(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143154
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】土砂捕捉柵
(51)【国際特許分類】
E02B 7/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055679
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】國領 ひろし
(57)【要約】
【課題】敷幅が小さく、かつ経済性にも考慮した土砂捕捉柵を提供する。
【解決手段】渓流に設けられる土砂捕捉柵であって、鉛直方向又は設置地盤に垂直方向に立設される複数の支柱と、前記複数の支柱における上流側に支持される梁部材と、前記支柱の下流側に斜設されると共に下方に延びる斜材とを備え、前記梁部材は、前記支柱における前記上流側の取付面に下流側の主平面が当接する取り付け板が設けられることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
渓流に設けられる土砂捕捉柵であって、
鉛直方向又は設置地盤に垂直方向に立設される複数の支柱と、前記複数の支柱の上流側に支持される梁部材と、前記支柱の下流側に斜設されると共に下方に延びる斜材とを備えること
を特徴とする土砂捕捉柵。
【請求項2】
前記梁部材は、前記支柱の上流側に着脱自在に取り付けられていること
を特徴とする請求項1に記載の土砂捕捉柵。
【請求項3】
前記梁部材は、前記支柱における上流側の取付面に下流側の主平面が当接する取り付け板が設けられること
を特徴とする請求項2に記載の土砂捕捉柵。
【請求項4】
前記斜材は、前記支柱の下端と天端との中間点から前記天端までの間に斜設されること
を特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の土砂捕捉柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渓流に設けられる土砂捕捉柵に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的小規模な渓流に流れる土砂及び石礫が宅地や道路及び鉄道に流入することを防ぐための捕捉柵が必要とされている。土砂及び石礫を捕捉するための捕捉柵として、例えば下記に示す特許文献1及び特許文献2が公開されている。
【0003】
特許文献1では、0次谷又は1次谷に設けられる透過性の防護柵であって、複数の柱部と柱部の延在方向に沿って互いに所定の間隔をあけた複数の梁部を備えた防護柵が開示されている。
【0004】
特許文献2では、H形鋼の柱部材と鋼管の梁部材から形成されている捕捉体の基礎をコンクリートブロックとする防護工が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-141568号公報
【特許文献2】特開2022-39651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、比較的小規模な渓流に流れる土砂及び石礫を捕捉する場合、対象とする計画捕捉土砂量が1000m3程度であり、コストを削減するため、通常の鋼製透過型砂防堰堤に比べて簡易かつ小規模な構造が望まれる。また、宅地が谷出口まで迫った地域や山沿いの道路及び鉄道付近の渓流に流れる土砂及び石礫を捕捉する場合、捕捉柵の設置場所は、民家裏や高速道路沿い等の用地や資材等の運搬道が制限される場所であることが多く、構造物の敷幅が小さく、かつ経済性にも考慮した構造であることが望まれる。また、捕捉柵を透過型構造とする場合、実際の現場では流下する最大礫の直径が0.15m程度と比較的小さな礫も捕捉対象とされる場合があり、これらの礫を捕捉できる構造が必要とされている。
