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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143180
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】排水処理方法及び排水装置
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/22 20060101AFI20241003BHJP
   F04D 13/00 20060101ALI20241003BHJP
   E03F 5/02 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
E03F5/22
F04D13/00 C
E03F5/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055713
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】593027716
【氏名又は名称】株式会社エステック
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 賢
(72)【発明者】
【氏名】高安 央也
(72)【発明者】
【氏名】赤松 寛治
【テーマコード(参考)】
2D063
3H130
【Fターム(参考)】
2D063DC08
3H130AA03
3H130AB22
3H130AB60
3H130AC07
3H130BA66Z
3H130BA97Z
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130DG03Z
3H130EA02Z
3H130ED02Z
(57)【要約】
【課題】排水効率を向上できる排水処理方法及び排水装置を提供する。
【解決手段】排水処理方法は、マンホール内の溜水を排水する排水処理方法であって、マンホールに排水ポンプを吊り下ろして、溜水の水面に排水ポンプを浮かせる第1工程と、排水ポンプを駆動して溜水を排水する第2工程と、を含み、第2工程では、排水に伴う水位変化に排水ポンプが追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溜水を排水する排水処理方法であって、
前記溜水に排水ポンプを吊り下ろして、前記溜水の水面に前記排水ポンプを浮かせる第1工程と、
前記排水ポンプを駆動して前記溜水を排水する第2工程と、を含み、
前記第2工程では、排水に伴う水位変化に前記排水ポンプが追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う、
排水処理方法。
【請求項2】
前記第2工程では、前記排水ポンプの電力源として蓄電装置を用いる、
請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の排水処理方法に用いられる排水装置であって、
排水ポンプと、
前記排水ポンプに取り付けられ、前記排水ポンプを水面に浮かせる浮き具と、
を備え、
前記浮き具は、
ボトル状の浮き本体と、
前記排水ポンプの周囲に前記浮き本体を立位姿勢で保持する保持部材と、を有する、
排水装置。
【請求項4】
前記保持部材は、前記排水ポンプの周囲に沿って配置される枠体であり、
前記枠体に、前記浮き本体のネック部を挿通可能で、かつ、前記浮き本体のヘッド部を挿通不能な取付穴が形成されている、
請求項3に記載の排水装置。
【請求項5】
前記枠体は、フランジ部と、前記フランジ部の端縁から屈曲して起立する起立板部と、を有し、
前記フランジ部に、前記取付穴が形成され、
前記起立板部に、前記取付穴に連通し前記ヘッド部を挿通可能な誘導穴が形成されている、
請求項4に記載の排水装置。
【請求項6】
前記枠体は、前記浮き本体の取付部分を拡縮可能である、
請求項4に記載の排水装置。
【請求項7】
前記枠体の一部が開放されている、
請求項4に記載の排水装置。
【請求項8】
前記浮き本体は、ペットボトルである、
請求項3に記載の排水装置。
【請求項9】
前記ペットボトルは、前記排水ポンプの下端よりも下方に突出する、
請求項8に記載の排水装置。
【請求項10】
前記ペットボトル内に配置される照明装置を備える、
請求項8に記載の排水装置。
【請求項11】
前記排水ポンプに取り付けられる排水ホースを有し、
前記排水ホースは、硬質の樹脂材料からなる伸縮自在な蛇腹構造を有する、
