(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143183
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】収納容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20241003BHJP
H01M 50/238 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/207 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
B65D1/02 250
H01M50/238
H01M50/207
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055717
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】在原 智紀
(72)【発明者】
【氏名】清水 航
【テーマコード(参考)】
3E033
5H040
【Fターム(参考)】
3E033AA09
3E033BA07
3E033BA11
3E033BA13
3E033BA18
3E033BA21
3E033BA26
3E033BA30
3E033BB07
3E033CA03
3E033CA05
3E033CA06
3E033CA09
3E033DD01
3E033DE06
3E033GA02
3E033GA03
5H040AA01
5H040AA03
5H040AT01
5H040AT02
5H040AY05
(57)【要約】
【課題】容器内部の圧力が変動した場合にその圧力を速やかに調整する。
【解決手段】収納容器は、複数の外装壁を備え、前記複数の外装壁により形成される内部空間に全固体電池が収納されている収納容器であって、前記複数の外装壁の一部又は全部に形成される圧力調整部を有し、前記圧力調整部には、前記内部空間における体積の変化に応じて弾性変形可能な圧力板が形成されているものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外装壁を備え、前記複数の外装壁により形成される内部空間に内容物が収納されている収納容器であって、
前記複数の外装壁の一部又は全部に圧力調整部が形成されており、
前記圧力調整部は、前記内部空間における体積の変化に応じて弾性変形可能な圧力板を有する
収納容器。
【請求項2】
前記圧力調整部は、
容器外部に開口する縁部と、
前記圧力板から前記縁部に連続して形成され、前記圧力板の変形に応じて弾性変形可能な保持部と、を有する
請求項1に記載の収納容器。
【請求項3】
前記圧力板は円形に形成されている
請求項1又は請求項2に記載の収納容器。
【請求項4】
前記圧力板は長円形に形成されている
請求項1又は請求項2に記載の収納容器。
【請求項5】
前記圧力板は、
薄肉部と、
前記薄肉部より前記圧力板の中心側に形成され、前記薄肉部より厚みのある厚肉部と、を有する
請求項4に記載の収納容器。
【請求項6】
前記複数の外装壁により円筒に形成されている
請求項1に記載の収納容器。
【請求項7】
前記複数の外装壁のうちの側面壁に前記圧力調整部が形成されている
請求項6に記載の収納容器。
【請求項8】
前記複数の外装壁のうちの天面壁又は底面壁の少なくとも一方に前記圧力調整部が形成されている
請求項6に記載の収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状を変化させることで容器内部の圧力を調整する収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器などに用いられる二次電池として、無機固体電解質を用いた全固体電池が注目されている。無機固体電解質はその性質上一般に不燃であるため、当該無機固体電解質を用いた全固体電池は、有機溶媒電解質を用いた二次電池と比較して高い安全性を備えている。
【0003】
このような全固体電池の性能を維持するには、電解質と正極、負極の活物質の界面のイオン伝導抵抗を低下させるために、全固体電池の電池素子を収めた容器内部において、常に一定の圧力をかけることが有効とされている。
【0004】
