(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143163
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】鋼板組立柱、鋼板組立柱の組立方法
(51)【国際特許分類】
E04H 12/08 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E04H12/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055693
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】高木 康秀
(72)【発明者】
【氏名】地原 稔
(57)【要約】
【課題】鋼板組立柱の剛性を確実に向上させることができる鋼板組立柱、及び鋼板組立柱の組立方法を提供する。
【解決手段】 鋼板組立柱100は、テーパ状で下方に向けて拡径された直円錐台形の複数の鋼管1が上下に継ぎ合わされた鋼板組立柱100であって、上段の第1鋼管10と、上段の第1鋼管10の下段に継ぎ合わされ、上段の第1鋼管10よりも高いテーパ率で拡径された下段の第2鋼管20と、を備えることを特徴とする。上段の第1鋼管10のテーパ率に対する下段の第2鋼管20のテーパ率の増加率は、0%超~7%である。組立方法としては、第1鋼管10の下方に第2鋼管20を挿入して第1鋼管10と第2鋼管20とを接触させたあと、第1鋼管10を下方に向けて押し下げて継ぎ合わせる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーパ状で下方に向けて拡径された直円錐台形の複数の鋼管が上下に継ぎ合わされた鋼板組立柱であって、
上段の鋼管と、
上記上段の鋼管の下段に継ぎ合わされ、上記上段の鋼管よりも高いテーパ率で拡径された下段の鋼管と、
を備えること
を特徴とする鋼板組立柱。
【請求項2】
上記上段の鋼管のテーパ率に対する上記下段の鋼管のテーパ率の増加率は、0%超~7%であること
を特徴とする請求項1に記載の鋼板組立柱。
【請求項3】
テーパ状で下方に向けて拡径された直円錐台形の複数の鋼管を上下に継ぎ合わせる鋼板組立柱の組立方法であって、
上段の鋼管の下段に、当該上段の鋼管よりも高いテーパ率で拡径された下段の鋼管を継ぎ合わせること
を特徴とする鋼板組立柱の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物の屋上等に設置される避雷針や基地局等、あるいは地上に設置される電柱等に適用される鋼板組立柱、及び鋼板組立柱の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋上等に設置される避雷針や基地局等、あるいは地上に設置される電柱等は、何れも相当の高さが求められ、その分において製品長さが長く運搬が困難になり、全重量も大きくなる。このため、鋼板組立柱を複数のテーパ鋼管に分割した上でこれらを現場まで搬送することで、搬送作業を容易に行い、現場にてこれらを継ぎ合わせて1本の鋼板組立柱を構成する場合が多い。
【0003】
このような鋼板組立柱の例として、例えば特許文献1には、テーパ状でその径が上端から下端に至るまでに拡径されてなる複数のテーパ鋼管を、上下に亘って継ぎ合わせて構成する鋼管電柱(鋼板組立柱)に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された鋼板組立柱によれば、上段のテーパ鋼管(上段パイプ)の内側面と、下段のテーパ鋼管(下段パイプ)の外側面とが面接触で保持されることにより、鋼板組立柱の剛性を確保することができる。また、特許文献1によれば、上段のテーパ鋼管と下段のテーパ鋼管とが全く同一のテーパ率とするとされている。しかしながら、実際に製造されるテーパ鋼管は、テーパ率に誤差が生じるため、鋼板組立柱の剛性を向上できない問題がある。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、鋼板組立柱の剛性を確実に向上させることができる鋼板組立柱、及び鋼板組立柱の組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明における鋼板組立柱は、テーパ状で下方に向けて拡径された直円錐台形の複数の鋼管が上下に継ぎ合わされた鋼板組立柱であって、上段の鋼管と、上記上段の鋼管の下段に継ぎ合わされ、上記上段の鋼管よりも高いテーパ率で拡径された下段の鋼管と、を備えることを特徴とする。
