(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143226
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】モバイル型呼吸計測装置、呼吸計測方法、および呼吸計測用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055791
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】591189812
【氏名又は名称】エンジニアリングシステム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】左治木 修
(72)【発明者】
【氏名】大久保 源典
(72)【発明者】
【氏名】中村 和正
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS08
4C038SX01
(57)【要約】
【課題】持ち運びして簡便に使用でき、計測者の技量または経験に依存することなく定量的な呼吸計測を行うことが可能なモバイル型の呼吸計測装置を提供する。
【解決手段】モバイル型呼吸計測装置1は、サーモパイル型の赤外線検出素子21を有し、赤外線検出素子21により被計測対象者の呼吸に伴い温度変化を生じる被計測対象者の特定部位から放出された赤外線の放射エネルギー量を検出する検出部2と、放射エネルギー量に伴う検出データを所定時間収集し、検出データの経時的変化を示す収集波形データを生成する収集部4と、収集波形データから呼吸の状態を示す計測値を生成する演算部5と、計測値を出力する出力部9と、各部を収容する持ち運び可能なサイズの収容ケース11と、を備えている。モバイル型呼吸計測装置1は、持ち運びして簡便に使用でき、計測者の技量または経験に依存することなく定量的な呼吸計測を行うことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測対象者の呼吸の状態を計測するモバイル型呼吸計測装置であって、
ゼーベック効果を利用するサーモパイル型の赤外線検出素子を有し、当該赤外線検出素子により前記被計測対象者の呼吸に伴い温度変化を生じる前記被計測対象者の特定部位から放出された赤外線の放射エネルギー量を検出する検出部と、
前記検出部が検出した放射エネルギー量に伴う検出データを所定時間収集し、当該検出データの経時的変化を示す収集波形データを生成する収集部と、
前記収集部が生成した前記収集波形データから呼吸の状態を示す1又は複数種類の計測値を生成する演算部と、
前記演算部が生成した前記計測値を出力する出力部と、
前記検出部、前記収集部、前記演算部、および前記出力部を収容する持ち運び可能なサイズの収容ケースと、を備えていることを特徴とするモバイル型呼吸計測装置。
【請求項2】
前記計測値は、少なくとも呼吸数を示す値を含む請求項1記載のモバイル型呼吸計測装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記放射エネルギー量における8~14μmの波長成分を検出する請求項1記載のモバイル型呼吸計測装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記収集波形データを周波数解析して前記呼吸数を示す値を算出する請求項2記載のモバイル型呼吸計測装置。
【請求項5】
前記周波数解析に高速フーリエ変換または最大エントロピー法を用いる請求項4記載のモバイル型呼吸計測装置。
【請求項6】
更に、前記収容ケースに収容されており、あらかじめ定められた複数の特定呼吸パターンのそれぞれに対応させた特定呼吸パターン波形データを記憶する記憶部を備えており、
前記演算部は、前記記憶部に記憶された前記特定呼吸パターン波形データと前記収集波形データとを比較参照することで、前記収集波形データが前記複数の特定呼吸パターンのうちどの特定呼吸パターンに該当するかを推定し、推定結果を前記計測値の一つとして生成する請求項1記載のモバイル型呼吸計測装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記推定する際に機械学習手法を用いる請求項6記載のモバイル型呼吸計測装置。
【請求項8】
更に、前記赤外線検出素子が向く方向へガイド光を照射する照射部を備えている請求項1記載のモバイル型呼吸計測装置。
【請求項9】
前記出力部は、前記収集波形データおよび前記計測値の少なくともいずれかをリアルタイムで出力する請求項1記載のモバイル型呼吸計測装置。
【請求項10】
前記収容ケースが第1収容ケースと第2収容ケースとを含む複数体で構成されており、
前記第1ケースに前記検出部および第1通信部が収納された検出ユニットと、前記第2ケースに前記収集部、前記演算部、前記出力部および第2通信部が収納された制御ユニットと、に分離して構成されており、
前記第1通信部と前記第2通信部とは、有線若しくは無線により互いにデータ授受が可能となっている請求項1記載のモバイル型呼吸計測装置。
【請求項11】
ゼーベック効果を利用するサーモパイル型の赤外線検出素子を用いて、1000mm以内の距離から被計測対象者の呼吸に伴い温度変化を生じる当該被計測対象者の特定部位から放出された2000mm2以下の面積範囲の赤外線の放射エネルギー量を検出する検出ステップと、
