(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143246
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電池モジュールおよび電池ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 50/296 20210101AFI20241003BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M50/296
H01M50/503
H01M50/213
H01M50/505
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055816
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ソランキ,ディヴィヤンシュ
(72)【発明者】
【氏名】バガト,チンマイ
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA06
5H040AT01
5H040NN03
5H043AA03
5H043BA19
5H043FA04
5H043FA24
5H043LA21
(57)【要約】
【課題】複数の電池セル間の電流の偏りをより低減することが可能な電池モジュールを提供する。
【解決手段】
複数の電池セルが並列に接続された電池ブロックを複数備える電池モジュールであって、複数の電池ブロックは第1方向に配列され、複数の電池ブロックのそれぞれにおいて、複数の電池セルは、第1方向と交差する第2方向に配列され、複数の電池セルのそれぞれは、第1方向に隣接する電池ブロックにおける対応する電池セルに直列に接続されており、電池モジュールは、外部と電池モジュールとの間で電流が流入または流出する第1の部位が配置される第1の面と、第1の面と対向する面であって、外部と電池モジュールとの間で電流が流入または流出する2つの第2の部位が配置される第2の面と、を有し、第2方向において、第1の部位は、2つの第2の部位の間に位置する。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが並列に接続された電池ブロックを複数備える電池モジュールであって、
複数の電池ブロックは第1方向に配列され、
前記複数の電池ブロックのそれぞれにおいて、前記複数の電池セルは、前記第1方向と交差する第2方向に配列され、
前記複数の電池セルのそれぞれは、前記第1方向に隣接する電池ブロックにおける対応する電池セルに直列に接続されており、
前記電池モジュールは、
外部と前記電池モジュールとの間で電流が流入または流出する第1の部位が配置される第1の面と、
前記第1の面と対向する面であって、外部と前記電池モジュールとの間で前記電流が流入または流出する2つの第2の部位が配置される第2の面と、を有し、
前記第2方向において、前記第1の部位は、前記2つの第2の部位の間に位置する、電池モジュール。
【請求項2】
前記複数の電池ブロックのうち前記第1の面に最も近い電池ブロックが有する前記複数の電池セル同士を並列に接続する第1のタブと、
前記複数の電池ブロックのうち前記第2の面に最も近い電池ブロックが有する前記複数の電池セル同士を並列に接続する第2のタブと、をさらに備え、
前記第1の部位は、前記第1のタブに配置され、
前記2つの第2の部位の一方は、前記第2のタブの前記第2方向の一端側に配置され、
前記2つの第2の部位の他方は、前記第2のタブの前記第2方向の他端側に配置されている、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記第2方向において、前記第1の部位は、前記2つの第2の部位の中央または略中央に位置する、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記第1の面に、前記第1の部位が少なくとも2つ配置され、
前記第2の面に、前記第2の部位が少なくとも3つ配置され、
前記第2方向において、少なくとも3つの前記第2の部位のうち隣接する2つの第2の部位の間のそれぞれに、少なくとも2つの前記第1の部位の1つが位置する、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項5】
少なくとも3つの前記第2の部位は、前記第2方向に等間隔または略等間隔で配置されている、請求項4に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記第2の面に配置される前記第2の部位の個数mは、前記第1の面に配置される前記第1の部位の個数nよりも多い、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項7】
n=1、m=2であり、
前記複数の電池ブロックの数をNR、前記複数の電池ブロックのそれぞれにおける電池セルの数をNLとすると、
NR≦NL≦3×(NR-1)
である、請求項6に記載の電池モジュール。
【請求項8】
n=2、m=3であり、
前記複数の電池ブロックの数をNR、前記複数の電池ブロックのそれぞれにおける電池セルの数をNLとすると、
3×NR-2≦NL≦5×(NR-1)
である、請求項6に記載の電池モジュール。
【請求項9】
直列に接続された第1電池モジュールおよび第2電池モジュールを備える電池ユニットであって、
前記第1電池モジュールおよび前記第2電池モジュールのそれぞれは、請求項1または2に記載の電池モジュールであり、
前記第1電池モジュールの前記2つの第2の部位のそれぞれは、前記第2電池モジュールの前記2つの第2の部位の対応する1つと電気的に接続されている、電池ユニット。
【請求項10】
前記第1電池モジュールと前記第2電池モジュールとは、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に積み重ねられている、請求項9に記載の電池ユニット。
【請求項11】
前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向からの平面視において、前記第1電池モジュールと前記第2電池モジュールとは、隣り合うように配置されている、請求項9に記載の電池ユニット。
【請求項12】
前記電池ユニットは、
前記第1電池モジュールの前記2つの第2の部位の一方と、前記第2電池モジュールの前記2つの第2の部位の一方とを電気的に接続する第1タブ接続部と、
前記第1電池モジュールの前記2つの第2の部位の他方と、前記第2電池モジュールの前記2つの第2の部位の他方とを電気的に接続する第2タブ接続部と、
前記第1電池モジュールの前記第1の部位に電気的に接続された第1バスバーと、
前記第2電池モジュールの前記第1の部位に電気的に接続された第2バスバーと、をさらに備える、請求項9に記載の電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール、および電池モジュールを用いた電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの二次電池を用いた組電池装置(以下、「電池モジュール」と称する。)が知られている(特許文献1参照)。電池モジュールは、直列および/または並列に接続された複数の単位電池を備えている。このような電池モジュールは、例えば電力貯蔵用、自動車用などの蓄電池モジュールとして使用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電池モジュールにおいては、電池モジュールを構成する複数の単位電池(以下、「電池セル」と称する。)間の電流の偏りをより小さく抑えるという点で改善の余地がある。電流に偏りがあると、電池セル間で消費電力の差が生じ、一部の電池セルが他の電池セルよりも劣化しやすくなる。この結果、電池モジュールとしての寿命をさらに長くすることが難しい場合がある。
【0005】
本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、複数の電池セル間の電流の偏りをより低減することが可能な電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電池モジュールは、複数の電池セルが並列に接続された電池ブロックを複数備える電池モジュールであって、複数の電池ブロックは第1方向に配列され、前記複数の電池ブロックのそれぞれにおいて、前記複数の電池セルは、前記第1方向と交差する第2方向に配列され、前記複数の電池セルのそれぞれは、前記第1方向に隣接する電池ブロックにおける対応する電池セルに直列に接続されており、前記電池モジュールは、外部と前記電池モジュールとの間で電流が流入または流出する第1の部位が配置される第1の面と、前記第1の面と対向する面であって、外部と前記電池モジュールとの間で前記電流が流入または流出する2つの第2の部位が配置される第2の面と、を有し、前記第2方向において、前記第1の部位は、前記2つの第2の部位の間に位置する。
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電池ユニットは、直列に接続された第1電池モジュールおよび第2電池モジュールを備える電池ユニットであって、前記第1電池モジュールおよび前記第2電池モジュールのそれぞれは、前記の電池モジュールであり、前記第1電池モジュールの前記2つの第2の部位のそれぞれは、前記第2電池モジュールの前記2つの第2の部位の対応する1つと電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池モジュールを構成する複数の電池セル間における電流の偏りをより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の第1の実施形態に係る電池モジュールを斜め上方から見た模式的な斜視図である。
