(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143195
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】加工設備および加工設備における工具移送方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/155 20060101AFI20241003BHJP
B23Q 41/08 20060101ALI20241003BHJP
B23Q 41/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B23Q3/155 F
B23Q41/08 Z
B23Q41/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055735
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田篤史
(72)【発明者】
【氏名】竹田宗弘
【テーマコード(参考)】
3C002
3C042
【Fターム(参考)】
3C002AA03
3C002BB01
3C002FF09
3C002JJ01
3C002JJ04
3C002JJ09
3C002KK01
3C042RA11
3C042RB11
3C042RG14
(57)【要約】
【課題】加工設備の大型化を抑制しつつ、複数の加工機間で工具を効率よく移送可能にする。
【解決手段】本開示の加工設備は、ワークの搬送方向に沿って並設され、複数の工具を保持可能な回転式タレットを有すると共にワークに対して予め定められた加工を施す少なくとも3台の加工機と、隣り合う2台の加工機の間に1台ずつ配置された少なくとも2台の工具移送ロボットと、隣り合う2台の加工機の回転式タレット間で工具を移送するように少なくとも2台の工具移送ロボットを制御すると共に、2台の工具移送ロボットの間に位置する加工機の回転式タレットを当該2台の工具移送ロボット間で工具を移送するように回転させる制御装置とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して複数の加工を施す加工設備において、
前記ワークの搬送方向に沿って並設され、複数の工具を保持可能な回転式タレットを有すると共に前記ワークに対して予め定められた加工を施す少なくとも3台の加工機と、
隣り合う2台の前記加工機の間に1台ずつ配置された少なくとも2台の工具移送ロボットと、
隣り合う2台の前記加工機の前記回転式タレット間で前記工具を移送するように前記少なくとも2台の前記工具移送ロボットを制御すると共に、2台の前記工具移送ロボットの間に位置する前記加工機の前記回転式タレットを前記2台の前記工具移送ロボット間で前記工具を移送するように回転させる制御装置と、
を備える加工設備。
【請求項2】
請求項1に記載の加工設備において、
前記搬送方向における一端側または他端側に位置する前記加工機の側方に配置され、前記一端側または他端側に位置する前記加工機の前記回転式タレットとの間で前記工具を移送する別の工具移送ロボットを更に備える加工設備。
【請求項3】
ワークの搬送方向に沿って並設され、複数の工具を保持可能な回転式タレットを有すると共に前記ワークに対して予め定められた加工を施す少なくとも3台の加工機と、隣り合う2台の前記加工機の間に1台ずつ配置された少なくとも2台の工具移送ロボットとを含む加工設備における工具移送方法であって、
隣り合う2台の前記加工機の前記回転式タレット間で前記少なくとも2台の前記工具移送ロボットによって前記工具を移送すると共に、2台の前記工具移送ロボットの間に位置する前記加工機の前記回転式タレットを前記2台の前記工具移送ロボット間で前記工具を移送するように回転させる、
加工設備における工具移送方法。
【請求項4】
請求項3に記載の加工設備における工具移送方法において、
隣り合う2台の前記加工機の一方の回転式タレットを対象となる前記工具が前記工具移送ロボットに近接するように回転させ、
隣り合う2台の前記加工機の他方の回転式タレットを前記対象となる前記工具を受け入れるツールスロットが前記工具移送ロボットに近接するように回転させる、
