IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人 関西大学の特許一覧 ▶ 株式会社日本触媒の特許一覧

<>
  • 特開-基板及び無電解銅めっき方法 図1
  • 特開-基板及び無電解銅めっき方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143218
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】基板及び無電解銅めっき方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20241003BHJP
   C23C 18/40 20060101ALI20241003BHJP
   C23C 18/18 20060101ALI20241003BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H05K3/18
C23C18/40
C23C18/18
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055770
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 英也
(72)【発明者】
【氏名】中筋 渉
(72)【発明者】
【氏名】郷田 隼
(72)【発明者】
【氏名】小野 博信
(72)【発明者】
【氏名】山本 達也
【テーマコード(参考)】
4F100
4K022
5E343
【Fターム(参考)】
4F100AB01C
4F100AB17D
4F100AB24C
4F100AD11B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100EH71D
4F100GB41
4K022AA03
4K022AA13
4K022BA08
4K022CA06
4K022CA09
4K022DA01
5E343AA02
5E343AA15
5E343AA17
5E343AA18
5E343AA22
5E343AA26
5E343BB24
5E343CC48
5E343CC74
5E343DD33
5E343EE37
5E343ER32
5E343GG06
5E343GG11
(57)【要約】
【課題】銅被膜を有する基板を簡便に作製でき、基板を回路基板として用いる場合に、伝送損失を充分に低減できる方法を提供する。
【解決手段】基材、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層、並びに、銅被膜をこの順で有することを特徴とする基板。また、基材の上側に酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を形成する工程、並びに、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に無電解銅めっきで銅被膜を形成する工程を含むことを特徴とする無電解銅めっき方法。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層、並びに、銅被膜をこの順で有することを特徴とする基板。
【請求項2】
前記基板は、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層と銅被膜との間に金属単体及び/又は金属化合物の層を更に有することを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記基材は、酸化処理されていないことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板。
【請求項4】
回路基板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板。
【請求項5】
基材の上側に酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を形成する工程、並びに、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に無電解銅めっきで銅被膜を形成する工程を含むことを特徴とする無電解銅めっき方法。
【請求項6】
酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に金属単体及び/又は金属化合物の層を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の無電解銅めっき方法。
【請求項7】
前記銅被膜を形成する工程は、銅化合物、還元剤、及び、水を含むめっき用組成物を用いておこなうことを特徴とする請求項5又は6に記載の無電解銅めっき方法。
【請求項8】
前記基材を酸化処理する工程を含まないことを特徴とする請求項5又は6に記載の無電解銅めっき方法。
【請求項9】
基材の上側に酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を形成する工程、並びに、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に無電解銅めっきで銅被膜を形成する工程を含むことを特徴とする基板の製造方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の基板を用いて構成される製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板及び無電解銅めっき方法に関する。より詳しくは、プリント配線基板等として用いられる基板、無電解銅めっき方法、基板の製造方法、及び、基板を用いて構成される製品に関する。
