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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143270
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】排水弁装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/34 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E03D1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055852
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 悠太
(72)【発明者】
【氏名】岡部 凌平
(72)【発明者】
【氏名】畑間 健司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 謙治
(72)【発明者】
【氏名】穴見 義和
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039BA11
(57)【要約】
【課題】排水弁装置を固定する場合の施工性を向上し、かつ、シール性を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る排水弁装置は、便器本体を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンクの排水口部に取り付けられる。排水弁装置は、排水部本体と、固定部と、受部と、シール部材とを備える。排水部本体は、排水口部に取り付けられる。固定部は、排水部本体を洗浄水タンクに固定し、外周壁にねじ部を有する。受部は、ねじ部が噛合する。シール部材は、受部が取り付けられ、排水口部をシールする。排水部本体は、排水弁体と、弁座部とを備える。排水弁体は、洗浄水が便器本体に向けて流れる排水流路を開閉する。弁座部は、排水弁体が着座可能である。固定部は、洗浄水タンク側から便器本体側に向けて排水口部に挿入されて、弁座部よりも便器本体側において排水流路を形成し、排水部本体とは別体として構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンクの排水口部に取り付けられる排水弁装置であって、
前記排水口部に取り付けられる排水部本体と、
前記排水部本体を前記洗浄水タンクに固定し、外周壁にねじ部を有する固定部と、
前記ねじ部が噛合する受部と、
前記受部が取り付けられ、前記排水口部をシールするシール部材と
を備え、
前記排水部本体は、
前記洗浄水が前記便器本体に向けて流れる排水流路を開閉する排水弁体と、
前記排水弁体が着座可能な弁座部と
を備え、
前記固定部は、前記洗浄水タンク側から前記便器本体側に向けて前記排水口部に挿入されて、前記弁座部よりも前記便器本体側において前記排水流路を形成し、前記排水部本体とは別体として構成される、排水弁装置。
【請求項2】
前記固定部は、前記固定部による前記排水部本体の固定操作を受け付ける操作部を備える、請求項1に記載の排水弁装置。
【請求項3】
前記操作部は、前記固定部を回転させるジグが挿入される溝部である、請求項2に記載の排水弁装置。
【請求項4】
前記溝部の上端は、前記固定部の上端よりも下方に形成される、請求項3に記載の排水弁装置。
【請求項5】
前記シール部材は、
前記固定部の前記外周壁に向かい合う胴部と、
前記胴部の上端から、前記胴部の径方向の外側に向けて突出し、前記排水部本体の底部と、前記洗浄水タンクの底部とによって挟まれる環状の挟持部と
を備える、請求項1に記載の排水弁装置。
【請求項6】
前記胴部は、前記受部と前記洗浄水タンクの底部との間に形成される湾曲部を含み、
前記湾曲部は、前記胴部の周方向の全周にわたり形成される、請求項5に記載の排水弁装置。
【請求項7】
前記受部は、前記シール部材にインサート成形される、請求項1に記載の排水弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、排水弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄水タンクから便器本体に供給される洗浄水を吐水、および、止水する排水弁装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記する排水弁装置は、固定金具に噛合する皿ねじが、締め付け方向に回転されることで、固定金具が洗浄水タンクの底部に当接し、洗浄水タンクに固定される。