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の開示技術では、礫を捕捉するための梁部材の直径が大きく、コストが嵩むうえに、流下する捕捉対象礫の小径化に対応できない。さらに、特許文献1及び特許文献2の開示技術における捕捉柵の設置場所は、民家裏や高速道路沿い等の用地が制限される場所であることを想定していない。このため、特許文献1及び特許文献2の開示技術では、用地が制限される場所に捕捉柵を設置することができないという問題点があった。この問題を解決するため捕捉柵の幅を狭くすれば各部材に発生する応力が増大し各部材のサイズが大きくなり、コストが嵩むという問題点があった。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、敷幅が小さく、かつ経済性にも考慮した土砂捕捉柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る土砂捕捉柵は、比較的小規模な渓流に設けられる土砂捕捉柵であって、鉛直方向又は設置地盤に垂直方向に立設される複数の支柱と、前記複数の支柱の上流側に支持される梁部材と、前記支柱の下流側に斜設されると共に下方に延びる斜材とを備えることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る土砂捕捉柵は、第1発明において、前記梁部材は、前記支柱の上流側に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る土砂捕捉柵は、第2発明において、前記梁部材は、前記支柱における上流側の取付面に下流側の主平面が当接する取り付け板が設けられることを特徴とする。
【0012】
第4発明に係る土砂捕捉柵は、第1発明乃至第3発明において、前記斜材は、前記支柱の下端と天端との中間点から前記天端までの間に斜設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明~第4発明によれば、土砂捕捉柵は、鉛直方向又は設置地盤に垂直方向に立設される複数の支柱と、梁部材と、斜材とを備える。これにより、支柱が鉛直方向又は設置地盤に垂直方向に立設されていることから、土砂捕捉柵を設置するために必要な基礎幅が小さくなり、敷幅が小さく、かつ経済性にも考慮した土砂捕捉柵を設置することが可能となる。
【0014】
特に、第2発明によれば、礫等を捕捉する梁部材が支柱の上流側に支柱を保護するように着脱自在に取り付けられていることから、礫衝突時においても支柱は損傷せず、梁部材等の捕捉部材が損傷を受けた場合においても、梁部材等の捕捉部材が容易に交換でき、施設の維持管理にも優れた土砂捕捉柵を設置することが可能となる。
【0015】
特に、第3発明によれば、梁部材は、支柱における上流側の取付面に下流側の主平面が当接する取り付け板が設けられる。これにより、取付面と取り付け板とを当接し、接合することにより、梁部材が支持される。このため、梁部材の上流側にボルト等の接合部材が露出することがなくなるため、より耐久性に優れた土砂捕捉柵を設置することが可能となる。
【0016】
特に、第4発明によれば、支柱の下端と天端との中間点から支柱の天端までの間に斜設される。これにより、土砂捕捉柵を設置するために必要な基礎幅が小さく、かかる応力も小さい経済性に優れた土砂捕捉柵を設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、第1実施形態における土砂捕捉柵の一例を示す図である。
【
図2】
図2(a)は、第1実施形態における土砂捕捉柵の側面の一例を示す図である。
図2(b)は、第1実施形態におけるアンカー材を用いた土砂捕捉柵の側面の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態における支柱の一部を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、第1実施形態における梁部材の一端部を示す図である。
図4(b)は、第1実施形態における梁部材の一端部の俯瞰図である。
【
図5】
図5(a)は、第1実施形態における梁部材の側面を示す図である。
図5(b)は、第1実施形態における梁部材に予めボルトを取り付けた場合の側面を示す図である。
【
図6】
図6(a)は、第1実施形態における接合部の形状がくり抜き型の場合の梁部材の一端部を示す図である。
図6(b)は、第1実施形態における接合部の形状がくり抜き型の場合の梁部材の側面を示す図である。
【
図7】
図7(a)は、第1実施形態における支柱と梁部材との接合部分の一例を示す図である。
図7(b)は、第1実施形態における支柱と梁部材との接合部分の平面を示す図である。
【
図8】
図8(a)は、第1実施形態における支柱と接合部の形状がくり抜き型の場合の梁部材との接合部分の一例を示す図である。
