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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143179
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】遮熱構造体の評価方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20241003BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20241003BHJP
   E04B 7/22 20060101ALI20241003BHJP
   E04D 12/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E04B1/76 200A
E04B1/76 500Z
E04B1/80 100P
E04B7/22
E04D12/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055712
(22)【出願日】2023-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ガルバリウム鋼板
(71)【出願人】
【識別番号】509126922
【氏名又は名称】株式会社建図宮崎
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】矢野 崇幸
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA16
2E001GA12
2E001GA42
2E001HB02
2E001HC01
(57)【要約】
【課題】遮熱材を使用しないでも、建築物に十分な遮熱ができる構造体、工法を提供する。
【解決手段】建物の遮熱構造体であって、屋根又は壁の内部に設けられた第一遮熱シールドと、当該第一遮熱シールドより下又は内部に設けられた第二遮熱シールドと、当該第一遮熱シールドと第二遮熱シールドとの間に設けられた通気層と、を備えることで、建物の上部又は側面から伝わる熱を内部に侵入することを防ぐ遮熱構造体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の遮熱構造体であって、
前記建物の屋根のルーフィングの下に設けられた第一遮熱シールドと、
当該第一遮熱シールドより下に設けられた第二遮熱シールドと、
当該第一遮熱シールドと前記第二遮熱シールドの間に設けられた通気層と、を備えることで、
前記建物の上部から伝わる熱を天井内部に侵入することを防ぐ遮熱構造体。
【請求項2】
前記第一遮熱シールドと通気層は、構造用板材を敷き詰めることで構成され、
前記構造用板材は、上面部と脚部を有し、
前記板材の一部が前記脚部により、前記第二遮熱シールドに直接的に接しないことで、前記通気層を形成する請求項1に記載の遮熱構造体。
【請求項3】
前記第一遮熱シールドと、前記第二遮熱シールドの少なくとも一方は、直交集成板(CLT)が使用されている請求項1に記載の遮熱構造体。
【請求項4】
建物の工法であって、
前記建物の屋根のルーフィングの下に第一遮熱シールドを設ける工程と、
当該第一遮熱シールドより下に第二遮熱シールドを設ける工程と、
当該第一遮熱シールドと前記第二遮熱シールドの間に通気層を設ける工程と、を備えることで、前記建物の上部から伝わる熱を天井内部に侵入することを防ぐ工法。
【請求項5】
建物の遮熱構造体であって、
前記建物の外壁より屋内側に設けられた第一遮熱シールドと、
当該第一遮熱シールドより、更に内部に設けられた第二遮熱シールドと、
当該第一遮熱シールドと前記第二遮熱シールドの間に設けられた通気層と、を備えることで、
前記建物の外壁から伝わる熱を建物内部に侵入することを防ぐ遮熱構造体。
【請求項6】
建物の遮熱構造体であって、
前記建物の壁の外壁の内部に設けられた第一遮熱シールドと、
当該第一遮熱シールドより内部に設けられた第二遮熱シールドと、
当該第一遮熱シールドと前記第二遮熱シールドの間に設けられた通気層と、を備えることで、
前記建物の壁から伝わる熱を内部に侵入することを防ぐ遮熱構造体。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の遮熱構造体及び工法に関し、特に、戸建住宅、畜舎、工場、ビル等の屋根や壁に使用できる遮熱構造体及び工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SDGsの観点からエネルギー消費が少ない建築物が求められている。例えば、屋内の冷房費を削減するために、アルミシート等を遮熱材として使用した遮熱方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1によれば、遮熱材を配置することで、戸外からの輻射熱を一定程度、遮断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-31631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、アルミシート等の遮熱材を屋根等に取り付ける必要があり、屋根の表面積が広い場合には、この遮熱材のコストがかかる。さらに、SDGsの観点から部材が少なくても、同様の遮熱の結果が得られる建築物を提供できることが望ましい。