また、固定金具に噛合する皿ねじが、締め付け方向に回転されることで、洗浄水タンクと、排水弁装置の排水部本体との間に設けたシール部材が押圧されて、洗浄水タンクからの漏水が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-80091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記する排水弁装置では、排水弁装置を洗浄水タンクに固定する場合に、固定金具を洗浄水タンクの下方に配置した状態で固定金具に皿ねじを噛合させなければならず、排水弁装置を洗浄水タンクに取り付ける際の施工性について改善の余地がある。また、上記する排水弁装置は、固定金具が洗浄水タンクに当接する箇所の上方のシール部材に押圧する力が集中する。そのため、上記する排水弁装置は、シール部材を均一に押圧することができず、シール部材によるシール性の向上について、改善の余地がある。
【0006】
実施形態の一態様は、排水弁装置を固定する場合の施工性を向上し、かつ、シール性を向上させる排水弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る排水弁装置は、便器本体を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンクの排水口部に取り付けられる。排水弁装置は、排水部本体と、固定部と、受部と、シール部材とを備える。排水部本体は、排水口部に取り付けられる。固定部は、排水部本体を洗浄水タンクに固定し、外周壁にねじ部を有する。受部は、ねじ部が噛合する。シール部材は、受部が取り付けられ、排水口部をシールする。排水部本体は、排水弁体と、弁座部とを備える。排水弁体は、洗浄水が便器本体に向けて流れる排水流路を開閉する。弁座部は、排水弁体が着座可能である。固定部は、洗浄水タンク側から便器本体側に向けて排水口部に挿入されて、弁座部よりも便器本体側において排水流路を形成し、排水部本体とは別体として構成される。
【0008】
これにより、排水弁装置を洗浄水タンクに固定する場合に、作業者は、固定部を洗浄水タンク側から排水口部に挿入し、シール部材に取り付けられた受部に、固定部を噛合させることで、固定部によって排水部本体を洗浄水タンクに固定することができる。すなわち、作業者は、シール部材に取り付けられ、予め配置された受部に、洗浄水タンク側から固定部を噛合させればよく、作業が容易となる。従って、排水弁装置は、排水部本体を洗浄タンクに固定する際の施工性を向上させることができる。
【0009】
また、排水弁装置は、固定部によって排水弁装置が洗浄浄水タンクに固定された場合に、シール部材を均一の押圧力によって挟持することができ、シール部材の潰れを均一にすることができる。従って、排水弁装置は、シール部材によるシール性を向上させることができる。
【0010】
固定部は、操作部を備える。操作部は、固定部による排水部本体の固定操作を受け付ける。
【0011】
これにより、作業者は、固定部によって排水部本体を洗浄水タンクに固定する場合に、固定部を容易に回転させることができる。すなわち、排水弁装置は、洗浄水タンクに固定される際の施工性を向上させることができる。
【0012】
操作部は、固定部を回転させるジグが挿入される溝部である。
【0013】
これにより、排水弁装置は、洗浄水タンクに固定される際の施工性を向上させることができる。
【0014】
溝部の上端は、前記固定部の上端よりも下方に形成される。
【0015】
これにより、排水弁装置は、ジグが溝部に挿入されて、固定部が回転される場合に、固定部の上端が劣化することを抑制することができる。
【0016】
シール部材は、胴部と、挟持部とを備える。胴部は、固定部の外周壁に向かい合う。挟持部は、環状である。挟持部は、胴部の上端から、胴部の径方向の外側に向けて突出し、排水部本体の底部と、洗浄水タンクの底部とによって挟まれる。
【0017】
これにより、作業者は、シール部材に固定部を挿入する場合に、上方から固定部を挿入する位置の確認が容易となる。また、固定部は、シール部材の胴部によって受部までガイドされる。そのため、排水弁装置は、洗浄水タンクに固定される際の施工性を向上させることができる。また、排水弁装置は、シール部材に固定部が挿入される場合に、シール部材が、シール部材の軸方向にずれることを挟持部によって抑制することができる。
【0018】
胴部は、湾曲部を含む。湾曲部は、受部と洗浄水タンクの底部との間に形成される。湾曲部は、胴部の周方向の全周にわたり形成される。
【0019】
これにより、排水弁装置は、固定部によって排水部本体が洗浄水タンクに固定される場合に、シール部材の胴部の一部を湾曲部の形状に沿って、胴部の周方向に均一に変形させることができる。そのため、排水弁装置は、シール部材を均一の押圧力によって挟持することができ、シール部材の潰れを均一にすることができる。従って、排水弁装置は、シール部材によるシール性を向上させることができる。
