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特開2024-143219ガスバリア性フィルム、包装材および包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143219
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ガスバリア性フィルム、包装材および包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20241003BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20241003BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B27/32 Z
C08L75/04
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055777
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】アールエム東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】城所 雅子
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 隆明
(72)【発明者】
【氏名】田村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭一
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB21
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA31
3E086DA08
4F100AA01C
4F100AA12C
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AH03B
4F100AH06B
4F100AK01B
4F100AK07A
4F100AK07D
4F100AK25B
4F100AK31B
4F100AK41B
4F100AK51B
4F100AK66A
4F100AK66D
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA02B
4F100CB03D
4F100EJ37A
4F100EJ38A
4F100EJ65B
4F100GB15
4F100JA02
4F100JA03
4F100JA04
4F100JA05B
4F100JB04B
4F100JL12D
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4J002CK021
4J002CK031
4J002CK051
4J002ER006
4J002FD146
4J002GH01
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】バリア性が向上した、ガスバリア性フィルムを提供する。
【解決手段】プロピレン系重合体を含む延伸フィルム層(A)と、アンダーコート層(B)と、無機物層(C)と、をこの順番に備え、アンダーコート層(B)の赤外線吸収スペクトルにおいて、950cm-1の吸光度と1900cm-1の吸光度とを結んだベースラインに対する、吸収帯1600cm-1以上1780cm-1以下の範囲の吸光度の最大ピーク高さをPとし、3100cm-1の吸光度と3600cm-1の吸光度とを結んだベースラインに対する、吸収帯3100cm-1以上3600cm-1以下の範囲の吸光度の最大ピーク高さをPとしたとき、P/Pが0.065以上0.26以下である、ガスバリア性フィルム100。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体を含む延伸フィルム層(A)と、アンダーコート層(B)と、無機物層(C)と、をこの順番に備え、
前記アンダーコート層(B)の赤外線吸収スペクトルにおいて、
950cm-1の吸光度と1900cm-1の吸光度とを結んだベースラインに対する、吸収帯1600cm-1以上1780cm-1以下の範囲の吸光度の最大ピーク高さをPとし、
3100cm-1の吸光度と3600cm-1の吸光度とを結んだベースラインに対する、吸収帯3100cm-1以上3600cm-1以下の範囲の吸光度の最大ピーク高さをPとしたとき、
/Pが0.065以上0.26以下である、ガスバリア性フィルム。
【請求項2】
前記アンダーコート層(B)に含まれる樹脂成分のガラス転移温度が55℃以上である、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
前記アンダーコート層(B)は、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オキサゾリン系樹脂および(メタ)アクリル系樹脂からなる群より選択される一種または二種以上の樹脂成分を含む、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
前記アンダーコート層(B)はポリウレタン系樹脂を含む、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項5】
前記アンダーコート層(B)は架橋剤をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項6】
前記架橋剤は、イソシアネート系化合物およびカルボジイミド系化合物からなる群より選択される一種または二種以上を含む、請求項5に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項7】
前記アンダーコート層(B)はシランカップリング剤をさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項8】
前記アンダーコート層(B)の厚みが0.001μm以上1.5μm以下である、請求項1~7のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項9】
JIS K 6768:1999に準拠し、23℃、50%RHの雰囲気下で測定される、前記アンダーコート層(B)の表面の濡れ張力が45mN/m以上68mN/m以下である、請求項1~8のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項10】
前記延伸フィルム層(A)が二軸延伸ポリプロピレンフィルム層を含む、請求項1~9のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項11】
前記延伸フィルム層(A)の厚みが5μm以上100μm以下である、請求項1~10のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項12】
前記無機物層(C)が、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、およびアルミニウムからなる群より選択される一種または二種以上の無機物を含む、請求項1~11のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項13】
前記無機物層(C)が酸化アルミニウムを含む、請求項1~11のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項14】
前記無機物層(C)の厚みが1nm以上200nm以下である、請求項1~13のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項15】
40℃、湿度90%RHの条件で測定される水蒸気透過度が10.0g/(m・24h)以下である、請求項1~14のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項16】
20℃、湿度90%RHの条件で測定される酸素透過度が200.0mL/(m・24h・MPa)以下である、請求項1~15のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項17】
少なくとも一方の最外層に熱融着層(D)をさらに備える、請求項1~16のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項18】
前記熱融着層(D)がプロピレン系重合体を含む、請求項17に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項19】
包装用フィルムである、請求項1~18のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項20】
請求項1~19のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを用いた包装材。
【請求項21】
請求項20に記載の包装材と、
前記包装材内の物品と、を含む包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性フィルム、包装材および包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
延伸ポリプロピレンフィルムは、加工性、水蒸気バリア性、透明性、機械的強度および剛性等の性能バランスが良好であり、例えば、食品を包装するための包装材として用いられている。
【0003】
延伸ポリプロピレンフィルムを用いた包装材に関する技術としては、例えば、特許文献1(国際公開第2021-065878号)および特許文献2(特開2021-194822号公報)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、多層基材と、蒸着膜と、前記蒸着膜上に設けられたバリアコート層とを備えるバリア性積層体であって、前記多層基材は、少なくともポリプロピレン樹脂層と表面コート層とを備え、前記ポリプロピレン樹脂層は、延伸処理が施されており、前記表面コート層が、極性基を有する樹脂材料を含み、前記蒸着膜が、無機酸化物からなり、前記バリアコート層が、ガスバリア性塗布膜であり、前記ガスバリア性塗布膜の表面は、X線光電子分光法(XPS)により測定される珪素原子と炭素原子の比(Si/C)が、1.60以下であることを特徴とする、バリア性積層体が記載されている。
特許文献1には、前記バリア性積層体はポリプロピレンフィルムと蒸着膜との層間の密着性に優れ、高いラミネート強度を有する包装容器を作製でき、高いガスバリア性を有すると記載されている。
【0005】
特許文献2には、ポリプロピレンを主成分とする基材と、前記基材の第一面側に酸素バリア性皮膜を有し、前記樹脂基材と前記酸素バリア性皮膜の間に下地層、または下地層および無機酸化物層の両方を備え、前記第一面の赤外分光測定において、1360~1390cm-1に存在するピーク強度I1と、1440~1480cm-1に存在するピーク強度I2との比が、I1/I2≦1.65を満たし、前記第一面上には、ポリプロピレン以外の材料からなる微粒子が突出しており、前記微粒子の数が、257μm×259μmの領域(面積0.067mm)あたり100個以下であり、前記微粒子の平均突出高さが2.5μm以下である、ガスバリア性フィルムが記載されている。