図8(b)は、第1実施形態における支柱と接合部の形状がくり抜き型の場合の梁部材との接合部分の平面を示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態における土砂捕捉柵の設置工程を示す図である。
【
図10】
図10(a)は、第1実施形態における土砂捕捉柵の設置工程の支柱と梁部材とを接合する工程を示す図である。
図10(b)は、第1実施形態における土砂捕捉柵の設置工程の支柱と梁部材との接合後を示す図である。
【
図11】
図11(a)は、第1実施形態における土砂捕捉柵の設置工程の支柱と接合部の形状がくり抜き型の場合の梁部材とを接合する工程を示す図である。
図11(b)は、第1実施形態における土砂捕捉柵の設置工程の支柱と接合部の形状がくり抜き型の場合の梁部材との接合後を示す図である。
【
図12】
図12(a)は、土石流水深が2.0mの場合の土砂捕捉柵の基礎幅と斜材の位置との関係を示すグラフである。
図12(b)は、土石流水深が2.0mの場合の土砂捕捉柵の最大曲げモーメントと斜材の位置との関係を示すグラフである。
【
図13】
図13は、土石流水深が0.6mの場合の土砂捕捉柵の基礎幅と斜材の位置との関係を示すグラフである。
【
図14】
図14(a)は、非越流部又は渓岸浸食防止にコンクリートブロックを使用した場合の土砂捕捉柵の例を示す図である。
図14(b)は、基礎の一部と非越流部又は渓岸浸食防止にコンクリートブロックを使用した場合の土砂捕捉柵の例を示す図である。
図14(c)は、基礎及び非越流部又は渓岸浸食防止全てにコンクリートブロックを使用した場合の土砂捕捉柵の例を示す図である。
【
図15】
図15は、基礎及び非越流部又は渓岸浸食防止全てに鋼製枠を使用した場合の土砂捕捉柵の例を示す図である。
【
図16】
図16(a)は、第2実施形態における支柱と梁部材との接合部分の一例を示す図である。
図16(b)は、第2実施形態における支柱と梁部材との接合部分の平面を示す図である。
【
図17】
図17(a)は、第2実施形態における土砂捕捉柵の設置工程の支柱と梁部材とを接合する工程を示す図である。
図17(b)は、第2実施形態における土砂捕捉柵の設置工程の支柱と梁部材との接合後を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1実施形態における土砂捕捉柵1の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
土砂捕捉柵1について、
図1~
図6を用いて説明する。
図1は、第1実施形態における土砂捕捉柵1の一例を示す図である。
図1において、渓流は上流から下流の方向xに流れるとする。
図2(a)は、第1実施形態における土砂捕捉柵1の側面の一例を示す図である。
図2(b)は、第1実施形態におけるアンカー材7を用いた土砂捕捉柵1の側面の一例を示す図である。
図3は、第1実施形態における支柱2の一部を示す図である。
図4(a)は、第1実施形態における梁部材3を示す図である。
図4(b)は、第1実施形態における梁部材3の俯瞰図である。
図5(a)は、第1実施形態における梁部材3の側面を示す図である。
図5(b)は、第1実施形態における梁部材3に予めボルト32を取り付けた場合の側面を示す図である。
図6(a)は、第1実施形態における接合部34の形状がくり抜き型の場合の梁部材3を示す図である。
図6(b)は、第1実施形態における接合部34の形状がくり抜き型の場合の梁部材3の側面を示す図である。
【0020】
土砂捕捉柵1は、例えば
図1に示すように、土砂及び石礫を捕捉するための渓流に設けられる柵である。土砂捕捉柵1は、例えば鉛直方向zに立設される複数の支柱2と、複数の支柱2の上流側に支持される梁部材3と、支柱2の下流側に斜設されると共に下方に延びる斜材4とを備える。土砂捕捉柵1は、鉛直方向に限らず設置地盤に垂直方向に立設されてもよい。ここで設置地盤とは、土砂捕捉柵1を設置する渓床又はコンクリート等の基礎を言う。土砂捕捉柵1は、梁部材3の代わりに複数の支柱2の間に図示しない金網やグレーチング、又はパンチングメタル等を備えてもよいし、複数の支柱2の間に梁部材3と図示しない金網やグレーチング、又はパンチングメタル等とをどちらも備えてもよい。また、渓流は、例えば谷出口であってもよい。また、渓流は、例えば1次谷又は0次谷であってもよい。1次谷は、開口幅より奥行きが深くなる谷であり、例えば小規模な渓流である。0次谷は、例えば常時表流水の無い谷である。また、渓流は、宅地が谷出口まで迫った地域や山沿いの道路及び鉄道付近のものであってもよい。