【0020】
受部は、シール部材にインサート成形される。
【0021】
これにより、排水弁装置は、固定部が受部に噛合される場合に、受部の位置ずれを抑制することができる。そのため、たとえば、作業者は、受部を上方から目視できない場合であっても、固定部を容易に受部に噛合させることができる。
【発明の効果】
【0022】
実施形態の一態様によれば、排水弁装置を固定する場合の施工性を向上し、かつ、シール性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施形態による排水弁装置が適用されたワンピースの水洗大便器の斜視図である。
図2図2は、実施形態による排水弁装置が適用されたワンピースの水洗大便器の側面断面図である。
図3図3は、実施形態による排水弁装置が適用されたワンピースの水洗大便器の洗浄水タンク部について、洗浄水タンクの上蓋、および、前側壁面を省略して内部構造を前方斜め上方から見た斜視図である。
図4図4は、図2における排水弁装置の一部を示す拡大図である。
図5図5は、比較例における排水弁装置の側面図である。
図6図6は、比較例における排水弁装置の一部を示す断面図である。
図7図7は、ツーピースの水洗大便器に設けられる排水弁装置の一部を示す断面図である。
図8図8は、一体型の水洗大便器に設けられる排水弁装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施形態による排水弁装置1について説明する。まず、図1、および、図2により、実施形態による排水弁装置1が適用されるワンピースの水洗大便器2について説明する。図1は、実施形態による排水弁装置1が適用されたワンピースの水洗大便器2の斜視図である。図2は、実施形態による排水弁装置1が適用されたワンピースの水洗大便器2の側面断面図である。図2では、排水弁装置1のハウジング60(図3参照)が省略されている。
【0025】
図1、および、図2に示すように、実施形態による排水弁装置1が適用されたワンピースの水洗大便器2は、便器本体である便器本体部4と、便器本体部4の上面後方に一体的に形成された洗浄水タンク部6とを備えている。洗浄水タンク部6は、排水弁装置1を備えた洗浄水タンク装置を構成している。洗浄水タンク部6は、便器本体部4を洗浄するための洗浄水を貯水する洗浄水タンク8を備えている。また、洗浄水タンク8の底部8aには、上下方向に貫く排水口部10が設けられている。排水口部10は、より厳密には、詳細は後述する本実施形態の排水弁装置1が取り付けられる洗浄水タンク8の底部8aの取付穴に相当している。
【0026】
水洗大便器2の便器本体部4は、その前方側に設けられたボウル部12と、ボウル部12の上縁に形成されたリム部14と、リム部14の内周に形成された棚部16とを備えている。
【0027】
また、便器本体部4のボウル部12の底部には、排水トラップ管路18の入口18aが開口し、排水トラップ管路18は、上方に延びる上昇管18bと、下方に延びる下降管18cとを備えている。排水トラップ管路18の形状から分かるように、本実施形態による水洗大便器2は、サイホン作用を利用してボウル部内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路から一気に外部に排出する、いわゆる、サイホン式の水洗大便器である。
【0028】
なお、水洗大便器2としては、サイホン式の水洗大便器に限定されず、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる、洗い落し式の水洗大便器等の他のタイプの水洗便器にも適用可能である。
【0029】
便器本体部4は、洗浄水タンク部6の排水口部10から排出される洗浄水が流入する導水路20と、リム部14の前方から見て左側中央に形成された第1リム吐水口22と、リム部14の前方から見て右側後方に形成された第2リム吐水口24とを備えている。
【0030】
また、導水路20は、下流に向かってリム部14の後壁面14a付近の分岐領域20aまで延びた後、分岐領域20aから第1リム吐水口22まで延びる第1導水路20bと、分岐領域20aから第2リム吐水口24まで延びる第2導水路20cと備えており、導水路20の洗浄水は、分岐領域20aから第1導水路20bを経て第1リム吐水口22に到達する一方、分岐領域20aから第2導水路20cを経て第2リム吐水口24に到達し、第1リム吐水口22、および、第2リム吐水口24のそれぞれから吐水され、ボウル部12が洗浄され、汚物が排水トラップ管路18から排出されるようになっている。
【0031】
つぎに、図2、および、図3により、実施形態による排水弁装置1が適用されたワンピースの水洗大便器2の洗浄水タンク部6の内部構造について説明する。図3は、実施形態による排水弁装置1が適用されたワンピースの水洗大便器2の洗浄水タンク部6について、洗浄水タンク8の上蓋、および、前側壁面を省略して内部構造を前方斜め上方から見た斜視図である。