特許文献2には、前記ガスバリア性フィルムは熱水処理に対する耐性が高く、環境負荷も抑制されたと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2021-065878号
【特許文献2】特開2021-194822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
延伸ポリプロピレンフィルムを基材としたガスバリア性フィルムには、水蒸気バリア性や酸素バリア性等のバリア性のさらなる向上が求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、バリア性が向上した、ガスバリア性フィルム、包装材および包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、プロピレン系重合体を含む延伸フィルム層(A)と、アンダーコート層(B)と、無機物層(C)と、をこの順番に備えるガスバリア性フィルムにおいて、アンダーコート層(B)の赤外線吸収スペクトルにおける特定のピーク比を特定の数値範囲にすることによって、バリア性が向上したガスバリア性フィルムが得られることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下に示すガスバリア性フィルム、包装材および包装体が提供される。
【0010】
[1]
プロピレン系重合体を含む延伸フィルム層(A)と、アンダーコート層(B)と、無機物層(C)と、をこの順番に備え、
前記アンダーコート層(B)の赤外線吸収スペクトルにおいて、
950cm-1の吸光度と1900cm-1の吸光度とを結んだベースラインに対する、吸収帯1600cm-1以上1780cm-1以下の範囲の吸光度の最大ピーク高さをPとし、
3100cm-1の吸光度と3600cm-1の吸光度とを結んだベースラインに対する、吸収帯3100cm-1以上3600cm-1以下の範囲の吸光度の最大ピーク高さをPとしたとき、
/Pが0.065以上0.26以下である、ガスバリア性フィルム。
[2]
前記アンダーコート層(B)に含まれる樹脂成分のガラス転移温度が55℃以上である、前記[1]に記載のガスバリア性フィルム。
[3]
前記アンダーコート層(B)は、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オキサゾリン系樹脂および(メタ)アクリル系樹脂からなる群より選択される一種または二種以上の樹脂成分を含む、前記[1]または[2]に記載のガスバリア性フィルム。
[4]
前記アンダーコート層(B)はポリウレタン系樹脂を含む、前記[1]または[2]に記載のガスバリア性フィルム。
[5]
前記アンダーコート層(B)は架橋剤をさらに含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[6]
前記架橋剤は、イソシアネート系化合物およびカルボジイミド系化合物からなる群より選択される一種または二種以上を含む、前記[5]に記載のガスバリア性フィルム。
[7]
前記アンダーコート層(B)はシランカップリング剤をさらに含む、前記[1]~[6]のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[8]
前記アンダーコート層(B)の厚みが0.001μm以上1.5μm以下である、前記[1]~[7]のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[9]
JIS K 6768:1999に準拠し、23℃、50%RHの雰囲気下で測定される、前記アンダーコート層(B)の表面の濡れ張力が45mN/m以上68mN/m以下である、前記[1]~[8]のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[10]
前記延伸フィルム層(A)が二軸延伸ポリプロピレンフィルム層を含む、前記[1]~[9]のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[11]
前記延伸フィルム層(A)の厚みが5μm以上100μm以下である、前記[1]~[10]のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[12]
前記無機物層(C)が、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、およびアルミニウムからなる群より選択される一種または二種以上の無機物を含む、前記[1]~[11]のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[13]
前記無機物層(C)が酸化アルミニウムを含む、前記[1]~[11]のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[14]
前記無機物層(C)の厚みが1nm以上200nm以下である、前記[1]~[13]のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[15]
40℃、湿度90%RHの条件で測定される水蒸気透過度が10.0g/(m・24h)以下である、前記[1]~[14]のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[16]
20℃、湿度90%RHの条件で測定される酸素透過度が200.0mL/(m・24h・MPa)以下である、前記[1]~[15]のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[17]
少なくとも一方の最外層に熱融着層(D)をさらに備える、前記[1]~[16]のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[18]
前記熱融着層(D)がプロピレン系重合体を含む、前記[17]に記載のガスバリア性フィルム。
[19]
包装用フィルムである、前記[1]~[18]のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
[20]
前記[1]~[19]のいずれかに記載のガスバリア性フィルムを用いた包装材。
[21]
前記[20]に記載の包装材と、
前記包装材内の物品と、を含む包装体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バリア性が向上した、ガスバリア性フィルム、包装材および食品包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態のガスバリア性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
図2】本実施形態のガスバリア性フィルムの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。
本明細書中、数値範囲に関する「X~Y」の表記は、特に断らない限り、X以上Y以下を表す。本明細書中、数値範囲に関する上限値および下限値の記載は、特に断りがなければ、記載されている上限値および下限値を任意で組み合わせることができる。
本明細書中、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリルから選択される一種または二種を意味する。
【0014】
<ガスバリア性フィルム>
図1および2は、本実施形態のガスバリア性フィルム100の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態のガスバリア性フィルム100は、プロピレン系重合体を含む延伸フィルム層(A)と、アンダーコート層(B)と、無機物層(C)と、をこの順番に備え、アンダーコート層(B)の赤外線吸収スペクトルにおいて、950cm-1の吸光度と1900cm-1の吸光度とを結んだベースラインに対する、吸収帯1600cm-1以上1780cm-1以下の範囲の吸光度の最大ピーク高さをPとし、3100cm-1の吸光度と3600cm-1の吸光度とを結んだベースラインに対する、吸収帯3100cm-1以上3600cm-1以下の範囲の吸光度の最大ピーク高さをPとしたとき、P/Pが0.065以上0.26以下である。
【0015】
上述したように、延伸ポリプロピレンフィルムを基材としたガスバリア性フィルムには、水蒸気バリア性や酸素バリア性等のバリア性のさらなる向上が求められている。
また、近年、環境問題の観点から、包装材のモノマテリアル化が求められている。
延伸ポリプロピレンフィルムを基材としたガスバリア性フィルムに対して、ポリプロピレンフィルムを用いた熱融着層を組み合わせることによって、包装材のモノマテリアル化を実現することができる。
しかしながら、延伸ポリプロピレンフィルムを基材としたガスバリア性フィルムは、ポリエステルフィルムを基材としたガスバリア性フィルムに比べて、水蒸気バリア性や酸素バリア性等のバリア性が劣っていた。そのため、延伸ポリプロピレンフィルムを基材としたガスバリア性フィルムを、ポリエステルフィルムを基材としたガスバリア性フィルムの代わりに用いて、包装材のモノマテリアル化を実現するためには、延伸ポリプロピレンフィルムを基材としたガスバリア性フィルムについてバリア性のさらなる向上が求められる。
【0016】
ここで、本発明者らの検討によれば、プロピレン系重合体を含む延伸フィルム層(A)と、アンダーコート層(B)と、無機物層(C)と、をこの順番に備えるガスバリア性フィルムにおいて、アンダーコート層(B)の赤外線吸収スペクトルにより算出される、P/Pという尺度が、ガスバリア性フィルムのバリア性を向上させるための設計指針として有効であることを見出した。
本発明者らは、上記知見を基にさらに検討を進めた結果、前記P/Pを0.065以上0.26以下の範囲にすることによって、ガスバリア性フィルム100のバリア性を向上できることを知見し、本発明に至った。
すなわち、本実施形態のガスバリア性フィルム100によれば、バリア性を向上させることができる。
【0017】
ガスバリア性フィルム100において、前記P/Pを上記範囲内とすることにより、バリア性を効果的に向上させることができる。
前記P/Pを上記範囲内とすることにより、バリア性を良好にできる理由は明らかではないが、以下の理由が考えられる。
まず、PはC=O伸縮振動に由来するピークを意味し、PはNーH伸縮振動やO-H伸縮振動に由来するピークすなわち水酸基由来の極性基に関するピークを意味する。
そのため、Pは極性基に関するピークを意味するため、P/Pはアンダーコート層(B)表面の極性状態の指標を表していると考えられる。
/Pが上記範囲内であるアンダーコート層(B)は、表面の極性状態が適度な状態になっており、その結果、より均一で良質な無機物層(C)を形成することができるため、ガスバリア性フィルム100のバリア性を向上できると考えられる。
【0018】
本実施形態において、P/Pは、以下の手順に従って算出できる。