【0021】
支柱2は、
図2(a)に示すように、鉛直方向zに立設される柱である。支柱2は、例えば基礎コンクリート(現場打ち)5に埋め込まれ、設けられるがこの限りではない。支柱2は、
図2(b)に示すように、例えばアンカー材7により、支柱2の下端2bが基礎コンクリート(現場打ち)5に固定されてもよい。支柱2は、例えばウェブ24と、ウェブ24の両端の一対のフランジ25a、25bとにより構成されるH形鋼である。また、支柱2は、渓流の流れる方向xに対して上流側のフランジ25aと下流側のフランジ25bとがウェブ24の両端に設けられる。支柱2は、H形鋼であることが好ましいが、この限りではなく、円形鋼管、角形鋼管、CT鋼、溝形鋼等を用いてもよい。支柱2は、支柱2間の間隔bが0.5m~3.0m以下となるように複数並設されてもよい。支柱2は、例えば支柱2と基礎コンクリート(現場打ち)5との接点である支点2eから天端2cまでの柵高さhが、1.0m~5.0mとなるように設けられてもよい。また、例えば支柱2が角形鋼管である場合、渓流の流れる方向xに対して上流側のプレートをフランジ25aとしてもよい。また、支柱2は、
図3に示すように、例えば渓流の上流側のフランジ25aにボルト孔21が設けられてもよい。また、支柱2のフランジ25aの上流側の面を取付面2aとする。取付面2aは、フランジ25aの上流側の面に限らず、支柱2の上流側の側面であればよい。また、取付面2aは、平面であることが好ましいが、これに限らず、例えば湾曲していてもよい。また、支柱2がアンカー材7により基礎コンクリート(現場打ち)5に固定される場合、支柱2の下端2bが支点2eとなる。
【0022】
斜材4は、
図2(a)に示すように支柱2の下流側のフランジ25bに斜設され、渓流の流れる方向xの鉛直方向zの下方に延びる部材である。また、斜材4は、支柱2と同じサイズであってもよいが、この限りではなく、任意のサイズのものを用いてもよい。斜材4は、H形鋼であることが好ましいが、この限りではなく、円形鋼管、角形鋼管、CT鋼、溝形鋼等を用いてもよい。斜材4は、支柱2の支点2eと天端2cとの中間点2dから支柱2の天端2cまでの間に斜設されるのが好ましいがこの限りではない。また、斜材4は、基礎コンクリート(現場打ち)5に埋め込まれ、固定されてもよい。また、斜材4は、
図2(b)に示すようにアンカー材7等により基礎コンクリート(現場打ち)5に固定されてもよい。また、斜材4は、ボルト41と、これを螺着するナット42等により、支柱2の下流側に接合されてもよい。また、斜材4は、あらかじめ支柱2に溶接接合されてもよい。また、支柱2に斜材4が斜設される位置を設置位置4bとする。設置位置4bは、支柱2の中心線と斜材4の中心線との交点である。また、支柱2の下端2bを通る鉛直方向zから上流側に45°傾いた斜線の基礎コンクリート(現場打ち)5の表面との交点を点5aとする。また、斜材4の下端4aを通る鉛直方向zから下流側に45°傾いた斜線の基礎コンクリート(現場打ち)5の表面との交点を点5bとする。また、点5aから点5bまでの幅を土砂捕捉柵1の構造上必要な最小の幅である基礎幅dとする。また、
図2(b)に示すように、支柱2及び斜材4がアンカー材7により基礎コンクリート(現場打ち)5に固定されている場合、斜材4の下端4aから支柱2の下端2bまでを構造上必要な基礎幅dとしてもよい。また、土砂捕捉柵1が土砂及び石礫を捕捉した状態でも安定であるための安定上必要な基礎幅(基礎コンクリートの幅)を基礎幅Wとしてもよく、安定上必要な基礎幅Wは構造上必要な基礎幅dより小さくすることはできない。また、構造上必要な基礎幅dが安定上必要な基礎幅Wより小さい場合、
図2(a)に示すように、上流側に大きくする方が安定上有利となる。
【0023】
梁部材3は、
図4(a)に示すように、土砂及び石礫を捕捉するための梁である。梁部材3は、例えば円形鋼管、角形鋼管、CT鋼管、溝形鋼、L形鋼等を用いてもよい。梁部材3は、例えば鋼管直径が100mm以上、鋼管板厚が8mm以上となるものを用いてよい。また、梁部材3は、間隔aが最小で0.1mとなるように
図1に示す支柱2の上流側に複数並設されてもよい。また、梁部材3は、下記の式1で示す礫に対する鋼管のへこみ吸収エネルギーE
dに対して、へこみ率(へこみ変形δ
d/鋼管外径D)が40%以下となる鋼管を用いてもよい。
【数1】
【0024】
梁部材3は、
