(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143185
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】吹付施工装置及びトンネルの吹付施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E21D11/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055719
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】311004393
【氏名又は名称】ニシオティーアンドエム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 顕吾
(72)【発明者】
【氏名】金井 孝行
(72)【発明者】
【氏名】神 貴康
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155BA06
2D155BB02
2D155CA01
2D155DB02
2D155DB06
2D155KA00
2D155KC06
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】複数の吹付ノズルが干渉することなく効率のよい吹付施工が可能となる吹付施工装置を提供する。
【解決手段】トンネルの掘削面に硬化材を吹き付けるための吹付施工装置1である。
そして、走行手段を有するベースマシン2と、ベースマシンの前面21に基部31が取り付けられる第1ブーム3と、第1ブームの先端部32に取り付けられる第1吹付ノズル33と、ベースマシンの上面22に車両前後方向に可動するように取り付けられた旋回部41から延伸される第2ブーム4と、第2ブームの先端部42に取り付けられる第2吹付ノズル4とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの掘削面に硬化材を吹き付けるための吹付施工装置であって、
走行手段を有するベースマシンと、
前記ベースマシンの車両前方に基部が取り付けられる第1ブームと、
前記第1ブームの先端部に取り付けられる第1吹付ノズルと、
前記ベースマシンの上面側に車両前後方向に可動するように取り付けられた旋回部から延伸される第2ブームと、
前記第2ブームの先端部に取り付けられる第2吹付ノズルとを備え、
前記第1ブームの基部より前記旋回部は高い位置に配置されるとともに、前記第2ブームは前記第1ブームより長くなることを特徴とする吹付施工装置。
【請求項2】
前記旋回部は前記ベースマシンの接地面より2m以上の高い位置に配置されているとともに、前記第2ブームの可動は水平から仰角側に制限されていることを特徴とする請求項1に記載の吹付施工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吹付施工装置を使用したトンネルの吹付施工方法であって、
前記旋回部を前記第1ブームの基部より車両後方にセットして前記第2ブーム及び前記第1ブームを仰角側に可動させるステップと、
前記掘削面に対向させた前記第1吹付ノズル及び前記第2吹付ノズルの両方を使って、前記掘削面に前記硬化材の吹き付けを行うステップとを備えたことを特徴とするトンネルの吹付施工方法。
【請求項4】
請求項2に記載の吹付施工装置を使用したトンネルの吹付施工方法であって、
前記第2ブームの可動が水平から仰角側に制限されるように設定するステップと、
前記掘削面に対向させた前記第1吹付ノズル及び前記第2吹付ノズルの両方を使って、前記掘削面に前記硬化材の吹き付けを行うステップとを備えたことを特徴とするトンネルの吹付施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの掘削面に吹付コンクリートなどの硬化材を吹き付けるための吹付施工装置及びトンネルの吹付施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルの施工においては、ブレーカなどによる地山くずしという掘削作業と同時に、急結性の吹付コンクリートを掘削面に吹き付けることで、切羽の肌落ちが発生してもすぐに補強することができる。要するに掘削作業は、切羽面の安定を損なうことなく実施されることが望まれる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に開示されたように、3つのアクチュエータの先端側にそれぞれ覆工吹付材吹付用のノズルが設けられた吹付装置を使用することで、吹付作業の作業効率の向上を図ることがある。