検出した前記放射エネルギー量に伴う検出データを所定時間収集し、当該検出データの経時的変化を示す収集波形データを生成する波形データ生成ステップと、
生成した前記収集波形データを周波数解析してピークを示す周波数から呼吸数を示す値を算出し、前記呼吸数を示す値を含む1又は複数種類の計測値を生成する演算ステップと、
算出した前記計測値を出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする呼吸計測方法。
【請求項12】
前記演算ステップにおいて、前記周波数解析に高速フーリエ変換または最大エントロピー法を用いる請求項11記載の呼吸計測方法。
【請求項13】
前記演算ステップでは、
更に、あらかじめ定められた複数の特定呼吸パターンのそれぞれに対応させた特定呼吸パターン波形データと前記収集波形データとを比較参照することで、前記収集波形データが前記複数の特定呼吸パターンのうちどの特定呼吸パターンに該当するかを推定し、推定結果を前記計測値の一つとして生成する請求項11記載の呼吸計測方法。
【請求項14】
コンピュータに、請求項11に記載の呼吸計測方法を実行させるために用いる呼吸計測用コンピュータプログラムであって、
前記検出ステップ、
前記波形データ生成ステップ、
前記演算ステップ、および
前記出力ステップ
をコンピュータに実行させることを特徴とする呼吸計測用コンピュータプログラム。
【請求項15】
前記演算ステップでは、
高速フーリエ変換または最大エントロピー法を用いて前記周波数解析させる請求項14記載の呼吸計測用コンピュータプログラム。
【請求項16】
前記演算ステップでは、
更に、あらかじめ定められた複数の特定呼吸パターンのそれぞれに対応させた特定呼吸パターン波形データと前記収集波形データとを比較参照させることで、前記収集波形データが前記複数の特定呼吸パターンのうちどの特定呼吸パターンに該当するかを推定させ、推定結果を前記計測値の一つとして生成させる請求項14記載の呼吸計測用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル型呼吸計測装置に関し、より詳しくは医療、リハビリ、介護、スポーツなどの分野において、人体のバイタルサインの一つである呼吸を計測するモバイル型の装置に関する。また、本発明はこの装置に関連した呼吸計測方法および呼吸計測用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体のバイタルサインを計測することは、日々の健康状態の把握および維持管理を行っていくうえで非常に有効であり、医療行為をはじめ、リハビリ、介護、スポーツなど、さまざまな分野で活用されている。バイタルサインとして一般に脈拍、血圧、呼吸、および体温の4つの指標が広く認知されており、バイタルサインは、基準となる正常値と計測により得られた値(以降、「計測値」という。)とを比較して、人体の状態を把握するのに用いられている。ここで、脈拍、血圧、および体温に関しては、専用の計測装置が広く普及し、特別な技術を要さずともある程度正確な測定を行うことができる一方で、呼吸に関しては、呼吸数、呼吸波形などのパターンを人間が目視により観察する方法が一般的に用いられているため、計測者の技量または経験に依存した誤差が生じやすい。そこで、呼吸を定量的に計測する手段として、赤外線カメラを用いた温度計測による方法が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
【0003】
特許文献1で開示されている計測方法では、サーモグラフィカメラとこのカメラからの動画像を処理する画像処理装置とを備えた生体活動計測システムを用いる。この計測方法では、被検者の鼻孔および口を特殊なマスクで覆い、そのマスクをサーモグラフィカメラが動画画像を撮像し、画像処理装置がその動画画像を解析することで被検者の呼吸に起因する生体活動温度変化に基づいて計測する。
【0004】
また、特許文献2で開示されている計測方法では、被験者の顔の遠赤外線画像を撮像し、撮像した画像信号から被験者の鼻近傍の相対的温度情報を抽出し、この温度情報から信号処理をして呼吸情報を導出する。この呼吸情報については、PC等を用いて画像解析が行われる(特許文献2の段落0048-0051を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-093647号公報
【特許文献2】特開2010-194005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示されている計測方法および特許文献2で開示されている呼吸計測方法では、被験者を撮像するための赤外線カメラ、赤外線カメラの動画や画像を解析するための画像解析システム、および画像解析結果を表示するための専用のディスプレイを備えた大掛かりなシステムを用いる必要がある。
【0007】