図4(b)に示すように、下流側に接合部34を介して、ボルト孔35が穿設される取り付け板31が設けられる。取り付け板31の下流側の主平面を当接面31aとする。また、梁部材3は、例えば
図5(b)に示すように、下流側の側面3aと取り付け板31の上流側の主平面31bとの間にボルト32等の接続部材が露出するように予め取り付けられていてもよい。接合部34は、梁部材3と取り付け板31との接合部分であり、例えば梁部材3の下流側の側面3aと取り付け板31の上流側の主平面31bとに溶接される。接合部34は、鉛直方向zと方向xとに垂直な方向yに沿って梁部材3の下流側の側面3aに溶接されると共に取り付け板31の上流側の主平面31bに溶接されることで梁部材3と取り付け板31とを接合してもよい。また、接合部34は、鉛直方向zの位置が異なるように複数設けられてもよい。また、接合部34の上流側の端面34aは、梁部材3の下流側の側面3aの方向yに沿うように形成されてもよい。また、接合部34の上流側の端面34aは、梁部材3の形状が円形鋼管の場合、梁部材3の下流側の側面3aの方向yに沿うように湾曲するように形成されてもよい。かかる場合、接合部34のxz平面における断面図の上流側の端面34aの曲率は、梁部材3のxz平面における断面図における下流側の側面3aの曲率と同じであってもよい。また、図示しないが取り付け板31は複数に分割され設けられてもよい。また、取り付け板31と接合部34は溶接されることなく、例えば山形鋼等のように一体に形成されてもよい。
【0025】
接合部34は、例えば
図6(a)及び
図6(b)に示すような、接合部34の上流側の端面34aが、梁部材3の下流側の側面3aの方向zに沿うように形成されるくり抜き型であってもよい。接合部34は、梁部材3の鉛直方向zに沿って下流側の側面3aに溶接されると共に取り付け板31の上流側の主平面31bに溶接されることで梁部材3と取り付け板31とを接合されてもよい。また、接合部34は、方向yの位置が異なるように複数設けられてもよい。また、接合部34は、これに限らず、任意の形状であってもよい。また、梁部材3と取り付け板31とは、任意の方法で梁部材3に接合されてもよい。
【0026】
次に、支柱2と梁部材3との接合構造について
図7、
図8を用いて説明する。
図7(a)は、第1実施形態における支柱2と梁部材3との接合部分の一例を示す図である。
図7(b)は、第1実施形態における支柱2と梁部材3との接合部分の平面を示す図であり、
図7(a)の平面を示す図である。
図8(a)は、第1実施形態における支柱2と接合部34の形状がくり抜き型の場合の梁部材3との接合部分の一例を示す図である。
図8(b)は、第1実施形態における支柱2と接合部34の形状がくり抜き型の場合の梁部材3との接合部分の平面を示す図であり、
図8(a)の平面を示す図である。土砂捕捉柵1は、
図7(a)に示すように、梁部材3の下流側に設けられた取り付け板31を介して、支柱2と梁部材3とが接合されている。土砂捕捉柵1は、
図7(b)に示すように、支柱2の上流側の取付面2aと、梁部材3の当接面31aとを当接させ、ボルト32と、これを螺着するナット22等によりフランジ25aと取り付け板31とが接合されることにより、支柱2の上流側に梁部材3が支持される。また、接合部34の形状がくり抜き型の場合にであっても、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、同様に支柱2の上流側の取付面2aと、梁部材3の当接面31aとを当接させ、接合されることにより、支柱2の上流側に梁部材3が支持される。また、支柱2と梁部材3とは、例えば支柱2に取り付けられると共に梁部材3を嵌合する図示しないU字ボルトにより、接合されてもよい。また、支柱2と梁部材3とは、例えば支柱2に取り付けられると共に梁部材3が貫通可能な孔を有する図示しない保持具により、接合されてもよい。また、支柱2と梁部材3とは、任意の方法により接合されてもよい。また、梁部材3は、支柱2の上流側に着脱自在に取り付けられてもよい。
【0027】
次に、第1実施形態における土砂捕捉柵1の設置工程について
図9~
図11を用いて説明する。
【0028】
図9は、第1実施形態における土砂捕捉柵1の設置工程を示す図である。
図10(a)は、実施形態における土砂捕捉柵1の設置工程の支柱2と梁部材3とを接合する工程を示す図である。
図10(b)は、実施形態における土砂捕捉柵1の設置工程の支柱2と梁部材3との接合後を示す図である。
