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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143215
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】缶蓋及び缶容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 17/40 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B65D17/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055767
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 正博
(72)【発明者】
【氏名】宮下 理央
(72)【発明者】
【氏名】村上 知行
【テーマコード(参考)】
3E093
【Fターム(参考)】
3E093AA04
3E093BB02
3E093CC02
3E093CC03
3E093DD01
(57)【要約】
【課題】開蓋不良を抑制できる缶蓋及び缶容器を提供すること。
【解決手段】缶蓋1は、パネル部21と、パネル部21に形成されるスコア線41と、スコア線41を破断するタブ12と、スコア線41の少なくとも一部の底部に形成され、スコア線41の内面との間に谷部を形成する隆起部41dと、を備える。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル部と、
前記パネル部に形成されるスコア線と、
前記スコア線を破断するタブと、
前記スコア線の少なくとも一部の底部に形成され、前記スコア線の内面との間に谷部を形成する隆起部と、
を備える缶蓋。
【請求項2】
前記パネル部は、
前記スコア線により形成される、開口用の円形状のスコアと、
前記スコアの内方に隣接する、前記タブが固着されるリベット部と、
前記リベット部の前記スコアとは反対側に形成され、
前記リベット部の前記パネル部の中央側に隣接して設けられる、少なくとも一部に前記隆起部を含む前記スコア線により形成される補助スコアと、
を備える、請求項1に記載の缶蓋。
【請求項3】
前記隆起部の前記スコア線の前記底部からの高さは、前記隆起部が設けられる前記スコア線の前記底部の残厚に対して0.5%~11%の範囲である、請求項1に記載の缶蓋。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の缶蓋と、
前記缶蓋が巻締される缶胴と、
を備える缶容器。
【請求項5】
内圧が陽圧である、請求項4に記載の缶容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶蓋及び缶容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、缶容器に用いられる缶蓋として、パネル部と、タブとを備え、タブを操作することで、パネル部に形成されたスコア線を破断させる技術が知られている。また、パネル部の周辺部全周に環状のスコア線を形成し、パネル部の全体的に開口部を設けるフルオープンタイプの缶蓋(FOE)が知られている。また、パネル部の周辺部に形成されて開口片を区画する環状のスコア線に加え、開口用タブを取り付けるためのリベット部の周辺に形成されたスコア線としての補助スコア線を備えている缶蓋が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような缶蓋は、開蓋時にタブを持ち上げると、補助スコア線がタブの先端部を支点とし挺子作用により破断する。そして、補助スコア線の破断状態から更にタブを持ち上げるとタブの先端部付近のスコア線が破断する。その後、タブを引き上げることで環状のスコア線が、円周方向に沿って破断され、パネル部から開口片が取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-161360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した缶蓋は、タブの操作によってスコア線が破断する。しかしながら、タブの操作時に、パネル部に加わる力によっては、スコア線の一部から、スコア線に沿わない部位が破断する、所謂脱線が生じることがある。
【0006】