しかしながら、全固体電池の電解質、正極及び負極といった電池素子は、温度変化や充放電時に体積が変化するものであり、このような体積変化により容器内部の圧力が変動し、全固体電池の性能が十分に維持できなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、例えば特許文献1では、全固体電池の電池素子を収めた容器内部にオイルを充填させ、加圧ポンプを用いてオイルの量を調整することで、容器内部の圧力を調整する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、全固体電池の体積変化による容器内部の圧力変動を抑制するために、容器外部にオイルを圧送する加圧ポンプを圧力制御手段として設けることは、全固体電池を用いた各種電子機器の部品点数の増加や、小型化を妨げる要因となり得る。
【0008】
また、加圧ポンプなどの圧力制御手段により容器内部の圧力を調整する手法では、容器内部の瞬時の圧力変動を検知してからオイルの量を調整するまでの間にタイムラグが生じてしまい、容器内部における圧力変化の初動を抑制するのが難しい側面がある。
さらに、電池素子の充放電がないような場合においても、環境温度の変化によってオイルそのものの体積変化が生じ、容器内部の圧力が変動するため、連続もしくは間欠で加圧ポンプなどの圧力制御装置を作動させる必要があり、電気エネルギーの損失が生じる。
【0009】
そこで、本発明では、容器内部に収納された全固体電池やオイルの体積変化等により、容器内部の圧力が変動した場合に、その圧力を速やかに調整することができる収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る収納容器は、複数の外装壁を備え、前記複数の外装壁により形成される内部空間に全固体電池が収納されている収納容器であって、前記複数の外装壁の一部又は全部に形成される圧力調整部を有し、前記圧力調整部には、前記内部空間における体積の変化に応じて弾性変形可能な圧力板が形成されているものである。
【0011】
これにより、収納容器の内部の可変容積を大きく確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容器内部の体積変化に応じて容器が変形することで、容器内部の圧力を体積変化前と同様に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における収納容器の外観を示す図である。
【
図3】収納容器のA-A断面図における圧力調整部の拡大図である。
【
図5】保持部を有しない圧力調整部を示す断面図である。
【
図6】収納容器に加圧ポンプを接続した状態を模式的に示した図である。
【
図8】第2の実施の形態における収納容器の外観を示す図である。
【
図9】収納容器のB-B断面図における圧力調整部の拡大図である。
【
図10】第3の実施の形態における収納容器の外観を示す図である。
【
図12】第4の実施の形態における収納容器の外観を示す図である。
【
図14】第5の実施の形態における収納容器の外観を示す図である。
【
図16】収納容器の温度変化に対する内部空間の圧力の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、各実施の形態について
図1から
図16を参照して説明する。なお、本実施の形態の説明にあたり参照する図面に記載された構成は、本実施の形態を実現するにあたり必要な要部及びその周辺の構成を抽出して示している。また図面は模式的なものであり、図面に記載された各構造の厚みと平面寸法の関係、比率等は一例に過ぎない。従って、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲であれば設計などに応じて種々な変更が可能である。
【0015】
第1の実施の形態における収納容器1について、
図1から
図7を参照して説明する。収納容器1は、
図1及び
図2に示すように、略直方体状に形成されている。収納容器1は、前後方向を向く前面壁10と、前面壁10の後側に位置され前後方向を向く後面壁11と左右方向に離隔して位置された側面壁12、12と、上下方向を向く天面壁13と、天面壁13の下側に位置され上下方向を向く底面壁14とを有している。前面壁10、後面壁11、側面壁12、12、天面壁13及び底面壁14は、それぞれ収納容器1の外装壁15として形成されている。なお、前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施においてこれらの方向に限定されることはない。
【0016】
収納容器1が構成された状態において、複数の外装壁15により形成される内部空間には、その機能の発揮等の要因により体積が変化する内容物が配置されている。当該内容物は、例えば
図2に示す全固体電池2である。全固体電池2は、電解質、正極、負極の各材料が、温度変化や充放電時により膨張し体積が変化するものである。