このような大掛かりなシステムは、一時的な実験、研究などを目的とした計測においては非常に有用ではあるが、例えば実際の医療や介護の現場における数時間間隔といった定期的な計測を行いたい場合や、計測者が多数の被験者のもとへ逐次的に移動して計測を行いたい場合の使用には適していない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて、持ち運びして簡便に使用でき、計測者の技量または経験に依存することなく定量的な呼吸計測を行うことが可能なモバイル型の呼吸計測装置、並びに、この装置に関連する呼吸計測方法および呼吸計測用コンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]上記課題を解決すべく、本発明に係るモバイル型呼吸計測装置は、被計測対象者の呼吸の状態を計測するモバイル型呼吸計測装置であって、ゼーベック効果を利用するサーモパイル型の赤外線検出素子を有し、この赤外線検出素子により被計測対象者の呼吸に伴い温度変化を生じる被計測対象者の特定部位から放出された赤外線の放射エネルギー量を検出する検出部と、この検出部が検出した放射エネルギー量に伴う検出データを所定時間収集し、検出データの経時的変化を示す収集波形データを生成する収集部と、この収集部が生成した収集波形データから呼吸の状態を示す1又は複数種類の計測値を生成する演算部と、この演算部が生成した計測値を出力する出力部と、検出部、収集部、演算部、および出力部を収容する持ち運び可能なサイズの収容ケースと、を備えていることを特徴とする。
【0010】
[2]本発明に係るモバイル型呼吸計測装置においては、計測値は、少なくとも呼吸数を示す値を含むことが好ましい。
【0011】
[3]本発明に係るモバイル型呼吸計測装置においては、検出部は、放射エネルギー量における8~14μmの波長成分を検出することが好ましい。
【0012】
[4]本発明に係るモバイル型呼吸計測装置においては、演算部は、収集波形データを周波数解析して呼吸数を示す値を算出することが好ましい。
【0013】
[5]本発明に係るモバイル型呼吸計測装置においては、周波数解析に高速フーリエ変換または最大エントロピー法を用いることが好ましい。
【0014】
[6]本発明に係るモバイル型呼吸計測装置においては、更に、収容ケースに収容されており、あらかじめ定められた複数の特定呼吸パターンのそれぞれに対応させた特定呼吸パターン波形データを記憶する記憶部を備えており、演算部は、記憶部に記憶された特定呼吸パターン波形データと収集波形データとを比較参照することで、収集波形データが複数の特定呼吸パターンのうちどの特定呼吸パターンに該当するかを推定し、推定結果を計測値の一つとして生成することが好ましい。
【0015】
[7]本発明に係るモバイル型呼吸計測装置においては、前記演算部は、前記推定する際に機械学習手法を用いてもよい。
【0016】
[8]本発明に係るモバイル型呼吸計測装置においては、更に、赤外線検出素子が向く方向へガイド光を照射する照射部を備えていることが好ましい。
【0017】
[9]本発明に係るモバイル型呼吸計測装置においては、出力部は、収集波形データおよび計測値の少なくともいずれかをリアルタイムで出力することが好ましい。
【0018】
[10]本発明に係るモバイル型呼吸計測装置においては、収容ケースが第1収容ケースと第2収容ケースとを含む複数体で構成されており、第1ケースに検出部および第1通信部が収納された検出ユニットと、第2ケースに収集部、演算部、出力部および第2通信部が収納された制御ユニットと、に分離して構成されており、第1通信部と第2通信部とは、有線若しくは無線により互いにデータ授受が可能となっているよう、構成してもよい。
【0019】
[11]本発明に係る呼吸計測方法は、ゼーベック効果を利用するサーモパイル型の赤外線検出素子を用いて、1000mm以内の距離から被計測対象者の呼吸に伴い温度変化を生じる前記被計測対象者の特定部位から放出された2000mm2以下の面積範囲の赤外線の放射エネルギー量を検出する検出ステップと、検出した放射エネルギー量に伴う検出データを所定時間収集し、検出データの経時的変化を示す収集波形データを生成する波形データ生成ステップと、生成した収集波形データを周波数解析してピークを示す周波数から呼吸数を示す値を算出し、呼吸数を示す値を含む1又は複数種類の計測値を生成する演算ステップと、算出した計測値を出力する出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【0020】
[12]本発明に係る呼吸計測方法においては、演算ステップにおいて、周波数解析に高速フーリエ変換または最大エントロピー法を用いることが好ましい。
【0021】
[13]本発明に係る呼吸計測方法においては、演算ステップでは、更に、あらかじめ定められた複数の特定呼吸パターンのそれぞれに対応させた特定呼吸パターン波形データと収集波形データとを比較参照することで、収集波形データが複数の特定呼吸パターンのうちどの特定呼吸パターンに該当するかを推定し、推定結果を計測値の一つとして生成することが好ましい。
【0022】
[14]本発明に係る呼吸計測用コンピュータプログラムは、コンピュータに、上記の呼吸計測方法を実行させるために用いる呼吸計測用コンピュータプログラムであって、検出ステップ、波形データ生成ステップ、演算ステップ、および出力ステップをコンピュータに実行させる、ことを特徴とする。
【0023】
[15]本発明に係る呼吸計測用コンピュータプログラムにおいては、演算ステップでは、コンピュータに、高速フーリエ変換または最大エントロピー法を用いて周波数解析させることが好ましい。
