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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143184
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】着色剤、着色組成物および印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/037 20140101AFI20241003BHJP
   C09B 29/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09D11/037
C09B29/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055718
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高畑 徳允
(72)【発明者】
【氏名】古林 龍作
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039BE01
4J039CA06
4J039CA07
4J039EA33
4J039EA42
4J039EA44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた分散性を有し、所望とする着色力、鮮明性、透明性、アルカリに対する色相安定性と長期保存時の粘度安定性に優れた着色剤を提供すること。
【解決手段】ナフトール系アゾ顔料である化合物(A)、特定のアゾ化合物(B)および特定の芳香族アミン化合物(D)を含む着色剤であって、化合物(A)100質量%に対して化合物(B)の含有率が0.001質量%以上0.5質量%以下であり、化合物(D)の含有率が0.01質量%以上0.1質量%以下である着色剤により解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物(A)、下記化学式(3)で表される化合物(B)および下記一般式(2)で表される化合物(D)を含む着色剤であって、化合物(A)100質量%に対して、化合物(B)の含有率が0.001質量%以上0.5質量%以下であり、化合物(D)の含有率が0.01質量%以上0.10質量%以下である、着色剤。
【化1】
【化2】
(一般式(1)および一般式(2)において、R1、R2、R3、R4およびR5ならびにR1’、R2’、R3’、R4’およびR5’は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ベンズアミド基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、下記一般式(101)で表される基、下記一般式(102)で表される基、または下記化学式(103))で表される基であり、R1、R2、R3、R4およびR5ならびにR1’、R2’、R3’、R4’およびR5’は、全て同時に水素原子となることはなく、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、下記一般式(104)で表される基、または下記一般式(105)で表される基であり、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、全て同時に水素原子となることはない。また、一般式(1)は、下記化学式(3)である場合を除く。)
【化3】
(一般式(101)において、R21、R22、R23、R24およびR25は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、または置換基を有してもよいアリール基であるか、R21、R22、R23、R24およびR25は、隣接する基が、-HN-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-C(=O)-、-CH=CH-CH=CH-または-C=N-CH=C-によって互いに結合して環を形成してもよい。)
【化4】
(一般式(102)において、R26、R27、R28、R29およびR30は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、または置換基を有してもよいアリール基であるか、R26、R27、R28、R29およびR30は、隣接する基が、-HN-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-C(=O)-、-CH=CH-CH=CH-または-C=N-CH=C-によって互いに結合して環を形成してもよい。)
【化5】
【化6】
(一般式(104)において、R31、R32、R33、R34およびR35は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、または置換基を有してもよいアリール基であるか、R31、R32、R33、R34およびR35は、隣接する基が、-HN-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-C(=O)-、-CH=CH-CH=CH-または-C=N-CH=C-によって互いに結合して環を形成してもよい。)
【化7】
(一般式(105)において、R36、R37、R38、R39およびR40は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、または置換基を有してもよいアリール基であるか、R36、R37、R38、R39およびR40は、隣接する基が、-HN-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-C(=O)-、-CH=CH-CH=CH-または-C=N-CH=C-によって互いに結合して環を形成してもよい。)
【化8】
【請求項2】
さらに、下記一般式(4)で表される化合物(C)を含み、化合物(A)100質量%に対して、化合物(C)の含有率が0.001質量%以上5.0質量%以下である、請求項1に記載の着色剤。
【化9】
(一般式(4)において、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、一般式(104)で表される基、または一般式(105)で表される基であり、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、全て同時に水素原子となることはない。)
【請求項3】
化合物(A)が、下記一般式(5)で表される化合物を含む、請求項1に記載の着色剤。
【化10】
(一般式(5)において、R6はカルバモイル基、または一般式(104)で表される基であり、一般式(104)において、R31、R32、R33、R34およびR35は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基であるか、R31、R32、R33、R34およびR35は、隣接する基が、-HN-C(=O)-NH-によって互いに結合してを形成してもよい。)
【請求項4】
化合物(A)が、C.I.Pigment Red 17、22、23、31、32、114、146、147、150、176、185、245、258、268および269、ならびにC.I.Pigment Violet 32および50からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の着色剤。
【請求項5】
請求項1~4いずれかに記載の着色剤と、樹脂とを含む着色組成物。
【請求項6】
さらに溶剤を含む、請求項5記載の着色組成物。
【請求項7】
請求項5記載の着色組成物の印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤、着色組成物および印刷物に関する。より詳細には、赤色から紫色の色相を呈する着色剤、着色組成物および印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色から紫色の色相を呈する着色剤として、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料が挙げられる。これら有機顔料は、プラスチック製品、トナー、塗料、印刷インキ等の様々な用途で使用されている。
上記有機顔料のなかでも、溶性アゾ顔料は、鮮明な色相と高い着色力を有し、かつ安価であるという利点がある。しかし、溶性アゾ顔料は、堅牢性の点で課題がある。さらに、一部の用途では、顔料のレーキ化に使用される金属イオンの存在が印刷諸特性に悪影響を及ぼすといった点でも課題がある。一方、キナクリドン顔料は、堅牢性及び鮮明性の点で他の顔料よりも優れた特性を有する。しかし、キナクリドン顔料は、着色力又は分散安定性が他の顔料に比べて大きく劣り、さらに高価であるという点で課題がある。
これに対し、不溶性アゾ顔料に分類されるナフトール系アゾ顔料は、製造コスト、着色力、及び堅牢性のバランスが良好であることから、各種用途での使用が検討されている。しかし、鮮明性及び分散性が不十分であること、さらに結晶安定性が低く、分散媒によっては顔料結晶が成長するといった点で改良が望まれている。
【0003】
例えば、デジタル印刷の分野では、ナフトール系アゾ顔料の改良に向けて様々な検討が行われている。例えば、特許文献1は、ナフトール系アゾ顔料に特定のアゾナフトエ酸成分を添加して、色調の調整、透明性および分散性を向上させる方法を開示している。
また、特許文献2は、ナフトール系アゾ顔料、結着樹脂、着色剤、及びワックス成分を含み、さらにβ-ナフトール誘導体と芳香族アミンとを特定比率で含有する、マゼンタトナーを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-248191号公報
【特許文献2】特開2003-149869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のナフトール系アゾ顔料は、分散性の点で十分に満足できるとは言えず、所望とする各種特性を満足することが困難であった。例えば、従来の顔料を使用して水性インクジェットインクやフレキソインキなどの着色組成物を製造した場合、着色組成物中での顔料の分散性が乏しく、所望とする着色力、鮮明性、透明性、アルカリに対する色相安定性を得ることが難しかった。さらに、長期保存時の粘度安定性の点でも改善が求められていた。そのため、優れた分散性を有し、着色組成物にした際に所望とする着色力、鮮明性、透明性、アルカリに対する色相安定性が得られ、長期保存時の粘度安定性に優れた着色剤が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の状況に鑑みて、本発明者らは、ナフトール系アゾ顔料をベースとした着色剤の分散性の改善について検討を行った。その結果、ナフトール系アゾ顔料に特定の化合物を含む着色剤とすることによって、各種特性を向上できること見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の実施形態を含む。本発明の実施形態は以下に限定されない。
【0007】
すなわち、本発明の第一の実施形態は、下記一般式(1)で表される化合物(A)、下記化学式(3)で表される化合物(B)および下記一般式(2)で表される化合物(D)を含む着色剤であって、化合物(A)100質量%に対して、化合物(B)の含有率が0.001質量%以上0.5質量%以下であり、化合物(D)の含有率が0.01質量%以上0.10質量%以下である、着色剤である。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
【0010】
(一般式(1)および一般式(2)において、R1、R2、R3、R4およびR5ならびにR1’、R2’、R3’、R4’およびR5’は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、ベンズアミド基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、下記一般式(101)で表される基、下記一般式(102)で表される基、または下記化学式(103))で表される基であり、R1、R2、R3、R4およびR5ならびにR1’、R2’、R3’、R4’およびR5’は、全て同時に水素原子となることはなく、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、下記一般式(104)で表される基、または下記一般式(105)で表される基であり、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、全て同時に水素原子となることはない。また、一般式(1)は、下記化学式(3)である場合を除く。)
【0011】
【化3】
【0012】
(一般式(101)において、R21、R22、R23、R24およびR25は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、または置換基を有してもよいアリール基であるか、R21、R22、R23、R24およびR25は、隣接する基が、-HN-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-C(=O)-、-CH=CH-CH=CH-または-C=N-CH=C-によって互いに結合して環を形成してもよい。)
【0013】
【化4】
【0014】
(一般式(102)において、R26、R27、R28、R29およびR30は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、または置換基を有してもよいアリール基であるか、R26、R27、R28、R29およびR30は、隣接する基が、-HN-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-C(=O)-、-CH=CH-CH=CH-または-C=N-CH=C-によって互いに結合して環を形成してもよい。)