【0017】
全固体電池2は、例えばリチウムイオン電池であり、固体電解質を含む電池素子を有する二次電池である。全固体電池2は、各リードフレーム3により直列の関係に連結されており、連結された全固体電池2の両端のリードフレーム3が、収納容器1の外部への出力端子4、5にそれぞれ接続されている。なお、
図1では出力端子4、5に関する構成の図示を省略している。
【0018】
収納容器1の内部には、図示しない流路等を介して加圧媒体として液体が充填され、配置された全固体電池2が当該液体により全方向から加圧される。例えば全固体電池2が加圧された状態で流路を閉鎖し内部空間を密閉することで、液体による全固体電池2に対する加圧が維持される。このように全固体電池2を加圧することで、固体電解質と各活物質との界面のイオン伝導抵抗を低下させ、全固体電池2の性能を維持することができる。
【0019】
収納容器1の内部に充填される液体には、例えば油圧作動油などのオイルが用いられる。なお、充填される液体には気体が混合されていてもよい。
【0020】
また
図2及び
図3に示すように、収納容器1の天面壁13は、円形状に開口する配置孔20が形成された壁部21と、配置孔20に設けられ上方向(収納容器1の外部側に向かう方向)に円形状に開口する圧力調整部22とが一体に形成されている。圧力調整部22は凹部として形成され、縁部23、保持部24及び圧力板25を有している。
【0021】
縁部23は、配置孔20を形成する壁部21の縁26から径方向に突出して環状に形成されている。
【0022】
保持部24は、縁部23の端部27に連続して形成され、下方向(底面壁14側に向かう方向)に突出して円筒状に形成されている。このように保持部24は、壁部21から離隔して形成される。また保持部24は、圧力板25の変形に応じて可逆的に弾性変形可能に形成されている。
【0023】
圧力板25は、円形状かつ略平面状に形成されており、保持部24の下端部の接続部28に連続して形成されている。このように縁部23、保持部24及び圧力板25は、連続して一体に形成されている。また圧力板25の厚みは、壁部21の厚みよりも薄肉に形成されている。なお、ここでいう略平面状には、平面のみならず、平面に近似する曲面まで含まれる。
【0024】
圧力板25を円形状とするのは、円形は無限の線対称軸を持ち応力が集中しにくいことから、圧力板25の変形による収納容器1の内部の可変容積を大きく確保することができるためである。また円形は加工しやすい形状であり、圧力板25の加工が容易となるためである。
【0025】
圧力板25は、収納容器1の内部と外部の圧力差に応じて可逆的に弾性変形可能な弾性体として形成されている。収納容器1の内部の体積が変化して圧力差が生じると、圧力板25が変形することで収納容器1の容積が変化し、収納容器1の内部の圧力が体積変化前と同様に保たれる。
【0026】
圧力板25の材質は、弾性変形域が広く収納容器1が置かれる環境温度範囲、及び全固体電池2の使用温度範囲で変化が少ないこと、剛性が高く収納容器1が置かれる環境温度範囲、及び全固体電池2の使用温度範囲で変化が少ないこと、破断伸びが大きく収納容器1が置かれる環境温度範囲、及び全固体電池2の使用温度範囲で変化が少ないこと、収納容器1が置かれる環境温度範囲、及び全固体電池2の使用温度範囲で耐クリープ性が高いこと、耐熱性が、収納容器1が置かれる環境温度範囲、及び全固体電池2の使用温度範囲内で高いこと、冷間脆性が、収納容器1が置かれる環境温度範囲、及び全固体電池2の使用温度範囲内で発生しないこと、耐薬品性に優れること、といった条件を満たすものであることが望ましい。
【0027】
具体的には、HRc40以上に焼入れした鋼材で、0.2%耐力が100kgf/mm2以上、破断伸びが10%以上であることが望ましい。また、HRc50以上に焼入れした鋼材では0.2%耐力が120kgf/mm2以上、破断伸びが10%以上であることがより望ましい。適用される鋼材は、例えばマルテンサイト系ステンレスでSUS440、SUS420J2及びこれらの相当材など、析出硬化系ステンレスで、SUS631、SUS632J1及びこれらの相当材など、工具鋼で、SKD11、SKD61、SKH51及びこれらの相当材など、ばね鋼鋼材で、SUP6、SUP9、SUP9A、SUP10、SUP11A、SUP13及びこれらの相当材などが挙げられる。これは熱処理や加工硬化等で硬度が上がる鋼材であれば、高いばね性を得られるためである。また、ゴム系材料も弾性範囲が非常に広く、厚肉化すれば非常に優位性が高く、圧力板25の材質として適用が可能である。
【0028】