加工設備における工具移送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークに対して複数の加工を施す加工設備および当該加工設備における工具移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械と、複数の工具を収納する工具収納部と、複数の工具を装着可能なマガジンを有する作業ステーションと、マガジンと工具収納部との間およびマガジンと工作機器との間で工具を搬送する搬送装置と、搬送スケジュールに従って搬送装置による工具の搬送順を制御する制御部とを含む工具搬送システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この工具搬送システムでは、搬送装置として、多関節ロボットや、オートローダ等の直交ロボット、自走式ロボットが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の工具搬送システムにおいて、搬送装置の数を減らした場合、1つの搬送装置の受け持ち範囲(可動範囲)の拡大により、当該搬送装置を大型化せざるを得ず、それに伴って設備が大型化してしまう。また、上記工具搬送システムにおいて多数の小型搬送装置が用いられる場合には、小型搬送装置間における工具の受け渡しの制御が煩雑となり、却ってトラブルを招いてしまうおそれもある。
【0005】
そこで、本開示は、加工設備の大型化を抑制しつつ、複数の加工機間で工具を効率よく移送可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の加工設備は、ワークに対して複数の加工を施す加工設備において、前記ワークの搬送方向に沿って並設され、複数の工具を保持可能な回転式タレットを有すると共に前記ワークに対して予め定められた加工を施す少なくとも3台の加工機と、隣り合う2台の前記加工機の間に1台ずつ配置された少なくとも2台の工具移送ロボットと、隣り合う2台の前記加工機の前記回転式タレット間で前記工具を移送するように前記少なくとも2台の前記工具移送ロボットを制御すると共に、2台の前記工具移送ロボットの間に位置する前記加工機の前記回転式タレットを前記2台の前記工具移送ロボット間で前記工具を移送するように回転させる制御装置とを含むものである。
【0007】
本開示の加工設備では、隣り合う2台の加工機の間に配置された1台の工具移送ロボットにより、当該2台の加工機の回転式タレット間で工具が移送される。更に、2台の工具移送ロボットの間に位置する加工機の回転式タレットを回転させることにより、当該2台の工具移送ロボット間で工具が移送される。これにより、各工具移送ロボットの受け持ち範囲(可動範囲)の拡大を抑えて、当該工具移送ロボットを小型化することができる。更に、工具移送ロボットと回転式タレットとの間における工具の受け渡しに特別(煩雑)な制御は必要とはされない。この結果、本開示の加工設備では、設備全体の大型化を抑制しつつ、複数の加工機間で工具を効率よく移送することが可能になる。
【0008】
本開示の加工設備における工具移送方法は、ワークの搬送方向に沿って並設され、複数の工具を保持可能な回転式タレットを有すると共に前記ワークに対して予め定められた加工を施す少なくとも3台の加工機と、隣り合う2台の前記加工機の間に1台ずつ配置された少なくとも2台の工具移送ロボットとを含む加工設備における工具移送方法であって、隣り合う2台の前記加工機の前記回転式タレット間で前記少なくとも2台の前記工具移送ロボットによって前記工具を移送すると共に、2台の前記工具移送ロボットの間に位置する前記加工機の前記回転式タレットを前記2台の前記工具移送ロボット間で前記工具を移送するように回転させるものである。
【0009】
かかる方法によれば、加工設備の大型化を抑制しつつ、複数の加工機間で工具を効率よく移送することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本開示の加工設備における工具の移送手順を説明するための概略構成図である。
【
図3】本開示の加工設備における工具の移送手順を説明するための概略構成図である。
【
図4】本開示の加工設備における工具の移送手順を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
図1は、本開示の加工設備1を示す概略構成図である。同図に示す加工設備1は、例えば金属製のワークWに対して複数の加工を施すものであり、当該ワークWの搬送方向(
図1におけるX軸方向)に沿って並設された3台の加工機2a,2b,2cを含む。本実施形態において、各加工機2a,2b,2cは、主軸20、回転式タレット3およびXYテーブル4を有するマシニングセンタである。各加工機2a,2b,2cの回転式タレット3は、それぞれ複数の工具Tを周方向に間隔をおいて径方向に着脱自在に保持可能である。更に、各回転式タレット3は、図示しない回転駆動装置により、