【0004】
また、特許文献2に開示されているように、掘削によって生じた切羽前の土砂の上方域を通過することが可能となるように、長尺のマニピュレータの先端に吹付ノズルを設けた大型のトンネル施工用吹付作業装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-27117号公報
【特許文献2】特許第6263339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているように複数の吹付ノズルが設けられていても、それらを支持するブームの基部が車両前方などに集中していると、上下両方のブームの吹付ノズルで同時に吹付施工をする際に、後述するような干渉が起きるなどして必ずしも効率のよい吹付作業が行えるとは言えない。
【0007】
そこで、本発明は、複数の吹付ノズルが干渉することなく効率のよい吹付施工が可能となる吹付施工装置及びトンネルの吹付施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の吹付施工装置は、トンネルの掘削面に硬化材を吹き付けるための吹付施工装置であって、走行手段を有するベースマシンと、前記ベースマシンの車両前方に基部が取り付けられる第1ブームと、前記第1ブームの先端部に取り付けられる第1吹付ノズルと、前記ベースマシンの上面側に車両前後方向に可動するように取り付けられた旋回部から延伸される第2ブームと、前記第2ブームの先端部に取り付けられる第2吹付ノズルとを備え、前記第1ブームの基部より前記旋回部は高い位置に配置されるとともに、前記第2ブームは前記第1ブームより長くなることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記旋回部は前記ベースマシンの接地面より2m以上の高い位置に配置されているとともに、前記第2ブームの可動は水平から仰角側に制限されている構成とすることができる。
【0010】
また、トンネルの吹付施工方法の発明では、上記した吹付施工装置を使用したトンネルの吹付施工方法であって、前記旋回部を前記第1ブームの基部より車両後方にセットして前記第2ブーム及び前記第1ブームを仰角側に可動させるステップと、前記掘削面に対向させた前記第1吹付ノズル及び前記第2吹付ノズルの両方を使って、前記掘削面に前記硬化材の吹き付けを行うステップとを備えたことを特徴とする。
【0011】
別のトンネルの吹付施工方法の発明では、前記第2ブームの可動が水平から仰角側に制限されるように設定するステップと、前記掘削面に対向させた前記第1吹付ノズル及び前記第2吹付ノズルの両方を使って、前記掘削面に前記硬化材の吹き付けを行うステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明の吹付施工装置及びトンネルの吹付施工方法は、ベースマシンの車両前方に基部が取り付けられる第1吹付ノズルを有する第1ブームに加えて、ベースマシンの上面側に車両前後方向に可動するように取り付けられた旋回部から延伸される第2ブームの先端部にも、第2吹付ノズルが配置されている。
【0013】
ここで、吹付ノズルのブームのベースマシンへの取り付け位置の高さが違っていれば、上下の2つのブームが干渉することなく、切羽の上半と下半の特定の箇所又はそれぞれに対して同時に吹付施工することができるようになる。
【0014】
さらに、上側にある第2吹付ノズルの第2ブームの旋回部を車両後方に後退させることで、下側の第1吹付ノズルの第1ブームによる吹付施工範囲を上方に広げることができるようになる。要するに、第1吹付ノズル及び第2吹付ノズルの両方によって吹付施工が行える範囲や時間が増えることで、作業時間が短縮できるなど効率のよい吹付施工が実施できるようになる。
【0015】
また、2つのブームの取り付け高さが異なり、上側の第2ブームの旋回部がベースマシンの接地面より2m以上の高い位置にあることで、第2ブームを水平より俯角側に傾斜させないためのリミッタをかけることによって、従来の1本のブームを使用するケースと比べて安全性が低下するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態の吹付施工装置の構成を模式的に示した説明図である。