具体例として、補助スコア線が形成された缶蓋(FOE)において、開蓋時の初期に、タブを持ち上げた際にまず補助スコア線が破断する。補助スコア線の破断はコイニング加工で成形されたリベットの周囲付近から始まり、コイニング加工部からコイニング加工部の外側に向けて破断していく。コイニング加工部の外側のパネル部はコイニング加工部と比べて金属の硬度が低く、またコイニング加工部との境目には段差も存在するため、その境目付近で脱線が生じやすい。また、内圧が陽圧である缶容器においては、初期破断時に内圧が破断部に加える圧力が大きくなるため、内圧が陰圧である缶容器に比べて、開蓋時に脱線が生じる虞がある。この脱線が生じると、缶蓋が所定の形状に破断できず、開蓋不良となる。
【0007】
そこで本発明は、開蓋不良を抑制できる缶蓋及び缶容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、缶蓋は、パネル部と、前記パネル部に形成されるスコア線と、前記スコア線を破断するタブと、前記スコア線の少なくとも一部の底部に形成され、前記スコア線の内面との間に谷部を形成する隆起部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、開蓋不良を抑制できる缶蓋及び缶容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る缶容器の構成を示す断面図。
図2】同缶容器に用いられる缶蓋の構成を示す平面図。
図3】同缶蓋の構成を示す断面図。
図4】同缶蓋の要部構成を示す断面図。
図5】同缶蓋のリベット及び補助スコア線の構成を示す説明図。
図6】同缶蓋の補助スコア線の構成を概略的に示す、図5中E点の説明図。
図7】同缶蓋の補助スコア線の構成を概略的に示す、図5中F点、G点の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る缶容器100及び缶容器100に用いられる缶蓋1の構成を、図1乃至図7を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る缶容器100の構成を示す断面図である。図2は、缶容器100に用いられる缶蓋1の構成を示す平面図である。図3は、缶蓋1の構成を示す断面図であり、図4は、缶蓋1のパネル部21及びタブ12の構成を拡大して示す断面図である。図5は、缶蓋1のリベット部32及び補助スコア33の構成を示す説明図である。図6は、補助スコア33の主スコア線41の構成を、図5中E点で示す説明図である。図7は、補助スコア33の主スコア線41の構成を、図5中F点、G点で示す説明図である。
【0012】
図1乃至図3に示すように、缶容器100は、缶蓋1のパネル部21が略全面に渡って開口する所謂フルオープンタイプ(FOE)の容器である。缶容器100は、例えば、内圧が陽圧となる陽圧缶である。缶容器100は、内容物として、発泡性の内容物が充填される。ここで、発泡性の内容物とは発泡飲料である。発泡飲料とは、例えば、ビール、発泡酒、ビール類似アルコール飲料、ビール類似ノンアルコール飲料、炭酸飲料等が挙げられる。なお、発泡飲料は、これらに限定されない。
【0013】
缶容器100は、缶蓋1と、缶胴101と、を備える。缶容器100は、飲料を充填後、巻締め加工によって、例えば、二重巻締成形によって、缶蓋1及び缶胴101を一体に巻締め固着することで形成される。缶容器100は、缶蓋1及び缶胴101を固着部100aにより気密に固着することで形成される。缶容器100は、例えば、缶胴101の底部112と胴部111とが一体化されている所謂2ピース缶である。
【0014】
図1乃至図3に示すように、缶蓋1は、缶蓋本体11と、タブ12と、を備える。缶蓋1は、缶蓋本体11に形成されたスコア線を、タブ12の操作によって破断することが可能に形成される。また、缶蓋1は、図6及び図7に示すように、缶蓋本体11に1つ以上のスコア線を有し、この1つ以上のスコア線のうち、少なくとも1つのスコア線の底部に突起状の隆起部を形成することで、スコア線の内面と隆起部の外面との間に谷部を形成し、スコア線の破断を案内可能に形成される。
【0015】
具体例として、図2に示すように、缶蓋1は、開口部がパネル部21の大部分を占めるように全面的に開口するフルオープンエンド(FOE)である。缶蓋1は、金属板をプレス加工することで缶蓋本体11及びタブ12が別工程で成形され、その後、タブ12がパネル部21に固着されることで製造される。缶蓋本体11を成形する金属板は、表面に樹脂皮膜が形成されたアルミニウム合金板や表面処理鋼板等が挙げられる。タブ12を成形する金属板は、例えば、アルミニウム合金板等が挙げられる。
【0016】