【0008】
第2発明における鋼板組立柱は、第1発明において、上記上段の鋼管のテーパ率に対する当該下段の鋼管のテーパ率の増加率は、0%超~7%であることを特徴とする。
【0009】
第3発明における鋼板組立柱の組立方法は、テーパ状で下方に向けて拡径された直円錐台形の複数の鋼管を上下に継ぎ合わせる鋼板組立柱の組立方法であって、上段の鋼管の下段に、当該上段の鋼管よりも高いテーパ率で拡径された下段の鋼管を継ぎ合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明~第2発明によれば、上段の鋼管と、上段の鋼管よりも高いテーパ率で拡径された下段の鋼管と、を備える。このため、上段の鋼管の元口端面の内周面が下段の鋼管に接触する。これにより、鋼板組立柱の剛性を確実に向上させることができる。また、上段の鋼管の元口端面が下段の鋼管に密着することにより、外部からの水分等の侵入を防ぐことができる。これにより、鋼板組立柱の耐久性を向上させることができる。
【0011】
特に、第2発明によれば、上段の鋼管のテーパ率に対する下段の鋼管のテーパ率の増加率は、0%超~7%である。このため、上段の鋼管と下段の鋼管とが面で接触し、その接触面の摩擦力により、継ぎ合わせた後に各管が抜けにくくなる。これにより、鋼板組立柱の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0012】
第3発明によれば、上段の鋼管の下段に、上段の鋼管よりも高いテーパ率で拡径された下段の鋼管を継ぎ合わせる。このため、上段の鋼管の元口端面を下段の鋼管に接触させることができる。これにより、鋼板組立柱の剛性を確実に向上させることができる。また、上段の鋼管の元口端面を下段の鋼管に密着させることにより、外部からの水分等の侵入を防ぐことができる。これにより、鋼板組立柱の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態における鋼板組立柱の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における鋼板組立柱を構成する2段の鋼管の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す鋼板組立柱を構成する鋼管の詳細を示す模式図である。
【
図4】
図4(a)は、従来の鋼板組立柱の継合領域の一例を示す模式断面図であり、
図4(b)は、
図2に示す鋼板組立柱の継合領域を拡大した模式断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における鋼板組立柱を構成する3段の鋼管の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す鋼板組立柱を構成する鋼管の詳細を示す模式図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す鋼板組立柱の継合領域を拡大した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態としての鋼板組立柱の一例について、図面を参照しながら詳細に説明をする。なお、各図における構成は、説明のため模式的に記載されており、例えば各構成の大きさや、構成毎における大きさの対比等については、図とは異なってもよい。
【0015】
(鋼板組立柱100)
図1~
図4を参照して、本実施形態における鋼板組立柱100の一例を説明する。
【0016】
鋼板組立柱100は、例えば
図1に示すように、テーパ状で下方に向けて拡径された直円錐台形の複数の鋼管1(1A~1G)が上下に継ぎ合わされることにより構成される。ここで、テーパ状で下方に向けて拡径された形状とは、鋼管の元口端面(下端)の直径が、当該鋼管の末口端面(上端)の直径よりも大きい略直円錐台形を指す。また、複数の鋼管1は、上下方向に開口した中空状の形状である。
【0017】
複数の鋼管1は、例えば平面視において略円形の内周面と外周面とを有する。複数の鋼管1は、上段の鋼管の元口端面における内径が下段の鋼管の末口端面における外径よりも大きく設計されており、上段の鋼管に下段の鋼管を挿入することで継合領域Rにおいて継ぎ合わされる。