【0015】
【化5】
【0016】
【化6】
【0017】
(一般式(104)において、R31、R32、R33、R34およびR35は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、または置換基を有してもよいアリール基であるか、R31、R32、R33、R34およびR35は、隣接する基が、-HN-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-C(=O)-、-CH=CH-CH=CH-または-C=N-CH=C-によって互いに結合して環を形成してもよい。)
【0018】
【化7】
【0019】
(一般式(105)において、R36、R37、R38、R39およびR40は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、または置換基を有してもよいアリール基であるか、R36、R37、R38、R39およびR40は、隣接する基が、-HN-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-C(=O)-、-CH=CH-CH=CH-または-C=N-CH=C-によって互いに結合して環を形成してもよい。)
【0020】
【化8】
【0021】
また、本発明の第二の実施形態は、さらに、下記一般式(4)で表される化合物(C)を含み、化合物(A)100質量%に対して、化合物(C)の含有率が0.001質量%以上5.0質量%以下である、上記着色剤である。
【0022】
【化9】
【0023】
(一般式(4)において、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、一般式(104)で表される基、または一般式(105)で表される基であり、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、全て同時に水素原子となることはない。)
【0024】
また、本発明の第三の実施形態は、化合物(A)が、下記一般式(5)で表される化合物を含む、上記着色剤である。
【0025】
【化10】
【0026】
(一般式(5)において、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、一般式(104)で表される基、または一般式(105)で表される基であり、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、全て同時に水素原子となることはない。)
【0027】
また、本発明の第四の実施形態は、化合物(A)が、C.I.Pigment Red 17、22、23、31、32、114、146、147、150、176、185、245、258、268および269、ならびにC.I.Pigment Violet 32および50からなる群より選ばれる1種以上を含む、上記着色剤である。
【0028】
また、本発明の第五の実施形態は、上記着色剤と、樹脂とを含む着色組成物である。
【0029】
また、本発明の第六の実施形態は、さらに溶剤を含む、上記着色組成物である。
【0030】
また、本発明の第七の実施形態は、上記着色組成物の印刷物である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、粘度安定性、分散性に優れ、着色力、鮮明性、透明性、アルカリに対する色相安定性を向上できる着色剤を提供することができる。また、当該着色剤を使用し、様々な用途に適用できる着色組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。但し、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲において種々変更してもよく、様々な実施形態が含まれる。
【0033】
本明細書で使用する用語について説明する。「C.I.」は、カラーインデックス番号を表す。
「着色剤分散体」とは、着色剤と樹脂と分散媒とを含む液体であり、単に「分散体」と記載することもある。「塗工物」とは、「印刷物」、「画像形成物」、「塗装物」と同義として取り扱うものとする。
「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」および「(メタ)アクリレート」とは、特に断りがない限り、それぞれ、「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」および「アクリレートまたはメタクリレート」を表すものとする。
【0034】
一般式に用いられる記号「R」および「R'」の添字は整数を表し、「~」を用いて特定される添字の整数は、「~」の前後に記載される添字の数字を含み、この間の整数を含むものとする。例えば、「R1~R5」とは「R1、R2、R3、R4およびR5」を、「R1’~R5’」とは「R1’、R2’、R3’、R4’およびR5’」を、「R6~R11」とは「R6、R7、R8、R9、R10およびR11」を、「R21~R25」とは「R21、R22、R23、R24およびR25」を、「R26~R30」とは「R26、R27、R28、R29およびR30」を、「R31~R35」とは「R31、R32、R33、R34およびR35」を、「R36~R40」とは「R36、R37、R38、R39およびR40」を意味するものとする。
また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
【0035】
<着色剤>
まず、本発明の一実施形態である着色剤について説明する。本発明における着色剤は、一般式(1)で表される化合物(A)、化学式(3)で表される化合物(B)および一般式(2)で表される化合物(D)を含む着色剤であって、化合物(A)100質量%に対して、化合物(B)の含有率が0.001質量%以上0.5質量%以下であり、化合物(D)の含有率が0.01質量%以上0.1質量%以下であるという特徴をもつ。以下、化合物(A)、化合物(B)および化合物(D)について説明する。
【0036】
<化合物(A)>
化合物(A)は、一般式(1)で表されるアゾ化合物である。
一般式(1)において、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。上記アルコキシ基は、炭素数1~8であってよく、直鎖構造、分岐構造、及び環構造のいずれでもよい。一実施形態において、アルコキシ基は、直鎖構造であることが好ましい。アルコキシ基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
【0037】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基等が挙げられる。上記アルキル基は、炭素数1~18であってよく、直鎖構造、分岐構造、及び環構造のいずれでもよい。一実施形態において、アルキル基は、直鎖構造であることが好ましい。アルキル基の炭素数は、1~12であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~4であることがさらに好ましい。
【0038】
ハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子であってよい。一実施形態において、塩素原子、又はフッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0039】
アルキルスルファモイル基における「アルキル」は、先に説明したアルキル基と同様であってよい。アルキルカルバモイル基における「アルキル」についても同様である。
特に限定するものではないが、一実施形態において、アルキルスルファモイル基、又はアルキルカルバモイル基におけるアルキルは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましい。
【0040】
一般式(101)において、アルコキシ基、アルキル基、およびハロゲン基の詳細は、それぞれ一般式(1)に関する説明で先に記載したとおりである。また、アルキルスルファモイル基、およびアルキルカルバモイル基におけるアルキルについても同様である。
【0041】
一般式(101)において「置換基を有してもよいアリール基」とは、芳香族化合物から水素原子を1つ除いた原子団を意味する。アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6~30であることが好ましく、6~18であることがより好ましく、6~10であることがさらに好ましい。
上記アリール基は、芳香環における1以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。上記置換基は、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、又はアルキルカルバモイル基であってよい。これら置換基の詳細は、それぞれ一般式(1)に関する説明で先に記載したとおりである。
【0042】
一般式(101)において「隣接する基が互いに結合して環を形成してもよい」とは、例えば、R21とR22、R22とR23、R23とR24、又はR24とR25といった隣接する基が共同して、環を形成してもよいことを意味する。形成される環は、4~6員環であることが好ましい。
形成される環構造は、より具体的には、R21~R25の基がそれぞれ保有している炭素原子と、メチレン鎖、エチレン鎖などのアルキレン鎖とから形成される炭化水素環構造であってよい。また、R21~R25の基がそれぞれ保有している炭素原子と、任意に酸素、硫黄、及び窒素から選択される1~3個のヘテロ原子を含有して形成される複素環構造であってもよい。さらに、互いに隣接する基が共同して、尿素結合(-HN-C(=O)-NH-)、イミド結合(-C(=O)-NH-C(=O)-)、共役ジエン結合(-CH=CH-CH=CH-、-C=N-CH=C-等)といった結合を形成することによって、環構造を形成してもよい。一実施形態において、R21~R25において、隣接する基が共同して環構造を形成する場合、尿素結合によって形成される環構造が好ましい。
【0043】
一般式(102)において、R26~R30として記載した各基の詳細は、先に一般式(101)に関する説明で記載したものと同様である。
【0044】
一般式(104)において、R31~R35として記載した各基の詳細は、先に一般式(101)に関する説明で記載したものと同様である。
【0045】
一般式(105)において、R36~R40として記載した各基の詳細は、先に一般式(101)に関する説明で記載したものと同様である。
【0046】
一般式(1)のR1~R11において、R1、R3、R4およびR6のうち2つ以上が、水素原子以外の基であることが好ましく、中でも、R1、R4およびR6の3つが、水素原子以外の置換基であることがより好ましい。R1は、アルコキシ基またはアルキル基であることが好ましく、R3は、水素原子、アルキルスルファモイル基または式(101)で表される基であることが好ましく、R4は、カルバモイル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、式(101)で表される基または式(103)で表される基であることが好ましく、R6は、カルバモイル基または式(104)で表される基であることが好ましい。
式(101)のR21~R25および式(103)のR26~R30において、R21~R30は、水素原子であることが好ましい。
式(104)のR31~R35において、R31~R35は、全て水素原子であるか、又は1~3つが、水素原子以外の基であることが好ましい。R31~R35は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基および塩素原子からなる群より選ばれる基か、隣接する基同士が尿素結合によって形成された環構造であることが好ましい。
【0047】
化合物(A)は、一般式(5)で表される構造の化合物であることが好ましい。一般式(5)において、R6~R11として記載した各基の詳細は、先に一般式(1)に関する説明で記載したものと同様である。
【0048】
一実施形態において、化合物(A)の平均一次粒子径は1000nm以下であることが好ましく、350nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。また10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましい。平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡にて倍率10,000倍で撮影した複数枚の写真より抽出した着色剤粒子の一次粒子50個について、長い方の直径の平均を計算することにより求めることができる。化合物(A)の平均一次粒子径が最適な範囲であることで、着色力、透明性が良好な着色剤を得ることができる。
【0049】
一実施形態において、化合物(A)は、ナフトール系アゾ顔料として公知の化合物であってもよく、市販品として入手することもできる。着色剤(A)は、C.I.Pigment Red 5、8、10、17、22、23、31、32、114、146、147、150、170、176、185、208、245、258、268、269、C.I.Pigment Violet 32、50等が挙げられる。化合物(A)は、C.I.Pigment Red 17、22、23、31、32、114、146、147、150、176、185、245、258、269であることが好ましく、C.I.Pigment Red 31、32、146、147、150、176、269であることがより好ましい。
【0050】
