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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143260
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電池パックの劣化抑制装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241003BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241003BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 Q
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055839
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】鄭 仲磊
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA11
5G503CC02
5G503DB03
5G503EA09
5G503FA06
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB23
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】保管している電池パックからの電力消費を抑えることで容量の低下を防ぎ、電池パックの劣化を抑制する。
【解決手段】電池パック12の使用を停止してから所定時間が経過した場合、バランサ回路制御部210(電圧制御部)により電池パック12を構成する奇数番の電池セルC1、C3…の電圧と偶数番の電池セルC2、C4…の電圧との間で電位差を生じさせ、予め定めた電圧差が生じると、充放電制御部212により奇数番の電池セルC1、C3…と偶数番の電池セルC2、C4…の電池セル間で互いに充放電を行い、奇数番の電池セルC1、C3…の電圧と偶数番の電池セルC2、C4…の電圧とを揃える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1蓄電装置および第2蓄電装置を備えた電池パックの劣化抑制装置であって、
前記第1蓄電装置の電圧と前記第2蓄電装置の電圧との間で電位差を生じさせる電圧制御部と、
予め定めた前記電圧差が生じた場合、前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置の間で互いに充放電を行い、前記第1蓄電装置の電圧と前記第2蓄電装置の電圧とを揃える充放電制御部と、
を備えることを特徴とする電池パックの劣化抑制装置。
【請求項2】
前記電池パックの使用を停止してからの経過時間を計測する計測部をさらに備え、
前記電圧制御部は、前記電池パックの使用を停止してから所定時間が経過した場合、前記電位差を生じさせる、
ことを特徴とする請求項1記載の電池パックの劣化抑制装置。
【請求項3】
前記電池パックの劣化状態を推定する劣化状態推定部をさらに備え、
前記電圧制御部は、前記劣化状態が予め定めた第1閾値以上であった場合、前記電位差を生じさせる、
ことを特徴とする請求項2記載の電池パックの劣化抑制装置。
【請求項4】
前記電圧差は、過電圧を考慮した状態で充放電が可能な最小電圧差から、充放電を行った場合に前記第1蓄電装置および前記第2蓄電装置のうち充電された側の蓄電装置が蓄電可能な電圧を超えない最大電圧差までの範囲で定められている、
ことを特徴する請求項3記載の電池パックの劣化抑制装置。
【請求項5】
前記第1蓄電装置は、複数の電池セルを備えて構成された第1電池セル群であって、
前記第2蓄電装置は、複数の電池セルを備えて構成された第2電池セル群であって、
前記電圧制御部は、前記第1電池セル群および前記第2電池セル群のいずれか一方の電池セル群をバランサ抵抗に接続して電圧を放電させ、前記電位差を生じさせるバランサ回路制御部である、
ことを特徴とする請求項4記載の電池パックの劣化制御装置。
【請求項6】
前記電池パックの残容量を推定する残容量推定部をさらに備え、
前記バランサ回路制御部は、前記残容量が予め定めた第2閾値以上であった場合、前記電位差を生じさせる、
ことを特徴とする請求項5記載の電池パックの劣化抑制装置。
【請求項7】
前記バランサ回路制御部は、前記一方の電池セル群の電圧が予め定めた目標電圧に到達した場合、前記バランサ抵抗の接続を解除し、
前記充放電制御部は、前記バランサ抵抗の接続が解除された場合、前記第1電池セル群と前記第2電池セル群の電池セル間で互いに充放電を行い、前記第1電池セル群の電圧と前記第2電池セル群の電圧とを揃える、
ことを特徴とする請求項6記載の電池パックの劣化制御装置。
【請求項8】
前記第1蓄電装置は、複数の電池セルからなるモジュールを複数備えて構成された第1モジュールブロックであって、
前記第2蓄電装置は、複数の電池セルからなるモジュールを複数備えて構成された第2モジュールブロックであって、
前記電圧制御部は、前記第1モジュールブロックおよび前記第2モジュールブロックのいずれか一方のモジュールブロックを昇圧機に接続して昇圧させ、または前記一方のモジュールブロックへの前記昇圧機の接続を解除して降圧させることで、前記電位差を生じさせる昇圧機制御部である、
ことを特徴とする請求項4記載の電池パックの劣化制御装置。
【請求項9】
前記充放電制御部は、前記一方のモジュールブロックが昇圧され予め定めた目標電圧に到達した場合、前記第1モジュールブロックと前記第2モジュールブロックの間で互いに充放電を行い、前記第1モジュールブロックの電圧と前記第2モジュールブロックの電圧とを揃え、
前記昇圧機制御部は、充放電により、前記第1モジュールブロックの電圧と前記第2モジュールブロックの電圧とが揃った場合、前記昇圧機の接続を解除し、
前記充放電制御部は、前記昇圧機の接続を解除したことで前記一方のモジュールブロックが降圧した場合、前記第1モジュールブロックと前記第2モジュールブロックの間で互いに充放電を行い、前記第1モジュールブロックの電圧と前記第2モジュールブロックの電圧とを揃える、
ことを特徴とする請求項8記載の電池パックの劣化制御装置。
【請求項10】
前記目標電圧は、利用者の指示に基づいて定められている、
ことを特徴とする請求項9記載の電池パックの劣化制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックの劣化抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
正極にリン酸鉄リチウムを用いたLFP電池(リン酸鉄リチウムイオン電池)は、充放電の繰返しや高温環境下での使用に対する耐久性が高く、コバルトなどのレアメタルを含まず低コストであるため、近年では、EV(電気自動車)や外部充電、または外部給電が可能なPHEV(プラグインハイブリッド車)の車載バッテリへの適用が増加している。
【0003】
このように車両に搭載された電池は、車両を走行させて電池を使用しているときだけでなく、車両を停止して電池を使用していない状態であっても、過度の高温状態になると劣化が加速してしまう。
そこで、車両を停止させる状態となった時に、電池に蓄積された電力を用いて電池を冷却させる車両用電池冷却装置が開示されている(特許文献1参照)。この車両用電池冷却装置では、車両を停止させる時に電池が高温となっていて劣化を進行させる状態となっていても、電池の冷却速度を高くして、車両停止時に電池が高温状態で放置される時間を短縮して電池の劣化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-49771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、使用せずに保管している電池であっても容量の低下がみられ、電池は劣化してしまう(放置劣化)。また、未使用の電池であっても電池の劣化が確認されたため、出願人が電池のサプライヤから話を聞いたところ、市場においてもこのような現象が問題となっていることが分かった。
