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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143263
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】内装部品の真空成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/12 20060101AFI20241003BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20241003BHJP
   B29C 51/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29C51/12
B29C51/10
B29C51/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055844
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 英樹
【テーマコード(参考)】
4F208
【Fターム(参考)】
4F208AC03
4F208AD18
4F208AH26
4F208AH33
4F208AR02
4F208MA01
4F208MA02
4F208MA03
4F208MB01
4F208MB11
4F208MC10
4F208MH06
4F208MK15
4F208MK20
4F208MW01
(57)【要約】
【課題】素子と基材との間に空気が入らないように両者を接合することで、素子による検出精度の低下及び素子の基材に対する接着強度の低下を抑制する。
【解決手段】内装部品の真空成形方法は、真空成形用のボックス内に表皮材20、基材12及び素子40を配置する準備工程と、表皮材20を加熱して軟化させる加熱工程と、ボックス内を真空にする真空工程と、基材12の表面に表皮材20を押圧して表皮材20を基材12の表面に沿うように成形する表皮材押圧工程と、基材12の裏面と素子40との間の空間を真空工程で真空状態にした後、基材12の裏面に素子40を接触させて接合する素子接合工程とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(12)と、該基材(12)の表面に接合される表皮材(20)と、該基材(12)の裏面に接合される素子(40)とを備えた内装部品(1)の真空成形方法であって、
真空成形用のボックス(110)内に前記表皮材(20)、前記基材(12)及び前記素子(40)をこの順で配置するとともに、前記表皮材(20)と前記基材(12)との間、及び前記基材(12)と前記素子(40)との間にそれぞれ隙間を空けておく準備工程と、
前記表皮材(20)を加熱して軟化させる加熱工程と、
前記ボックス(110)内を真空にする真空工程と、
前記基材(12)の表面に前記表皮材(20)を押圧して前記加熱工程で軟化させた前記表皮材(20)を前記基材(12)の表面に沿うように成形する表皮材押圧工程と、
前記基材(12)の裏面と前記素子(40)との間の空間を前記真空工程で真空状態にした後、前記基材(12)の裏面に前記素子(40)を接触させて接合する素子接合工程とを備える、内装部品の真空成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の内装部品の真空成形方法において、
前記ボックス(110)内における前記表皮材(20)の表面が臨む側の表面側空間(R1)と、前記ボックス(110)内における前記表皮材(20)の裏面が臨む側の裏面側空間(R2)とを真空状態にした後、前記表皮材押圧工程を行うとともに、前記表面側空間(R1)の圧力を前記裏面側空間(R2)の圧力よりも高める、内装部品の真空成形方法。
【請求項3】
請求項2に記載の内装部品の真空成形方法において、
前記準備工程では、前記基材(12)を基材保持台(120)に置き、
前記準備工程の後、前記表面側空間(R1)の圧力を前記裏面側空間(R2)の圧力よりも高めた後、前記素子接合工程を行う、内装部品の真空成形方法。
【請求項4】
請求項3に記載の内装部品の真空成形方法において、
前記準備工程では、第1ボックス構成部材(111)と第2ボックス構成部材(112)とを合わせることによって前記ボックス(110)を形成し、
前記ボックス(110)を形成した後に、前記真空工程を行い、