【
図2】第2ブームの上下方向の可動範囲を模式的に示した説明図である。
【
図3】2つの吹付ノズルによる吹付施工状況を吹付施工装置の背面側から見た説明図である。
【
図4】2つの吹付ノズルによる吹付施工状況を例示した説明図である。
【
図5】切羽の上半面と下半面とをそれぞれ吹付施工する状況を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の吹付施工装置1の構成を模式的に示した説明図である。
【0018】
本実施の形態の吹付施工装置1は、トンネルの切羽などの掘削面に、急結性の吹付コンクリートなどの硬化材を吹き付けるために使用される。山岳トンネルなどのトンネルの掘削現場では、掘削や発破後に切羽などの掘削面の掘削状況の確認を行い、掘削不足の箇所に対しては、ブレーカなどの掘削機で追加掘削(地山くずし)が行われる。
【0019】
そして、このブレーカによる地山くずしという掘削作業と同時に、吹付施工装置1による吹付コンクリートの吹付施工が実施されることで、切羽の肌落ちが発生したとしてもすぐに補強することができる。すなわち掘削作業を、切羽面の安定を損なうことなく実施することができるようになる。
【0020】
本実施の形態の吹付施工装置1は、
図1に示すように、ベースマシン2と、ベースマシン2の車両前方に基部31が取り付けられる第1ブーム3と、第1ブーム3の先端部32に取り付けられる第1吹付ノズル33と、ベースマシン2の上面側に車両前後方向に可動するように取り付けられた旋回部41から延伸される第2ブーム4と、第2ブーム4の先端部42に取り付けられる第2吹付ノズル43とを備えている。
【0021】
ベースマシン2にする車両は、特に限定されるものではなく、タイヤやクローラなどの自走可能な走行手段を有する汎用のエレクター付き吹付機を改良するなどして利用することができる。
【0022】
ベースマシン2には、少なくとも2本の吹付用のブームが装備されている。ブームは、ベースマシン2が備えている吹付ブームをそのまま利用したり、バスケットブームを改良して使用したりすることができる。
【0023】
少なくとも2本の吹付用ブームのうちの第1ブーム3は、例えばベースマシン2の前面21近傍の低い位置の車幅方向の中央に、基部31が取り付けられる。第1ブーム3は、基部31を中心に、左右方向に旋回したり、上下方向に起伏したりすることができる。
【0024】
エレクター付き吹付機をベースマシン2として利用する場合には、第1ブーム3の先端部32には、第1吹付ノズル33となる吹付用ノズルが備えられている。第1吹付ノズル33の先端の吐出口からは、前方に向けて吹付コンクリートを吐出させることができる。
【0025】
少なくとも2本の吹付用ブームのうちの第2ブーム4は、例えばベースマシン2に備えられているバスケットブームを改良して利用することができる。第2ブーム4は、ベースマシン2の上面22に車両前後方向に可動するように取り付けられた旋回部41から延伸される。
【0026】
第2ブーム4は、第1ブーム3の基部31より後方に基部となる旋回部41が移動している状態であっても、第1吹付ノズル33の吐出口の位置と車両前後方向で同じ位置に第2吹付ノズル43の吐出口を配置できるようにしなければならないので、第2ブーム4の最大伸長時の長さは第1ブーム3よりも長くなる。
【0027】
旋回部41は、第2ブーム4を左右方向に旋回させたり、上下方向に起伏させたりすることができる機構であればよい。また、旋回部41は、ベースマシン2の上面22に車両前後方向に延伸されたガイドに沿って、任意の位置に移動させることができる。
【0028】
バスケットブームを利用したときの第2ブーム4の先端部42は、籠状に形成されているので、例えばその下面に対して、第2吹付ノズル43となる吹付用ノズルを取り付ける。第2吹付ノズル43の構成は、第1吹付ノズル33の構成と同様で、先端の吐出口から前方に向けて吹付コンクリートを吐出させることができる。
【0029】
第1吹付ノズル33と第2吹付ノズル43は、吐出口の位置を前後に移動させたり、回転させて吐出口の向きを変えたりすることが可能な支持アーム(図示省略)によって支持されている。
【0030】
図2は、第2ブーム4の上下方向の可動範囲を模式的に示した説明図である。第2ブーム4は、旋回部41を中心に起伏するので、第2ブーム4が水平になるときの施工基面SBからの距離は、旋回部41が配置される高さによって決まる。
【0031】