また圧力板25の材質の例として、金属ではJISB8267:20222の「4.材料」に定義される品種(SS300、SS400、SB410、SB480、SB450M、SB480M、SM400A、SM400B、SM400C、SM490A、SM490B、SM490C、SMA400(all)、SMA490(all)、SPV235、SPV315、SPV410、SPV450、SPV490、SBV1A、SBV1B、SBV2、SBV3、SLA235A、SLA235B、SLA325A、SLA325B、SLA365、SLA410、SL2N255、SL3N255、SL3N275、SF340A、SF390A、SF440A、SFVC2A、SFVAF1、SHVAF2、SFVAF12、SFVAF11A、SFVAF11B、SFVAF22A、SFVAF22B、SFVAF21A、SFVAF21B、SFVAF5A、SFVAF5B、SFVAF5C、SFVAF5D、SFVAF9、SFVCMF22B、SFVCMF22V、SFVCMF3V、SUS304、SUS304L、SUS309S、SUS310S、SUS316、SUS316L、SUS316Ti、SUS317、SUS317L、SUS321、SUS347、SUS405、SUS410S、SUS430、SUSF304、SUSF304H、SUSF304L、SUSF310、SUSF316、SUSF316H、SUSF316L、SUSF317、SUSF317L、SUSF321、SUSF321H、SUS347、SUS347H、SUSF410、SCMV1、SCMV2、SCMV3、SCMV4、SCMV5、SCMV6、ハステロイB、ハステロイC276、ニッケル、銅、銅合金(黄銅)、アルミニウム(3004))が、ステンレス鋼ではSUS420J2、SUS440が、焼き入れ焼き戻し鋼ではSKD11、SKD61、SKD12が、高速度鋼ではSKH51が、ばね鋼ではSUP6、SUP9、SUP9A、SUP10、SUP11A、SUP13が、アルミ合金では5000もしくは7000系が挙げられる。また、プラスチックでは繊維強化したPA、POM、PC、PET、PEEK、PPS、LCPが、ゴム系材料ではニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムが挙げられる。なお、上記は圧力板25の材質の一例であり、これに限られるものではない。また、収納容器1の全体を上記材質により形成してもよいし、圧力板25を含む一部を上記材質により形成してもよい。
【0029】
続いて、収納容器1の内部の体積変化に応じた圧力調整部22の変形について、
図3から
図5を参照して説明する。収納容器1の内部空間には加圧媒体として液体が充填された状態で密閉され、配置された全固体電池2は充填された液体により継続して加圧されているものとする。
【0030】
全固体電池2の電解質、正極、負極の各材料は、温度変化や充放電時により膨張し体積が増加することがある。また、充填された液体等の加圧媒体も温度変化により膨張し体積が増加することがある。これらの要因から収納容器1の内部空間全体の体積が増加することがある。
【0031】
収納容器1の内部の体積が増加すると、圧力板25は、
図4に示すように、上方向(収納容器1の外部側)に凸の曲面状にたわみ変形する。なお、
図4の破線部分は、変形前の圧力調整部22を示している。
【0032】
収納容器1の内部の体積増加に応じて圧力板25がたわみ変形することで、収納容器1の容積を増加させることができる。これに伴い収納容器1の内部の圧力変動が抑制され、全固体電池2への加圧を体積変化前と同様に維持することができる。これにより、全固体電池2の性能を損なうことなく維持することができる。
【0033】
また、圧力板25がたわみ変形するとき、当該変形の支点となる保持部24の下端部(接続部28)に圧力板25からの曲げ応力が加わり、接続部28が圧力板25の中心側に引き寄せられる。これに伴い保持部24が傾斜することで、圧力板25のたわみ変形により生じる曲げ応力が吸収される。
【0034】
例えば圧力調整部22に保持部24を設けず、圧力板25が壁部21の縁26と一体に形成されている場合を
図5に示す。この場合であっても、収納容器1の内部の圧力変動に応じた圧力板25のたわみ変形により、全固体電池2への加圧を体積変化前と同様に維持することができる。
【0035】
しかしながら、
図5に示す例よりも、
図3及び
図4に示す保持部24を設けた例の方が、圧力板25の変形による収納容器1の内部の可変容積を大きく確保することができる。そのため、圧力調整部22に保持部24を設けた方が、収納容器1の内部の大きな体積変化に対しても余裕をもって圧力板25が変形できるようになる。