そして、このような電池の劣化について文献調査を行った結果、電池を初期状態から通電せずに保管した場合、電極表面の被膜形成の関係により劣化が発生してしまうことが分かった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、保管している電池パックからの電力消費を抑えることで容量の低下を防ぎ、電池パックの劣化を抑制する電池パックの劣化抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため本発明の一実施の形態は、第1蓄電装置および第2蓄電装置を備えた電池パックの劣化抑制装置であって、前記第1蓄電装置の電圧と前記第2蓄電装置の電圧との間で電位差を生じさせる電圧制御部と、予め定めた前記電圧差が生じた場合、前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置の間で互いに充放電を行い、前記第1蓄電装置の電圧と前記第2蓄電装置の電圧とを揃える充放電制御部とを備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記電池パックの使用を停止してからの経過時間を計測する計測部をさらに備え、前記電圧制御部は、前記電池パックの使用を停止してから所定時間が経過した場合、前記電位差を生じさせることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記電池パックの劣化状態を推定する劣化状態推定部をさらに備え、前記電圧制御部は、前記劣化状態が予め定めた第1閾値以上であった場合、前記電位差を生じさせることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記電圧差は、過電圧を考慮した状態で充放電が可能な最小電圧差から、充放電を行った場合に前記第1蓄電装置および前記第2蓄電装置のうち充電された側の蓄電装置が蓄電可能な電圧を超えない最大電圧差までの範囲で定められていることを特徴する。
また、本発明の一実施の形態は、前記第1蓄電装置は、複数の電池セルを備えて構成された第1電池セル群であって、前記第2蓄電装置は、複数の電池セルを備えて構成された第2電池セル群であって、前記電圧制御部は、前記第1電池セル群および前記第2電池セル群のいずれか一方の電池セル群をバランサ抵抗に接続して電圧を放電させ、前記電位差を生じさせるバランサ回路制御部であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記電池パックの残容量を推定する残容量推定部をさらに備え、前記バランサ回路制御部は、前記残容量が予め定めた第2閾値以上であった場合、前記電位差を生じさせることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記バランサ回路制御部は、前記一方の電池セル群の電圧が予め定めた目標電圧に到達した場合、前記バランサ抵抗の接続を解除し、前記充放電制御部は、前記バランサ抵抗の接続が解除された場合、前記第1電池セル群と前記第2電池セル群の電池セル間で互いに充放電を行い、前記第1電池セル群の電圧と前記第2電池セル群の電圧とを揃えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記第1蓄電装置は、複数の電池セルからなるモジュールを複数備えて構成された第1モジュールブロックであって、前記第2蓄電装置は、複数の電池セルからなるモジュールを複数備えて構成された第2モジュールブロックであって、前記電圧制御部は、前記第1モジュールブロックおよび前記第2モジュールブロックのいずれか一方のモジュールブロックを昇圧機に接続して昇圧させ、または前記一方のモジュールブロックへの前記昇圧機の接続を解除して降圧させることで、前記電位差を生じさせる昇圧機制御部であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記充放電制御部は、前記一方のモジュールブロックが昇圧され予め定めた目標電圧に到達した場合、前記第1モジュールブロックと前記第2モジュールブロックの間で互いに充放電を行い、前記第1モジュールブロックの電圧と前記第2モジュールブロックの電圧とを揃え、前記昇圧機制御部は、充放電により、前記第1モジュールブロックの電圧と前記第2モジュールブロックの電圧とが揃った場合、前記昇圧機の接続を解除し、前記充放電制御部は、前記昇圧機の接続を解除したことで前記一方のモジュールブロックが降圧した場合、前記第1モジュールブロックと前記第2モジュールブロックの間で互いに充放電を行い、前記第1モジュールブロックの電圧と前記第2モジュールブロックの電圧とを揃えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記目標電圧は、利用者の指示に基づいて定められていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施の形態によれば、電圧制御部により電池パックを構成する第1蓄電装置の電圧と第2蓄電装置の電圧との間で電位差を生じさせ、予め定めた電圧差が生じると、充放電制御部により第1蓄電装置と第2蓄電装置の間で互いに充放電を行い、第1蓄電装置の電圧と第2蓄電装置の電圧とを揃えるため、保管している電池パックからの電力消費を抑えることで容量の低下を防ぎ、電池パックの劣化を抑制する上で有利となる。
また、電池パックの使用を停止してから予め定めた所定時間が経過した場合に、第1蓄電装置の電圧と第2蓄電装置の電圧と間で電位差を生じさせる構成とすれば、電池パックを保管してから適切な時間が経過したタイミングで電池パックを起動させることができ、電池パックの劣化を抑制する上で有利となる。
また、電池パックの劣化状態を推定し、推定した劣化状態が予め定めた第1閾値以上であった場合に、第1蓄電装置の電圧と第2蓄電装置の電圧と間で電位差を生じさせる構成とすれば、電池パックの劣化状態に基づいて電池パックの劣化抑制処理を実行するか否かが判断できるため、有効な電池パックの劣化抑制処理を実行する上で有利となる。
また、電圧差が、過電圧を考慮した状態で充放電が可能な最小電圧差から、充放電を行った場合に第1蓄電装置および第2蓄電装置のうち充電された側の蓄電装置が蓄電可能な電圧を超えない最大電圧差までの範囲で定められる構成とすれば、第1蓄電装置と第2蓄電装置の間で適切に充放電が行えて、かつ電池パックの故障を回避する電位差を定める上で有利となる。
また、第1蓄電装置が複数の電池セルを備えて構成された第1電池セル群で、第2蓄電装置が複数の電池セルを備えて構成された第2電池セル群であって、電圧制御部が第1電池セル群および第2電池セル群のいずれか一方の電池セル群をバランサ抵抗に接続して電圧を放電させ、電位差を生じさせるバランサ回路制御部で構成すれば、電池パックに搭載されている既存のバランサ機能を利用することができ、電池パックの劣化を抑制する上で有利となる。
また、電池パックの残容量を推定し、残容量が予め定めた第2閾値以上であった場合に、バランサ回路制御部により電位差を生じさせる構成とすれば、電池パックの残容量に基づいて電池パックの劣化抑制処理を実行するか否かが判断できるため、適切な残容量を有する電池パックの劣化抑制処理を実行する上で有利となる。
また、一方の電池セル群(放電した電池セル群)の電圧が予め定めた目標電圧に到達した場合、バランサ回路制御部によりバランサ抵抗の接続を解除し、充放電制御部により第1電池セル群と第2電池セル群の電池セル間で互いに充放電を行い、第1電池セル群の電圧と第2電池セル群の電圧とを揃える構成とすれば、適切な電圧差になった場合に充放電を行うことができ、電池パックの劣化を抑制する上で有利となる。
第1蓄電装置が複数の電池セルからなるモジュールを複数備えて構成された第1モジュールブロックで、第2蓄電装置が複数の電池セルからなるモジュールを複数備えて構成された第2モジュールブロックであって、電圧制御部が第1モジュールブロックおよび第2モジュールブロックのいずれか一方のモジュールブロックを昇圧機に接続して昇圧させ、または当該一方のモジュールブロックへの昇圧機の接続を解除して降圧させることで、電位差を生じさせる昇圧機制御部で構成すれば、電力を消費させることなく昇圧または降圧することにより電位差を生じさせることができ、電池パックの劣化を抑制する上で有利となる。