図11(a)は、実施形態における土砂捕捉柵1の設置工程の支柱2と接合部34の形状がくり抜き型の場合の梁部材3とを接合する工程を示す図である。
図11(b)は、実施形態における土砂捕捉柵1の設置工程の支柱2と接合部34の形状がくり抜き型の場合の梁部材3との接合後を示す図である。まず、S1において、複数の支柱2を鉛直方向zに立設する。支柱2は、例えば基礎コンクリート(現場打ち)5に設けられてもよい。かかる場合、
図2(b)に示すように、アンカー材7を用いて支柱2の下端2bを基礎コンクリート(現場打ち)5に固定してもよいが、この限りではなく、支柱2の支点2eから支柱2の下端2bまでが基礎コンクリート(現場打ち)5に埋め込まれるように設けられてもよい。また、複数の支柱2は、等間隔に並設されてもよいが、この限りではなく、任意の間隔で並設されてもよい。
【0029】
次に、S2において、支柱2に斜材4を下流側に接合する。かかる場合、斜材4は、支柱2の支点2eと天端2cとの中間点2dから支柱2の天端2cまでの間に斜設されるように設けられてもよい。また、斜材4と支柱2とを基礎コンクリート(現場打ち)5に埋め込み、固定してもよい。また、斜材4は、支柱2の下流側のフランジ25bに接合されてもよい。斜材4は、渓流の流れる方向xの鉛直方向zの下方に延びるように設けられる。これにより、渓流の流れる方向xに働く力に対する抵抗力fが働き、土砂捕捉柵1の耐力が向上する。
【0030】
次に、S3において、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、梁部材3を支柱2の上流側に設ける。かかる場合、梁部材3は、支柱2における上流側の取付面2aに対して当接面31aを当接し、接合することにより、支柱2に支持される。また、任意の数の梁部材3を支柱2に支持させてもよい。また、接合部34の形状がくり抜き型の場合においても同様に、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、梁部材3は、支柱2における上流側の取付面2aに対して当接面31aを当接し、接合することにより、支柱2に支持される。
【0031】
上述した工程により、第1実施形態における土砂捕捉柵1の設置が完了する。また、土砂捕捉柵1の設置は、上述した方法に限らず、任意の方法で設置してもよい。また、土砂捕捉柵1は、予め組み立てられたものを、渓流に設置してもよい。
【0032】
次に、第1実施形態における土砂捕捉柵1を用いた場合の計算結果について図を用いて説明する。
【0033】
図12(a)は、支柱2の高さhが2.0mで、大規模クラスの土石流(土石流水深が2.0m)を想定した場合の土砂捕捉柵1の安定上必要な基礎幅Wと斜材4の位置との関係を示すグラフである。
図12(a)のグラフは、横軸が支柱2の天端2cから斜材4の設置位置4bまでの距離を示し、縦軸が安定上必要な基礎幅Wを示す。
図12(a)のグラフが示すように、斜材4の天端2cから設置位置4bまでの距離が1.0m程度、つまり支柱2の天端2cから中間点2dまでの距離の場合では、距離が大きくなるにつれて安定上必要な基礎幅Wが顕著に減少するが、斜材4の天端2cから設置位置4bまでの距離が1.0mより大きくなる、つまり支柱2の天端2cから中間点2dまでの距離より大きい場合では、距離が大きくなるにつれて減少する安定上必要な基礎幅Wの減少量が低下する。
【0034】
図12(b)は、支柱2の高さhが2.0mで、大規模クラスの土石流(土石流水深が2.0m)を想定した場合の土砂捕捉柵1の最大曲げモーメントと斜材の位置との関係を示すグラフである。
図12(b)のグラフは、横軸が支柱2の天端2cから斜材4の設置位置4bまでの距離を示し、縦軸が最大曲げモーメント(kN・m)を示す。また、
図12(b)のグラフが示すように、斜材4の天端2cから設置位置4bまでの距離が1.0mより大きくなる、つまり支柱2の天端2cから中間点2dまでの距離より大きい場合では、距離が大きくなるにつれて最大曲げモーメント(kN・m)が大きくなり、土砂捕捉柵1の各部材に発生する応力が増加する。
【0035】
図13は、支柱2の高さhが2.0mで、一般的な土石流(土石流水深が0.6m)を想定した場合の土砂捕捉柵1の安定上必要な基礎幅Wと斜材4の位置との関係を示すグラフである。
図13のグラフは、横軸が支柱2の天端2cから斜材4の設置位置4bまでの距離を示し、縦軸が安定上必要な基礎幅Wを示す。