図1におけるY軸方向に延在する回転軸の周りに正逆方向に回転駆動される。なお、加工設備1において使用される多数の工具Tは、何れも回転式タレット3の任意のツールスロットにより保持され得るように構成されている。
【0013】
各加工機2a,2b,2cは、複数の工具Tを主軸20に選択的に保持させて、それぞれ対応するXYテーブル4上のワークWに対して予め定められた加工を施す。本実施形態において、加工機2aは、ワークWに対してフライス加工を施すものであり、加工機2aの回転式タレット3は、互いに異なる種類の複数のフライスを保持する。また、加工機2bは、ワークWに対して穴開け加工を施すものであり、加工機2bの回転式タレット3は、互いに異なる種類の複数のドリルビットを保持する。更に、加工機2cは、ワークWに対してネジ加工を施すものであり、加工機2cの回転式タレット3は、互いに異なる種類の複数のタップを保持する。
【0014】
また、加工設備1は、3台の工具移送ロボット5a,5b,5cを含む。すなわち、隣り合う2台の加工機2a,2bの間には、1台の工具移送ロボット5aが配置され、隣り合う2台の加工機2b,2cの間には、1台の工具移送ロボット5bが配置される。更に、ワークWの搬送方向(X軸方向)における下流端側(
図1における右端側)に位置する加工機2cの側方(更に下流側)には、1台の工具移送ロボット5cが配置される。各工具移送ロボット5a,5b,5cは、工具Tを保持可能なエンドエフェクタを有する多関節ロボット(ロボットアーム)である。また、工具移送ロボット5a,5bは、加工機2a,2b間または加工機2b,2c間でワークWを移送する。ただし、ワークWは、加工機2a,2b間および加工機2b,2c間で図示しないコンベヤにより搬送されてもよい。工具移送ロボット5cは、加工機2cの回転式タレット3と図示しない工具保管部との間で工具Tを移送可能なものである。
【0015】
更に、加工設備1は、各加工機2a,2b,2cの主軸20,回転式タレット3およびXYテーブル4、並びに各工具移送ロボット5a,5b,5cを制御する制御装置10を含む。制御装置10は、CPU,ROM,RAM、入出力インターフェース等を有するコンピュータ等を含むものである。なお、制御装置10の機能が複数のコンピュータ等に分散されてもよいことは、いうまでもない。
【0016】
ここで、加工機2a,2b,2cの回転式タレット3により保持された何れかの工具Tに不具合が発生したり、何れかの工具Tの交換時期が到来したりしたような場合には、当該何れかの工具Tを該当する回転式タレット3から取り出し、新たな工具Tに交換することが必要になる。このよう場合に、上記何れかの工具Tに近接した単一の工具移送ロボット5a等のみを用いて当該工具Tを交換しようとすれば、当該工具移送ロボット5a等の可動範囲を大きくせざるを得ず、それに伴って設備が大型化してしまう。このため、加工設備1の制御装置10は、例えばワークWの搬送方向における上流端側に位置する加工機2aの回転式タレット3により保持された工具Tx(
図2参照)の交換に際して、加工機2a,2b,2cの回転式タレット3および各工具移送ロボット5a,5b,5cを以下に説明するように制御する。
【0017】
加工機2aの回転式タレット3により保持された工具Txの交換に際して、制御装置10は、まず、
図2に示すように、対象となる工具Txが加工機2aおよび2bの間に位置する工具移送ロボット5aに近接するように 加工機2aの回転式タレット3を回転軸の周り(
図2の例では、反時計方向)に回転させる。また、制御装置10は、エンドエフェクタが工具Txを保持するように工具移送ロボット5aを制御する。更に、制御装置10は、空のツールスロット3sが工具移送ロボット5aに近接するように加工機2bの回転式タレット3を回転軸の周り(
図2の例では、時計方向)に回転させると共に、工具Txを加工機2bの回転式タレット3の空のツールスロット3sまで移送するように工具移送ロボット5aを制御する。
【0018】
工具移送ロボット5aから加工機2bの回転式タレット3への工具Txの移送(受け渡し)が完了すると、制御装置10は、
図3に示すように、工具Txが加工機2bおよび2cの間に位置する工具移送ロボット5bに近接するように 加工機2bの回転式タレット3を回転軸の周り(
図2の例では、時計方向)に回転させる。また、制御装置10は、エンドエフェクタが工具Txを保持するように工具移送ロボット5bを制御する。更に、制御装置10は、空のツールスロット3sが工具移送ロボット5bに近接するように加工機2cの回転式タレット3を回転軸の周り(