【
図1B】
図1Aの電池モジュールの背面側を斜め上方から見た模式的な斜視図である。
【
図2】
図1Aの電池モジュールにおけるセルの配列を示す模式的な上面図である。
【
図3】セルタブの一部を拡大して示す模式的な下面図である。
【
図4】参考例の電池モジュールのセルの配列を例示する模式的な上面図である。
【
図5】参考例の電池モジュールにおいて、充電時にセル端子接続部に生じる電流密度分布のシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】第1の実施形態の電池モジュールにおいて、充電時にセル端子接続部に生じる電流密度分布のシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】第1の実施形態の電池モジュールにおいて、充電時にセル端子接続部に生じる電流密度分布のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】変形例の電池モジュールのセルの配列の一例を示す模式的な上面図である。
【
図9】電池モジュールのセルの配列の他の例を示す模式的な上面図である。
【
図10】電池モジュールのセルの配列のさらに他の例を示す模式的な上面図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る電池ユニットの模式的な斜視図である。
【
図12A】ケース等を取り除いた状態の
図11の電池ユニットを斜め上方から見た模式的な斜視図である。
【
図12B】
図12Aの電池ユニットの背面側を斜め上方から見た模式的な斜視図である。
【
図13】タブとバスバーとの他の接続方法を例示する模式的な拡大下面図である。
【
図14】変形例の電池ユニットの模式的な斜視図である。
【
図15】電池モジュールの従来の回路構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者らは、電池モジュールを構成する電池セル間における電流の偏りをより低減するために鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
【0011】
図15は、電池モジュールの従来の回路構成を例示する図である。図示する電池モジュール900では、互いに並列に接続された電池セル(以下、「セル」と略す。)a1~a5を有する電池ブロックL1と、互いに並列に接続されたセルb1~b5を有する電池ブロックL2と、を備える。電池ブロックL1のセルa1~a5は、それぞれ、電池ブロックL2におけるセルb1~b5に直列に接続されている。これらのセルは、通常、複数のタブ(以下、「セル端子接続部」と総称する。)によって並列および直列に接続される。セル端子接続部は、外部から電流が流入または外部へ電流が流出する第1の部位91および第2の部位92を有する。この例では、第1の部位91は、電池ブロックL1の右端のセルa5の近くに配置され、第2の部位92は、電池ブロックL2の左端のセルb1の近くに配置されている。第1の部位91および第2の部位92のうち一方は、電流が流入する流入部位となり、他方は、電流が流出する流出部位となる。
【0012】
例えば、電池モジュール900を充電する際には、第1の部位91から電池モジュール900に電流が流入し、流入した電流は、第2の部位92から外部へ流れる。このとき、全てのセルa1~a5、b1~b5に均等に電流が流れることが好ましい。しかしながら、電流は、第1の部位91と第2の部位92との間を、最短経路を通って、すなわち抵抗が最小となる経路を通って流れようとするため、セル間で電流に偏りが生じる可能性がある。例えば、電池ブロックL1において、第1の部位91から遠いセルa1の正極に供給される電流は、第1の部位91に近いセルa5の正極に供給される電流よりも小さくなり得る。また、電流は、直列に接続されたセル間を(列方向に)流れることが好ましいが、電流の一部が所望しない方向に流れることがある。例えば、電池ブロックL1のセルa1~a5の負極から、それぞれ、電池ブロックL2の対応する1つのセル(ここでは、同じ列のセル)の正極に電流Irが流れることが好ましいが、一部の電流Iwは、最短経路をとろうとして、電池ブロックL2の対応しないセル(異なる列のセル)に流れてしまうおそれがある。セル間で電流に偏りが生じると、特定のセルに多くの電流が流れ込み、他のセルよりも早く劣化してしまう可能性がある。そうすると、電池モジュールとして寿命を向上させることが困難となる。
【0013】
そこで、本発明者らは、電池モジュールの第1の面に、外部と電池モジュールとの間で電流が流入または流出する第1の部位を配置し、第1の面と対向する第2の面に、外部と電池モジュールとの間で電流が流入または流出する2つの第2の部位を配置し、各電池ブロックにおけるセルの配列方向において、第1の部位を、2つの第2の部位の間に位置させることで、上述したような電流の偏りを抑えられることを見出した。この新規な知見に基づき、本発明者らは、本願発明に至った。
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。図示の目的のために、図面内の各要素の寸法は誇張されて示されている場合があり、必ずしも縮尺通りとは限らない。図面には、参考のために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が模式的に示されている。
【0015】
また、以下では、説明の便宜上、通常使用時の状態を想定して「上」、「下」、「右」、「左」、「側」、「前」、「背」等の方向を示す用語を用いるが、本発明に係る電池モジュールや電池ユニットの使用状態等を限定することを意味するものではない。さらに、本明細書において、「直交」または「略直交」は、90°±10°の範囲内であることを意味する。「平行」または「略平行」は、例えば±5°の範囲内であることを意味する。
【0016】
《第1の実施形態》
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る電池モジュールを斜め上方から見た模式的な斜視図であり、
図1Bは、
図1Aの電池モジュールの背面側を斜め上方から見た模式的な斜視図である。
図1Cは、
図1Aの電池モジュールの模式的な上面図であり、
図1Dは、
図1Aの電池モジュールの模式的な下面図である。
図2は、
図1Aの電池モジュールにおけるセルの配列を示す模式的な上面図である。
【0017】
電池モジュール100は、直列および/または並列に接続された複数の電池セル(セル)10を備える組電池である。セル10は、例えば円筒形の電池である。複数のセル10は、それぞれの正極端子または負極端子が上に位置するように、略鉛直方向(ここではZ方向)に立てられた状態で配列されていてもよい。セル10は、XY面に平行な仮想面上に配列されていてもよい。セル10の種類、形状、構造、材料などは特に限定されない。セル10は、充電可能な二次電池であることが好ましく、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウムポリマー電池などであってもよい。さらに、セル10の形状も円筒形に限定されず、角形などの他の形状であってもよい。
【0018】
電池モジュール100は、複数の電池ブロックL1~L8(以下、「電池ブロックL」と総称することがある。)を備える。複数の電池ブロックLのそれぞれは、並列に接続された複数のセル10を有する。複数の電池ブロックLにおけるセル10の個数は同じであってもよい。
【0019】
複数の(ここでは8個の)電池ブロックLは、Y方向に配列されている。各電池ブロックLの複数の(ここでは15個の)セル10は、Y方向に直交するX方向に配列されている。本明細書では、電池ブロックLの配列方向を「第1方向」、各電池ブロックLにおけるセル10の配列方向を「第2方向」、第1方向および第2方向に直交する方向(Z方向)を「第3方向」と呼ぶことがある。ここでは、第1方向と第2方向とが互いに直交(または略直交)する場合を例に説明するが、第3方向から見た平面視において、第1方向と第2方向とは交差していればよい。「第2方向」とは、第1方向と交差する方向であって、セル10の端面(本実施形態では、円筒形のセル10の電極が設けられる面とも言える。)に沿った方向である、とも言える。
【0020】
各電池ブロックLにおけるセル10のそれぞれは、Y方向に隣接する他の電池ブロックLにおける対応する1つのセル10に直列に接続されている。したがって、Y方向に配列された複数の(ここでは8個の)セル10は、直列に接続されている。Y方向に配列され、かつ、直列に接続された複数の(ここでは8個の)セル10で構成される列Rを「電池列」と呼ぶ。電池モジュール100は、
図2に模式的に示すように、例えば15個の電池列R1~R15を有する。電池モジュール100が有する電池列Rの数は、各電池ブロックLにおけるセル10の個数と同じであってもよい。また、各電池列Rを構成するセル10の個数は、電池ブロックLの数と同じであってもよい。
【0021】
