(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143275
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】レーダ装置、レーダ制御方法、レーダ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/10 20060101AFI20241003BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20241003BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20241003BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20241003BHJP
【FI】
G01S13/10
G01S7/02 210
G01S13/34
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055859
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】榎並 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊佐治 修
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 友宏
(72)【発明者】
【氏名】井手 康裕
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB09
5J070AB17
5J070AC02
5J070AC07
5J070AC13
5J070AD05
5J070AF03
5J070AH35
(57)【要約】
【課題】メモリの使用量を抑制可能なレーダ装置等を提供する。
【解決手段】レーダ装置の制御ユニットは、特定の受信アンテナにて受信された混合受信信号を取得する取得部と、取得された混合受信信号が各アンテナセットに対応する各符号ごとに復号された複数の復号信号を定義する定義部と、を備える。制御ユニットは、復号前の混合受信信号における各アンテナセットに対応する受信信号成分を、それぞれ対応する復号信号から推定する推定部を備える。制御ユニットは、混合受信信号から、対象とするアンテナセット以外のアンテナセットからの送信信号に対応した受信信号成分を、除去する除去部を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の送信アンテナ(TX)と、
前記送信アンテナから送信される異なる符号により変調された複数種類の送信信号を、生成する送信信号生成ユニット(2)と、
反射物にて反射された各前記送信信号が混合した混合受信信号を受信する受信アンテナ(RX)と、
前記混合受信信号を処理する制御ユニット(100)と、
を備え、
前記制御ユニットは、
特定の前記受信アンテナにて受信された前記混合受信信号を取得する取得部(110)と、
取得された前記混合受信信号が各前記符号ごとに復号された複数の復号信号を定義する定義部(120)と、
復号前の前記混合受信信号における各前記送信信号に対応する受信信号成分を、それぞれ対応する前記復号信号から推定する推定部(130)と、
前記混合受信信号から、対象とする前記送信信号以外の前記送信信号に対応した前記受信信号成分を、除去する除去部(140)と、
を備えるレーダ装置。
【請求項2】
前記送信アンテナを複数備え、
前記送信信号生成ユニットは、少なくとも1つ以上の前記送信アンテナを含む複数のアンテナセットごとに異なる前記符号により変調された複数種類の前記送信信号を、各前記送信アンテナについて生成する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
各前記アンテナセットは、それぞれ1つの前記送信アンテナである請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
各前記アンテナセットは、それぞれ複数の前記送信アンテナのセットである請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記送信信号生成ユニットは、1つの前記送信アンテナに対して、異なる前記符号により変調された複数の前記送信信号が混合された前記送信信号を生成する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記定義部は、複数の前記復号信号を周波数スペクトルに変換し、
前記推定部は、
前記周波数スペクトルからピークを抽出し、前記ピークの逆フーリエ変換により定義される変換信号に対する前記符号の乗算により、前記受信信号成分を推定することを含む請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記定義部は、複数の前記復号信号を周波数スペクトルに変換し、
前記推定部は、
前記周波数スペクトルにおけるピークに関するピーク情報を取得し、前記ピーク情報に応じた正弦波信号に対する前記符号の乗算により、前記受信信号成分を推定することを含む請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記定義部は、複数の前記復号信号を周波数スペクトルに変換し、
各符号に対応する前記周波数スペクトルのピーク情報と、前記ピーク情報に応じて推定された前記受信信号成分と、を記憶媒体(101)に記憶する記憶部(150)をさらに備え、
前記記憶部は、前記ピーク情報を、前記受信信号成分の推定後に前記記憶媒体から消去する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記定義部は、複数の前記復号信号を周波数スペクトルに変換し、
各符号に対応する前記周波数スペクトルのピーク情報と、前記ピーク情報に応じて推定された前記受信信号成分と、を記憶媒体(101)に記憶する記憶部(150)をさらに備え、