【背景技術】
【0002】
無電解めっき法とは、被めっき体への化学反応を主体とした金属皮膜の形成を行う手法である。直流電源を用いる電気めっきと異なり、素地金属表面もしくは還元剤から電子を供給し還元することが特徴である。中でも無電解銅めっき法で得られる銅被膜は、安価に形成でき、導電性、放熱性に優れ、低硬度であるためクラックが起きづらいという特徴を有する。このような無電解銅めっき法は、プリント配線基板の作製に用いられ、高性能なプリント配線基板の需要の増加に伴って、種々の研究がなされている。
【0003】
従来の無電解銅めっきは基材への定着性、めっき性を向上させるために、(1)基材表面の酸化処理(粗面化処理)、(2)めっき反応(還元反応)の触媒としてのPd粒子による前処理が必要であった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-168077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方法では、触媒を担持させるために基材表面を酸化処理して粗面化する必要があり、銅被膜と被めっき面との界面等が粗面化するため、基板を回路基板として用いる場合に、高周波の電気信号の伝送損失を充分に低減することが困難であった(例えば、図2参照)。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものでもあり、銅被膜を有する基板を簡便に作製でき、基板を回路基板として用いる場合に、高周波であっても伝送損失を充分に低減できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、銅被膜を有する基板を簡便に作製でき、基板を回路基板として用いる場合に、高周波であっても伝送損失を充分に低減できる方法について種々検討し、基材、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層、並びに、銅被膜をこの順で有する基板とすると、基材表面を粗面化しなくても、酸化グラフェンやその誘導体が種々の触媒粒子等を担持する性能を発揮でき、銅被膜と被めっき面との界面等を平滑なままとして、基板を回路基板として用いる場合に高周波であっても伝送損失を充分に低減できることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明(1)は、基材、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層、並びに、銅被膜をこの順で有することを特徴とする基板である。
【0009】
本発明(2)は、上記基板は、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層と銅被膜との間に金属単体及び/又は金属化合物の層を更に有する本発明(1)の基板である。
【0010】
本発明(3)は、上記基材は、酸化処理されていない本発明(1)又は(2)の基板である。
【0011】
本発明(4)は、回路基板である本発明(1)~(3)のいずれかの基板である。
【0012】
本発明(5)は、基材の上側に酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を形成する工程、並びに、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に無電解銅めっきで銅被膜を形成する工程を含むことを特徴とする無電解銅めっき方法である。
【0013】
本発明(6)は、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に金属単体及び/又は金属化合物の層を形成する工程を更に含むことを特徴とする本発明(5)の無電解銅めっき方法である。
【0014】
本発明(7)は、上記銅被膜を形成する工程は、銅化合物、還元剤、及び、水を含むめっき用組成物を用いておこなうことを特徴とする本発明(5)又は(6)の無電解銅めっき方法である。
【0015】
本発明(8)は、上記基材を酸化処理する工程を含まないことを特徴とする本発明(5)~(7)のいずれかの無電解銅めっき方法である。
【0016】
本発明(9)は、基材の上側に酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を形成する工程、並びに、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に無電解銅めっきで銅被膜を形成する工程を含むことを特徴とする基板の製造方法である。
【0017】
本発明(10)は、本発明(1)~(4)のいずれかの基板を用いて構成される製品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の基板は、簡便に作製でき、基板を回路基板として用いる場合に、高周波であっても伝送損失を充分に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、基材、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層、金属単体及び/又は金属化合物の層、並びに、銅被膜をこの順で有する基板を示す模式図である。