請求項3に記載の排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール内の溜水を排出するための排水処理方法及び排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地下に管路を設けて、電力ケーブルや通信ケーブル等のケーブル類を地中に埋設することが行われている。管路の途中には、所定の間隔でマンホールが設けられ、ケーブル類の接続や保守点検等(以下、「マンホール内作業」と称する)を行うことができるようになっている。
【0003】
ところで、マンホール内作業を行う際、マンホール内に浸入した雨水や地下水が滞留していることがある。この場合、排水ポンプを用いてマンホール内の溜水を排出した上で、所定の作業が行われる。通常、排水ポンプは、マンホールの床面に設けられたポンプ固定用凹部に設置され、溜水に沈んだ状態で駆動される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
溜水を短時間で排出するため、排水ポンプには、排水性能の高い3相200Vのものが好適であり、電力源としては、主に大容量の発電機が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-25201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、大容量の発電機は、騒音・振動の発生が不可避であり、通行人や近隣住民に不快感を与える虞がある。また、発電機を設置するためには、広い作業スペースが必要であり、作業中は、長時間にわたって人又は車両の通行を妨げてしまう。また、軽油を燃料とする発電機は、大気中の温室効果ガス(例えば、二酸化炭素)が増大するという問題がある。
【0007】
一方、発電機よりも容量の小さい蓄電装置(例えば、単相100V)を使用すれば、騒音・振動を抑制できるとともに、作業スペースを縮小することができる。さらに、作業用電源の燃料が電化されることにより、大気中の温室効果ガス(例えば、二酸化炭素)の削減が可能となる。しかしながら、発電機を使用する場合に比較して、排水ポンプの排水性能が低くなり、排水時間が長くなるため、マンホール内作業の作業時間に制約が生じ、道路使用許可時間内での作業終了が困難になることもあり得る。
【0008】
本発明の目的は、排水効率を向上できる排水処理方法及び排水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る排水処理方法は、
溜水を排水する排水処理方法であって、
排水ポンプを吊り下ろして、前記溜水の水面に前記排水ポンプを浮かせる第1工程と、
前記排水ポンプを駆動して前記溜水を排水する第2工程と、を含み、
前記第2工程では、排水に伴う水位変化に前記排水ポンプが追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う。
【0010】
本発明に係る排水装置は、
上記の排水処理方法に用いられる排水装置であって、
排水ポンプと、
前記排水ポンプに取り付けられ、前記排水ポンプを水面に浮かせる浮き具と、
を備え、
前記浮き具は、
ボトル状の浮き本体と、
前記排水ポンプの周囲に前記浮き本体を立位姿勢で保持する保持部材と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る排水処理方法及び排水装置によれば、排水作業における排水効率を向上することができる。したがって、排水ポンプの電力源として蓄電装置を適用した場合にも従来と同等の作業時間で排水を行うことができ、発電機を適用する場合に発生する温室効果ガス(例えば、二酸化炭素)や、騒音・振動の問題を解消することができる。また、作業スペースの縮小化が実現し、作業環境が整うことで、困難であった狭隘道路上での施工も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1A図1Bは、実施の形態に係る排水装置の構成を示す平面図及び側面図である。
図2図2A図2Bは、排水装置に適用される排水ポンプの概要を示す平面図及び側面図である。
図3図3A図3Bは、排水装置の浮き具の一例を示す図である。
図4図4A図4Dは、排水装置の保持部材の一例を示す図である。
図5図5は、保持部材の変形例を示す図である。
図6図6A図6Cは、実施の形態に係る排水処理方法を示す図である。
図7図7は、実施の形態に係る排水処理方法による排水効率を示す図である。