【0036】
なお、上記では全固体電池2の膨張や温度変化による液体の膨張により収納容器1の内部の体積が増加する例について説明したが、例えば温度変化により液体が収縮する等により、収納容器1の内部の体積が減少する場合もある。
【0037】
この場合には、圧力板25が収納容器1の内部側に凸の曲面状にたわみ変形することにより、収納容器1の内部の圧力を体積変化前と同様に維持することができる。このときは、圧力板25からの曲げ応力により、接続部28が圧力板25の中心側から離れるように移動する。これに伴い保持部24が傾斜することで、圧力板25のたわみ変形により生じる曲げ応力が吸収される。
【0038】
また
図6に示すように、収納容器1に加えて、収納容器1の内部の圧力を制御する圧力制御手段を設けてもよい。圧力制御手段は、例えば収納容器1の内部に加圧媒体としてオイルを充填する場合の当該オイルを圧送する加圧ポンプ30である。
【0039】
加圧ポンプ30は、収納容器1と図示しないオイルの貯留タンクとを繋ぐ管路6に接続されている。加圧ポンプ30は、収納容器1に流入させるオイルへの加圧を調整することにより、収納容器1の内部空間の圧力を調整することができる。
【0040】
管路6には、加圧ポンプ30と収納容器1との間にオイルの流路を開閉する開閉バルブ31が設けられている。開閉バルブ31により、加圧ポンプ30によりオイルが加圧された状態で流路を閉じて収納容器1の内部空間を密閉することで、加圧ポンプ30の動作によらず、収納容器1の内部の加圧状態を維持することができる。
【0041】
また管路6には、収納容器1の内部の圧力を計測する圧力計32が接続されている。この圧力計32で計測された収納容器1の内部の圧力に応じて、加圧ポンプ30や開閉バルブ31の動作が制御され、これにより、収納容器1の内部の圧力が一定になるようにオイルの加圧が調整される。
【0042】
しかしながら、加圧ポンプ30による圧力調整では、収納容器1の内部の圧力変動を圧力計32で検知してからオイルの加圧を調整するまでの間にタイムラグが生じてしまい、内部の圧力変化の初動を抑制するのが難しい側面がある。
【0043】
そこで、収納容器1を用いることで、加圧ポンプ30では調整が難しい圧力変化の初動に対しても圧力調整部22の変形により速やかに圧力調整を行うことができるようになる。収納容器1は、加圧ポンプ30のような外部の圧力制御手段を設けることなく内部の圧力を調整できるものであるが、このように圧力制御手段と併用することで、圧力制御手段による圧力調整が難しい期間を補填する役割を担うこともできる。
【0044】
なお、上記では
図1に示すように、天面壁13に圧力調整部22が形成されている例について説明したが、圧力調整部22は、複数の外装壁15のうちの一又は複数に形成されていてもよい。
【0045】
また複数の外装壁15のいずれかに形成される圧力調整部22は一つに限られず、複数形成されていてもよい。例えば
図7に示す収納容器1Aのように、圧力調整部22が天面壁13に二つ形成されていてもよい。
【0046】
第2の実施の形態における収納容器1Bについて、
図8及び
図9を参照して説明する。なお、第1の実施の形態の収納容器1と同様の構成については説明を省略する。
【0047】
収納容器1Bは、
図8に示すように、天面壁13の前後方向における長さが、左右方向における長さよりも長くされた略直方体形状に形成されている。
【0048】
また
図8及び
図9に示すように、天面壁13は、長円形状に開口する配置孔20が形成された壁部21と、配置孔20に設けられ上方向(収納容器1Bの外部側に向かう方向)に長円形状に開口する圧力調整部22Aとが一体に形成されている。
【0049】
圧力調整部22Aは、縁部23、保持部24及び圧力板25Aを有している。圧力板25Aは、第1の実施の形態の圧力板25と同じく可逆的に弾性変形可能な弾性体であり、長円形状に形成されている。
【0050】
圧力板25Aを加工が容易な長円形状とすることで、縦横比や細長比の大きい収納容器1Bであっても圧力板25Aの面積を容易に確保することができる。これにより、圧力板25Aの変形による収納容器1Bの内部の可変容積をより大きく確保することができる。
【0051】
また長円形状とすることで、圧力板25Aが、
図9の破線で示すようなたわみ変形をしたときに応力が集中しにくくなり、収納容器1Bの内部の体積変化に対して圧力板25Aが余裕をもって変形できるようになる。これによっても収納容器1Bの内部の可変容積を大きく確保することができる。
【0052】