また、一方のモジュールブロック(昇圧機に接続されたモジュールブロック)が昇圧され予め定めた目標電圧に到達した場合、充放電制御部により第1モジュールブロックと第2モジュールブロックの間で互いに充放電を行い、第1モジュールブロックの電圧と第2モジュールブロックの電圧とを揃え、充放電により第1モジュールブロックの電圧と第2モジュールブロックの電圧とが揃った場合、昇圧機制御部により昇圧機の接続を解除し、昇圧機の接続を解除したことで一方のモジュールブロックが降圧した場合、充放電制御部により第1モジュールブロックと第2モジュールブロックの間で互いに充放電を行い、第1モジュールブロックの電圧と第2モジュールブロックの電圧とを揃える構成とすれば、適切な電圧差になった場合に充放電を行うことができ、電池パックの劣化を抑制する上で有利となる。
また、目標電圧を利用者の指示に基づいて定められる構成とすれば、電池パックをすぐに使用する場合は短い時間で電池パックの劣化抑制処理を行い、劣化を抑制する効果を高める場合は長い時間で電池パックの劣化抑制処理を行うことができ、電池パックの使用状況に合わせながら電池パックの劣化を抑制する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態にかかる電池パックの劣化制御装置の機能構成図である。
図2】第1の実施の形態にかかる電池パックの劣化制御処理の流れを示す模式図である。
図3】第1の実施の形態にかかる電池パックの劣化制御装置の回路図である。
図4】バランサ抵抗による放電時における消費電力の説明図である。
図5】第1の実施の形態にかかる電池パックの劣化制御処理の流れを示すフローチャートである。
図6】第2の実施の形態にかかる電池パックの劣化制御装置の機能構成図である。
図7】第2の実施の形態にかかる電池パックの劣化制御処理の流れを示す模式図である。
図8】第2の実施の形態にかかる電池パックの劣化制御装置の回路図である。
図9】第2の実施の形態にかかる電池パックの劣化制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1に示す本実施の形態の電池パックの劣化制御装置10Aは、電池パック12の劣化を抑制するものである。図1に示すように、本実施の形態の電池パック12は、複数の電池セルC1~Cnを備えて構成されており、EVの車載バッテリに適用されている。
【0010】
まず、図2の模式図を参照して、電池パックの劣化制御装置10Aによる電池パック12の劣化制御処理の概要について説明する。図2では、電池パック12に4つの電池セルC1~C4が備えられている例を示しており、電池セルC1~C4の高さが電圧(V)を示している。なお、奇数番の電池セルC1、C3が第1電池セル群(第1蓄電装置)に相当し、偶数番の電池セルC2、C4が第2電池セル群(第2蓄電装置)に相当する。
【0011】
図2では、(A)~(D)の順に電池パック12の劣化制御処理が行われる。図2(A)は、電池セルC1~C4の電圧が揃っている状態を示す図である。ここで、本実施の形態において「電圧が揃う」とは、電池セル間の電圧が同じである状態、および電池セル間の電圧がほぼ同じである状態、すなわち電池セル間の電圧が所定の誤差の範囲内である状態を含んでいる。
【0012】
図2(B)は、電池パックの偶数番の電池セルC2、C4が放電されている状態を示す図である。図2(C)は、奇数番の電池セルC1、C3と偶数番の電池セルC2、C4とが互いに充放電を行っている状態を示す図である。図2(D)は、電池セルC1~C4の電圧が揃っている状態を示す図である。
【0013】
まず、図2(A)に示すように、電池セルC1~C4の電圧は揃っている。この状態から、電池パック12の劣化制御処理を開始すると、図2(B)に示すように、電池セルC1~C4の一部、ここでは偶数番の電池セルC2、C4の電力を消費させて、残りの電池セルである奇数番の電池セルC1、C3との間で電圧差を生じさせる。
【0014】
次に、図2(C)に示すように、奇数番の電池セルC1、C3と偶数番の電池セルC2、C4との電圧バランスを取るため、奇数番の電池セルC1、C3と偶数番の電池セルC2、C4とが互いに充放電を行う。その結果、図2(D)に示すように、電池セルC1~C4の電圧が揃っている状態に戻る。
【0015】
このように、本実施の形態の電池パック12の劣化制御処理では、保管している電池パックを起動して、電圧が揃っている奇数番の電池セルC1、C3と偶数番の電池セルC2、C4との間で意図的に電位差を生じさせた後、奇数番の電池セルC1、C3と偶数番の電池セルC2、C4の間で充放電を行うことで、再び奇数番の電池セルC1、C3と偶数番の電池セルC2、C4の電圧を揃える処理を行う。なお、図2(B)において偶数番の電池セルC2、C4が放電されているため電力が消費されている。したがって、その後に充放電を行うことで電圧を揃えた図2(D)の電池セルC1~C4の電圧は、図2(A)の電池セルC1~C4の電圧より低くなっている(図2の電池セルC1~C4の高さ参照)。
【0016】
次に、図3を参照して、電池パックの劣化制御装置10Aの回路図について説明する。図3に示すように、電池パックの劣化制御装置10Aは、奇数番の電池セルC1(第1電池セル群)と、偶数番の電池セルC2(第2電池セル群)と、スイッチS1~7と、バランサ抵抗R1、R2と、電池制御装置20とが接続されて構成されている。
【0017】
奇数番の電池セルC1は、電池パック12に備えられた複数の電池セルC1~Cn(図1参照)のうち、奇数番目の電池セルである。また、偶数番の電池セルC2は、電池パック12に備えられた複数の電池セルC1~Cnのうち、偶数番目の電池セルである。
なお、電池セル間の電圧を揃えるために電池セル間で充放電を行なうにあたっては、奇数番目の電池セルと偶数番目電池セルをペアとして考えるので、本実施の形態では、電池セルC1と電池セルC2を奇数番目の電池セルと偶数番目電池セルのペアの一例として説明する。
【0018】
スイッチS1~7は、機械的に電気信号の切り替えを行うものであり、回路内に適宜設置され、電池制御装置20からの指令に基づいてON(オン状態:閉位置)にすると電流が流れ、OFF(オフ状態:開位置)にすると電流が流れないように構成されている。
【0019】
バランサ抵抗R1、R2は、奇数番の電池セルC1と偶数番の電池セルC2との電圧バランスを調整するものであって、バランサ抵抗R1は奇数番の電池セルC1に並列に接続され、バランサ抵抗R2は偶数番の電池セルC2に並列に接続されている。
【0020】
例えば、車両を走行させる場合など電池パック12を通常使用する場合、スイッチS1~S7を以下のようにする。
S1:ON
S2:OFF
S3:ON
S4:OFF
S5:OFF
S6:OFF
S7:ON
これにより、奇数番の電池セルC1(第1電池セル群)および偶数番の電池セルC2(第2電池セル群)が直列に接続される。
【0021】
また、例えば、偶数番の電池セルC2をバランサ抵抗R2に接続して放電する場合、スイッチS1~S7を以下のようにする。
S1:OFF
S2:OFF
S3:OFF
S4:OFF
S5:ON
S6:OFF
S7:OFF
これにより、偶数番の電池セルC2とバランサ抵抗R2とが接続される。
【0022】
また、例えば、奇数番の電池セルC1(第1電池セル群)から偶数番の電池セルC2(第2電池セル群)に充電する場合、スイッチS1~S7を以下のようにする。
S1:ON
S2:OFF
S3:ON
S4:ON
S5:OFF
S6:ON
S7:OFF
これにより、奇数番の電池セルC1(第1電池セル群)と偶数番の電池セルC2(第2電池セル群)とが接続される。
【0023】
図1に戻り、電池パックの劣化制御装置10Aの機能構成について説明する。図1に示すように、電池パックの劣化制御装置10Aは、電池パック12と、充電口14と、バランサ回路16と、電池制御装置20と、を備えて構成されている。