図8図8は、二段階排水処理方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1A図1Bは、本発明の一実施の形態に係る排水装置1の構成を示す平面図及び側面図である。
【0015】
図1A図1Bに示すように、排水装置1は、排水ポンプ10及び浮き具20を備える。排水装置1は、マンホールMH内の溜水を汲み上げて排出する装置であり、溜水に浮かせた状態で使用される。なお、一般的なマンホールMHでは、入口51の直下に、排水ポンプを設置するための凹部52(以下、「ポンプ設置用凹部52」と称する)が設けられている(図6A等参照)。
【0016】
排水ポンプ10は、電力を駆動源とする公知の排水ポンプであり、例えば、モーター及び羽根車が内蔵されており、羽根車の動力を水圧に変換して、水を汲み上げる。排水ポンプには、例えば、単相100Vの小容量の蓄電装置によって駆動される小型の排水ポンプを適用可能である。
【0017】
排水ポンプ10は、図2A図2Bに示すように、吸込口11及び排水口12を有する。図2Aは、排水ポンプ10の平面図であり、図2Bは、側面図である。吸込口11は、排水ポンプ10の下部に設けられ、水面に浮遊した状態で溜水を吸い込み可能となっている。排水ポンプ10は、排水口12に接続された排水ホース13を介して、溜水を排出する。
【0018】
排水ホース13には、例えば、硬質の樹脂材料で形成された、伸縮自在な蛇腹構造を有するホースが好適である。後述するように、本実施の形態の排水処理方法においては、溜水の水位の変化に伴い排水ポンプ10の位置が変化するため、常時有効ホース長が変化することになり、それに追従するホース構造が求められる。排水ホース13として、硬質の樹脂材料で形成された、伸縮自在な蛇腹構造を有するホースを適用することで、揚程が低い場合でもホースを収縮させて有効ホース長を短くできるので、ホースに蛇行や屈曲が生じて軌道が狭まることはなく、確実に軌道を確保することができる。また、溜水の水位が低下した分だけホースが伸長していくことで、適切に排水することができる。
【0019】
浮き具20は、浮き本体21及び保持部材22を有する。浮き具20は、排水ポンプ10を水面に浮いた状態に保持し得る程度の浮力を発揮する。浮き具20による浮力は、排水ポンプ10の重量に応じて適宜調整可能であることが好ましい。例えば、排水ポンプ10の重量に合わせて浮き本体21の個数を調整することで、浮き具20による浮力を調整することができる。また、浮き本体21をペットボトルで構成する場合、ペットボトル内に水を入れることで、浮き具による浮力を調整してもよい。
【0020】
浮き本体21は、図3A図3Bに示すように、保持部材22によって、立位姿勢で保持される。図3Aは浮き本体21の平面図であり、図3Bは側面図である。本実施の形態では、10個の浮き本体21が、排水ポンプ10の周囲に配置されている。なお、浮き本体21は、保持部材22に対して、所定の角度で傾斜して配置されてもよい。
【0021】
浮き本体21は、例えば、内部が気体で充填された密閉容器である。浮き本体21は、ヘッド部31、ネック部32及び胴部33からなるボトル形状を有する。ネック部32は、ヘッド部31及び胴部33を連結するくびれ部分であり、ヘッド部31及び胴部33よりも小径である。
【0022】
浮き本体21は、例えば、汎用のペットボトルで構成される。ペットボトルの廃材を利用することができるので、浮き本体21の低コスト化を図ることができる。例えば、浮き具20に、2Lのペットボトルを10本配置した場合、20kgの排水ポンプ10を浮かせることができる。
【0023】
浮き本体21がペットボトルで構成される場合、排水ポンプ10に浮き具20を取り付けた状態で、ペットボトルの下端が排水ポンプ10の下端よりも下方に突出することが好ましい。ペットボトルの出代を大きくすることで少量の水を残す調整も可能となる。
【0024】
マンホールMH内の水位が低下した場合、排水装置1は、最終的にマンホールMHの床面(ポンプ設置用凹部52)と接触するが、排水ポンプ10ではなく浮き本体21であるペットボトルがマンホールMH内に収容されている埋設設備やマンホールMHの床面と接触することとなるので、マンホールMH内の収容設備又は排水ポンプ10の損傷を防止することができる。また、ペットボトルはクッション性を有するので、接触によりマンホールMHの床面が損傷することもない。さらには、マンホールMHの床面との接触によりペットボトルが損傷しても、容易かつ低コストで交換することができる。
【0025】
また、ペットボトルは、透光性を有するため、内部に照明装置を配置することもできる。照明装置には、例えば、電池式のペンライトを適用できる。マンホールMH内の溜水の状況や排水装置1の姿勢を目視で確認できるようになるため、排水作業の安全性が向上する。