【0032】
図2、および、図3に示すように、実施形態による排水弁装置1が適用されたワンピースの水洗大便器2の洗浄水タンク部6の洗浄水タンク8内には、洗浄水タンク8内に洗浄水を供給する給水装置26と、洗浄水タンク8に貯められた洗浄水について排水口部10を開放して便器本体部4の導水路20に流出させる、詳細は後述する排水弁装置1が設けられている。排水弁装置1は、操作装置28の操作レバー30の操作により1本の操作ワイヤ32が引き上げられることによって排水弁体34が上昇して洗浄水タンク8の排水口部10が開放される、いわゆる、ワイヤ駆動式の直動型の排水弁装置である。
【0033】
また、給水装置26は、外部の給水源(図示せず)に接続され、且つ洗浄水タンク8の底部8aから上方に延びるように設けられた給水管36と、給水管36の上端部に取り付けられ、給水管36から給水される洗浄水の洗浄水タンク8内への吐水と止水を切り替える給水バルブ38と、洗浄水タンク8内の水位の変動に応じて上下動して給水バルブ38による吐水と止水を切り替えるフロート40とを備えている。
【0034】
給水管36の外周側下端部には、複数の吐水口42が形成され、給水バルブ38を通過した洗浄水が吐水口42から洗浄水タンク8内に吐水されるようになっている。また、給水装置26においては、排水弁装置1により、洗浄水タンク8内の洗浄水が便器本体部4に排水されると、洗浄水の水位が低下してフロート40が下降し、それにより給水バルブ38が開き、吐水口42からの吐水が開始され、洗浄水タンク部6の外部の給水源(図示せず)から洗浄水タンク8内への吐水が開始されるようになっている。さらに、吐水が継続されて洗浄水タンク8内の水位が上昇すると、フロート40が上昇し、それにより給水バルブ38が閉鎖され、吐水口42からの吐水が止水されるようになっている。これにより、洗浄水タンク8内の洗浄水の水位が満水時の所定水位(以下「満水水位W0」)に維持されるようになっている。ここで、満水水位W0は、実質的には、排水開始前の洗浄水タンク8内の初期水位にも相当している。
【0035】
また、図3に示すように、排水弁装置1の動作を操作する操作装置28は、洗浄水タンク8の外部に取り付けられた操作レバー30と、洗浄水タンク8の内部に設けられて操作レバー30に連結されるワイヤ巻取り装置46とを備えている。ワイヤ巻取り装置46は、操作レバー30が手動により回転操作されたときの回転力がワイヤ巻取り装置46のケーシング46a内のプーリやギヤ等の回転機構部材(図示せず)に伝達されるようになっている。また、ワイヤ巻取り装置46と排水弁装置1とは、操作ワイヤ32によって互いに連結されており、操作装置28の操作レバー30を手動で回転操作することにより、ワイヤ巻取り装置46を介して1本の操作ワイヤ32が引き上げられ、排水弁体34が上昇して洗浄水タンク8の排水口部10が開放されるようになっている。
【0036】
なお、本実施形態では、操作装置28の操作レバー30を手動で回転操作することによりワイヤ巻取り装置46を操作し、操作ワイヤ32の引き上げ操作が可能な例について説明するが、操作レバー30の代わりに押しボタンのようなものを採用して引き上げ操作を行ってもよいし、操作レバーを回動させるためのモータ等の駆動手段を設け、操作装置の操作レバーやワイヤ巻取り装置を電動で駆動させるような形態にしてもよい。また、外部に設定された操作ボタン、または、人感センサーからの指令信号によって駆動手段の作動を自動的に制御するようにしてもよい。
【0037】
つぎに、図3、および、図4を参照して、実施形態による排水弁装置1の詳細について説明する。図4は、図2における排水弁装置1の一部を示す拡大図である。
【0038】
排水弁装置1は、洗浄水タンク8の排水口部10に取り付けられる。排水弁装置1は、排水部本体50と、固定部51と、受部52と、シール部材53とを備える。
【0039】
排水部本体50は、排水弁体54と、第1支持枠55と、第2支持枠56とを備える。
【0040】
排水弁体54は、上下方向に延び、円筒状に形成される排水弁軸部材58の下端部に固定されている。排水弁体54は、環状に形成され、排水弁軸部材58の下端部から、排水弁軸部材58の径方向の外側に向けて突出するように排水弁軸部材58に固定される。
【0041】
排水弁軸部材58の上端部には、操作ワイヤ32の下端接続部が接続されるフック部59(図2参照)が設けられる。排水弁軸部材58は、ハウジング60内で上下動可能に設けられる。排水弁軸部材58は、ハウジング60内に設けられた第2支持枠56によって上下動可能に支持される。
【0042】
