IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILグループの特許一覧

<>
  • 特開-片持ち階段の支持構造 図1
  • 特開-片持ち階段の支持構造 図2
  • 特開-片持ち階段の支持構造 図3
  • 特開-片持ち階段の支持構造 図4
  • 特開-片持ち階段の支持構造 図5
  • 特開-片持ち階段の支持構造 図6
  • 特開-片持ち階段の支持構造 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143231
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】片持ち階段の支持構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/022 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E04F11/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055799
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 純
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 元徳
(72)【発明者】
【氏名】山中 大成
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC33
2E301CC44
2E301CD21
2E301CD34
2E301CD43
2E301DD13
(57)【要約】
【課題】好ましい意匠性が得られる片持ち階段の支持構造を提供すること。
【解決手段】踏み板と、踏み板の一端側を躯体に対し固定して支持する支持具と、を備える片持ち階段の支持構造であって、踏み板の厚さは30mm以下であり、支持具は、少なくとも踏み板を下方から支持する下側支持具を備え、下側支持具は、踏み板の一端側から他端側に向けて延出し、踏み板の長手方向の長さに対する、下側支持具の長手方向の長さは0.84倍以下である、片持ち階段の支持構造。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏み板と、前記踏み板の一端側を躯体に対し固定して支持する支持具と、を備える片持ち階段の支持構造であって、
前記踏み板の厚さは30mm以下であり、
前記支持具は、少なくとも前記踏み板を下方から支持する下側支持具を備え、
前記下側支持具は、前記踏み板の一端側から他端側に向けて延出し、
前記踏み板の長手方向の長さに対する、前記下側支持具の長手方向の長さは0.84倍以下である、片持ち階段の支持構造。
【請求項2】
前記踏み板の下面の面積に対する、前記下側支持具の下面の面積は0.71倍以下である、請求項1に記載の片持ち階段の支持構造。
【請求項3】
前記下側支持具は、下方に突出するリブを備える、請求項1又は2に記載の片持ち階段の支持構造。
【請求項4】
前記リブは、前記下側支持具の短手方向の中央部に配置される、請求項3に記載の片持ち階段の支持構造。
【請求項5】
前記リブは、前記躯体側から先端側に向かうにつれて厚み方向の長さが先細り形状となるように傾斜する、請求項3に記載の片持ち階段の支持構造。
【請求項6】
前記下側支持具は、金属材料により構成される、請求項1又は2に記載の片持ち階段の支持構造。
【請求項7】
前記支持具は、前記踏み板を上方から支持する上側支持具を更に備える、請求項1又は2に記載の片持ち階段の支持構造。
【請求項8】
前記踏み板は、炭素繊維強化プラスチックにより構成される、請求項1又は2に記載の片持ち階段の支持構造。
【請求項9】
以下の式(1)によって算出される前記踏み板の撓み量が6mm以下である、請求項1又は2に記載の片持ち階段の支持構造。