【0024】
電池パック12は、上述したように、複数の電池セルC1~Cnを備えて構成されており、奇数番の電池セルC1、C3…が第1電池セル群(第1蓄電装置)に相当し、偶数番の電池セルC2、C4…が第2電池セル群(第2蓄電装置)に相当する。
【0025】
充電口14は、外部充電設備のケーブル(接続部材)が接続される接続部である。電池パック12は、外部充電設備による充電時(外部充電時)に充電口14から供給される交流の電力を直流に変換する変換器(不図示)を介して充電される。
【0026】
バランサ回路16は、スイッチSとバランサ抵抗Rとにより構成されている。本実施の形態のバランサ回路16は、奇数番の電池セルC1、C3…に並列にバランサ抵抗R1、R3…、スイッチが接続され、偶数番の電池セルC2、C4…に並列にバランサ抵抗R2、R4…、スイッチが接続されて構成されている。
【0027】
電池制御装置20は、さらに、充電制御部202と、計測部204と、劣化状態推定部206と、残容量推定部208と、バランサ回路制御部210と、充放電制御部212とを備えて構成されている。電池制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)などの制御装置、制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)や制御プログラムの作動領域としてのRAM(Random Access Memory)などの記憶装置、出力装置、入力装置、および外部装置等と通信を行う通信I/F(interface)などを含む通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっており、CPUがROMに格納された制御プログラムを実行することにより、上述した各部(充電制御部202と、計測部204と、劣化状態推定部206と、残容量推定部208と、バランサ回路制御部210と、充放電制御部212)として機能する。
【0028】
充電制御部202は、充電口14に充電設備のケーブルが接続されると、充電口14から供給される電力を電池パック12の電池セルC1~Cnに充電する。
【0029】
計測部204は、電池パック12の使用を停止してからの経過時間を計測する。すなわち、電池パック12の充電中や車両の走行時は計測せず、電池パック12の充電が完了した場合や車両が停止した場合など電池パック12の使用が停止した時からの時間を計測する。
【0030】
劣化状態推定部206は、電池パック12の劣化状態(SOH:State of Health)を推定する。SOHの推定は、電池パック12の容量、電圧、電流及び温度貯蔵データによって推定可能であって、電流積算法や開放電圧推定法など公知のいずれかの方法を用いて推定できる。
【0031】
残容量推定部208は、電池パック12の残容量(SOC:State Of Charge)を推定する。SOCの推定は、電池セルに負荷をかけていない状態における両端子間の電圧(OCV(Open Circuit Voltage)開放電圧)から推定可能であって、公知のいずれかの方法を用いて推定できる。
【0032】
バランサ回路制御部210は、奇数番の電池セルC1、C3…(第1電池セル群)の電圧と偶数番の電池セルC2、C4…(第2電池セル群)の電圧との間で電位差を生じさせる電圧制御部である。具体的には、バランサ回路制御部210は、奇数番の電池セルC1、C3…および偶数番の電池セルC2、C4…のいずれか一方の電池セル群をバランサ抵抗Rに接続して電圧を放電させ、電位差を生じさせる。
【0033】
本実施の形態では、バランサ回路制御部210が偶数番の電池セルC2、C4…にバランサ抵抗R2、R4…を接続させて放電させ、電位差を生じさせる。したがって、上述したように、スイッチS5をONにし、他のスイッチをOFFにすると、バランサ抵抗R2が偶数番の電池セルC2に接続され、偶数番の電池セルC2(第2電池セル群)の放電が行われる。
【0034】
ここで、図4を参照して、バランサ抵抗による放電時における消費電力について説明する。図4では、起電力E[V]の電池セルCにバランサ抵抗(負荷抵抗)R[Ω]を接続した回路に流れる電流をI[A]とする。電池セルCは、起電力E[V]により電流が流れることで、内部抵抗r[Ω]が発生する。また、電池セルCの端子電圧はV[V]とする。
オームの法則から、それぞれの関係は、
E=rI+V=(r+R)I
となる。これにより、
I=E/(R+r)となる。
したがって、
消費電力P=VI=IR=[E/(R+r)]
となる。
このように、消費電力Pは、電池セルCの起電力Eおよび内部抵抗r、バランサ抵抗Rにより算出できる。
【0035】
バランサ回路制御部210は、所定の条件を満たした場合に、偶数番の電池セルC2、C4…を放電させ、奇数番の電池セルC1、C3…の電圧と偶数番の電池セルC2、C4…の電圧との間で電位差を生じさせる。具体的には、バランサ回路制御部210は、電池パック12の使用を停止してから所定時間が経過した場合に電位差を生じさせる。車両に搭載される電池パックは、使用を停止してから14日を経過すると急激に劣化するため、14日経過する前に劣化抑制処理を行うことが好ましい。例えば、本実施の形態では、電池パック12の使用を停止してから7日が経過した場合、偶数番の電池セルC2、C4…を放電させて電位差を生じさせる。
【0036】
また、バランサ回路制御部210は、劣化状態推定部206により推定された電池パック12のSOH(劣化状態)が予め定めた第1閾値以上であった場合に電位差を生じさせる。劣化した電池パック12は回復することがないため、劣化が進行し過ぎていると電池パックの劣化抑制処理を行っても効果が生じない。したがって、第1閾値は、電池パック12の劣化抑制処理を行った場合に効果を生じる場合の下限値を定めた値であり、例えば20%とする。
【0037】
また、バランサ回路制御部210は、残容量推定部208により推定された電池パック12のSOC(残容量)が予め定めた第2閾値以上であった場合に電位差を生じさせる。電池パック12の劣化制御処理を行うことで電力が消費されるため、劣化制御処理を行った後の電池パック12のSOCでは車両の走行ができないと判断した場合、電池パック12の劣化制御処理を行わない。したがって、第2閾値は、電池パック12の劣化制御処理を行っても車両の走行が可能である場合の下限値を定めた値であり、例えば20%とする。
【0038】
そして、バランサ回路制御部210は、奇数番の電池セルC1、C3…および偶数番の電池セルC2、C4…のうち放電させた側の電池セル群(本実施の形態では、偶数番の電池セルC2、C4…)の電圧が予め定めた目標電圧(例えば、現在の電圧-0.2V)に到達した場合、スイッチS5をOFFにしてバランサ抵抗R2の接続を解除する。
【0039】
目標電圧は都度に過電圧を考慮した状態で、奇数番の電池セルC1、C3…と偶数番の電池セルC2、C4…の間で互いに充放電が可能な最小電圧差を設定する。これは、電池パック12の劣化制御処理による電力の消費を少なくして電池パック12の残容量(SOC)の低下を極力抑え、次回車両を走行させる際に使用する電力を電池パック12に残すためである。つまり、電池パック12の劣化制御処理を行うことで、電池パック12の残容量が車両の走行可能な残容量の下限値を下回ることを回避するためである。
【0040】
充放電制御部212は、予め定めた電圧差が生じ、バランサ回路制御部210によりバランサ抵抗R2の接続が解除された場合、奇数番の電池セルC1、C3…と偶数番の電池セルC2、C4…の電池セル間で互いに充放電を行い、奇数番の電池セルC1、C3…の電圧と偶数番の電池セルC2、C4…の電圧とを揃える。本実施の形態では、奇数番の電池セルC1、C3…から偶数番の電池セルC2、C4…に充電する場合、スイッチS1、S3、S4、S6をONにし、スイッチS2、S5、S7をOFFにする。
【0041】