【0018】
鋼板組立柱100は、例えば最上段に位置する鋼管1Aの末口端面1aに、避雷針、アンテナ、電線等、鋼板組立柱100の用途に応じて様々な構成や部材を設けるための、図示しないトッププレートが設けられてもよい。
【0019】
鋼板組立柱100は、例えば最下段に位置する鋼管1Gの元口端面1bに、鋼板組立柱100を地盤に対して固定するための、図示しないベース板が設けられてもよい。図示しないベース板は、例えばアンカーボルト等により地盤に対して固定される。
【0020】
複数の鋼管1は、例えば
図2に示すように、第1鋼管10と、第2鋼管20と、を含む。鋼板組立柱100は、複数の鋼管1のうち、例えば上段の第1鋼管10に、下段の第2鋼管20が挿入されることにより、高さ方向に沿って上下に継ぎ合わされて構成される。以下、第1鋼管10と第2鋼管20とからなる2段の複数の鋼管1について説明するが、複数の鋼管1は3段以上の鋼管で構成されてもよい。
【0021】
<第1鋼管10>
第1鋼管10は、例えば鉄鋼材からなる管体であり、テーパ状で下方に向けて拡径されている。第1鋼管10は、例えば表面に溶融亜鉛めっき等が施されていてもよい。第1鋼管10は、例えば板厚1.0mm~3.0mm程度の板材が曲げ加工され、板材の両端付近においてシーム溶接等の方法により溶接された溶接痕を有する。
【0022】
第1鋼管10は、例えば
図2に示すように、中空状であり、上方に開口した末口端面10aと、下方に開口した元口端面10bと、外周面101と、内周面102と、を有する。
【0023】
第1鋼管10は、例えば
図3(a)に示すように、高さ方向の長さがLa、元口端面10bの外径φ2aが、末口端面10aの外径φ1aよりも大きい直円錐台形の鋼管である。このとき、第1鋼管10のテーパ率TPRaは、[数1]のとおり算出することができる。
【0024】
【0025】
<第2鋼管20>
第2鋼管20は、例えば第1鋼管10と同様の材質、形状、溶接方法等で構成される管体であり、テーパ状で下方に向けて拡径されている。第2鋼管20は、第1鋼管10を下方から支持するために、例えば第1鋼管10よりも厚い板厚の鋼板が用いられてもよい。
【0026】
第2鋼管20は、上方に開口した末口端面20aと、下方に開口した元口端面20bと、外周面201と、内周面202と、を有する。
図2の例では、第1鋼管10の元口端面10bは、第2鋼管20の外周面201上に位置する。また、第2鋼管20の末口端面20aは、第1鋼管10の内周面102上に位置する。
【0027】
第2鋼管20は、例えば
図3(b)に示すように、高さ方向の長さがLb、元口端面20bの外径φ2bが、末口端面20aの外径φ1bよりも大きい直円錐台形の鋼管である。このとき、第2鋼管20のテーパ率TPRbは、[数2]のとおり算出することができる。
【0028】
【0029】
図2の例では、下段の第2鋼管20は、外周面201が、上段の第1鋼管10の内周面102が接触するように、継合領域R1で継ぎ合わされる。
【0030】
ここで、第2鋼管20のテーパ率TPRbが第1鋼管10のテーパ率TPRaよりも低い場合、例えば継合領域R1を拡大した
図4(a)に示すように、第1鋼管10の元口端面10bにおける内周面102の少なくとも一部が、第2鋼管20の外周面201から離間するおそれがある。この場合、鋼板組立柱100の剛性が、継合領域R1において低下するおそれがある。
【0031】
本実施形態においては、鋼板組立柱100は、例えば
図4(b)に示すように、第2鋼管20が、第1鋼管10のテーパ率TPRaよりも高いテーパ率TPRbを有する。この場合、継合領域R1において、第1鋼管10の元口端面10bの内周面102が第2鋼管20の外周面201に接触する。これにより、鋼板組立柱100の剛性を確実に向上させることができる。また、第1鋼管10の元口端面10bが第2鋼管20の外周面201に密着することにより、外部からの水分等の侵入を防ぐことができる。これにより、鋼板組立柱100の耐久性を向上させることができる。
【0032】