撓み量(mm)=(600(N)×踏み板の長手方向長さ(mm))/(3×下側支持具及び踏み板の複合曲げ剛性(N・mm)) (1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、片持ち階段の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱等の躯体に対して階段を構成する踏み板の一端側が固定されて支持される、片持ち階段が知られている。片持ち階段は、建造物の構造的な要求や、デザイン上の要求等により階段として選択される。片持ち階段は、踏み板の一端側のみが固定される構造上、十分な強度が確保される必要がある。片持ち階段の強度を向上させる手段としては、踏み板の厚みを十分に厚くする手段が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-036639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、片持ち階段の意匠性を向上させる目的で、踏み板の厚みを従来よりも薄くしたいという要求がある。特許文献1に開示された技術は、一対の踏み板支持体を支持体締結部で締結し、踏板支持体は柱挟持部で柱を挟み込むように配置される。そして、踏み板は、踏み板支持体を覆うように載置される。特許文献1に開示された構造は、片持ち階段の強度を十分に確保するために、踏板支持体及び踏み板の厚みを所定の厚み以上に厚くする必要があった。従って、踏み板の厚みを薄くすることが困難であるばかりか、踏板支持体が視界に入りやすく、意匠性の観点から好ましいものとは言えない。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、好ましい意匠性が得られる片持ち階段の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、階段を構成する踏み板と、前記踏み板の一端側を躯体に対し固定して支持する支持具と、を備える片持ち階段の支持構造であって、前記踏み板の厚さは30mm以下であり、前記支持具は、少なくとも前記踏み板を下方から支持する下側支持具を備え、前記下側支持具は、前記踏み板の一端側から他端側に向けて延出し、前記踏み板の長手方向の長さに対する、前記下側支持具の長手方向の長さは0.84倍以下である、片持ち階段の支持構造に関する。
に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る片持ち階段の支持構造を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る片持ち階段の支持構造を示す側面図である。
図3】第1実施形態に係る片持ち階段の支持構造を示す下面図である。
図4】第2実施形態に係る片持ち階段の支持構造を示す側面図である。
図5】片持ち階段と使用者の視界との関係を示す概念側面図である。
図6】片持ち階段と使用者の視界との関係を示す概念側面図である。
図7】下側支持具の各サイズと踏み板の最大変位量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<片持ち階段の支持構造>
《第1実施形態》
本実施形態に係る片持ち階段の支持構造100は、図1~3に示すように、踏み板10と、踏み板10の一端側を躯体30に対して固定して支持する支持具20と、を備える。以下の説明において、踏み板10が固定される躯体30を柱として説明する。一方で、踏み板10が固定される対象は柱には限定されず、少なくとも片持ち階段の使用者の体重を支え得る所定以上の強度を有していればよい。上記対象としては、例えば梁であってもよい。各図面中、踏み板10の長手方向(幅方向)をX方向、踏み板10の短手方向(前後方向)をY方向、鉛直方向(厚み方向)をZ方向としてそれぞれ示す。
【0009】
(踏み板)
踏み板10は、図2、3に示すように、X方向の長さL1X、Y方向の長さL1Y、Z方向の長さ(厚み)L1Zを有する板状部材である。踏み板10は、均一な厚みを有し、厚みL1Zは、30mm以下である。長さL1Xは、住宅用階段として安全性を確保する観点から、750mm以上であることが好ましい。図2、3において、踏み板10を矩形状の踏み板として示しているが、踏み板10の形状は矩形状には限定されない。踏み板10の形状が矩形状ではない場合、本明細書におけるX方向の長さL1X、Y方向の長さL1Y、Z方向の長さ(厚み)L1Zは、それぞれ最大長さを意味する。
【0010】
踏み板10は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP」)により構成されることが好ましい。踏み板10がCFRPにより構成される場合、CFRPとしては、特に限定されないが、CFRPを構成する炭素繊維のヤング率(引張弾性率)が500GPa以上であり、引張強度が2000MPa以上であることが好ましい。上記炭素繊維としては、例えば、ピッチ系の炭素繊維が挙げられる。これにより、踏み板10の厚みL1Zを30mm以下とした場合であっても、踏み板10の撓み量を低減できる。