前記記憶部は、前記ピーク情報を、前記除去部による前記混合受信信号からの前記受信信号成分の除去まで保持する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項10】
前記定義部は、複数の前記復号信号を周波数スペクトルに変換し、
前記推定部は、
前記復号信号の前記周波数スペクトルへの変換における窓関数の影響を補正する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項11】
前記定義部は、復号前に矩形窓以外の窓関数を適用された前記復号信号を周波数スペクトルに変換し、前記復号信号の前記周波数スペクトルへの変換においては前記矩形窓を適用する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項12】
1つ以上の送信アンテナ(TX)と、前記送信アンテナから送信される異なる符号により変調された複数種類の送信信号を、生成する送信信号生成ユニット(2)と、反射物にて反射された各前記送信信号が混合した混合受信信号を受信する受信アンテナ(RX)を備えるレーダ装置(1)を制御するために、プロセッサ(102)により実行されるレーダ制御方法であって、
特定の前記受信アンテナにて受信された前記混合受信信号を取得することと、
取得された前記混合受信信号が各前記符号ごとに復号された複数の復号信号を定義することと、
復号前の前記混合受信信号における各前記送信信号に対応する受信信号成分を、それぞれ対応する前記復号信号から推定することと、
前記混合受信信号から、対象とする前記送信信号以外の前記送信信号に対応した前記受信信号成分を、除去することと、
を含むレーダ制御方法。
【請求項13】
1つ以上の送信アンテナ(TX)と、前記送信アンテナから送信される異なる符号により変調された複数種類の送信信号を、生成する送信信号生成ユニット(2)と、反射物にて反射された各前記送信信号が混合した混合受信信号を受信する受信アンテナ(RX)を備えるレーダ装置(1)を制御するために記憶媒体(101)に記憶され、プロセッサ(102)に実行させる命令を含むレーダ制御プログラムであって、
前記命令は、
特定の前記受信アンテナにて受信された前記混合受信信号を取得させることと、
取得された前記混合受信信号が各前記符号ごとに復号された複数の復号信号を定義させることと、
復号前の前記混合受信信号における各前記送信信号に対応する受信信号成分を、それぞれ対応する前記復号信号から推定させることと、
前記混合受信信号から、対象とする前記送信信号以外の前記送信信号に対応した前記受信信号成分を、除去させることと、
を含むレーダ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置を制御する技術に、関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、擬似ランダム位相変調方式のMIMOレーダが開示されている。こうしたMIMOレーダは、各送信アンテナからそれぞれ異なるCDM符号により変調された送信信号を送信する。MIMOレーダは、受信信号に対して各CDM符号に応じて復号された復号信号スペクトルを生成し、各復号信号スペクトルからサイドローブ信号成分を推定する。MIMOレーダは、推定した各サイドローブ信号成分を、対象とする送信アンテナに対応する復号信号スペクトルから差し引くことで、サイドローブ信号成分を抑制した復号信号スペクトルを、取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、各送信アンテナに対応する各復号信号スペクトルに対して、他の送信アンテナによる各サイドローブ信号成分を差し引くため、符号の数分の復号信号スペクトルと、同数のサイドローブ信号成分と、をメモリに保持する必要がある。したがって、サイドローブ信号成分の抑制処理におけるメモリの使用量が増大し得る。
【0005】
本開示の課題は、メモリの使用量を抑制可能なレーダ装置を、提供することにある。本開示の別の課題は、メモリの使用量を抑制可能なレーダ制御方法を、提供することにある。本開示のまた別の課題は、メモリの使用量を抑制可能なレーダ制御プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、1つ以上の送信アンテナ(TX)と、
送信アンテナから送信される異なる符号により変調された複数種類の送信信号を、生成する送信信号生成ユニット(2)と、
反射物にて反射された各送信信号が混合した混合受信信号を受信する受信アンテナ(RX)と、
混合受信信号を処理する制御ユニット(100)と、
を備え、
制御ユニットは、
特定の受信アンテナにて受信された混合受信信号を取得する取得部(110)と、
取得された混合受信信号が各符号ごとに復号された複数の復号信号を定義する定義部(120)と、
復号前の混合受信信号における各送信信号に対応する受信信号成分を、それぞれ対応する復号信号から推定する推定部(130)と、
混合受信信号から、対象とする送信信号以外の送信信号に対応した受信信号成分を、除去する除去部(140)と、
を備えるレーダ装置である。
【0008】
本開示の第二態様は、1つ以上の送信アンテナ(TX)と、送信アンテナから送信される異なる符号により変調された複数種類の送信信号を、生成する送信信号生成ユニット(2)と、反射物にて反射された各送信信号が混合した混合受信信号を受信する受信アンテナ(RX)を備えるレーダ装置(1)を制御するために、プロセッサ(102)により実行されるレーダ制御方法であって、
特定の受信アンテナにて受信された混合受信信号を取得することと、
取得された混合受信信号が各符号ごとに復号された複数の復号信号を定義することと、
復号前の混合受信信号における各送信信号に対応する受信信号成分を、それぞれ対応する復号信号から推定することと、
混合受信信号から、対象とする送信信号以外の送信信号に対応した受信信号成分を、除去することと、
を含む。
【0009】