図1乃至図3に示すように、缶蓋本体11は、パネル部21と、パネル部21の外周縁に設けられた環状の溝部22と、環状の溝部22の外周縁に設けられた第1フランジ部23と、を備える。
【0017】
図2に示すように、パネル部21は、円板状に構成される。パネル部21は、スコア31と、リベット部32と、補助スコア33と、セーフティー部34と、指入れ用凹部35と、を含む。また、パネル部21は、缶容器100の内容物を表示する点字等の表示部等を有していても良い。また、パネル部21は、商品識別用、デザイン用、補強用等の凸部や凹部を有していても良い。
【0018】
図3に示すように、スコア31は、タブ12の開口操作によって破断するスコア線により形成される、パネル部21に開口部を形成する開口用のスコアである。スコア31は、破断することで、缶蓋1の開口部をパネル部21に形成する。換言すると、スコア31は、缶蓋1の開口部を形成したときに、パネル部21の開口片となる領域を囲う。缶蓋1は、フルオープンタイプであることから、スコア31は、例えば、図2に示すように、円形状又は略円形状のスコア線により形成される。スコア31は、破断することで、パネル部21のスコア31の径方向内方の部位を開口片として、リベット部32とともに、パネル部21のスコア31の径方向外方の部位から取り外すことを可能とする。
【0019】
スコア31を形成するスコア線は、外力により開口部の形状でパネル部21の一部を破断させる脆弱部を構成する溝である。スコア31を形成するスコア線は、例えば、パネル部21の外面に設けられた楔状の溝であり、スコア31によってパネル部21の一部が薄肉に形成される。なお、ここで、パネル部21の外面とは、缶容器100の缶胴101に缶蓋1が設けられた状態において、外部に露出する主面、即ち、缶容器100の上面を構成する面である。
【0020】
スコア31は、例えば、パネル部21の外周縁側に設けられるセーフティー部34に形成される。具体例として、スコア31は、セーフティー部34の後述する中間層34eの上面に形成される。なお、スコア31は、円形状に限定されず、例えば、一部間欠する円弧状に形成され、パネル部21の大部分を開口させるとともに、開口した開口片がパネル部21と一部で連続する構成であってもよい。
【0021】
図1乃至図4に示すように、リベット部32は、パネル部21の一方の主面、具体的には、パネル部21の外面に設けられる。リベット部32は、パネル部21の外周縁側であって、且つ、スコア31よりも中央側に設けられる。リベット部32は、スコア31の径方向内方に、スコア31に隣接して設けられる。
【0022】
リベット部32は、パネル部21の一方の主面から円柱状に突出する。リベット部32は、パネル部21の一部にコイニング加工によるリベットダウン工程を行うことで形成される。例えば、図5に二点鎖線で示すように、コイニング加工を行うコイニング加工部32Aは、円形状である。また、リベット部32は、コイニング加工部32Aの径より小径に形成された先端が閉塞する円筒状である。リベット部32は、タブ12を配置後にかしめ加工することで、タブ12をパネル部21に固着する。なお、図1乃至図4において、リベット部32は、かしめ加工後の状態を示す。
【0023】
図2及び図5に示すように、補助スコア33は、パネル部21のリベット部32の近傍に形成される。補助スコア33は、インプルジョンスコアである。補助スコア33は、タブ12の開口操作時に一部が破断する。補助スコア33は、例えば、主スコア線41と、主スコア線41のリベット部32とは反対側に設けられた、主スコア線41と平行な副スコア線42と、を備える。
【0024】
主スコア線41は、外力により開口部の形状でパネル部21の一部を破断させる脆弱部を構成する溝である。主スコア線41は、例えば、パネル部21の外面に設けられた楔状の溝である。主スコア線41によってパネル部21の一部が薄肉に形成される。図3に示すように、主スコア線41は、タブ12の開口操作時に破断することで、リベット部32の上方への移動を可能とする。
【0025】
図5に示すように、主スコア線41は、例えば、一つの第1部位41aと、第1部位41aと連続する一対の第2部位41bと、一対の第2部位41bのそれぞれと連続する一対の第3部位41cと、を含む。主スコア線41は、第1部位41a、一対の第2部位41b及び一対の第3部位41cが連続する。主スコア線41は、例えば、第1部位41aの幅が第2部位41bの幅よりも広い。
【0026】