排水弁軸部材58は、操作装置28の操作レバー30の操作により1本の操作ワイヤ32が引き上げられることによってフック部59が引き上げられて上昇するようになっている。フック部59が引き上げられることで、排水弁体54が排水弁軸部材58と共に上昇し、排水流路61の流入口61aが開放され、排水流路61(排水口部10)が開放された状態となり、洗浄水タンク8内の洗浄水が便器本体部4の導水路20に供給されるようになっている。
【0043】
排水弁軸部材58は、円筒状に形成されており、上端側端部が洗浄水タンク8内で開口し、下端側端部が、排水流路61と連通している。そのため、排水弁軸部材58は、オーバーフロー管として機能する。
【0044】
第1支持枠55は、鍔部65と、弁座部66と、支柱部67と、連結部68とを備える。鍔部65は、環状に形成される。鍔部65は、排水部本体50の下端に設けられる。すなわち、鍔部65は、排水部本体50の底部を形成する。鍔部65には、固定部51が挿入される挿入孔65aが形成される。鍔部65は、挿入孔65aの中心軸側に向けて突出する段部65bを備える。段部65bは、挿入孔65aの下方側に設けられる。段部65bには、後述する固定部51の係合部71が当接し、便器本体部4側への固定部51の移動を規制する。すなわち、段部65bは、固定部51が便器本体部4側へ移動することを規制するストッパーとして機能する。
【0045】
弁座部66は、鍔部65の上面から上方に向けて突出する。弁座部66は、環状に形成される。弁座部66は、挿入孔65aの周縁に沿って形成される。弁座部66は、排水弁体54が着座可能となるように形成される。排水弁体54が弁座部66に着座すると、排水流路61が閉じた状態になり、洗浄水タンク8内の洗浄水が便器本体部4の導水路20に供給されないようになっている。
【0046】
支柱部67は、鍔部65から上方に延びるように形成される。支柱部67は、鍔部65の外周端側に形成される。支柱部67は、鍔部65の径方向において、排水弁体54よりも外側に形成される。支柱部67は、鍔部65の周方向において、第1所定間隔を設けて複数形成される。すなわち、複数の支柱部67は、各支柱部67間に隙間が生じるように形成される。第1所定間隔は、予め設定された間隔である。支柱部67の上端は、環状の連結部68に接続される。連結部68には、第2支持枠56が取り付けられる。
【0047】
第2支持枠56は、排水弁軸部材58が挿入される円筒部69を備える。円筒部69は、排水弁軸部材58を上下動可能に支持する。
【0048】
固定部51は、鍔部65の挿入孔65aに挿入されて、排水部本体50を洗浄水タンク8に固定する。固定部51は、円筒状に形成される。固定部51は、内周壁によって排水流路61を形成する。固定部51は、洗浄水タンク8から便器本体部4へ洗浄水が流れる排水流路61を形成する。固定部51は、排水部本体50とは別体として構成される。
【0049】
固定部51は、挿入部70と、係合部71とを備える。挿入部70は、便器本体部4の導水路20まで挿入されるように形成される。すなわち、挿入部70は、洗浄水タンク8の排水口部10に挿入され、挿入部70の一部が便器本体部4の導水路20内に突出するように形成される。なお、挿入部70は、排水口部10に設けられたシール部材53に挿入されることで、排水口部10に挿入される。挿入部70の外周壁には、ねじ部70aが形成される。ねじ部70aは、挿入部70の下端側に形成される。ねじ部70aは、受部52に噛合される。
【0050】
係合部71は、挿入部70の上方側に形成される。係合部71は、固定部51の上端に形成される。係合部71は、環状に形成される。係合部71の外周壁の直径は、挿入部70の外周壁の直径よりも大きい。すなわち、係合部71は、挿入部70から、固定部51の径方向の外側に向けて突出するように形成される。係合部71の底面は、鍔部65の段部65bに当接する。
【0051】
固定部51の上端、すなわち、係合部71の上端は、弁座部66の上端よりも下方に位置する。固定部51は、弁座部66よりも、便器本体部4側において排水流路61を形成する。また、固定部51には、操作部72が形成される。操作部72は、固定部51の内周壁に形成される。操作部72は、固定部51による排水部本体50の固定操作を受け付ける。操作部72は、固定部51によって排水部本体50を洗浄水タンク8に固定する際に用いられる。具体的には、操作部72は、固定部51が、固定部51の周方向に回転される場合に操作される。
【0052】
操作部72は、たとえば、溝部72aである。溝部72aは、固定部51の周方向において、第2所定間隔を設けて複数形成される。溝部72aには、固定部51を回転させるジグが挿入される。第2所定間隔は、予め設定された間隔であり、ジグに応じて設定される。溝部72aは、溝部72aの上端が、固定部51の上端よりも下方となるように形成される。なお、操作部72は、固定部51の内周壁から突出する突出部であってもよい。突出部は、突出部の上端が、固定部51の上端よりも下方となるように形成される。