図2図2は、従来法で作製された基板を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において段落に分けて記載される個々の本発明の好ましい特徴を2つ以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態である。
【0021】
<基板>
本発明の基板は、少なくとも、基材、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層、並びに、銅被膜をこの順で有する。
以下では、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層、基材、銅被膜の順で説明する。
【0022】
(酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層)
酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層は、酸化グラフェン及び/又はその誘導体を含んで構成される層である。酸化グラフェンは極性(親水性)化合物であり、無電解銅めっきの触媒として金属単体や金属化合物を用いた場合に、親水性を活かして金属単体や金属化合物と充分に相互作用して担持可能であり、また、その薄片形状から、疎水性基材等の基材とも分子間力で充分に相互作用可能である。このように、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層は、密着効果を発揮でき、基材と触媒との間の橋渡し的な役割を担う(例えば、図1参照。)。また、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層は、耐水性・安定性が高く、触媒含有溶液の塗布時に流れ出したり、混ざったり、反応したりすることが充分に抑制される。更に、酸化グラフェンは、本質的に電子・イオン伝導性を有するので、本発明の基板において伝導の妨げにならない。
【0023】
上記酸化グラフェンは、グラフェン等の黒鉛質の炭素材料を酸化することにより酸素が結合したもの(該炭素材料に酸素が結合したもの)であり、該酸素は黒鉛質の炭素材料に対しカルボキシル基、カルボニル基、水酸基、エポキシ基等の親水性の官能基として存在している。
なお、一般的にグラフェンとは、sp結合で結合した炭素原子が平面的に並んだ1層からなるシートをいい、グラフェンシートが多数積層されたものはグラファイトといわれるが、本発明における酸化グラフェン及び/又はその誘導体(酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層)には、炭素原子1層のみからなるシートだけではなく、2層~100層程度積層した構造を有するものも含まれる。該酸化グラフェン及び/又はその誘導体(酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層)は、炭素原子1層のみからなるシートであるか、又は、2層~20層程度積層した構造を有するものであることが好ましく、炭素原子1層のみからなるシートであることがより好ましい。
【0024】
上記酸化グラフェンは、還元型の酸化グラフェンであってもよい。還元型の酸化グラフェンは、酸化グラフェンから親水性の官能基が脱離して還元する工程を経て得られるものであり、酸化グラフェン層を形成した後、酸化グラフェン層中の酸化グラフェンから親水性の官能基が脱離して還元する工程を経て得られるものであってもよい。
【0025】
上記酸化グラフェンの誘導体は、特に限定されないが、酸化グラフェンをアミン処理、アンモニア処理する等して、酸化グラフェンが有する親水性の官能基に窒素含有基等の官能基を導入したものが好ましい。例えば、酸化グラフェンを処理(反応)する化合物として、アンモニア、アルキルアミン(1,2,3級および4級アンモニウム含む)、アリールアミンなどが挙げられ、これら化合物中の置換基を有しても良いアミノ基は1分子中に複数存在しても良い(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、フェニレンジアミンなど)。さらに、アミノ基を複数有するポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのようなポリマーであっても良い。これにより、酸化グラフェンの誘導体と、基材や触媒としての金属単体、金属化合物との相互作用がより向上する。上記処理工程は酸化グラフェン分散液中で該化合物を酸化グラフェンに作用させ、あらかじめ酸化グラフェン誘導体としたのちに製膜することや、酸化グラフェンの層を形成したのちに酸化グラフェン層に該化合物を作用させ、酸化グラフェン誘導体層を得ることが好ましい。また、上記処理工程では、酸化グラフェン(アニオン性)と該化合物(カチオン性)を接触させるだけで誘導化することが可能であるが、より相互作用を高めるためには結合を積極的に形成させることも好ましい。例えば、加熱や触媒添加により反応を促進することができる。
【0026】
上記酸化グラフェン又はその誘導体は、上述したように、更に、窒素含有基等の官能基を有していてもよく、例えば、全構成元素に対する窒素の構成元素としての含有率が1モル%以上、10モル%以下であることが好ましい。なお、上記酸化グラフェン又はその誘導体は、全構成元素に対する炭素、水素、及び、酸素の構成元素としての含有率が90モル%以上であることが好ましい。
【0027】
上記酸化グラフェン又はその誘導体は、酸素原子数に対する炭素原子数の比(C/O)が5.5以下であることが好ましい。該比は、5以下であることがより好ましく、4以下であることが更に好ましい。この範囲にあることで、相互作用可能な酸素官能基が十分に存在し、効果を発揮できる。また、該比は、グラフェン骨格構造を担保する観点から1以上であることが好ましい。