なお、バランサ回路制御部210が生じさせる電圧差は、過電圧を考慮した状態で、奇数番の電池セルC1、C3…と偶数番の電池セルC2、C4…の間で互いに充放電が可能な最小電圧差から、充放電を行った場合に奇数番の電池セルC1、C3…および偶数番の電池セルC2、C4…のうち充電された側の電池セル群(本実施の形態では、偶数番の電池セルC2、C4…)が蓄電可能な電圧を超えない最大電圧差までの範囲で定められている。
【0042】
また、本実施の形態の電池パック12の劣化制御処理は、作業時間が短いため、仮に劣化制御処理の実行中に利用者による車両の走行指示を受け付けた場合でも、劣化制御処理の完了までの時間は短く、利用者を待たせることがない。
【0043】
次に、図5を参照して、電池パックの劣化制御装置10Aによる電池パック12の劣化制御処理の流れについて説明する。まず、計測部204が電池パック12の使用を停止してからの経過時間を計測すると、バランサ回路制御部210は、電池パック12の使用を停止してから所定時間が経過したか否かを判断し(ステップS10)、経過していない場合(ステップS10:NO)、経過するまで待機する。
【0044】
一方、電池パック12の使用を停止してから所定時間が経過した場合(ステップS10:YES)、バランサ回路制御部210は、劣化状態推定部206により推定された電池パック12のSOHが第1閾値以上か否かを判断する(ステップS12)。電池パック12のSOHが第1閾値未満である場合(ステップS12:NO)、電池パック12の劣化が進行しており劣化抑制処理を行っても効果がないため、処理を終了する。
【0045】
一方、電池パック12のSOHが第1閾値以上である場合(ステップS12:YES)、バランサ回路制御部210は、残容量推定部208により推定された電池パック12のSOCが第2閾値以上か否かを判断する(ステップS14)。電池パック12のSOCが第2閾値未満である場合(ステップS14:NO)、ステップS10に戻る。
【0046】
一方、電池パック12のSOCが第2閾値以上である場合(ステップS14:YES)、バランサ回路制御部210は、偶数番の電池セルC2、C4…にバランサ抵抗R2を接続し(ステップS16)、偶数番の電池セルC2、C4…を放電する(ステップS18)。そして、バランサ回路制御部210は、偶数番の電池セルC2、C4…が目標電圧に到達したか否かを判断し(ステップS20)、到達していない場合(ステップS20:NO)、ステップS18に戻り目標電圧に到達するまで放電する。
【0047】
一方、偶数番の電池セルC2、C4…が目標電圧に到達した場合(ステップS20:YES)、バランサ回路制御部210は、偶数番の電池セルC2、C4…へのバランサ抵抗R2の接続を解除する(ステップS22)。偶数番の電池セルC2、C4…へのバランサ抵抗R2の接続が解除されると、充放電制御部212は、奇数番の電池セルC1、C3…と偶数番の電池セルC2、C4…の電池セル間で互いに充放電を行う(ステップS24)。
【0048】
充放電制御部212は、奇数番の電池セルC1、C3…の電圧と偶数番の電池セルC2、C4…の電圧とが揃ったか否かを判断し(ステップS26)、揃ってない場合(ステップS26:NO)、充放電を継続し(ステップS24)、揃った場合(ステップS26:YES)、ステップS10に戻って処理を繰り返す。
【0049】
このように、本実施の形態の電池パックの劣化制御装置10Aは、バランサ回路制御部210(電圧制御部)により電池パック12を構成する奇数番の電池セルC1、C3…の電圧と偶数番の電池セルC2、C4…の電圧との間で電位差を生じさせ、予め定めた電圧差が生じると、充放電制御部212により奇数番の電池セルC1、C3…と偶数番の電池セルC2、C4…の電池セル間で互いに充放電を行い、奇数番の電池セルC1、C3…の電圧と偶数番の電池セルC2、C4…の電圧とを揃えるため、保管している電池パック12からの電力消費を抑えることで容量の低下を防ぎ、電池パック12の劣化を抑制する上で有利となる。
また、ナビゲーションシステムやメータ、モータなどのデバイスの電源をONにして電池パック12の電池セルC1~Cnを起動させるより、本実施の形態の電池パック12の劣化制御処理を行う方が電力消費が抑えられるため、容量の低下を防ぎ、電池パック12の劣化を抑制する上で有利となる。すなわち、他のデバイスの電源をONにした場合、電池セルC1~Cnの全ての電池セルから均等に電力が消費されてしまうが、本実施の形態の電池パック12の劣化制御処理を行う場合は、電池セルC1~Cnの一部の電池セルから電力を消費させて電圧をアンバランスにした後に充放電により電池セルC1~Cnの電圧を揃えるため、他のデバイスをONにした場合と比較すると電力の消費量が少ない。また、他のデバイスより小さい抵抗を有するバランサ抵抗を用いるため電力の消費量を抑えることができるとともに、一回の処理で消費される電力をコントロールしやすいという利点もある。
また、電池パック12の使用を停止してから予め定めた所定時間が経過した場合に、奇数番の電池セルC1、C3…の電圧と偶数番の電池セルC2、C4…の電圧と間で電位差を生じさせる構成としたため、電池パック12を保管してから適切な時間が経過したタイミングで電池パック12を起動させることができ、電池パック12の劣化を抑制する上で有利となる。
また、電池パック12のSOH(劣化状態)を推定し、推定したSOHが予め定めた第1閾値以上であった場合に、奇数番の電池セルC1、C3…の電圧と偶数番の電池セルC2、C4…の電圧と間で電位差を生じさせる構成としたため、電池パック12のSOHに基づいて電池パックの劣化抑制処理を実行するか否かが判断できるため、有効な電池パックの劣化抑制処理を実行する上で有利となる。
また、電圧差が、過電圧を考慮した状態で充放電が可能な最小電圧差から、充放電を行った場合に奇数番の電池セルC1、C3…および偶数番の電池セルC2、C4…のうち充電された側の蓄電装置が蓄電可能な電圧を超えない最大電圧差までの範囲で定められる構成としたため、奇数番の電池セルC1、C3…と偶数番の電池セルC2、C4…の間で適切に充放電が行えて、かつ電池パック12の故障を回避する電位差を定める上で有利となる。
また、第1蓄電装置が複数の電池セルを備えて構成された第1電池セル群(奇数番の電池セルC1、C3…)で、第2蓄電装置が複数の電池セルを備えて構成された第2電池セル群(偶数番の電池セルC2、C4…)であって、バランサ回路制御部210が奇数番の電池セルC1、C3…および偶数番の電池セルC2、C4…のいずれか一方の電池セル群(本実施の形態では、偶数番の電池セルC2、C4…)をバランサ抵抗R2に接続して電圧を放電させ、電位差を生じさせる構成としたため、電池パック12に搭載されている既存のバランサ機能を利用することができ、電池パック12の劣化を抑制する上で有利となる。
また、電池パック12のSOC(残容量)を推定し、SOCが予め定めた第2閾値以上であった場合に、バランサ回路制御部210により電位差を生じさせる構成としたため、電池パック12のSOCに基づいて電池パックの劣化抑制処理を実行するか否かが判断でき、適切な残容量を有する電池パックの劣化抑制処理を実行する上で有利となる。
また、一方の電池セル群(放電した偶数番の電池セルC2、C4…)の電圧が予め定めた目標電圧に到達した場合、バランサ回路制御部210によりバランサ抵抗R2の接続を解除し、充放電制御部212により奇数番の電池セルC1、C3…と偶数番の電池セルC2、C4…の電池セル間で互いに充放電を行い、奇数番の電池セルC1、C3…の電圧と偶数番の電池セルC2、C4…の電圧とを揃える構成とすれば、適切な電圧差になった場合に充放電を行うことができ、電池パック12の劣化を抑制する上で有利となる。
【0050】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、バランサ機能を利用して電池セル間で充放電をする構成としていたのに対して、第2の実施の形態では、昇圧機を使用してモジュールブロック間で充放電をする構成としている点が異なっている。
なお、以下の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様な個所、部材に同一の符号を付してその説明を省略し、第1の実施の形態と異なった個所について重点的に説明する。
【0051】