【0053】
受部52は、環状に形成される。受部52は、樹脂製、または、金属製である。受部52には、固定部51のねじ部70aが噛合する。具体的には、受部52の内周壁は、固定部51のねじ部70aに対応する形状に形成される。受部52は、固定部51のねじ部70aが挿入されて、固定部51が所定の締め付け方向に回転されることで、固定部51のねじ部70aが噛合する。受部52は、シール部材53に取り付けられる。たとえば、受部52は、シール部材53にインサート成形される。
【0054】
シール部材53は、洗浄水タンク8の排水口部10をシールする。シール部材53は、洗浄水タンク8からの漏水を防止する。シール部材53は、パッキンなどである。シール部材53は、変形可能な部材によって構成される。シール部材53は、ゴムなどによって構成される。シール部材53は、胴部75と、挟持部76とを備える。
【0055】
胴部75は、円筒状に形成される。固定部51の挿入部70の外周壁に向かい合うように形成される。胴部75の内周壁の直径は、固定部51の挿入部70の外周壁の直径よりも大きい。胴部75は、排水口部10に挿入される。胴部75は、便器本体部4の導水路20まで挿入される。すなわち、胴部75は、洗浄水タンク8の排水口部10に挿入され、胴部75の一部が便器本体部4の導水路20内に突出するように形成される。胴部75は、排水口部10を形成する洗浄水タンク8の内周壁に当接する。
【0056】
胴部75は、湾曲部75aを含む。湾曲部75aは、排水口部10よりも下方に形成される。湾曲部75aは、受部52と洗浄水タンク8の底部8aとの間に形成される。湾曲部75aの外周壁の直径は、排水口部10の直径よりも大きい。湾曲部75aは、胴部75の径方向の外側に向けて突出するように形成される。湾曲部75aは、シール部材53の周方向に沿って全周にわたり形成される。
【0057】
挟持部76は、胴部75の上方側に形成される。挟持部76は、シール部材53の上端側に形成される。挟持部76は、環状に形成される。挟持部76の外周壁の直径は、排水口部10の直径よりも大きい。挟持部76は、胴部75から、シール部材53の径方向の外側に向けて突出するように形成される。挟持部76は、排水部本体50と洗浄水タンク8とに挟まれる。具体的には、挟持部76は、排水部本体50の底部である鍔部65と、洗浄水タンク8の底部8aとに挟まれる。固定部51によって、排水部本体50が洗浄水タンク8に固定された場合に、挟持部76は、排水部本体50の鍔部65と、洗浄水タンク8の底部8aとによって挟まれて押圧されて、シール部材53の軸方向に潰される。これにより、洗浄水タンク8から便器本体部4への漏水が防止される。
【0058】
次に、排水部本体50を洗浄水タンク8に固定する際の固定方法について説明する。
【0059】
排水部本体50を洗浄水タンク8に固定する場合には、洗浄水タンク8の排水口部10に、受部52が取り付けられたシール部材53が配置される。シール部材53は、胴部75が排水口部10に挿入され、かつ、挟持部76が洗浄水タンク8の底部8aの上面に当接するように配置される。
【0060】
次に、排水部本体50の第1支持枠55が、排水口部10に設けられる。具体的には、第1支持枠55は、鍔部65が、シール部材53の挟持部76の上面に当接するように配置される。これにより、シール部材53の挟持部76は、第1支持枠55の鍔部65と、洗浄水タンク8の底部8aとによって挟まれた状態となる。
【0061】
次に、第1支持枠55の挿入孔65a、および、シール部材53に、固定部51が、洗浄水タンク8側から便器本体部4側に挿入される。これにより、洗浄水タンク8の排水口部10に固定部51が挿入された状態となる。
【0062】
そして、固定部51の溝部72a(操作部72)にジグが挿入されて、固定部51が所定の締め付け方向に回転される。ジグは、第1支持枠55の上方側から、溝部72aに挿入される。固定部51が所定の締め付け方向に回転されることで、固定部51の挿入部70のねじ部70aが、受部52に噛合する。
【0063】
固定部51が所定の締め付け方向に回転されることで、受部52が挿入部70の軸方向に沿って上昇する。受部52が上昇することで、シール部材53の湾曲部75aがシール部材53の径方向の外側に向けて撓むように変形し、湾曲部75aが洗浄水タンク8の底部8aの下面に押し付けられる。
【0064】
これにより、第1支持枠55が洗浄水タンク8に固定される。また、シール部材53の挟持部76が、鍔部65と、洗浄水タンク8の底部8aとによって押圧されて潰される。これにより、洗浄水タンク8に洗浄水が貯められた場合に、排水口部10がシール部材53によってシールされて、洗浄水タンク8から便器本体部4への漏水が防止される。