【0026】
保持部材22は、排水ポンプ10の周囲に、複数の浮き本体21を立位姿勢で保持する。保持部材22は、例えば、排水ポンプ10の周囲に沿って配置される枠体である。保持部材22は、図4A図4Dに示すように、第1枠体41、第2枠体42及び第3枠体43をボルト締結により接続することにより、矩形形状の一辺が開放されたU字形状に形成される。図4Aは、保持部材22の平面図、図4Bは前面図、図4Cは右側面図、図4D図4Bにおける矢視断面図である。
【0027】
第1枠体41、第2枠体42及び第3枠体43は、それぞれ、板金加工により断面L字状に形成される。第1枠体41、第2枠体42及び第3枠体43は、外側に張り出すフランジ部44と、フランジ部44の内側端縁から屈曲して起立する起立板部45とを有する。
【0028】
フランジ部44は、複数の浮き本体21を立位姿勢で保持可能な複数の取付穴46を有する。本実施形態では、第1枠体41に2つの取付穴46が設けられ、第2枠体42及び第3枠体43に、それぞれ、4つの取付穴46が設けられている。
【0029】
取付穴46は、フランジ部44の内側縁から切り欠かれた長円形状を有する。取付穴46は、浮き本体21のネック部32を挿通可能で、かつ、浮き本体21のヘッド部31を挿通不能となっている。具体的には、取付穴46の幅は、浮き本体21のネック部32の外径と略同じである。
【0030】
起立板部45は、取付穴46に連通する誘導穴47を有する。誘導穴47は、浮き本体21のヘッド部31を挿通可能となっている。
【0031】
保持部材22の内側から誘導穴47に浮き本体21のヘッド部31を挿入し、この状態で浮き本体21を誘導穴47及び取付穴46に沿って90°回転させることで、取付穴46に浮き本体21のネック部32が引っ掛かり、保持部材22から脱落不能となる。
【0032】
排水ポンプ10は、浮き具20の内側に配置される。排水ポンプ10は、例えば、浮き具20に懸架された固定ベルト23に吊下げられる。
【0033】
保持部材22の一辺が開放されているので、開放されている側に排水ポンプ10を配置して浮き具20を水平移動させることにより、排水ポンプ10と浮き具20の接触を回避しつつ、排水ポンプ10を浮き具20の内側に容易に配置することができる。
【0034】
保持部材22は、浮き本体21の取付部分、例えば、第2枠体42及び第3枠体43を拡縮可能であることが好ましい。例えば、図5に示すように、第2枠体42及び第3枠体43に、第2枠体42及び第3枠体43と同様の構造を有する拡張部材48が、スライド可能に取り付けられる。排水ポンプ10の重量に応じて浮き本体21を増設し、浮き具20による浮力を容易に増加させることができる。また、排水ポンプ10のサイズに応じて浮き具20のサイズを調整できるので、排水ポンプ10に浮き具20を取り付けたときの排水装置1の姿勢を安定させることができる。
【0035】
図6A図6Cは、排水装置1を用いた排水処理方法を示す図である。
【0036】
マンホールMH内の溜水を排出する場合、まず、図6Aに示すように、マンホールMHの入口51から排水装置1を吊り下ろして、溜水の水面に浮かせる。排水装置1の浮き本体21は立位状態で保持されているので、マンホールMH内に排水装置1を容易に導入することができる。
【0037】
排水ホース13は、最も収縮した状態から、吊り下ろし高さに応じた長さだけ蛇腹が広がり伸長する。この状態で電力源(例えば、蓄電装置)から排水ポンプ10に電力が供給され、排水ポンプ10のモーターが駆動されて排水が開始される。
【0038】
一般的な可撓性を有するホース(例えば、サニーホース(登録商標))を適用した場合、溜水の水位が高く揚程が低い排水初期には、ホースが蛇行したり屈曲したりして軌道が狭まり、水流に対する抵抗が大きくなる虞がある。これに対して、本実施の形態のように、硬質の樹脂材料で形成された蛇腹構造のホースを適用した場合、揚程が低い場合でもホースを収縮させて有効ホース長を短くできるので、ホースに蛇行や屈曲が生じて軌道が狭まることはなく、確実に軌道を確保することができる。したがって、排水装置1を水面に浮かべて揚程を低くすることにより得られる高い排水性能を最大限に活かすことができる。
【0039】
排水装置1は、溜水の水面に浮いているので、マンホールMHのポンプ設置用凹部52に排水ポンプを設置して排水する従来の排水処理に比較して、排水開始時の揚程は短くなる。
【0040】