図6に示す本実施の形態の電池パックの劣化制御装置10Bは、電池パック32の劣化を抑制するものである。図6に示すように、本実施の形態の電池パック32は、第1モジュールブロックMB1および第2モジュールブロックMB2を備えて構成されており、第1の実施の形態と同様、EVの車載バッテリに適用されている。
【0052】
まず、図7の模式図を参照して、電池パックの劣化制御装置10Bによる電池パック32の劣化制御処理の概要について説明する。図7では、電池パック32に第1モジュールブロックMB1および第2モジュールブロックMB2が備えられている例を示しており、第1モジュールブロックMB1および第2モジュールブロックMB2の高さが電圧(V)を示している。本実施の形態の第1モジュールブロックMB1および第2モジュールブロックMB2は、それぞれ5つのモジュールを備え、それらモジュールはさらに10個の電池セルを備えて構成されている。
【0053】
なお、モジュールブロックに備えるモジュールの数、さらにモジュールに備える電池セルの数は任意であるが、第1モジュールブロックMB1:第2モジュールブロックMB2=1:1の関係を維持している。また、第1モジュールブロックMB1が第1蓄電装置に相当し、第2モジュールブロックMB2が第2蓄電装置に相当する。
【0054】
図7では、(A)~(E)の順に電池パック32の劣化制御処理が行われる。図7(A)は第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の電圧が揃っている状態を示す図である。図7(B)は、昇圧された第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で互いに充放電を行っている状態を示す図である。
【0055】
図7(C)は、昇圧された第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧とが揃っている状態を示す図である。図7(D)は、第1モジュールブロックMB1が降圧した状態を示す図である。図7(E)は、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で互いに充放電を行っている状態を示す図である。
【0056】
まず、図7(A)に示すように、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の電圧は揃っている。この状態から、電池パック32の劣化制御処理を開始し、第1モジュールブロックMB1に昇圧機を接続することにより、第1モジュールブロックMB1が昇圧される。そうすると、図7(B)に示すように、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2との間で電圧差が生じるため、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で互いに充放電を行う。その結果、図7(C)に示すように、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の電圧が揃っている状態となる。
【0057】
この状態から、第1モジュールブロックMB1への昇圧機の接続を解除することにより、第1モジュールブロックMB1が降圧される。そうすると、図7(D)に示すように、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2との間で再び電圧差が生じるため、図7(E)に示すように、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で互いに充放電を行う。その結果、図7(A)に示すように、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の電圧が揃っている状態に戻る。
【0058】
このように、本実施の形態の電池パック32の劣化制御処理では、保管している電池パックを起動して、電圧が揃っている第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で意図的に電位差を生じさせた後、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で充放電を行うことで、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の電圧を揃える処理を行う。
【0059】
なお、図7(B)では、昇圧機を接続することにより第1モジュールブロックMB1を昇圧させ、図7(D)では昇圧機の接続を解除することによりモジュールブロックMB1を降圧させるため、理論的には電力が消費されていない。したがって、図7(A)の状態から劣化制御処理を開始し、当該処理を終えて揃った第1モジュールブロックMB1および第2モジュールブロックMB2の電圧は、図7(A)の第1モジュールブロックMB1および第2モジュールブロックMB2の電圧と同じとなる。
【0060】
次に、図8を参照して、電池パックの劣化制御装置10Bの回路図について説明する。図8に示すように、電池パックの劣化制御装置10Bは、第1モジュールブロックMB1(第1蓄電装置)と、第2モジュールブロックMB2(第2蓄電装置)と、スイッチS11~14と、昇圧機36と、電池制御装置40とが接続されて構成されている。
【0061】
第1モジュールブロックMB1(第1蓄電装置)、第2モジュールブロックMB2(第2蓄電装置)は、電池パック32に備えられており、複数の電池セルからなるモジュールを複数備えて構成されている。本実施の形態の第1モジュールブロックMB1および第2モジュールブロックMB2は、上述したように、それぞれ5つのモジュールを備え、それらモジュールはさらに10個の電池セルを備えて構成されている。
【0062】
スイッチS11~14は、機械的に電気信号の切り替えを行うものであり、回路内に適宜設置され、電池制御装置40からの指令に基づいてON(オン状態:閉位置)にすると電流が流れ、OFF(オフ状態:開位置)にすると電流が流れないように構成されている。
【0063】
昇圧機36は、第1モジュールブロックMB1を昇圧させるものであって、スイッチS14とともに第1モジュールブロックMB1に並列に接続されている。スイッチS14をONにすると、第1モジュールブロックMB1に昇圧機36が接続されて昇圧し、スイッチS14をOFFにすると、第1モジュールブロックMB1への昇圧機36の接続が解除されるため、第1モジュールブロックMB1が降圧していく。
【0064】
例えば、車両を走行させる場合など電池パック32を通常使用する場合、スイッチS11~S14を以下のようにする。
S11:OFF
S12:OFF
S13:ON
S14:OFF
これにより、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2とが直列に接続される。
【0065】
また、例えば、第1モジュールブロックMB1を昇圧機36に接続して昇圧させる場合、スイッチS11~S14を以下のようにする。
S11:OFF
S12:OFF
S13:ON
S14:ON
これにより、第1モジュールブロックMB1と昇圧機36とが接続される。
【0066】
また、例えば、昇圧された第1モジュールブロックMB1から第2モジュールブロックMB2に充電する場合、スイッチS11~S14を以下のようにする。
S11:ON
S12:ON
S13:OFF
S14:ON
これにより、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2と昇圧機36とが接続される。
【0067】
また、例えば、第2モジュールブロックMB2から第1モジュールブロックMB1に充電する場合、スイッチS11~S14を以下のようにする。
S11:ON
S12:ON
S13:OFF
S14:OFF
これにより、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2が接続される。
【0068】