【0006】
本発明は、遮熱材を使用しないでも、建築物に十分な遮熱ができる構造体、工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 建物の遮熱構造体であって、
前記建物の屋根のルーフィングの下に設けられた第一遮熱シールドと、
当該第一遮熱シールドより下に設けられた第二遮熱シールドと、
当該第一遮熱シールドと前記第二遮熱シールドの間に設けられた通気層と、を備えることで、
前記建物の上部から伝わる熱を天井内部に侵入することを防ぐ遮熱構造体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、遮熱材を使用しないでも、建築物に十分な遮熱及び断熱が得られる構造体、工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】遮熱構造体1の構造を示す概略図である。
図2】構造用板材4を示す概略図である。
図3】通気層と遮熱材を有するモデル(P)を示す概念図である。
図4】通気層及び遮熱材いずれも有しないモデル(A)を示す概念図である。
図5】遮熱構造体1を壁に適用した場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の遮熱構造体の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0011】
図1に示すように、遮熱構造体1は、屋根材6(例えば、ガルバリウム鋼板等)と、防水行うルーフィング7と、合板等の第一遮熱シールド8と、その下部に通気層9と、野地板等の第二遮熱シールド10とから構成される。遮熱構造体1は、建物の屋根に用いられる構造であり、以下で説明するように、建物の上部から伝わる熱を建物の天井内部に侵入することを防ぐ。
【0012】
第一遮熱シールド8及び第二遮熱シールド9及び構造用板材4の素材は、一般には木材を想定しており、合板、木質形成材、木質加工材であってよいが、同程度の熱伝導率を有する樹脂製、再生プラスティック、バイオプラスチック等であってもよい。
【0013】
ここで、第一遮熱シールド8と通気層9は、図2に示すように、第一遮熱シールド8を形成する合板上面部2と、合板上面部2を支えて通気層9を構成する脚材3と、からなる構造用板材4で構成されてよい。構造用板材4が屋根に敷き詰められることで、本構造を形成する。なお、脚材3と合板上面部2は一体で形成してもよい。合板上面部2の素材は、合板でなくてもよい。
【0014】
なお、CLT(Cross Laminated Timber)、直交集成材により、第一遮熱シールド8、第二遮熱シールド10の少なくとも一方が作られていてよい。また、NLT(Nail-Laminated Timber)の構造材で作られていてよい。
【0015】
次に、遮熱構造体1が、建物に侵入した熱を遮るために有効な構造であるかを、熱伝導の法則を活用して説明する。模式的な例として、図3に示すように、屋外側に2層の屋根材(out1,out2)、通気層9、屋内側に3層の屋根材(in1,in2,in3)からなる屋根モデル(P)で検討する。これらの層は、後に厚みを0にすることで、層がないものとして計算できる。
【0016】
まずは、遮熱材の有無で熱の侵入の度合いを計算するために、屋内側屋根材1(in1)をアルミシート等の遮熱材とする。この部分も、後に厚みを0にすることで、遮熱材がないものとして計算できる。真ん中の小さい上下の矢印は、対流熱伝達による熱流であり、屋根外表面(roof)と外気との間、屋外側屋根材2(out2)の下面(遮熱材に対向する表面op shut)と通気層の空気(vent)との間、遮熱材表面(shut)と通気層の空気(vent)の間、及び屋内側屋根材3(in3)の下面、すなわち天井(ceil)と室内の空気(room)との間の対流熱伝導による熱流を表す。
【0017】
通気層9に記載された上限の矢印は、屋外側屋根材2の下面(op shut)と遮熱材表面(shut)との間の放射による熱流を表す。屋外から屋外側屋根材へ貫流する単位面積当たりの伝熱量Qout[W/m]は、屋根外表面で吸収される日射量から、屋根外表面から外気へ放出される対流熱伝達による伝熱量を差し引いたものに等しい。
【数1】
【0018】