本開示の第三態様は、1つ以上の送信アンテナ(TX)と、送信アンテナから送信される異なる符号により変調された複数種類の送信信号を、生成する送信信号生成ユニット(2)と、反射物にて反射された各送信信号が混合した混合受信信号を受信する受信アンテナ(RX)を備えるレーダ装置(1)を制御するために記憶媒体(101)に記憶され、プロセッサ(102)に実行させる命令を含むレーダ制御プログラムであって、
命令は、
特定の受信アンテナにて受信された混合受信信号を取得させることと、
取得された混合受信信号が各符号ごとに復号された複数の復号信号を定義させることと、
復号前の混合受信信号における各送信信号に対応する受信信号成分を、それぞれ対応する復号信号から推定させることと、
混合受信信号から、対象とする送信信号以外の送信信号に対応した受信信号成分を、除去させることと、
を含む。
【0010】
これら第一~第三態様によると、復号信号から推定された受信信号成分が、復号される前の混合受信信号から除去される。故に、受信信号成分の除去が完了するまでに、混合受信信号を記憶しておけばよく、符号と同数分の復号信号の周波数スペクトルを記憶する必要性が低くなる。したがって、メモリの使用量が抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一実施形態のレーダ装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】第一実施形態による制御ユニットの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】第一実施形態による送信信号の一例を示すグラフである。
【
図4】受信信号成分の推定の概要を示す概略図である。
【
図5】第一実施形態におけるレーダ制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】第一実施形態におけるレーダ制御方法を示すフローチャートである。
【
図7】サイドローブ抑制を実行する場合と実行しない場合におけるダイナミックレンジを示すグラフである。
【
図8】第二実施形態におけるレーダ制御方法を示すフローチャートである。
【
図9】第三実施形態におけるレーダ制御方法を示すフローチャートである。
【
図10】第四実施形態におけるレーダ制御方法を示すフローチャートである。
【
図11】第五実施形態におけるレーダ制御方法を示すフローチャートである。
【
図12】第六実施形態における符号化処理を概念的に示す概略図である。
【
図13】第六実施形態におけるレーダ制御方法を示すフローチャートである。
【
図14】他の実施形態におけるレーダ制御方法を示すフローチャートである。
【
図15】他の実施形態におけるレーダ制御方法を示すフローチャートである。
【
図16】他の実施形態におけるレーダ装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態を図面に基づき複数説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。また、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0013】
(第一実施形態)
本開示の第一実施形態に関して、
図1~
図7を用いて説明する。レーダ装置1は、例えば車両等の移動体に搭載される。レーダ装置1は、送信信号Stを外界へ送信し、物体で反射された送信信号Stを受信信号Srとして受信し、送信信号Stを反射した物体である物標までの距離、物標との相対速度及び物標の方位等を、物標情報として検出する。
【0014】
レーダ装置1から出力された物標情報は、例えばCAN(Control Area Network(登録商標))、及びEthernet(登録商標)などの車載ネットワークを介して車載ECU(Electronic control unit)に入力される。車載ECUは、取得した各物標の物標情報に基づいて、車両の自動運転や高度運転支援のための各種処理を実行する。
【0015】
物標情報に基づく処理としては、例えば衝突回避処理、警告処理等がある。衝突回避処理は、各物標の物標情報に基づいて、ブレーキシステムやステアリングシステム等を制御することにより、物標との衝突を回避するための車両制御を行う処理である。警告処理は、各物標の物標情報に基づいて、物標との衝突可能性を運転者に警告する処理である。
【0016】
本実施形態のレーダ装置1は、
図1に示すように、送信信号生成ユニット2、複数の送信回路3、複数の送信アンテナTX、複数の受信アンテナRX、複数の受信回路4、及び制御ユニット100を備えている。レーダ装置1は、複数の送信アンテナTXから送信信号を送信することにより、受信アンテナRXの本数を実本数以上に擬似的に増加させる、所謂MIMO(Multiple-Input-Multiple-Output)方式のレーダである。
【0017】
送信信号生成ユニット2は、制御ユニット100からの制御信号を取得し、当該制御信号に応じて変調された信号を生成する。この生成信号は、例えば、周波数が時間変化する所謂チャープ信号である(
図3参照)。生成信号は、送信回路3及び受信回路4の各チャネルに分配されて出力される。信号生成ユニットは、各送信アンテナTXに対応する送信チャネルごとに、異なる符号による擬似ランダムな位相変調を付与された生成信号を、送信信号として出力する。こうした変調方式は、符号分割多重化(CDM: Code Division Multiplex)とも称される。尚、
図3に示すように、本実施形態において、異なる送信アンテナTXから送信される送信信号は、チャープの送信時刻、中心周波数及び周波数帯域が実質同一であるとする。尚、
図3では、異なる送信アンテナTXから送信される送信信号を、異なる線種、すなわち実線と破線とで表している。
【0018】
すなわち本実施形態では、複数の送信アンテナTXのそれぞれから、互いに異なる符号による位相変調を付与された送信信号が、外界へと送信される。尚、送信信号に対して、生成信号のうち受信回路4へと出力される信号を、以下においてローカル信号と表記する。