まず、プロピレン系重合体を含む延伸フィルム層(A)と、アンダーコート層(B)と、無機物層(C)と、をこの順番に備えるガスバリア性フィルム100を準備し、このガスバリア性フィルム100から1.5cm×8cmの測定用サンプルを切り出す。次いで、赤外線全反射測定(ATR法)により、測定用サンプルの無機物層(C)側から、アンダーコート層(B)の赤外線吸収スペクトルを得る。得られた赤外線吸収スペクトルから、以下の手順(1)~(3)でP/Pを算出する。
(1)950cm-1の吸光度と1900cm-1の吸光度を直線で結び、その直線をベースラインとする。吸収帯1600cm-1以上1780cm-1以下の範囲の吸光度の最大ピークの頂点からベースラインまでの長さを、吸収帯1600cm-1以上1780cm-1以下の範囲の吸光度の最大ピーク高さPとする。
(2)3100cm-1の吸光度と3600cm-1の吸光度を直線で結び、その直線をベースラインとする。吸収帯3100cm-1以上3600cm-1以下の範囲の吸光度の最大ピークの頂点からベースラインまでの長さを、吸収帯3100cm-1以上3600cm-1以下の範囲の吸光度の最大ピーク高さPとする。
(3)次いで、上記の方法で求めたPおよびPからP/Pを求める。
ここで、最大ピークの頂点からベースラインまでの長さとは、最大ピークの頂点から横軸(X軸)に垂直に下した直線における、最大ピークの頂点からベースラインまでの長さをいう。
なお、本実施形態の赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は、例えば、日本分光社製IRT-4600装置を用い、PKM-GE-S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm-1、積算回数100回の条件で行うことができる。
【0019】
アンダーコート層(B)のP/Pは、例えば、アンダーコート層(B)に含まれる構成材料の種類や含有割合等を調整することにより調整することができる。
【0020】
ガスバリア性フィルム100の厚みは、熱寸法安定性、成形性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、コスト、機械的特性、透明性、製袋性、取扱い性、外観および軽量性等の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは12μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、そして、好ましくは400μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましく150μm以下、さらに好ましく120μm以下、さらに好ましく100μm以下である。
【0021】
ガスバリア性フィルム100において、水蒸気バリア性をより向上させる観点から、40℃、湿度90%RHの条件で測定される水蒸気透過度が、好ましくは10.0g/(m・24h)以下、より好ましくは5.0g/(m・24h)以下、さらに好ましくは2.8g/(m・24h)以下、さらに好ましくは2.5g/(m・24h)以下、さらに好ましくは2.3g/(m・24h)以下である。
このような水蒸気透過度は、例えば、延伸フィルム層(A)、アンダーコート層(B)および無機物層(C)の構成材料や厚み等を調整することにより達成できる。
水蒸気透過度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0022】
ガスバリア性フィルム100において、酸素バリア性をより向上させる観点から、20℃、湿度90%RHの条件で測定される酸素透過度が、好ましくは200.0mL/(m・24h・MPa)以下、より好ましくは150.0mL/(m・24h・MPa)以下、さらに好ましくは120.0mL/(m・24h・MPa)以下、さらに好ましくは80.0mL/(m・24h・MPa)以下、さらに好ましくは50.0mL/(m・24h・MPa)以下である。
このような酸素透過度は、例えば、延伸フィルム層(A)、アンダーコート層(B)および無機物層(C)の構成材料や厚み等を調整することにより達成できる。
酸素透過度は、JISK7126-2:2006に準拠し、20℃、湿度90%RHの条件で測定することができる。
【0023】
以下、ガスバリア性フィルム100を構成する各層について説明する。
【0024】
[延伸フィルム層(A)]
延伸フィルム層(A)はプロピレン系重合体を含む。
延伸フィルム層(A)は、例えば、プロピレン系重合体を含むプロピレン系重合体組成物により構成されたフィルムを一軸または二軸延伸することにより形成されたものである。
延伸フィルム層(A)は、水蒸気バリア性、酸素バリア性、寸法安定性および耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくはプロピレン系重合体を含むプロピレン系重合体組成物により構成されたフィルムを二軸延伸することにより形成された、二軸延伸ポリプロピレンフィルム層を含む。
【0025】
延伸フィルム層(A)は単層であってもよいし、プロピレン系重合体組成物により構成された層が複数積層された構成でもよいが、一軸または二軸延伸されてなることが必要である。
【0026】
延伸フィルム層(A)の厚みは、ガスバリア性フィルム100の熱寸法安定性、成形性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、コスト、機械的特性、透明性、製袋性、取扱い性、外観および軽量性等の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは12μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましく40μm以下、さらに好ましく30μm以下である。
【0027】
ガスバリア性フィルム100において、延伸フィルム層(A)、アンダーコート層(B)および無機物層(C)の合計厚みに対する延伸フィルム層(A)の厚みの割合は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上であり、そして、例えば100%未満であり、99.9%以下であってもよく、99.8%以下であってもよい。
【0028】
(プロピレン系重合体組成物)
本実施形態のプロピレン系重合体組成物はプロピレン系重合体を含む。
本実施形態のプロピレン系重合体組成物すなわち延伸フィルム層(A)中のプロピレン系重合体の含有量は、ガスバリア性フィルム100の熱寸法安定性、環境適合性、耐熱性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、透明性、コスト、機械的特性、剛性、製袋性、流動性、成形性、取扱い性、外観および軽量性等の性能バランスをより向上させる観点から、プロピレン系重合体組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上であり、そして、例えば100質量%以下である。
【0029】
(プロピレン系重合体)
本実施形態のプロピレン系重合体はプロピレンから導かれる構成単位を含む重合体であり、例えば、ホモポリプロピレン(A1);ランダムポリプロピレンおよびα―オレフィン共重合体からなる群より選択される一種または二種以上の重合体(A2);等が挙げられる。
【0030】
(ホモポリプロピレン(A1))
ホモポリプロピレン(A1)は、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン以外のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量が2.0モル%以下であるプロピレン系共重合体等が挙げられる。
ホモポリプロピレン(A1)は、ホモポリプロピレン(A1)を構成する構成単位の含有量の合計を100モル%としたとき、プロピレンから導かれる構成単位の含有量が98.0モル%以上、好ましくは98.5モル%以上、より好ましくは98.7モル%以上、さらに好ましくは99.0モル%以上、さらに好ましくは99.5モル%以上、さらに好ましくは99.8モル%以上であり、そして、例えば100.0モル%以下である。
【0031】
プロピレン以外のα-オレフィンは、例えばエチレンおよび炭素数が4以上20以下のα-オレフィンからなる群より選択される一種または二種以上を含み、好ましくはエチレンおよび炭素数が4以上6以下のα-オレフィンからなる群より選択される一種または二種以上を含み、より好ましくはエチレンおよび1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種を含み、さらに好ましくはエチレンを含む。
プロピレン以外のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量は、ホモポリプロピレン(A1)を構成する構成単位の含有量の合計を100モル%としたとき、好ましくは2.0モル%以下、より好ましくは1.5モル%以下、さらに好ましくは1.3モル%以下、さらに好ましくは1.0モル%以下、さらに好ましくは0.5モル%以下、さらに好ましくは0.2モル%以下である。
延伸フィルム層(A)中のホモポリプロピレン(A1)は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定されるホモポリプロピレン(A1)のメルトフローレート(MFR)は、流動性および成形性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1.0g/10分以上、さらに好ましくは2.0g/10分以上であり、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは20.0g/10分以下、より好ましくは10.0g/10分以下、さらに好ましくは7.0g/10分以下である。
ホモポリプロピレン(A1)として2種類以上のホモポリプロピレンを用いる場合、ホモポリプロピレン(A1)のMFRは、公知の方法で2種類以上のホモポリプロピレン(A1)をメルトブレンドして得られた混合物のMFRを採用することができる。
【0033】
ホモポリプロピレン(A1)の融点は、ガスバリア性フィルム100の熱寸法安定性、耐熱性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、機械的特性、剛性、製袋性、流動性および成形性等の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは155℃以上、さらに好ましくは160℃以上であり、そして、好ましくは180℃以下、より好ましくは175℃以下、さらに好ましくは170℃以下である。
ホモポリプロピレン(A1)として2種類以上のホモポリプロピレンを用いる場合、ホモポリプロピレン(A1)の融点は、最大融解ピークのピーク温度である。
【0034】
ホモポリプロピレン(A1)は種々の方法により製造することができる。例えばチーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0035】
(重合体(A2))
重合体(A2)は、ランダムポリプロピレンおよびα―オレフィン共重合体からなる群より選択される一種または二種以上を含む。