また圧力板25Aは、薄肉部251と、薄肉部251より圧力板25Aの中心側に形成され薄肉部251より厚みのある厚肉部252とが一体に形成されている。厚肉部252を設けることで圧力板25Aの中心部の強度を向上させ、応力が集中しないようにすることができる。
【0053】
第3の実施の形態における収納容器1Cについて、
図10及び
図11を参照して説明する。なお、上述の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0054】
収納容器1Cは、
図10に示すように、略円筒形状に形成されている。収納容器1Cは、上下方向を向く天面壁41と、天面壁41の下側に位置され上下方向を向く底面壁42と、側面壁43とを有している。ここでの上下方向は、側面壁43の周方向に垂直の方向と換言することができる。天面壁41、底面壁42及び側面壁43は、それぞれ収納容器1Cの外装壁15として形成されている。これは後述する収納容器1D、1Eについても同様である。なお、上下の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関してこれらの方向に限定されることはない。
【0055】
収納容器1Cが構成された状態において、
図11に示すような複数の外装壁15により形成される内部空間には、図示は省略するが、
図1に示したような全固体電池2が配置されている。これは後述する収納容器1D、1Eについても同様である。
【0056】
収納容器1Cの天面壁41と底面壁42のそれぞれには、円形状に開口する配置孔20が形成された壁部21と、配置孔20に設けられ上方向(収納容器1Cの外部側に向かう方向)に円形状に開口する圧力調整部22とが一体に形成されている。
【0057】
例えば全固体電池2の膨張等により収納容器1Cの内部の体積が増加すると、圧力調整部22の圧力板25が、
図11の破線で示すように収納容器1Cの外部側に凸の曲面状にたわみ変形する。このように収納容器1Cの内部の体積変化に伴い圧力板25が変形することで、収納容器1Cの内部の圧力が体積変化前と同様に保たれ、全固体電池2への加圧状態を維持することができる。
【0058】
また天面壁41と底面壁42の両方に圧力調整部22を形成することで、複数の圧力板25の変形による収納容器1の内部の可変容積をより大きく確保することができる。
【0059】
なお、上記では天面壁41と底面壁42の両方に圧力調整部22を形成する例について説明したが、天面壁41と底面壁42のいずれか一方に圧力調整部22を形成することとしてもよい。
【0060】
第4の実施の形態における収納容器1Dについて、
図12及び
図13を参照して説明する。なお、上述の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0061】
収納容器1Dは、
図12に示すように、略円筒形状に形成されている。収納容器1Dは、天面壁41、底面壁42及び側面壁43を有しており、それぞれが収納容器1Dの外装壁15として形成されている。
【0062】
収納容器1Dの側面壁43には、天面壁41に連続して形成される第1の壁部21aと、底面壁42に連続して形成される第2の壁部21bと、第1の壁部21aと第2の壁部21bの間に位置する圧力調整部22Bとが連続して一体に形成されている。
【0063】
圧力調整部22Bは、
図13に示すように第1の縁部23a、第2の縁部23b、第1の保持部24a、第2の保持部24b及び圧力板25Bを有している。
【0064】
第1の縁部23aは、第1の壁部21aの下端部から下方に突出し円筒状に形成されている。また第1の保持部24aは、第1の縁部23aの下端部27aから径方向に突出して環状に形成されている。
【0065】
一方、第2の縁部23bは、第2の壁部21bの上端部から上方に突出し円筒状に形成されている。また第2の保持部24bは、第2の縁部23bの上端部27bから径方向に突出して環状に形成されている。
【0066】
圧力板25Bは、第1の保持部24aの端部28aから連続して、第2の保持部24bの端部28bをつないで一体に形成されている。圧力板25Bは円筒状に形成され、第1の実施の形態の圧力板25と同じく可逆的に弾性変形可能な弾性体とされる。圧力板25Bを円筒状とするのは、筒部分が応力集中しにくい対称形状であり、圧力板25Bの変形による収納容器1Dの内部の可変容積を大きく確保することができるためである。
【0067】
例えば全固体電池2の膨張等により収納容器1Dの内部空間の体積が増加すると、圧力板25Bが、
図13の破線で示すように収納容器1Dの外部側に凸の曲面状にたわみ変形する。このように収納容器1Dの内部の体積変化に伴い圧力板25Bが変形することで、収納容器1Dの内部の圧力が体積変化前と同様に保たれ、全固体電池2への加圧状態が維持される。