酸素原子数に対する炭素原子数の比は、XPS測定で得られるO1s領域の全ピーク面積とC1s領域の全ピーク面積との比率により確認することができる。
【0028】
上記酸化グラフェン又はその誘導体の層中、酸化グラフェン又はその誘導体の質量割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。中でも、酸化グラフェン又はその誘導体の層が、実質的に酸化グラフェン又はその誘導体からなるものであることが最も好ましい。
なお、酸化グラフェン又はその誘導体の層が酸化グラフェン以外の成分を含む場合、当該成分としては、導電助剤、バインダー、着色剤、溶媒等が挙げられる。
【0029】
上記酸化グラフェン又はその誘導体の層は、その平均厚みが1~100nmであることが好ましい。該平均厚みは、20nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。
上記平均厚みは、原子間力顕微鏡又は走査型電子顕微鏡を用いて、酸化グラフェン又はその誘導体の層において無作為に選択した5点の厚みを測定し、その平均値を求めることにより測定することができる。
【0030】
(基材)
上記基材としては、公知の種々の基材を使用でき、これにより、本発明の基板の強度等を充分なものとすることができる。
上記基材としては、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁性基材;金属膜、酸化インジウムスズ(ITO)膜、酸化インジウム亜鉛(IZO)膜、黒鉛膜、グラフェン膜、カーボンナノチューブ膜等の導電性基材等が挙げられ、中でも絶縁性基材が好ましく、ガラス、樹脂が平滑な基板を作製できる点でより好ましい。なお、本発明により、酸化グラフェン又はその誘導体を用いることで、従来無電解銅めっきの基材とすることが難しかったガラス、樹脂等の平滑基板にも好適に無電解銅めっきをすることができる。
【0031】
上記基材は、UV/オゾン処理等の親水化処理、アミン処理、アンモニア処理等の表面処理をしていてもよいし、していなくてもよいが、基材(より好ましくは、ガラス基材やPET等の樹脂基材)を親水化処理、アミン処理、及び、アンモニア処理からなる群より選択される少なくとも1種の処理により表面処理をした処理基材が好ましい。例えば、上記基材が、ガラス基材をアミン処理及び/又はアンモニア処理により表面処理する等して得られる、表面にアミノ基を有するガラス(MAS)であることが本発明におけるより好ましい形態の1つである。これにより、酸化グラフェン又はその誘導体の層との相互作用をより高めることができる。
【0032】
上記基材は、酸化処理(粗面化処理)されていないことが好ましい。言い換えれば、上記基材は、酸化処理により粗面化されていないことが好ましい。本発明の基板では、上記基材が酸化処理されていなくても、酸化グラフェンやその誘導体が種々の触媒粒子等を担持する性能を発揮できる。また、上記基材が酸化処理されていないことで、銅被膜と被めっき面との界面等をより平滑にすることができ、例えば本発明の基板を回路基板として用いる場合に、高効率な回路基板とすることができる。
【0033】
上記基材は、水の接触角が40度以上であることが好ましい。該接触角は、50度以上であることがより好ましく、60度以上であることが更に好ましく、70度以上であることが特に好ましい。
上記基材は、このように表面が疎水性であっても、薄片形状である酸化グラフェン又はその誘導体の層と充分に相互作用することができる。
上記接触角は、液滴法によって測定することができる。
【0034】
上記基材の平均厚みは、10μm以上、50mm以下であることが好ましい。該平均厚みは、50μm以上であることがより好ましい。また、該平均厚みは、10mm以下であることがより好ましい。
上記平均厚みは、ノギスを用いて、基材において無作為に選択した5点の厚みを測定し、その平均値を求めることにより測定することができる。
【0035】
(銅被膜)
銅被膜は、銅を主成分とする被膜であり、めっき層である。銅を主成分とするとは、銅被膜中、銅の構成元素としての含有率が80モル%以上であることをいう。
銅被膜は、通常、基板の表面に存在するが、基板表面の全体に存在しなくてもよく、エッチング処理される等して基板表面の一部に存在するものであってもよく、例えば配線状であってもよい。
なお、銅被膜は、銅被膜と所望によりその他の導電膜とから構成される導電層の上面側(最上層)に位置するものであることが好ましい。
【0036】
上記銅被膜中、銅の構成元素としての含有率は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更に好ましい。中でも、銅被膜が、実質的に銅からなるものであることが最も好ましい。
なお、銅被膜が銅以外の成分を含む場合、当該成分としては、導電助剤、着色剤、溶媒等が挙げられる。また、銅被膜は、その表面上に、空気酸化等により形成された酸化膜を有していてもよい。
【0037】
上記銅被膜の平均厚みは、100nm以上、100μm以下であることが好ましい。該平均厚みは、1μm以上であることがより好ましい。また、該平均厚みは、10μm以下であることがより好ましい。
上記平均厚みは、実施例に記載の装置を用い、銅被膜において無作為に選択した5点の厚みを測定し、その平均値を求めることにより測定することができる。
【0038】
上記銅被膜の体積抵抗率は、1.0×10-6Ωcm以上、1.0×10-5Ωcm以下であることが好ましい。これにより、本発明の基板を回路基板等として用いた場合に充分な電気伝導率を発揮できる。