図5に示すように、第1部位41aは、リベット部32よりもパネル部21の径方向で内方に設けられ、リベット部32側に曲率中心が配置される円弧状に延在する。換言すると、主スコア線41の一部である第1部位41aは、リベット部32の周囲のうちパネル部21の中央側の部分を囲むように、スコア31の内方に隣接するリベット部32に隣接して設けられる。例えば、第1部位41aは、リベット部32の周方向に沿った円弧状に形成される。第1部位41aは、リベット部32の中心とタブ12の先端と通る直線を第1直線Xとし、リベット部32の中心を通って第1直線Xと直交する直線を第2直線Yとしたとき、第2直線Yよりも缶蓋1の径方向で内方に配置される。即ち、第1部位41aの曲率半径は、かしめ加工される前のリベット部32の半径よりも大径に設定される。また、例えば、第1部位41aの曲率半径は、コイニング加工部32Aの半径よりも小径に設定される。例えば、第1部位41aは、コイニング加工部32Aに配置される。
【0027】
図5に示すように、第2部位41bは、それぞれ第1部位41aと連続し、第2直線Yに沿った方向に延在する。第2部位41bは、例えば円弧状に形成されるが、部分的に直線状に形成されていてもよい。第1部位41a及び第2部位41bの連続する部位は、例えば、所定の曲率半径の円弧状に形成される。第2部位41bは、第2直線Yよりも缶蓋1の径方向で内方に配置される。例えば、第2部位41bは、コイニング加工部32Aから離間した位置に配置される。
【0028】
図5に示すように、第3部位41cは、それぞれ第2部位41bと連続し、第2直線Yから離れる方向に曲がる。なお、第3部位41cは、例えば、終端において直線状に形成されていてもよい。第3部位41cは、例えば、第2直線Yよりも缶蓋1の径方向で内方に曲率中心を有する、異なる曲率半径の複数の円弧状及び直線状に形成される。第3部位41cは、第2直線Yよりも缶蓋1の径方向で内方に配置される。
【0029】
このような主スコア線41は、図5に示すように、例えば、楔状の溝であり、底部に突起状の隆起部41dを含み、隆起部41dによって、主スコア線41の内面と隆起部41dの外面との間に、谷部41eが形成される。即ち、主スコア線41の延設方向に直交する方向において、主スコア線41の一対の内面と隆起部41dの一対の外面との間の少なくとも一方に、谷部41eが形成される。本実施形態において、谷部41eは、主スコア線41の一対の内面と隆起部41dの一対の外面との間のそれぞれに形成される。
【0030】
隆起部41dは、主スコア線41(スコア線)の延設方向で少なくとも一部に形成される。本実施形態において、隆起部41dは、主スコア線41の延設方向で全体の底部に形成される。隆起部41dは、主スコア線41の底部に一体に形成され、主スコア線41の底部から突出する。隆起部41dは、スコア線が形成されたパネル部21の材料の移動や、スコア線を成形する治具等によって成形される。
【0031】
図6及び図7を用いて、隆起部41dの形状の例を説明する。隆起部41dは、例えば、図6に示すように、断面形状が台形状に形成され、上面が平面状に形成されるか、または、図7に示すように、断面形状が台形状に形成され、上面が曲面状に形成される。なお、隆起部41dは、台形状でなく、矩形状であってもよく、また、上面と側面との稜部が曲面状であってもよい。即ち、隆起部41dは、主スコア線41(スコア線)の溝の内面との間に、隙間である谷部41eを形成可能であれば、その形状は適宜設定できる。
【0032】
隆起部41dの主スコア線41の底部からの高さ、即ち、谷部41eの深さは、例えば、主スコア線41(スコア線)の底部の残厚に対して0.5%~11%の範囲に設定され、好ましくは、1~9%の範囲に設定される。ここで、スコア線の底部の残厚とは、隆起部41dを除くスコア線の底部(谷部41eの底)からパネル部のスコア線が形成される側の主面とは反対側の主面までのパネル部21の厚さである。
【0033】
例えば、図5に示す第1部位41aのE点においては、隆起部41dは、図6に示す形状に形成され、図5に示す第2部位41bのF点及びG点においては、隆起部41dは、図7に示す形状に形成される。このように、隆起部41dは、例えば、主スコア線41の部位によって、異なる形状に形成されている。なお、隆起部41dは、主スコア線41の全体に渡って、同じ形状に形成されていてもよい。
【0034】
また、例えば、隆起部41dは、主スコア線41の破断開始位置の高さよりも、破断開始から離間した位置の高さが高いことが好ましい。具体例として、隆起部41dは、破断開始位置である第1部位41a(E点)における隆起部41dの高さよりも、破断開始から離間した位置である第2部位41b(F点、G点)における隆起部41dの高さが高く設定される。一例として、第1部位41a(E点)における隆起部41dの高さは、1μm~4μmであり、第2部位41b(F点、G点)における隆起部41dの高さは、5μm~9μmである。