【0011】
踏み板10は、例えば、CFRPプリプレグシートを重ね合わせて接合することにより得られる。CFRPプリプレグシートは、炭素繊維に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等のマトリックス樹脂を均一に含浸させたシートである。CFRPプリプレグシートは、炭素繊維が配向する方向が所定の一方向に引き揃えられたものであることが好ましい。そして、上記繊維が配向する所定方向が踏み板10のX方向に沿うように、踏み板10を構成することが好ましい。上記所定方向と、踏み板10のX方向は、略平行であることが好ましいが、一定の角度を有していてもよい。具体的には、上記所定方向と踏み板10のX方向とのなす角は、0°以上45°未満であることが好ましい。
【0012】
踏み板10の一端側である柱30側の端部、及び下面の一部は、下側支持具21と固定されている。踏み板10の他端側は固定されていない。上記構成により、踏み板10の厚みL1Zを従来よりも薄い30mm以下とした場合であっても、踏み板10の撓み量を低減できる。
【0013】
踏み板10は柱30と当接して配置されていてもよく、柱30と固定されていてもよい。一方で、踏み板10と柱30とは固定されていなくてもよい。
【0014】
(固定部材)
固定部材24は、踏み板10の一端側である柱30側の端部の上下面、及び柱30に当接するように配置される。
【0015】
固定部材24には、例えば、柱30に当接して配置された状態でX方向に連通する孔部hが形成される。この場合、柱30にも、孔部hに対応する位置に孔部が形成される。孔部hにボルト等の固定具を挿通してナット等の締結具により柱30に締結することで、固定部材24が柱30に固定される。固定部材24を柱30に固定する方法は上記には限定されず、溶接等による方法であってもよいし、上記方法を併用してもよい。
【0016】
(支持具)
支持具20は、図1~3に示すように、下側支持具21、及び23aを備える。下側支持具21、及び23aは、踏み板10の下面に当接して配置され、踏み板10を下方から支持する。
【0017】
下側支持具21、及び23a、並びに固定部材24は、例えば、溶接等の方法により固定されて一体化される。下側支持具21、及び23a、並びに固定部材24と、踏み板10とは、公知の接着剤により接着されていてもよい。
【0018】
(下側支持具)
下側支持具21は、図2、3に示すように、X方向の長さL2X、Y方向の長さL2Y、Z方向の長さ(厚み)L2Zaを有する板状部材である。下側支持具21は、踏み板10の一端側(柱30側)から他端側に向けて延出する。下側支持具21を構成する材料は、特に限定されないが、金属材料であることが好ましい。金属材料としては、例えば、鋼鉄等が挙げられる。下側支持具21の形状は図2、3に示すような矩形状には限定されない。下側支持具21の形状が矩形状ではない場合、X方向の長さL2X、Y方向の長さL2Y、Z方向の長さ(厚み)L2Zaは、それぞれ最大長さを意味する。
【0019】
下側支持具21には、リブ22が設けられていてもよい。リブ22は、下側支持具21の下面と溶接等により接合され、踏み板10の下方に突出するように配置される部材である。リブ22のZ方向の最大長さはL2Zbである。下側支持具21にリブ22を設けることにより、踏み板10の撓み量をより低減できる。
【0020】
リブ22は、図3に示すように、下側支持具21のY方向の中央部に配置されることが好ましい。リブ22は、柱30側から踏み板10の先端側に向かうにつれて厚み方向Zの長さが先細り形状になるように傾斜することが好ましい。理由については後述するが、上記構成により、リブ22を視認し難いように配置することができるため、意匠性を向上できる。
【0021】
下側支持具23aは、図2、3に示すように、踏み板10の一端側である柱30側の端部の下面に当接して配置される。下側支持具23aを構成する材料としては、特に限定されないが、下側支持具21と同様の金属材料等が挙げられる。
【0022】