上記銅被膜の体積抵抗率は、実施例に記載の方法により測定されるものである。
【0039】
(金属単体及び/又は金属化合物の層)
本発明の基板は、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層と銅被膜との間に金属単体及び/又は金属化合物の層を更に有していてもよい。すなわち、本発明の基板は、基材、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層、金属単体及び/又は金属化合物の層、並びに、銅被膜をこの順で有することが好ましい。金属単体及び/又は金属化合物は、通常、無電解銅めっきの触媒として機能する。
【0040】
上記金属単体及び/又は金属化合物を構成する金属は、例えば、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、金等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる、該金属は、例えば、銀、金、パラジウム等の貴金属、銅が好ましく、銀がより好ましい。酸化グラフェン又はその誘導体により銀をナノ粒子の状態で安定化できる。
金属化合物としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属ハロゲン化物、金属硝酸塩等が挙げられる。
なお、金属単体及び/又は金属化合物の層とは、金属単体及び/又は金属化合物が粒子状態(例えば、ナノ粒子状態)で存在する層のほか、金属がイオンとして存在する層も含む。
【0041】
上記金属単体及び/又は金属化合物は、粒子形状であることが好ましい。粒子形状としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状、ロッド状、曲面含有状等が挙げられる。
上記金属単体及び/又は金属化合物は、その平均粒子径が10nm以上、10μm以下であることが好ましい。このような平均粒子径のものを用いることで、銅化合物の還元反応をより効率的に進めることができる。
上記平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定することができる。
【0042】
上記金属単体及び/又は金属化合物の層中、金属単体及び/又は金属化合物の質量割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。中でも、金属単体及び/又は金属化合物の層が、実質的に金属単体及び/又は金属化合物からなるものであることが最も好ましい。
なお、金属単体及び/又は金属化合物の層が金属単体、金属化合物以外の成分を含む場合、当該成分としては、導電助剤、溶媒等が挙げられる。
【0043】
上記金属単体及び/又は金属化合物の層の平均厚みは、10nm以上、100μm以下であることが好ましい。該平均厚みは、50nm以上であることがより好ましい。また、該平均厚みは、10μm以下であることがより好ましい。
上記平均厚みは、ノギス又は触針式段差計を用いて、金属単体及び/又は金属化合物の層において無作為に選択した5点の厚みを測定し、その平均値を求めることにより測定することができる。
【0044】
上記金属単体及び/又は金属化合物の層の上側に上記銅被膜があればよいが、金属単体及び/又は金属化合物の層上に直接銅被膜があることが好ましい。すなわち、上記金属単体及び/又は金属化合物の層は、被めっき層であることが好ましい。
【0045】
本発明の基板は、回路基板であることが好ましい。本発明の基板は、回路基板である場合、高周波であっても伝送損失を充分に低減できる。銅被膜は、通常、基板表面上に、配線として配置されている。
【0046】
<無電解銅めっき方法>
本発明は、基材の上側に酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を形成する工程、並びに、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に無電解銅めっきで銅被膜を形成する工程を含む無電解銅めっき方法でもある。
【0047】
(基材の上側に酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を形成する工程)
上記工程は、特に限定されないが、例えば、基材に、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の水分散液を接触させる方法(接触方法)にて簡便におこなうことができる。該接触方法は、特に限定されないが、基材を、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の水分散液中に含浸させる方法、基材に、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の水分散液をスピンコートする方法が好適なものとして挙げられる。これにより、基材上に、上述した酸化グラフェン層及び/又はその誘導体の層を形成することができる。
基材を、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の水分散液中に含浸させる場合、含浸時間は、5秒以上、5時間以下とすることができる。
また、上記接触工程の後に、洗浄工程を含むことが好ましい。洗浄工程により、余分な酸化グラフェンや不純物が効果的に除去可能である。洗浄工程としては洗浄液に含浸する、洗浄液を吹きかけるなどが好ましい。洗浄液としては特に限定されないが有機分散媒や無機成分を一部に含む水系分散液であってもよいが、水のみからなることが好ましい。