【0065】
固定部51によって第1支持枠55が洗浄水タンク8に固定された後に、排水弁体54、および、第2支持枠56が配置される。これにより、排水部本体50が洗浄水タンク8に設けられる。第1支持枠55が洗浄水タンク8に固定されているため、排水部本体50は、洗浄水タンク8に固定される。
【0066】
ここで、実施形態の排水弁装置1が用いられない比較例における排水弁装置100の取付方法について図5、および、図6を参照し説明する。図5は、比較例における排水弁装置100の側面図である。図6は、比較例における排水弁装置100の一部を示す断面図である。図5、および、図6は、図4に対応する断面図である。
【0067】
比較例の排水弁装置100は、たとえば、皿ねじ101と、固定金具102とを用いて、洗浄水タンク103に固定される。比較例の排水弁装置100では、第1支持枠104の鍔部105から下方に延びる円筒部106が、洗浄水タンク103の排水口部107に挿入されて、円筒部106が排水流路108を形成する。比較例の排水弁装置100は、皿ねじ101に噛合する固定金具102が洗浄水タンク103の底部103aに当接することで、洗浄水タンク103に固定される。
【0068】
作業者は、比較例の排水弁装置100を洗浄水タンク103に固定する場合、洗浄水タンク103の底部103aの下方に、固定金具102を配置した状態で、皿ねじ101を所定の締め付け方向に回転させなければならない。たとえば、作業者は、洗浄水タンク103の下方から固定金具102を支持した状態で、皿ねじ101を固定金具102に噛合させる。作業者は、洗浄水タンク103に対し、上方、および、下方からの操作が必要となる。
【0069】
また、比較例の排水弁装置100は、たとえば、2つの皿ねじ101、および、2つの固定金具102によって、洗浄水タンク103に固定されるため、固定金具102の当接箇所付近においてシール部材109を挟持する力が大きくなる。しかしながら、比較例の排水弁装置100は、固定金具102が接触する箇所から、排水流路108の周方向に離れるにつれて、シール部材109を挟持する力が小さくなる。すなわち、比較例の排水弁装置100では、シール部材109が均一の押圧力によって挟持されない。そのため、比較例の排水弁装置100は、シール部材109の潰れが均一にならない。
【0070】
実施形態の排水弁装置1は、便器本体部4を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク8の排水口部10に取り付けられる。排水弁装置1は、排水部本体50と、固定部51と、受部52と、シール部材53とを備える。排水部本体50は、排水口部10に取り付けられる。固定部51は、排水部本体50を洗浄水タンク8に固定し、外周壁にねじ部70aを有する。受部52は、ねじ部70aが噛合する。シール部材53は、受部52が取り付けられ、排水口部10をシールする。排水部本体50は、排水弁体54と、弁座部66とを備える。排水弁体54は、洗浄水が便器本体部4に向けて流れる排水流路61を開閉する。弁座部66は、排水弁体54が着座可能である。固定部51は、洗浄水タンク8側から便器本体部4側に向けて排水口部10に挿入されて、弁座部66よりも便器本体部4側において排水流路61を形成し、排水部本体50とは別体として構成される。
【0071】
これにより、排水弁装置1を洗浄水タンク8に固定する場合に、作業者は、固定部51を洗浄水タンク8側から排水口部10に挿入し、シール部材53に取り付けられた受部52に、固定部51を噛合させることで、固定部51によって排水部本体50を洗浄水タンク8に固定することができる。すなわち、作業者は、シール部材53に取り付けられ、予め配置された受部52に、洗浄水タンク8側から固定部51を噛合させればよく、作業が容易となる。従って、排水弁装置1は、排水部本体50を洗浄タンクに固定する際の施工性を向上させることができる。
【0072】
また、排水弁装置1は、固定部51によって排水弁装置1が洗浄水タンク8に固定された場合に、シール部材53を均一の押圧力によって挟持することができ、シール部材53の潰れを均一にすることができる。従って、排水弁装置1は、シール部材53によるシール性を向上させることができる。
【0073】
固定部51は、操作部72を備える。操作部72は、固定部51による排水部本体50の固定操作を受け付ける。たとえば、操作部72は、固定部51を回転させるジグが挿入される溝部72aである。
【0074】
これにより、作業者は、固定部51によって排水部本体50を洗浄水タンク8に固定する場合に、固定部51を容易に回転させることができる。すなわち、排水弁装置1は、洗浄水タンク8に固定される際の施工性を向上させることができる。
【0075】
溝部72aの上端は、固定部51の上端よりも下方に形成される。
【0076】
