる。加熱時の環境は、真空環境および大気環境のいずれでもよい。好ましくは、酸素存在下での加熱が実施される。加熱温度は、高い結晶化速度を確保する観点からは、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。加熱温度は、透明基材10への加熱の影響を抑制する観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下である。加熱時間は、結晶質層22の十分な結晶化の観点から、好ましくは5分以上、好ましくは10分以上、更に好ましくは20分以上である。加熱時間は、本工程におけるタクト時間の短縮の観点から、好ましくは200分以下、より好ましくは100分以下、更に好ましくは80分以下である。
【0051】
本工程の加熱により、第1層21’の非晶質性を維持しつつ第2層22’を結晶化させて、透明導電層20(非晶質層21,結晶質層22)を形成する。本工程において、第1層21’の非晶質性を維持しつつ第2層22’を結晶化させる手法としては、第2層22’と比較して第1層21’の酸化スズ割合ないしSn濃度を高めること、および、第2スパッタ成膜時と比較して第1スパッタ成膜時の酸素導入量を増やすことが挙げられる(第1層21’は、その酸化スズ割合ないしSn濃度が高いほど、加熱時に結晶化しにくい)。
【0052】
以上のようにして、透明導電性フィルムXが製造される。
【0053】
透明導電性フィルムXにおける透明導電層20は、
図3に模式的に示すように、パターニングされてもよい。所定のエッチングマスクを介して透明導電層20をエッチング処理することにより、透明導電層20をパターニングできる。パターニングされた透明導電層20は、例えば、配線パターンである。
【0054】
透明導電性フィルムXにおいては、上述のように、透明導電層20が100nm以上の厚さを有し、透明導電層20が、非晶質層21と結晶質層22とを透明基材側からこの順で有し、非晶質層21が結晶質層22より厚い。透明導電層20が100nm以上の厚さを有することは、透明導電層20の低抵抗性を確保するのに適する。厚さ100nm以上の透明導電層20において、非晶質層21が結晶質層22より厚いことは、透明導電層20の屈曲性を確保するのに適する。透明導電層20が、非晶質層21と結晶質層22とを透明基材10側からこの順で有することは、透明導電層20の低抵抗性と屈曲性との両立を図るのに適する。
【0055】
したがって、透明導電性フィルムXは、透明導電層20の低抵抗性と屈曲性とを両立するのに適する。具体的には、後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。
【実施例0056】
本発明について、以下に実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。また、以下に記載されている配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上述の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの上限(「以下」または「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」または「超える」として定義されている数値)に代替できる。
【0057】
〔実施例1〕
まず、透明基材としての長尺のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(品名「GC100-JBN」,厚さ100μm,三菱ケミカル社製)を用意した。
【0058】
次に、反応性スパッタリング法により、透明基材の片面(第1面)上に導電性酸化物を成膜して、厚さT1が100nmの非晶質の第1導電性酸化物層を第1層(
図2Bでは第1層21’)として形成した(第1層形成工程)。本工程では、ロールトゥロール方式の第1スパッタ成膜装置(DCマグネトロンスパッタ成膜装置)を使用した。同装置は、ロールトゥロール方式でワークフィルムを走行させつつ成膜プロセスを実施できる成膜室を備える。本工程でのスパッタ成膜条件(第1のスパッタ成膜条件)は、次のとおりである。
【0059】