【0019】
送信回路3及び受信回路4は、それぞれMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)等の半導体集積回路装置を主体に構成されている。送信回路3は、送信アンテナTXと接続され、送信アンテナTXに対して送信信号を出力する。送信回路3は、接続された送信アンテナTXと同数の増幅器30を備えている。増幅器30は、送信信号生成ユニット2から出力された送信信号を増幅して、それぞれ対応する送信アンテナTXに対して出力する。
【0020】
送信アンテナTXは、送信信号生成ユニット2から供給された送信信号としての電気信号を、電波信号へと変換して外界へと送信する。本実施形態においては、送信アンテナTXが12本設けられているとする。尚、以下において、各送信アンテナTXを個別に区別する場合、送信アンテナTXn(nは1~12の自然数)と表記する。送信アンテナTXは、少なくとも1つ以上のアンテナ素子を含んで構成されている。例えば、送信アンテナTXは、平板形状の複数のアンテナ素子を備えるパッチアンテナである。アンテナ素子は、地板が一方の面に設けられた誘導体基板における地板とは反対側の面に、地板と対向するように配置されている。複数のアンテナ素子は、電気信号を供給する給電線により、例えば直列に接続されている。
【0021】
受信アンテナRXは、外界における反射物としてのターゲットにて反射された送信信号を含む電波信号を、受信信号として受信する。複数の受信アンテナRXのそれぞれは、複数の送信アンテナTXからの各送信信号に対応する受信信号が混合された状態の信号を受信することになる。以下において、各受信アンテナRXにて受信されるこの混合された状態の信号を、混合受信信号と表記する。そして、混合受信信号にて混合された、複数の送信アンテナTXからの各送信信号に対応する各受信信号の成分を、受信信号成分と表記する。
【0022】
受信アンテナRXは、電波信号としての受信信号を、電気信号へと変換して対応する受信回路4に出力する。受信アンテナRXは、例えば送信アンテナTXと同様に、少なくとも1つ以上のアンテナ素子が給電線により直列に接続された、パッチアンテナとされる。
【0023】
受信回路4は、受信アンテナRXと接続され、受信アンテナRXにて受信された受信信号を取得する。受信回路4は、接続された受信アンテナRXと同数の増幅器40及び信号混合部41を備えている。
【0024】
増幅器40は、受信アンテナにて受信された受信信号を増幅し、信号混合部41へと出力する。信号混合部41は、送信信号生成ユニット2からのローカル信号と受信信号とが混合されたビート信号を生成する。生成されるビート信号は、受信信号とローカル信号との周波数差分を表す干渉信号となる。ビート信号は、図示しないローパスフィルタによって受信信号とローカル信号との周波数差分から外れる高域成分をフィルタリングされた状態で、制御ユニット100へと出力される。
【0025】
制御ユニット100は、例えばLAN(Local Area Network)回線、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち、少なくとも一種類を介して信号生成ユニット及び受信回路に接続されている。制御ユニット100は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成されている。
【0026】
制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、特定のレーダ装置1の制御に特化したレーダECU(Electronic Control Unit)であってもよい。制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、移動体に搭載された複数のレーダ装置1を統括して制御するレーダ統括ECUであってもよい。制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、レーダ装置1と、LiDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)等の他センサとを含む複数センサを統括して制御するセンサ統括ECUであってもよい。
【0027】
制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、メモリ101とプロセッサ102とを、少なくとも一つずつ有している。メモリ101は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。ここで記憶とは、ホスト車両Aの起動オフによってもデータが保持される蓄積であってもよいし、ホスト車両Aの起動オフによりデータが消去される一時的な格納であってもよい。プロセッサ102は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU、DFP(Data Flow Processor)、及びGSP(Graph Streaming Processor)等のうち、少なくとも一種類をコアとして含んでいる。
【0028】
制御ユニット100においてプロセッサ102は、レーダ装置1を制御するためにメモリ101に記憶された、レーダ制御プログラムに含まれる複数の命令を実行する。これにより制御ユニット100は、レーダ装置1を制御するための機能ブロックを、複数構築する。制御ユニット100において構築される複数の機能ブロックには、
図2に示すように取得ブロック110、定義ブロック120、推定ブロック130、除去ブロック140、記憶ブロック150及び出力ブロック160が含まれている。尚、上記の各機能ブロックは、機能部として、それぞれ取得部、定義部、推定部、除去部、記憶部及び出力部と称することもできる。
【0029】
これらのブロック110,120,130,140,150,160の共同により、制御ユニット100がレーダ装置1を制御するレーダ制御方法は、