下側支持具23aの形状は、踏み板10の下面に当接する面と、該面に垂直な固定部材24に当接する面を有していればよく、特に限定されない。下側支持具23aの形状としては、例えば、略直方体形状、略立方体形状、略三角柱形状等が挙げられる。下側支持具23aは、荷重に対する変形し難さの観点からは、Y方向から視て矩形状を有することが好ましい。一方で、下側支持具23aは、意匠性の観点から壁内部に埋設されてもよい。この場合、壁内部への埋設しやすさの観点から、下側支持具23aの形状をY方向から視てL字形状を有する形状とすることが好ましい。
【0023】
下側支持具23aは、図2、3に示すように単一の部材であってもよく、踏み板10のY方向に沿って複数設けられていてもよい。
【0024】
下側支持具21、及び23aには、厚みが30mm以下である踏み板10の撓みを抑制するため、所定以上の強度が要求される。一方で、下側支持具21、及び23aを視認し難いように構成することで、片持ち階段の支持構造100の意匠性を向上できる。このような視認し難い下側支持具21、及び23aの構成について、図5、6の概念図を用いて以下に説明する。
【0025】
図5は、階段を昇降する人Mの目線V1~V3と、踏み板の下方の死角になる領域R1との関係を模式的に示す側面図である。目線V1~V3は、アイレベルを考慮して設定することができる。例えば、図5においては、目線V1~V3と、水平方向(Y方向)とのなす角はそれぞれ、V1:51.1°、V2:32.6°、V3:16.8°である。人Mの目線の高さh1は、日本人の平均身長を考慮して設定することができ、例えば1400mmとすることができる。
【0026】
図5において、隣接する踏み板同士はY方向に間隔を有していない。Z方向に踏み板の上面同士の間隔h2を有している。間隔h2は、例えば190mmである。踏み板の厚みL1Zは、例えば30mmである。上記条件において、下部の領域が人Mの視界に入る可能性がある踏み板10a、10b、10cのうち、最も上段に配置される踏み板10cの下部の領域R1が、踏み板の下部の人Mの死角になる領域のうち最も小さい領域である。従って、可能な限り領域R1に入るように下側支持具21、及び23aを配置することで、下側支持具21、及び23aを視認し難いものとすることができる。領域R1の高さh3は、上記の条件で約32mmである。
【0027】
図6は、階段の側方に立って、踏み板10を側方から視認する人Mの目線Vと、踏み板の下方の死角になる領域R2との関係を模式的に示す側面図である。目線Vは、アイレベルを考慮して設定することができる。例えば、図6においては、目線Vと、水平方向(Y方向)とのなす角は、V:2.9°である。
【0028】
図6において、踏み板10と人Mとの距離LXは、例えば2000mmである。人Mの目線の高さh1は、図5と同様に例えば1400mmである。踏み板10のX方向の長さL1Xは、例えば750mmである。踏み板10の厚みL1Zは、例えば30mmである。例えば上記条件において、人Mの視界に入り難い領域R2が求められる。領域R2の高さh4は、上記の条件で約37mmである。
【0029】
下側支持具21、及び23aは、領域R1及び領域R2の少なくともいずれかに含まれるように配置されることが好ましく、領域R1及び領域R2のいずれにも含まれるように配置されることがより好ましい。図5及び図6の条件において、高さh3は高さh4よりも小さい約32mmである。従って、下側支持具21、及び23aの厚み(Z方向の長さ)は32mm以内であることが好ましい。
【0030】
図5及び図6の条件において、下側支持具21の厚みL2Zaを仮に5mmとした場合、上記領域R1及び領域R2のいずれにも含まれる下側支持具21のY方向の長さL2Yは約177mmであり、X方向の長さL2Xは約632mmである。下側支持具21の厚みL2Zaが最大で5mmであれば、踏み板の撓みを6mm以下にできるように、踏み板及び下側支持具21を構成することが可能である。上記領域R1及び領域R2のいずれにも含まれる下側支持具21のX方向の長さL2Xは、踏み板10のX方向の長さL1Xに依存して変化するため、長さL2Xの好ましい範囲は長さL1Xとの比率で規定することができる。以上より、視界に入り難い下側支持具21の長さL2Xは、長さL1Xに対して0.84倍以下であることが明らかである。本明細書及び特許請求の範囲において、上記0.84倍とは、小数第三位を四捨五入した数値である。
【0031】