例えばベースマシン2の上面22が、タイヤの接地面より2m以上の高い位置にあれば、旋回部41は施工基面SBより2m以上の高い位置に配置されることになる。そして、機械的又は電子的なリミッタ機能によって、第2ブーム4が俯角側に可動しないように、換言すると可動が水平から仰角側に制限されるようにすることができる。
【0032】
このように第2ブーム4の可動域に制限をかけることで、一般的に作業員Wの身長が2mを超えることはないので、ベースマシン2の前方においても、安全に作業をさせることができるようになる。
【0033】
次に、本実施の形態の吹付施工装置1を使用したトンネルの吹付施工方法について、
図3-
図5を参照しながら説明する。
以下では、NATM工法による山岳トンネルの掘削工事の施工を例に説明する。
【0034】
NATM工法を用いてトンネルを施工する際には、ブレーカやバックホウなどの掘削装置やホイールローダなどの重機の後方から、軟弱地山や亀裂の発達した地山などに吹付施工装置1によって急結性の吹付コンクリートを鏡吹きしながら掘削を行う。こうすることによって、地山の崩壊を防ぎつつ、安全に掘削を進めていくことができる。
【0035】
また、吹付施工装置1の第2ブーム4を水平に伸ばしたときの第2吹付ノズル43を含むブーム全体が、施工基面SBから2m以上の高い位置になるようなブーム構成であれば、第2ブーム4を俯角にならないようなリミッタ機能を設けておくことで、吹付用ブーム周りの人払いを必須とする必要がなくなる。例えば、第2ブーム4の伸長時における緊急時などに、作業員Wが第2ブーム4の下を通過して避難することができるようになる。
【0036】
また、2本のブーム(3,4)のうちの1本である第2ブーム4の最低高さが2m以上で作業員Wの身長を超えていれば、吹付ノズル(33,43)を持つ2本のブーム(3,4)に挟まれるという状況にはならないので、1本のブームを使用するケースと比べて安全性が低下してしまうということがない。
【0037】
ところで、吹付機を使用して切羽の鏡吹きや支保工まわりの一次吹付、二次吹付などの吹付施工の施工速度を速めるためには、吹付ノズルを有するブームを増設することが望ましい。しかしながら、単に吹付ノズルを増設すればよいというものではなく、以下のような場合は、増設を行っても施工効率の向上につながらないこともある。
【0038】
例えば特許文献1に開示されているように、トンネル掘進方向(車両の前後方向)の同じ位置に、左右又は上下に並列してブームの基部を取り付けることで、吹付ノズルを2つに増加させた吹付装置が知られている。
【0039】
このような吹付装置によって鏡吹きをする場合、掘削面となる切羽の上下又は左右にエリア分けをして吹付施工をしても、エリア分けした境界部分で互いのブームが干渉することになるため、干渉を避ける操作を行う必要があり、その分施工効率が低下する。
【0040】
また、トンネルの支保工の一次吹付及び二次吹付をする場合、ブームが左右に並ぶ場合では、トンネルの右側面だけ、または左側面だけを2本の両方の吹付ノズルを用いて同時に施工することができないため、増設の効果が得られない。
【0041】
一方、ブームが上下に並ぶ場合は、下のブームが上のブームに遮られることになるうえに、右踏まえ(切羽右側の下部)と左踏まえ(切羽左側の下部)の吹付施工をする際に、2本の吹付ノズルを同時に使用することができず、増設の効果が得られない。
【0042】
これらの課題が解決されるように開発された本実施の形態の吹付施工装置1は、吹付ノズル(33,43)を装着したブーム(3,4)を略上下に2段に配置し、かつ、上側の第2ブーム4の基部となる旋回部41を、下側の第1ブーム3の基部31よりも車両後方に動かせるようにしている。
【0043】
2本の上下及び左右に揺動可能なブーム(3,4)を吹付施工装置1の前面21と上面22とに、上下に高さ位置を違えて配置することで、
図3に示すように、左踏まえと右踏まえとを、2本の両方のブーム(3,4)で同時に吹付施工することができるようにしている。
【0044】
図3では、掘削面となるトンネルの切羽Tの上半面T1と下半面T2のうち、下半面T2の左側(左踏まえ)を2つの吹付ノズル(33,43)で吹付施工している状況を、模式的に示している。こうして複数の吹付ノズル(33,43)を同時に使用して、効率的に吹付施工が実施できるようになるのは、2つのブーム(3,4)の基部(31,41)の高さがHだけ離れていて、同時に可動させても干渉が起きないからである。
【0045】
さらに、