化合物(A)は、単独または2つ以上を併用できる。色調の調整の観点から2つ以上を併用することが好ましい。2種の着色剤の組合せの具体例として、C.I.Pigment Red269/Red150、Red150/Red31、Red146/Red147が挙げられる。
【0051】
<化合物(B)>
化合物(B)は、化学式(3)で表されるアゾ化合物である。
化合物(B)は、化合物(A)に対して、0.001質量%以上0.5質量%以下含まれる。好ましくは、0.005質量%以上0.3質量%以下含まれ、より好ましくは0.01質量%以上0.15質量%以下含まれる。化合物(B)の量が0.001質量%未満になると、塗膜の鮮明性、光沢、透明性、温度変動保管下における粘度安定性を得ることが困難となる。一方、0.5質量%を超えると、アルカリに対する色安定性、着色剤分散体やインキでの色相安定性を保持することが困難になる。
【0052】
化合物(B)を着色剤中に含有させる方法としては、化合物(A)の存在下で化合物(B)を製造する方法、化合物(A)と化合物(B)を別々に製造して混合する方法、化合物(A)と化合物(B)を同時に製造する方法、化合物(B)の存在下で化合物(A)を製造する方法等が挙げられ、いずれの方法も選択することができるが、透明性の高い着色剤を得るという観点で、化合物(A)と化合物(B)を同時に製造するか、化合物(B)の存在下で化合物(A)を製造する方法が好ましい。
【0053】
<化合物(D)>
化合物(D)は一般式(2)で表される芳香族アミン化合物である。
一般式(2)において、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、一般式(101)で表される基、一般式(102)で表される基、化学式(103)で表される基は、一般式(1)におけるこれらの基と同義である。
【0054】
一実施形態において、化合物(D)は、上記一般式(2)において、Rが以下となる化合物であることが好ましい。
1’~R5’のうち少なくとも2つは、アルコキシ基、アルキル基、ニトロ基、カルバモイル基、ベンズアミド基又はアルキルスルファモイル基、上記一般式(101)で表される基、および上記化学式(103)で表される基からなる群から選択される互いに異なる2つの基の組合せである。
【0055】
上記実施形態では、上記一般式(101)において、R21~R25が、それぞれ水素原子であることが好ましい。また、上記一般式(104)においてR31~R35が、それぞれ独立して、水素原子、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基若しくはニトロ基であるか、又は隣接する基が互いに結合して尿素結合を形成することが好ましい。
【0056】
一実施形態では、上記一般式(2)の上記R1’~R5’において、互いに異なる2つの基の組合せは、それぞれ独立して、アルキル基/ニトロ基、アルコキシ基/ニトロ基、アルコキシ基/上記一般式(101)で表される基、アルキル基/上記一般式(101)で表される基、アルコキシ基/アルキルスルファモイル基、アルコキシ基/カルバモイル基、アルキル基/カルバモイル基、アルキル基/アルキルスルファモイル基、又はアルコキシ基/上記化学式(103)で表される基であることが好ましい。
【0057】
一実施形態において、R1’~R5’は、化合物(A)のR1~R5と対応して同じであることが好ましい。すなわち、例えば、R1とR1’は同じ基であることが好ましく、それぞれの対応において互いに同じであることがより好ましい。
【0058】
化合物(D)は、化合物(A)に対して、0.01質量%以上0.1質量%以下含まれる。好ましくは、0.01質量%以上0.06質量%以下含まれ、より好ましくは0.015質量%以上0.04質量%以下含まれる。化合物(D)の量が0.01質量%未満になると、温度変化保管下における粘度安定性に乏しくなる。一方、0.1質量%を超えると増粘等の不具合を引き起こす場合がある。
【0059】
発明者らの検討によれば、化合物(D)の芳香環部分が化合物(A)の表面に吸着し、化合物(A)の粒子成長の抑制に効果があると推測される。また、アミノ基が分散剤、分散樹脂等の酸性基と相互作用すると考えられ、この特性により着色剤分散体の分散状態が安定化されることで温度変化保管下における粘度安定性が向上するものと推測される。
【0060】
化合物(D)を着色剤中に含有させる方法としては、ジアゾニウム塩を含む溶液の製造時に余剰の化合物(D)を加えて残存させる方法、カップラー成分を含む溶液に化合物(D)を添加する方法、化合物(A)の製造後に化合物(D)を添加する方法等が挙げられ、いずれの方法も選択することができる。含有量を確実に制御し、透明性の高い着色剤を得るという観点でジアゾニウム塩を含む溶液の製造時に添加する方法か、カップラー成分を含む溶液に化合物(D)を添加する方法が好ましい。
【0061】
<化合物(C)>
化合物(C)は一般式(4)で表されるナフトール化合物である。
一般式(4)において、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、一般式(104)で表される基、一般式(105)で表される基は、一般式(1)におけるこれらの基と同義である。
6は、カルバモイル基または式(104)で表される基であることが好ましい。
式(104)のR31~R35において、R31~R35は、全て水素原子であるか、又は1~3つが水素原子以外の基であることが好ましい。R31~R35は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基および塩素原子からなる群より選ばれる基か、隣接する基が、尿素結合によって形成された環構造をとることが好ましい。
【0062】
化合物(C)は化合物(A)に対して、0.001質量%以上5.0質量%以下含まれることが好ましい。より好ましくは、0.04質量%以上1.3質量%以下含まれ、さらに好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下含まれる。化合物(C)の量が好ましい範囲にある場合、アルカリに対する色相安定性効果を得ることができる。
【0063】
本発明の着色剤が化合物(C)を含む場合、化合物(B)と化合物(C)の含有量に関して、モル量で化合物(B)よりも化合物(C)を多く含むことが好ましい。発明者らの検討によれば、化合物(C)は化合物(B)よりもアルカリと優先的に反応する傾向があると考えられ、この特性によって塗膜または着色剤分散体中でのアルカリによる変色がさらに抑制されるものと推測される。
【0064】
化合物(C)を該着色剤中に残存させるためには、顔料の製造工程と精製工程の条件を適宜組み合わせコントロールする必要がある。また、化合物(C)は市販品を用いることができるが、必要に応じて有機溶剤に溶解・析出・濾過・洗浄することで精製したものを使用することもできる。有機溶剤としてはアルコール、ケトン、エーテル等の化合物(C)を溶解可能な有機溶媒を任意に使用することができる。
【0065】
<着色剤の製造方法>
化合物(A)の製造には、公知のアゾ顔料の合成方法を使用できる。具体的には、ベース成分である一般式(2)で表される化合物(D)(芳香族アミン)をジアゾ化したジアゾニウム塩と、カップラー成分である一般式(4)で表される化合物(C)とをカップリング反応させることで製造することができる。
【0066】
2種類以上のカップラー成分を含む溶液を調製し、ジアゾニウム塩を含む溶液とカップリング反応させることで2種以上の化合物(A)を含む着色剤を得ることができる。または、1つ目のカップラー成分のみを含む溶液、2つ目のカップラー成分のみを含む溶液をそれぞれ調製しておき、段階的にカップリング反応させても良い。また同様に、2種類以上のベース成分を用いたジアゾニウム塩を含む溶液を調製することでも2種以上の化合物(A)を含む着色剤を得ることができる。化合物(A)を複数含むことで、透明性、着色力、色相、耐溶剤性等をコントロールすることができるため好ましい。
【0067】
カップラー成分を含む溶液は、加熱した塩基性水溶液中に、カップラー成分を溶解させることで調製することができる。また、10℃~30℃程度で、水、水溶性有機溶剤、カップラー成分、塩基を混合して溶解しても良い。溶解温度は、溶剤や塩基の種類や量により異なるが、水溶性有機溶剤を含む場合は15~50℃程度が好ましい。水溶性有機溶剤を含まない場合は50~95℃が好ましい。
【0068】
塩基は、例えば、水に溶解し、カップラー成分を溶解させることができ、後述の酸水溶液またはジアゾニウム塩を含む溶液中の酸と中和した際に不溶の塩を作らない塩基が好ましい。塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。これにより、コスト、カップラー成分の溶解力、廃液処理等の面が良好になる。
【0069】
ジアゾニウム塩を含む溶液は、ベース成分をジアゾ化することで得られる。ジアゾ化の方法は公知の方法を使用できる。例えば、ベース成分を氷水にリスラリーした溶液に塩酸や硫酸を加えて溶かし、亜硝酸ナトリウムを加えることでジアゾ化を行うことができる。また、ジアゾニウム塩を含む溶液に水溶性有機溶剤を添加しても構わない。
【0070】
カップラー成分を含む溶液、及びジアゾニウム塩を含む溶液に使用可能な水溶性有機溶剤は、例えば、水と自由に混合できる範囲であればどのような水溶性有機溶剤を用いても構わないが、水溶性有機溶剤は、例えば、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の二価アルコール類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の一価アルコール類等が挙げられる。
【0071】
水溶性有機溶剤の添加量は、水溶性有機溶剤の種類によるが、カップラー成分を含む溶液、ジアゾニウム塩を含む溶液のいずれに添加する場合も、カップリング後のスラリー全体100質量%中、1~50質量%が好ましい。
【0072】
カップリング反応の方法は、いわゆる、逆カップリング、正カップリング、酸析正カップリング等が挙げられる。これらの中でも粒径制御及び反応収率の観点から、後述する逆カップリングが好ましい。
【0073】
逆カップリングの方法は、公知の方法を用いることができ、ジアゾニウム塩を含む溶液にカップラー成分を含む溶液を加える方法が挙げられる。カップリング時の温度は0~50℃が望ましく、ジアゾニウム塩の変質、分解の抑制と反応速度の観点から、特に10~30℃が望ましい。ジアゾニウム塩を含む溶液にはあらかじめ緩衝液を加えても良い。緩衝液の種類は、緩衝能を持つものであれば何を用いても構わないが、例えば酢酸-酢酸ナトリウム水溶液を用いるのが好ましい。緩衝液を加える場合はジアゾニウム塩を含む溶液のpHは3~6.5の範囲に調整することが望ましい。反応速度向上と分散性向上の観点から、必要に応じてカップリング反応後のスラリーを加熱することが好ましい。
【0074】
酸析正カップリングの方法は、公知の方法を用いることができ、カップラー成分を含む溶液を酸水溶液と反応させることで酸析カップラースラリーを得た後、得られた酸析カップラースラリーにジアゾニウム塩を含む溶液を加えてカップリング反応させる方法が挙げられる。酸析中の酸水溶液の温度は任意の温度を選ぶことができるが、0~30℃で行うことが好ましい。反応速度向上の観点から、酸析カップラースラリーは、ジアゾニウム塩を含む溶液を加える前に、必要に応じて加熱することが好ましい。ただし、温度が高くなりすぎるとジアゾニウム塩が、変質、分解し易くなるため、カップリング反応時の酸析カップラースラリーの温度は、50℃以下であることが好ましい。また、ジアゾニウム塩を含む溶液を加える前の酸析カップラースラリーのpHは、反応速度、反応率の観点から2~6.5の範囲であることが好ましい。pHの調整のために用いる酸は、水に溶解する酸であれば、どのような酸でも使用できるが、塩酸または酢酸のいずれか、または塩酸と酢酸を混合して用いることが好ましい。酸の添加方法は、あらかじめ酸析に用いる酸をカップラー成分を含む溶液の塩基の当量よりも過剰にしてもよく、ベースの溶解時にあらかじめ添加してもよく、ジアゾニウム塩を含む溶液に添加してもよく、酸析後のカップラースラリーに、後から必要な量を添加しても構わない。また、反応速度向上と分散性向上の観点から、必要に応じてカップリング後のスラリーを加熱することが好ましい。加熱温度は50~90℃が好ましく、加熱時は必要に応じ酸や塩基を加えても構わない。
【0075】
本発明の着色剤を製造する際、必要に応じて種々の添加剤を使用できる。添加剤としては、例えば、界面活性剤、樹脂等が挙げられる。添加剤はあらかじめカップラー成分を含む溶液、ジアゾニウム塩を含む溶液または酸析用の酸液に加えて使用してもよく、カップリング反応後のスラリー中に加えて使用してもよく、カップリング反応後の顔料を濾別及び洗浄した顔料プレスケーキを再度スラリー状とした中に加えてもよい。カップラー成分を含む溶液に加える場合はカップラーを溶解する前または溶解した後に加えてもよく、また酸析を行った後に加えても構わない。
【0076】
界面活性剤は、例えば、アニオン性、ノニオン性または両性の界面活性剤が挙げられる。カップラー成分を含む溶液に界面活性剤を加える場合は、アニオン性または両性界面活性剤が好ましい。カップリング後のスラリーに添加する場合は、ノニオン性界面活性剤も好ましい。酸析用の酸液または酸析カップラースラリーに界面活性剤を添加する場合は、ノニオン性界面活性剤も好ましい。
【0077】
界面活性剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。界面活性剤の使用量は、着色剤100質量%中、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0078】