本明細書において、複数の電池ブロックL(またはセル10)が「第1方向(Y方向)に配列されている」とは、これらの電池ブロックL(またはセル10)が、全体としてY方向(第1方向)に配列されていればよく、例えばジグザグ状に配列されていてもよい。また、隣接する2つの電池ブロックL(または2つのセル10)間の間隔は同じでもよいし、異なっていてもよい。同様に、複数のセル10が「X方向(第2方向)に配列されている」とは、これらのセル10が全体としてX方向(第2方向)に沿って配列されていればよく、ジグザグ状でもよい。また、隣接する2つのセル10間の間隔は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
図1A~
図2に示すように、Z方向からの平面視において、電池ブロックL1~L8は、セルの配列ピッチの1/2ずつ+X方向および-X方向に交互にずらしながら、全体としてY方向に配列されていてもよい。これにより、セル10をより密に配置することが可能である。複数の電池ブロックL1~L8における対応するセル同士は直列に接続されて電池列Rを構成している。このため、電池列Rは、Z方向からの平面視において、Y方向にジグザグ状に延在していてもよい。
【0023】
電池モジュール100は、Z方向に対向する上面100aおよび下面100bと、Y方向に対向する2つの側面100c、100dと、を有する。側面100cは電池ブロックL1側に位置する側面であり、側面100dは電池ブロックL8側に位置する側面である。各電池ブロックLが有する複数のセル10は、同じ極(正極または負極)が上面100a側に位置するように配列されている。また、各電池ブロックLの上面100a側に位置するセル10の極は、Y方向に隣接する他の電池ブロックLの上面100a側に位置する極と異なる。例えば、電池ブロックL1、L3、L5、L7における各セル10は正極(または負極)が上面100a側となり、電池ブロックL2、L4、L6、L8における各セル10は、負極(または正極)が上面100a側となるように配置されてもよい。なお、電池モジュール100の使用状態は、図示する状態に限定されない。電池モジュール100は、面100aが下面となり、面100bが上面となる状態で使用されてもよい。
【0024】
電池モジュール100は、各電池ブロックLのセル10を並列に接続し、かつ、各電池列Rのセル10を直列に接続するように構成されたセル端子接続部30をさらに備える。本実施形態では、セル端子接続部30は、複数のタブ31~37、41、42を有する。セル端子接続部30の具体的な構造は後述する。
【0025】
電池モジュール100は、外部と電池モジュール100との間で電流が流入または流出する第1の部位S11と、外部と電池モジュール100との間で電流が流入または流出する2つの第2の部位21、22と、を有する。電流は、第1の部位S11を介して外部から流入し、第2の部位を介して外部へ流出する。または、電流は、第2の部位S21、S22を介して外部から流入し、第1の部位S11を介して外部へ流出する。
【0026】
第1の部位S11は、電池モジュール100の第1の面f1に配置され、第2の部位S21、S22は、第1の面f1に対向する第2の面f2に配置されている。第2の面f2において、第2の部位S21、S22は、X方向に距離をおいて配置されている。第1の部位S11は、X方向において、2つの第2の部位S21、S22の間に位置するように第1の面f1に配置されている。本実施形態では、例えば、電池ブロックL1側の側面100cおよび電池ブロックL8側の側面100dの一方(ここでは側面100c)が第1の面f1であり、他方(ここでは側面100d)が第2の面f2である。
【0027】
第1の部位S11および/または第2の部位S21、S22は、セル端子接続部30のいずれかのタブに配置されてもよい。例えば、第1の面f1に、第1の部位S11を含むタブが設けられていてもよい。同様に、第2の面f2に、第2の部位S21、S22を含むタブが設けられていてもよい。なお、「第1の部位S11が第1の面f1に配置されている」とは、第1の面f1が、電池モジュール100の側面のうち第1の部位S11に最も近接した側面である場合を含み得る。同様に、「第2の部位S21、22が第2の面f2に配置されている」とは、第2の面f2が、電池モジュール100の側面のうち第2の部位S21、22に最も近接した側面である場合を含み得る。
【0028】
<セル端子接続部>
セル端子接続部は、例えば、電池モジュール100の上面100aに位置するタブ31~34と、下面100bに位置するタブ35~37と、上面100aまたは下面100bから側面100c、100dに延在する延在部を含むタブ41、42と、を有する。本明細書では、電池モジュールの上面100aまたは下面100bに位置するタブ31~37を「セルタブ」、電池モジュール100の側面100cまたは側面100dに延在部を有するタブ41、42を「サイドタブ」と呼ぶ。
【0029】
セルタブ31~34は、電池モジュール100の上面100aに、互いに距離をあけて配置されている。各セルタブ31~34は、全体としてX方向に延在していてもよい。セルタブ31は、電池ブロックL1の15個のセル10の正極端子と、電池ブロックL2の15個のセル10の負極端子とを電気的に接続する。同様に、セルタブ32~34は、それぞれ、電池ブロックL3、L5、L7のセル10の正極端子と、その電池ブロックの側面100d側に位置する電池ブロックのセル10の負極端子とを電気的に接続する。一方、セルタブ35~37は、電池モジュール100の下面100bに、互いに距離をあけて配置されている。各セルタブ35~37は、全体としてX方向に延在していてもよい。セルタブ35は、電池ブロックL2の15個のセル10の正極端子と、電池ブロックL3の15個のセル10の負極端子とを電気的に接続する。同様に、セルタブ36、37は、電池ブロックL4、L6のセル10の正極端子と、その電池ブロックの側面100d側のセル10の負極端子とを電気的に接続する。図示する例では、1つの電池ブロックLの各セル10は、隣接する電池ブロックLにおける隣接する2つのセル10の間に位置しているため、セルタブ31~37は、例えばX方向にジグザグ状に延在していてもよい。
【0030】
サイドタブ41は、例えば、電池ブロックL1の下面から側面100cに延在するL字形状を有する。サイドタブ41は、電池ブロックL1における15個のセル10の負極端子同士を電気的に接続する。同様に、サイドタブ42は、例えば、電池ブロックL8の下面から側面100dに延在するL字形状を有する。サイドタブ42は、電池ブロックL8における15個のセル10の正極端子同士を電気的に接続する。なお、サイドタブ41、42に電気的に接続されるセル端子の極は、図示する例と異なっていてもよい。
【0031】
セル端子接続部30を構成する各タブの材料は特に限定しないが、例えば、金属などの電気伝導性を有する材料、例えば銅、銅合金、アルミ、アルミ合金などであってもよい。セルタブ31~37おおよびサイドタブ41、42の材料は同じでもよいし、異なっていてもよい。また、セル端子接続部を構成する各タブの構造、形状、個数などは、図示する例に限定されず、適宜選択され得る。例えば、電池ブロックL1、L8のセル10は、サイドタブの代わりに、セルタブを用いて並列に接続されていてもよい。
【0032】
本実施形態では、各セルタブ31~37は、同じ電池列Rのセル10を電気的に接続する第1領域と、異なる電池列Rのセル10を電気的に接続する第2領域とを有する。
図3は、セルタブの一部を拡大して示す模式的な下面図であり、ここでは、セルタブ35を例示している。図示するように、セルタブ35は、同じ電池列R(ここでは電池列R8、R9)における2つのセルを接続する第1領域30aと、異なる電池列Rの2つのセルを接続する第2領域30bとを有する。他のセルタブ31~34、36、37も同様の構成を有する。後述するように、各電池列Rにおいて、電流は、矢印Irで示すように、セルタブ31~37の第1領域30aを流れることが好ましい。第2領域30bを流れる電流Iwは小さく抑えることが求められる。これにより、各電池列Rにより均等に電流を流すことができる。
【0033】
<第1の部位および第2の部位>
第1の部位S11および/または第2の部位S21、S22は、例えば、セル端子接続部に配置される。第1の部位S11および/または第2の部位S21、S22は、セル端子接続部におけるバスバーに電気的に接続される部分であってもよい。あるいは、バスバーとセル端子接続部とが、例えばワイヤボンディングによって電気的に接続される場合には、第1の部位S11および/または第2の部位S21、S22は、セル端子接続部におけるボンディングワイヤが接合される部分であってもよい。また、電池モジュール100と他の電池モジュールとがタブ接続部を介して直列に接続されている場合、第1の部位S11および/または第2の部位S21、S22は、セル端子接続部におけるタブ接続部に電気的に接続される部分であってもよい。本明細書において、「電気的に接続される」とは、2つの部材(または部位)間が導通可能であればよく、2つの部材(または部位)が直接的に接続されていてもよいし、導電性を備える他の構成要素を介して間接的に接続されていてもよい。
【0034】
セル端子接続部(例えばサイドタブ)のうち第1の部位S11および/または第2の部位S21、S22となる部分は、バスバーやタブ接続部等と接続しやすくするため、あるいは、より低抵抗に接続するために、他の部分よりも厚くてもよいし、他の部分よりも広い幅を有してもよい。または、セル端子接続部(例えばサイドタブ)のうち第1の部位S11および/または第2の部位S21、S22となる部分は、他の部分と同様の構造を有してもよい。これにより、各部位の位置や個数を高い自由度で選択し得る。
【0035】