【0024】
[16]本発明に係る呼吸計測用コンピュータプログラムにおいては、前記演算ステップでは、コンピュータに、更に、あらかじめ定められた複数の特定呼吸パターンのそれぞれに対応させた特定呼吸パターン波形データと収集波形データとを比較参照させることで、収集波形データが複数の特定呼吸パターンのうちどの特定呼吸パターンに該当するかを推定させ、推定結果を計測値の一つとして生成させることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、計測者の技量または経験に依存することなく定量的な呼吸計測を行うことができる。特に本発明に係るモバイル型呼吸計測装置を用いれば、持ち運びして簡便に使用でき、計測者の技量または経験に依存することなく定量的な呼吸計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態1のモバイル型呼吸計測装置の構成図である。
【
図2】
図1の構成を有するモバイル型呼吸計測装置の外観斜視図である。
【
図3】収集部で生成される収集波形データを示すグラフである。
【
図4】演算部で行われる周波数解析データを示すグラフである。
【
図6】制御部の制御の下に行われる呼吸計測方法の流れを示すフローチャートである。
【
図7】呼吸計測時におけるモバイル型呼吸計測装置の使用状態を示す図である。
【
図8】実施形態2のモバイル型呼吸計測装置の構成図である。
【
図9】
図8の構成を有するモバイル型呼吸計測装置の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した一実施形態としてのモバイル型呼吸計測装置を説明する。なお、各図面は必ずしも実際の全ての構成を厳密に反映したものではない。
【0028】
(実施形態1)
図1は、本発明を適用した実施形態1のモバイル型呼吸計測装置1の構成図である。
図2は、このモバイル型呼吸計測装置1の外観斜視図である。
図3は、収集部4で生成される収集波形データを示すグラフである。
図4は、演算部5で行われる周波数解析データを示すグラフである。
図5は、演算部5で行われる呼吸分類の説明図である。まず、図面を参照し、モバイル型呼吸計測装置1の構成を説明する。
【0029】
モバイル型呼吸計測装置1は、被計測対象者の呼吸の状態を計測するための装置である。モバイル型呼吸計測装置1は、
図1に示すように、検出部2と、照射部3と、収集部4と、演算部5と、記憶部6と、入力部7と、制御部8と、出力部9、電源部10と、これら各部を収容する収容ケース11とを備えており、
図2に示すように全体的には箱型形状を有し片手で把持できる程度のコンパクトサイズで形成されている。
【0030】
また、モバイル型呼吸計測装置1では、収集部4、演算部5、記憶部6、および制御部8は、マイクロコントローラ(MCU)として、各部が1パッケージの半導体素子として構成され、プリント基板に実装されている。MCUは、機器内蔵を前提としたマイクロプロセッサーの一種であり、非常に小型軽量かつ低価格でありながら、十分な演算、制御機能を備えている。
【0031】
検出部2は、電子基板に実装されたゼーベック効果を利用するサーモパイル型の赤外線検出素子21を有し、赤外線検出素子21により被計測対象者の呼吸に伴い温度変化を生じる被計測対象者の特定部位から放出された赤外線の放射エネルギー量を検出することができる。ここで、赤外線検出素子21としてサーモパイルセンサが採用されており、赤外線検出素子21は、被計測物質から放射される赤外線放射エネルギーを非接触で検出し、被計測物質の温度を計測することができる。サーモパイルセンサの測定原理については公知であり説明を省略するが、サーモパイルセンサは、使用環境や測定対象温度域に対して適切に校正することで、高精度の計測ができるばかりでなく、小型軽量、高寿命、低価格といった特徴を有している。
【0032】
また、検出部2は、赤外線検出素子21を被計測対象者の特定部位(例えば、呼吸により温度変化が生じる鼻、口などの近傍の部位)に向けることで、被計測対象者の特定部位から放出された赤外線の放射エネルギー量を検出し、その放射エネルギー量から導出される特定部位の温度を放射エネルギー量に伴う検出データとして出力する。検出部2における赤外線検出素子21は、被計測対象者の体温近傍の温度域を計測対象とすることから、検出可能な赤外線周波数帯が8~14μmの波長成分であるものが好ましい。また、検出部2における赤外線検出素子21は、鼻、口などの近傍の部位だけを計測したいことから、2000mm2以下(円形範囲だとすると約Φ50mm程度まで)の面積範囲の赤外線の放射エネルギー量を検出するものが好ましい。また、検出部2における赤外線検出素子21は、使用環境や計測者の手振れといった様々な計測誤差要因の影響を極力排除すべく計測距離を1000mm以内にしたいことから、計測距離が1000mm以内であるものが好ましい。
【0033】
照射部3は、検出部2における赤外線検出素子21と同方向を向くように並んで配置されたLED素子といった指向性を有する発光素子31を有している。照射部3は、この発光素子31により、計測者が赤外線検出素子21を向けている方向を計測者が視覚により認識できるよう、赤外線検出素子21が向く方向へガイド光を照射する。
【0034】