【0036】
ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定される、重合体(A2)のメルトフローレート(MFR)は、ガスバリア性フィルム100の成形性および熱寸法安定性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは0.01g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上、さらに好ましくは1.0g/10分以上、さらに好ましくは2.0g/10分以上であり、そして、好ましくは30.0g/10分以下、より好ましくは20.0g/10分以下、さらに好ましくは15.0g/10分以下、さらに好ましくは12.0g/10分以下、さらに好ましくは10.0g/10分以下である。
重合体(A2)として2種類以上の重合体を用いる場合、公知の方法で2種類以上の重合体(A2)をメルトブレンドして得られた混合物のMFRを採用することができる。
【0037】
重合体(A2)の融点は、ガスバリア性フィルム100の熱寸法安定性、耐熱性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、機械的特性、剛性、製袋性、流動性および成形性等の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは155℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは148℃以下、さらに好ましくは145℃以下である。
重合体(A2)として2種類以上の重合体を用いる場合、重合体(A2)の融点は、最大融解ピークのピーク温度である。
【0038】
重合体(A2)の含有量は、ガスバリア性フィルム100の成形性および熱寸法安定性の性能バランスをより向上させる観点から、延伸フィルム層(A)の全体を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、そして、ガスバリア性フィルム100の熱寸法安定性、水蒸気バリア性、透明性、機械的特性、剛性、製袋性、流動性および成形性等の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは22質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0039】
(ランダムポリプロピレン)
ランダムポリプロピレンは、プロピレン以外のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量が2.0モル%超え15.0モル%以下である、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとのランダム共重合体を含む。
プロピレン以外のα-オレフィンは、例えばエチレンおよび炭素数が4以上20以下のα-オレフィンからなる群より選択される一種または二種以上を含み、好ましくはエチレンおよび炭素数が4以上6以下のα-オレフィンからなる群より選択される一種または二種以上を含み、より好ましくはエチレンおよび1-ブテンから選択される少なくとも一種を含み、さらに好ましくはエチレンを含む。
【0040】
ランダムポリプロピレン中の、プロピレン以外のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量は、ランダムポリプロピレンを構成する構成単位の含有量の合計を100モル%としたとき、ガスバリア性フィルム100の成形性、熱寸法安定性および製袋性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは2.0モル%超え、より好ましくは2.5モル%以上、さらに好ましくは3.0モル%以上、さらに好ましくは3.5モル%以上、さらに好ましくは4.0モル%以上であり、そして、ガスバリア性フィルム100の熱寸法安定性、水蒸気バリア性、製袋性および透明性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは15.0モル%以下、より好ましくは12.0モル%以下、さらに好ましくは10.0モル%以下、さらに好ましくは8.0モル%以下、さらに好ましくは6.5モル%以下である。
プロピレン以外のα―オレフィン由来の構成単位の量は、13C-NMRにより定量することができる。
【0041】
ランダムポリプロピレンは、好ましくは、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体およびプロピレン・1-ブテンランダム共重合体からなる群より選択される一種または二種以上を含み、より好ましくは、プロピレン・エチレンランダム共重合体、およびプロピレン・1-ブテンランダム共重合体からなる群より選択される一種または二種以上を含み、さらに好ましくはプロピレン・エチレンランダム共重合体を含む。
延伸フィルム層(A)中のランダムポリプロピレンは、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(α―オレフィン共重合体)
α―オレフィン共重合体は2種類以上のα―オレフィンの共重合体であり、例えば、プロピレン以外のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量が15.0モル%超えである、α-オレフィンの共重合体を含む。
α―オレフィン共重合体は、プロピレン以外のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量が15.0モル%超えである、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとのランダム共重合体を含む。
プロピレン以外のα-オレフィンは、例えばエチレンおよび炭素数が4以上10以下のα-オレフィンからなる群より選択される一種または二種以上を含み、好ましくは炭素数が4以上8以下のα-オレフィンからなる群より選択される一種または二種以上を含み、より好ましくは1-ブテンおよび1-オクテンから選択される少なくとも一種を含み、さらに好ましくは1-ブテンを含む。
【0043】
α―オレフィン共重合体中の、プロピレン以外のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有量は、α―オレフィン共重合体を構成する構成単位の含有量の合計を100モル%としたとき、ガスバリア性フィルム100の成形性、熱寸法安定性および製袋性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは15.0モル%超え、より好ましくは20.0モル%以上、さらに好ましくは30.0モル%以上、さらに好ましくは50.0モル%以上、さらに好ましくは70.0モル%以上、さらに好ましくは80.0モル%以上であり、そして、ガスバリア性フィルム100の熱寸法安定性、水蒸気バリア性、製袋性および透明性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは99.0モル%以下、より好ましくは98.0モル%以下、さらに好ましくは95.0モル%以下、さらに好ましくは92.0モル%以下、さらに好ましくは90.0モル%以下である。
α―オレフィン共重合体中の、プロピレン以外のα―オレフィン由来の構成単位の量は、13C-NMRにより定量することができる。
【0044】
α―オレフィン共重合体は、好ましくは、プロピレンとエチレンおよび炭素数が4以上10以下のα-オレフィンからなる群より選択される一種または二種以上のα-オレフィンとのランダム共重合体を含み、より好ましくは、プロピレンと1-ブテンおよび1-オクテンからなる群より選択される一種または二種のα-オレフィンとのランダム共重合体を含み、さらに好ましくはプロピレンと1-ブテンとのランダム共重合体を含む。
延伸フィルム層(A)中のα―オレフィン共重合体は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
重合体(A2)は種々の方法により製造することができる。例えばチーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン系触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0046】
(その他の成分)
本実施形態のプロピレン系重合体組成物には、必要に応じて、粘着付与剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0047】
(プロピレン系重合体組成物の調製方法)
本実施形態のプロピレン系重合体組成物は、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0048】
(延伸フィルム層(A)の製造方法)
延伸フィルム層(A)は、例えば、延伸フィルム層(A)を形成するためのプロピレン系重合体組成物をフィルム状に押出し成形して得たフィルムを、公知の方法により一軸または二軸延伸することにより得ることができる。
成形装置および成形条件としては特に限定されず、従来公知の成形装置および成形条件を採用することができる。成形装置としては、T-ダイ押出機、多層T-ダイ押出機、インフレーション成形機あるいは多層インフレーション成形機等を用いることができる。延伸の条件は、例えば、公知の延伸ポリプロピレンフィルムの延伸条件を採用することができる。二軸延伸の場合、逐次二軸延伸法では、例えば、MD方向の延伸温度を100℃~145℃、MD方向の延伸倍率を4.5~6倍の範囲、TD方向の延伸温度を130℃~190℃、TD方向の延伸倍率を9~11倍の範囲にすればよい。
【0049】
[アンダーコート層(B)]
ガスバリア性フィルム100は、より均一で良質な無機物層(C)を形成し、バリア性を向上させる観点から、延伸フィルム層(A)と無機物層(C)との間にアンダーコート層(B)を備える。
【0050】
アンダーコート層(B)の赤外線吸収スペクトルにおいて、前記P/Pは0.065以上0.26以下であるが、より均一で良質な無機物層(C)を形成し、バリア性をより向上させる観点から、好ましくは0.080以上、より好ましくは0.090以上、さらに好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.11以上、さらに好ましくは0.13以上、さらに好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.18以上、さらに好ましくは0.20以上であり、そして、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.24以下、さらに好ましくは0.23以下である。
このようなアンダーコート層(B)のP/Pは、例えば、アンダーコート層(B)に含まれる構成材料の種類や含有割合等を調整することにより調整することができる。
【0051】