図13のグラフが示すように、斜材4の天端2cから設置位置4bまでの距離が1.0m程度、つまり支柱2の天端2cから中間点2dまでの距離の場合では、距離が大きくなるにつれて安定上必要な基礎幅Wが減少するが、斜材4の天端2cから設置位置4bまでの距離が1.0mより大きくなる、つまり支柱2の天端2cから中間点2dまでの距離より大きい場合では、距離が大きくなっても減少する安定上必要な基礎幅Wの減少量が著しく低下しほぼ同じ基礎幅Wとなる。これは、安定上必要な基礎幅Wの限界値となっているため、構造上必要な基礎幅dを小さくしても安定上必要な基礎幅Wを小さくすることができないからである。
【0036】
上述した計算結果から、斜材4の設置位置4bが支柱2の天端2cである場合、土砂捕捉柵1にかかる応力が小さくなるが、安定上必要な基礎幅Wが大きくなる。また、斜材4の天端2cから設置位置4bまでの距離が支柱2の天端2cから中間点2dまでの距離より大きい場合、安定上必要な基礎幅Wは小さくなるが、土砂捕捉柵1にかかる応力が大きくなる。このことから、斜材4の設置位置4bが中間点2dから天端2cの間である場合、安定上必要な基礎幅Wが小さく、土砂捕捉柵1にかかる応力も小さくなるため、用地が制限される民家裏や高速道路沿い等の場所においても十分な耐力を有する土砂捕捉柵1を設けることができる。
【0037】
次に、土砂捕捉柵1の設置に際し、基礎や非越流部又は渓岸浸食防止は現場打コンクリートを用いるのが一般的であるが、
図14、15に示すように二次製品であるコンクリートブロック6やかご枠等を含む鋼製枠8を用いることができる。
図14(a)は、非越流部又は渓岸浸食防止にコンクリートブロック6を使用した場合の土砂捕捉柵1の例を示す図である。
図14(b)は、基礎の一部と非越流部又は渓岸浸食防止にコンクリートブロック6を使用した場合の土砂捕捉柵1の例を示す図である。
図14(c)は、基礎及び非越流部又は渓岸浸食防止全てにコンクリートブロック6を使用した場合の土砂捕捉柵1の例を示す図である。
図15は、基礎及び非越流部又は渓岸浸食防止全てに鋼製枠8を使用した場合の土砂捕捉柵1の例を示す図である。土砂捕捉柵1に用いる基礎や非越流部は、例えば
図14(a)に示すように基礎コンクリート(現場打ち)5に設けられる。また、
図14(b)に示すようにコンクリートブロック5の上に設けた基礎コンクリート(現場打ち)に設けてもよい。さらに、土砂捕捉柵1は、
図14(c)に示すように、基礎コンクリート(現場打ち)5を用いることなく、コンクリートブロック6に設けられてもよい。かかる場合、土砂捕捉柵1は例えばアンカー材7によりコンクリートブロック6に固定されてもよい。また、土砂捕捉柵1は、
図15に示すように、鋼製枠8に埋められることにより設けられてもよい。また、土砂捕捉柵1は、基礎及び非越流部又は渓岸浸食防止として任意の方法で渓流に設けられてもよい。
【0038】
以上、本発明の第1実施形態に係る土砂捕捉柵1について説明をした。本発明の第1実施形態に係る土砂捕捉柵1は、鉛直方向zに立設される複数の支柱2と、梁部材3と、斜材4により、土砂捕捉柵1を設置するために必要な基礎幅Wが小さくなることから、敷幅が小さく、かつ経済性にも考慮した土砂捕捉柵1を設置することが可能となる。また、本発明の第1実施形態に係る土砂捕捉柵1は、梁部材3等の部材が小さく、各部材を分解して運ぶことが可能であるため、民家裏や高速道路沿い等の用地や資材等の運搬道が制限される場所であっても、資材を運搬し、狭小地で捕捉柵を施工することが可能となる。
【0039】
また、本発明の第1実施形態に係る土砂捕捉柵1は、梁部材3が支柱2における上流側の取付面2aに当接する当接面31aが梁部材3の下流側に設けられる。これにより、取付面2aと当接面31aとを当接し、接合することにより、梁部材3が支持され、梁部材3の上流側にボルトやプレート等の接合部材が露出することがなくなるため、より耐久性に優れた土砂捕捉柵1を設置することが可能となる。
【0040】
また、本発明の第1実施形態に係る土砂捕捉柵1は、支柱2及び斜材4がアンカー材7により固定されてもよい。これにより、土砂捕捉柵1は、基礎コンクリート(現場打ち)5等の土台が無い場合でも、例えばコンクリートブロック6等に設置することが可能となり、より低コストで設置することができる。
【0041】
また、本発明の第1実施形態に係る土砂捕捉柵1は、梁部材3が支柱2の上流側に設けられる。これにより、支柱2へ礫が直撃することを防ぐことが可能となる。
【0042】