図2の例では、時計方向)に回転させると共に、工具Txを加工機2cの回転式タレット3の空のツールスロット3sまで移送するように工具移送ロボット5bを制御する。
【0019】
工具移送ロボット5bから加工機2cの回転式タレット3への工具Txの移送(受け渡し)が完了すると、制御装置10は、
図4に示すように、工具Txが加工機2cの側方の工具移送ロボット5cに近接するように 加工機2cの回転式タレット3を回転軸の周り(
図2の例では、時計方向)に回転させる。更に、制御装置10は、エンドエフェクタが工具Txを保持するように工具移送ロボット5cを制御すると共に、当該工具Txを上記工具保管部の所定箇所まで移送するように工具移送ロボット5cを制御する。また、制御装置10は、エンドエフェクタが交換用の新たな工具Tを保持するように工具移送ロボット5cを制御する。そして、制御装置10は、上述の手順とは逆の手順に従って加工機2a,2b,2cの回転式タレット3および各工具移送ロボット5a,5b,5cを制御し、当該新たな工具Tを加工機2aの回転式タレット3に保持させる。
【0020】
上述のように、加工設備1では、隣り合う2台の加工機2a,2bの間に配置された工具移送ロボット5aにより、当該2台の加工機2a,2bの回転式タレット3間で工具T,Txが移送される。また、隣り合う2台の加工機2b,2cの間に配置された工具移送ロボット5bにより、当該2台の加工機2b,2cの回転式タレット3間で工具T,Txが移送される。更に、2台の工具移送ロボット5a,5bの間に位置する加工機2bの回転式タレット3を回転させることにより、当該2台の工具移送ロボット5a,5b間で工具T,Txが移送される。
【0021】
これにより、各工具移送ロボット5a,5bの受け持ち範囲(可動範囲)の拡大を抑えて、各工具移送ロボット5a,5bを小型化することができる。更に、工具移送ロボット5a,5bと回転式タレット3との間における工具T,Txの受け渡しに特別(煩雑)な制御は必要とはされない。この結果、加工設備1では、設備全体の大型化を抑制しつつ、複数の加工機2a,2b,2c間で工具T,Txを効率よく移送することが可能になる。
【0022】
また、加工設備1の制御装置10は、隣り合う2台の加工機2a,2bまたは2b,2cの一方の回転式タレット3を対象となる工具Txが工具移送ロボット5aまたは5bに近接するように回転させ、隣り合う2台の加工機2a,2bまたは2b,2cの他方の回転式タレット3を空のツールスロット3sが工具移送ロボット5aまたは5bに近接するように回転させる。これにより、各工具移送ロボット5a,5bの受け持ち範囲(可動範囲)の拡大を良好に抑制すると共に、工具移送ロボット5a,5bと回転式タレット3との間で工具T,Txを円滑に受け渡しすることが可能になる。なお、対象となる工具Txを受け入れる移送先の回転式タレット3のツールスロット3sは、工具移送ロボット5aまたは5bに近接した段階で、他の工具Tを保持していてもよく、工具移送ロボット5aまたは5bにより当該他の工具Tが取り出されることで空になってもよい。この場合、工具移送ロボット5a,5bのエンドエフェクタが、同時に2つの工具T,Txを保持可能なものであれば、工具Txを効率よく移送することができる。
【0023】
更に、加工設備1は、ワークWの搬送方向における下流端側に位置する加工機2cの側方に配置された別の工具移送ロボット5cを含み、当該工具移送ロボット5cは、加工機2cの回転式タレット3との間で工具T,Txを移送する。これにより、何れかの加工機2a,2bまたは2cから、加工機2cの側方に配置された別の工具移送ロボット5cまで交換されるべき工具Txを自動的に移送すると共に、交換用の新たな工具Tを工具移送ロボット5cから当該何れかの加工機2a,2bまたは2cまで自動的に移送することが可能になる。
【0024】
なお、加工設備1は、4台以上の加工機を含むものであってもよい。また、加工設備1の加工機2a,2b,2cは、マシニングセンタには限られず、旋盤であってもよく、複数の洗浄ノズルを交換しながら洗浄作業を行う洗浄機であってもよい。更に、回転式タレット3と工具移送ロボット5a,5b,5cとの間の工具T,Txの移送に先立って、回転式タレット3を必ずしも回転させる必要はない。
【0025】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本開示の発明は、ワークに対して複数の加工を施して製品を製造する産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 加工設備、2a,2b,2c 加工機、3 回転式タレット、5a,5b,5c 工具移送ロボット、10 制御装置。