樹脂は、例えば、ロジン酸、ロジン酸誘導体、(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、(無水)マレイン酸共重合体及びこれらの塩等が挙げられる。樹脂は、単独または2種類以上を併用して使用できる。樹脂の使用量は、着色剤全体に対して、0.1質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0079】
化合物(B)の製造には、公知のアゾ顔料の合成方法を使用できる。ベース成分として3-アミノ-4-メトキシベンズアニリドを、カップラー成分として3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を用いる以外は、上記化合物(A)の製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0080】
化合物(B)存在下で化合物(A)を製造する場合、カップラー成分を含む溶液中に化合物(B)を添加することでより透明性の高い着色剤を得ることができ好ましい。
【0081】
<着色組成物>
本発明の一実施形態は、上記実施形態の着色剤と、樹脂とを含む着色組成物に関する。一実施形態において、着色組成物の用途として、トナー、塗料、印刷インキなどが挙げられる。印刷インキとしては、インクジェットインキ、グラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキなどが挙げられる。また、塗料、印刷インキは、それぞれ水性、油性、活性エネルギー線硬化性が挙げられる。これらの用途について以下に説明する。
【0082】
(トナー)
一実施形態において、着色組成物は、トナーの用途で好適に使用できる。トナー用着色組成物は、上記着色剤と、樹脂として結着樹脂とを含む。
【0083】
トナーは、乾式トナー、又は湿式トナーのいずれでもよい。その他の当技術分野で公知の方法に従って、トナー用着色組成物を使用してトナーを製造することもできる。
【0084】
トナー用着色組成物を構成する結着樹脂は、特に限定されないが、例えば、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0085】
一実施形態において、結着樹脂は、ポリエステル樹脂、又はスチレン系共重合体を含むことが好ましく、少なくともポリエステル樹脂を含むことが好ましい。本実施形態の着色剤は、上記分散媒体(結着樹脂)のなかでも、ポリエステル樹脂に対する適性が特に優れている。そのため、一実施形態において、トナー用着色組成物は、着色剤と、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂を含有することが好ましい。このようなトナー用着色組成物において、着色剤は、ポリエステル樹脂含む結着樹脂中に、均一かつ微細に分散されるため、高品質のトナーを提供できる。
【0086】
<塗料>
一実施形態において、着色組成物は、塗料の用途で好適に使用できる。塗料用着色組成物は、着色剤、樹脂、および溶剤を含有する着色剤分散体を使用して調製されることが好ましい。上記樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、ガラス転移温度が、10℃以上の樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂の種類は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂は、硬化剤と反応可能な官能基を有することが好ましい。上記官能基は、例えば、カルボキシル基、水酸基等が挙げられる。硬化剤は、例えば、イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤、アジリジン硬化剤、アミン硬化剤等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が30℃以上の樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、例えば、ニトロセルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂は併用できる。
【0087】
上記溶剤の中で、非水溶性溶剤は、例えば、トルエン、キシレン、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルイソブチルケトン、及び脂肪族炭化水素等であってよい。上記溶剤において水溶性溶剤は、例えば、水、一価アルコール、二価アルコールが挙げられる。水溶性溶剤は、例えば、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等の二価アルコール、およびグリセリン等の二価以上の多価アルコールが挙げられる。また、多価アルコールから誘導された水希釈性モノエーテルも挙げられる。その具体例は、メトキシプロパノール又はメトキシブタノールが挙げられる。また、例えば、ブチルグリコール又はブチルジグリコールなどの水希釈性グリコールエーテルも挙げられる。なお、塗料は、溶剤が水を含む場合、水性塗料という。
【0088】
一実施形態において、塗料は、さらに光輝材を含有してもよい。光輝材は、平均厚み0.5~10μm、および平均粒子径5~50μmの粒子であってよい。光輝材の具体例として、金属フレーク、マイカ、被覆ガラスフレークが挙げられる。金属フレークは、例えば、アルミフレーク、金粉等が挙げられる。マイカは、例えば、通常のマイカ、被覆マイカ等が挙げられる。被覆ガラスフレークは、例えば、酸化チタン等の金属酸化物で被覆されたガラスフレーク等が挙げられる。
【0089】
光輝材の含有量は、塗料100質量%中、0.1~10質量%が好ましい。また、その他、当技術分野において通常使用されるその他の着色顔料、及び種々の添加剤を必要に応じて配合してもよい。塗料の製造方法、また塗装方法、及び乾燥方法は特に限定されず、当技術分野で周知の方法を使用できる。
【0090】
塗料は、さらに公知の添加剤を含有できる。塗料の用途は、例えば、金属用塗料、プラスチック用塗料等が挙げられる。
【0091】
<印刷インキ>
一実施形態において、着色組成物は、印刷インキの用途で好適に使用できる。印刷インキ用着色組成物は、着色剤、樹脂、および溶剤を含有する着色剤分散体を使用して調製されることが好ましい。印刷インキは、例えば、オフセット印刷用インキ、フレキソ印刷用インキ、グラビア印刷用インキ、インクジェットインキ、カラーフィルタ用インキ等が挙げられる。なお、上記の通り、溶剤が水を含む場合は水性印刷インキという。
【0092】
上記実施形態の印刷インキにおいて樹脂は、例えば、ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ポリウレタン、ニトロセルロース、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、石油樹脂等が挙げられる。
【0093】
上記溶剤において非水溶性溶剤は、例えば、トルエン、キシレン、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルアルコール、脂肪族炭化水素等が挙げられる。
【0094】
溶剤のうち水溶性溶剤は、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンが挙げられる。また、多価アルコールから誘導された水希釈性モノエーテルも挙げられる。例えば、メトキシプロパノール又はメトキシブタノールが挙げられる。また、ブチルグリコール又はブチルジグリコールなどの水希釈性グリコールエーテルも挙げられる。
【0095】
印刷インキは、さらに光輝材を含有できる。光輝材の種類、および添加量は、先に塗料の説明として例示したとおりであってよい。
【0096】
印刷インキは、当技術分野において通常使用されるその他の着色顔料、及び種々の添加剤を必要に応じて配合してもよい。印刷インキの製造方法、また塗布方法、及び乾燥方法は特に限定されず、当技術分野で周知の方法を使用できる。
【0097】
<インクジェットインク>
一実施形態において、着色組成物は、インクジェット(IJ)インキの用途で好適に使用できる。インクジェット(IJ)インキは、着色剤、樹脂、および溶剤を含有することが好ましい。IJインキ用着色組成物は、着色剤、樹脂、および溶剤を含有する着色剤分散体を使用して調製されることが好ましい。IJインクは、溶剤の有無、およびその種類によって、(溶剤系)IJインク、水性IJインク、および硬化性IJインクに大別できる。また、活性エネルギー線硬化性IJインクは、光硬化性IJインクおよび電子線硬化性IJインクに大別できる。本明細書では、一例として、水性IJインクについて説明する。
【0098】
水性IJインクの全質量を100質量%として、着色剤の含有量は、0.5~30質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましい。
【0099】
水性IJインクで使用する樹脂は、被印刷物(基材)に対するインキの定着性を得るために重要である。
【0100】
樹脂の種類は、例えば、アクリル系樹脂、オレフィン-マレイン酸系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。また、樹脂の形態は、水溶性樹脂、エマルション粒子等が挙げられる。これらの中でも、エマルション粒子が好ましい。エマルション粒子は、例えば、単一組成の粒子、またはコアシェル型粒子等であってよく、任意に選択して使用できる。エマルション粒子を使用すると水性インクジェットインクの低粘度化が容易であり、耐水性に優れた記録物が容易に得られる。
【0101】
インクジェットインクの不揮発分100質量%において、樹脂の含有量は、2~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましい。適度に含有すると吐出安定性が向上し、定着性も向上する。
【0102】
溶剤は、非水溶性溶剤、水、水溶性溶剤が挙げられる。水溶性溶剤は、グリコールエーテル類、ジオール類が挙げられる、これらの溶剤は、基材への浸透が非常に速く、コート紙、アート紙、塩化ビニルシート、フィルム、布帛といった低吸液性や非吸液性の基材に対しても、浸透が速い。そのため、印刷時の乾燥が速く、正確な印字を実現することができる。また、沸点が高いため、湿潤剤としても作用する。
【0103】
水溶性溶剤は、水性インクジェットインクのプリンターヘッドにおけるノズル部分での乾燥、固化を防止し、インキの吐出安定性を得るために重要である。水溶性溶剤は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ケトンアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1,2-ヘキサンジオール、N-メチル-2-ピロリドン、置換ピロリドン、2,4,6-ヘキサントリオール、テトラフルフリルアルコール、4-メトキシ-4メチルペンタノン等が挙げられる。
【0104】
水を含む水溶性溶剤の含有量は、インクジェットインク100質量%中、15~50質量%が好ましい。
【0105】
インクジェットインクは、さらに添加剤を含有できる。添加剤は、例えば、乾燥促進剤、浸透剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、消泡剤、湿潤剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0106】
一実施形態において、上記インクジェットインクは、特にマゼンタ色として好適に用いることができる。マゼンダ以外の他色と組合せてインクセットを構成してもよい。例えば、組合せて使用できる他色の例として、シアン色、イエロー色、ブラック色、ホワイト色、レッド色、グリーン色、ブルー色、オレンジ色、ピンク色、ゴールド色、シルバー色、ブロンズ色などを使用できる。
インクセットは、例えば、上記実施形態のインクジェットインクを用いたマゼンタ色に、シアン色、イエロー色、ブラック色を加えた4色インクセットであってよい。他の実施形態において、さらにオレンジ色、レッド色、グリーン色などの特色を加えた5色以上のインクセットとして好適に使用できる。各インクの顔料濃度、粘度、動的粘弾性、表面張力、塗工順番、揮発分の蒸発速度などは設計事項であり、求める特性に応じて適宜調整することができる。
【0107】
本発明のインクジェットインクは、従来公知の種々の基材へ塗工できる。基材は、例えば、普通紙、布帛、ニットなどの高吸水性基材、アート紙、コート紙、塩化ビニル、木材、コンクリート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの低吸水性基材、金属(アルミ、ステンレス等)などの非吸水性基材が挙げられる。
【0108】
<活性エネルギー線硬化性インキ>
一実施形態において、着色組成物は、活性エネルギー線硬化性インキの用途で好適に使用できる。活性エネルギー線硬化性インキは、着色剤、重合性化合物を含有する。活性エネルギー線硬化性インキは、紫外線などの光または電子線等により硬化するインキであり、例えば活性エネルギー線硬化性オフセットインキ、活性エネルギー線硬化性フレキソインキ、活性エネルギー線硬化性インクジェットインキ等が挙げられる。
【0109】
重合性化合物とは、分子内に重合性基を1つ以上有する化合物である。重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基などのエチレン性不飽和結合基、エポキシ基等のオキシラン環を有する基、オキセタン環を有する基等が挙げられる。また、重合性化合物の形態として、モノマー及びオリゴマーを挙げることができる。
【0110】
(モノマー)