図5,6に示すレーダ制御フローに従って実行される。本レーダ制御フローは、レーダ装置1の起動中に繰り返し実行される。尚、本レーダ制御フローにおける各「S」は、レーダ制御プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。
【0030】
まず、S10では、取得ブロック110が、混合受信信号を取得する。混合受信信号は、信号生成ユニットからのローカル信号と受信アンテナRXからの受信信号とが混合されたビート信号である。ビート信号は、受信信号とローカル信号との周波数差分を表す干渉信号である。混合受信信号は、A/D変換器にて所定の時間間隔でサンプリングされたデジタル化されたデジタル信号として取得される。
【0031】
続くS20では、定義ブロック120が、混合受信信号に対して高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)処理を実行する。これにより、定義ブロック120は、混合受信信号の距離スペクトルを取得する。取得される距離スペクトルは、反射物までの距離に応じたピークを示す周波数スペクトルであり、距離に対応するビン(距離ビン)ごとの信号強度情報を含む離散的な信号データであるため、距離ビン信号Rとも表記できる。ここで、送信アンテナTXnからの送信信号に由来する、符号C
txnにて符号化される受信信号成分をP
nとする。復号前の距離ビン信号Rは、各送信アンテナTXからの復号前の受信信号成分C
txnP
nの総和として、以下の数式(1)にて定義できる。
【数1】
【0032】
S30では、記憶ブロック150が、距離ビン信号Rをメモリ101に記憶する。以下において、対象送信アンテナ以外の送信アンテナから送信された送信信号に由来する受信信号成分を、この距離ビン信号Rから除去する処理が、実行される。
【0033】
S40では、定義ブロック120が、距離ビン信号Rに応じた復号信号を定義する。具体的には、定義ブロック120は、各送信アンテナTXに対応する符号ごとに、距離ビン信号Rを当該符号にて復号した復号信号を生成する。S40の処理においては、定義ブロック120は、S40~S90におけるループ処理での1回のループにつき、任意の1つの符号に関する復号信号を生成するものとする。
【0034】
例えば、送信アンテナTX1が対象送信アンテナであるとする。この場合S30における定義ブロック120は、他の送信アンテナTX2~TX12のいずれかに対応する符号C
tx2~C
tx12のうち前回のループまでで復号を行っていない符号について、復号を実行する。例えば、特定の符号C
txnについて復号を行うとする場合、復号信号は、C
txnによる位相変調を復号するための係数C
txn
*を用いて、以下の数式(2)にて表される。ここで、係数C
txn
*は、C
txnに乗算することで1となる係数である。
【数2】
【0035】
続くS50では、定義ブロック120が、復号信号に対して高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)処理を実行する。これにより、定義ブロック120は、混合受信信号の周波数スペクトルを取得する。この周波数スペクトルは、反射物の速度に応じたピークを示す速度スペクトルであり、速度に対応するビン(速度ビン)ごとの信号強度情報を含む離散的な信号データである。尚、定義ブロック120は、高速フーリエ変換処理において、距離ビン信号Rに対して窓関数を乗算する。この処理において、定義ブロック120は、矩形関数(矩形窓)以外の関数を、窓関数として利用する。矩形関数以外の窓関数は、例えばハニング関数やガウス関数等である。すなわち、本実施形態においては、2回目のFFT処理に際し、復号後に窓関数が適用される。
【0036】
以上の数式(2)において、k=nの場合はPnの係数が1となるため、
図4に示すように、速度スペクトルは、ピークPnと、他の項によるスペクトルが拡散した状態とを合わせたものとなる。
【0037】
そして、S60では、S30にて復号を行った符号に対応する送信アンテナTXからの送信信号に対応する受信信号成分CtxnPnを推定する。
【0038】
詳記すると、
図6のS61では、推定ブロック130が、S50にて取得された周波数スペクトルにおけるピークを検出する。復号信号RC
txn
*の場合、ピーク検出は、数式(2)におけるP
nを検出することに相当する。続いてS62では、検出されたピークに関するピーク情報を、メモリ101に記憶する。ピーク情報は、例えば、ピークの位相及び振幅の情報を少なくとも含んでいる。次に、S63では、推定ブロック130が、周波数スペクトルから、ピーク以外の信号強度をゼロに置き換えたスペクトル(置換スペクトル)を生成する。
【0039】
続くS64では、推定ブロック130が、置換スペクトルに対する逆フーリエ変換処理を実行する。これにより、距離スペクトルとしての推定信号Pn^が、取得される。推定信号Pn^は、送信アンテナTXnからの送信信号に対応する、符号化前の受信信号成分Pnについて推定した信号である。そして、S65では、推定ブロック130が、推定信号Pnに対して対応する符号Ctxnを乗算する。これにより、推定ブロック130は、距離ビン信号RにおけるCtxnPnに相当する、符号化推定信号CtxnPn^を、送信アンテナTXnからの送信信号に対応する受信信号成分として、取得する。
【0040】
図5に戻り、S70では、記憶ブロック150が、メモリ101からピーク情報を消去し、推定した受信信号成分を記憶する。そしてS80では、除去ブロック140が、送信アンテナTXnからの送信信号に対応する受信信号成分として推定した、符号化推定信号C
txnP
n^を、距離ビン信号Rから除去する。
【0041】
S90では、除去ブロック140は、距離ビン信号Rから、対象送信アンテナ以外の送信アンテナTXからの送信信号に対応する受信信号成分を、全て除去完了したか否かを判定する。除去完了していない場合には、本フローはS40へと戻り、推定されていない受信信号成分について推定するための次のループ処理を実行する。