前記真空工程では、前記基材保持台(120)の周縁部を前記第1ボックス構成部材(111)が有するフランジ部(111d)に押し当てることにより、前記ボックス(110)内を前記表面側空間(R1)と前記裏面側空間(R2)とを仕切り、
前記ボックス(110)内を前記表面側空間(R1)と前記裏面側空間(R2)とを仕切った後に、前記表面側空間(R1)の圧力を前記裏面側空間(R2)の圧力よりも高める、内装部品の真空成形方法。
【請求項5】
請求項1に記載の内装部品の真空成形方法において、
前記準備工程では、前記基材(12)を基材保持台(120)に対して保持機構(123)により保持し、
前記準備工程の後、前記素子接合工程を行う、内装部品の真空成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば自動車等の室内に配設される内装部品の真空成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、半導体、抵抗、コンデンサー等の素子を基板上に接合するための真空加熱接合装置が開示されている。この真空加熱接合装置では、基板を基板設置台の上面に配置し、その基板の上面に接着剤を有する素子を配置し、さらに加圧剥離フィルムを素子の上方に配置することができるようになっている。素子の上方に配置されている加圧剥離フィルムを大気圧中で加熱・軟化した後、真空チャンバーを画成してから当該真空チャンバー内を真空引きすることによって加圧剥離フィルムを基板及び素子の表面に密着させるとともに、素子を基板に接合する。その後、真空チャンバー内を大気圧にした後、基板に接合した素子を取り出すことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-52424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば自動車の室内に配設される内装部品に、いわゆるタッチ操作が可能なタッチスイッチ機能を付加したい場合がある。タッチスイッチとしては、例えば電極に指が接近したことを静電容量の変化で検出する静電容量型の検出素子を用いたものが知られている。このような素子を内装部品の基材に接合することで、内装部品の表面に軽く触れるだけでタッチ操作が可能になる。
【0005】
しかしながら、素子と基材との間に空気が入ると検出精度が低下してしまうとともに、素子の基材に対する接着強度が低下してしまうおそれがある。
【0006】
この点、特許文献1の真空加熱接合装置では、接着剤を有する素子を大気圧中で基板の上面に配置し、その後、真空引きするようにしている。このとき、素子を基板の上面に配置する工程は大気圧中で行われるので、素子と基板との間に空気が入るのを抑制することは難しい。素子と基板との間に空気が入ってしまうと、それらの間に介在している接着剤に空気が混入することになる。このため、後に真空引きしたとしても、接着剤に混入している空気は抜けにくく、素子と基板との間に空気が存在したままになり易いと考えられる。よって、タッチスイッチとして用いる素子の検出精度の低下及び素子の基材に対する接着強度の低下が懸念される。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、素子と基材との間に空気が入らないように両者を接合することで、素子による検出精度の低下及び素子の基材に対する接着強度の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示では、基材と、該基材の表面に接合される表皮材と、該基材の裏面に接合される素子とを備えた内装部品の真空成形方法を前提とすることができる。内装部品の真空成形方法は、真空成形用のボックス内に前記表皮材、前記基材及び前記素子をこの順で配置するとともに、前記表皮材と前記基材との間、及び前記基材と前記素子との間にそれぞれ隙間を空けておく準備工程と、前記表皮材を加熱して軟化させる加熱工程と、前記ボックス内を真空にする真空工程と、前記基材の表面に前記表皮材を押圧して前記加熱工程で軟化させた前記表皮材を前記基材の表面に沿うように成形する表皮材押圧工程と、前記基材の裏面と前記素子との間の空間を前記真空工程で真空状態にした後、前記基材の裏面に前記素子を接触させて接合する素子接合工程とを備えている。
【0009】