収集部4は、検出部2が検出した放射エネルギー量に伴う検出データを所定時間収集し、検出データの経時的変化、すなわち
図3に示すような被計測対象者の特定部位の経時的な温度変化を示す収集波形データを生成する。なお、収集波形データの収集時間(時間軸の幅)については後述の演算部5が呼吸の状態を示す計測値を生成できる程度に適宜設定されており、収集部4には後述の制御部8から収集時間経過後に検出データの収集を終了するよう指示が出され、この収集作業は自動で行われる。
【0035】
演算部5は、収集部4が生成した収集波形データから呼吸の状態を示す1又は複数種類の計測値を生成する。呼吸の状態を定量的に示す計測値の一つは、呼吸数を示す値(例えば、呼吸数:「n回/分」)が挙げられる。また、呼吸の状態を定量的に示す計測値の別の一つは、異常な呼吸波形となっていないかを推定する呼吸分類の推定が挙げられる。なお、本発明においては、被計測対象者の特定部位の経時的な温度変化を示す収集波形データが呼吸波形を意味しているものと捉え、温度変化を示す収集波形データから被計測対象者の呼吸に関する定量的な計測値を得ることができるものとの考えを基にしている。
【0036】
演算部5は、呼吸の状態を定量的に示す計測値として、呼吸数を示す計測値を生成する。演算部5は、呼吸数を示す計測値を生成するために、
図4に示すように、高速フーリエ変換(FFT)を用いて収集波形データを周波数解析して、ピークを示す周波数から呼吸数を示す値を算出する。高速フーリエ変換(FFT)の原理を用いれば、計測により得られた収集波形データすなわち呼吸波形を、縦軸をスペクトル強度、横軸を周波数としたグラフに変換することができ、特徴的なピーク周波数を呼吸数として特定することが可能である。成人を例にとれば、その正常呼吸数は一般的に約12~20回/min(約0.2~0.33Hz)であり、頻呼吸と判断される場合でも約25回/min(約0.42Hz)以上とされる。このことから、概ねこの近傍周波数帯以外はノイズ成分として無視することができ、当該周波数帯におけるピーク周波数=呼吸数として特定することが可能となる。
【0037】
ここで、呼吸波形そのものにも人体の異常が発現することが知られている。例えば、良く知られる呼吸波形の異常として、心不全、脳疾患等の異常時に発現するとされるチェーンストークス呼吸、頭蓋内圧亢進等の異常時に発現するとされるビオー呼吸、昏睡状態、尿毒症等の異常時に発現するとされるクスマウル呼吸などが挙げられ、いずれも特異な呼吸パターン波形を示すことが知られている(
図5参照)。このため、呼吸パターン波形をさらに解析することによって呼吸に関する定量的な状態評価を行うことができる。本発明においては、前述したように、被計測対象者の特定部位の経時的な温度変化を示す収集波形データが呼吸波形を意味しているものと捉えている。このことから、収集部4で生成した収集波形データを、正常時の呼吸パターン波形および異常に伴う特異な呼吸パターン波形を含む特定呼吸パターン波形を示す特定呼吸パターン波形データと照らし合わせて解析することによって、呼吸波形自体が正常か異常かを評価し、異常と判断された場合の具体症例を予測、推定することができる(「呼吸分類の推定」という。)。
【0038】
そこで、演算部5は、呼吸の状態を定量的に示す計測値として、呼吸分類の推定結果を示す計測値を生成する。演算部5は、呼吸分類の推定結果を示す計測値を生成するために、
図5に示すように、後述の記憶部6に記憶された複数の特定呼吸パターン波形データそれぞれと収集部4が生成した収集波形データとを比較参照することで、収集波形データが複数の特定呼吸パターンのうちどの特定呼吸パターンに該当するか(類似するか)を推定し、推定結果を計測値の一つとして生成する。演算部5は、呼吸分類を推定する際に機械学習手法を用いてもよい。例えば、年齢、性別、特定の個人といったような諸条件のフィルタリングや蓄積データを参照した様々な機械学習手法を用いることで、より短時間の測定で高精度に評価することができるようになる。
【0039】
記憶部6は、コンピュータプログラムデータ(例えば、呼吸計測用コンピュータプログラムデータ)、一次記憶データ、その他のデータを記憶可能である。記憶部6は、あらかじめ定められた複数の特定呼吸パターンのそれぞれに対応させた特定呼吸パターン波形データも、上述の演算部5が呼吸分類の推定を行う際に参照するための参照ライブラリとして記憶している。
【0040】
入力部7は、計測者が呼吸計測の開始を指示するために入力操作される入力部材71を含む。実施形態1の入力部7は、
図2に示すように、入力部材71として押釦スイッチが採用されている。
【0041】
制御部8は、コンピュータを中心に構成されており、入力部7の入力部材71が入力操作されたことを受けて、記憶部6に記憶されている呼吸計測用コンピュータプログラムデータを実行する。制御部8は、呼吸計測用コンピュータプログラムデータを実行することで、モバイル型呼吸計測装置1が所望の機能を発揮できるよう、コンピュータに、検出部2、照射部3、および記憶部6における処理を制御するように機能させ、また、コンピュータを収集部4および演算部5として機能させる。
【0042】
