(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143267
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】エアバッグ装置及びエアバッグ装置付鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 27/20 20200101AFI20241003BHJP
B60R 21/231 20110101ALI20241003BHJP
【FI】
B62J27/20
B60R21/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055849
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】友部 駿
(72)【発明者】
【氏名】横田 匡俊
(72)【発明者】
【氏名】早川 真司
(72)【発明者】
【氏名】陶山 洋士
(72)【発明者】
【氏名】芝滝 洋介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】佐宗 高
(72)【発明者】
【氏名】浅井 達也
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】前原 一範
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠志
(72)【発明者】
【氏名】和田 良治
(72)【発明者】
【氏名】黒堀 誠一
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA07
3D054AA13
3D054CC47
3D054DD11
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】車種間搭載性を向上させると共に、乗員に早期に当接できるエアバッグ装置及びエアバッグ装置付鞍乗り型車両を提供する。
【解決手段】エアバッグ装置10は、折り畳まれたエアバッグ40及びエアバッグ40に膨張用ガスを供給するインフレータ14を備え、鞍乗り型車両のハンドル4の中央に配置される。エアバッグ40の膨張展開状態において、エアバッグ40は、左右方向の中央部が車両後方側となるように湾曲している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれたエアバッグと、
該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレータと、を備え、
鞍乗り型車両のハンドルの中央に配置されるエアバッグ装置であって、
前記エアバッグの膨張展開状態において、該エアバッグは、左右方向の中央部が車両後方側となるように湾曲していることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグ装置は前記ハンドルの中央凹み部に配置されることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
膨張展開した前記エアバッグは、上面視で後面が湾曲した略扇形であることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグ及び前記インフレータはリテーナに支持されており、
前記エアバッグの折り畳み体は前記インフレータより車両後方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記リテーナは、底部となる主板部と、該主板部の車両前方側の周縁から起立した側壁とを有し、該側壁の先端は、前記インフレータのガス噴出口より高位に位置することを特徴とする請求項4に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグ及び前記インフレータはバッグリングを介して前記リテーナに取り付けられ、
前記バッグリングは、車両前方側の周縁から起立した側壁を有し、該側壁の先端は、前記インフレータのガス噴出口より高位に位置することを特徴とする請求項4に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記エアバッグは、
前記ハンドルの下方に膨張する第1チャンバと、
前記第1チャンバの上部に位置し、前記ハンドルの上方に膨張する第2チャンバと、
前記第1チャンバと前記第2チャンバとを上下に区画する仕切りパネルと、
を有し、
前記仕切りパネルには前記第1チャンバと前記第2チャンバとを連通する開口が形成されており、
前記インフレータは前記第1チャンバに接続されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記エアバッグ及び前記インフレータはモジュールカバーに収容され、
該モジュールカバーの上面が、該エアバッグが膨張した際に上方へ押し上げられる蓋部となっており、
該蓋部には、押し上げられた際の該蓋部の角度を調整する支持部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のエアバッグ装置が装着されたエアバッグ装置付鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートバイ等の鞍乗り型車両に搭載されるエアバッグ装置及びエアバッグ装置付鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
オートバイにエアバッグ装置を装着し、膨張展開時に乗員の上半身に当接し、乗員の車体前方への移動を抑える技術が知られている。例えば、展開方向が乗員に向いてレイアウトできるハンドル下のカウルカバー位置にエアバッグ装置を配置する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、車種によりカウル位置や形状が変わったり、オートバイの機能部品レイアウトが異なるためエアバッグ装置の配置が左右されたりすることがあった。
【0005】