上述したように、第1の部位S11は、X方向において、2つの第2の部位S21、S22の間に位置している。X方向において、第1の部位S11は、2つの第2の部位S21、S22の中央または略中央に位置してもよい。
図1Cを参照すると、「第1の部位S11が第2の部位S21、S22の中央(または略中央)に位置する」とは、第1の面f1において、X方向における第2の部位S21、S22の中央点Xc上に第1の部位S11が位置する場合のみでなく、第1の部位S11が中央点Xcの近傍に位置する場合をも含み得る。ここで、中央点Xcは、Z方向からの平面視において、第2の部位S21の最も第2の部位S22側に位置する点と、第2の部位S22の最も第2の部位S21側に位置する点との垂直二等分線αを引いたときの、垂直二等分線αと第1の面f1との交点を指す。「中央点Xcに近接する」とは、X方向において、中央点Xcと第1の部位S11との距離(最短距離)dxが、1つのセル10のX方向における幅w(以下、「セル幅w」)以下の場合(dx≦w)を含む。距離dxは、セル幅w未満であってもよい。さらに、「第1の部位S11が第2の部位S21、S22の中央(または略中央)に位置する」とは、X方向において、第1の部位S11と第2の部位S21との最短距離d1と、第1の部位S11と第2の部位S22との最短距離d2との差の絶対値|d1-d2|が、セル幅w以下の場合を含み得る(|d1-d2|≦w)。絶対値|d1-d2|は、セル幅w未満であってもよい。
【0036】
図示する例では、側面100cが第1の面f1であり、側面100dが第2の面f2である。第1の部位S11は、第1の面f1に最も近い電池ブロックL(ここでは電池ブロックL1)が有するセル10同士を並列に接続する第1のタブに配置されている。第1のタブは、例えばサイドタブ41である。第2の部位S21、S22は、第2の面f2に最も近い電池ブロックL(ここでは電池ブロックL8)が有するセル10同士を並列に接続する第2のタブに配置されている。第2のタブは、例えばサイドタブ42である。第2の部位S21は、第2のタブのX方向の一端側に配置され、第2の部位S22は、第2のタブのX方向の他端側に配置されていてもよい。例えば、第2の部位S21、S22は、それぞれ、第2のタブにおける、両側端の電池列R1、R15(
図2)に対応する位置に配置されていてもよい。第1の部位S11は、X方向において、第1のタブの中央(または略中央)に位置してもよい。
【0037】
第1のタブおよび第2のタブは、セルタブであってもよい。この場合、第1の部位および第2の部位は、セルタブにおけるボンディングワイヤとの接合部分であってもよい(
図13参照)。
【0038】
<効果>
本実施形態では、第1の部位S11が、X方向において、2つの第2の部位S21、S22の間に位置するので、
図2に示すように、電池モジュール100を、第1の部位S11および一方の第2の部位S21によって画定される第1部分(第1ブロック)51と、第1の部位S11および他方の第2の部位S22によって画定される第2部分(第2ブロック)52と、に分割することができる。第1部分51では、電流は主に第1の部位S11と第2の部位S21との間を流れる。第2部分52では、電流は主に第1の部位S11と第2の部位S22との間を流れる。Z方向からの平面視において、第1部分51および第2部分52における電流の最短経路を線p1、p2で示す。最短経路p1、p2は、電流の流入部位と流出部位とを直線で結ぶ経路であり、セル端子接続部(タブ)上の電流経路とは必ずしも一致していない。Z方向からの平面視において、最短経路p1、p2は、例えばV字形となる。
【0039】
このように、本実施形態によると、電池モジュール100をX方向に複数の部分51、52に分割して電流を流すことができるので、X方向における電流密度差を低減することができる。また、各部分51、52における電流の最短経路p1、p1は、複数の部分に分割せずに電流を流す場合の最短経路よりも短くなる。したがって、電流が最短経路を通過しようとすることで生じる電流の偏りが小さくなり、セル端子接続部に生じる電流密度分布をより均一にすることができる。この結果、電池モジュール100を構成するセル10を流れる電流の差が小さくなり、特定のセルが他のセルよりも早く劣化してしまうことを抑制できる。言い換えれば、セル10の劣化速度の差が低減される。したがって、電池モジュール100としての寿命をさらに改善することが可能になる。
【0040】
また、X方向において、第1の部位S11が2つの第2の部位S21、S22の略中央に位置していると、第1部分51の最短経路p1と第2部分52の最短経路p2との長さの差が小さく(好ましくは同じに)なるので、第1部分51と第2部分52との電流密度の差をより小さく抑えることができる。Z方向からの平面視において、第1部分51の最短経路p1と第2部分52の最短経路p2とは、上記垂直二等分線αに対して、線対称または略線対称であってもよい(後述する
図8等)。これにより、第1の部位S11から第2の部位S21、S22のそれぞれに向かって対称に電流を流すことができるので、電流密度差をさらに小さくすることができる。
【0041】
さらに、第1の部位S11を第1のタブに配置し、第2の部位S21、S22を、第2のタブのX方向における一端側および他端側にそれぞれ配置することで、電池モジュール100の構造を複雑にすることなく、セル端子接続部を複数の部分に分割して電流を流すことが可能になる。また、第1の部位S11および第2の部位S21、S22のX方向における位置や個数を容易に調整(設定)することができる。第1のタブおよび第2のタブとして、セルタブよりも面積および厚さの大きいサイドタブ41、42を用いると、バスバー等と第1の部位S11および第2の部位S21、S22とを電気的に接続しやすく、かつ、より低抵抗な接続を形成することができる。また、第1のタブおよび第2のタブとしてサイドタブ41、42を用いると、複数の電池モジュールを積み重ねて電池ユニットを構成する際には、電池ユニットの側面にタブ接続部を配置することで、これらの電池モジュールを直列に接続することが可能である。一方、第1のタブおよび/または第2のタブとしてセルタブを用いると、複数の電池モジュールを隣り合うように配置して電池ユニットを構成する際に、これらの電池モジュールを直列に接続するためのボンディングワイヤを接合しやすい。
【0042】
図1A~
図2に示す電池モジュール100では、1つの電池列Rを構成するセル数(=電池ブロックLの数)N
Rは8であり、1つの電池ブロックLを構成するセルの数N
Lは15であるが、これらのセル数N
R、N
Lは、図示する例に限定されない。セル数N
R、N
Lは、いずれも2以上であればよく、電池モジュールの用途等に応じて適宜設定され得る。電池ブロックLのセル数N
Lは、3以上であってもよい。セル数N
Lが3以上であれば、電池モジュールをX方向に複数に分割して電流を流すことで、より確実に電流の偏りを低減できる。また、電池ブロックLのセル数N
Lは、電池列Rのセル数N
Rよりも多くてもよい(N
L<N
R)。このような電池モジュールでは、X方向に長くなるので、本実施形態を適用することで、X方向における電流の偏りをより効果的に低減することができる。
【0043】
<セル端子接続部の電流密度分布>
コンピュータシミュレーションによって、本実施形態の電池モジュールおよび参考例の電池モジュールのセル端子接続部に生じる電流密度分布を調べたので、結果を説明する。参考例の電池モジュールは、第1の部位および第2の部位が1つずつ配置された構造を有する。
【0044】
まず、参考例の電池モジュールの構造を説明する。
図4は、参考例の電池モジュール800のセルの配列を例示する模式的な上面図である。電池モジュール800のセル10の配列は、
図2に示した電池モジュール100の配列と同様である。ただし、第1の面f1および第2の面f2に、それぞれ、第1の部位S1および第2の部位S2が1つずつ設けられている。
図4において、第1の部位S1は第1の面f1の右端、第2の部位S2は第2の面f2の左端に配置されている。第1の部位S1と第2の部位S2との最短経路qは、電池モジュール800の矩形状の上面の対角線に略一致する。
【0045】
図5は、参考例の電池モジュール800の充電時に、外部から第2の部位S2に電流を流入させ、第1の部位S1から流出させたときの電流密度分布を例示するシミュレーション結果である。
図5および以下で説明する
図6および
図7では、セル端子接続部(セルタブ31~37)の各地点における電流を矢印で表している。セルは図示されていない。矢印の向きは、その地点の電流の流れる方向、矢印の太さは、電流密度の大きさを示す。また、所望の方向に流れる電流(同じ電池列Rのセル間を流れる電流)Irを実線の矢印で示し、誤った方向に流れる電流(異なる電池列Rのセル間を流れる電流)Iwを破線の矢印で示している。
図3を参照して前述したように、電流Irは、各セルタブの第1領域30aを流れ、誤った方向に流れる電流(以下、「誤方向電流」)Iwは、各セルタブの第2領域30bを流れる電流である。
【0046】
図5から分かるように、電池モジュール800では、セル端子接続部に生じる電流密度分布はかなり不均一である。これは、セルタブを流れる電流が、抵抗が最小となるように最短経路q(
図4)をとろうとする結果、誤方向電流Iwが生じやすいからと考えられる。例えば、