【0048】
上記酸化グラフェンの水分散液は、酸化黒鉛を水中に分散させ、超音波処理やホモジナイザー処理等によってその層間を剥離させたり、酸化グラフェンを水中に分散させたりして得ることができる。上記酸化グラフェンの誘導体の水分散液は、酸化グラフェンに対して誘導体化処理をおこない、必要に応じて精製したうえで、水中に分散して得ることができる。
水分散媒は、有機分散媒を一部に含む水系分散液であってもよいが、水のみからなることが好ましい。
上記酸化グラフェン及び/又はその誘導体の水分散液中の濃度は、10mg/L以上であることが好ましい。該濃度は、30g/L以下であることが好ましく、20g/L以下であることがより好ましく、10g/L以下であることが更に好ましい。
【0049】
上記酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を形成する工程は、例えば、5~120℃でおこなうことが好ましい。
また上記酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を形成した後、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を熱処理してもよい。これにより、当該層の硬度をより優れたものとすることができ、安定化できる。熱処理をおこなう場合、その温度は、60~200℃が好ましく、70~150℃がより好ましい。また、熱処理の時間は、5分~5時間が好ましく、10分~2時間がより好ましい。
【0050】
なお、上記酸化グラフェンは、黒鉛を、Hummers法、Brodie法、Staudenmaier法等のいずれの方法における黒鉛の酸化方法を用いたり、Hummers法における酸化方法を採用した、黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する方法を用いたりして得ることができる。更に、必要に応じて、酸化反応停止工程、濃縮工程、精製工程、剥離工程等をおこなうことができる。
上記酸化グラフェンの誘導体は、上記酸化グラフェンをアミン処理、アンモニア処理する等して得ることができる。例えば、酸化グラフェンが分散してなる水系分散液とアミン及び/又はアンモニアとを混合し、反応させることで、酸化グラフェンが有する親水性の官能基に窒素含有基を導入することができる。
【0051】
(酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に無電解銅めっきで銅被膜を形成する工程)
銅被膜を形成する工程は、無電解銅めっきでおこなうことができる。これにより、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に、銅被膜を好適に形成することができる。酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に銅被膜を形成するとは、後述するように、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層上に金属単体及び/又は金属化合物の層を形成し、該金属単体及び/又は金属化合物の層上に銅被膜を形成することが好ましい。
【0052】
上記銅被膜を形成する工程は、通常、銅化合物、還元剤、及び、溶媒を含むめっき用組成物を用いておこなう。めっき用組成物の溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合液を使用できる。有機溶媒としては、アルコール系溶媒を好適に使用できる。該溶媒は、水又は水と有機溶媒の混合液であることが好ましく、水であることがより好ましい。すなわち、めっき用組成物は、銅化合物、還元剤、及び、水を含むものが好ましい。なお、水としては、イオン交換水、工業用水、水道水等を好適に使用できる。
銅化合物としては、酸化銅、水酸化銅、硫酸銅、これらの水和物等が挙げられるが、中でも硫酸銅又はその水和物が好ましい。
【0053】
上記めっき用組成物中、銅化合物の割合は、0.015M以上、0.075M以下であることが好ましい。銅化合物の割合が0.015M以上であると、体積抵抗率をより低いものとすることができる。銅化合物の割合が0.075M以下であると、膜厚をより充分なものとすることができる。銅化合物の割合は、0.03M以上、0.06M以下であることがより好ましい。
【0054】
還元剤としては、銅化合物を還元して金属銅を得ることができるものであれば特に限定されないが、代表的にはホルムアルデヒド、グリオキシル酸等であり、中でもグリオキシル酸が好ましい。めっき用組成物中、還元剤の割合は、0.05M以上、0.40M以下であることが好ましい。該還元剤の割合が0.05M以上であると、銅被膜の表面状態がより優れたものとなる。該還元剤の割合が0.40M以下であると、体積抵抗率をより低いものとすることができる。還元剤の割合は、0.08M以上、0.25M以下であることがより好ましい。
【0055】
めっき用組成物は、更に、1価の銅イオン及び/又は2価の銅イオンに配位する配位子成分を含むことが好ましい。中でも、めっき用組成物が、1価の銅イオンに配位する配位子成分及び2価の銅イオンに配位する配位子成分を含むことがより好ましい。配位子成分としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の六座配位子、2,2’-ビピリジル等の二座配位子が挙げられる。なお、2,2’-ビピリジルは1価の銅イオンに配位し、EDTAは、2価の銅イオンに配位する。