この構成によれば、表皮材押圧工程では加熱工程で軟化させた表皮材を基材の表面に押圧することで基材の表面形状に沿うように表皮材が成形されるとともに、表皮材を基材の表面に接合して基材と一体化することが可能になる。また、基材の裏面と素子との間の空間が真空工程により真空になっている状態で基材の裏面に素子を接触させることで、基材と素子との間に空気が入ることなく、素子を基材の裏面に接合することが可能になる。
【0010】
前記ボックス内における前記表皮材の表面が臨む側の表面側空間と、前記ボックス内における前記表皮材の裏面が臨む側の裏面側空間とを真空状態にした後、前記表皮材押圧工程を行うとともに、前記表面側空間の圧力を前記裏面側空間の圧力よりも高めるようにしてもよい。すなわち、表面側空間の圧力を裏面側空間の圧力よりも高めることで、表面側空間と裏面側空間との圧力差を利用して表皮材を基材の表面に密着させることができ、狙い通りの真空成形が可能になる。
【0011】
前記準備工程では、前記基材を基材保持台に置くこともできる。この場合、前記準備工程の後、前記表面側空間の圧力を前記裏面側空間の圧力よりも高めた後、前記素子接合工程を行うこともできる。すなわち、表面側空間の圧力を裏面側空間の圧力よりも高めておくことで、基材が基材保持台に安定して保持されることになり、この状態で素子を基材の裏面に接触させることができるので、基材が基材保持台から浮き上がるのを防止できる。
【0012】
前記準備工程では、第1ボックス構成部材と第2ボックス構成部材とを合わせることによって前記ボックスを形成し、前記ボックスを形成した後に、前記真空工程を行うことができる。前記真空工程では、前記基材保持台の周縁部を前記第1ボックス構成部材が有するフランジ部に押し当てることにより、前記ボックス内を前記表面側空間と前記裏面側空間とを仕切り、前記ボックス内を前記表面側空間と前記裏面側空間とを仕切った後に、前記表面側空間の圧力を前記裏面側空間の圧力よりも高めることができる。
【0013】
前記準備工程では、前記基材を基材保持台に対して保持機構により保持し、前記準備工程の後、前記素子接合工程を行うこともできる。この構成によれば、基材を基材保持台に対して機械的に固定しておくことができるので、例えば表皮押圧工程よりも前に素子接合工程を行ったとしても、基材が浮き上がるのを防止できる。よって、工程の自由が向上する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、基材の裏面と素子との間の空間を真空状態にした後、基材の裏面に素子を接触させて接合するようにしたので、素子と基材とを空気が入らないように接合することができ、素子による検出精度の低下を抑制できるとともに、素子の基材に対する接着強度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る内装部品の真空成形方法で成形された内装部品が組み付けられた自動車のインストルメントパネルの略左側半分を示す正面図である。
図2図2は、図1のII-II線における車両用内装品の断面図である。
図3】準備工程にある真空成形装置の断面図である。
図4】加熱工程及び真空工程にある真空成形装置の断面図である。
図5】表皮押圧工程にある真空成形装置の断面図である。
図6】加圧工程及び表皮接合工程にある真空成形装置の断面図である。
図7】素子押圧工程にある真空成形装置の断面図である。
図8】実施形態2に係る図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る内装部品の真空成形方法では、例えば自動車等の室内に配設される各種内装部品を成形することが可能である。内装部品の真空成形方法で成形可能な内装部品としては、例えば図1に示すようなインストルメントパネルPに組み込まれるアシスタントパネル(以下、単に内装部品1という)、トリム類、リッド類、加飾パネル類、グリップ類、カバー類等を挙げることができるが、これらに限られるものではない。
【0018】
インストルメントパネルPは、各種の計器類を搭載する樹脂製の計器板であって、自動車の車室前部に配置される。図示しているインストルメントパネルPは、右ハンドル仕様車用のものである。インストルメントパネルPは、左ハンドル仕様車のものであってもよい。
【0019】
インストルメントパネルPの左右方向における一方側(図1で不図示の右側部分)は運転席に対応し、他方側(図1で例示する左側部分)は助手席に対応する。インストルメントパネルPの助手席に対応する部分の下側位置には、グローブボックス102が開閉可能に組み付けられる。インストルメントパネルPにおけるグローブボックス102の上方部分には、パネル装着部104が設けられる。