モノマーは、分子内に(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基などの重合性基を有することが好ましい。モノマーは、硬化性の点で、(メタ)アクリロイル基及びビニル基の何れかを有するモノマーを含むことが好ましく、分子内に2つ以上6つ以下の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含むことがより好ましく、分子内に3つ以上6つ以下の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含むことがさらにより好ましい。
【0111】
(オリゴマー)
オリゴマーは、例えば、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリルエステルオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。オリゴマーは、エチレン性不飽和結合を2~16個程度を含むことが好ましい。なかでも、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、(メタ)アクリロイル基が6~12個であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましい。
【0112】
オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、400~10,000が好ましく、500~5,000がより好ましく、800~4,000がより好ましく、1,000~2,000がより好ましい。ここで、「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC)によりポリスチレン換算分子量として求めることができる。
【0113】
重合性化合物は、インキを作製することが可能であれば任意の含有量でインキ中に使用することができる。例えば、インキ組成物全量に対して10~60重量%の範囲で使用することが好ましく十分な乾燥性が得られる。
【0114】
(光重合開始剤)活性エネルギー線硬化性インキ組成物が、光硬化性インキである場合、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤は、一般的な光開裂型開始剤、水素引き抜き型開始剤を使用できる。光開裂型開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド化合物、アセトフェノン化合物等が挙げられる。水素引き抜き型開始剤は、ベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物等が挙げられる。
【0115】
光重合開始剤を使用する場合は、目的の乾燥性を得ることができれば任意の含有量で印刷インキ中に使用することが可能である。例えば、インキ全量に対して3~20重量%の範囲が一般的である。光重合開始剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0116】
活性エネルギー線硬化性インキ組成物が光重合開始剤を含む場合、触媒を配合できる。触媒は、第三級アミン化合物が好ましい。第三級アミン化合物は、単独または2種類以上を併用できる。
【0117】
第三級アミン化合物は、目的の光重合開始剤の触媒効果が得られれば任意の含有量で印刷インキ中に使用することが可能である。例えば、インキ全量に対して0.3~5重量%の範囲が一般的である。
【0118】
(添加剤)
活性エネルギー線硬化性インキ組成物は、さらに添加剤を配合できる。添加剤は、ワックス、重合禁止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【実施例0119】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0120】
実施例中の略号は、以下を意味する。
<カップラー>
ナフトールAS:3-ヒドロキシ-2-ナフトアニリド
ナフトールAS-BI:5-(3-ヒドロキシ-2-ナフトイルアミノ)ベンゾイミダゾロン
ナフトールAS-BS:3-ヒドロキシ-3’-ニトロ-2-ナフトアニリド
ナフトールAS-CA:N-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2-ナフトアミド
ナフトールAS-D:3-ヒドロキシ-2’-メチル-2-ナフトアニリド
ナフトールAS-KB:5’-クロロ-3-ヒドロキシ-2’-メチル-2-ナフトアニリド
ナフトールAS-LC:4’-クロロ-3-ヒドロキシ-2’,5’-ジメトキシ-2-ナフトアニリド
BONアミド:3-ヒドロキシ-2-ナフトアミド
BON酸:3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸
【0121】
<ベース>
M-20:3-アミノ-4-メトキシベンズアミド
M-40:3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド
M-60:3-アミノ-4-メチルベンズアミド
R185ベース:4-アミノ-5-メトキシ-N,2-ジメチルベンゼンスルホンアミド
V32ベース:4-アミノ-2,5-ジメトキシ-N-メチルベンゼンスルホンアミド
アゾイックDC31:4-ベンジルスルホニル-2-アミノメトキシベンゼン
ファーストスカーレットG:2-メチル-5-ニトロアニリン
ファーストスカーレットRC:2-メトキシ-5-ニトロアニリン
ファーストバイオレットB:4-ベンゾイルアミノ-2-メトキシ-5-メチルアニリン
【0122】
<化合物A>
C.I.Pigment Red 269:N-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-4-[2-メトキシ-5-(フェニルカルバモイル)フェニルアゾ]-2-ナフトアミド
C.I.Pigment Red 150:2-ナフタレンカルボキシアミド,3-ヒドロキシ-4-((2-メトキシ-5-((フェニルアミノ)カルボニル)フェニル)アゾ)-
C.I.Pigment Red 31:4-((5-(アニリノ)カルボニル-2-メトキシフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-(3-ニトロフェニル)ナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Red 17:2-ナフタレンカルボキシアミド,3-ヒドロキシ-4-((2-メチル-5-ニトロフェニル)アゾ)-N-(2-メチルフェニル)-
C.I.Pigment Red 22:2-ナフタレンカルボキシアミド,3-ヒドロキシ-4-((2-メチル-5-ニトロフェニル)アゾ)-N-フェニル-
C.I.Pigment Red 23:1-(2-メトキシ-5-ニトロフェニルアゾ)-2-ヒドロキシ-3-(3-ニトロフェニルカルバモイル)ナフタレン
【0123】
C.I.Pigment Red 32:4-((5-(アニリノ)カルボニル-2-メトキシフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-フェニルナフタレン-2-カルボキシアミド C.I.Pigment Red 114:1-(2-メチル-5-ニトロフェニルアゾ)-2-ヒドロキシ-3-(3-ニトロフェニルカルバモイル)ナフタレン
C.I.Pigment Red 146:N-(4-クロロ-2,5-ジメトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-4-((2-メトキシ-5-((フェニルアミノ)カルボニル)フェニル)アゾ)ナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Red 147:3-ヒドロキシ-4-((2-メトキシ-5-((フェニルアミノ)カルボニル)フェニル)アゾ)-N-(5-クロロ-2-メチルフェニル)-2-ナフタレンカルボキシアミド
C.I.Pigment Red 176:N-(2,3-ジヒドロ-2-オキソ-1H-ベンズイミダゾール-5-イル)-3-ヒドロキシ-4-((2-メトキシ-5-((フェニルアミノ)カルボニル)フェニル)アゾ)ナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Red 185:N-(2,3-ジヒドロ-2-オキソ-1H-ベンズイミダゾール-5-イル)-2-ヒドロキシ-4-((2-メトキシ-5-メチル-4-((メチルアミノ)スルフォニル)フェニル)アゾ)ナフタレン-2-カルボキシアミド
【0124】
C.I.Pigment Red 245:4-((5-カルバモイル-2-メトキシフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-フェニルナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Red 258:4-((5-ベンジルスルホニル-2-メトキシフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-フェニルナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Red 268:
4-((5-カルバモイル-2-メチルフェニル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-フェニルナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Viloet 32:N-(2,3-ジヒドロ-2-オキソ-1H-ベンズイミダゾール-5-イル)-2-ヒドロキシ-4-((2,5-ジメトキシ-4-((メチルアミノ)スルフォニル)フェニル)アゾ)ナフタレン-2-カルボキシアミド
C.I.Pigment Viloet 50:4-((4-(アニリノ)カルボニル-2-メトキシフェニル-3-メチル)アゾ)-3-ヒドロキシ-N-フェニルナフタレン-2-カルボキシアミド
【0125】
<着色剤の製造>
(製造例1)化合物(B)の製造
ベース成分としてM-40(3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド)24.2部を水294質量部に添加、攪拌して懸濁液を調製し、さらに氷137部を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%塩酸を31.6部添加し、30分間攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム7.1部を水14部に加えて調製した水溶液を添加して1時間攪拌することによりジアゾ化を行った。反応混合物にスルファミン酸2部を加え、余剰の亜硝酸を消失させた。これに25%水酸化ナトリウム水溶液36.5部、氷36.5部、80%酢酸37.7部からなる緩衝液を加え、10℃に調整し、ジアゾニウム塩を含む溶液とした。
【0126】
一方、水145.8部と40%水酸化ナトリウム水溶液20.4部の混合物を50℃に加熱した中にカップラー成分としてBON酸(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)19.2部を加えて溶かした。これに氷27.9部を加えて25℃まで冷却し、カップラー溶液とした。この溶液を、ジアゾニウム塩を含む溶液に20分間掛けて加え、カップリング反応を行った。
【0127】
1時間撹拌後スラリーを30℃まで加熱し、さらに30分間撹拌した。このスラリーをさらに50℃まで加熱し30分間撹拌した後、濾過、水洗することによりプレスケーキを得た。このプレスケーキを、90℃、18時間の条件下で乾燥した後、粉砕して、化合物(B)41.4部を得た。
【0128】
(実施例1)着色剤1の製造
ベース成分としてM-40(3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド)241.1部を水3571部に添加、攪拌して懸濁液を調製し、さらに氷1487部を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%塩酸を394.9部添加し、30分間攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム70.9部を水106.4部に加えて調製した水溶液を添加して1時間攪拌することによりジアゾ化を行った。反応混合物にスルファミン酸を加え、余剰の亜硝酸を消失させた。スルファミン酸はヨウ化カリウム紙で遊離の亜硝酸が確認されなくなるまで添加した。これに酢酸ナトリウム206.1部、80%酢酸22.8部を加えて、ジアゾニウム塩を含む溶液とした。
【0129】
一方、メタノール1638.8部、40%水酸化ナトリウム水溶液199.0部、および水62部からなる混合物を15~25℃に調整した。その中にカップラー成分としてナフトールAS-CA327.8部を加えて溶かした(これを「カップラー溶液」と呼称する)。さらに化合物(B)0.6部、化合物(D)としてM-40(3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド)0.08部を加え、カップラー溶液とした。この溶液を、25℃に調整したジアゾニウム塩を含む溶液に20分掛間かけて加え、カップリング反応を行った。
【0130】
カップリング反応にて得られたスラリーを20~30℃で1時間撹拌後、70℃になるまで加熱し、1時間撹拌した。この時pHは4.5であった。このスラリーに40%水酸化ナトリウム水溶液を加えて70℃でさらに15分間撹拌した。このときのpHは11.0であった。このスラリーを50℃以下に冷却した後、濾過、水洗することにより、着色剤含むプレスケーキを得た。このプレスケーキを80℃、18時間の条件下で乾燥した後、粉砕して、着色剤1 571.5部を得た。
【0131】
(実施例2~実施例17、実施例28)着色剤2~17、28の製造