【0042】
一方で、対象送信アンテナ以外の送信アンテナTXからの送信信号に対応する受信信号成分を、全て除去完了したと判定されると、本フローはS100へと移行する。ここで、対象とする送信アンテナTXm以外の送信アンテナTXからの送信信号に対応する受信信号成分が全て除去されることは、対象とする送信アンテナTXmについての距離ビン信号Rmが、距離ビン信号Rから分離されたことに対応する。距離ビン信号Rmは、以下に示す数式(3)にて表すことができる。
【数3】
【0043】
S100では、定義ブロック120が、除去済みの距離ビン信号Rmから、復号信号を定義する。続くS110では、定義ブロック120が、復号信号から周波数スペクトルを取得する。そして、S120は、出力ブロック160が、周波数スペクトルからターゲット情報を取得する。ターゲット情報は、ターゲットの距離、速度及び方位の少なくとも一種類を含んでいる。続くS130では、出力ブロック160が、ターゲット情報を外部へと出力する。
【0044】
以上のサイドローブ抑制を実施する場合と、実施しない場合とにおける、ダイナミックレンジPSRの違いについて
図7を参照して説明する。ターゲットを1つ想定した場合、ダイナミックレンジPSRは、当該ターゲットのピークの最大値からサイドローブまでの比率として、表すことができる。サイドローブ抑制処理を実行しない場合、このダイナミックレンジPSRは、送信信号の総チャープ数をNc、CDM符号にて変調されている送信アンテナの本数をNtxとすると、以下の数式(4)に示す関係を満たす。
(数4)
PSR≒10log10(Nc)+10log10(Ntx-1)
【0045】
一方で、本実施形態に示すサイドローブ抑制処理を実行する場合、ダイナミックレンジPSRは、以下の数式(5)に示す関係を満たす。
(数5)
PSR>10log10(Nc)+10log10(Ntx-1)
【0046】
すなわち、サイドローブ抑制を実行するレーダ装置1では、実行しないレーダ装置1よりも、ダイナミックレンジPSRが大きくなる。
【0047】
以上の第一実施形態によれば、復号信号から推定された受信信号成分が、復号される前の混合受信信号から除去される。故に、受信信号成分の除去が完了するまでに、混合受信信号を記憶しておけばよく、符号と同数分の復号信号の周波数スペクトルを記憶する必要性が低くなる。したがって、メモリの使用量が抑制可能となる。
【0048】
(第二実施形態)
図8に示すように第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0049】
第二実施形態において、S60にて受信信号成分が推定されると、本フローはS75へと移行する。S75では、記憶ブロック150が、受信信号成分をメモリ101に記憶する。ここで、記憶ブロック150は、S62にて記憶したピーク情報を消去することなく、メモリ101にて保持された状態を維持する。S75の後、本フローはS80へと移行する。
【0050】
S80における受信信号成分の除去処理の後、本フローはS85へと移行する。S85では、記憶ブロック150が、除去した受信信号成分について、メモリ101から消去する。尚、S85においても、記憶ブロック150は、ピーク情報を維持する。S85の後、本フローはS90へと移行する。
【0051】
(第三実施形態)
図9に示すように第三実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0052】
第三実施形態において、
図9に示すように、S62にてピーク情報が記憶されると、本フローはS63aへと移行する。S63aでは、推定ブロック130が、ピーク情報に応じた正弦波信号を定義する。
【0053】
具体的には、推定ブロック130は、ピークの位相及び振幅に応じて、ピークに対応する正弦波信号を規定する。例えば、推定ブロック130は、正弦波信号を、メモリ101等に予め格納された基礎となる正弦波の信号である基礎信号に対する位相及び振幅の乗算結果として定義する。又は、推定ブロック130は、正弦波信号を、メモリ101等に予め格納された基礎となる正弦波の信号である基礎信号に対するピークの振幅の乗算と、ピークの位相に応じた基礎信号の位相調整結果として定義してもよい。S63aの後に、本フローはS65へと移行し、推定ブロック130は、正弦波信号に対する符号の乗算結果として、受信信号成分を定義する。
【0054】
(第四実施形態)
図10に示すように第四実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0055】
第四実施形態において、S65の後に、
図10に示すフローはS66へと移行する。S66では、推定ブロック130が、符号化推定信号C
tx2P
2^に対する窓関数の影響の補正を実行する。具体的には、推定ブロック130は、窓関数の逆数を乗算する。推定ブロック130は、この補正を行われた後の信号成分を、受信信号成分として定義する。
【0056】
(第五実施形態)
図11に示すように第五実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0057】
第五実施形態において、S20の処理の後、
図11のフローはS25へと移行する。S25では、定義ブロック120が、距離ビン信号Rに対して窓関数を適用する。その後、本フローはS30へと移行する。S40の後に、
図11に示すフローはS50aへと移行する。S50aでは、定義ブロック120は、復号信号に対して矩形窓以外の窓関数を適用することなく、周波数スペクトルへと変換する。換言すれば、定義ブロック120は、矩形窓の適用処理を実行する。尚、矩形窓の適用処理を実行することは、窓関数の適用処理自体を中止することと同等である。
【0058】
以上の第五実施形態によれば、S40~S90のループ処理の前に窓関数が信号に対して適用される。すなわち、2回目のFFT処理に際し、復号前に窓関数が適用される。したがって、速度スペクトルへの変換の度に窓関数の適用処理を実行する必要性を低減できる。