ただし、Sunは、外表面入射日射量[W/m]、εroofは、屋根外表面の放射率、hroofは、屋根外表面と外気との間の対流熱伝達率[W/m・K]、Troofは、屋根外表面(roof)の温度[K]及び、Toutは、相当外気温度[K]である。
【0019】
屋外から屋外側屋根材へ貫流する単位面積当たりの伝熱量Qoutは、定常状態における屋外側の屋根材1及び屋根材2の単位面積当たりの伝熱量に等しい。
【数2】
【0020】
ただし、λout1、λout2は、屋外側の屋根材1、屋根材2の熱伝導率[W/m・K]、tout1、tout2は、屋根材1、屋根材2の厚さ[m]、Tout1out2は、屋外側の屋根材1と屋根材2との界面の温度[K]、及びTop shutは、屋外側屋根材2の下面の温度[K]である。
式2、3より
【数3】
【0021】
式2’、3’の両辺の和をとると
【数4】
【0022】
ただし、Rroof-op shutは、屋根外表面と屋根材2の下面との間の熱抵抗[m・K/W]である。
【数5】
【0023】
また、屋外から屋外側屋根材へ貫流する単位面積当たりの伝熱量Qoutは、遮熱材表面における正味の放射熱授受と、屋根材2の下面から通気層内の空気へ放出される対流熱伝達による伝熱量の和に等しい。
【数6】
【0024】
ただし、σは、ステファン・ボルツマン定数[5.67x10-8W/m・K4]、Tshutは、遮熱材表面の温度[K]、Tventは、通気層内の空気の温度[K]、εopshut、εshutは、屋外側屋根材2の下面及び遮熱材表面の放射率、及びhopshutは、屋外側屋根材2の下面と通気層内の空気との間の対流熱伝達率[W/m・K]である。
【0025】
通気層内の空気へ伝わる単位面積当たりの伝熱量Qvent[W/m]は、屋外側屋根材2の下面から通気層内の空気へ放出される対流熱伝達による単位面積当たりの伝熱量から、通気層内の空気から遮熱材表面(shut)へ放出される対流熱伝達による単位面積当たりの伝熱量を差し引いたものに等しい。
【数7】
【0026】
ただし、hshutは、遮熱材表面と通気層内の空気との間の対流熱伝達率[W/m・K]である。通気層内の空気から遮熱材表面へ貫流する単位面積当たりの伝熱量Qin[W/m]は、遮熱材表面における単位面積当たりの正味の放射熱授受と、通気層内の空気から遮熱材へ流入する対流熱伝達による単位面積当たりの伝熱量の和に等しい。
【数8】
【0027】
通気層内の空気から遮熱材表面へ貫流する単位面積当たりの伝熱量Qinは、定常状態における遮熱材、屋内側の屋根材2及び屋根材3の単位面積当たりの伝熱量に等しい。
【数9】
【0028】
ただし、λin1、λin2、λin3は、遮熱材、屋内側の屋根材2及び屋根材3の熱伝導率[W/m・K]、tin1, tin2, tin3は、遮熱材、屋内側の屋根材2及び屋根材3の厚さ〔m〕、Tin1in2は遮熱材と屋内側屋根材2との界面の温度〔K〕, Tin2in3は屋根材2と屋根材3との界面の温度〔K〕及びTceilは屋根材3の下面、すなわち天井の温度〔K〕である。通気層内の空気から遮熱材表面へ貫流する単位面積当たりの伝熱量Qinは,屋根材3の下面から室内の空気へ放出される対流熱伝達による単位面積当たりの伝熱量に等しい。
【数10】
【0029】
ただし、hceilは、天井と空気の間の対流伝達率[W/m・K]、Troomは、屋内の空気の温度[K]である。式9、10、11、12より
【数11】
【0030】
式9’、10’、11’、12’の両辺の和をとると
【数12】
【0031】
ただし、Rshut-roomは、遮熱材表面と屋内の空気との間の熱抵抗[m・K/W]である。
【数13】
【0032】
式1と式4より、屋根外表面の温度Troofについて解くと
【数14】
【0033】
次に、屋外から屋外側屋根材へ貫流する単位面積当たりの伝熱量QOUT、通気層内の空気へ伝わる単位面積当たりの伝熱量Qvent及び通気層内の空気から遮熱材表面へ貫流する単位面積当たりの伝熱量Qinとの間には、次式が成立する。
【数15】
【0034】
式4、7’、8を式16に代入すると
【0035】
式8と式13より、遮熱材に対向する表面の温度の4乗Topshut 4 について解くと
【数16】
【0036】
式16より関数Funcを次式により定義する。
【数17】
【0037】
式7’、8、4を式19に代入すると
【数18】
【0038】
式18より
【数19】
【0039】
式15を式20”に代入すると
【数20】
【0040】
遮熱材表面の温度Tshutを与えて、式22を満足する遮熱材に対向する表面の温度Topshutを求める。
【0041】
次に、図4に示すように、上記の通気層9がある場合との比較で、通気層9がない場合のモデル(A)について検討する。屋外側に2層の屋根材(out1,out2)、屋内側に2層の屋根材(in1,in2)からなる屋根モデルを考える。真中の上下の矢印は、対流熱伝達による熱流であり、屋根外表面(roof)と外気との間、及び屋内側屋根材2(in2)の下面、すなわち天井(ceil)と屋内の空気(room)との間の対流熱伝達による熱流を表す。