ベース成分としてM-40 241.1部を表1の対応するベース種類とベース部に、カップラー成分としてナフトールAS-CA327.8部を表1の対応する第1カップラー種類と第1カップラー部に、化合物(B)0.6部、化合物(D)0.08部を表1の対応する部に変更した以外は実施例1と同様にして、着色剤2~17、28を得た。なお、化合物(D)は各実施例で使用したベース成分のベース種類と同じものを使用した。
【0132】
(実施例18)着色剤18の製造
実施例1と同様にして、ジアゾニウム塩を含む溶液を作製した。一方、メタノール1474.9部、40%水酸化ナトリウム水溶液179.1部、水55.8部の混合物を15~25℃に調整した。その中にカップラー成分としてナフトールAS-CA295.0部を加えて溶かし、さらに化合物(B)0.6部、化合物(D)として3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド0.08部を加え第1のカップラー溶液とした。別途、メタノール163.9部、40%水酸化ナトリウム水溶液19.9部、および水6.2部からなる混合物を15~25℃に調整した。その中にカップラー成分としてBONアミド18.7部を加えて溶かし、第2のカップラー溶液とした。第1のカップラー溶液を25℃に調整したジアゾニウム塩を含む溶液に18分間かけて加え、5分間撹拌した後に、さらに第2のカップラー溶液を2分間かけて加え、カップリング反応を行った。
【0133】
カップリング反応にて得られたスラリーを20~30℃で1時間撹拌後、70℃まで加熱し、1時間撹拌した。この時pHは4.4であった。このスラリーに40%水酸化ナトリウム水溶液を加えて70℃でさらに15分間撹拌した。このときのpHは11.2であった。このスラリーを50℃以下に冷却した後、濾過、水洗することにより、着色剤を含むプレスケーキを得た。このプレスケーキを80℃、18時間の条件下で乾燥した後、粉砕して、着色剤18 557.2部を得た。
【0134】
(実施例19~22)着色剤19~22の製造
カップラー成分としてナフトールAS-CA295.0部を表1の対応する第1カップラー種類と第1カップラー部に、BONアミド18.7部を表1の対応する第2カップラー種類と第2カップラー部に変更した以外は実施例18と同様にして、着色剤19~22を得た。なお、カップラー成分の添加量に合わせて、溶媒として用いたメタノール、40%水酸化ナトリウム水溶液、水の比率を適宜変更した。
【0135】
(実施例23~27)着色剤23~27の製造
実施例1と同様にしてジアゾニウム塩を含む溶液を作製した。
カップラー溶液として実施例1で使用したナフトールAS-CA327.8部の替わりに表1に示す第1カップラーおよび第2カップラーの種類と配合量(部)に変更し、これら二種類のカップラー成分を混合してカップラー溶液とした以外は実施例1と同様にして、着色剤23~27を得た。
【0136】
(実施例29)着色剤29の製造
ベース成分としてM-40 241.1部を242部に、化合物(D)0.08部を表1の対応する0.16部に変更した以外は実施例1と同様にして、着色剤を含むプレスケーキを得た。このプレスケーキと420部の水酸化ナトリウムを75%メタノール水溶液にリスラリーし、25℃で1時間撹拌後、濾過、水洗することにより、着色剤29を含むプレスケーキを得た。このプレスケーキを80℃、18時間の条件下で乾燥した後、粉砕して、着色剤29 572.8部を得た。なお、実施例29に関しては粉砕時に化合物(B)を0.3部添加して共粉砕した。
【0137】
(比較例1~15)着色剤101~115の製造
ベース成分としてM-40 241.1部を表1の対応するベース種類とベース部に、カップラー成分としてナフトールAS-CA327.8部を表1の対応する第1カップラー種類と第1カップラー部に、化合物(B)0.6部部、化合物(D)0.08部を表1の対応する部に変更した以外は実施例1と同様にして、着色剤101~115を得た。なお、化合物(D)は使用するベース成分と同じものを使用した。
【0138】
(比較例16)着色剤116の製造
ベース成分としてM-40 222.9部を水2940部に添加、攪拌して懸濁液を調製し、さらに氷1370部を加えて温度を5℃以下に調整した。その中に35%塩酸を316部添加し、30分間攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウム71部を水140部に加えて調整した水溶液を添加して1時間攪拌することによりジアゾ化を行った。反応混合物にスルファミン酸を加え、余剰の亜硝酸を消失させた。これに25%水酸化ナトリウム水溶液365部、氷365部、および80%酢酸377部からなる緩衝液を加え、10℃に調整し、ジアゾニウム塩を含む溶液とした。
【0139】
一方、水1458部と40%水酸化ナトリウム水溶液204部の混合物を90℃に加熱する中にカップラー成分としてナフトールAS-CA327.4部とBON酸0.2部を加えて溶かし、さらに化合物(D)0.04部を加えた。これに氷を加えて25℃まで冷却し、カップラー溶液とした。この溶液を、ジアゾニウム塩を含む溶液に20分間かけて加え、カップリング反応を行った。
【0140】
1時間撹拌後スラリーを70℃まで加熱し、さらに1時間撹拌した。さらに、濾過、水洗することにより、着色剤を含むプレスケーキを得た。このプレスケーキを、80℃、18時間の条件下で乾燥した後、粉砕して、着色剤116を554.8部得た。
【0141】
実施例1~29及び比較例1~16において、着色剤の製造に使用した原料を表1-1に纏めて示す。
【0142】
【表1-1】
【0143】
実施例1~29及び比較例1~16において、製造した各着色剤について、化合物(A)の具体的な置換基の一覧を以下に表1-2に纏めて示す。
【0144】
【表1-2】
【0145】
<各成分の定量分析:化合物(A)>
実施例1~29及び比較例1~16で製造した着色剤に含まれる化合物(A)について、以下に記載する方法に従い吸光光度法を用いて定量分析を行った。
(標準試料の調製)
着色剤0.75g、ジメチルスルホキシド30ml、0.3mmジルコニアビーズ75gを50mlガラス瓶に仕込み、ペイントシェーカー(Fast&Fluid社製SK450)にて振動数172rpmで2時間分散し、得られた分散液を遠心分離機Cectrifuge 5810(Eppendorf社製)にて回転数9500rpmで30分遠心分離した。遠心分離後の残渣にジメチルスルホキシド30ml、25%水酸化ナトリウム水溶液0.1gを加えてスターラーで15分撹拌し、濾過、水洗したものを80度で18時間乾燥し、粉砕して着色剤の標準試料を得た。
【0146】
(測定サンプルの調製)
25mlメスフラスコに着色剤40mgを精秤し、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.1gとジメチルスルホキシド(残量)にて定容し、良く振り混ぜて溶解させた。この溶液をジメチルスルホキシドで100体積倍に希釈し測定サンプルとした。
【0147】
(測定方法)
測定サンプルを光路長10mmの石英セルに入れて日立社製UH4150形分光光度計で吸光度を測定し、グラムあたり吸光係数(吸光度/質量濃度)を算出した。グラムあたり吸光係数は400-700nmの範囲にあるピーク(PigmentRed269の場合548nm)の吸光度より求めた。同様に標準試料についてもグラムあたり吸光係数を測定、算出し、着色剤のグラムあたり吸光係数÷着色剤の標準試料のグラムあたり吸光係数を化合物(A)の含有率とし、結果を表2に記載した。
【0148】
<各成分の定量分析:化合物(B)、(C)、(D)>
以下の手法を用い、化合物(B)、化合物(D)、化合物(C)の量を定量し、表2に記載した。なお、表中の化合物(B)、化合物(D)、化合物(C)の質量%は化合物(A)100質量%に対する量であり、化合物(C)に該当する成分が複数ある場合は、各成分の合計値を記載した。着色剤に含まれる化合物(B)、化合物(D)及び化合物(C)の含有量は高速液体クロマトグラフィーを用いて以下の方法で求めた。
【0149】
(抽出法)
着色剤0.75g、ジメチルスルホキシド30ml、0.3mmジルコニアビーズ75gを50mlガラス瓶に仕込み、ペイントシェーカー(Fast&Fluid社製SK450)にて振動数172rpmで2時間分散し、得られた分散液を遠心分離機Cectrifuge 5810(Eppendorf社製)にて回転数9500rpmで30分間遠心分離した。遠心分離後の上澄み液を0.2μmフィルターで濾過し、測定試料とした。
【0150】
(分析法)
測定試料中の化合物(B)、化合物(D)及び化合物(C)を下記の条件により液体クロマトグラフィーを用いて定量した。同様の定量分析を2回繰り返しその平均値を算出し、着色剤中の含有量に換算した。
装置:高速液体クロマトグラフィー Waters2695(Waters社製)
カラム:Symmetry C18 180mm×2.1mm 5μm(Waters社製)
温度:35℃
流速:0.3ml/分
測定試料の注入量:10μL
検出器:UV-vis(化合物(B):502nm、化合物(D):310nm、化合物(C):350nm)
溶離液:(A)1g/L酢酸アンモニウム水溶液、(B)アセトニトリル
【0151】
【表A】
【0152】
検量線の作成:対象となる着色剤または化合物を用い、同様に定量した結果より検量線を作成した。
【0153】
【表2】
【0154】
<着色剤の色相グループ分け>
本発明の着色剤はカップラー、ベースの構造とその組み合わせによって橙色に近い赤色から紫色に近いマゼンタ色まで広範な色相を呈する。しかし、紫色に近い色相の領域では着色力が高いが鮮明性が低いという傾向があり、橙色に近い色相の領域では着色力は低いが鮮明性が高いといった色相の領域に応じた着色力と鮮明性の傾向が認められる。したがって、これら異なる色相の領域に属する着色剤同士を同じ基準に基づいて着色力や鮮明性の優劣を評価することには無理がある。そこで、色相の領域に応じて4つの色相グループを設け、各色相グループの中で基準を設けて評価を行った。グループ分けの方法は以下の通りである。
【0155】
・インキの作製方法
着色剤0.5gとオフセットインキ用ワニス(タマノール361(荒川化学工業株式会社製:ロジン変性フェノール樹脂)50部に対し、アマニ油20部、5号ソルベント(日本石油株式会社:オフセットインキ用溶剤)30部を加え、200℃にて加熱溶解したもの)2.0gを150ポンドの荷重を掛けたフーバーマーラーで100×4回転して混練することで濃色インキを得た。この濃色インキに白インキ(上記オフセットインキ用ワニス5gと石原産業製酸化チタンCR-90 5gを同様にフーバーマーラーで混練したもの)を適量よく混合し、以下の2つの淡色インキA、Bを作製した。
淡色インキA:以下の方法で測色をした際にCIE(国際照明委員会)L**h表色系のL*(色相)が50以上55未満であるインキ
淡色インキB:同様に測色した際のL*が55以上60未満であるインキ
【0156】
・淡色インキの測色方法
淡色インキをルミラー#50T60(東レ製PETフィルム)に挟み、厚さ1mmとなるよう調整したものをSE7700(日本電色工業製色彩計、C/2光源、反射光モード)で2回測色し、平均値を記録した。
【0157】
・色相グループの振り分け
2つのインキの測色値からL*-h(色相)の関係を示す一次式を作成し、L*=55のときのhの値を求めた。このときのhの値が285以上343未満のものを色相グループ1、343以上351未満のものを色相グループ2、351以上360未満および0以上5未満のものを色相グループ3、5以上45未満のものを色相グループ4とした。本発明の着色剤は、橙~紫を呈するため上記色相グループのいずれかに分類することができる。
色相グループ振り分けの結果については各表に記載した。
【0158】
<水性塗料の製造と評価>
◆水性塗料の調製
(実施例A-1)水性塗料a-1の調製
以下に示す材料と、直径1.25mmジルコニアビーズ70gとを容量70mlのガラス製容器に入れて密栓し、レッドデビル社製ペイントシェーカーを用いて60分間にわたって分散させ、分散液を得た。
・着色剤1:3.15g
・ポリエステル変性アクリル酸重合体(Allnex社製、ADDITOLXW6528):5.25g
・湿潤剤(Allnex社製、ADDITOLXW6374):0.95g
・消泡剤(Allnex社製、ADDITOLXW6211):0.63g
・イオン交換水:21.52g
次いで、上記分散液からジルコニアビーズを除去して、着色剤分散体を得た。
【0159】
高速撹拌機を用いて、以下の材料を混合して撹拌し、水性塗料a-1を得た。
・着色剤分散体:1.4質量部
・アクリル樹脂(DIC社製、バーノックWD-304):13.6質量部
・メラミン樹脂(Allnex社製、サイメル325):3.4質量部
【0160】
(実施例A-2~A-29、比較例A-1~A-16)水性塗料a-2~a-29、a-101~a-116の調製
実施例A-1の着色剤1を表3に示すとおりに変更した以外は、実施例A-1と同様に行い、水性塗料a-2~a-29、a-101~a-116を得た。
【0161】
◆塗装フィルムの作製
得られた水性塗料を7milのアプリケーターを使用し、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗装を行った。塗装後、そのPETフィルムを25℃で18時間乾燥させた。その後、60℃で5分、140℃で20分乾燥させ塗装フィルムを得た。
【0162】
◆塗装フィルムの評価
色評価に関する項目(着色力、鮮明性)については顔料種によって色相が異なるため、上記方法に従って色相別に4つの色相グループごとに評価を行った。色相グループ1は比較例A-8(水性塗料a-108)を、色相グループ2は比較例A-2(水性塗料a-102)を、色相グループ3は比較例A-6(水性塗料a-106)を、色相グループ4は比較例A-14(水性塗料a-114)を評価の基準とした。グループ分けは表3に示し、各色相グループにおいて※を表記した行が色評価の評価基準とした比較例である。