めっき用組成物中、配位子成分は、(銅化合物由来の)銅イオンに配位していてもよく、配位していなくてもよい。
【0056】
めっき用組成物が、1価の銅イオンに配位する配位子成分を含む場合、めっき用組成物1L中、1価の銅イオンに配位する配位子成分(銅イオンを除く)の質量割合は0.01mg以上、1mg以下であることが好ましく、0.1mg以上、0.5mg以下であることがより好ましい。
【0057】
めっき用組成物が、2価の銅イオンに配位する配位子成分を含む場合、めっき用組成物中、2価の銅イオンに配位する配位子成分(銅イオンを除く)の割合は0.1M以上、1M以下であることが好ましく、0.2M以上、0.5M以下であることがより好ましい。
【0058】
めっき用組成物は、そのpHが10以上であることが好ましい。これにより、例えばシュウ酸塩等の、還元反応の副生成物の溶解度が向上し、銅被膜をより好適に形成することができる。上記pHは、11以上であることがより好ましい。また、上記pHは、14以下であることが好ましく、13以下であることがより好ましい。
pHの調整のために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を適宜使用できる。
pHは、25℃で、pHメーターを用いて測定されるものである。
【0059】
上記銅被膜を形成する工程は、例えば、5~100℃でおこなうことができ、50~80℃でおこなうことが好ましい。
上記銅被膜を形成する工程は、例えば、5分~24時間でおこなうことができ、30分~12時間でおこなうことが好ましい。
また上記銅被膜を形成した後、銅被膜を熱処理することが好ましい。これにより、銅被膜の膜質がより優れたものとなる。熱処理の温度は、80~500℃が好ましく、100~400℃がより好ましい。また、熱処理の時間は、10分~6時間が好ましく、20分~3時間がより好ましい。
【0060】
(酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に金属単体及び/又は金属化合物の層を形成する工程)
本発明の無電解銅めっき方法は、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に金属単体及び/又は金属化合物の層を形成する工程を更に含むことが好ましい。該工程は、通常、上述した酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に無電解銅めっきで銅被膜を形成する工程の前に行われる。
【0061】
上記金属単体及び/又は金属化合物の層を形成する工程は、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層に、金属単体及び/又は金属化合物の水分散液を接触させる方法(接触方法)にて簡便におこなうことができる。該接触方法は、特に限定されないが、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を有する基材を、金属単体及び/又は金属化合物の水分散液中に含浸させる方法が好適なものとして挙げられる。これにより、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層上に、上述した金属単体及び/又は金属化合物の層を簡便に形成できる。
酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を有する基材を、金属単体及び/又は金属化合物の水分散液中に含浸させる場合、含浸時間は、5秒以上、5時間以下とすることができる。また、その温度は、30~85℃とすることができる。
【0062】
上記金属単体及び/又は金属化合物の水分散液は、金属単体及び/又は金属化合物を水中に分散又は溶解させて得ることができる。
水分散媒は、有機分散媒を一部に含む水系分散液であってもよいが、水のみからなることが好ましい。
上記金属単体及び/又は金属化合物の水分散液中の濃度は、0.01M以上であることが好ましく、0.05M以上であることがより好ましい。該濃度は、2M以下であることが好ましく、1M以下であることがより好ましく、0.5M以下であることが更に好ましい。
【0063】
本発明の無電解銅めっき方法は、各工程間で、基材等の表面を水洗する工程、乾燥する工程を更に含んでいてもよい。
【0064】
なお、本発明の無電解銅めっき方法は、上記基材を酸化処理する工程を含まないことが好ましい。本発明の無電解銅めっき方法が上記基材を酸化処理する工程を含まなくても、上述した酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を形成する工程で形成された酸化グラフェンやその誘導体の層が種々の触媒粒子等を担持する性能を発揮できる。また、上記基材が酸化処理されていないことで、銅被膜と被めっき面との界面等をより平滑にすることができ、例えば本発明の基板を回路基板として用いる場合に、高効率な回路基板とすることができる。
【0065】
本発明の無電解銅めっき方法は、空気中で行ってもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。また、加圧条件下、常圧条件下、減圧条件下のいずれで行ってもよい。
【0066】
<基板の製造方法>
本発明は、基材の上側に酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層を形成する工程、並びに、酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層の上側に無電解銅めっきで銅被膜を形成する工程を含む基板の製造方法でもある。