【0059】
(第六実施形態)
図12,13に示すように第六実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0060】
図12に示すように、送信信号生成ユニット2は、複数の送信アンテナTXを含むアンテナセットごとに、異なる符号による変調を付与する。
図12に示す例では、所定の本数の送信アンテナTXを含むn個のアンテナセットごとに、各アンテナセットを構成する各送信アンテナTXからの各送信信号に対して符号C1,C2,…,Cnが、それぞれ付与される。さらに、送信信号生成ユニット2は、アンテナセット内の各送信アンテナTXのそれぞれに対応する送信信号ごとに、位相偏移変調を付与する。尚、位相偏移変調は、速度変調、又は、単に位相変調とも称される。位相偏移変調は、検出されるピークに規定された仮想的な速度を与える変調方式である。
【0061】
この場合、制御ユニット100は、
図13におけるS10~S110の処理において、各アンテナセットの符号ごとに、サイドローブ抑制処理を実行する。すなわち、制御ユニット100は、アンテナセットにおける符号が共通する各送信信号に対応する受信信号が混合された状態で、受信信号成分を推定する。すなわち本実施形態において推定される受信信号成分は、アンテナセット内の各送信アンテナTXからの各送信信号に対応する各受信信号の混合成分である。
【0062】
S110の処理の後、出力ブロック115は、S115にて、アンテナセットにおける各送信信号に対応する各受信信号成分を分離させる。位相変位変調が付与されているため、速度スペクトルは、受信信号成分ごとにそれぞれ異なるピークが検出される。したがって、出力ブロック160は、それぞれ対応する速度ごとに各ピークを分離することで、アンテナセットにおける各送信アンテナから送信される送信信号に対応する受信信号成分ごとの、周波数スペクトルが取得できる。
【0063】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0064】
変形例において、第六実施形態の送信信号生成ユニット2は、位相変位変調の代わりに、振幅変調を送信信号ごとに付与してもよい。この場合、出力ブロック160は、S115にて、アンテナセットにおける各送信信号に対応する各受信信号成分を、当該振幅変調により生じるピークの違い等に基づき分離させる。尚、振幅変調は、送信信号ごとにチャープに時間差が生じるように変調する、所謂時分割多重化(TDM: Time Division Multiplex)を含む。
【0065】
変形例において、制御ユニット100は、対象とする送信アンテナTXからの送信信号に対応する受信信号成分以外の全ての受信信号成分について推定処理を完了した後で、距離ビン信号Rから各受信信号成分を除去してもよい。具体的には、
図14に示すように、S70の後にS76にて推定ブロックが全成分を推定完了したか否かを判定する。推定完了していない場合には本フローがS40へと戻り、推定完了した場合にはS81へと移行する。S81では、除去ブロックが、距離ビン信号Rから推定した各受信信号成分を、除去する。S81の後に、本フローはS100へと移行する。
【0066】
変形例において、制御ユニット100は、ターゲット情報の代わりに周波数スペクトルを外部に出力してもよい。具体的には、
図15に示すように、S110の後に本フローがS140に移行する。S140では、出力ブロックが、S110にて変換された周波数スペクトルを、外部へと出力する。例えば、出力ブロックは、レーダ装置1の外部の車載ECUへと周波数スペクトルを出力する。この場合、出力先の車載ECUにて、ターゲット情報等が取得される。
【0067】
変形例において、レーダ装置1は、
図16に示すように、単一の送信アンテナTXのみを備えていてもよい。この場合、送信信号生成ユニット2は、1つの送信アンテナに対して、異なる符号により変調された複数の送信信号が混合された送信信号を生成する。
【0068】
変形例において、制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの運転制御を統合する、統合ECUであってもよい。制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの運転制御における運転タスクを判断する、判断ECUであってもよい。制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの運転制御を監視する、監視ECUであってもよい。制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの運転制御を評価する、評価ECUであってもよい。
【0069】
変形例において、制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの自己状態量を推定する、ロケータECUであってもよい。制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの走行アクチュエータを制御する、アクチュエータECUであってもよい。制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aにおいて情報提示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、例えばホスト車両Aとの間で通信可能な外部センタ又はモバイル端末等を構築する、ホスト車両A以外のコンピュータであってもよい。
【0070】
変形例において制御ユニット100を構成する専用コンピュータは、デジタル回路及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして有していてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【0071】