【0042】
屋外から屋外側屋根材へ貫流する単位面積当たりの伝熱量は、Qout[W/m]は、屋根外表面で吸収される日射量から、屋根外表面から外気へ放出される対流熱伝達による伝熱量を差し引いたものに等しい。
【数21】
【0043】
ただし、Sunは、外表面入射日射量[W/m]、εroofは、屋根外表面の放射率、hroofは、屋根外表面と外気との間の対流熱伝達率[W/m・K]、Troofは、屋根外表面の温度[K]及び、Toutは、相当外気温度[K]である。
【0044】
屋外から屋外側屋根材へ貫流する単位面積当たりの伝熱量Qoutは、定常状態における屋外側の屋根材1及び屋根材2の単位面積当たりの伝熱量に等しい。
【数22】
【0045】
ただし、λout1、λout2は、屋外側の屋根材1、屋根材2の熱伝導率[W/m・K]、tout1、tout2は、屋根材1、屋根材2の厚さ[m]、Tout1out2は、屋外側の屋根材1と屋根材2との界面の温度[K]、及びTout2in1は、屋外側屋根材2の下面の温度[K]である。
屋内側屋根材から屋内へ貫流する単位面積あたりの伝熱量Qinは、屋内側の屋根材1、屋根材2の単位面積当たりの伝熱量に等しい。
【数23】
【0046】
ただし、λin1、λin2は、屋内側の屋根材1、屋根材2の熱伝導率[W/m2・K]、tin1、tin2は、屋内側の屋根材1,屋根材2の厚さ〔m〕、Tin1in2は遮熱材1と屋根材2との界面の温度〔K〕、Tceilは天井の温度〔K〕である。屋外から屋根材へ貫流する単位面積当たりの伝熱量Qinは,天井から室内の空気へ放出される対流熱伝達による単位面積当たりの伝熱量に等しい。
【数24】
【0047】
ただし、hceilは、天井と室内の空気の間の対流熱伝達率[W/m2・K]である。屋外から屋外側屋根材へ貫流する単位面積当たりの伝熱量Qoutは、屋内側屋根材から室内へ流入する単位面積当たりの伝熱量Qinに等しい。
式24~28により
【数25】
【0048】
式24’~27’の両辺の和をとると
【数26】
【0049】
ただし、Rroof-ceilは、屋根外表面と天井との間の熱抵抗[m・K/W]である。
【数27】
【0050】
式29より、天井の温度Tceilについて解くと
【数28】
【0051】
式24’~28’の両辺の和をとると
【数29】
【0052】
ただし、Rroof-roomは、屋根外表面と室内の空気との間の熱抵抗[m・K/W]である。
【数30】
【0053】
式32と式23より、屋根外表面の温度Troofについて解くと、
【数31】
【0054】
上記の2つのモデルについて、定数として、外表面入射日射量Sun、相当外気温度Tout、屋根外表面の放射率εroof、屋根外表面と外気との間の対流伝達率hroof、天井と屋内の空気との間の対流熱伝達率hceil、及び室内の空気の温度Troomを次式により与える。
【数32】
【0055】
通気層9があるモデル(P)においては、屋外側の屋根材1(out1)、屋根材2(out2)として、ガルバリウム鋼板、アスファルトルーフィング、遮熱材(in1)として、アルミ反射材、屋内側の屋根材2(in2)、屋根材3(in3)として、発泡スチロール、屋根合板を採用する。屋根材及び遮熱材の熱伝導率、厚さを表1のとおりに与える。
【表1】
【0056】
ステファン・ボルツマン定数σ、遮熱材表面及び遮熱材に対向する表面の放射率εshut、εopshut、通気層内の空気の温度Tvent、遮熱材表面と通気層内の空気との間の対流熱伝達率hshut、遮熱材に対向する表面と通気層内の空気との間の対流熱伝達率hopshutを次式により与える。
【数33】
【0057】
このとき、屋根外表面と屋根材2の下面との間の熱抵抗Rroof-opshut、及び遮熱材表面と室内の空気との間の熱抵抗Rshut-roomは、式5、14により求められる。
【数34】
【0058】
通気層がないモデル(A)においては、遮熱材がない屋根モデルとして算出すると、同様に、屋外側の屋根材1(out1)、屋根材2(out2)として、ガルバリウム鋼板、アスファルトルーフィング、屋根材1(in1)、屋根材2(in2)として、発泡スチロール、屋根合板を採用する。屋根材及び熱伝導率、厚さを表2のとおりに与える。
【表2】
【0059】
このとき、屋根外表面と天井との間の熱抵抗Rroof-ceil、及び屋根外表面と室内の空気との間の熱抵抗Rroof-roomは、式30、33により求められる。
【数35】
【0060】
これらの数値を用いて、通気層と遮熱シートのあるモデル(P)と、通気層、遮熱シートいずれもないもでる(A)を比較したのが、表3である。
【表3】
【0061】