【0163】
(着色力)
塗装フィルムを目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表3に示す。
(着色力の評価基準)
4:基準とした塗装フィルムよりも着色力が特に高い。(極めて良好)
3:基準とした塗装フィルムよりも着色力が高い(良好)
2:基準とした塗装フィルムと同等の着色力。(不良)
1:基準とした塗装フィルムよりも着色力が低い。(極めて不良)
【0164】
(鮮明性)
塗料を塗装したフィルムを目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表3に示す。
(鮮明性の評価基準)
4:基準とした塗装フィルムよりも鮮明性が特に高い。(極めて良好)
3:基準とした塗装フィルムよりも鮮明性が高い。(良好)
2:基準とした塗装フィルムと同等の鮮明性。(不良)
1:基準とした塗装フィルムよりも鮮明性が低い。(極めて不良)
【0165】
(色相安定性:アルカリ耐性)
塗料を塗装したフィルムに0.1%の水酸化ナトリウム水溶液をスポイトで1滴垂らし、5分後に紙製シートで吸い取った。水酸化ナトリウム水溶液を垂らした場所と周囲を目視で比較し、以下の4つの現象、(1)着色力の低下(白ぼけ)、(2)色相の黄味化、(3)鮮明性の低下、(4)紙製シートへの着色、を確認した。下記評価基準で「3」、「2」であれば、実用可能なレベルである。
(色相安定性の評価基準)
3:4つの現象のうち、1つ確認された、または確認されなかった。(極めて良好)
2:4つの現象のうち、2つ確認された。(良好)
1:4つの現象のうち、3つ以上確認された。(不良)
結果を表3に示す。
【0166】
【表3】
【0167】
<水性インクジェットインキの製造と評価>
◆水性インクジェットインキ(水性IJインキ)の調製
(実施例B-1)水性IJインキb-1の調製
・着色剤1:19.0質量部
・スチレン-アクリル酸共重合体(BASFジャパン社製、ジョンクリル61J):16.4g
・界面活性剤(花王社製、エマルゲン420):5.0g
・イオン交換水:59.6g
と、直径1.25mmジルコニアビーズ200gとを200mlのガラス製容器に入れて密栓し、レッドデビル社製ペイントシェーカーにて6時間分散した。次いで、上記分散液からジルコニアビーズを除去して、着色剤分散体を得た。
【0168】
次いで、上記着色剤分散体と以下の材料を混合し、ハイスピードミキサーを用いて30分間撹拌混合し、混合物を得た。この時混合物のpHが7.9~8.3の範囲内になるようにトリエタノールアミンの含有量を調整した。
・得られた着色剤分散体:12.5質量部
・スチレン-アクリル酸共重合体(BASFジャパン社製、ジョンクリル60):3.3質量部
・界面活性剤(花王社製、エマルゲン420):2.0質量部
・トリエタノールアミン:適量
・イオン交換水:残部(合計82.7質量部)
次いで、上記混合物に1,3-プロパンジオールおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルを適宜加えて、25℃における粘度を2.5mPa・s(25℃)、表面張力を40mN/mに調整した。次いで、孔径1.0μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、さらに孔径0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過して、水性IJインキb-1を得た。
【0169】
(実施例B-2~B-29、比較例B-1~B-16)水性IJインキb-2~b-29、b-101~b-116の調製
実施例B-1の着色剤1を表4に示す通りに変更した以外は、実施例B-1と同様に行い、水性IJインキb-2~b-29、b-101~b-116を得た。
【0170】
◆水性IJインキの評価
色評価に関する項目(着色力、鮮明性、透明性)については顔料種によって色相が異なるため、上記方法に従って色相別に4つの色相グループごとに評価を行った。色相グループ1は比較例B-8(水性IJインキb-108)を、色相グループ2は比較例B-2(水性IJインキb-102)を、色相グループ3は比較例B-6(水性IJインキb-106)を、色相グループ4は比較例B-14(水性IJインキb-114)を評価の基準とした。グループ分けは表4に示し、各色相グループにおいて※を表記した行が色評価の評価基準とした比較例である。
【0171】
(着色力)
調製した水性IJインキを、セイコーエプソン社製プリンターPX-105(ピエゾ型インクジェットプリンタ)のカートリッジに充填し、A4サイズ普通紙に印字を行った。印字物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表4に示す。
(着色力の評価基準)
4:基準とした印字物よりも着色力が特に高い。(極めて良好)
3:基準とした印字物よりも着色力が高い。(良好)
2:基準とした印字物と同等の着色力。(不良)
1:基準とした印字物よりも着色力が低い。(極めて不良)
【0172】
(鮮明性)
着色力の評価で使用した印字物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表4に示す。
(鮮明性の評価基準)
4:基準とした印字物よりも鮮明性が特に高い。(極めて良好)
3:基準とした印字物よりも鮮明性が高い。(良好)
2:基準とした印字物と同等の鮮明性。(不良)
1:基準とした印字物よりも鮮明性が低い。(極めて不良)
【0173】
(透明性)
調製した水性IJインキを、セイコーエプソン社製プリンターHG-5130のカートリッジに充填し、A4普通紙に張り付けたポリエチレンテレフタレートフィルムに印字を行った。印字物を黒画用紙の上に乗せて黒画用紙の透過具合を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表4に示す。
(透明性の評価基準)
4:基準とした印字物よりも透明性が特に高い。(極めて良好)
3:基準とした印字物よりも透明性が高い。(良好)
2:基準とした印字物と同等の透明性。(不良)
1:基準とした印字物よりも透明性が低い。(極めて不良)
【0174】
また、基材をA4サイズ普通紙からコート紙、ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)、アルミ箔に変更し、着色力評価を実施したところ、同様の結果が得られた。なお、基材が紙でない場合は、A4普通紙に基材を張り付けて使用した。
また、キヤノン社製MAXIFYMB5430(サーマル型インクジェットプリンタ)を用い、作製した水性IJインキを充填したタンクをマゼンタインクとして搭載し、着色力評価を実施したところ、同様の結果が得られた。
【0175】
(粘度安定性)
各水性IJインキについて、E型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃における初期粘度を測定した。同様にして、70℃で2週間経時促進後の粘度を測定した。それぞれの測定値を用いて、初期粘度に対する粘度変化率を算出し、粘度安定性の一つの指標とし、以下の基準に従って評価した。結果を表4に示す。粘度変化率が小さいほど粘度安定性に優れていると考えられ、下記評価基準で「4」「3」及び「2」であれば、実用可能なレベルである。
(粘度安定性の評価基準)
4:粘度変化率が、15%未満である。(極めて良好)
3:粘度変化率が、15%以上20%未満である。(良好)
2:粘度変化率が、20%以上30%未満である。(実用可能)
1:粘度変化率が、30%以上である。(不良、実用不可能)
【0176】
(色相安定性)
色相安定性の指標として、70℃で2週間経時促進後と25℃で2週間経時後のインキの色を比較した。作製した水性IJインキをガラスバイアルに入れて密封し、それぞれの経時条件後の色を目視で比較した。下記評価基準で「3」、「2」であれば、実用可能なレベルである。結果を表4に示す。
(色相安定性の評価基準)
3:70℃経時促進後のインキの色は25℃経時後の色とほぼ同等である。(極めて良好)
2:70℃経時促進後のインキの色は25℃経時後の色とくらべてやや白ぼけているか、色相がやや黄味化している。(良好)
1:70℃経時促進後のインキの色は25℃経時後の色とくらべて白ぼけており、さらに色相が黄味化している。(不良)
【0177】
【表4】
【0178】
<グラビアインキの製造と評価>
◆グラビアインキの作成
まず、樹脂の測定法を以下説明する。
(水酸基価)
JIS K0070に従って求めた。
(酸価)
JIS K0070に従って求めた。
(アミン価)
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJISK0070に準じて以下の方法に従って求めた。試料を0.5~2g精秤した(試料不揮発分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記式によりアミン価を求めた。
アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S[mgKOH/g]
【0179】
(重量平均分子量)
重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー社製ガードカラムHXL-H
東ソー社製TSKgelG5000HXL
東ソー社製TSKgelG4000HXL
東ソー社製TSKgelG3000HXL
東ソー社製TSKgelG2000HXL
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0180】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量測定測定)により求めた。なお、測定機はリガク社製DSC8231を使用し、測定温度範囲-70~250℃、昇温速度10℃/分、DSC曲線におけるガラス転移に基づく吸熱開始温度と終了温度との中点をガラス転移温度とした。
【0181】
(合成例1)[ポリウレタン樹脂PU1]
数平均分子量700のポリプロピレングリコール(以下「PPG700」)200質量部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)127質量部、及び酢酸エチル81.8質量部を窒素気流下にて80℃で4時間反応させ、末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(以下「IPDA」)49.5質量部、2-エタノールアミン3質量部、酢酸エチル/イソプロパノール(以下「IPA」)=50/50(質量比)の混合溶剤803.9質量部を混合したものに、得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を40℃で徐々に添加し、次に80℃で1時間反応させ、不揮発分30%、アミン価3.5mgKOH/g、水酸基価7.3mgKOH/g、重量平均分子量40000のポリウレタン樹脂溶液PU1を得た。ガラス転移温度は-32℃であった。
【0182】
(実施例C-1)グラビアインキc-1の調製
バインダー樹脂として、ポリウレタン樹脂溶液PU1(不揮発分30%)を30質量部、炭化水素系ワックスとしてポリエチレンワックス(ハネウェル社製A-C400A)を不揮発分換算で0.8質量部、塩素化ポリプロピレン樹脂(日本製紙社製370M塩素含有率30% 不揮発分50%)を不揮発分換算で0.5質量部、着色剤1を10質量部、およびメチルエチルケトン(以下「MEK」)/酢酸n-プロピル(以下「NPAC」)/IPA=40/40/20(質量比)からなる混合溶剤58.7質量部を混合し、アイガーミルで15分間分散し、グラビアインキc-1を得た。
【0183】
(実施例C-2~C-29、比較例C-1~C-16)グラビアインキc-2~c-29、c-101~c-116の調製
実施例C-1の着色剤1を表5に示す通りに変更した以外は、実施例C-1と同様に行い、グラビアインキc-2~c-29、c-101~c-116を得た。
【0184】
2.グラビアインキ印刷物の作製
上記で得られたグラビアインキを、MEK/NPAC/IPA=40/40/20(質量比)からなる混合溶剤を使用して、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈し、ヘリオ175線グラデーション版(版式コンプレストグラデーション100%~3%)を備えたグラビア印刷機により、以下の基材(鮮明性の場合はコロナ放電処理面)に、印刷を印刷速度80m/分で行い、OPP印刷物、CPP印刷物をそれぞれ得た。
(基材)
・OPP:片面コロナ放電処理の2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(フタムラ化学社製FOR厚さ25μm)
・CPP:コロナ処理無の未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(三井化学東セロ社製CP-S厚さ30μm)
【0185】
◆グラビアインキおよび印刷物の評価
色評価に関する項目(鮮明性、透明性)については顔料種によって色相が異なるため、上記方法に従って色相別に4つの色相グループごとに評価を行った。色相グループ1は比較例C-8(グラビアインキc-108)を、色相グループ2は比較例C-2(グラビアインキc-102)を、色相グループ3は比較例C-6(グラビアインキc-106)を、色相グループ4は比較例C-14(グラビアインキc-114)を評価の基準とした。グループ分けは表5に示し、各色相グループにおいて※を表記した行が色評価の評価基準とした比較例である。
【0186】
(インキの粘度安定性)