図7に示すように、排水ポンプの排水性能は、揚程が高いほど、低くなる。本実施の形態では、揚程が短くなる分、高い排水性能で排水が開始されることとなり、排水効率が高くなる。例えば、マンホールMHの高さが5mの場合、従来の排水処理方法では、排水性能P3で排水が開始されるのに対して、本実施の形態の排水処理方法では、排水性能P3よりも高い排水性能P1で排水が開始されることになる。
【0041】
図6Bに示すように、排水装置1による排水に伴い、溜水の水位は低くなる。水位の低下に追従して排水ホース13の蛇腹が広がり伸長するので、排水ポンプ10は、安定した姿勢で水面に浮いた状態で保持される。揚程が長くなった分だけ排水性能は低下する(例えば、図7の排水性能P2参照)ものの、従来の排水処理方法に比較すると、依然として高い排水性能で排水が行われる。
【0042】
排水装置1による排水に伴い、溜水の水位はさらに低くなり、図6Cに示すように、最終的にポンプ設置用凹部52のみに残留する。排水装置1がポンプ設置用凹部52に到達し、残りの溜水の排水が行われる。
【0043】
従来の排水処理方法では、排水ポンプがマンホールMHのポンプ設置用凹部52に設置された状態で排水が行われるので、排水作業を通して揚程が一定である。これに対して、本実施の形態の排水処理方法では、溜水の水位に応じて揚程が変化する。揚程に応じた排水性能が発揮されることとなり、揚程が一定である場合に比較して排水効率が格段に向上するので、排水作業に要する時間が短縮される。
【0044】
したがって、蓄電装置を電力源とする小容量の排水ポンプ10であっても、発電機を電力源とする大容量の排水ポンプと同等の排水効率を得ることができる。排水ポンプ10の電力源として、発電機に代えて蓄電装置を適用できるため、発電機を使用した場合に発生していた騒音・振動の問題を解消することができる。環境に優しい蓄電池(マンホール排水)施工で温室効果ガス(例えば、二酸化炭素)の削減にも寄与する。また、作業スペースの縮小化され、作業環境が整うことで、困難であった狭隘道路上での施工も可能となる。
【0045】
このように、実施の形態に係る排水処理方法及び排水装置1は、以下の特徴事項を単独で、又は、適宜組み合わせて備えている。
【0046】
すなわち、実施の形態に係る排水処理方法は、マンホールMH内の溜水を排水する排水処理方法であって、マンホールMHに排水ポンプ10を吊り下ろして、溜水の水面に排水ポンプ10を浮かせる第1工程(図6A参照)と、排水ポンプ10を駆動して溜水を排水する第2工程(図6B図6C参照)と、を含み、第2工程では、排水に伴う水位変化に排水ポンプ10が追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う。
【0047】
具体的には、第2工程では、排水ポンプ10の電力源として蓄電装置を用いる。
【0048】
実施の形態に係る排水処理方法によれば、排水作業における排水効率が格段に向上する。したがって、排水ポンプ10の電力源として蓄電装置を適用した場合にも従来と同等の作業時間で排水を行うことができ、発電機を使用する場合に発生する温室効果ガス(例えば、二酸化炭素)・騒音・振動の問題を解消することができる。また、蓄電装置を用いることにより、作業スペースを縮小することができる。
【0049】
実施の形態に係る排水装置1は、上記の排水処理方法に用いられる排水装置であって、排水ポンプ10と、排水ポンプ10に取り付けられ、排水ポンプ10を水面に浮かせる浮き具20と、を備え、浮き具20は、ボトル状の浮き本体21と、排水ポンプ10の周囲に浮き本体21を立位姿勢で保持する保持部材22と、を有する。
【0050】
排水装置1によれば、マンホールMH内に排水装置1を容易に導入して、溜水に浮かせることができ、排水に伴う水位変化に排水ポンプ10を追従させながら排水を行うことができる。
【0051】
また、排水装置1において、保持部材22は、排水ポンプ10の周囲に沿って配置される枠体であり、枠体に、浮き本体21のネック部32を挿通可能で、かつ、浮き本体21のヘッド部31を挿通不能な取付穴46が形成されている。これにより、ボトル形状の浮き本体21を安定した立位姿勢で容易に保持することができる。
【0052】
また、排水装置1において、保持部材22の枠体は、フランジ部44と、フランジ部44の端縁から屈曲して起立する起立板部45と、を有し、フランジ部44に、取付穴46が形成され、起立板部45に、取付穴46に連通し浮き本体21のヘッド部31を挿通可能な誘導穴47が形成されている。これにより、取付穴46に浮き本体21のネック部32が引っ掛かった状態で保持されるので、保持部材22から浮き本体21が脱落するのを防止できる。