図6に戻り、電池パックの劣化制御装置10Bの機能構成について説明する。図6に示すように、電池パックの劣化制御装置10Bは、電池パック32と、充電口14と、昇圧機36と、電池制御装置40と、を備えて構成されている。なお、本実施の形態の電池パックの劣化制御装置10Bに残容量推定部が設けられていないのは、本実施の形態の電池パック32の劣化制御処理では理論上電力が消費しないためである。
【0069】
電池パック32は、上述したように、複数の電池セルからなるモジュールを複数備えた第1モジュールブロックMB1および第2モジュールブロックMB2により構成されており、第1モジュールブロックMB1が第1蓄電装置に相当し、第2モジュールブロックMB2が第2蓄電装置に相当する。
【0070】
昇圧機36は、圧力を上げるものであって、本実施の形態では、第1モジュールブロックMB1に並列に接続されて構成されている。
【0071】
電池制御装置40は、さらに、充電制御部202と、計測部204と、劣化状態推定部206と、昇圧機制御部410と、充放電制御部412とを備えて構成されている。電池制御装置40は、第1の実施の形態と同様に、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっており、CPUがROMに格納された制御プログラムを実行することにより、上述した各部(充電制御部202と、計測部204と、劣化状態推定部206と、昇圧機制御部410と、充放電制御部412)として機能する。
【0072】
昇圧機制御部410は、第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧との間で電位差を生じさせる電圧制御部である。具体的には、昇圧機制御部410は、第1モジュールブロックMB1および第2モジュールブロックMB2のいずれか一方のモジュールブロックを昇圧機36に接続して昇圧させ、または一方のモジュールブロックへの昇圧機36の接続を解除して降圧させることで、電位差を生じさせる。
【0073】
本実施の形態では、昇圧機制御部410が第1モジュールブロックMB1を昇圧機36に接続して昇圧させ、電位差を生じさせる。したがって、上述したように、スイッチS11、12をOFFにし、スイッチS13、14をONにすると、第1モジュールブロックMB1に昇圧機36が接続され、第1モジュールブロックMB1が昇圧される。
【0074】
また、本実施の形態では、昇圧機制御部410が第1モジュールブロックMB1への昇圧機36の接続を解除して降圧させることで、電位差を生じさせる。したがって、スイッチS14をOFFにすると、第1モジュールブロックMB1への昇圧機36の接続が解除され、第1モジュールブロックMB1が降圧される。また、昇圧機制御部410は、第1モジュールブロックMB1が昇圧された後に、充放電により、第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧とが揃った場合、昇圧機36の接続を解除する。
【0075】
昇圧機制御部410は、所定の条件を満たした場合に、第1モジュールブロックMB1を昇圧機36に接続して昇圧させ、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2との間で電位差を生じさせる。具体的には、昇圧機制御部410は、電池パック32の使用を停止してから所定時間が経過した場合に電位差を生じさせる。例えば、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様、電池パック32の使用を停止してから7日が経過した場合、第1モジュールブロック1に昇圧機36を接続して電位差を生じさせる。
【0076】
また、昇圧機制御部410は、第1の実施の形態と同様、劣化状態推定部206により推定された電池パック32のSOH(劣化状態)が予め定めた第1閾値以上であった場合に電位差を生じさせる。
【0077】
充放電制御部412は、予め定めた電圧差が生じた場合、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で互いに充放電を行い、第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧とを揃える。本実施の形態では、第1モジュールブロックMB1から第2モジュールブロックMB2に充電する場合、スイッチS11、S12、S14をONにし、スイッチS13をOFFにする。また、本実施の形態では、第2モジュールブロック2から第1モジュールブロックMB1に充電する場合、スイッチS11、S12をONにし、スイッチS13、S14をOFFにする。
【0078】
本実施の形態の充放電制御部412は、第1モジュールブロックMB1に昇圧機36が接続されて昇圧され、予め定めた目標電圧(例えば、現在の電圧+10V)に到達した場合、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で互いに充放電を行い、第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧とを揃える。
【0079】
目標電圧は、昇圧機36により昇圧された場合にモジュールブロックの電圧が充電可能な上限電圧を超えないように設定する。また、目標電圧は、充放電により充電された場合にモジュールブロックの電圧が充電可能な上限電圧を超えないように設定する。これは、モジュールブロックの電圧が充電可能な上限電圧を超えると、電池パック32の故障につながるためである。
【0080】
また、目標電圧は、利用者の指示に基づいて定められる構成としてもよい。本実施の形態の電池パック32の劣化制御処理は、第1の実施の形態と比較して作業時間が長い。したがって、目標電圧を高く設定すると、第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧とを揃える作業も時間がかかるため、劣化制御処理の実行中に利用者による車両の走行指示を受け付けても、すぐに車両を走行させることができない。また、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックとの間に電圧差がある状態で車両を走行させてしまうと、電池パック32の劣化が進行してしまう。したがって、車両を走行させる予定がある場合には、利用者が目標電圧を低く設定することで、劣化制御処理の作業時間をなるべく短くすることができる。一方、車両を走行させる予定がない場合には、利用者が目標電圧を高く設定することで、作業時間は長くかかるものの、電池パック32の放置劣化を防ぐ効果を高めることができる。
【0081】
また、本実施の形態の充放電制御部412は、昇圧機36の接続が解除されたことで第1モジュールブロックMB1が降圧した場合、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で互いに充放電を行い、第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧とを揃える。
【0082】
なお、昇圧機36の接続、または接続の解除により生じさせる電圧差は、過電圧を考慮した状態で、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2との間で互いに充放電が可能な最小電圧差から、充放電を行った場合に第1モジュールブロックMB1および第2モジュールブロックMB2のうち充電された側のモジュールブロックが蓄電可能な電圧を超えない最大電圧差までの範囲で定められている。
【0083】
次に、図9を参照して、電池パックの劣化制御装置10Bによる電池パック32の劣化制御処理の流れについて説明する。まず、計測部204が電池パック32の使用を停止してからの経過時間を計測すると、昇圧機制御部410は、電池パック32の使用を停止してから所定時間が経過したか否かを判断し(ステップS30)、経過していない場合(ステップS30:NO)、経過するまで待機する。
【0084】
一方、電池パック32の使用を停止してから所定時間が経過した場合(ステップS30:YES)、昇圧機制御部410は、劣化状態推定部206により推定された電池パック32のSOHが第1閾値以上か否かを判断する(ステップS32)。電池パック32のSOHが第1閾値未満である場合(ステップS32:NO)、電池パック32の劣化が進行しており劣化抑制処理を行っても効果がないため、処理を終了する。