本発明は、車種間搭載性を向上させると共に乗員に早期に当接できるエアバッグ装置及びエアバッグ装置付鞍乗り型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエアバッグ装置は、折り畳まれたエアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレータと、を備え、鞍乗り型車両のハンドルの中央に配置されるエアバッグ装置であって、前記エアバッグの膨張展開状態において、該エアバッグは、左右方向の中央部が車両後方側となるように湾曲しているものである。
【0007】
本発明のエアバッグ装置付鞍乗り型車両は、かかる本発明のエアバッグ装置が装着されたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車種間搭載性を向上させると共に乗員に早期に当接できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るオートバイの側面図である。
【
図2】エアバッグ装置が搭載された部分を後方から見た図である。
【
図7】膨張展開したエアバッグを後方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して実施の形態に係るエアバッグ装置を説明する。以下の説明で前後及び左右は、特に記載が無ければ、オートバイの前後及び左右と合致する。
【0011】
図1に示すように、オートバイ1はスクータ型であり、エンジン(図示略)の前後に前輪2及び後輪3を備え、エンジンの上方には乗員Pが着座するシート5が配置される。オートバイ1が電動車両の場合は、エンジンに代えてパワーユニットが設けられる。オートバイ1は樹脂材料からなる外装カバー8によって覆われる。車両前後方向の中央下部には、車幅方向中央から左右に離間して配置された左右の足載せ部7が設けられている。足載せ部7は、車幅方向に一定の幅を有し、その上面に、乗員Pが足を載せる。
【0012】
前輪2は、左右一対のフロントフォーク6の下部に回動可能に支持される。左右一対のフロントフォーク6の上部には、ブリッジ(図示略)が架設され、ブリッジの車幅方向中央には、操舵軸であるステアリングシャフト(図示略)が立設される。ステアリングシャフトの上方には、バーハンドル4(以下、ハンドル4と記載する。)が設けられる。
【0013】
図2に示すように、ハンドル4は、車幅方向に延在する単一のパイプ材から構成され、車幅方向中央が下方に屈曲し、凹み部が形成されている。このハンドル4の中央凹み部にエアバッグ装置10が配置されている。
【0014】
図3に示すように、エアバッグ装置10は、エアバッグ40、エアバッグ40を膨張させるガスを供給するディスク形状のインフレータ14、略平板状のリテーナ30、エアバッグ40をリテーナ30に固定するためのバッグリング20等を備える。エアバッグ40、インフレータ14、リテーナ30及びバッグリング20を含むエアバッグモジュールは、樹脂製の略直方体形函状のモジュールカバー12に収容される。
【0015】
図5A、
図5Bに示すように、モジュールカバー12は、上面の一部及び車両後方側の側壁12cの一部が蓋部12a、12dとなっている。蓋部12aは、上面の一部及び側壁12cの上部が連なったものであり、蓋部12dは側壁12cの下部である。エアバッグ40が膨張した際に、モジュールカバー12が蓋部12a及び蓋部12dの境界部で開裂し、エアバッグ膨出用の開口部が形成される。
図3に示すように、エアバッグ装置10は、モジュールカバー12の上面が車両上方かつ後方を向くように車両に装着され、蓋部12a、12dは後方側に位置する。
【0016】
インフレータ14はフランジ14aを有し、フランジ14aにはバッグリング20から立設された4本のボルト21が挿通される挿通孔が形成されている。インフレータ14の側周面には、複数のガス噴出口14bが形成されている。ガス噴出口14bは、周方向に一定間隔をおいて複数個、特に4個以上、例えば8個設けられている。ガス噴出口14bは、フランジ14a面よりも上方の先端側、すなわちエアバッグ40内への挿入方向の先端側又はエアバッグ側に設けられている。
【0017】
図4A及び
図4Bはバッグリング20を示し、
図4C及び
図4Dはバッグリング20にインフレータ14を取り付けた状態を示す。バッグリング20は、中央にインフレータ差込口22が形成され、平面視略矩形状であり、四隅から4本のボルト21が立設されている。バッグリング20の周縁部のうち、車両前方側の周縁部から側壁23が起立している。側壁23の起立方向は、ボルト21の立設方向とは反対である。
【0018】
インフレータ14にバッグリング20を取り付けた状態で、側壁23の先端23a又は上端23bは、インフレータ14のガス噴出口14bより高位に位置し、
図4C及び
図4Dに示す例では、インフレータ14の先端面14c(上面)よりも高位に位置する。
【0019】
側壁23以外のバッグリング20の周縁部、及びインフレータ差込口22の周縁部から立ち上がる側壁は、側壁23より低く、その先端はインフレータ14のガス噴出口14bより低位に位置する。
【0020】
リテーナ30のインフレータ差込口の周囲に、ボルト21が挿通される挿通孔が形成されている。
【0021】
バッグリング20を取り付けたエアバッグ40をリテーナ30の一方の主面(上側の面)に取り付け、反対側の面(下側の面)からインフレータ14を差し込み、各ボルト挿通孔にボルト21を挿通させ、ナットをボルト21に螺合させて締め込むことで、エアバッグ40、インフレータ14及びバッグリング20がリテーナ30に取り付けられた、エアバッグモジュールを作製できる。
【0022】
上述したように、エアバッグ装置10は、モジュールカバー12の上面が車両上方かつ後方を向くように車両に装着される。そのため、モジュールカバー12内のエアバッグモジュールは、インフレータ14の先端(上面)が後方かつ上方を向き、リテーナ30が前方ほど高位となるように傾斜している。
【0023】
本実施形態では、モジュールカバー12内において、エアバッグ40の折り畳み体40aは、インフレータ14より車両後方側(乗員P側)に配置される、具体的には、折り畳み体40aは、リテーナ30の後縁と、モジュールカバー12の車両後方側の側壁12cとの間に配置される。