なお、第1鋼管10のテーパ率TPRaに対する第2鋼管20のテーパ率TPRbの増加率は、0%超~7%であることが好ましい。ここで、第2鋼管20は、継合領域R1において第1鋼管10よりも径が小さいため、第1鋼管10よりも高い剛性を有する。このため、第2鋼管20は、例えば第1鋼管10を押し広げるように第1鋼管10に挿入される。この場合、第1鋼管10と第2鋼管20とが面で接触し、その接触面の摩擦力により、継ぎ合わせた後に各管10、20が抜けにくくなる。これにより、鋼板組立柱100の耐久性のさらなる向上を図ることができる。なお、第2鋼管20は、第1鋼管10よりも厚い板厚の鋼板が用いられる場合、さらに高い剛性を有するため、第1鋼管10をより押し広げやすい。
【0033】
なお、テーパ率TPRaに対するテーパ率TPRbの増加率が7%超の場合、第1鋼管10と第2鋼管20とが面で接触しにくく摩擦力が低下し、第2鋼管20から第1鋼管10が抜けやすくなるため、鋼板組立柱100の耐久性の向上を図ることができない。また、テーパ率TPRaに対するテーパ率TPRbの増加率が0%未満の場合、
図4(a)に示すように、第1鋼管10の元口端面10bが第2鋼管20に接触しにくいため、鋼板組立柱100の剛性が低下するおそれがある。また、第2鋼管20で第1鋼管10を押し広げて挿入しても、第1鋼管10と第2鋼管20とを面で接触させることができず、耐久性を向上させることができない。テーパ率TPRaに対するテーパ率TPRbの増加率を0%すなわち同一のテーパ率とする場合、製造誤差によって増加率が0%未満となるリスクがあり、同様に鋼板組立柱100の剛性が低下するおそれがある。なお、2段からなる複数の鋼管1に係るテーパ率の増加率について説明したが、3段以上からなる複数の鋼管1においても同様である。
【0034】
(鋼板組立柱100の組立方法)
次に、本実施形態における鋼板組立柱100の組立方法の一例を説明する。
【0035】
鋼板組立柱100の組立方法は、配置工程と、継合工程と、を有する。
【0036】
<配置工程>
配置工程では、第1鋼管10の下方に第2鋼管20を挿入し、第1鋼管10と第2鋼管20とが接触するように配置する。詳しくは、図示しない作業者が、第1鋼管10の内周面102と第2鋼管20の外周面201とが接触するように配置する。
【0037】
<継合工程>
継合工程では、配置工程のあと、第1鋼管10を下方に向けて押し下げ、継合領域R1において第2鋼管20に継ぎ合わせる。この場合、第1鋼管10の元口端面10bの内周面102を、第2鋼管20に接触させることができる。これにより、鋼板組立柱100の剛性を確実に向上させることができる。また、第1鋼管10の元口端面10bを第2鋼管20の外周面201に密着させることにより、外部からの水分等の侵入を防ぐことができる。これにより、鋼板組立柱100の耐久性を向上させることができる。また、このとき、第1鋼管10及び第2鋼管20の少なくとも何れかを継合領域R1において塑性変形させてもよい。詳しくは、作業者が、公知の当て木とハンマーを用いて、第1鋼管10の末口端面10a付近を下方に向かって叩くことで、第1鋼管10を下方に押し下げる。押し下げる幅の目安としては、例えば継合領域R1の上下方向の幅が100mm~300mm程度となるように調整して押し下げる。
【0038】
ここで、第2鋼管20は、継合領域R1において第1鋼管10よりも径が小さく、第1鋼管よりも剛性が高い。このため、第2鋼管20は、第1鋼管10よりも高い剛性を有する。このため、第2鋼管20は、第1鋼管10が下方に押し下げられることで、例えば第1鋼管10を外周面201に沿って押し広げて変形させてもよい。この場合、第1鋼管10の内周面102と第2鋼管20の外周面201とを面で接触させ、その接触面の摩擦力により、継ぎ合わせた後に各管10、20が抜けにくくさせることができる。これにより、鋼板組立柱100の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0039】
(鋼板組立柱100の変形例)
図4~
図6を参照して、本実施形態における鋼板組立柱100の変形例を説明する。
【0040】
鋼板組立柱100は、例えば
図5に示すように、第3鋼管30をさらに備える。鋼板組立柱100は、上段の第2鋼管20に、下段の第3鋼管30が挿入されることにより、高さ方向に沿って上下に継ぎ合わされる。
【0041】
<第3鋼管30>
第3鋼管30は、例えば第1鋼管10と同様の材質、形状、溶接方法で構成される管体であり、テーパ状で下方に向けて拡径されている。第3鋼管30は、第2鋼管20を下方から支持するために、例えば第2鋼管20よりも厚い板厚の鋼板が用いられてもよい。