【0085】
一方、電池パック32のSOHが第1閾値以上である場合(ステップS32:YES)、昇圧機制御部410は、第1モジュールブロックMB1に昇圧機36を接続し(ステップS34)、第1モジュールブロックMB1を昇圧する(ステップS36)。そして、昇圧機制御部410は、第1モジュールブロックMB1が目標電圧に到達したか否かを判断し(ステップS38)、到達していない場合(ステップS38:NO)、ステップS36に戻り目標電圧に到達するまで昇圧する。
【0086】
一方、第1モジュールブロックMB1が目標電圧に到達した場合(ステップS38:YES)、充放電制御部412は、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で互いに充放電を行う(ステップS40)。
【0087】
充放電制御部412は、第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧とが揃ったか否かを判断し(ステップS42)、揃ってない場合(ステップS42:NO)、充放電を継続し(ステップS40)、揃った場合(ステップS42:YES)、昇圧機制御部410は、第1モジュールブロックMB1への昇圧機36の接続を解除する(ステップS44)。
【0088】
第1モジュールブロックMB1への昇圧機36の接続が解除されたことで第1モジュールブロックMB1が降圧した場合、充放電制御部412は、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で互いに充放電を行う(ステップS46)。
【0089】
充放電制御部412は、第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧とが揃ったか否かを判断し(ステップS48)、揃ってない場合(ステップS48:NO)、充放電を継続し(ステップS46)、揃った場合(ステップS48:YES)、ステップS30に戻って処理を繰り返す。
【0090】
このように、本実施の形態の電池パックの劣化制御装置10Bは、昇圧機制御部410(電圧制御部)により電池パック32を構成する第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧との間で電位差を生じさせ、予め定めた電圧差が生じると、充放電制御部412により第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で互いに充放電を行い、第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧とを揃えるため、保管している電池パック32からの電力消費を抑えることで容量の低下を防ぎ、電池パック32の劣化を抑制する上で有利となる。
また、ナビゲーションシステムやメータ、モータなどのデバイスの電源をONにして電池パック32のモジュールブロックを起動させると電力が消費されるが、本実施の形態の電池パック32の劣化制御処理は理論上電力が消費しないため、容量の低下を防ぎ、電池パック32の劣化を抑制する上で有利となる。すなわち、他のデバイスの電源をONにした場合、電池パック32の全ての電池セルから均等に電力が消費されてしまうが、本実施の形態の電池パック32の劣化制御処理を行う場合は、一方のモジュールブロックを昇圧または降圧して電圧をアンバランスにした後に充放電により2つのモジュールブロックの電圧を揃えるため、理論上電力を消費しない。
また、電池パック32の使用を停止してから予め定めた所定時間が経過した場合に、第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧と間で電位差を生じさせる構成としたため、電池パック32を保管してから適切な時間が経過したタイミングで電池パック32を起動させることができ、電池パック32の劣化を抑制する上で有利となる。
また、電池パック32のSOH(劣化状態)を推定し、推定したSOHが予め定めた第1閾値以上であった場合に、第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧と間で電位差を生じさせる構成としたため、電池パック32の劣化状態に基づいて電池パック32の劣化抑制処理を実行するか否かが判断できるため、有効な電池パックの劣化抑制処理を実行する上で有利となる。
また、電圧差が、過電圧を考慮した状態で充放電が可能な最小電圧差から、充放電を行った場合に第1モジュールブロックMB1および第2モジュールブロックMB2のうち充電された側のモジュールブロックが蓄電可能な電圧を超えない最大電圧差までの範囲で定められる構成としたため、第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で適切に充放電が行えて、かつ電池パック32の故障を回避する電位差を定める上で有利となる。
また、第1蓄電装置が複数の電池セルからなるモジュールを複数備えて構成された第1モジュールブロックで、第2蓄電装置が複数の電池セルからなるモジュールを複数備えて構成された第2モジュールブロックであって、昇圧機制御部410が第1モジュールブロックMB1および第2モジュールブロックMB2のいずれか一方のモジュールブロックを昇圧機36に接続して昇圧させ、または当該第1モジュールブロックMB1への昇圧機36の接続を解除して降圧させることで、電位差を生じさせる昇圧機制御部410で構成したため、電力を消費させることなく昇圧または降圧することにより電位差を生じさせることができ、電池パック32の劣化を抑制する上で有利となる。
また、第1モジュールブロックMB1(昇圧機に接続されたモジュールブロック)が昇圧され予め定めた目標電圧に到達した場合、充放電制御部412により第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で互いに充放電を行い、第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧とを揃え、充放電により第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧とが揃った場合、昇圧機制御部410により昇圧機36の接続を解除し、昇圧機36の接続を解除したことで第1モジュールブロックMB1が降圧した場合、充放電制御部412により第1モジュールブロックMB1と第2モジュールブロックMB2の間で互いに充放電を行い、第1モジュールブロックMB1の電圧と第2モジュールブロックMB2の電圧とを揃える構成としたため、適切な電圧差になった場合に充放電を行うことができ、電池パック32の劣化を抑制する上で有利となる。
また、目標電圧を利用者の指示に基づいて定められる構成とすれば、電池パック32をすぐに使用する場合は短い時間で電池パックの劣化抑制処理を行い、劣化を抑制する効果を高める場合は長い時間で電池パックの劣化抑制処理を行うことができ、電池パック32の使用状況に合わせながら電池パック32の劣化を抑制する上で有利となる。
【0091】
上述した本実施の形態では、電池パック32の劣化制御処理をLFPを用いた電池に適用した例を示したが、サイクル劣化より放置劣化のほうが大きい電池であれば、LFPを用いた電池以外でも適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
10A、10B 劣化制御装置
12、32 電池パック
14 充電口
16 バランサ回路
20、40 電池制御装置
36 昇圧機
202 充電制御部
204 計測部
206 劣化状態推定部
208 残容量推定部
210 バランサ回路制御部
212 充放電制御部
410 昇圧機制御部
412 充放電制御部
C1~Cn 電池セル
MB1 第1モジュールブロック
MB2 第2モジュールブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9