アンダーコート層(B)の赤外線吸収スペクトルにおいて、前記Pは、より均一で良質な無機物層(C)を形成し、バリア性をより向上させる観点から、好ましくは0.010以上、より好ましくは0.020以上、さらに好ましくは0.030以上、さらに好ましくは0.040以上、さらに好ましくは0.045以上であり、そして、好ましくは0.120以下、より好ましくは0.100以下、さらに好ましくは0.075以下、さらに好ましくは0.065以下、さらに好ましくは0.060以下である。
このようなアンダーコート層(B)の前記Pは、例えば、アンダーコート層(B)に含まれる構成材料の種類や含有割合、アンダーコート層(B)を形成するときの熱処理条件等を調整することにより調整することができる。
【0052】
アンダーコート層(B)の赤外線吸収スペクトルにおいて、前記Pは、より均一で良質な無機物層(C)を形成し、バリア性をより向上させる観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.003以上、さらに好ましくは0.005以上、さらに好ましくは0.008以上、さらに好ましくは0.010以上であり、そして、好ましくは0.050以下、より好ましくは0.030以下、さらに好ましくは0.020以下、さらに好ましくは0.015以下、さらに好ましくは0.013以下である。
このようなアンダーコート層(B)の前記Pは、例えば、アンダーコート層(B)に含まれる構成材料の種類や含有割合、アンダーコート層(B)を形成するときの熱処理条件等を調整することにより調整することができる。
【0053】
JIS K 6768:1999に準拠し、23℃、50%RHの雰囲気下で測定される、アンダーコート層(B)の表面の濡れ張力は、より均一で良質な無機物層(C)を形成し、バリア性をより向上させる観点から、好ましくは45mN/m以上、より好ましくは47mN/m以上、さらに好ましくは50mN/m以上、さらに好ましくは52mN/m以上であり、そして、好ましくは68mN/m以下以下、より好ましくは66mN/m以下、さらに好ましくは64mN/m以下、さらに好ましくは62mN/m以下、さらに好ましくは60mN/m以下、さらに好ましくは58mN/m以下、さらに好ましくは56mN/m以下である。
このようなアンダーコート層(B)の表面の濡れ張力は、例えば、アンダーコート層(B)に含まれる構成材料の種類や含有割合、アンダーコート層(B)の厚み、アンダーコート層(B)を形成するときの熱処理条件等を調整することにより調整することができる。
【0054】
アンダーコート層(B)に含まれる樹脂成分のガラス転移温度は、より均一で良質な無機物層(C)を形成し、バリア性をより向上させる観点から、好ましくは55℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上であり、そして、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下、さらに好ましくは130℃以下、さらに好ましくは125℃以下である。
アンダーコート層(B)に含まれる樹脂成分のガラス転移温度は、実施例に記載の方法により測定する。
【0055】
アンダーコート層(B)は、より均一で良質な無機物層(C)を形成し、バリア性をより向上させる観点から、好ましくは、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オキサゾリン系樹脂および(メタ)アクリル系樹脂からなる群より選択される一種または二種以上の樹脂成分を含み、より好ましくはポリウレタン系樹脂を含み、さらに好ましくは水分散型ポリウレタン系樹脂を含む。
また、オキサゾリン系樹脂を使用する場合、アンダーコート層(B)は、オキサゾリン基含有水性ポリマー、水性アクリル系樹脂および水性ポリエステル系樹脂を含むオキサゾリン系樹脂組成物により構成されていることが好ましい。
【0056】
ポリウレタン系樹脂は、例えば、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオールとポリイソシアネートとを重付加反応させて得ることができる。
【0057】
ポリオールは、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオールからなる群より選択される一種または二種以上のポリオールを含み、より好ましくは、ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオールからなる群より選択される一種または二種以上のポリオールを含む。
すなわち、ポリウレタン系樹脂は、好ましくは、ポリエーテル型ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート型ポリウレタン系樹脂およびポリエステル型ポリウレタン系樹脂からなる群より選択される一種または二種以上のポリウレタン系樹脂を含み、より好ましくは、ポリカーボネート型ポリウレタン系樹脂およびポリエステル型ポリウレタン系樹脂からなる群より選択される一種または二種以上のポリウレタン系樹脂を含む。
【0058】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン、エピクロロヒドリン等の環状エーテル化合物を一種または二種以上組み合わせて、活性水素原子を有する化合物等を触媒として、開環重合する等して得られる重合体が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0059】
ポリカーボネートポリオールは、カーボネート化合物とジオールとを反応させることにより得ることができる。
カーボネート化合物としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチレンカーボネート等が挙げられる。
ジオールとしては、例えば、低級アルコールで置換されていてもよい脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリコール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール等の芳香族ジオールが挙げられ、脂肪族ジオールが好ましく、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール等の炭素鎖長が4以上9以下の脂肪族ジオールがより好ましい。
【0060】
ポリエステルポリオールは、低分子のジオールとジカルボン酸とを縮合することにより得ることができる。
低分子のジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等が挙げられ、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等が好ましい。
ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸等の脂肪族二塩基酸;イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族二塩基酸が挙げられ、脂肪族二塩基酸が好ましく、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のメチレン鎖長が4以上8以下の二塩基酸がより好ましい。
【0061】
ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の鎖状の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアナート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアナート等の環状構造を有する脂肪族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;トリレンジイソアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;これらジイソシアネートの変性物(カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン含有変性物等)等が挙げられ、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
【0062】
前記重付加反応の反応溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、キシレン等が挙げられる。前記重付加反応では、必要に応じて鎖伸長剤や反応停止剤を併用してもよい。鎖伸長剤を用いることにより、分子量を増加させることができる。鎖伸長剤としては、ポリオールやポリアミンが挙げられ、反応停止剤としては、モノアルコールやモノアミンが挙げられる。
ポリウレタン系樹脂はエマルションとして用いることが好ましく、該エマルションは必要に応じて界面活性剤のような分散剤を含有していてもよい。
【0063】
水分散型ポリウレタン系樹脂としては、ポリウレタン系樹脂の主鎖または側鎖にカルボン酸塩(-COONa等)、スルホン酸塩(-SONa等)などの親水基を導入した自己乳化型ポリウレタン系樹脂が好ましい。
ポリウレタン系樹脂としては、市販されている水分散型ポリウレタン系樹脂を用いることもできる。
【0064】
市販されている水分散型ポリウレタン系樹脂としては、例えば、三井化学社製の、商品名タケラックWS4000、商品名タケラックWS5100、商品名タケラックWS4022、商品名タケラックWBP341A等が挙げられる。
【0065】
オキサゾリン系樹脂組成物は、例えば、オキサゾリン基含有量が6.0~9.0mmol/gであるオキサゾリン基含有水性ポリマー、カルボキシル基含有量が0.5~3.5mmol/gである水性アクリル系樹脂、およびカルボキシル基含有量が0.5~2.0mmol/gである水性ポリエステル系樹脂により構成されている。
また、オキサゾリン系樹脂組成物は、例えば、オキサゾリン基含有水性ポリマーを10~55質量%、水性アクリル系樹脂を10~80質量%、水性ポリエステル系樹脂を10~80質量%含有する(オキサゾリン基含有水性ポリマー、水性アクリル系樹脂および水性ポリエステル系樹脂の合計量を100質量%とする)。
また、オキサゾリン系樹脂組成物は、例えば、オキサゾリン基のモル数とカルボキシル基のモル数の比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシル基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]で示される。〕が150~420mol%である。
【0066】
アンダーコート層(B)に用いられるポリエステル系樹脂としては、各種ポリエステル樹脂およびそれらの変性物が例示できる。このようなポリエステル樹脂の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、ドデカン二酸等の多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール等のジオール成分との反応物が挙げられ、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等による変性物も含まれる。
【0067】
アンダーコート層(B)は、より均一で良質な無機物層(C)を形成し、バリア性をより向上させる観点から、好ましくは架橋剤をさらに含む。