表3より、遮熱材と通気層がある屋根モデル(P)の屋根外表面温度Troofは、遮熱材がない屋根モデル(A)の温度とほぼ同じで、その変化はほとんどないが、室内に流入する単位面積当たりの伝熱量Qinは、約78.9W/m2低下し、遮熱材がない屋根モデル(A)に対する遮熱材と通気層がある屋根モデル(P)での室内に流れる伝熱量の比率は8.80%であり、天井の温度Tceilは、約11.3℃低下する。
【0062】
次に、遮熱材と通気層がある屋根モデル(P)の遮熱シート(遮熱材in1、in2)の厚さを0にする。この場合で算出すると、天井の温度Tceilは、29.79℃となり、僅か0.7℃の差となる。したがって、屋根モデル(P)の遮熱シートを設けなくても、0.7℃しか変わらず、遮熱材の効果は大きくないことが判明した。
【0063】
上記の実施例では、本発明を屋根に使用する場合について主に説明したが、建物の壁に本遮熱構造体を使用する場合について説明する。
図5に示すように、建物の壁は、図の矢印方向に建物の外側から内側に向かう方向であって、外側から外壁材(図示せず)、第一遮熱シールド8、通気層9、第二遮熱シールド10で構成される。第二遮熱シールド10の外側又は内側に防水シートが重ねられてもよい。このような構成で上述の屋根と同等の温度低減効果を奏する。なお、通気層9の通気方向は、高さ方向であってよいが、建物の幅方向であってもよい。
【0064】
なお、構造用板材4は、集成材で構成されてもよい。また、大規模建築で用いられるCLT(Cross Laminated Timber)構造において、積層構造における所定の層に通気層9を設けることで実現されてもよい。
【0065】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0066】
1 遮熱構造体
2 合板上面部
3 脚材
4 構造用板材
7 ルーフィング
8 第一遮熱シールド
9 通気層
10 第二遮熱シールド

図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外側の2層の屋根材(out1,out2)と、
屋内側の3層の屋根材(in1,in2,in3)と、
前記屋外側の2層の屋根材(out1,out2)と前記屋内側の3層の屋根材(in1,in2,in3)との間に設けられた通気層と、を備えた遮熱構造体の評価方法であって、
前記屋内側の3層の屋根材(in1,in2,in3)のうち前記通気層側の前記屋根材(in1)は遮熱材であり、
下記式13、式12で算出される、前記屋根材(in3)の下面、すなわち天井の温度T ceil [K]を基に、前記遮熱材(in1)の有無による効果を評価することを特徴とする遮熱構造体の評価方法
【数36】
【数37】
但し、上記式13、式12において、Q in は前記通気層内の空気から前記遮熱材(in1)表面へ貫流する単位面積当たりの伝熱量[W/m ]、t in1 ,t in2 ,t in3 はそれぞれ前記遮熱材(in1)、前記屋内側の屋根材(in2)及び屋根材(in3)の厚さ[m]、λ in1 ,λ in2 ,λ in3 はそれぞれ前記遮熱材(in1)、前記屋内側の屋根材(in2)及び屋根材(in3)の熱伝導率[W/m・K]、h ceil は前記天井と屋内の空気との間の対流熱伝達率[W/m ・K]、R shut-room は前記遮熱材(in1)表面と屋内の空気との間の熱抵抗[m ・K/W]、T shut は前記遮熱材(in1)表面の温度[K]、T room は屋内の空気の温度[K]、である。
【請求項2】
前記屋外側の屋根材(out1)及び屋根材(out2)はそれぞれガルバリウム鋼板、アスファルトルーフィングであり、
前記遮熱材(in1)はアルミ反射材であり、
前記屋内側の屋根材(in2)及び屋根材(in3)はそれぞれ発泡スチロール、屋根合板である、請求項1に記載の遮熱構造体の評価方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、建物の遮熱構造体の評価方法に関し、特に、戸建住宅、畜舎、工場、ビル等の屋根に使用できる遮熱構造体の評価方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明は、遮熱材を使用しないでも、建築物に十分な遮熱ができる遮熱構造体の評価方法を提供することを目的とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
(1) 屋外側の2層の屋根材(out1,out2)と、
屋内側の3層の屋根材(in1,in2,in3)と、
前記屋外側の2層の屋根材(out1,out2)と前記屋内側の3層の屋根材(in1,in2,in3)との間に設けられた通気層と、を備えた遮熱構造体の評価方法であって、
前記屋内側の3層の屋根材(in1,in2,in3)のうち前記通気層側の前記屋根材(in1)は遮熱材であり、