出力部9は、演算部5が生成した計測値を計測者がリアルタイムで認識できるように出力する。具体的に、出力部9は、液晶ディスプレイ91を有し、計測者に対し計測値をリアルタイムで画面表示する。また、出力部9は、計測者に対し収集波形データをリアルタイムで表示することもできる。なお、液晶ディスプレイ91は、収集部4、演算部5、記憶部6、および制御部8を1パッケージとしたMCUが実装されているプリント基板に実装されている。
【0043】
電源部10は、乾電池、ボタン電池、または充電池といった小型電池であり、検出部2、照射部3、収集部4、演算部5、記憶部6、入力部7、制御部8、および出力部9に電力を供給する。
【0044】
収容ケース11は、箱形状を有し、持ち運び可能なサイズで形成されている。収容ケース11は、検出部2、照射部3、収集部4、演算部5、記憶部6、入力部7、制御部8、出力部9、および電源部10を収容している。収容ケース11は、検出部2の赤外線検出素子21、照射部3の発光素子31、入力部7の入力部材71、および出力部9の液晶ディスプレイ91等が、外部からのアクセスまたは外部へのアクセスが可能なように必要に応じて開口している。前述したように、モバイル型呼吸計測装置1においては、収集部4、演算部5、記憶部6、および制御部8を1パッケージとしたMCU、並びに、出力部9が、1枚のプリント基板上に配置されてコンパクトに形成されているとともに、電源部10の小型電池による電力供給で十分動作可能であり、検出部2および照射部3において用いられる素子も小さいものであるため、収容ケース11は、片手で把持可能なコンパクトサイズで形成されている(
図7参照)。
【0045】
図6は、制御部8の制御の下に行われる呼吸計測方法の流れを示すフローチャートである。
図7は、呼吸計測時におけるモバイル型呼吸計測装置1の使用状態を示す図である。
図3~
図5も参照しながら、モバイル型呼吸計測装置1を用いた呼吸計測方法について説明する。
【0046】
制御部8は、記憶部6に格納されている呼吸計測用コンピュータプログラムに従って、
図6に示すように、検出ステップST1、波形データ生成ステップST2、演算ステップST3、および、出力ステップST4を順次実行する。例えば、計測者が入力部7の入力部材71を操作して計測開始を指示することにより、これらのステップで行われる処理が自動で進行する。
【0047】
検出ステップST1では、ゼーベック効果を利用するサーモパイル型の赤外線検出素子を用いて、被計測対象者の呼吸に伴い温度変化を生じる被計測対象者の特定部位から放出された赤外線の放射エネルギー量を検出する。具体的には、
図7に示すように、計測者は、モバイル型呼吸計測装置1を用い、1000mm以内の距離から照射部3の発光素子31から照射したガイド光を被計測対象者の特定部位に合わせ、入力部7の入力部材71等を操作し、計測開始を指示する。そうすると、検出部2の赤外線検出素子21が特定部位から放出された2000mm
2以下の面積範囲の赤外線の放射エネルギー量を検出し始め、放射エネルギー量から生じる温度に関する検出データをリアルタイムで得ることができる。
【0048】
波形データ生成ステップST2では、収集部4は、検出ステップST1で検出した検出データを所定時間収集し、
図3に示すような検出データの経時的変化を示す収集波形データを生成する。
【0049】
演算ステップST3では、演算部5において、呼吸に関し得ようとしている計測内容に応じて波形データ生成ステップST2で生成された収集波形データを基に演算処理がなされる。実施形態1においては、呼吸に関し定量的に計測しようとする内容が呼吸数および異常な呼吸波形となっていないかを推定する呼吸分類推定であるため、演算部5は、演算ステップST3において、呼吸数算出処理ST31、呼吸分類推定処理ST32、および計測値生成処理ST33を実行する。
【0050】
呼吸数算出処理ST31では、波形データ生成ステップST2で生成した収集波形データを高速フーリエ変換により周波数解析してピークを示す周波数から呼吸数を示す値を算出する。具体的には、呼吸数算出処理ST31では、収集波形データを高速フーリエ変換により周波数解析して
図4で示すようなピーク周波数を得て、「ピーク周波数=呼吸数」として呼吸数を示す値を算出する。
【0051】
呼吸分類推定処理ST32では、
図5に示すように、あらかじめ定められた複数の特定呼吸パターンのそれぞれに対応させた特定呼吸パターン波形データと波形データ生成ステップST2で生成した収集波形データとを比較参照することで、収集波形データが複数の特定呼吸パターンのうちどの特定呼吸パターンに該当するかを推定し、その推定結果を得る。
【0052】
計測値生成処理ST33では、呼吸数算出処理ST31で算出された呼吸数を示す値および呼吸分類推定処理ST32で得られた推定結果を示す計測値を生成する。
【0053】
出力ステップST4では、生成した計測値を、例えば、モバイル型呼吸計測装置1の出力部9の液晶ディスプレイ91に表示する、といったように被計測対象者または計測者が認識できるよう出力する。出力ステップST4では、生成した計測値をリアルタイムで表示することが正しく計測しているかを計測者が即把握できるようにするためにも好ましい。
【0054】