架橋剤は、例えば、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物およびオキサゾリン化合物等からなる群より選択される一種または二種以上を含み、好ましくは、イソシアネート系化合物およびカルボジイミド系化合物からなる群より選択される一種または二種以上を含み、より好ましくはイソシアネート系化合物を含む。
【0068】
イソシアネート系化合物としては、例えば、水分散性ポリイソシアネート等が挙げられる。
水分散性ポリイソシアネートは、水に分散可能なポリイソシアネートであって、例えば、繰り返し単位として炭素数2以上3以下のアルキレンオキシド基を有するポリイソシアネート等が挙げられる。
水分散性ポリイソシアネートは、例えば、水分散性ブロックポリイソシアネートおよび水分散性ノンブロックポリイソシアネート等からなる群より選択される一種または二種以上を含み、好ましくは水分散性ノンブロックポリイソシアネートを含み、より好ましくはポリアルキレンオキシド基を有する水分散性ノンブロックポリイソシアネートを含む。
【0069】
また、水分散性ポリイソシアネートは、市販品としても入手可能であり、例えば、タケネートWD-720、タケネートWD-725、タケネートWD-726、タケネートWD-220、タケネートXWD-HS7、タケネートXWD-HS30(三井化学社製)等;アクアネート100、アクアネート110、アクアネート200、アクアネート210(日本ポリウレタン工業社製)等;デュラネートWB40-100、デュラネートWT20-100(旭化成ケミカルズ社製)等;Bayhydur3100、BayhydurXP2487/1(バイエルマテリアルサイエンス社製);BasonatHW100、BasonatHA100(BASF社製)等が挙げられる。
【0070】
カルボジイミド系化合物は、ポリイソシアネートのカルボジイミド変性体であって、例えば、公知のカルボジイミド化触媒の存在下で、ポリイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって、ポリカルボジイミド化合物として得ることができる。
カルボジイミド系化合物は、例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネ-ト系カルボジイミド、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)系カルボジイミドおよびペンタメチレンジイソシアネート系カルボジイミド等からなる群より選択される一種または二種以上を含む。
また、カルボジイミド系化合物は、市販品としても入手可能であり、例えば、カルボジライトV-02、カルボジライトV-02-L2、カルボジライトSV-02、カルボジライトV-04、カルボジライトV-10、カルボジライトSW-12G、カルボジライトE-02、カルボジライトE-03A、カルボジライトE-05(日清紡ケミカル社製);ルプラネ-トMM-103、XTB-3003(BASF社製);スタバクゾ-ルP(住友バイエルウレタン社製)等が挙げられる。
【0071】
これらの架橋剤は単独使用または二種以上併用することができる。
【0072】
アンダーコート層(B)中の架橋剤の含有量は、より均一で良質な無機物層(C)を形成し、バリア性をより向上させる観点から、前記樹脂成分(固形分)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、そして、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは25質量部以下である。ここで、樹脂成分の固形分とは、塗膜を形成したときに塗膜に残る成分をいう。
アンダーコート層(B)中の樹脂成分と架橋剤の含有割合は、フーリエ変換赤外分光分析法(FTIR)により、樹脂成分と架橋剤のピークの吸光度比から算出することができる。
【0073】
アンダーコート層(B)中の樹脂成分および架橋剤の合計含有量は、より均一で良質な無機物層(C)を形成し、バリア性をより向上させる観点から、アンダーコート層(B)の全体を100質量%としたとき、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上であり、そして、例えば100質量%以下である。
【0074】
アンダーコート層(B)は、より均一で良質な無機物層(C)を形成し、バリア性をより向上させる観点から、好ましくはシランカップリング剤をさらに含む。
シランカップリング剤は、例えば、2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のハロゲン含有シランカップリング剤;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;2-アミノエチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-[N-(2-アミノエチル)アミノ]エチルトリメトキシシラン、3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-[N-(2-アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;2-メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2-メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2-アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤等からなる群より選択される一種または二種以上を含み、好ましくは、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシランおよび3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランからなる群より選択される一種または二種以上を含み、より好ましくは3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含む。
【0075】
アンダーコート層(B)中のシランカップリング剤の含有量は、より均一で良質な無機物層(C)を形成し、バリア性をより向上させる観点から、前記樹脂成分(固形分)100質量部に対して、好ましくは0.5量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。
【0076】
アンダーコート層(B)の厚みは、より均一で良質な無機物層(C)を形成し、バリア性をより向上させる観点から、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.08μm以上であり、そして、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.0μm以下、さらに好ましく0.5μm以下、さらに好ましく0.3μm以下である。
【0077】
アンダーコート層(B)の形成方法としては、例えば、上述した材料をグラビアコーター、キスコーターまたはバーコーター等で延伸フィルム層(A)上に塗布し、90℃以上150℃以下、好ましくは100℃以上130℃以下の範囲の温度で10秒~10分間熱処理することで形成することができる。
本実施形態のアンダーコート層(B)を得るためには、アンダーコート層(B)の熱処理温度を90℃以上150℃以下、好ましくは100℃以上130℃以下の範囲に設定することが好ましい。加熱処理温度および加熱処理時間はアンダーコート層(B)の厚みに応じて調整することができる。
【0078】
[無機物層(C)]
ガスバリア性フィルム100は、水蒸気バリア性および酸素バリア性を向上させる観点から、無機物層(C)を備える。
【0079】
無機物層(C)を構成する無機物は、例えば、バリア性を有する薄膜を形成できる金属、金属酸化物、金属窒化物、金属弗化物、金属酸窒化物等が挙げられる。
無機物層(C)を構成する無機物としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2A族元素;チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタル等の周期表遷移元素;亜鉛等の周期表2B族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期表3A族元素;ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表4A族元素;セレン、テルル等の周期表6A族元素等の単体、酸化物、窒化物、フッ化物、または酸窒化物等からなる群より選択される一種または二種以上を挙げることができる。
なお、本実施形態では、周期表の族名は旧CAS式で示している。
【0080】
無機物層(C)は、水蒸気バリア性および酸素バリア性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、およびアルミニウムからなる群より選択される一種または二種以上の無機物を含み、より好ましくは酸化アルミニウムを含む。
なお、酸化ケイ素には、二酸化ケイ素の他、一酸化ケイ素、亜酸化ケイ素が含有されていてもよい。
上記無機物の中でも、酸化アルミニウムはレトルト処理による耐水性にも優れることからより好ましい。
【0081】
無機物層(C)は無機物により構成されている。無機物層(C)は単層の無機物層から構成されていてもよいし、複数の無機物層から構成されていてもよい。また、無機物層(C)が複数の無機物層から構成されている場合には同一種類の無機物層から構成されていてもよいし、異なった種類の無機物層から構成されていてもよい。
【0082】
無機物層(C)の厚みは、水蒸気バリア性、酸素バリア性、密着性および取扱い性等の性能バランスを向上させる観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、さらに好ましくは5nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。
本実施形態において、無機物層(C)の厚みは、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡による観察画像により求めることができる。
【0083】
無機物層(C)の形成方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学気相成長法、物理気相蒸着法、化学気相蒸着法(CVD法)、プラズマCVD法、ゾルゲル法等によりアンダーコート層(B)上に無機物層(C)を形成することができる。
これらの中でも、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法(CVD)、物理気相蒸着法(PVD)、プラズマCVD法等の減圧下での製膜が望ましい。これにより、窒化珪素や酸化窒化珪素等の珪素を含有する化学的に活性な分子種が速やかに反応することにより、無機物層(C)の表面の平滑性が改良され、孔を少なくすることができるものと予想される。
これらの結合反応を迅速に行うには、その無機原子や化合物が化学的に活性な分子種もしくは原子種であることが望ましい。