【0042】
第3鋼管30は、上方に開口した末口端面30aと、下方に開口した元口端面30bと、外周面301と、内周面302と、を有する。
図5の例では、第2鋼管20の元口端面20bは、第3鋼管30の外周面301上に位置する。また、第3鋼管30の末口端面30aは、第2鋼管20の内周面202上に位置する。
【0043】
第3鋼管30は、例えば
図6に示すように、高さ方向の長さがLc、元口端面30bの外径φ2cが、末口端面30aの外径φ1cよりも大きい直円錐台形の鋼管である。このとき、第3鋼管30のテーパ率TPRcは、[数3]のとおり算出することができる。
【0044】
【0045】
図5の例では、下段の第3鋼管30は、外周面301が、上段の第2鋼管20の内周面202が接触するように、継合領域R2で継ぎ合わされる。
【0046】
本実施形態においては、鋼板組立柱100は、例えば継合領域R1及び継合領域R2を拡大した
図7に示すように、第3鋼管30が、第2鋼管20のテーパ率TPRbよりも高いテーパ率TPRcを有する。この場合、継合領域R1において第1鋼管10の元口端面10bの内周面102と第2鋼管20の外周面201とが接触しやすく、継合領域R2において第2鋼管20の元口端面20bの内周面202と第3鋼管30の外周面301とが接触することができる。これにより、より高さが要求される鋼板組立柱100についても剛性を確実に向上させることができる。また、第2鋼管20の元口端面20bが第3鋼管30の外周面301に密着することにより、外部からの水分等の侵入を防ぐことができる。これにより、鋼板組立柱100の耐久性を向上させることができる。
【0047】
なお、第2鋼管20のテーパ率TPRbに対する第3鋼管30のテーパ率TPRcの増加率は、テーパ率TPRaに対するテーパ率TPRbの増加率と同様に、0%超~7%であることが好ましい。ここで、第3鋼管30は、継合領域R2において第2鋼管20よりも径が小さいため、第2鋼管20よりも高い剛性を有する。このため、第3鋼管30は、例えば第2鋼管20を押し広げるように第2鋼管10に挿入される。この場合、第2鋼管20と第3鋼管30とが面で接触し、その接触面の摩擦力により、継ぎ合わせた後に各管20、30が抜けにくくなる。これにより、鋼板組立柱100の耐久性のさらなる向上を図ることができる。なお、第3鋼管30は、第2鋼管20よりも厚い板厚の鋼板が用いられる場合、さらに高い剛性を有するため、第2鋼管20をより押し広げやすい。
【0048】
本実施形態によれば、上段の鋼管10(20)と、上段の鋼管10(20)よりも高いテーパ率TPRb(TPRc)で拡径された下段の鋼管20(30)と、を備える。このため、上段の鋼管10(20)の元口端面10b(20b)の内周面102(202)が下段の鋼管20(30)に接触することができる。これにより、鋼板組立柱100の剛性を確実に向上させることができる。また、上段の鋼管10(20)の元口端面10b(20b)が下段の鋼管20(30)に密着することにより、外部からの水分等の侵入を防ぐことができる。これにより、鋼板組立柱100の耐久性を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、上段の鋼管10(20)のテーパ率TPRa(TPRb)に対する下段の鋼管20(30)のテーパ率TPRb(TPRc)の増加率は、0%超~7%である。このため、上段の鋼管10(20)と下段の鋼管20(30)が面で接触し、その接触面の摩擦力により、継ぎ合わせ後に各管が抜けにくくなる。これにより、鋼板組立柱100の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、上段の鋼管10(20)の下段に、上段の鋼管10(20)よりも高いテーパ率TPRb(TPRc)で拡径された下段の鋼管20(30)を継ぎ合わせる。このため、上段の鋼管10(20)の元口端面10b(20b)の内周面102(202)を下段の鋼管20(30)に接触させることができる。これにより、鋼板組立柱100の剛性を確実に向上させることができる。また、上段の鋼管10(20)の元口端面10b(20b)を下段の鋼管20(30)に密着させることにより、外部からの水分等の侵入を防ぐことができる。これにより、鋼板組立柱100の耐久性を向上させることができる。
【0051】