第1スパッタ成膜装置の成膜室内の到達真空度が0.9×10-4Paに至るまで真空排気した後、成膜室内に、スパッタリングガスとしてのアルゴンと、反応性ガスとしての酸素とを導入し、成膜室内の気圧を0.2Paとした。成膜室に導入されるアルゴンおよび酸素の合計導入量に対する酸素導入量の割合は、約3.2流量%とした。ターゲットとしては、酸化インジウムと酸化スズとの焼結体であって、酸化スズ割合が12.5質量%の焼結体を用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用いた。ターゲット上の水平磁場強度は30mTとした。成膜温度(第1層が形成される透明基材の温度)は-8℃とした。ワークフィルムとしてのPETフィルムの走行速度は2.7m/分とした。
【0060】
次に、反応性スパッタリング法により、透明基材上の第1層の上に導電性酸化物を成膜して、厚さT2が25nmの非晶質の第2導電性酸化物層を第2層(
図2Cでは第2層22’)として形成した(第2層形成工程)。これにより、透明基材上に非晶質透明導電層(
図2Cでは透明導電層20’)を形成した。本工程では、ロールトゥロール方式の第2スパッタ成膜装置(DCマグネトロンスパッタ成膜装置)を使用した。同装置は、ロールトゥロール方式でワークフィルムを走行させつつ成膜プロセスを実施できる成膜室を備える。本工程でのスパッタ成膜条件(第2のスパッタ成膜条件)は、次のとおりである。
【0061】
第2スパッタ成膜装置の成膜室内の到達真空度が5.0×10-4Paに至るまで真空排気した後、成膜室内に、スパッタリングガスとしてのアルゴンと、反応性ガスとしての酸素とを導入し、成膜室内の気圧を0.2Paとした。成膜室に導入されるアルゴンおよび酸素の合計導入量に対する酸素導入量の割合は、約1.5流量%とした。ターゲットとしては、酸化インジウムと酸化スズとの焼結体であって、酸化スズ割合が10.0質量%の焼結体を用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用いた。ターゲット上の水平磁場強度は90mTとした。成膜温度(第2層が形成されるワークフィルムの温度)は-5℃とした。ワークフィルムとしてのPETフィルムの走行速度は2.7m/分とした。
【0062】
次に、透明基材上の透明導電層(第1層/第2層)を、熱風加熱式オーブンによって加熱した(加熱工程)。本工程において、加熱温度は140℃とし、加熱時間は1時間とした。本工程により、第1層の非晶質性を維持しつつ、第2層を結晶化させて、透明導電層(
図2Dでは透明導電層20)を形成した。この透明導電層は、加熱後の第1層としての非晶質層(
図2Dでは非晶質層21)と、加熱によって結晶化した、第2層由来の結晶質層(
図2Dでは結晶質層22)とを有する。
【0063】
以上のようにして、実施例1の透明導電性フィルムを作製した。実施例1の透明導電性フィルムの透明導電層は、非晶質のインジウムスズ複合酸化物層(厚さT1 100nm,酸化スズ割合12.5質量%)と、結晶質のインジウムスズ複合酸化物層(厚さT2 25nm,酸化スズ割合10.0質量%)とを、透明基材側からこの順で有する。
【0064】
〔実施例2〕
次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、実施例2の透明導電性フィルムを作製した。第1層形成工程において第1層を厚さ(T1)75nmで形成し、第2層形成工程において第2層を厚さ(T2)50nmで形成した。
【0065】
〔比較例1~4〕
次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、比較例1~5の各透明導電性フィルムを作製した。第1層形成工程での第1層の厚さT1、および、第2層形成工程での第2層の厚さT2を、表1に示す厚さとした(比較例1では第2層を形成せず、比較例4では第1層を形成しなかった)。
【0066】
〔比較例5〕
次のこと以外は、比較例2の透明導電性フィルムと同様にして、比較例5の透明導電性フィルムを作製した。第2層形成工程と第1層形成工程とをこの順で実施した。第2層形成工程では、透明基材上に厚さ(T2)75nmの第2層を形成した。第1層形成工程では、第2層上に厚さ(T1)50nmの第1層を形成した。
【0067】
〈層の厚さ〉
実施例1,2および比較例1~5における各透明導電性フィルムの透明導電層の厚さ(総厚)を、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)での観察により測定した。具体的には、まず、FIBマイクロサンプリング法により、実施例1,2および比較例1~5における各透明導電層の断面観察用サンプルを作製した。FIBマイクロサンプリング法では、FIB装置(品名「FB2200」,Hitachi製)を使用し、加速電圧を10kVとした。次に、断面観察用サンプルにおける透明導電層の断面をFE-TEMによって観察し、当該観察画像において透明導電層の厚さを測定した。同観察では、FE-TEM装置(品名「JEM-2800」,JEOL製)を使用し、加速電圧を200kVとした。