【0084】
[熱融着層]
ガスバリア性フィルム100は、ヒートシール性を付与するために、少なくとも一方の最外層に熱融着層(D)をさらに備えることが好ましい。
熱融着層(D)は、延伸フィルム層(A)側に設けられてもよいし、無機物層(C)側に設けられてもよいが、無機物層(C)側に設けられることが好ましい。
【0085】
熱融着層(D)は、例えば、ポリオレフィンを含むポリオレフィン系樹脂組成物により構成される。熱融着層(D)に含まれるポリオレフィンとしては、例えば、プロピレン系重合体;高圧法低密度ポリエチレン;線状低密度ポリエチレン(LLDPE);高密度ポリエチレン;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA);アイオノマー樹脂等からなる群より選択される一種または二種以上が挙げられる。
これらの中でも、熱融着層(D)は、ヒートシール性およびモノマテリアル性を向上させる観点から、好ましくはプロピレン系重合体を含む。
本実施形態のプロピレン系重合体はプロピレンから導かれる構成単位を含む重合体であり、例えば、ホモポリプロピレン(A1);ランダムポリプロピレンおよびα―オレフィン共重合体からなる群より選択される少なくとも一種の重合体(A2);等が挙げられる
ホモポリプロピレン(A1)および重合体(A2)の好適態様は、延伸フィルム層(A)に含まれるホモポリプロピレン(A1)および重合体(A2)と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0086】
熱融着層(D)に含まれるポリオレフィンの融点は、好ましくは90℃以上175℃以下、より好ましくは95℃以上170℃以下、さらに好ましくは100℃以上167℃以下の範囲にある。ポリオレフィンの融点が上記下限値以上であると、熱融着層(D)の表面のベタツキを抑制することができ、ガスバリア性フィルム100のブロッキング性を向上させることができる。
また、ポリオレフィンの融点が上記上限値以下であると、ガスバリア性フィルム100のヒートシール性をより良好にすることができる。
【0087】
本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂組成物すなわち熱融着層(D)中のポリオレフィンの含有量は、ガスバリア性フィルム100のヒートシール性、製袋性、成形性、コスト、機械的特性、透明性、取扱い性および軽量性等の性能バランスをより向上させる観点から、ポリオレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である。
【0088】
熱融着層(D)を構成するポリオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0089】
熱融着層(D)は単層であってもよいし、ポリオレフィン系樹脂組成物により構成された層が複数積層された構成でもよいが、熱融着層(D)は、単層であることが好ましい。これにより、ガスバリア性フィルム100の製造工程をより一層簡略化することができる。
【0090】
熱融着層(D)の厚みは、ガスバリア性フィルム100のヒートシール性、製袋性、成形性、コスト、機械的特性、透明性、取扱い性および軽量性等の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましく100μm以下、さらに好ましく80μm以下である。
【0091】
熱融着層(D)は、ヒートシール性、寸法安定性および耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくはポリオレフィンを含むポリオレフィン系樹脂組成物により構成された無延伸ポリオレフィン層を含み、より好ましくはプロピレン系重合体を含むプロピレン系重合体組成物により構成された無延伸ポリプロピレンフィルム層を含む。
【0092】
熱融着層(D)の積層方法には、公知のドライラミネート法、押出ラミネート法等を採用することができる。この場合には、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、(メタ)アクリル系接着剤等の接着剤を使用してもよい。
【0093】
本実施形態のバリア性フィルム100は、モノマテリアル性およびリサイクル性をより向上させる観点から、バリア性フィルム100の全体を100質量%としたとき、バリア性フィルム100の90質量%以上がプロピレン系重合体であることが好ましく、バリア性フィルム100の95質量%以上がプロピレン系重合体であることがより好ましく、バリア性フィルム100の98質量%以上がプロピレン系重合体であることがさらに好ましく、バリア性フィルム100の99質量%以上がプロピレン系重合体であることがさらに好ましい。
これにより、バリア性フィルム100がほぼ単一素材(モノマテリアル)で構成されるため、包装材を構成する素材を分離する作業が減り、バリア性フィルム100のリサイクル性を向上できる。
【0094】
[バリア性フィルムの用途]
バリア性フィルム100は、包装用フィルムとして好適に用いることができる。
包装用フィルムとしては、例えば、食品;医薬品;半導体素子、有機EL等の電子部品;日常雑貨;ヘルスケア用品;日用品;工業用品;車両用オイル、ウォッシャー液、冷却水等のカー用品;工業用潤滑油;油、水等の熱媒体等を包装するための包装用フィルムが挙げられる。
バリア性フィルム100は、食品包装用フィルムとしてより好適に用いることができる。
包装対象の食品としては、特に、乾燥した物品(吸湿が問題となりうる物品)、例えば、焼き菓子(クッキーやビスケット等)、煎餅、おかき、あられ、ぽん菓子等の米菓、野菜チップ、スナック菓子、ふりかけ、穀物粉末(小麦粉、米粉等)が挙げられる。本実施形態の包装用フィルムにより構成された包装袋を用いて、食品(とりわけ、上記のような乾燥した食品)を包装することが好ましい。
【0095】
[包装材]
本実施形態の包装材は、本実施形態のバリア性フィルム100を用いた包装材である。また、本実施形態の包装材は用途に応じて、その一部にバリア性フィルム100を使用してもよいし、包装材の全体にバリア性フィルム100を使用してもよい。
本実施形態の包装材とは、例えば、食品;医薬品;半導体素子、有機EL等の電子部品;日常雑貨;ヘルスケア用品;日用品;工業用品;車両用オイル、ウォッシャー液、冷却水等のカー用品;工業用潤滑油;油、水等の熱媒体等の物品を収容することを目的として使用される包装袋である。
本実施形態の包装材は、食品を収容することを目的として使用される包装袋であることが好ましい。
【0096】
また、本実施形態の包装材の包装形態は、例えば、周縁の全部または一部に、熱融着により形成されたヒートシール部を有する三方袋や四方袋、ピロー袋、合掌袋、スティック袋、ガゼット袋、パウチ等が挙げられる。また、包装材の内部には物品の他に、脱酸素剤等を入れてもよい。
【0097】
本実施形態の包装材は、例えば、本実施形態のバリア性フィルム100における熱融着層(D)同士を貼り合わせ、袋状に加工することにより製造することができる。
また、本実施形態の包装材は、例えば、本実施形態のバリア性フィルム100と、ラミネート用の熱融着フィルム等とを貼り合わせ、袋状に加工することにより製造することもできる。
【0098】
本実施形態の包装材は、モノマテリアル性およびリサイクル性をより向上させる観点から、包装材の全体を100質量%としたとき、包装材の90質量%以上がプロピレン系重合体であることが好ましく、包装材の95質量%以上がプロピレン系重合体であることがより好ましく、包装材の98質量%以上がプロピレン系重合体であることがさらに好ましく、包装材の99質量%以上がプロピレン系重合体であることがさらに好ましい。
これにより、包装材がほぼ単一素材(モノマテリアル)で構成されるため、包装材を構成する素材を分離する作業が減り、包装材のリサイクル性を向上できる。
【0099】
[包装体]
本実施形態の包装体は、本実施形態の包装材と、包装材内の物品と、を含む。すなわち、本実施形態の包装体は、本実施形態の包装材に物品を収容したものである。
本実施形態の包装材に収容する物品としては、例えば、食品;医薬品;半導体素子、有機EL等の電子部品;日常雑貨;ヘルスケア用品;日用品;工業用品;車両用オイル、ウォッシャー液、冷却水等のカー用品;工業用潤滑油;油、水等の熱媒体等が挙げられる。
本実施形態の包装体は、包装材内食品を収容した食品包装体であることが好ましい。
【0100】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0101】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0102】
[実施例1]
延伸フィルム層(A)として、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、M-1、厚さ25μm)を使用し、このフィルムの片面に水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液1(ポリウレタン系樹脂、三井化学社製、商品名タケラックWBP341A)をメイヤーバーにて塗布し、110℃で20秒間熱処理することにより、厚みが0.1μmのアンダーコート層(B)を形成した。
次いで、得られたアンダーコート層(B)上に、高周波誘導加熱方式によりアルミニウムを加熱蒸発させ、酸素を導入しながら蒸着することで、無機物層(C)として厚さ8nmの酸化アルミニウム層を形成した。これによりガスバリア性フィルムを得た。
【0103】
[実施例2]
アンダーコート層(B)を形成するための水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液1を水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液2(ポリエステル型ポリウレタン系樹脂、三井化学社製、商品名タケラックWS4022)に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0104】
[実施例3]
アンダーコート層(B)を形成するための水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液1を水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液3(ポリカーボネート型ポリウレタン系樹脂、三井化学社製、商品名タケラックWS5100)に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0105】
[実施例4]
アンダーコート層(B)を形成するための水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液1を水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液4(ポリカーボネート型ポリウレタン系樹脂、三井化学社製、商品名タケラックWS4000)に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0106】
[実施例5]