実施形態1のモバイル型呼吸計測装置1は、サーモパイル型の赤外線検出素子21により被計測対象者の呼吸に伴い温度変化を生じる被計測対象者の特定部位から放出された赤外線の放射エネルギー量を検出する検出部2と、この放射エネルギー量に伴う検出データを所定時間収集し、検出データの経時的変化を示す収集波形データを生成する収集部4と、この収集波形データから呼吸の状態を示す計測値を生成する演算部5と、この計測値を出力する出力部9と、を備えており、とくにカメラやビデオ等による画像を用いず大掛かりなシステムなしで呼吸の状態を示す計測値を生成している。このため、モバイル型呼吸計測装置1によれば、計測者の技量または経験に依存することなく定量的な呼吸計測を行うことができる。また、実施形態1のモバイル型呼吸計測装置1によれば、収容ケース11が検出部2、照射部3、収集部4、演算部5、記憶部6、入力部7、制御部8、出力部9、および電源部10等を収容して持ち運び可能なサイズに形成されているため、持ち運びして簡便に使用することができる。
【0055】
また、モバイル型呼吸計測装置1は、これまで計測者が目視により観察することで得ていた呼吸数を示す値を、演算部5が収集波形データを周波数解析してピークを示す周波数から呼吸数を示す値を算出して計測値を生成する。このため、モバイル型呼吸計測装置1によれば、計測者の技量または経験に依存することなく定量的に呼吸数を計測することができる。
【0056】
また、モバイル型呼吸計測装置1は、赤外線検出素子21が向く方向へガイド光を照射する照射部3を備えている。このため、モバイル型呼吸計測装置1によれば、赤外線検出素子21が特定部位へ向いているかを計測者が目視で把握できるため、呼吸の状態の計測をより実用的に行うことができる。
【0057】
また、モバイル型呼吸計測装置1において、出力部9は、収集部4が生成した収集波形データまたは演算部5が生成した計測値を計測者がリアルタイムで認識できるように出力する。このため、モバイル型呼吸計測装置1によれば、正しく特定部位に位置合わせして計測できているか等、計測者が素早く把握できるため、呼吸の状態の計測をより実用的に行うことができる。
【0058】
さらに、モバイル型呼吸計測装置1は、あらかじめ定められた複数の特定呼吸パターンのそれぞれに対応させた特定呼吸パターン波形データを記憶する記憶部6を備えており、演算部5が記憶部6に記憶された特定呼吸パターン波形データと収集波形データとを比較参照することで、収集波形データが複数の特定呼吸パターンのうちどの特定呼吸パターンに該当するかを推定し、推定結果を計測値の一つとして生成する。このため、モバイル型呼吸計測装置1によれば、呼吸波形自体が正常か異常かを定量的に評価できるだけでなく、異常と判断された場合の具体症例を予測、推定することができる。
【0059】
モバイル型呼吸計測装置1によれば、実装される呼吸計測用コンピュータプログラムによって上記した呼吸計測方法を実行することで、計測者の技量または経験に依存することなく定量的に呼吸数を計測することができる。
【0060】
(実施形態2)
図8は、本発明を適用した実施形態2のモバイル型呼吸計測装置101の構成図である。
図9は、モバイル型呼吸計測装置101(
図9の(a))およびモバイル型呼吸計測装置101と同様の構成を有するモバイル型呼吸計測装置201(
図9の(b))の外観斜視図である。
【0061】
実施形態2に係るモバイル型呼吸計測装置101,201は、基本的には実施形態1に係るモバイル型呼吸計測装置1と同様の構成を有するが、次の点において相違している。すなわち、
図8および
図9に示すように、実施形態2に係るモバイル型呼吸計測装置101,201においては、赤外線検出素子21を備えた検出ユニット12Aと、制御部8を備えた制御ユニット12Bとから構成され、これらのユニット12A、12Bの間が、有線通信あるいは無線通信により接続される。すなわち、モバイル型呼吸計測装置101,201の収容ケースは2体あり、一方が、検出ユニット12Aの側の収容ケースである第1収容ケース11Aとされ、他方が、制御ユニット12Bの側の収容ケースである第2収容ケース11Bとされている。また、モバイル型呼吸計測装置101,201においては、検出ユニット12Aと制御ユニット12Bとが別体であるため、それぞれのユニット用に電源部が備えられている。なお、以下において、実施形態1に係るモバイル型呼吸計測装置1と同様の構成については、図面上に実施形態1の場合と同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
検出ユニット12Aは、赤外線検出素子21からなる検出部2および照射部3に加えて、制御ユニット12Bとの間で通信を行う第1通信部13A、およびこれら各部に電力を供給する検出ユニット用電源部10Aを備えている。制御ユニット12Bは、制御部8、収集部4、演算部5、記憶部6、入力部7および出力部9に加えて、検出ユニット12Aとの間で通信を行う第2通信部13B、およびこれら各部に電力を供給する制御ユニット用電源部10Bを備えている。
【0063】
モバイル型呼吸計測装置101では、
図9(a)に示すように、検出ユニット12Aの第1通信部13Aと制御ユニット12Bの第2通信部13Bとの通信形態として、データケーブル14を用いた有線通信を採用している。モバイル型呼吸計測装置201では、
図9(b)に示すように、第1通信部13Aと第2通信部13Bとの通信形態として、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の無線通信を採用している。
【0064】