これにより、排水弁装置1は、ジグが溝部72aに挿入されて、固定部51が回転される場合に、固定部51の上端が劣化することを抑制することができる。
【0077】
シール部材53は、胴部75と、挟持部76とを備える。胴部75は、固定部51の外周壁に向かい合う。挟持部76は、環状である。挟持部76は、胴部75の上端から、胴部75の径方向の外側に向けて突出し、排水部本体50の底部と、洗浄水タンク8の底部8aとによって挟まれる。
【0078】
これにより、作業者は、シール部材53に固定部51を挿入する場合に、上方から固定部51を挿入する位置の確認が容易となる。また、固定部51は、シール部材53の胴部75によって受部52までガイドされる。そのため、排水弁装置1は、洗浄水タンク8に固定される際の施工性を向上させることができる。また、排水弁装置1は、シール部材53に固定部51が挿入される場合に、シール部材53が、シール部材53の軸方向にずれることを挟持部76によって抑制することができる。
【0079】
胴部75は、湾曲部75aを含む。湾曲部75aは、受部52と洗浄水タンク8の底部8aとの間に形成される。湾曲部75aは、胴部75の周方向の全周にわたり形成される。
【0080】
これにより、排水弁装置1は、固定部51によって排水部本体50が洗浄水タンク8に固定される場合に、シール部材53の胴部75の一部を湾曲部75aの形状に沿って、胴部75の周方向に均一に変形させることができる。そのため、排水弁装置1は、シール部材53を均一の押圧力によって挟持することができ、シール部材53の潰れを均一にすることができる。従って、排水弁装置1は、シール部材53によるシール性を向上させることができる。
【0081】
受部52は、シール部材53にインサート成形される。これにより、排水弁装置1は、固定部51が受部52に噛合される場合に、受部52の位置ずれを抑制することができる。そのため、たとえば、作業者は、受部52を上方から目視できない場合であっても、固定部51を容易に受部52に噛合させることができる。
【0082】
本実施形態の排水弁装置1においては、便器本体部4と洗浄水タンク部6とが一体的に形成されたワンピースの水洗大便器2に適用した形態について説明したが、このような形態に限られない。たとえば、図7に示すように、便器本体部120と洗浄水タンク部121とが別体として形成されたツーピースの水洗大便器122であってもよい。図7は、ツーピースの水洗大便器122に設けられる排水弁装置123の一部を示す断面図である。
【0083】
ツーピースの水洗大便器122では、洗浄水タンク124と、便器本体部120との間に設けられる環状の第1シール部材125に、受部126が取り付けられる。受部126の外周壁の直径は、洗浄水タンク124の排水口部127の直径よりも大きい。受部126は、洗浄水タンク124の底部124aに当接する。また、洗浄水タンク124の底部124aと、排水部本体128の底部との間に、環状の第2シール部材129が設けられる。
【0084】
ツーピースの水洗大便器122では、洗浄水タンク124の下方に受部126、および、第1シール部材125が配置された状態で、環状の第2シール部材129、および、排水部本体128が洗浄水タンク124に配置される。そして、固定部130が、排水部本体128の挿入孔128a、第2シール部材129、および、洗浄水タンク124の排水口部127に挿入されて、受部126に噛合される。これにより、洗浄水タンク124に排水部本体128が固定される。
【0085】
また、図8に示すように、洗浄水タンク140が水洗大便器141に収容される一体型の水洗大便器141であってもよい。図8は、一体型の水洗大便器141に設けられる排水弁装置142の一部を示す断面図である。
【0086】
一体型の水洗大便器141では、洗浄水タンク140に受部143が形成される。一体型の水洗大便器141では、まず、排水部本体144が洗浄水タンク140に配置される。そして、固定部145が、排水部本体144の挿入孔144aに挿入されて、受部143に噛合される。これにより、洗浄水タンク140に排水部本体144が固定される。
【0087】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1、123、142 排水弁装置
4 便器本体部(便器本体)
8、124、140 洗浄水タンク
10、127 排水口部
50、128、144 排水部本体
51、130、145 固定部
52、126、143 受部
53 シール部材
54 排水弁体
61 排水流路
66 弁座部
70a ねじ部
72 操作部
72a 溝部
75 胴部
75a 湾曲部
76 挟持部
125 第1シール部材
129 第2シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8