図5に示すセル端子接続部のエリア801~803では、誤方向電流Iwが、所望の方向に流れる電流Irと同程度、またはそれよりも大きくなり得る。誤方向電流Iwの割合が多くなると、電流の偏りが大きくなる。さらに、例えばセルタブ34では、流入部位である第2の部位S2に近い部分と、中央よりも右寄りに位置するエリア801とでは、電流密度が大きく異なっている。このため、セルタブ34に電気的に接続された電池ブロックでは、一部のセルに供給される電流は、第2の部位S2に最も近いセルに供給される電流の例えば半分程度になり得る。図示していないが、放電時にも同様に電流の偏りが生じ得る。このように、セルの位置によって、そのセルに流れる電流に差が生じると、セル内の消費が異なり、一部のセル(例えば、充電時および放電時に他のセルよりも多くの電流が流れるセル)が劣化しやすくなる。
【0047】
図6は、本実施形態の電池モジュールの放電時に、第1の部位S11に電流を流入させ、第2の部位S21、S22から流出させた場合の電流密度分布を例示するシミュレーション結果である。
図7は、本実施形態の電池モジュールの充電時に、
図6とは逆の方向に、すなわち、外部から第2の部位S21、S22に電流を流入させ、第1の部位S11から流出させた場合の電流密度分布である。
【0048】
図6および
図7に示すように、本実施形態では、
図5に示す参考例と比べて、電流密度分布がより均一になっている。例えば、
図6および
図7の電流密度分布では、誤方向電流Iwはほとんど見られない。つまり、誤方向電流Iwの密度は、矢印で表示されないほど小さい。さらに、
図6において、第1の面f1に近接するセルタブ31では、電流の流入部位である第1の部位S11に近い中央部分と第1の部位S11から遠い両端部との電流密度の差は小さく抑えられている。
図7でも、例えば、第2の面f2に近接するセルタブ34では、電流の流入部位である第2の部位S21、S22に近い両端部と第2の部位S21、S22から遠い中央部分との電流密度の差は小さく抑えられている。これは、本実施形態の電池モジュールでは、
図2を参照して説明したように、電池モジュールをX方向に2つの部分に分けて電流を流すことができるからと考えられる。この結果、各部分における流入部位と流出部位との最短経路p1、p2(
図2参照)を、
図4に示す参考例の最短経路qよりも短くすることができる。各部分内にも電流密度差が生じ得るが、その電流密度差は、参考例の電池モジュールで生じる電流密度差よりも小さくなる。
【0049】
<変形例>
図1A~
図2に示した電池モジュール100では、第1の面に第1の部位を1つ、第2の面に第2の部位を2つ設ける例を説明したが、第1の部位および第2の部位の個数は特に限定されない。第1の面に少なくとも2つの第1の部位を配置し、第2の面に少なくとも3つの第2の部位を配置してもよい。
【0050】
図8は、変形例1の電池モジュールの配列を示す模式的な上面図である。変形例1の電池モジュール101は、3つの電池ブロックL1~L3を備える。各電池ブロックL1~L3は、並列に接続された9個のセル10を有する。なお、電池ブロックの数および各電池ブロックが有するセルの数は、例示であり、
図8に示す例に限定されない。
【0051】
電池モジュール101では、第1の面f1に2つの第1の部位S11、S12が配置され、第2の面f2に3つの第2の部位S21~23が配置されている。第2の部位S21~S23は、X方向に距離をおいて配置されている。X方向において、第2の部位S21~23のうち隣接する2つの第2の部位S21、S22の間に第1の部位S11が位置し、隣接する2つの第2の部位S22、S23の間に第1の部位S12が位置している。これにより、Z方向からの平面視において、電池モジュール101を、第1部分51~第4部分54の4つに分割して電流を流すことができる。第1部分51~第4部分54のそれぞれは、1つの第1の部位と、その部位に隣接する第2の部位とによって画定される。例えば第1部分51は、第1の部位S11と第2の部位S21とによって画定される。第1部分51および第2部分52における電流の最短経路p1、p2は、例えばV字形状となる。同様に、第3部分53および第4部分54における電流の最短経路p3、p4も、例えばV字形状となる。
【0052】
第2の部位S21~S23は、第2の面f2に、X方向において等間隔または略等間隔で配置されていてもよい。ここでいう「等間隔(または略等間隔)で配置される」とは、X方向において、隣接する2つの第2の部位の距離(最短距離)d3、d4の差が等しい場合(d3=d4)のみでなく、例えば、これらの距離の差の絶対値がセル幅w以下(|d3-d4|≦w)の場合をも含む。絶対値|d3-d4|は、セル幅w未満であってもよい。あるいは、第2の部位S21~S23は、隣接する2つの第2の部位の間に位置するセル数が、同数または略同数(例えばセル数の差が1個以内)となるように配置されてもよい。また、第1の部位S11、S12は、X方向において、隣接する2つの第2の部位の中央(または略中央)に位置してもよい。
【0053】
第1の面f1に第1の部位が3つ以上、第2の面f2に第2の部位が4以上配置されてもよい。その場合でも、
図8に示す例と同様に、X方向において、第2の部位のうち隣接する2つの第2の部位の間のそれぞれに、第1の部位の1つが位置するように、第1の部位および第2の部位を配置してもよい。
【0054】
本変形例によると、電池モジュール101を、X方向により多くの(
図8に示す例では4つの)部分51~54に分割して電流を流すことができる。例えば、第1の面f1に配置される第1の部位の個数をn個とすると、電池モジュール101をX方向に2×n個に分割して電流を流すことができる。分割数を増やして各部分51~54のサイズを小さくすることで、各部分51~54における電流の最短経路p1~p4をさらに短くすることができる。したがって、より効果的に電池モジュール101のセル端子接続部に生じる電流密度分布の差を低減することができる。例えば、X方向に長い(例えばY方向の長さの3倍以上)、あるいは、電池ブロックの数nに対して電池列の数mが多い(例えば3倍以上)場合に、第2の部位を2以上設けると、より顕著な効果が得られる。
【0055】
また、第2の部位S21~S23が、第2の面f2に、X方向において等間隔または略等間隔で配置されていると、複数の部分51~54間の電流密度の差を低減できるので、セル端子接続部の電流密度分布をより均一にすることができる。
【0056】
第2の部位S21~S23がX方向において等間隔で配置され、かつ、第1の部位S11が隣接する2つの第2の部位の中央に位置していてもよい。これにより、第1部分51~第4部分54のそれぞれにおいて、X方向に配列されるセル10の数が同じ(図示する例では3つ)になるので、4つの部分51~54により均等に電流を流すことが可能になる。
【0057】
<電池ブロック数、セル数、第1の部位数、および第2の部位数>
以下、本実施形態の電池モジュールにおける第1の部位の数n、第2の部位の数m、各電池列Rを構成するセル数(=電池ブロックLの数)NR、および、各電池ブロックLを構成するセル数NLについて説明する。
【0058】
(a)第1の部位の数n、第2の部位の数m
第1の面f1に配置される第1の部位の数n、および、第2の面f2に配置される第2の部位の数mは、特に限定されず、電池モジュールの用途、セル10の形状、電池ブロックLの数NL、電池列Rの数NR、セル10または電池ブロックLの配列ピッチ等によって適宜設定され得る。電池列Rの数NRは、例えば、各電池ブロックLに含まれるセルの数と同じである。
【0059】
第2の面f2に配置される第2の部位の個数mは、第1の面f1に配置される第1の部位の個数nよりも多いことが好ましい(m>n)。このように、電流の流入部位の数と流出部位の数とをあえて異ならせることで、これらの部位の合計数(n+m)を抑えつつ、電池モジュールを複数の部分に分割して電流を流すことが可能となり、電流の最短経路を小さくすることができる。n個の第1の部位およびm個の第2の部位は、これらの部位によって画定される各部分が、いずれも、複数の電池列Rを斜めに(Y方向に交差して)横切って延在する最短経路を有するように配置されることが好ましい。
【0060】
第2の部位の数mは、第1の部位の数nよりも1つ多くてもよい(m=n+1)。これにより、X方向において、第2の部位のうち隣接する2つの第2の部位の間のそれぞれに、第1の部位を1つずつ配置することで、これらの部位の合計数(n+m)を抑えつつ、電池モジュールを2×n個の部分に分割することができる。第1の部位および第2の部位の合計数を抑えることで、製造コストの増加を抑制できる。また、バスバー等との接続構造が複雑になることを抑制できる。製造コストの観点から、一例として、n=1、m=2(
図2参照)、あるいはn=2、m=3であってもよい(
図8参照)。
【0061】
第2の部位の数mが、第1の部位の数nよりも1つ多い場合、第2の部位および第1の部位の位置は、例えば以下のようにして決定され得る。まず、第2の面f2の両端(または両端近傍)に、第2の部位を2つ配置する。第2の部位は、第2の面f2に近接する電池ブロックの両端のセルの近傍に配置してもよい。次いで、これらの第2の部位の間に、残りの第2の部位を配置する。残りの第2の部位は、X方向において等間隔(または略等間隔)に配置されてもよく、および/または、残りの第2の部位は、隣接する2つの第2の部位の間に位置するセル数が、同数または略同数(例えばセル数の差が1個以内)となるように配置されてもよい。次いで、第1の面f1に、第1の部位を配置する。第1の部位は、X方向において、隣接する2つの第2の部位の間に1つずつ配置される。各第1の部位は、X方向において、隣接する2つの第2の部位の中央(または略中央)に配置されてもよい。これらの部位の位置は、ここで例示した位置に限定されず、電池モジュールの構造、製造プロセス、製造コスト等を考慮して、設計され得る。
【0062】
(b)電池ブロックLのセル数NLおよび電池列Rのセル数NR