【0053】
また、排水装置1において、保持部材22の枠体は、浮き本体21の取付部分を拡縮可能である。これにより、排水ポンプ10の重量に応じて浮き本体21を増設し、浮き具20による浮力を容易に増加させることができる。
【0054】
また、排水装置1において、保持部材22の枠体の一部が開放されている。これにより、保持部材22と接触することなく排水ポンプ10を容易に浮き具20の内側に配置することができる。
【0055】
また、排水装置1において、浮き本体21は、ペットボトルである。浮き本体21としてペットボトルの廃材を利用することができるので、浮き本体21の低コスト化を図ることができる。
【0056】
また、排水装置1において、浮き本体21を構成するペットボトルは、排水ポンプ10の下端よりも下方に突出する。これにより、マンホール内に収容されている埋設設備やマンホールMHの床面との接触によりマンホール内の収容設備の損傷や排水ポンプ10が損傷するのを防止できる。また、ペットボトルはクッション性を有するので、接触によりマンホールMHの床面が損傷することもない。さらには、マンホールMHの床面との接触によりペットボトルが損傷しても、容易かつ低コストで交換することができる。
【0057】
また、排水装置1は、ペットボトル内に配置される照明装置を備える。これにより、マンホールMH内の溜水の状況や排水装置1の姿勢を目視で確認できるようになるため、排水作業の安全性が向上する。
【0058】
また、排水装置1は、排水ポンプ10に取り付けられる排水ホース13を有し、排水ホース13は、硬質の樹脂材料からなる伸縮自在な蛇腹構造を有する。これにより、水面に浮かぶ排水装置1の姿勢が排水ホース13に影響を受けることはなく、安定した姿勢で水位変化に追従することができる。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0060】
例えば、マンホールMHが10mと深い場合など、排水装置1を使用しても揚程が高い場合に、適正な排水性能を確保するため、2つの排水ポンプを用いて二段階で排水するようにしてもよい。二段階排水処理方法の模式図を図8に示す。
【0061】
図8に示すように、二段階排水処理方法では、地上(道路)とマンホールMHの床面との中間高さに中継用排水ポンプ61が配置される。中継用排水ポンプ61には、例えば、排水ポンプ10と同性能の排水ポンプを適用できる。中継用排水ポンプ61は、例えば、マンホールMHに設置されたリレータンク62に収容される。
【0062】
リレータンク62は、貯水可能なものであればよく、例えば、エステル帆布製の円筒形の収容袋である。リレータンク62は、例えば、地上から吊り下げられてもよいし、マンホールMHの昇降ステップに固定されてもよい。リレータンク62には、排水装置1の排水ホース13が接続される。
【0063】
マンホールMH内の溜水は、排水装置1の排水ポンプ10によってくみ上げられ、リレータンク62に一旦貯留され、中継用排水ポンプ61によって地上へ排出される。このように、二段階で排水することにより、揚程が高い場合であっても、小容量の蓄電装置によって駆動される小型の排水ポンプを適用した排水処理が可能となる。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 排水装置
10 排水ポンプ
13 排水ホース
20 浮き具
21 浮き本体
22 保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溜水を排水する排水処理方法であって、
前記溜水に排水ポンプを吊り下ろして、前記溜水の水面に前記排水ポンプを浮かせる第1工程と、
前記排水ポンプを駆動して前記溜水を排水する第2工程と、を含み、
前記第2工程では、前記排水ポンプの電力源として単相100Vの蓄電装置を用い、排水に伴う水位変化に前記排水ポンプが追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う、
排水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排水処理方法に用いられる排水装置であって、
排水ポンプと、
前記排水ポンプに取り付けられ、前記排水ポンプを水面に浮かせる浮き具と、
を備え、
前記浮き具は、
ボトル状の浮き本体と、
前記排水ポンプの周囲に前記浮き本体を立位姿勢で保持する保持部材と、を有する、
排水装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記排水ポンプの周囲に沿って配置される枠体であり、