上述した実施形態では、2段又は3段からなる複数の鋼管1の連結を例にとり説明をしたが、4段以上の複数の鋼管1の連結においても同様の構成を適用することができることは勿論である。すなわち、複数の鋼管1に含まれる直円錐台形の任意の鋼管xのテーパ率TPRxと、鋼管xの下段に継ぎ合わされる鋼管yのテーパ率TPRyとは、[数4]及び[数5]のとおり算出できる。
【0052】
【0053】
【0054】
ここで、Lxは鋼管xの高さ方向の長さを、φ1xは鋼管xの末口端面の外径を、φ2xは鋼管xの元口端面の外径を、Lyは鋼管yの高さ方向の長さを、φ1yは鋼管yの末口端面の外径を、φ2yは鋼管yの元口端面の外径を、それぞれ示す。また、テーパ率TPRxに対するテーパ率TPRyの増加率は、0%超~7%であることが好ましい。
【0055】
また、上述した実施形態では、各鋼管について末口端面から元口端面に至るまでテーパ状で下方に向かうにつれて拡径される場合について説明をしたが、これに限定されず、例えば少なくとも2つの鋼管の継合領域において下方に向けて拡径されていればよく、それ以外の領域については、テーパが形成されていない同一径の状態で上下方向に延長されている管体で構成されていてもよい。
【実施例0056】
次に、本発明を適用した鋼板組立柱100の実施例(発明例)を説明する。
【0057】
本発明例の鋼板組立柱100を構成する各部材の条件は[表1]のとおりである。本発明例の鋼板組立柱100は、18本の鋼管を、上から部材1~18の順に上下方向に継ぎ合わせた支柱である。
【0058】
【0059】
例えば、「部材1」を第1鋼管10、「部材2」を第2鋼管20、「部材3」を第3鋼管30とする。
【0060】
このとき、第1鋼管10の元口端面10bの外径φ2a(φ2)が141.8mm、第2鋼管20の末口端面20aの外径φ1b(φ1)が135.3mmであるため、各鋼管が板厚1.0mm~3.0mm程度とすれば、第1鋼管10に第2鋼管20を挿入することができる。また、第2鋼管20の元口端面20bの外径φ2b(φ2)が177.8mm、第3鋼管30の末口端面30aの外径φ1c(φ1)が170.6mmであるため、各鋼管が板厚1.0mm~3.0mm程度とすれば、第2鋼管20に第3鋼管30を挿入することができる。
【0061】
本発明例によれば、第1鋼管10のテーパ率TPRaが2.08%、第2鋼管20のテーパ率TPRbが2.13%である。すなわち、第2鋼管20が、テーパ率TPRaよりも高いテーパ率TPRbを有するため、第1鋼管10の元口端面10bが第2鋼管20に接触しやすく、鋼板組立柱100の剛性を確実に向上させることができる。また、外部からの水分等の侵入を防ぐことができ、鋼板組立柱100の耐久性を向上させることができる。
【0062】
また、本発明例によれば、第2鋼管20のテーパ率TPRbが2.13%、第3鋼管30のテーパ率TPRcが2.18%である。すなわち、第3鋼管30が、テーパ率TPRbよりも高いテーパ率TPRcを有するため、第2鋼管20の元口端面20bが第3鋼管30に接触しやすく、鋼板組立柱100の剛性を確実に向上させることができる。また、外部からの水分等の侵入を防ぐことができ、鋼板組立柱100の耐久性を向上させることができる。
【0063】
また、本発明例によれば、第1鋼管10のテーパ率TPRaに対する第2鋼管20のテーパ率TPRbの増加率が(2.13-2.08)/2.08=2.41%であり、0%超~7%の条件を満たす。このため、第1鋼管10と第2鋼管20とが面で接触し、その接触面の摩擦力により、継ぎ合わせた後に各管10、20が抜けにくくなり、鋼板組立柱100の耐久性のさらなる向上を図ることができる。また、第2鋼管10のテーパ率TPRbに対する第3鋼管30のテーパ率TPRcの増加率についても(2.18-2.13)/2.13=2.35%と、0%超~7%の条件を満たすため、同様に継ぎ合わせた後に各管20、30が抜けにくくなる。
【0064】
なお、上段の鋼管のテーパ率に対する下段の鋼管のテーパ率の増加率について、最小値は部材14、15間の0.16%、最大値は部材16、17間の6.16%であった。この増加率が7%超となる場合、上段の鋼管と下段の鋼管とが面で接触しにくく摩擦力が低下し、下段の鋼管から上段の鋼管が抜けやすくなるため、鋼板組立柱100の耐久性の向上を図ることができない。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。