【0020】
パネル装着部104は、車幅方向に帯状に延びる横長の凹状に形成される。パネル装着部104には、内装部品1が嵌め込んで装着される。内装部品1は、正面視で横長の略矩形状に形成される。内装部品1は、パネル装着部104の開口を塞ぎ、インストルメントパネル本体に固定される。尚、内装部品1の形状や大きさは任意に設定することができ、図示したものに限られるものではない。
【0021】
図2に示すように、内装部品1は、基材12と、表皮材20と、素子40とを備えている。基材12は、内装部品1のベースとなる樹脂製の板状物である。基材12の裏面には、複数のボス(図2には2つのみ示す)13が一体に形成される。各ボス13は、基材12の裏側に突出する。各ボス13には、回路基板32がネジ36によって締結されている。本例の基材12は、透光性を有する。
【0022】
基材12は、例えば射出成形などによって成形される。基材12は、透光性を有する樹脂材料によって形成される。当該樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート(PC)やアクリル樹脂等を挙げることができるが、これらに限られるものではない。ここで、「透光性」とは、可視光を透過させる性質を意味する(以下においても同じ)。
【0023】
表皮材20は、当該表皮材20の表面側を構成する表皮層14と、当該表皮材20の裏面側を構成する遮光層16とを有しており、表皮層14に遮光層16が積層された状態で一体化されている。
【0024】
表皮材20は、基材12の表面側に設けられ、基材12の表面形状に沿うように真空成形されるとともに、基材12の表面に接合される。図示しないが、表皮材20の周縁部分は、基材12の外周端部を包み込むように基材12の裏側に巻き込まれ、基材12の裏面に固定される。表皮材20の表皮層14は、内装部品1の意匠面を呈する。
【0025】
表皮層14は、例えば合成樹脂からなる。表皮層14の材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、サーモプラスチックウレタン(TPU)、サーモプラスチックオレフィン(TPO)などの伸縮性を有するものや、ポリカーボネート(PC)などのフィルムを挙げることができるが、これらに限られるものではない。
【0026】
表皮層14は、例えば顔料を含むが、顔料の含有量が比較的少なく、透光性を有する。本例の表皮層14は、顔料として例えば黒色顔料のみを含み、グレートーンのスモーク色を呈する。つまり、表皮層14が透光性を有するスモーク色を呈するように、顔料の含有量が設定されている。他方、遮光層16は、例えば顔料を含む塗膜により形成され、遮光性を有する。遮光層16をなす塗料は、黒色であってもよいし、黒色以外の顔料を含むカラー塗料であってもよい。
【0027】
表皮層14の光透過率(可視光を透過させる割合;以降同じ)は、例えば3%以上且つ30%以下である。表皮材20がなす意匠面は、表皮層14を透過した遮光層16の色を反映して見える。表皮層14の光透過率は、JIS K7361に準拠して、市販の透過率計を使用して測定される。透過率計としては、例えばトプコン社製の分光放射計SR-LEDW等が用いられる。
【0028】
表皮層14は、無彩色または実質的な無彩色である。ここで、無彩色とは、L*a*b*表色系の彩度が0であることを意味し、実質的な無彩色とは、L*a*b*表色系の彩度が0よりも大きく且つ2以下であることを意味する。遮光層16の彩度は、表皮層14の彩度よりも高い。遮光層16の彩度が高いほど、つまり遮光層16と表皮層14との彩度差が大きいほど、内装部品1の外観意匠として色鮮やかな表現が可能になる。尚、遮光層16と表皮層14との彩度差は上述した範囲でなくてもよい。表皮層14と遮光層16との彩度の比較には、例えばL*a*b*表色系の彩度を用いることができる。表皮層14の彩度および遮光層16の彩度は、市販の色差計を使用して測定することができる。色差計としては、例えばコニカミノルタ社製の分光測色計CM3600Aを用いることができる。
【0029】
表皮材20には、表示部22が設けられる。表示部22は、アイコン24を表示する部分である。アイコン24は、例えば、車載システムを示す所定の図形や文字等である。遮光層16の表示部22を構成する部分には、光Lを透過させる透光孔26が設けられる。透光孔26は、例えばレーザー光の照射により、アイコン24と同一形状に形成される。透光孔26は、遮光層16を印刷により設ける場合、印刷パターンに含まれてもよい。尚、表示部22の数は1つに限られるものではなく、2つ以上であってもよい。また、遮光層16は省略してもよい。遮光層16を省略しても、光Lが照射されている箇所を表皮材20の表面で特定することは可能であり、後述するタッチスイッチの機能を持たせることができる。