上記と同様に、視界に入り難い下側支持具21の面積として、図3における踏み板10の下面の面積S1に対する、下側支持具21の下面の面積S2も定義できる。面積S1は、長さL1X及びL1Yから算出でき、面積S2は、長さL2X及びL2Yから算出できるためである。上記より、視界に入り難い下側支持具21の下面の面積S2は、面積S1に対して0.71倍以下であることが好ましい。本明細書及び特許請求の範囲において、上記0.71倍とは、小数第三位を四捨五入した数値である。
【0032】
下側支持具21がリブ22を有している場合、リブ22も上記領域R1及び領域R2のいずれにも含まれるように配置されることが好ましい。即ち、リブ22のZ方向の最大長さL2Zbと下側支持具21の厚みL2Zaとの合計が32mm以内であることが好ましい。仮に上記を満たせない場合であっても、リブ22を上記したような先細り形状にすることで、リブ22は領域R2に類似する形状となるため、リブ22を領域R2に配置することが容易になる。従って、リブ22を視認し難いように配置することができる。
【0033】
下側支持具23aは、上記領域R1及び領域R2のいずれにも含まれるように配置されることが好ましい。一方で、下側支持具23aが壁内部に埋設されている場合にはこの限りではない。
【0034】
<踏み板及び支持具の構成と踏み板の撓み量との関係>
次に、踏み板10の上面に荷重が加えられた際の、踏み板10の撓みを低減できる、踏み板10及び支持具の構成について述べる。踏み板10の撓み量は、踏み板10の上面に荷重が加えられた際の、踏み板10の最大変位量(mm)で定義される。踏み板10の撓み量は、例えば、踏み板10の先端部に600Nの荷重が加えられた際に、6mm以内であることが好ましい。撓み量が6mm以内であることにより、踏み板10に乗った人が踏み板10の沈み込みを感じ難くすることができる。
【0035】
上記踏み板10の撓み量は、例えば、以下の式(1)によって算出される。
撓み量(mm)=(600(N)×踏み板10のX方向の長さ:L1X(mm))/(3×下側支持具及び踏み板の複合曲げ剛性(N・mm)) (1)
【0036】
上記式(1)における、下側支持具及び踏み板の複合曲げ剛性(N・mm)は、例えば、以下の式(2)によって算出される。
下側支持具及び踏み板の複合曲げ剛性(N・mm)=下側支持具のヤング率(MPa)×1/12×下側支持具のY方向の長さ:L2Y(mm)×下側支持具のZ方向の長さ:L2Z(mm)+踏み板のヤング率(MPa)×1/12×踏み板のX方向の長さ:L1X(mm)×踏み板のZ方向の長さ:L1Z(mm) (2)
【0037】
《第2実施形態》
以下、本開示の第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0038】
第2実施形態に係る片持ち階段の支持構造110は、図4に示すように、上側支持具23bを更に有する支持具20aを備える。
【0039】
(上側支持具)
上側支持具23bは、図4に示すように、踏み板10の一端側である柱30側の端部の上面に当接して配置される。上側支持具23bは、固定部材24にも当接し、溶接等の方法で固定部材24に固定されて一体化される。上側支持具23bは、踏み板10の上面に対して鉛直下方向に荷重が加えられた際に、下側支持具23aと固定部材24との固定箇所を中心として略鉛直上方向に働く回転モーメントを抑制する。これにより、踏み板10の撓み量をより低減できる。
【0040】
上側支持具23bは、単一の部材であってもよく、踏み板10のY方向に沿って複数設けられていてもよい。上側支持具23bを構成する材料としては、特に限定されないが、下側支持具21と同様の金属材料等が挙げられる。
【0041】
上側支持具23bの形状は、踏み板10の上面に当接する面と、該面に垂直な固定部材24に当接する面を有していればよく、特に限定されない。上側支持具23bの形状としては、例えば、略直方体形状、略立方体形状、略三角柱形状等が挙げられる。上側支持具23bは、荷重に対する変形し難さの観点からは、Y方向から視て矩形状を有することが好ましい。一方で、上側支持具23bは、意匠性の観点から壁内部に埋設されてもよい。この場合、壁内部への埋設しやすさの観点から、上側支持具23bの形状をY方向から視てL字形状を有する形状とすることが好ましい。
【0042】