アンダーコート層(B)を形成するための水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液1を、以下の分散液5に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(分散液5)
主剤:水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液1(ポリウレタン系樹脂、三井化学社製、商品名タケラックWBP341A)
架橋剤:イソシアネート系化合物(三井化学社製、製品名:WD-726)
シランカップリング剤:エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、KBM403)
調製方法:主剤中の水分散型ポリウレタン系樹脂100質量部(固形分)に対し、イソシアネート系化合物が13.3質量部(固形分)、エポキシ基含有シランカップリング剤が6質量部(固形分)となるように、主剤に架橋剤およびシランカップリング剤を配合して分散液5を得た。
【0107】
[実施例6]
アンダーコート層(B)を形成するための水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液1を、以下の分散液6に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(分散液6)
主剤:水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液2(ポリエステル型ポリウレタン系樹脂、三井化学社製、商品名タケラックWS4022)
架橋剤:カルボジイミド系化合物(日清紡ケミカル社製、製品名:カルボジライトSV-02)
調製方法:主剤中の水分散型ポリウレタン系樹脂100質量部(固形分)に対し、カルボジイミド系化合物が14.4質量部(固形分)となるように、主剤に架橋剤を配合して分散液6を得た。
【0108】
[実施例7]
アンダーコート層(B)を形成するための水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液1を、以下の分散液7に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(分散液7)
主剤:水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液3(ポリカーボネート型ポリウレタン系樹脂、三井化学社製、商品名タケラックWS5100)
架橋剤:カルボジイミド系化合物(日清紡ケミカル社製、製品名:カルボジライトSV-02)
調製方法:主剤中の水分散型ポリウレタン系樹脂100質量部(固形分)に対し、カルボジイミド系化合物が16.9質量部(固形分)となるように、主剤に架橋剤を配合して分散液7を得た。
【0109】
[比較例1]
アンダーコート層(B)を形成しない以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0110】
[比較例2]
アンダーコート層(B)を形成するための水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液1を水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液8(ポリウレタン系樹脂、三井化学社製、商品名タケラックW6601)に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0111】
[比較例3]
アンダーコート層(B)を形成するための水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液1を水分散型ポリウレタン系樹脂の分散液9(ポリエステル型ポリウレタン系樹脂、三井化学社製、商品名タケラックWS5000)に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0112】
[実施例8]
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、M-1、厚さ25μm)を二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、ME-1、厚さ25μm)に変更した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0113】
[実施例9]
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、M-1、厚さ25μm)を二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、ME-1、厚さ25μm)に変更した以外は実施例3と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0114】
[実施例10]
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、M-1、厚さ25μm)を二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、ME-1、厚さ25μm)に変更した以外は実施例5と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0115】
[比較例4]
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、M-1、厚さ25μm)を二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、ME-1、厚さ25μm)に変更した以外は比較例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
【0116】
実施例および比較例で得られたガスバリア性フィルムについて、以下の評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1および2に示す。
【0117】
(1)ガスバリア性フィルムの水蒸気透過度の測定
厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、商品名:RXC#60)にエステル系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井化学社製、商品名:タケラックA525S):9質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学社製、商品名:タケネートA50):1質量部および酢酸エチル:7.5質量部)を3.0g/m塗布した。次いで、実施例・比較例で得られたガスバリア性フィルムの無機物層(C)側の表面と無延伸ポリプロピレンフィルムの接着剤塗布面が接するようにして、ガスバリア性フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムとを積層し、積層体を得た。
次いで得られた積層体を用いて、内表面積が0.01mになるように製袋し、得られた袋内に内容物として塩化カルシウムを10g入れ、袋の入り口をヒートシールした。
次いで得られた袋を40℃、湿度90%RHの環境下に72時間保管した。
保管前後の塩化カルシウムの重量を測定し、その差から水蒸気透過度(g/(m・24h))を算出した。
【0118】
(2)ガスバリア性フィルムの酸素透過度の測定
酸素透過度はJIS K7126-2:2006に準拠して測定した。
厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、商品名:RXC#60)にエステル系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井化学社製、商品名:タケラックA525S):9質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学社製、商品名:タケネートA50):1質量部および酢酸エチル:7.5質量部)を3.0g/m塗布した。次いで、実施例・比較例で得られたガスバリア性フィルムの無機物層(C)側の表面と無延伸ポリプロピレンフィルムの接着剤塗布面が接するようにして、ガスバリア性フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムとを積層し、積層体を得た。
次いで、酸素透過率測定機(MOCON社製:OXTRAN2/22)を使用して、得られた積層体の酸素透過度(mL/(m・day・MPa))を温度20℃、湿度90%RHの条件で測定した。
【0119】
(3)アンダーコート層(B)の赤外線吸収スペクトル測定
アンダーコート層(B)の赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は日本分光社製IRT-4600装置を用い、PKM-GE-S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm-1、積算回数100回の条件で測定した。得られた赤外線吸収スペクトルを前述した方法で解析し、PおよびPを算出した。そして、PおよびPからP/Pを求めた。
測定サンプルとしては、各実施例および比較例における、ガスバリア性フィルムから1.5cm×8cmのフィルムを切り出して用いた。また、測定用サンプルの無機物層(C)側から、アンダーコート層(B)の赤外線吸収スペクトルを測定した。
【0120】
(4)アンダーコート層(B)の表面の濡れ張力の測定
アンダーコート層(B)表面の濡れ張力は、JIS K 6768:1999に規定された濡れ張力試験方法に準じた方法により、23℃、50%RHの雰囲気下で測定した。より具体的には、アンダーコート層(B)の表面の濡れ張力の値は、JIS K 6768:1999に準拠した濡れ張力試験用混合液を綿棒によりアンダーコート層(B)の表面に塗り広げ、塗布から2秒経過した時点の液膜の状態を目視評価することにより決定した。濡れ張力液は「富士フイルム和光純薬株式会社製、濡れ張力試験用混合液」を使用した。
【0121】
(5)ポリウレタン系樹脂のガラス転移温度の測定
ポリウレタン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、固体動的粘弾性測定により求めた。
まず、離型紙上にポリウレタン系樹脂の分散液を塗布して乾燥させて被膜を形成し、次いで、離型紙から被膜を剥離して試験片を作製した。
次いで、固体粘弾性測定装置を使用して、上記試験片の動的粘弾性挙動を測定し、tanδの値が極大値を示すときの温度をポリウレタン系樹脂のガラス転移温度(Tg)とした。測定条件は、測定モード:引っ張り、昇温温度:5℃/min、周波数:1Hz、ひずみ:0.2%、温度範囲:室温~250℃(軟化するまで)、雰囲気:窒素気流中
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
実施例のガスバリア性フィルムは、比較例のガスバリア性フィルムよりもバリア性が向上していた。
【符号の説明】
【0125】
100 ガスバリア性フィルム
A 延伸フィルム層
B アンダーコート層
C 無機物層
D 熱融着層
図1
図2