前記枠体に、前記浮き本体のネック部を挿通可能で、かつ、前記浮き本体のヘッド部を挿通不能な取付穴が形成されている、
請求項に記載の排水装置。
【請求項4】
前記枠体は、フランジ部と、前記フランジ部の端縁から屈曲して起立する起立板部と、を有し、
前記フランジ部に、前記取付穴が形成され、
前記起立板部に、前記取付穴に連通し前記ヘッド部を挿通可能な誘導穴が形成されている、
請求項に記載の排水装置。
【請求項5】
前記枠体は、前記浮き本体の取付部分を拡縮可能である、
請求項に記載の排水装置。
【請求項6】
前記枠体の一部が開放されている、
請求項に記載の排水装置。
【請求項7】
前記浮き本体は、ペットボトルである、
請求項に記載の排水装置。
【請求項8】
前記ペットボトルは、前記排水ポンプの下端よりも下方に突出する、
請求項に記載の排水装置。
【請求項9】
前記ペットボトル内に配置される照明装置を備える、
請求項に記載の排水装置。
【請求項10】
前記排水ポンプに取り付けられる排水ホースを有し、
前記排水ホースは、硬質の樹脂材料からなる伸縮自在な蛇腹構造を有する、
請求項に記載の排水装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明に係る排水処理方法は、
溜水を排水する排水処理方法であって、
前記溜水に排水ポンプを吊り下ろして、前記溜水の水面に前記排水ポンプを浮かせる第1工程と、
前記排水ポンプを駆動して前記溜水を排水する第2工程と、を含み、
前記第2工程では、前記排水ポンプの電力源として単相100Vの蓄電装置を用い、排水に伴う水位変化に前記排水ポンプが追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下の溜水をマンホールを通じて排水する排水処理方法であって、
前記溜水に排水ポンプを吊り下ろして、前記溜水の水面に前記排水ポンプを浮かせる第1工程と、
前記排水ポンプを駆動して前記溜水を排水する第2工程と、を含み、
前記第2工程では、前記排水ポンプの電力源として単相100Vの蓄電装置を用い、排水に伴う水位変化に前記排水ポンプが追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う、
排水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排水処理方法に用いられる排水装置であって、
排水ポンプと、
前記排水ポンプに取り付けられ、前記排水ポンプを水面に浮かせる浮き具と、
を備え、
前記浮き具は、
ボトル状の浮き本体と、
前記排水ポンプの周囲に前記浮き本体を立位姿勢で保持する保持部材と、を有する、
排水装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記排水ポンプの周囲に沿って配置される枠体であり、
前記枠体に、前記浮き本体のネック部を挿通可能で、かつ、前記浮き本体のヘッド部を挿通不能な取付穴が形成されている、
請求項2に記載の排水装置。
【請求項4】
前記枠体は、フランジ部と、前記フランジ部の端縁から屈曲して起立する起立板部と、を有し、
前記フランジ部に、前記取付穴が形成され、
前記起立板部に、前記取付穴に連通し前記ヘッド部を挿通可能な誘導穴が形成されている、
請求項3に記載の排水装置。
【請求項5】
前記枠体は、前記浮き本体の取付部分を拡縮可能である、
請求項3に記載の排水装置。
【請求項6】
前記枠体の一部が開放されている、
請求項3に記載の排水装置。
【請求項7】
前記浮き本体は、ペットボトルである、
請求項2に記載の排水装置。
【請求項8】
前記ペットボトルは、前記排水ポンプの下端よりも下方に突出する、
請求項7に記載の排水装置。
【請求項9】
前記ペットボトル内に配置される照明装置を備える、
請求項7に記載の排水装置。
【請求項10】
前記排水ポンプに取り付けられる排水ホースを有し、
前記排水ホースは、硬質の樹脂材料からなる伸縮自在な蛇腹構造を有する、
請求項2に記載の排水装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明に係る排水処理方法は、
地下の溜水をマンホールを通じて排水する排水処理方法であって、
前記溜水に排水ポンプを吊り下ろして、前記溜水の水面に前記排水ポンプを浮かせる第1工程と、
前記排水ポンプを駆動して前記溜水を排水する第2工程と、を含み、
前記第2工程では、前記排水ポンプの電力源として単相100Vの蓄電装置を用い、排水に伴う水位変化に前記排水ポンプが追従し、変化する揚程に応じた排水性能を発揮しながら排水を行う。