【0035】
隆起部41dは、例えば、周囲の金属材料が移動すること等によって形成されるため、隆起部41dの高さをスコア線の底部の残厚に対して0.5%~11%の範囲(以下、上記数値範囲、と称する)より大きくしようとすると主スコア線41(スコア線)の内面が崩れ、結果、スコア形状が崩れることで、強度が弱くなる虞がある。また、隆起部41dは、上記数値範囲より小さいと脱線抑制のための強度が保てなくなる虞がある。よって、スコア形状を維持し、開蓋性を向上させるためには、隆起部41dは、上記数値範囲が好適である。但し、製造方法等によって、隆起部41dの強度を維持、スコア形状の維持及び開蓋性を向上等が可能であれば、上記数値範囲に限定されない。
【0036】
副スコア線42は、主スコア線41よりも、径方向で内方に設けられる。副スコア線42は、主スコア線41と平行に形成される。副スコア線42は、例えば、パネル部21の外面に設けられた楔状の溝である。副スコア線42は、主スコア線41の深さよりも深さが浅く形成される。即ち、パネル部21の副スコア線42が設けられた部位の厚さは、パネル部21の主スコア線41が設けられた部位の厚さよりも厚く形成される。副スコア線42によってパネル部21の一部が薄肉に形成される。副スコア線42は、主スコア線41の破断時に、例えば、破断しない。
【0037】
図3及び図4に示すように、セーフティー部34は、パネル部21が環状に折り返されることで形成される。即ち、セーフティー部34は、パネル部21が部分的に多層構造となる重層部である。セーフティー部34は、例えば、パネル部21の外周縁よりも径方向で内方であって、且つ、リベット部32よりも径方向で外方に4回折り返されることで形成される。セーフティー部34は、パネル部21がスコア31により破断したときに、パネル部21の開口の内周部及び破断したパネル部21の一部の外周部により手指を損傷しないように保護する保護部をパネル部21の開口の内周部及び破断したパネル部21の一部の外周部のそれぞれに形成する。
【0038】
セーフティー部34は、パネル部21が4回折り返されることで、部分的に5層構造となることで形成される。セーフティー部34であって、且つ、パネル部21の3層目にスコア31が形成される。ここで、パネル部21の外側を1層目とし、内側(缶胴101側)を5層目として以下説明する。
【0039】
セーフティー部34は、タブ12を開口操作し、スコア31が破断したときに、スコア31で破断したパネル部21の缶胴101に存する部位の内周縁を保護する外側セーフティー部34aと、スコア31で破断したパネル部21の缶胴101から外れた部位(開口片)の外周縁を保護する内側セーフティー部34bと、を形成する。外側セーフティー部34aは、3層のパネル部21によって構成され、折り返し部が開口したパネル部21の内周縁に存する。内側セーフティー部34bは、3層のパネル部21によって構成され、折り返し部がパネル部21の開口から離れた部位の外周縁に存する。
【0040】
具体的に説明すると、図4に示すように、セーフティー部34は、缶蓋1の外面側に位置する、折り返されたパネル部21の1層目及び2層目によって形成される上層34cと、缶蓋1の内面側に位置する、折り返されたパネル部21の4層目及び5層目のパネル部21によって形成される下層34dと、上層34cと下層34dとの間に位置する、2層目及び4層目から折り返された、スコア31が形成される3層目によって形成される中間層34eとを含む。
【0041】
外側セーフティー部34aは、上層34cと中間層34eの一部とにより形成され、上層34cがスコア31の上方に位置し、上層34cの1層目及び2層目が折り返されて湾曲する部位が、スコア31の破断後の保護部として機能する。
【0042】
内側セーフティー部34bは、中間層34eの一部と下層34dとにより形成され、下層34dがスコア31の下方に位置し、下層34dの4層目及び5層目が折り返されて湾曲する部位が、スコア31の破断後の保護部として機能する。
【0043】
指入れ用凹部35は、タブ12の指を掛ける後端の下方に位置し、パネル部21の外面から窪む。
【0044】
溝部22は、パネル部21の外周縁に連続して設けられる、缶胴に固定したときに缶胴側に突出する環状の窪みである。溝部22は、所謂、カウンターシンクである。溝部22は、缶蓋1の耐圧性を向上する機能を有する。