1つの電池ブロックLを構成するセル数NLは、1つの電池列Rを構成するセル数NRよりも多くてもよい(NL>NR)。従来の電池モジュールでは、電池ブロックLのセル数NLが多く、電池ブロックがX方向に長くなると、X方向に電流密度分布が生じやすくなる。このような構造の電池モジュールに本願発明を適用すると、X方向に複数の部分に分割して電流を流すことができるので、より顕著な効果が得られる。
【0063】
(c)第1の部位の数nと、電池ブロックLのセル数NLおよび電池列Rのセル数NRとの関係
第1の部位の数n、第2の部位の数m、電池ブロックLのセル数NL、電池列Rのセル数NR、ならびに第1の部位および第2の部位の位置は、例えば、電池モジュールを複数のスクエア部分に分割し得るように設定されてもよい。「スクエア部分」は、第1の部位および第2の部位によって画定される部分であって、X方向に配列されたセル数NxとY方向に配列されたセル数Nyとが同数または略同数(セル数の差が1以下)である部分をいう(|Nx-Ny|≦1)。Y方向のセル数Nyは、電池ブロックLの数、すなわち各電池列Rを構成するセル数NRである。X方向のセル数Nxは、例えばその部分に位置する電池列Rの数と同じである。スクエア部分のX方向の長さとY方向の長さとは、同じまたは略同じ(長さの差がセル幅w以下)であってもよい。
【0064】
第1の部位および第2の部位によって画定される各部分において、X方向のセル数NxがY方向のセル数Nyに比べて多すぎると、その部分内でX方向に電流密度差が生じやすくなる。一方、各部分のX方向のセル数Nxを減らそうとすると、第1の部位および第2の部位の合計数(n+m)が多くなる。合計数が多くなりすぎると、製造コストが増大したり、電池モジュールを備えたユニットを構成する場合に、ユニット構造が複雑になったりする場合がある。これに対し、第1の部位および第2の部位によって画定される各部分が上記のようなスクエア部分であれば、第1の部位および第2の部位の合計数を抑えて製造コストの増大を抑制しつつ、電流の偏りがより効果的に低減された電池モジュールを実現することができる。
【0065】
以下、電池モジュールを複数のスクエア部分に分割することが可能な構造例と、そのような構造を得るための、第1の部位の数nと、電池ブロックLのセル数NLおよび電池列Rのセル数NRとの好適な関係を説明する。
【0066】
・第1構造
再び
図8を参照する。電池モジュール101の第1の部位の数n、第2の部位の数m、およびセル数N
L、N
Rは、以下の通りである。
n=2
m=n+1=3
N
L=9
N
R=3
電池モジュール101では、第1の部位S11、S12および第2の部位S21~S23によって、第1部分51~第4部分54に分割されている。第1部分51~第4部分54における隣接する2つの部分は、それらの境界にある1列の電池列R3、R6、R9を共有している。第1部分51~第4部分54のそれぞれは、X方向のセル数N
xとY方向のセル数N
y(=電池列Rのセル数N
R)とが同数のスクエア部分である(ここではN
x=N
y=N
R=3)。このような関係を満たすように、第1の部位、第2の部位、およびセルの個数および配置が設定された構造を「第1構造」と呼ぶ。第1構造では、複数のスクエア部分に分割して電流を流すことができるように、セルの合計数および部位の合計数が最適化されている。
【0067】
第1構造を有する電池モジュールは、
図8に示す例に限定されない。第1の部位の数n、第2の部位の数m、電池ブロックLのセル数N
Lおよび電池列Rのセル数N
Rが以下の関係を満たすように設定されることで、第1構造を実現することが可能である。
m=n+1
N
L≧2、N
R≧2
N
L=(2×N
R-1)+2×(n-1)×(N
R-1)
【0068】
・第2構造
図9は、他の電池モジュールの配列を例示する模式的な上面図である。電池モジュール102の第1の部位の数n、第2の部位の数m、およびセル数N
L、N
Rは、以下の通りである。
n=1
m=n+1=2
N
L=8
N
R=4
電池モジュール102では、セル数N
Lは偶数であり、第1の部位S11は、第1の面において、中央の2つの電池列R4、R5セルの間に(言い換えると、2つのセルに対応して)配置されている。第1の部位S11および第2の部位S21、S22によって、第1部分51および第2部分52に分割されている。第1部分51は電池列R4を含み、第2部分52は電池列R5を含む。第1部分51および第2部分52のそれぞれは、X方向のセル数N
xとY方向のセル数N
yとが同数のスクエア部分である(ここではN
x=N
y=N
R=4)。このような構造を「第2構造」と呼ぶ。第2構造によると、隣接する2つの部分51、52が重ならないので、電流の一部が異なる部分に流れてしまうことを抑制できる。
【0069】
第2構造を有する電池モジュールは、
図9に示す例に限定されない。第1の部位の数n、第2の部位の数m、電池ブロックLのセル数N
Lおよび電池列Rのセル数N
Rが以下の関係を満たすように設定されることで、第2構造を実現することが可能である。
m=n+1
N
L≧2、N
R≧2
N
L=(2×N
R)+2×(n-1)×(N
R-1)
【0070】
・第3構造
図10は、さらに他の電池モジュールを示す模式的な上面図である。電池モジュール103の第1の部位の数n、第2の部位の数m、およびセル数N
L、N
Rは、以下の通りである。
n=1
m=n+1=2
N
L=8
N
R=5
【0071】
電池モジュール103では、第2構造と同様に、セル数NLは偶数であり、第1の部位S11は、中央の2つの電池列R4、R5の間に配置されている。電池モジュール103では、分割された複数の部分51、52のそれぞれは、X方向のセル数NxがY方向のセル数Nyよりも1つ少ないスクエア部分である(ここではNx=Ny-1=4)。ただし、2つの電池列R4、R5を共有するように複数の部分51a、52aに分割すると、各部分51a、52aにおいて、X方向のセル数とY方向のセル数とは同数になる。このような構造を「第3構造」と呼ぶ。第3構造によると、各部分51、52のX方向における電流密度差をより小さくすることができる。
【0072】
第3構造を有する電池モジュールは、
図10に示す例に限定されない。第1の部位の数n、第2の部位の数m、電池ブロックLのセル数N
Lおよび電池列Rのセル数N
Rが以下の関係を満たすように設定されることで、第3構造を実現することが可能である。
m=n+1
N
L≧2、N
R≧2
N
L=2×(N
R-1)×n
【0073】
(d)電池ブロックLのセル数NLおよび電池列Rのセル数NRの範囲
・n=1の場合
n=1、m=2のとき、電池ブロックLのセル数NLは、電池列Rのセル数(ここでは電池ブロックLの数)NR以上であってもよい(NR≦NL)。これにより、複数の部分に分割することによる効果がより確実に得られる。一方、電池ブロックLのセル数NLは、3×(NR-1)以下であってもよい(NL≦3×(NR-1))。3×(NR-1)以下であれば、分割した複数の部分のそれぞれにおいて、X方向に生じる電流密度差をより小さくすることができる。セル数NL、NRは、以下の関係を満たすように設定されてもよい。
NR<NL<3×(NR-1)
より好ましくは、セル数NL、NRは、上述した第1構造~第3構造のいずれかを有するように設定される。
【0074】
・n≧2の場合
n≧2、m=n+1のとき、電池ブロックLのセル数NLおよび電池列Rのセル数NR(ここでは電池ブロックLの数)は、n=k+2(kは0以上の整数)とすると、以下の関係を満たしてもよい。
(2×NR-1)+(2×k+1)×(NR-1)≦NL
これにより、セル数NRに対してセル数NLが十分多くなるので、2以上の部分に分割して電流を流すことによる効果がより確実に得られる。一方、電池ブロックLのセル数NLは、以下の関係を満たしてもよい。
NL≦(2×k+5)×(NR-1)
これにより、分割した複数の部分のそれぞれにおいて、X方向における電流密度差をより小さくすることができる。セル数NL、NRは、以下の関係を満たすように設定されてもよい。
(2×NR-1)+(2×k+1)×(NR-1)<NL<(2×k+5)×(NR-1)
より好ましくは、セル数NL、NRは、上述した第1構造~第3構造のいずれかを有するように設定される。
【0075】
n=2、m=3の場合、k=0となる。したがって、この場合のセル数NL、NRは、以下の式を満たすように設定され得る。
3×NR-2≦NL≦5×(NR-1)
【0076】
《第2の実施形態》
図11は、本発明の第2の実施形態に係る電池ユニットの模式的な斜視図である。電池ユニット200は、前述の実施形態の電池ユニットを複数直列に接続した積層体と、積層体を覆うケース80と、第1外部端子81および第2外部端子82と、を備える。ケース80は、例えばX方向に長い直方体形状を有する。第1外部端子81および第2外部端子82は、例えば、ケース80の前面200eに配置されている。
【0077】
図12Aおよび
図12Bは、
図11の電池ユニットにおける積層体を示す図である。
図12Aは、ケース等の保護構造を取り除いた状態の
図11の電池ユニットを斜め上方から見た模式的な斜視図であり、
図12Bは、
図12の電池ユニットを背面側から斜め上方から見た模式的な斜視図である。
【0078】
図12Aおよび
図12Bに示すように、電池ユニット200は、直列に接続された2つの電池モジュール100A、100Bと、第1端子部t1と、第2端子部t2と、を備える。第1端子部t1および第2端子部t2は、それぞれ、第1外部端子81および第2外部端子82に電気的に接続されている。電池ユニット200は、バスバー61、62と、タブ接続部(タブジョイント)71、72と、をさらに備えてもよい。