【0024】
オートバイ1には、衝撃を検知する加速度センサ(図示略)が設けられる。加速度センサは制御部(図示略)に電気的に接続され、制御部はインフレータ14に電気的に接続される。衝突が起こると、加速度センサにより検知された衝撃加速度データが制御部に送信され、制御部が衝撃加速度データに基づいてエアバッグ40の作動/非作動を瞬時に判断する。作動と判断した場合には、インフレータ14に点火電流を送り、インフレータ14を作動させる。インフレータ14はエアバッグ40内にガスを供給し、エアバッグ40を膨張させる。膨張したエアバッグ40は、モジュールカバー12の蓋部12aを上方へ押し開き、車両後方へ向かって膨出し、乗員Pに当接する。
【0025】
図6、
図7、
図10に示すように、エアバッグ40は、ハンドル4と乗員Pとの間で膨張展開する。エアバッグ40の膨張展開状態において、エアバッグ40の乗員対向面は、車両後面視で台形状であり、左右幅が下方ほど小さく、左右方向の端部は、ハンドルグリップの左右端部よりも内側に位置している。エアバッグ40は、乗員Pの腰から胸までの上下高さを有する。エアバッグ40の乗員対向面は、側面視において準平面になっている。
【0026】
図10に示すように、エアバッグ40は、上面視略扇型であり、車両前方部はハンドル4に沿って左右幅は小さく、乗員側(車両後方側)は左右幅が大きくなっている。乗員対向面又はエアバッグ後面は、左右方向の中央部が車両後方側となるように湾曲している。
【0027】
膨張展開したエアバッグ40が上記のような形状を有するため、ハンドル4が転舵しない前方衝突に加えて、
図11に示すように、ハンドル4が転舵した場合に乗員Pに当接し、衝撃を低減できる。
【0028】
上述したように、本実施形態では、エアバッグ折り畳み体40aをインフレータ14より車両後方(乗員P側)に配置しているため、エアバッグ40の上方飛びを緩和し、乗員方向(後方)へ迅速に展開させることができ、早期に乗員Pに当接できる。
【0029】
また、インフレータ14の前方側(前方かつ上方)にバッグリング20の側壁23が配置されているため、インフレータ14のガス噴出口14bから噴出したガスが乗員側へ優先的に流される。そのため、エアバッグ40の上方飛びを緩和し、乗員方向(後方)へ迅速に展開させることができ、早期に乗員Pに当接できる。
【0030】
エアバッグ40は、
図8に示すような1チャンバ構成でもよいし、
図9に示すように、仕切りパネル42で下チャンバ44(第1チャンバ)と、上チャンバ46(第2チャンバ)とに上下に区画してもよい。下チャンバ44と上チャンバ46とは、仕切りパネル42に設けられた開口42aを介して連通する。下チャンバ44はハンドル4の下方に膨張して乗員腰部前方に位置し、上チャンバ46はハンドル4の上方に膨張して乗員胸部前方に位置する。
【0031】
インフレータ14は下チャンバ44に接続され、インフレータ14から噴出されたガスは、開口42aを介して上チャンバ46に供給される。側面視で開口42aはインフレータ14よりも後方、かつ仕切りパネル42の前後方向中央部よりも後方に設けられる。
図9に示す構成では、下チャンバ44が優先充圧され、乗員腰部を早期に当接できる。
【0032】
また、本実施形態では、エアバッグ装置10をハンドル4の中央凹み部に配置するため、様々な車両においても搭載性を向上させることができる。
【0033】
図12、
図13に示すように、リテーナ30の主板部(底部)の車両前方側の周縁から起立した側壁32を設けてもよい。リテーナ30の主板部の中央にはインフレータ差込口が形成されている。側壁32の高さは、バッグリング20の側壁23よりも高い。
【0034】
リテーナ30の主板部の左右の周縁から起立した側壁34をさらに設けてもよい。側壁34の前方側は側壁32と同じ高さであり、側壁32に連なっている。側壁34は、後方ほど高さが低くなっている。
【0035】
リテーナ30に側壁32を設けることで、インフレータ14から噴出されたガスをさらに効果的に優先充圧でき、エアバッグ40を乗員方向に迅速に展開させることができる。
【0036】
図14A~
図14Dに示すように、バッグリング20に、側壁23に加えて、さらに左右方向に回り込むように側壁24を設けてもよい。側壁24は、バッグリング20の左右の周縁のうち前方側から起立している。側壁24は、側壁23と同じ高さであり、側壁23に連なっている。
【0037】
側壁24を設けることで、インフレータ14から噴出されたガスをさらに効果的に乗員側へ吹かせ、エアバッグ40を乗員方向に迅速に展開させることができる。
【0038】
図15に示すように、モジュールカバー12の上面の全体が蓋部12bとなり、エアバッグ40が膨張した際に上方へ押し上げられる構成にしてもよい。蓋部12bには、モジュールカバー12の開口量を調整する支持部材13が取り付けられている。例えば、支持部材13の一端は、蓋部12の左右方向の側縁部に取り付けられ、他端はモジュールカバー12の左右方向の内壁面に取り付けられる。支持部材13の材料は特に限定されないが、例えばエアバッグ用基布を用いることができる。
【0039】
支持部材13により押し上げられた蓋部12bの角度を調整することで、エアバッグ40の上方飛びを緩和し、乗員方向(後方)へ迅速に展開させることができ、早期に乗員Pに当接できる。
【0040】
上記実施形態ではエアバッグ装置をオートバイに取り付ける例について説明したが、2輪車に限定されず、3輪の車両やATV(all-terrain vehicle)など、様々な鞍乗り型車両に適用可能である。
【0041】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の態様とされてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 オートバイ
4 ハンドル
10 エアバッグ装置
12 モジュールカバー
14 インフレータ
20 バッグリング
23 側壁
30 リテーナ
40 エアバッグ
40a エアバッグ折り畳み体