【0045】
第1フランジ部23は、缶胴101の開口端と巻締めされる。第1フランジ部23は、缶胴101と当接する面に、シール用の樹脂層が設けられる。
【0046】
図2に示すように、タブ12は、取付部51と、先端部52と、指掛け部53と、を備える。タブ12は、取付部51、先端部52及び指掛け部53が一体に形成される。タブ12は、指掛け部53に掛けた指等によって開口操作されることで、先端部52がパネル部21のスコア31に径方向で内方に隣接する部位を押圧し、スコア31を破断する。
【0047】
取付部51は、板状に形成され、リベット孔51aを有する。取付部51は、先端部52及び指掛け部53と連続する。リベット孔51aは、リベット部32を挿入可能な内径に形成される。リベット孔51aに挿入されたリベット部32がかしめ加工されることで、取付部51がリベット部32によってパネル部21に固定される。
【0048】
先端部52は、タブ12の先端側に形成される。先端部52は、先端の形状が円弧状又は多角形状に構成される。先端部52は、例えば、先端を除く外周縁が二重に折り曲げられることで形成される。先端部52は、径方向内方でパネル部21のスコア31に近接して配置される。
【0049】
指掛け部53は、タブ12の開口操作時にタブ12を持ち上げるために指を掛ける部位である。図2及び図3に示すように、例えば、指掛け部53は、リングホール53aを含み、環状に形成される。具体例として、指掛け部53は、角部が円弧状の矩形枠状に構成される。指掛け部53は、取付部51を挟んで先端部52の反対側に形成される。タブ12がパネル部21に取り付けられたときに、指掛け部53の後端は、指入れ用凹部35に対向する。指掛け部53は、例えば、外周縁及びリングホール53aの内周縁が二重となるように折り曲げられることで形成される。
【0050】
図1に示すように、缶胴101は、有底円筒状に形成される。缶胴101は、例えば金属板により成形される。缶胴101を成形する金属板は、表面に樹脂皮膜が形成されたアルミニウム合金板や表面処理鋼板等が挙げられる。なお、缶胴101は、樹脂材料により形成されていてもよい。
【0051】
缶胴101は、胴部111と、底部112と、テーパ部113と、第2フランジ部114と、を備える。胴部111は、円筒状に形成される。底部112は、胴部111の一端に一体に設けられる。テーパ部113は、一端(下端)が胴部111の他端に一体に連続し、他端(上端)が第2フランジ部114と一体に連続する。テーパ部113は、胴部111側から第2フランジ部114側に向かって漸次縮径する。第2フランジ部114は、缶胴101の開口端を形成する。第2フランジ部114は、第1フランジ部23と巻締め成形により固着される。
【0052】
このように構成された缶蓋1及び缶容器100によれば、スコア線としての補助スコア33の主スコア線41は、底部に形成された隆起部41dを含む。主スコア線41は、隆起部41dの肉厚が主スコア線41と隆起部41dとの対向面間に生じる谷部41eよりも厚くなることから、隆起部41dにおける強度が谷部41eにおける強度よりも高くなる。また、谷部41eは、主スコア線41が破断するときの案内線となる。よって、缶蓋1は、隆起部41dが形成された主スコア線41の破断性能が向上する。よって、主スコア線41の破断時に、脱線が生じることを防止できる。これにより缶蓋1は、開蓋性が向上するため、スコア線の破断時に脱線することによって好適な開蓋が阻害される開蓋不良を抑制することができる。
【0053】
また、補助スコア33は、主スコア線41の第1部位41a(E点)における隆起部41dの高さよりも、第2部位41b(F点、G点)における隆起部41dの高さが高く設定される。これにより、補助スコア33が破断したときに、スコア線の脱線が発生することをより抑制できる。即ち、補助スコア33の主スコア線41の破断は、タブ12の指掛け部53に掛けた指をパネル部21から離れる方向に移動させると、取付部51(リベット部32)を基点として、先端部52がパネル部21を押圧し、そして、指掛け部53がパネル部21から離れる方向に移動する。
【0054】
このとき、取付部51の補助スコア33が変形し、主スコア線41の第1部位41aが先ず破断する。そして、指をさらにパネル部21から離れる方向に移動させると、第1部位41aに連続する第2部位41bが破断することになるが、タブ12の指掛け部53がX方向に移動するのに対し、第2部位41bは、X方向に交差する方向に延びるように、円弧状に形成される。このため、第2部位41bの第1部位41a側において脱線の虞が高い。そして、第2部位41bにおいて脱線すると、脱線により破断した部位がX方向において取付部51(リベット部32)に到達し、先端部52がパネル部21を好適に押圧することができなくなり、開蓋性が低下する。