有線通信を行うモバイル型呼吸計測装置101の場合には、検出ユニット12A、制御ユニット12Bのそれぞれに、データケーブル14が接続可能な通信用のコネクタ端子が備わっている。無線通信を行うモバイル型呼吸計測装置201の場合には、無線接続のため、検出ユニット12A、制御ユニット12Bのそれぞれに無線通信用のモジュール素子が備わっている。
【0065】
ここで制御ユニット12Bとして、スマートフォン、タブレット装置、モバイルPCといった市販の小型携帯端末を用いることができる。この場合には、先に説明した呼吸計測用コンピュータプログラムを小型携帯端末に実装し、当該呼吸計測用コンピュータプログラムを実行することにより、小型携帯端末が制御ユニット12Bとして機能する。
【0066】
実施形態2のモバイル型呼吸計測装置101,201においても、実施形態1のモバイル型呼吸計測装置1と同様の構成を有するため、実施形態1のモバイル型呼吸計測装置1と同様の作用効果を奏する。さらに、実施形態2のモバイル型呼吸計測装置101,201によれば、市販の小型携帯端末を利用し、検出部2を収容する検出ユニット12Aを非常にコンパクトに形成できるため、持ち運び性をより良好にして呼吸計測を行うことができる。
【0067】
[その他の形態]
以上、本発明を上記の実施形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0068】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の数、接続の仕方、具体的な素子、ユニット構成は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0069】
(2)上記した実施形態においては、収集部4、演算部5、記憶部6、および制御部8は、マイクロコントローラ(MCU)として、各構成が1パッケージで構成されているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。各部が別パッケージとして構成されていてもよい。
【0070】
(3)上記した実施形態においては、演算部5が高速フーリエ変換を用いピークを示す周波数から呼吸数を算出するものとして説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、演算部が呼吸数を算出する際に、種々の周波数解析を用いることができ、例えば、最大エントロピー法(MEM:Maximum Entropy Method)を用いてもよい。最大エントロピー法は、計測波形(収集波形データ)を自己回帰モデルとして仮定する解析手法であり、短いデータ長からでも高精度の周波数解析が可能であるため、好適である。また、別の周波数解析を用い、ピークを示す周波数以外の解析値を用いて呼吸数を算出する場合もある。
【0071】
(4)上記した実施形態においては、照射部3は発光素子31を有し、計測者が視覚により認識できるようにするためにガイド光を用いるものとして説明したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、近接表面を検出する検出部にしたうえで、照射部は、視認できない表面検出センサとブザーとを有し、表面検出センサが近接表面を検出したらブザーを鳴らすようなものであってもよい。
【0072】
(5)上記した実施形態1においては、入力部7は入力部材71として押釦スイッチが採用されているものと説明したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、入力部材として実施形態2のように小型携帯端末のタッチパネル等の入力部材を採用してもよい。また例えば、入力部材として、スライドスイッチ、音声入力のためのマイク、振動入力のための振動センサ等を採用してもよい。
【0073】
(6)上記した実施形態においては、出力部9は液晶ディスプレイ91を有し、計測者に対し計測値を画面表示するものと説明したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、出力部は7セグメントLEDといったシンプルな表示素子を有し、数字表示のみにより計測値を出力するものであってもよい。また例えば、出力部はスピーカーを有し、音声にて計測値を出力するものであってもよい。また例えば、出力部はデータ出力端子または無線通信素子を有し、外部プリンタを接続して、文字にて計測値を出力するものであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1,101,201…モバイル型呼吸計測装置、2…検出部、3…照射部、4…収集部、5…演算部、6…記憶部、7…入力部、8…制御部、9…出力部、10…電源部、10A…検出ユニット用電源部、10B…制御ユニット用電源部、11…収容ケース、11A…第1収容ケース、11B…第2収容ケース、12A…検出ユニット、12B…制御ユニット、13A…第1通信部、13B…第2通信部、14…データケーブル、21…赤外線検出素子、31…発光素子、71…入力部材、91…液晶ディスプレイ、ST1…検出ステップ、ST2…波形データ生成ステップ、ST3…演算ステップ、ST4…出力ステップ、ST31…呼吸数算出処理、ST32…呼吸分類推定処理、ST33…計測値生成処理