調製したグラビアインキについてそれぞれを密閉容器に入れ、40℃で10日間保存を行った。その後、粘度を測定して保存前との粘度変化を評価した。なお粘度の測定は25℃でザーンカップNo.4の流出秒数にて行った。結果を表5に示す。なお、いずれのインキも保存前のB型粘度計における粘度は40~500cps(25℃)の範囲内であった。下記評価基準で「4」、「3」であれば、実用可能なレベルである。
(粘度安定性の評価基準)
4:粘度変化が2秒未満。(良好)
3:粘度変化が2秒以上5秒未満。(実用可)
2:粘度変化が5秒以上10秒未満。(やや不良)
1:粘度変化が10秒以上15秒未満。(不良)
【0187】
(鮮明性)
得られたOPP印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表5に示す。
(鮮明性の評価基準)
4:基準とした印刷物よりも鮮明性が特に高い。(極めて良好)
3:基準とした印刷物よりも鮮明性が高い。(良好)
2:基準とした印刷物と同等の鮮明性。(不良)
1:基準とした印刷物よりも鮮明性が低い。(極めて不良)
【0188】
(透明性)
得られたOPP印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表5に示す。
(透明性の評価基準)
4:基準とした印刷物よりも透明性が特に高い。(極めて良好)
3:基準とした印刷物よりも透明性が高い。(良好)
2:基準とした印刷物と同等の透明性。(不良)
1:基準とした印刷物よりも透明性が低い。(極めて不良)
【0189】
(色相安定性:アルカリ耐性)
得られたOPP印刷物に0.1%の水酸化ナトリウム水溶液をスポイトで1滴垂らし、5分後に紙製シートで吸い取った。水酸化ナトリウム水溶液を垂らした場所と周囲を目視で比較し、以下の4つの現象、(1)着色力の低下(白ぼけ)、(2)色相の黄味化、(3)鮮明性の低下、(4)紙製シートへの着色、を確認した。下記評価基準で「3」、「2」であれば、実用可能なレベルである。
【0190】
(色相安定性の評価基準)
3:4つの現象のうち、1つ確認された、または確認されなかった。(極めて良好)
2:4つの現象のうち、2つ確認された。(良好)
1:4つの現象のうち、3つ以上確認された。(不良)
【0191】
(光沢)
得られたOPP印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。光沢は比較例C-2を基準とした。結果を表5に示す。
(光沢の評価基準)
4:基準とした印刷物よりも光沢が特に大きい。(極めて良好)
3:基準とした印刷物よりも光沢が大きい。(良好)
2:基準とした印刷物と同等の光沢。(不良)
1:基準とした印刷物よりも光沢が小さい。(極めて不良)
【0192】
【表5】
【0193】
CPP印刷物についてもそれぞれOPP印刷物と同様の評価を行ったところ、同様の結果が得られた。
【0194】
<活性エネルギー線硬化性フレキソインキの製造と評価>
◆活性エネルギー線硬化性フレキソインキの製造
(実施例D-1)活性エネルギー線硬化性フレキソインキd-1の調製
下記の材料を、バタフライミキサーを用いて撹拌混合し、3本ロールにて最大粒径が15μm以下になるように分散して、活性エネルギー線硬化性フレキソインキd-1を得た。
・着色剤1:18.0部
・EBECRYL225:8.4部(10官能のウレタンアクリレートオリゴマー)
・4-アクリロイルモルフォリン:15.0部 (単官能モノマー)
・アロニックスM-350(東亞合成製トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート):20.0部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート:5.0部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:16.6部
・イルガキュア369:3.0部 (光重合開始剤)
・Chemrk DEABP:3.0部 (光重合開始剤)
・SB-PI718:4.0部 (光重合開始剤)
・アジスパーPB821:3.0部 (分散剤)
・Tワックスコンパウンド:4.0部 (ワックス)
【0195】
使用した材料の詳細は以下のとおりである。
[アクリレートオリゴマー]
・EBECRYL225:ダイセル・オルネクス株式会社製、10官能の脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー
[重合開始剤]
・イルガキュア369:BASF社製、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン
・Chemrk DEABP:ソート社製、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
・SB-PI718:ソート社製、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド
[分散剤]
・アジスパーPB821:味の素ファインテクノ株式会社製、塩基性官能基含有の櫛形分散剤
[ワックス]
・Tワックスコンパウンド:東新油脂株式会社製、ポリエチレンワックス
【0196】
(実施例D-2~D-29、比較例D-1~D-16)活性エネルギー線硬化性フレキソインキd-2~d-29、d-101~d-116の調製
実施例D-1の着色剤1を表7に示す通りに変更した以外は、実施例D-1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性フレキソインキd-2~d-29、d-101~d-116を得た。
【0197】
◆印刷評価
(単色ベタ部)
コート紙に線数800lpi、セル容積3.72cm3/m2のアニロックスローラーとフレキシプルーフ機を用いて、インキを印刷後、コンベア速度 50m/分、空冷水銀ランプ(出力160W/cm2の条件)で硬化させ、評価用印刷物を得た。
【0198】
色評価に関する項目(着色力、鮮明性、透明性)については顔料種によって色相が異なるため、上記方法に従って色相別に4つの色相グループごとに評価を行った。色相グループ1は比較例D-8(活性エネルギー線硬化性フレキソインキd-108)を、色相グループ2は比較例D-2(活性エネルギー線硬化性フレキソインキd-102)を、色相グループ3は比較例D-6(活性エネルギー線硬化性フレキソインキd-106)を、色相グループ4は比較例D-14(活性エネルギー線硬化性フレキソインキd-114)を評価の基準とした。グループ分けは表7に示し、各色相グループにおいて※を表記した行が色評価の評価基準とした比較例である。
【0199】
(着色力)
印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表6に示す。
(着色力の評価基準)
4:基準とした印刷物よりも着色力が特に高い。(極めて良好)
3:基準とした印刷物よりも着色力が高い。(良好)
2:基準とした印刷物と同等の着色力。(不良)
1:基準とした印刷物よりも着色力が低い。(極めて不良)
【0200】
(鮮明性)
印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表6に示す。
(鮮明性の評価基準)
4:基準とした印刷物よりも鮮明性が特に高い。(極めて良好)
3:基準とした印刷物よりも鮮明性が高い。(良好)
2:基準とした印刷物と同等の鮮明性。(不良)
1:基準とした印刷物よりも鮮明性が低い。(極めて不良)
【0201】
(透明性)
OPPフィルム(グラビア印刷評価に用いたものと同じもの)に対しても同様にインキを印刷、硬化させ、評価用印刷フィルムを得た。
得られた印刷フィルムを目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表6に示す。
(透明性の評価基準)
4:基準とした印刷物よりも透明性が特に高い。(極めて良好)
3:基準とした印刷物よりも透明性が高い。(良好)
2:基準とした印刷物と同等の透明性。(不良)
1:基準とした印刷物よりも透明性が低い。(極めて不良)
【0202】
(色相安定性:アルカリ耐性)
得られた印刷フィルムに0.1%の水酸化ナトリウム水溶液をスポイトで1滴垂らし、5分後に紙製シートで吸い取った。水酸化ナトリウム水溶液を垂らした場所と周囲を目視で比較し、以下の4つの現象、(1)着色力の低下(白ぼけ)、(2)色相の黄味化、(3)鮮明性の低下、(4)紙製シートへの着色、を確認した。
【0203】
下記評価基準で「3」、「2」であれば、実用可能なレベルである。
(色相安定性の評価基準)
3:4つの現象のうち、1つ確認された、または確認されなかった。(極めて良好)
2:4つの現象のうち、2つ確認された。(良好)
1:4つの現象のうち、3つ以上確認された。(不良)
【0204】
【表6】
【0205】
<活性エネルギー線硬化性オフセットインキ>
◆活性エネルギー線硬化性オフセットインキの製造
<樹脂ワニスの作製>
活性エネルギー線硬化性インキを製造するに先立ち、樹脂ワニスを製造した。樹脂ワニスは、ジアリルフタレート樹脂(ダイソーダップA(ダイソー(株)製))/ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート/ハイドロキノンを30/69.9/0.1の質量比率で仕込み、空気気流下、100℃で溶融させて製造した。
【0206】
<インキ組成物の作製>
(実施例E-1)活性エネルギー線硬化性フレキソインキe-1の調製
着色剤1を25.8部、上記樹脂ワニス97.4部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート21.1部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20部、炭酸マグネシウム6部、光重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド22.4部をバタフライミキサーを用いて攪拌混合し、3本ロールにて最大粒径が7.5μm以下になるように分散した。その後、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートでタック7.5~8.0に調整し、活性エネルギー線硬化性オフセットインキe-1を作製した。
【0207】
(実施例E-2~E-29、比較例E-1~E-16)活性エネルギー線硬化性オフセットインキe-2~e-29、e-101~e-116の調製
実施例E-1の着色剤1を表8に示す通りに変更した以外は、実施例E-1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性オフセットインキe-2~e-29、e-101~e-116を得た。
【0208】
◆印刷評価
(単色ベタ部)
得られたインキ0.4mlをRIテスターに付け、均一に均した後マリコート紙(北越紀州製紙(株)製コートボール紙)に展色し、メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)照射装置を使用し、照射出力96W/cm2、照射距離10mm、コンベア速度50m/分の条件にて紫外線照射を行うことで展色物を得た。
【0209】
色評価に関する項目(着色力、鮮明性、透明性)については顔料種によって色相が異なるため、上記方法に従って色相別に4つ色相グループごとに評価を行った。色相グループ1は比較例E-8(活性エネルギー線硬化性オフセットインキe-108)を、色相グループ2は比較例E-2(活性エネルギー線硬化性オフセットインキe-102)を、色相グループ3は比較例E-6(活性エネルギー線硬化性オフセットインキe-106)を、色相グループ4は比較例E-14(活性エネルギー線硬化性オフセットインキe-114)を評価の基準とした。グループ分けは表8に示し、各色相グループにおいて※を表記した行が色評価の評価基準とした比較例である。
【0210】
(着色力)
印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表7に示す。
(着色力の評価基準)
4:基準とした印刷物よりも着色力が特に高い。(極めて良好)
3:基準とした印刷物よりも着色力が高い。(良好)
2:基準とした印刷物と同等の着色力。(不良)
1:基準とした印刷物よりも着色力が低い。(極めて不良)
【0211】
(鮮明性)
印刷物を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表7に示す。
(鮮明性の評価基準)
4:基準とした印刷物よりも鮮明性が特に高い。(極めて良好)
3:基準とした印刷物よりも鮮明性が高い。(良好)
2:基準とした印刷物と同等の鮮明性。(不良)
1:基準とした印刷物よりも鮮明性が低い。(極めて不良)
【0212】
(透明性)
OPPフィルム(グラビア印刷評価に用いたものと同じもの)に対しても同様にインキを印刷、硬化させ、評価用印刷フィルムを得た。
得られた印刷フィルムを目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表7に示す。
(透明性の評価基準)
4:基準とした印刷物よりも透明性が特に高い。(極めて良好)
3:基準とした印刷物よりも透明性が高い。(良好)
2:基準とした印刷物と同等の透明性。(不良)
1:基準とした印刷物よりも透明性が低い。(極めて不良)
【0213】
(色相安定性:耐アルカリ変色性)
得られた印刷フィルムに0.1%の水酸化ナトリウム水溶液をスポイトで1滴垂らし、5分後に紙製シートで吸い取った。水酸化ナトリウム水溶液を垂らした場所と周囲を目視で比較し、以下の4つの現象、(1)着色力の低下(白ぼけ)、(2)色相の黄味化、(3)鮮明性の低下、(4)紙製シートへの着色、を確認した。
【0214】
下記評価基準で「3」、「2」であれば、実用可能なレベルである。
(色相安定性の評価基準)
3:4つの現象のうち、1つ確認された、または確認されなかった。(極めて良好)
2:4つの現象のうち、2つ確認された。(良好)
1:4つの現象のうち、3つ以上確認された。(不良)
【0215】
【表7】