【0055】
しかしながら、実施形態の主スコア線41は、第2部位41bにおける隆起部41dの高さを第1部位41aよりも高くし、第1部位41aよりも第2部位41bにおける谷部41eの深さが深くなることで、第2部位41bの強度の向上となるとともに、破断の案内が好適に行われることになる。これにより、主スコア線41は、第2部位41bにおける脱線をより防止することができる。
【0056】
このように、缶蓋1は、主スコア線41の第1部位41aよりも第2部位41bにおける谷部41eの深さを深くすることで、開蓋性の低下をより抑制することができる。
【0057】
また、缶容器100は、陽圧缶とすることで、開蓋直後の主スコア線41の破断部に内圧が加える圧力が大きくなることから、内圧により補助スコア33の主スコア線41の破断が加速される。しかしながら、主スコア線41に隆起部41dを設け、この隆起部41dにより谷部41eが形成されることで、隆起部41dによる肉厚の増加及び谷部41eによる破断の案内により、初期破断時における主スコア線41の脱線を抑制できる。即ち、缶容器100を陽圧缶としても、スコア線に隆起部を設けることで、脱線を抑制できることから、缶蓋1は、開蓋性の低下を抑制できる。
【0058】
上述したように実施形態に係る缶蓋1及び缶容器100によれば、スコア線の底部に隆起部を設けることで、開蓋不良を抑制できる。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、上述した例では、隆起部41dが補助スコア33の主スコア線41に設けられる例を説明したがこれに限定されない。例えば、隆起部は、スコア31を形成するスコア線に設けられる構成としてもよい。また、上述した例では、一つのスコア線(主スコア線41)に一対の谷部41eが形成される例を説明したがこれに限定されない。例えば、谷部41eは、スコア線の延設方向に直交する方向で一方に設けられる構成であってもよい。
【0060】
また、上述した例では、主スコア線41の全体に渡って隆起部41dが形成されることで、主スコア線41の谷部41eが形成されている。しかしながら、隆起部41d(谷部41e)は、主スコア線41の一部、具体例としては、脱線が生じやすい第2部位41bにのみ設ける構成としてもよい。即ち、隆起部は、スコア線内に谷部を形成し、この谷部によって破断を案内する構成であることから、スコア線の形状によって脱線が生じやすい箇所に設ける構成とすればよい。
【0061】
また、上述した例では、隆起部により谷部を形成するスコア線として、補助スコア33の主スコア線41に隆起部41dを設ける構成を説明したがこれに限定されず、スコア31に設ける構成であってもよい。また、スコア線を設ける缶蓋1は、缶蓋(FOE)に限定されず、スコア線を設ける構成であれば種々の蓋に適用できる。また、同様に、缶蓋1を用いる缶容器100は、陽圧缶であることが好適であるが、陰圧缶であってもよい。陰圧缶の缶容器100であっても、スコア線に隆起部を設けることで谷部を形成する構成であれば、スコア線の脱線を防止できる。また、上述した例では、缶蓋1のパネル部21が円形状である例を説明したがこれに限定されず、パネル部21は矩形状であってもよい。また、缶容器100の内容物は、発泡性の内容物に限定されず、液体等の流動体に加え又は変えて固形状物であってもよい。
【0062】
即ち、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0063】
1…缶蓋、11…缶蓋本体、12…タブ、21…パネル部、22…溝部、23…第1フランジ部、31…スコア、32…リベット部、32A…コイニング加工部、33…補助スコア、34…セーフティー部、34a…外側セーフティー部、34b…内側セーフティー部、34c…上層、34d…下層、34e…中間層、35…指入れ用凹部、41…主スコア線、41a…第1部位、41b…第2部位、41c…第3部位、41d…隆起部、41e…谷部、42…副スコア線、51…取付部、51a…リベット孔、52…先端部、53…指掛け部、53a…リングホール、100…缶容器、100a…固着部、101…缶胴、111…胴部、112…底部、113…テーパ部、114…第2フランジ部。
図1
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図7