【0030】
内装部品1では、回路基板32に実装されたLED34からの光Lが透光孔26を通じて表皮層14を透過することで、その光Lによりアイコン24が映し出される。これによって、表示部22は、アイコン24を点灯表示する。アイコン24の点灯表示は、車載システムの作動状態(作動または停止)を表す。このように、内装部品1は、表皮層14の一部を表示部22として点灯可能に構成される。
【0031】
素子40は、電極を有するとともに、当該電極に指が接近したことを静電容量の変化で検出可能な静電容量型の検出素子で構成されており、全体として薄型のシート状をなしている。このような素子40は、無色透明であり、LED34からの光Lを透過可能に構成されている。図示しないが、素子40には、制御装置から延びる電気配線が接続される接続部が設けられており、上述した静電容量の変化は電気信号として電気配線を介して制御部に送出される。
【0032】
素子40は、基材12の裏面に対して粘着剤、接着剤等によって接合される。素子40を基材12の裏面に接合する際には、例えばホットメルト型の粘着剤、接着剤や、UV硬化型の接着剤等を用いることができる。素子40の接合位置は、表示部22の真裏に対応している。素子40を基材12の裏面に接合することで、例えば乗員が指でアイコン24に触れた場合に、指がアイコン24に触れたことを検出し、車載システムをONにしたり、OFFにしたりすることができる。つまり、素子40は、車載システムのON/OFF切替や、車載システムの各種調整等を行うことが可能なタッチスイッチ機能を内装部品1に付与するための部材である。尚、静電容量型の検出素子は素子40の一例であり、素子40は、静電容量型の検出素子以外の素子で構成されていてもよい。
【0033】
次に、本発明の実施形態に係る内装部品の真空成形方法で使用される真空成形装置100について、図3図7に基づいて説明する。真空成形装置100は、真空成形用のボックス110と、基材保持台120と、素子設置台130と、真空加圧装置140と、真空装置150と、ヒータ160とを備えている。この実施形態の説明では、各図に示すように真空成形装置100の上側と下側を定義するが、これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、例えば上下方向が左右方向(水平方向)となるように真空成形装置100の向きを変えることもできる。
【0034】
ボックス110は、下側ボックス構成部材(第1ボックス構成部材)111と、上側ボックス構成部材(第2ボックス構成部材)112とを備えており、下側ボックス構成部材111及び上側ボックス構成部材112が合わされることによって当該ボックス110が形成される。すなわち、真空成形装置100は、上側ボックス構成部材112を下側ボックス構成部材111に接離する方向(本実施形態では上下方向)に移動させるボックス移動装置(図示せず)を備えている。ボックス移動装置は、例えば流体圧で動作する流体圧シリンダ等で構成されており、成形制御装置(図示せず)によって制御される。成形制御装置によって制御されるボックス移動装置は、上側ボックス構成部材112を所定のタイミングで、かつ、所定の移動速度で移動させる。図3に示すように、上側ボックス構成部材112を上方へ移動させることで、ボックス110が開放された状態になる一方、図4図7に示すように、上側ボックス構成部材112を下方へ移動させることで、ボックス110を形成して当該ボックス110内に真空室が構成される。
【0035】
下側ボックス構成部材111は、底壁部111aと、底壁部111aの周縁部から上方へ延びる下側周壁部111bとを有している。底壁部111aには、上下方向に貫通する貫通孔111cが形成されている。下側周壁部111bの上端部には、下側フランジ部111dが形成されている。下側フランジ部111dは、下側周壁部111bの外方へ向かって水平方向に延びる部分(外側部分)と、下側周壁部111bの内方へ向かって水平方向に延びる部分(内側部分)とを有している。下側フランジ部111dの上面には表皮材20が保持されるようになっている。下側フランジ部111dの上面に保持された表皮材20は、下側ボックス構成部材111の上方の開放部分を覆うように配置される。