上側支持具23bの踏み板10に当接して固定される箇所のY方向の長さは、踏み板10のY方向の長さL1Yに対して、1/4以上の長さであることが好ましく、2/3以上の長さであることがより好ましい。上側支持具23bが複数配置される場合、踏み板10のY方向の両端に配置される上側支持具23bのY方向の長さの合計が、踏み板10のY方向の長さL1Yに対して、1/4以上の長さであることが好ましく、2/3以上の長さであることがより好ましい。
【0043】
上側支持具23bのY方向の長さは、下側支持具23aのY方向の長さよりも短いことが好ましい。上側支持具23bは、踏み板10の上面に対して鉛直下方向に荷重が加えられた際に上記回転モーメントを抑制することが可能なY方向の長さを有していればよい。このため、上側支持具23bのY方向の長さは、下側支持具23aのY方向の長さよりも短くすることが可能である。そして、上記構成により上側支持具23bを壁内部に埋設する大きさに容易に調整することができる。
【実施例0044】
以下、実施例に基づいて本開示をより詳細に説明する。本開示はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0045】
<踏み板の作製>
踏み板をCFRPによって作製した。具体的には、プリプレグシート(炭素繊維UDプリプレグ(一方向プリプレグ)「HyEJ56M80QD」、炭素繊維タイプ:PITCH80t、樹脂タイプ:汎用エポキシ、三菱化学社製)を、炭素繊維が配向する方向が踏み板のX方向に沿うように重ね合わせて接合することで踏み板を作成した。踏み板のX方向の長さL1X:950mm(うち50mmは壁内部への埋設長さ)、Y方向の長さL1Y:300mm、Z方向の長さL1Z:10mmとした。
【0046】
次に、上記作製した踏み板のX方向のヤング率を測定した。測定は、JIS K 7165に準拠した引張試験で行った。具体的な条件は、試験片形状:A型、測定装置:INSTRON社製5982型、ロードFS:10kN、引張速度:2mm/min、温度:23±2℃、湿度50±10%RHとした。測定の結果、踏み板のヤング率は約378GPaだった。
【0047】
[踏み板の撓み量と支持具のサイズとの関係]
下側支持具21、23a、及び23bを鋼鉄(弾性率:205GPa)により構成したものとした。下側支持具21のX方向の長さL2X、Y方向の長さL2Y、Z方向の長さL2Zaの条件をそれぞれ変化させ、上記第1実施形態に係る片持ち階段の支持構造100と、第2実施形態に係る片持ち階段の支持構造110の撓み量を、シミュレーションソフト:Altair社製 Optistruct 2019を用いて算出した。但し、踏み板の先端部に1200Nの荷重が加えられるものとした。結果を以下の表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の結果は荷重が1200Nの場合であり、荷重が600Nの場合の撓み量は、表1に示す撓み量のおよそ1/2である。従って、荷重600N、撓み量が6mm以下の条件を満たすサンプルは、表1中の撓み量が12mm以下のサンプルである。
【0050】
表1の結果から、踏み板の厚みを30mm以下とし、踏み板の長手方向の長さに対する、下側支持具の長手方向の長さを0.84倍以下とした場合において、荷重600Nにおける撓み量6mm以下という条件を、第1実施形態及び第2実施形態のいずれも、クリアできる条件が存在することが明らかである。従って、踏み板の厚みが薄く、支持具が視認し難い、意匠性の高い片持ち階段の支持構造において、踏み板の撓み量を抑制する強度も両立できることが明らかである。
【0051】
次に、表1の第2実施形態の片持ち階段の支持構造110の撓み量と、下側支持具21のX方向の長さL2X、Y方向の長さL2Y、Z方向の長さL2Zaとの関係を図7に示した。図7の結果から、X方向の長さL2X、Y方向の長さL2Y、及びZ方向の長さL2Zaが長いほど、撓み量を抑制できることが明らかである。更に、Y方向の長さL2Yよりも、X方向の長さL2X、及びZ方向の長さL2Zaの方が撓み量への依存性が大きいことも明らかである。
【0052】
以上、本開示の実施形態に係る片持ち階段の支持構造について説明した。しかし、本開示は上記の実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
100、110 片持ち階段の支持構造、 10 踏み板、20、20a 支持具、21、23a 下側支持具、22 リブ、23b 上側支持具、30 躯体(柱)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7