図4に示すように、上面22の第2ブーム4の基部となる旋回部41を車両後方に後退させることで、切羽Tの上半面T1の天端近くの一次吹付を、上下2本のブーム(3,4)で同時に施工することができるようになる。
【0046】
図4では、2本のブーム(3,4)の基部(31,41)が車両前後方向でLだけ離隔しているので、同じ仰角θでブーム(3,4)を可動させても干渉は起きないだけでなく、第1ブーム3の仰角がα増加しても、吹付ノズル(33,43)の干渉が起きていない。このため、上半面T1の天端近くの狭い箇所を、2本の吹付ノズル(33,43)によって同時に吹付施工することで、短時間で掘削面の安定性を確保することができるようになる。
【0047】
図5は、切羽Tの上半面T1と下半面T2とを、2つの吹付ノズル(33,43)によってそれぞれ吹付施工する状況を模式的に示した説明図である。本実施の形態の吹付施工装置1は、吹付ノズル(33,43)をもつ2のブーム(3,4)の基部(31,41)の高さが違っているので、2のブーム(3,4)が干渉することなく、上半面T1と下半面T2とをそれぞれ吹付施工することができる。
【0048】
図3,4を参照しながら上述したように、特定の箇所に対向させた2つの吹付ノズル(33,43)によって同時に吹付施工することで、短時間で掘削面を安定させることができる。一方、
図5に示したように、2本の干渉しないブーム(3,4)をそれぞれ可動させることで、切羽Tの右半分又は左半分の上半面T1と下半面T2とを、それぞれに対向させた吹付ノズル(33,43)で同時に吹付施工させるなどして、作業時間の短縮を図ることができるようになる。
【0049】
次に、本実施の形態の吹付施工装置及びトンネルの吹付施工方法の作用について説明する。
このように構成された吹付施工装置1は、ベースマシン2の車両前方の前面21近傍に基部31が取り付けられる第1吹付ノズル33を有する第1ブーム3に加えて、ベースマシン2の上面22に車両前後方向に可動するように取り付けられた旋回部41から延伸される第2ブーム4の先端部42にも、第2吹付ノズル43が配置されている。
【0050】
ここで、
図3及び
図5に示すように、吹付ノズル(33,43)のブーム(3,4)のベースマシン2への取り付け位置の高さがHの距離で離れていれば、2つのブーム(3,4)が干渉することなく、切羽Tの上半面T1と下半面T2の特定の箇所、又は上半面T1と下半面T2のそれぞれに対して、同時に吹付施工することができる。
【0051】
さらに、
図4に示すように、上側にある第2吹付ノズル43の第2ブーム4の旋回部41を車両後方に後退させて、基部(31,41)間に車両前後方向の離隔Lを設けることで、下側の第1吹付ノズル33の第1ブーム3の吹付施工範囲を、例えば仰角α分だけ上方に広げることができるようになる。
【0052】
このように第1吹付ノズル33及び第2吹付ノズル43によって同時に吹付施工が行える範囲や時間が増えることで、作業時間が短縮できるなど効率のよい吹付施工が実施できるようになる。
【0053】
また、2つのブーム(3,4)の取り付け高さが異なり、上側の第2ブーム4の旋回部41がベースマシン2の接地面より2m以上の高い位置にあることで、第2ブーム4を水平より俯角側に傾斜させないためのリミッタをかけることによって、2本のブーム(3,4)のうちの1本が作業員Wの身長を超えることになる。
【0054】
このような構成であれば、吹付ノズル(33,43)が2つに増設されたとしても、それらの2本のブーム(3,4)に挟まれることがないので、1本のブームを使用するケースと比べて、増設によって安全性が低下してしまうようなことはない。
【0055】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0056】
例えば、前記実施の形態では、2本のブーム(3,4)の先端にそれぞれ吹付ノズル(33,43)が取り付けられた吹付施工装置1について説明したが、これに限定されるものではなく、ベースマシンに吹付ノズルが取り付けられているブームを3本以上備えた吹付施工装置とする構成であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 :吹付施工装置
2 :ベースマシン
21 :前面(車両前方)
22 :上面
3 :第1ブーム
31 :基部
32 :先端部
33 :第1吹付ノズル
4 :第2ブーム
41 :旋回部
42 :先端部
43 :第2吹付ノズル
T :切羽(掘削面)