変形例において制御ユニット100の適用されるホスト移動体は、例えば自律走行又はリモート走行により荷物搬送若しくは情報収集等の可能な自律装置(autonomous robot)であってもよい。さらに、自律装置(autonomous robot)としては、自律走行車(autonomous vehicle)などを含む自律走行ロボットであってもよい。
【0072】
ここまでの説明形態の他に上述の実施形態及び変形例は、移動体に搭載可能に構成されてプロセッサ102及びメモリ101を少なくとも一つずつ有する制御装置として実施されてもよい。具体的には、上述の実施形態及び変形例は、処理回路(例えば処理ECU等)又は半導体装置(例えば半導体チップ等)の形態で実施されてもよい。
【0073】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0074】
(技術的思想1)
1つ以上の送信アンテナ(TX)と、
前記送信アンテナから送信される異なる符号により変調された複数種類の送信信号を、生成する送信信号生成ユニット(2)と、
反射物にて反射された各前記送信信号が混合した混合受信信号を受信する受信アンテナ(RX)と、
前記混合受信信号を処理する制御ユニット(100)と、
を備え、
前記制御ユニットは、
特定の前記受信アンテナにて受信された前記混合受信信号を取得する取得部(110)と、
取得された前記混合受信信号が各前記符号ごとに復号された複数の復号信号を定義する定義部(120)と、
復号前の前記混合受信信号における各前記送信信号に対応する受信信号成分を、それぞれ対応する前記復号信号から推定する推定部(130)と、
前記混合受信信号から、対象とする前記送信信号以外の前記送信信号に対応した前記受信信号成分を、除去する除去部(140)と、
を備えるレーダ装置。
【0075】
(技術的思想2)
前記送信アンテナを複数備え、
前記送信信号生成ユニットは、少なくとも1つ以上の前記送信アンテナを含む複数のアンテナセットごとに異なる前記符号により変調された複数種類の前記送信信号を、各前記送信アンテナについて生成する技術的思想1に記載のレーダ装置。
【0076】
(技術的思想3)
各前記アンテナセットは、それぞれ1つの前記送信アンテナである技術的思想2に記載のレーダ装置。
【0077】
(技術的思想4)
各前記アンテナセットは、それぞれ複数の前記送信アンテナのセットである技術的思想2に記載のレーダ装置。
【0078】
(技術的思想5)
前記送信信号生成ユニットは、1つの前記送信アンテナに対して、異なる前記符号により変調された複数の前記送信信号が混合された前記送信信号を生成する技術的思想1から技術的思想4のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【0079】
(技術的思想6)
前記定義部は、複数の前記復号信号を周波数スペクトルに変換し、
前記推定部は、
前記周波数スペクトルからピークを抽出し、前記ピークの逆フーリエ変換により定義される変換信号に対する前記符号の乗算により、前記受信信号成分を推定することを含む技術的思想1から技術的思想5のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【0080】
(技術的思想7)
前記定義部は、複数の前記復号信号を周波数スペクトルに変換し、
前記推定部は、
前記周波数スペクトルにおけるピークに関するピーク情報を取得し、前記ピーク情報に応じた正弦波信号に対する前記符号の乗算により、前記受信信号成分を推定することを含む技術的思想1から技術的思想5のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【0081】
(技術的思想8)
前記定義部は、複数の前記復号信号を周波数スペクトルに変換し、
各符号に対応する前記周波数スペクトルのピーク情報と、前記ピーク情報に応じて推定された前記受信信号成分と、を記憶媒体(101)に記憶する記憶部(150)をさらに備え、
前記記憶部は、前記ピーク情報を、前記受信信号成分の推定後に前記記憶媒体から消去する技術的思想1から技術的思想7のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【0082】
(技術的思想9)
前記定義部は、複数の前記復号信号を周波数スペクトルに変換し、
各符号に対応する前記周波数スペクトルのピーク情報と、前記ピーク情報に応じて推定された前記受信信号成分と、を記憶媒体(101)に記憶する記憶部(150)をさらに備え、
前記記憶部は、前記ピーク情報を、前記除去部による前記混合受信信号からの前記受信信号成分の除去まで保持する技術的思想1から技術的思想7のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【0083】
(技術的思想10)
前記定義部は、複数の前記復号信号を周波数スペクトルに変換し、
前記推定部は、
前記復号信号の前記周波数スペクトルへの変換における窓関数の影響を補正する技術的思想1から技術的思想9のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【0084】
(技術的思想11)
前記定義部は、復号前に矩形窓以外の窓関数を適用された前記復号信号を周波数スペクトルに変換し、前記復号信号の前記周波数スペクトルへの変換においては前記矩形窓を適用する技術的思想1から技術的思想9のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【0085】
尚、以上において技術的思想1~11は、レーダ制御方法及びレーダ制御プログラムの形態で実現されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1:レーダ装置、2:送信信号生成ユニット、100:制御ユニット、101:メモリ(記憶媒体)、102:プロセッサ、110:取得ブロック(取得部)、120:定義ブロック(定義部)、130:推定ブロック(推定部)、140:除去ブロック(除去部)、150:記憶ブロック(記憶部)、TX:送信アンテナ、RX:受信アンテナ