後述する式13、式12で算出される、前記屋根材(in3)の下面、すなわち天井の温度T ceil [K]を基に、前記遮熱材(in1)の有無による効果を評価することを特徴とする遮熱構造体の評価方法
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明によれば、遮熱材を使用しないでも、建築物に十分な遮熱及び断熱が得られる遮熱構造体の評価方法を提供することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外側の2層の屋根材(out1,out2)と、
屋内側の3層の屋根材(in1,in2,in3)と、
前記屋外側の2層の屋根材(out1,out2)と前記屋内側の3層の屋根材(in1,in2,in3)との間に設けられた通気層と、を備えた遮熱構造体の評価方法であって、
前記屋内側の3層の屋根材(in1,in2,in3)のうち前記通気層側の前記屋根材(in1)は遮熱材であり、
下記式13、式12で算出される、前記屋根材(in3)の下面、すなわち天井の温度Tceil[K]について前記屋根材(in1)の厚みを0にすることで、前記遮熱材がないものを計算し、前記遮熱材があるものと比較し評価することを特徴とする遮熱構造体の評価方法。
【数36】
【数37】
但し、上記式13、式12において、Qinは前記通気層内の空気から前記遮熱材(in1)表面へ貫流する単位面積当たりの伝熱量[W/m]、tin1,tin2,tin3はそれぞれ前記遮熱材(in1)、前記屋内側の屋根材(in2)及び屋根材(in3)の厚さ[m]、λin1,λin2,λin3はそれぞれ前記遮熱材(in1)、前記屋内側の屋根材(in2)及び屋根材(in3)の熱伝導率[W/m・K]、hceilは前記天井と屋内の空気との間の対流熱伝達率[W/m・K]、Rshut-roomは前記遮熱材(in1)表面と屋内の空気との間の熱抵抗[m・K/W]、Tshutは前記遮熱材(in1)表面の温度[K]、Troomは屋内の空気の温度[K]、である。
【請求項2】
前記屋外側の屋根材(out1)及び屋根材(out2)はそれぞれガルバリウム鋼板(登録商標)、アスファルトルーフィングであり、
前記遮熱材(in1)はアルミ反射材であり、
前記屋内側の屋根材(in2)及び屋根材(in3)はそれぞれ発泡スチロール、屋根合板である、請求項1に記載の遮熱構造体の評価方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
(1) 屋外側の2層の屋根材(out1,out2)と、
屋内側の3層の屋根材(in1,in2,in3)と、
前記屋外側の2層の屋根材(out1,out2)と前記屋内側の3層の屋根材(in1,in2,in3)との間に設けられた通気層と、を備えた遮熱構造体の評価方法であって、
前記屋内側の3層の屋根材(in1,in2,in3)のうち前記通気層側の前記屋根材(in1)は遮熱材であり、
後述する式13、式12で算出される、前記屋根材(in3)の下面、すなわち天井の温度Tceil[K]について前記屋根材(in1)の厚みを0にすることで、前記遮熱材がないものを計算し、前記遮熱材があるものと比較し評価することを特徴とする遮熱構造体の評価方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
図1に示すように、遮熱構造体1は、屋根材6(例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標)等)と、防水行うルーフィング7と、合板等の第一遮熱シールド8と、その下部に通気層9と、野地板等の第二遮熱シールド10とから構成される。遮熱構造体1は、建物の屋根に用いられる構造であり、以下で説明するように、建物の上部から伝わる熱を建物の天井内部に侵入することを防ぐ。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
通気層9があるモデル(P)においては、屋外側の屋根材1(out1)、屋根材2(out2)として、ガルバリウム鋼板(登録商標)、アスファルトルーフィング、遮熱材(in1)として、アルミ反射材、屋内側の屋根材2(in2)、屋根材3(in3)として、発泡スチロール、屋根合板を採用する。屋根材及び遮熱材の熱伝導率、厚さを表1のとおりに与える。
【表1】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
通気層がないモデル(A)においては、遮熱材がない屋根モデルとして算出すると、同様に、屋外側の屋根材1(out1)、屋根材2(out2)として、ガルバリウム鋼板(登録商標)、アスファルトルーフィング、屋根材1(in1)、屋根材2(in2)として、発泡スチロール、屋根合板を採用する。屋根材及び熱伝導率、厚さを表2のとおりに与える。
【表2】