【0079】
電池モジュール100A、100Bは、第1の実施形態において、
図1A~
図2を参照しながら説明した電池モジュール100と同様の構造を有する。電池モジュール100Aでは、電池ブロックL1側のサイドタブ41に第1の部位S11が配置され、電池ブロックL8側のサイドタブ42に第2の部位S21、S22が配置されている。つまり、電池ブロックL1側の側面が第1の面f1、電池ブロックL8側の側面が第2の面f2である。電池モジュール100Bでは、サイドタブ41に第2の部位S21、S22が配置され、サイドタブ42に第1の部位S11が配置されている。つまり、電池ブロックL1側の側面が第2の面f2、電池ブロックL8側の側面が第1の面f1である。
【0080】
電池モジュール100A、100Bは、Z方向に積み重ねられている。図示する例では、電池モジュール100Aの面100b(
図1A等参照)と、電池モジュール100Bの面100b(
図1A等参照)とが互いに対向するように、電池モジュール100B上に電池モジュール100Aが絶縁体を介して積み重ねられている。電池ユニット200は、第1ユニット面200cと、第1ユニット面200cに対向する第2ユニット面200dとを有する。電池モジュール100A、100Bの第1の面f1は第1ユニット面200c側に位置し、第2の面f2は第2ユニット面200d側に位置している。
【0081】
電池モジュール100Aの第1の部位S11は、第1端子部(例えば負極側端子部)t1に電気的に接続されている。電池モジュール100Bの第1の部位S11は、第2端子部(例えば正極側端子部)t2に電気的に接続されている。電池モジュール100Aの第2の部位S21、S22は、それぞれ、電池モジュール100Bの第2の部位S21、S22に電気的に接続されている。
【0082】
バスバー61、62は、例えば、第1ユニット面200cに配置されている。バスバー(「第1バスバー」ともいう。)61は、電池モジュール100Aの第1の部位S11に電気的に接続されている。図示する例では、バスバー61は、電池モジュール100Aのサイドタブ41のうち第1の部位S11のみと接続されている。バスバー61とサイドタブ41の他の部分との間には、空間または絶縁体が介在してもよい。バスバー(「第2バスバー」ともいう。)62は、電池モジュール100Bの第1の部位S11に電気的に接続されている。図示する例では、バスバー62は、電池モジュール100Bのサイドタブ42のうち第1の部位S11のみと接続されている。バスバー62とサイドタブ42の他の部分との間には、空間または絶縁体が介在してもよい。バスバー61、62を用いることで、セル端子接続部における所望の部位と端子部t1、t2との電気的接続がより容易になる。この電気的接続のために、電池ユニット200の構造が複雑になったり、サイズが増大したりすることを抑制できる。
【0083】
図示する例では、バスバー61は、第1ユニット面200cにおいて、電池モジュール100Aのサイドタブ41上に配置されている。バスバー61はX方向に延在し、バスバー61の一方の端部は、電池モジュール100Aの第1の部位S11に電気的に接続され、他方の端部は、電池ユニット200の第1端子部t1として機能してもよい。同様に、バスバー62は、第1ユニット面200cにおいて、電池モジュール100Bのサイドタブ42上に配置されている。バスバー62はX方向に延在し、バスバー62の一方の端部は、電池モジュール100Bの第1の部位S11に電気的に接続され、他方の端部は、電池ユニット200の第2端子部t2として機能してもよい。
【0084】
サイドタブ41、42とバスバー61、62との接続方法は、図示する例に限定されない。図示する例では、Y方向から見たときに、電池モジュール100Aのサイドタブ41の一部に重なるようにバスバー61が配置され、バスバー61は、サイドタブ41のうちの第1の部位S11のみと接続されている。なお、サイドタブ41を挟み込むように一対のバスバーを配置し、一対のバスバーは、サイドタブ41のうちの第1の部位S11と接続され、他の部分とは接続されていなくてもよい。同様に、電池モジュール100Bのサイドタブ42を挟み込むように一対のバスバーを配置してもよい。また、
図13に例示するように、各電池モジュール100A、100Bは、電池ブロックL1、L8が有するセル10を並列に接続するサイドタブ41、42の代わりに、他のセルタブ38が配置されてもよい。その場合、セルタブ38は、対応するバスバー(ここではバスバー61)に、ボンディングワイヤ63を介して電気的に接続されてもよい。
【0085】
タブ接続部71、72は、例えば、第2ユニット面200dに配置されている。タブ接続部(「第1タブ接続部」ともいう。)71は、電池モジュール100Aの第2の部位S21と、電池モジュール100Bの第2の部位S21とを電気的に接続する。タブ接続部72は、電池モジュール100Aの第2の部位S22と、電池モジュール100Bの第2の部位S22とを電気的に接続する。
図12Bに示す例では、タブ接続部71は、電池モジュール100Aのサイドタブ42の左端部と、電池モジュール100Bのサイドタブ41の左端部とを繋ぐようにZ方向に延在している。タブ接続部(「第2タブ接続部」ともいう。)72は、電池モジュール100Aのサイドタブ42の右端部と、電池モジュール100Bのサイドタブ41の右端部とを繋ぐようにZ方向に延在している。タブ接続部71、72を用いることで、電池モジュール100A、100Bのセル端子接続部の所望の部位間の電気的接続がより容易になる。この電気的接続のために、電池ユニット200の構造が複雑になったり、サイズが増大したりすることを抑制できる。
【0086】
バスバー61、62およびタブ接続部71、72は、金属などの電気伝導性を有する材料、例えば銅、銅合金、アルミニウム合金などを含む板状体であってもよい。例えば、銅含有率が99.9%以上のタフピッチ銅を用いてもよい。
【0087】
図示する例では、電池モジュール100A、100Bの第1の部位S11が第1端子部t1および第2端子部t2に電気的に接続されているが、第2の部位S21、22が第1端子部t1および第2端子部t2に電気的に接続されてもよい。例えば、電池モジュール100A、100Bの第1の部位S11同士がタブ接続部を介して電気的に接続され、第2の部位S21、S22が、それぞれ、バスバーを介して端子部に電気的に接続されてもよい。
【0088】
電池ユニット200における電流の最短経路p11~p14を
図12Bに示す。一例として、電池ユニット200の放電時において、電流は、第1端子部(負極側端子部)t1を介して外部から電池モジュール100Aの第1の部位S11に流入する。電流は、電池モジュール100Aにおいて、第1の部位S11から第2の部位S21、S22へ流れる。続いて、電池モジュール100Aの第2の部位S21、S22から、タブ接続部71、72を介して、電池モジュール100Bの第2の部位S21、S22に電流が流入する。電池モジュール100Bでは、電流は、第2の部位S21、S22から第1の部位S11に向かって流れ、第1の部位S11から第2端子部(正極側端子部)t2を介して外部に流出する。このように、電池モジュール100Aでは、第1の部位S11が電流の流入部位となるが、電池モジュール100Bでは、第2の部位S21、S22が電流の流入部位となる。
【0089】
本実施形態の電池ユニットを構成する電池モジュールの数は特に限定されない。電池ユニットは、3以上の電池モジュールをZ方向に積み重ねた構造を有してもよい。
【0090】
本実施形態によると、2つの電池モジュール100A、100Bを直列に接続することで、直列接続される電池ブロックの合計数が2倍となり、出力電圧を高めることができる。一例として、セル10の公称電圧を3.2Vとすると、電池ユニット200は、51.2V(=3.2V×16)を出力し得る。
【0091】
また、本実施形態によると、電池ユニット200を構成する各電池モジュール100A、100Bにおける電流の偏りを小さくすることができるので、電池ユニット200の長寿命化を図ることができる。さらに、電池モジュール100A、100Bを、セルの配列面(XY面)に直交するZ方向に積み重ねることで、電池ユニット200の1つの側面(ここでは第2ユニット面200d)において、電池モジュール100A、100Bの対応する部位を電気的に接続することができる。このような電池ユニット200は、例えば、X方向およびY方向の幅が小さい電池ユニットが所望される用途に好適に適用され得る。
【0092】
また、図示する例では、電池モジュール100Aの第2の部位S21、S22のそれぞれを、電池モジュール100Bの第2の部位S21、S22の対応する1つに接続することで、電池ユニット200の構造を複雑にすることなく、電池モジュール100A、100Bを直列に接続することができる。具体的には、電池モジュール100A、100Bの第2の部位S21、S22は、第2の部位の数と同数のタブ接続部71、72を用いて互いに電気的に接続することができる。また、本実施形態では、各電池モジュール100A、100Bの第1の部位の数(ここでは1つ)は第2の部位の数よりも少ないので、より簡便な構造およびプロセスで、第1の部位S11を対応する端子部t1、t2に電気的に接続させることができる。
【0093】
本実施形態の電池ユニットを構成する電池モジュール100A、100Bの構造は、
図12Aおよび
図12Bに示す構造に限定されない。電池モジュール100A、100Bにおける第1の部位の数nおよび第2の部位の数mは、適宜設定され得る。例えば、電池モジュール100A、100Bとして、