【0067】
<製品>
本発明は、本発明の基板を用いて構成される製品でもある。
製品としては、プリント基板を搭載した各種製品、例えば、家電機器、車載機器、輸送機器、通信機器等に用いられる電子部品が挙げられる。
【実施例0068】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0069】
[ラマンスペクトル測定]
ラマン分光分析は以下の装置、条件により行った。
測定装置:顕微ラマン(日本分光(株),NRS-3100)
測定条件:532nmレーザー使用、対物レンズ20倍、CCD取り込み時間1秒、積算
32回(分解能=4cm-1
測定内容:酸化グラフェンに特徴的なG、Dバンドの有無により存在を確認する。
【0070】
[X線光電子分光(XPS)]
以下の条件で分析し、酸素、炭素含有量を確認した。
島津クレイトス社製 AXIS-NOVAX線線源・出力 AlKα―100Wパスエネルギー40eV中和銃ON
【0071】
[銅膜の物性評価]
膜厚[μm]:マイクロメーター(Mitutoyo,QuantuMike),または卓上走査電子顕微鏡(JEOL,JCM-6000)のエネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDS)で測定した。
表面状態:デジタル顕微鏡と卓上SEMで析出銅膜の偏析や孔の有無を評価した。
平均体積抵抗率[Ωcm]:抵抗率計(三菱化学(株),MCP-T360),四探針プローブ(三菱化学(株),MCP-TPQPP)を用いて各銅膜10箇所にてシート抵抗値[Ω/□]を四探針法で測定し、それぞれ膜厚[cm]と乗算したものを平均して算出した。
【0072】
[調製例1]酸化グラフェン分散液の調製
酸化グラフェン分散液を以下の工程で合成した。反応容器にあらかじめ黒鉛(伊藤黒鉛株式会社製Z-25)15g、硫酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)640gを入れ、30℃に調整しながら過マンガン酸カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)45gを入れた。投入後、30分、35℃に昇温し2時間反応させた。
反応後反応液を水1070ml、30%過酸化水素水(富士フイルム和光純薬株式会社製)42mlを加え反応停止させた。得られた反応液は静置沈降により、上澄みの除去とイオン交換水による再分散を繰り返し精製した。精製後、ホモジナイザーにより剥離操作を行い、酸化グラフェン分散液(1)(1.2%水分散体)を調製した。得られた酸化グラフェンは電子顕微鏡観察により単層であるとわかった。XPS分析より求められたC/Oは1.82であった。
【0073】
[調製例2]めっき液の調製
CuSO水溶液0.045M、EDTA0.36M、グリオキシル酸0.10Mの混合溶液に5.0mMの2,2’-ビピリジル水溶液を2.0ppmとなるように混合しKOH水溶液で卓上型pHメーター(HORIBA,F-53)を用いてpH12.0に調整することでめっき液を得た。
【0074】
[実施例1-4]
酸化グラフェン分散液(1)を蒸留水にて10倍希釈し、0.12wt%酸化グラフェン水分散液を得た。スライドガラス(実施例1、接触角22.5度)、表面がアミノ基で修飾されたガラス(実施例2、松浪硝子工業(株)、MAS-01、接触角45.0度)、PETフィルム(実施例3、コクヨ(株)、VF-5、接触角80度)および、UV/オゾン処理したPETフィルム(実施例4、接触角50度)をそれぞれ15×26mmに切り取り、それらを蒸留水・ソルミックスで洗浄して0.12wt%酸化グラフェン水分散液に1時間浸漬することで酸化グラフェン薄膜基材を作成した。含浸後、水洗により余分な酸化グラフェン成分を除去した。酸化グラフェン薄膜基材を、予め窒素ガスで10分間バブリングして溶存酸素を取り除いた0.10MのAgNO水溶液に浸漬し、75℃、30分間加熱することで、Agイオンが酸化グラフェンによって還元されることにより、銀ナノ粒子(AgNPs)が担持されたAgNPs/酸化グラフェン基材を調製した。このAgNPs/酸化グラフェン基材を3回以上の蒸留水で浸漬洗浄を行い、余分なAgNO水溶液を取り除いた。すべてのサンプルで、UV-visによりAgNPsの表面プラズモン共鳴に由来する200-500nmの吸収、ラマン分析により酸化グラフェンに由来するピークを確認した。
【0075】
フッ素加工された容器へ調製例(2)で得られためっき液を20mL加え入れ,アルミバス内で60℃、均一に加熱してめっき浴を再現した。上記で得られたAgNPs/酸化グラフェン基材を、対角で抑えられるように変形させたポリエチレン被覆ワイヤー(大創産業社,A針金カラーNo.06)で固定し、容器の内壁や底にAgNPs/GO基材が当たらないように気を付けながら完全にめっき浴に浸かるまで浸漬して1時間無電解銅めっきを行った。めっき後はエタノールで洗い流し、大気下で乾燥した。得られた銅膜厚はそれぞれ3μm、体積抵抗率は5.6×10-6Ωcm(実施例1)、3.9×10-6Ωcm(実施例2)、6.4×10-6Ωcm(実施例3)、4.6×10-6Ωcm(実施例4)であった。体積抵抗率の観点から、表面アミン化されているガラスや、親水化処理されているPETが未処理のものに比べて良好であった。
【符号の説明】
【0076】
1:基材
2:酸化グラフェン及び/又はその誘導体の層
3:金属単体及び/又は金属化合物の層
4:銅被膜
11:酸化エッチング剤でエッチング処理された基材
12:パラジウムナノ粒子の層
13:銅被膜
図1
図2