また、本発明の第1実施形態に係る土砂捕捉柵1は、間隔aが最小で0.1mとなる複数の梁部材3が支柱2の上流側に設けられる。このため、礫の最小径が0.15m程度であっても、礫を捕捉することが可能となる。
【0043】
また、本発明の第1実施形態に係る土砂捕捉柵1は、支柱2と梁部材3とがボルト32と、これを螺着するナット22により接合される。これにより、梁部材3が損傷した場合であっても、容易に梁部材3を交換することが可能となる。
【0044】
また、本発明の第1実施形態に係る土砂捕捉柵1は、接合部34の上流側の端面34aが、梁部材3の下流側の側面3aに沿うように形成される。これにより、接合部34の上流側の端面34aと梁部材3の下流側の側面3aとを当接させ、接合することが可能となるため、接合部34と梁部材3との接合の強度が上がる。
【0045】
また、本発明の第1実施形態に係る土砂捕捉柵1は、梁部材3が、下流側の側面3aと取り付け板31の上流側の主平面31bとの間にボルト32等の接続部材が露出するように設けられる。これにより、梁部材3の上流側にボルトやプレート等の接合部材が露出することがなくなるため、より耐久性に優れた土砂捕捉柵1を設置することが可能となる。
【0046】
次に、本発明の第2実施形態における土砂捕捉柵1の一例について、
図16を参照しながら説明する。第2実施形態における土砂捕捉柵1は、支柱2に梁部材3を支持させる構造が異なる点で第1実施形態における土砂捕捉柵1と異なる。また、第1実施形態と同様な記載は省略する。
【0047】
図16(a)は、第2実施形態における支柱2と梁部材3との接合部分の一例を示す図である。
図16(b)は、第2実施形態における支柱2と梁部材3との接合部分の平面を示す図であり、
図16(a)の平面を示す図である。支柱2は、H形鋼である場合、支柱2の両端の上流側のフランジ25aと下流側のフランジ25bとを貫通するように位置決め材23が設けられる。位置決め材23は、例えばナット26、27を螺着することにより、支柱2の両端の上流側のフランジ25aと下流側のフランジ25bとに接合される。
【0048】
梁部材3は、下流側にガイド材33が設けられる。ガイド材33は、梁部材3の下流側に設けられ、位置止め材23により係止されるように形成される。ガイド材33は、例えば
図16(b)に示すようなフランジ25aを嵌合し、ガイド材33に係止されるように設けられるL字型の形状でもよいが、これに限らず、任意の形状のものを用いてよい。ガイド材33は、例えば梁部材3の下流側の側面3aに溶接されることで、梁部材3と接合されてもよい。
【0049】
梁部材3は、
図16(a)に示すように、支柱2の位置止め材23に、梁部材3のガイド材33を係止させることで、ガイド材33がフランジ25aと嵌合され、支柱2の上流側に支持される。
【0050】
次に、第2実施形態における土砂捕捉柵1の設置工程について
図17を用いて説明する。
図17(a)は、第2実施形態における土砂捕捉柵1の設置工程の支柱2と梁部材3とを接合する工程を示す図である。
図17(b)は、第2実施形態における土砂捕捉柵の設置工程の支柱2と梁部材3との接合後を示す図である。梁部材3は、S3において、
図17(a)及び
図17(b)に示すように支柱2の天端2cからガイド材33をフランジ25aに嵌入することで、支柱2に取り付けられた位置止め材23に、梁部材3の下流側に設けられたガイド材33が係止し、支柱2の上流側に梁部材3が支持される。
【0051】
以上、本発明の第2実施形態に係る土砂捕捉柵1について説明をした。本発明の第2実施形態に係る土砂捕捉柵1は、梁部材3の着脱がより容易となる。このため、組み立ての作業効率が向上するとともに、より低コストで土砂捕捉柵1を設置することができる。
【0052】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 土砂捕捉柵
2 支柱
2a 取付面
2b 下端
2c 天端
2d 中間点
2e 支点
3 梁部材
3a 側面
4 斜材
4a 下端
4b 設置位置
5 基礎コンクリート(現場打ち)
5a 点
5b 点
6 コンクリートブロック
7 アンカー材
8 鋼製枠
21 ボルト孔
22 ナット
23 位置止め材
24 ウェブ
25 フランジ
25a 上流側のフランジ
25b 下流側のフランジ
26 ナット
27 ナット
31 取り付け板
31a 当接面
31b 主平面
32 ボルト
33 ガイド材
34 接合部
34a 端面
35 ボルト孔
41 ボルト
42 ナット