【0036】
上側ボックス構成部材112は、上壁部112aと、上壁部112aの周縁部から下方へ延びる下側周壁部112bとを有している。下側周壁部112bの下端部には、上側フランジ部112dが形成されている。上側フランジ部112dは、下側周壁部111bの外方へ向かって水平方向に延びている。上側ボックス構成部材112を下方へ移動させてボックス110を形成すると、上側フランジ部112dの下面が、下側フランジ部111dに保持されている表皮材20の上面(表面)に当接する。上側フランジ部112dと下側フランジ部111dとにより、表皮材20が厚み方向に挟持されるとともに、上側フランジ部112dと下側フランジ部111dとの間の気密性が確保される。
【0037】
上側ボックス構成部材112の内部にはヒータ160が配設されている。具体的には、ヒータ160は、上側ボックス構成部材112の上部において上壁部112aの内面に沿って並ぶように位置付けられている。ヒータ160は、表皮材20を加熱して軟化させるための加熱器であり、成形制御装置によって制御される。ヒータ160による加熱温度は、表皮材20に対して熱による損傷を与えないように設定されている。
【0038】
基材保持台120は、上下方向に延びる基部121と、基部121の上部に設けられた台部122とを備えている。基部121は、下側ボックス構成部材111に形成されている貫通孔111cに挿通され、下側ボックス構成部材111の底壁部111aよりも下へ突出している。台部122は、下側ボックス構成部材111の内部に配置されている。台部122の水平方向の中央部には、基材12を保持する保持部122aが上方へ突出するように設けられている。この保持部122aに保持された基材12は、表側に位置する面が上に向くように配置される。台部122の周縁部は、下側周壁部111bの内面に接近するように延びており、上下方向から見た時、台部122の周縁部と、下側フランジ部111dの内側部分とが互いに重複するように配置される。
【0039】
基部121には、基材移動装置(図示せず)が連結されている。基材移動装置は、例えば流体圧で動作する流体圧シリンダ等で構成されており、成形制御装置(図示せず)によって制御される。成形制御装置によって制御される基材移動装置は、基材保持台120を所定のタイミングで、かつ、所定の移動速度で上下方向に移動させる。図3及び図4に示すように、基材保持台120を下方へ移動させることで、基材12が表皮材20から離れた状態になる一方、図5図7に示すように、基材保持台120を上方へ移動させることで、基材12を表皮材20に押圧することができるとともに、図5に部分拡大図として示すように、台部122の周縁部の上面が下側フランジ部111dの内側部分の下面に当接して気密性が確保されるようになっている。この状態で、ボックス110内には、表皮材20の表面が臨む側の表面側空間R1と、ボックス110内における表皮材20の裏面が臨む側の裏面側空間R2とが形成される。ボックス110内の真空室は、表面側空間R1及び裏面側空間R2で構成される。
【0040】
素子設置台130は、基材保持台120の水平方向中央部に配設されており、基材保持台120に対して上下方向に移動可能になっている。素子設置台130の上面130aは、基材保持台120の上面から上方に臨むように配置されていて、この素子設置台130の上面に素子40が置かれる。つまり、素子設置台130の上面130aの水平方向の位置は、基材12に対する素子40の接合位置に対応付けられており、素子40が所望の位置に接合されるように、素子設置台130の上面130aと基材12との水平方向の位置関係が設定されている。また、素子設置台130は、基材保持台120と共に上下方向に移動する。
【0041】
素子設置台130は、素子移動装置(図示せず)が連結されている。素子移動装置は、例えば流体圧で動作する流体圧シリンダ等で構成されており、成形制御装置(図示せず)によって制御される。成形制御装置によって制御される素子移動装置は、素子設置台130を所定のタイミングで、かつ、所定の移動速度で上下方向に移動させる。図3図6に示すように、素子設置台130を下方へ移動させることで、素子40が基材12から離れた状態になる一方、図7に示すように、素子設置台130を上方へ移動させることで、素子40を基材12の裏面に押圧することができる。
【0042】