【0068】
実施例1,2および比較例2,3における非晶質層(第1層)の厚さT1は、当該第1層の上に第2層を形成する前の中間作製物から断面観察用サンプルを作製し、当該サンプルのFE-TEM観察により測定した。実施例1,2および比較例2,3における各透明導電層の結晶質層(第2層)の厚さT2は、透明導電層の総厚から第1層の厚さT1を差し引いて求めた。
【0069】
比較例5における結晶質層(第2層)の厚さT2は、当該第2層の上に第1層を形成する前の中間作製物から断面観察用サンプルを作製し、当該サンプルのFE-TEM観察により測定した。比較例5における透明導電層の非晶質層(第1層)の厚さT1は、透明導電層の総厚から第2層の厚さを差し引いて求めた。
【0070】
〈結晶性〉
実施例1,2および比較例1~5における各透明導電層の第1層および第2層について、次のようにして結晶性(非晶質,結晶質)を調べた。
【0071】
まず、上述の断面観察用サンプルについて、200万倍の観察倍率でFE-TEM画像を撮影した(サンプル作製方法および観察方法は、層の厚さ測定に関して上述したのと同様である)。次に、撮影画像における第1層および第2層について、全体にわたって格子縞(結晶粒の存在に相当)が確認されない場合に非晶質であると評価し、全体にわたって格子縞が確認される場合に結晶質であると評価した。その結果、以下のことを確認した。実施例1,2および比較例2,3,5における第1層は非晶質であり、実施例1,2および比較例2,3,5における第2層は結晶質であった。比較例1における透明導電層(第1層)は非晶質であった。比較例4における透明導電層(第2層)は結晶質であった。これら確認結果を表1に示す。
【0072】
〈比抵抗〉
実施例1,2および比較例1~5の各透明導電性フィルムの透明導電層の比抵抗を測定した。具体的には、以下のとおりである。
【0073】
まず、透明導電性フィルムから、100mm×50mmの測定用フィルムを切り出した。次に、JIS K 7194(1994年)に準拠した四端子法により、測定用フィルムの透明導電層の表面抵抗を測定した。次に、透明導電層の表面抵抗に当該透明導電層の厚さを乗じて、比抵抗(Ω)を算出した。その値を表1に示す。
【0074】
〈屈曲性〉
実施例1,2および比較例1~5の各透明導電性フィルムの透明導電層について、以下のようにして、屈曲性(屈曲時のクラックの生じにくさ)を調べた。
【0075】
まず、当該透明導電性フィルムから複数のフィルム(長さ20cm×幅1cm)を試験用の試料として切り出した。次に、
図4に示すように、試験用の試料31を、所定の直径のマンドレル棒32にセットした。試料31は、透明導電層が屈曲外側に位置するように、試料31の長さ方向における中央部にて180°屈曲させた。試料31の長さ方向における端部31a,31bは、クリップ器具33に固定した。端部31a,31b間の距離は、マンドレル棒32の直径と実質的に同じとした。クリップ器具33には、1kgの錘34を吊り下げた。試料31は、
図4に示す状態で10秒間、静置させた(屈曲試験)。その後、試料31をマンドレル棒32から外し、試料31からクリップ器具33を外した。そして、フラットにさせた試料31における透明導電層を光学顕微鏡で観察し、透明導電層におけるクラック(割れ)の有無を確認した(顕微鏡観察)。このような、屈曲試験とその後の顕微鏡観察とを、同一の透明導電性フィルムに由来する複数の試料のそれぞれに対して実施した。すなわち、透明導電性フィルムごとに、複数の屈曲試験を実施した。当該複数の屈曲試験においては、マンドレル棒32を取り換えることにより、マンドレル棒32の直径を35mmから0.5mmずつ順次に小さくした。顕微鏡観察においてクラックが観察されなかったマンドレル棒32の直径のうち最大の直径を、180°屈曲径として表1に示す。
【0076】
[評価]
比較例1の透明導電性フィルムの透明導電層は、比抵抗が3.5×10-4Ω・cmを超えて大きい。比較例2~5の透明導電性フィルムの透明導電層は、180°屈曲径が20mm以上であって大きい。比較例1~5の透明導電性フィルムでは、透明導電層の低抵抗性と屈曲性とが両立できていない。これに対し、実施例1,2の透明導電性フィルムの透明導電層は、比抵抗が3.5×10-4Ω・cm以下であって小さく、且つ、180°屈曲径が20mm未満であって小さい。実施例1,2の透明導電性フィルムでは、透明導電層の低抵抗性と屈曲性とが両立されている。
【0077】