図8~
図10に例示した他の電池モジュール101~103を用いてもよい。
【0094】
第1の部位の数nは、第2の部位の数mよりも少ないことが好ましい(n<m)。その場、各電池モジュール100A、100Bの第1の部位を、バスバーを介して端子部に電気的に接続し、個数の多い第2の部位を、電池モジュール100A、100B同士の接続に使用してもよい。これにより、電池ユニット200の構造を複雑にすることなく、各電池モジュール100A、100Bにおける電流の偏りを小さくすることができる。一例として、各電池モジュール100A、100Bにn個の第1の部位およびm個(n<m)の第2の部位を配置する場合、電池モジュール100Aのn個の第1の部位は、例えばバスバー61を介して、第1端子部t1に電気的に接続され、電池モジュール100Bのn個の第1の部位は、例えばバスバー62を介して、第2端子部t2に電気的に接続されてもよい。第2ユニット面200dには、m個のタブ接続部がX方向に距離をあけて配置されてもよい。各タブ接続部は、それぞれ、電池モジュール100Aの第2の部位の1つを、電池モジュール100Bの対応する1つの第2の部位に電気的に接続する。
【0095】
<変形例>
図14は、変形例の電池ユニットの模式的な斜視図である。変形例の電池ユニット201では、複数の(ここでは2つの)電池モジュール100A、100Bは、Z方向からの平面視において、隣り合うように配置されている。電池モジュール100A、100Bは、Z方向からの平面視において、互いに平行または略平行に配列されてもよい。
【0096】
図14に示す電池ユニット201では、電池モジュール100A、100Bは、電池モジュール100A、100Bの第2の面f2が互いに対向するように隣接して配置されている。電池モジュール100A、100Bの第1の部位S11は、それぞれ、例えばバスバーを介して、対応する端子部に電気的に接続されている。電池モジュール100Aの各第2の部位は、タブ接続部71、72によって、電池モジュール100Bの対応する第2の部位に電気的に接続されている。タブ接続部71、72は、ボンディングワイヤであってもよいし、板状の接続部であってもよい。
【0097】
電池モジュール100AB、100Bが隣接する方向や向き、接続方法等は、
図14に示す例に限定されない。また、電池モジュール100A、100Bの構造、直列接続させる電池モジュールの数、配列方向なども
図14に示す例に限定されない。
【0098】
本変形例によると、
図12Aおよび
図12Bに例示した電池ユニット200よりも、高さ(Z方向に沿った長さ)を小さく抑えることができる。したがって、本変形例の電池ユニット201は、例えば、高さが小さく(薄く)、幅の広い電池ユニットが所望される用途に好適に適用され得る。
【0099】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態および任意の変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0100】
本発明は、添付図面を参照しながら、好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術に熟練した人々にとって、種々の変形や修正は明白である。このような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【0101】
上述した説明は、以下のようにも表現することができる。
【0102】
第1態様の電池モジュールは、
複数の電池セルが並列に接続された電池ブロックを複数備える電池モジュールであって、
複数の電池ブロックは第1方向に配列され、
前記複数の電池ブロックのそれぞれにおいて、前記複数の電池セルは、前記第1方向と交差する第2方向に配列され、
前記複数の電池セルのそれぞれは、前記第1方向に隣接する電池ブロックにおける対応する電池セルに直列に接続されており、
前記電池モジュールは、
外部と前記電池モジュールとの間で電流が流入または流出する第1の部位が配置される第1の面と、
前記第1の面と対向する面であって、外部と前記電池モジュールとの間で前記電流が流入または流出する2つの第2の部位が配置される第2の面と、を有し、
前記第2方向において、前記第1の部位は、前記2つの第2の部位の間に位置する。
【0103】
第2態様の電池モジュールは、
第1態様の電池モジュールにおいて、
前記複数の電池ブロックのうち前記第1の面に最も近い電池ブロックが有する前記複数の電池セル同士を並列に接続する第1のタブと、
前記複数の電池ブロックのうち前記第2の面に最も近い電池ブロックが有する前記複数の電池セル同士を並列に接続する第2のタブと、をさらに備え、
前記第1の部位は、前記第1のタブに配置され、
前記2つの第2の部位の一方は、前記第2のタブの前記第2方向の一端側に配置され、
前記2つの第2の部位の他方は、前記第2のタブの前記第2方向の他端側に配置されている。
【0104】
第3態様の電池モジュールは、
第1態様または第2態様の電池モジュールにおいて、
前記第2方向において、前記第1の部位は、前記2つの第2の部位の中央または略中央に位置する。
【0105】
第4態様に電池モジュールは、
第1態様~第3態様のいずれか1つの電池モジュールにおいて、
前記第1の面に、前記第1の部位が少なくとも2つ配置され、
前記第2の面に、前記第2の部位が少なくとも3つ配置され、
前記第2方向において、少なくとも3つの前記第2の部位のうち隣接する2つの第2の部位の間のそれぞれに、少なくとも2つの前記第1の部位の1つが位置する。
【0106】
第5態様の電池モジュールは、
第4態様の電池モジュールにおいて、
少なくとも3つの前記第2の部位は、前記第2方向に等間隔または略等間隔で配置されている。
【0107】
第6態様の電池モジュールは、
第1態様~第5態様のいずれか1つの電池モジュールにおいて、
前記第2の面に配置される前記第2の部位の個数mは、前記第1の面に配置される前記第1の部位の個数nよりも多い。
【0108】
第7態様の電池モジュールは、
第6態様の電池モジュールにおいて、
n=1、m=2であり、
前記複数の電池ブロックの数をNR、前記複数の電池ブロックのそれぞれにおける電池セルの数をNLとすると、
NR≦NL≦3×(NR-1)
である。
【0109】
第8態様の電池モジュールは、
第6態様の電池モジュールにおいて、
n=2、m=3であり、
前記複数の電池ブロックの数をNR、前記複数の電池ブロックのそれぞれにおける電池セルの数をNLとすると、
3×NR-2≦NL≦5×(NR-1)
である。
【0110】
第9態様の電池ユニットは、
直列に接続された第1電池モジュールおよび第2電池モジュールを備える電池ユニットであって、
前記第1電池モジュールおよび前記第2電池モジュールのそれぞれは、第1態様から第8態様のいずれか1つに記載の電池モジュールであり、
前記第1電池モジュールの前記2つの第2の部位のそれぞれは、前記第2電池モジュールの前記2つの第2の部位の対応する1つと電気的に接続されている。
【0111】
第10態様の電池ユニットは、
第9態様の電池ユニットにおいて、
前記第1電池モジュールと前記第2電池モジュールとは、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に積み重ねられている。
【0112】
第11態様の電池ユニットは、
第9態様の電池ユニットにおいて、
前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向からの平面視において、前記第1電池モジュールと前記第2電池モジュールとは、隣り合うように配置されている。
【0113】
第12態様の電池ユニットは、
第9態様または第10態様の電池ユニットにおいて、
前記電池ユニットは、
前記第1電池モジュールの前記2つの第2の部位の一方と、前記第2電池モジュールの前記2つの第2の部位の一方とを電気的に接続する第1タブ接続部と、
前記第1電池モジュールの前記2つの第2の部位の他方と、前記第2電池モジュールの前記2つの第2の部位の他方とを電気的に接続する第2タブ接続部と、
前記第1電池モジュールの前記第1の部位に電気的に接続された第1バスバーと、
前記第2電池モジュールの前記第1の部位に電気的に接続された第2バスバーと、をさらに備える。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明に係る電池モジュールは、複数の電池セル間における電流の偏りをより低減することができるので、例えば電力貯蔵用、自動車用などの様々な用途の電池モジュールに有用である。
用途に適用できる。
【符号の説明】
【0115】
10 電池セル(セル)
30 セル端子接続部
30a 第1領域
30b 第2領域
31~37 セルタブ
41、42 サイドタブ
51 第1部分
52 第2部分
53 第3部分
54 第4部分
61、62 バスバー
63 ボンディングワイヤ
71、72 タブ接続部
100、101~103、100A、100B 電池モジュール
100a 上面
100b 下面
100c、100d 側面
200、201 電池ユニット
200c 第1ユニット面
200d 第2ユニット面
f1 第1の面
f2 第2の面
Ir 電流(同じ電池列Rのセル間を流れる電流)
Iw 誤方向電流(異なる電池列Rのセル間を流れる電流)
L、L1~L8 電池ブロック
p1~p4、p11~p14、q 電流の最短経路
R、R1~R15 電池列
S1、S11、S12 第1の部位
S2、S21、S22、S23 第2の部位