真空加圧装置140は、上側配管141を介して上側ボックス構成部材112の内部に接続されている。真空加圧装置140は、真空ポンプ及び大気開放弁等(図示せず)を有している。図5に示すようにボックス110内に表面側空間R1が形成されると、表面側空間R1を真空引きして表面側空間R1の圧力を真空圧にすることが可能になっている。尚、本明細書における「真空」とは厳密な真空でなくてもよく、工業的に実現可能な真空度であればよい。
【0043】
真空加圧装置140は、表面側空間R1の圧力を真空圧にした後、大気開放弁を開くことが可能に構成されており、これにより、表面側空間R1の圧力を大気圧にすることができる。また、真空加圧装置140は、加圧ポンプを備えていてもよい。真空加圧装置140が加圧ポンプを備えていることで、表面側空間R1の圧力を真空ポンプによって真空圧にした後、加圧ポンプによって大気圧よりも高い圧力にすることが可能になる。
【0044】
真空装置150は、下側配管151を介して下側ボックス構成部材111の内部に接続されている。真空装置150は、真空ポンプ及び大気開放弁等(図示せず)を有している。図5に示すようにボックス110内に裏面側空間R2が形成されると、裏面側空間R2を真空引きして裏面側空間R2の圧力を真空圧にすることが可能になっている。真空装置150は、裏面側空間R2の圧力を真空圧にした後、大気開放弁を開くことが可能に構成されており、これにより、裏面側空間R2の圧力を大気圧にすることができる。尚、真空加圧装置140及び真空装置150は、成形制御装置によって制御される。
【0045】
次に、上記のように構成された真空成形装置100を用いて内装部品1を成形する方法について説明する。真空成形装置100の各部を成形制御装置によって制御することで、以下に示すような動作を自動的に実行させてもよいし、作業者が真空成形装置100の各部を操作することで以下に示すような動作を行ってもよい。
【0046】
始めに、上側ボックス構成部材112をボックス移動装置によって上方へ移動させてボックス110を開放する。また、基材保持台120を基材移動装置によって下方へ移動させ、さらに、素子設置台130を素子移動装置によって下方へ移動させておく。
【0047】
ボックス110を開放した状態で、素子40を素子設置台130の上面130aに置き、基材12を基材保持台120の台部122に置く。また、表皮材20を下側ボックス構成部材111の下側フランジ部111dの上面に保持する。その後、上側ボックス構成部材112をボックス移動装置によって下方へ移動させることにより、上側ボックス構成部材112と下側ボックス構成部材111とを合わせ、これにより、ボックス110を形成する。尚、下側ボックス構成部材111をボックス移動装置によって上方へ移動可能に構成されていてもよい。この場合、下側ボックス構成部材111を上方へ移動させることにより、上側ボックス構成部材112と下側ボックス構成部材111とを合わせ、これにより、ボックス110を形成することができる。
【0048】
以上の作業及び動作を経ることで、ボックス110内において表皮材21が配置され、表皮材21の下方に離れて基材12が配置され、基材12の下方に離れて素子40が配置される。要するに、ボックス110内に表皮材20、基材12及び素子40をこの順で配置するとともに、表皮材20と基材12との間、及び基材12と素子40との間にそれぞれ隙間を空けておく。この工程が準備工程である。
【0049】
準備工程の後、図4に示すように加熱工程と真空工程を行う。加熱工程では、ヒータ160の熱によって表皮材20を加熱して軟化させる。真空工程では、真空加圧装置140及び真空装置150の真空ポンプを作動させて表面側空間R1を真空引きするとともに、裏面側空間R2を真空引きする。加熱工程と真空工程とは同時に実行してもよいし、加熱工程を真空工程よりも早いタイミングで実行してもよいし、真空工程を加熱工程よりも早いタイミングで実行してもよい。
【0050】
真空工程では、基材保持台120を基材移動装置によって上方へ移動させて基材保持台120の台部122の周縁部を下側ボックス構成部材111が有するフランジ部111dに押し当てることにより、ボックス110内を表面側空間R1と裏面側空間R2とを仕切ることができる。
【0051】
表皮材20の温度が軟化温度に達したと推定され、かつ、表面側空間R1及び裏面側空間R2の真空引きが完了した段階、即ち表面側空間R1及び裏面側空間R2を真空状態にした後、図5に示す表皮押圧工程を行う。表皮押圧工程では、基材保持台120を基材移動装置によって上方へ移動させることで、基材12の表面に表皮材20の裏面を押圧して加熱工程で軟化させた表皮材20を基材12の表面に沿うように成形する。この表皮押圧工程の前に表面側空間R1及び裏面側空間R2が真空状態になっているので、表皮材20と基材12との間に空気が入るのを抑制できる。