【0068】
収納容器1Dの側面壁43に円筒状の圧力板25Bを形成することで、天面壁41又は底面壁42に
図11に示すような圧力板25を設けるよりも、弾性変形可能な面積を大きく確保することができる。これにより、圧力板25Bの変形による収納容器1Dの内部の可変容積をより大きく確保することができる。これは収納容器1Dの内部に充填する加圧媒体の量が多い場合や、内部が高い圧力で加圧されている場合など、可変容積をより大きく確保する必要がある場合に特に有用である。また大きな圧力板25を設けるために天面壁41や底面壁42を大型化する必要がなくなり、収納容器1Dの小型化を図ることができる。
【0069】
第5の実施の形態における収納容器1Eについて、
図14及び
図15を参照して説明する。なお、上述の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0070】
収納容器1Eは略円筒形状に形成され、天面壁41、底面壁42及び側面壁43を有しており、それぞれが収納容器1Eの外装壁15として形成されている。また天面壁41と底面壁42のそれぞれには、
図10に示す収納容器1Cと同様に圧力調整部22が形成され、側面壁43には、
図12に示す収納容器1Dと同様に圧力調整部22Bが形成されている。
【0071】
このように、天面壁41、底面壁42及び側面壁43のそれぞれに圧力調整部を設けることで、弾性変形可能な面積をより大きく確保することができる。これにより、収納容器1Eの内部の可変容積をさらに大きく確保することができる。
【0072】
なお、上記では天面壁41と底面壁42の両方に圧力調整部22を形成する例について説明したが、天面壁41と底面壁42のいずれか一方に圧力調整部22を形成することとしてもよい。
【0073】
以上の各実施の形態における収納容器1(1A、1B、1C、1D、1E)は、複数の外装壁15を備え、複数の外装壁15により形成される内部空間に全固体電池2が収納されているものである。また収納容器1(1A、1B、1C、1D、1E)は、複数の外装壁15の一部又は全部に圧力調整部22(22A、22B)が形成されており、圧力調整部22(22A、22B)には、内部空間における体積の変化に応じて弾性変形可能な圧力板25(25A、25B)を有している(
図1、
図7、
図8、
図10、
図12、
図14等参照)。
【0074】
これにより、収納容器1(1A、1B、1C、1D、1E)の内部の可変容積を大きく確保することができる。従って、収納容器1(1A、1B、1C、1D、1E)の内部の体積変化に応じて容器が変形し、内部の圧力を体積変化前と同様に維持することができる。
【0075】
図16は、温度変化に応じた容器内部の圧力の推移を示すグラフである。横軸は容器内部の温度(℃)を示し、縦軸は容器内部の圧力(MPa)を示している。またグラフ中の実線は圧力調整部22を設けた収納容器(例えば収納容器1)の実験データを示し、破線は圧力調整部22を設けていない収納容器の実験データを示している。
【0076】
このグラフをみるに、圧力調整部22を設けた収納容器では、設けない収納容器と比較して温度上昇に伴う容器内部の圧力の上昇が大幅に抑制されていることがわかる。このことからも、収納容器1に圧力調整部22を形成することが、体積変化に伴う収納容器1の内部の圧力変化の抑制に有利に働くことがわかる。
【0077】
なお、各実施の形態では収納容器1(1A、1B、1C、1D、1E)の内部空間に配置する内容物として全固体電池2の例について説明したが、内容物はこれに限られることはない。どのような内容物であっても、本開示に係る収納容器1(1A、1B、1C、1D、1E)によれば内部空間の圧力を一定に保つことができる。特にその機能の発揮等の要因により体積が変化する内容物であれば、その効果がより顕著に発揮されることになる。
【0078】
最後に、本開示に記載された効果は例示であって限定されるものではなく、他の効果を奏するものであってもよいし、本開示に記載された効果の一部を奏するものであってもよい。また、実施の形態で説明されている構成の組み合わせの全てが課題の解決に必須であるとは限らない。
【符号の説明】
【0079】
1、1A、1B、1C、1D、1E 収納容器
2 全固体電池
10 前面壁
11 後面壁
12 側面壁
13、41 天面壁
14、42 底面壁
15、43 外装壁
22、22A、22B 圧力調整部
23 縁部
23a 第1の縁部
23b 第2の縁部
24 保持部
24a 第1の保持部
24b 第2の保持部
25 圧力板
251 薄肉部
252 厚肉部