【0052】
その後、図6に示す加圧工程及び表皮接合工程を行う。加圧工程では、表面側空間R1の圧力を裏面側空間R2の圧力よりも高める。具体的には、基材保持台120の台部122の周縁部を下側ボックス構成部材111のフランジ部111dに押し当てボックス110内を表面側空間R1と裏面側空間R2とに仕切った後に、真空加圧装置140の大気開放弁を開放して表面側空間R1を大気圧にし、表面側空間R1の圧力を裏面側空間R2の圧力よりも高くする。このとき、表面側空間R1を大気圧よりも高い圧力となるように加圧してもよい。これにより、表皮材20を基材12の表面に密着させることができ、狙い通りの真空成形が可能になる。
【0053】
表面側空間R1の圧力を裏面側空間R2の圧力よりも高めた後、図7に示す素子接合工程を行う。素子接合工程では、基材12の裏面と素子40との間の空間、即ち裏面側空間R2を真空状態としたままで基材保持台120を固定しておき、素子設置台130を素子移動装置によって上方へ移動させて素子40を基材12の裏面に接触させて接合する。このとき、表面側空間R1の圧力を裏面側空間R2の圧力よりも予め高めているので、基材12が基材保持台120に安定して保持されることになり、この状態で素子40を基材12の裏面に接触させることができるので、基材12が基材保持台120から浮き上がるのを防止できる。尚、加圧工程と素子押圧工程とは同時に開始してもよい。また、UV硬化型の接着剤を用いる場合、素子設置台130に図示しないUV照射装置を取り付け、素子押圧工程時にUV照射を行い、接着剤を硬化させても良い。
【0054】
以上のように、実施形態1では、基材12の裏面と素子40との間の裏面側空間R2を真空状態にした後、基材12の裏面に素子40を接触させて接合するようにしたので、素子40と基材12とを空気が入らないように接合することができ、素子40による検出精度の低下を抑制できるとともに、素子40の基材12に対する接着強度の低下を抑制できる。
【0055】
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2に係る真空成形装置の断面図である。実施形態2では、基材12を基材保持台120に対して保持機構123により保持可能にしている点で実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0056】
実施形態2の基材保持台120の台部122には、保持機構123が設けられている。保持機構123は、基材12の内面に対して水平方向から当接する当接部材123aと、当接部材123aを基材12の内面に押し付ける押し付け力を作用させる付勢部材123bとを備えている。付勢部材123bは、例えばバネ等で構成されている。当接部材123aを基材12の内面に押し付けておくことで、当接部材123aと基材12の内面との間の摩擦力を利用して基材12を台部122に保持できる。尚、図示しないが、保持機構123は基材12をクランプするクランプ機構等で構成されていてもよい。
【0057】
実施形態2の準備工程では、基材12を基材保持台120に対して保持機構123により保持する。そして、準備工程の後、素子接合工程を行う。すなわち、基材12を基材保持台120に対して機械的に固定しておくことができるので、例えば表皮押圧工程よりも前に素子接合工程を行ったとしても、基材12が浮き上がるのを防止できる。よって、実施形態1の作用効果に加えて、工程の自由が向上するという作用効果も奏することができる。
【0058】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本開示に係る内装部品の真空成形方法は、例えば自動車等の室内に配設される内装部品を成形する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 内装部品
12 基材
20 表皮材
40 素子
110 ボックス
111 下側ボックス構成部材(第1ボックス構成部材)
111d 下側フランジ部
112 上側ボックス構成部材(第2ボックス構成部材)
120 基材保持台
123 保持機構
R1 表面側空間
R2 裏面側空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8