(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143276
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241003BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055860
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】徳永 耕亮
(72)【発明者】
【氏名】石川 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】荻原 健太
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA03W
5H770HA07Z
5H770JA10X
5H770JA11W
5H770PA12
5H770PA14
5H770PA17
5H770PA22
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA13
5H770QA28
5H770QA37
(57)【要約】
【課題】放熱性の低下を抑制できる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置4は、インバータ5を構成する半導体モジュール20、半導体モジュール20を両面側から冷却する冷却器30,40、冷却器30,40を連結する連結管50,60を備える。冷却器30は、流路32を規定し、半導体モジュール20と重なる部分に開口部311を有するケース31、開口部311を蓋するようにケース31に配置されたベースプレート331、ベースプレート331から流路32内に延びるピンフィン332を有する。連結管50,60の並び方向において、ベースプレート331の長さが、連結管50,60の外端間の長さよりも短い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換回路(5)を構成する半導体モジュール(20)と、
第1流路(32)を有し、前記半導体モジュールを冷却する第1冷却器(30)と、
第2流路(42)を有し、前記第1冷却器とは反対側から前記半導体モジュールを冷却する第2冷却器(40)と、
前記第1流路と前記第2流路とに連通する第1連結流路(51)を有する第1連結部(50)と、
前記第1流路と前記第2流路とに連通する第2連結流路(61)を有し、前記第1連結部とともに冷媒の一部の迂回経路を提供する第2連結部(60)と、
を備え、
前記第1冷却器は、前記第1流路を規定し、前記半導体モジュールと重なる部分に開口を有するケース(31)と、前記開口を蓋するように前記ケースに配置されたベースプレート(331)と、前記ベースプレートから前記第1流路内に延びるピンフィン(332)と、を有し、
前記第1連結部と前記第2連結部との並び方向において、前記ベースプレートの長さが、前記第1連結部と前記第2連結部との外端間の長さよりも短い、電力変換装置。
【請求項2】
前記ベースプレートの熱伝導率は、前記ケースの熱伝導率よりも高く、
前記ケースの剛性は、前記ベースプレートの剛性よりも高い、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1連結部は、前記迂回経路の冷媒導入口を提供し、
前記第2連結部は、前記迂回経路の冷媒排出口を提供し、
前記第1冷却器は、前記並び方向において前記第1連結部と前記ベースプレートとの間に設けられ、前記ケースの内壁から突出する壁部(38)と、前記第1流路のうち、前記壁部よりも下流側の領域であり、前記ピンフィンが配置された熱交換室(321)と、前記壁部よりも上流側の領域であり、前記第1連結部の前記第1流路が連通する整流室(322)と、を有する、請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電力変換装置を開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第114068450号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の電力変換装置は、2段構造の冷却器を備えている。電力変換装置は、インバータを構成するチップの熱を両面側に放熱する構造を有している。冷却器のケースには、放熱用のフィンが設けられている。特許文献1の構成では、水圧によってケースが外側に撓む、つまり変形する虞がある。ケースが外側に撓むと、フィンとケースとの間の隙間が大きくなり、フィンに当たらずに素通りする冷媒が増えて放熱性が低下する。ケースが変形すると、ケースとチップとの密着性が低下し、熱抵抗が大きくなる。このように、特許文献1の構成では放熱性が低下する虞がある。上記した観点において、または言及されていない他の観点において、電力変換装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、放熱性の低下を抑制できる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された電力変換装置は、
電力変換回路(5)を構成する半導体モジュール(20)と、
第1流路(32)を有し、半導体モジュールを冷却する第1冷却器(30)と、
第2流路(42)を有し、第1冷却器とは反対側から半導体モジュールを冷却する第2冷却器(40)と、
第1流路と第2流路とに連通する第1連結流路(51)を有する第1連結部(50)と、
第1流路と第2流路とに連通する第2連結流路(61)を有し、第1連結部とともに冷媒の一部の迂回経路を提供する第2連結部(60)と、
を備え、
第1冷却器は、第1流路を規定し、半導体モジュールと重なる部分に開口を有するケース(31)と、開口を蓋するようにケースに配置されたベースプレート(331)と、ベースプレートから第1流路内に延びるピンフィン(332)と、を有し、
第1連結部と第2連結部との並び方向において、ベースプレートの長さが、第1連結部と第2連結部との外端間の長さよりも短い。
【0007】
開示の電力変換装置によれば、ベースプレートの長さが、第1連結部と第2連結部との外端間の長さよりも短いため、水圧によるベースプレートの変形を抑制することができる。この結果、放熱性の低下を抑制できる電力変換装置を提供することができる。
【0008】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の回路構成および駆動システムを示す図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る電力変換装置を示す平面図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0011】
本実施形態の電力変換装置は、たとえば、回転電機を駆動源とする移動体に適用される。移動体は、たとえば、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの電動車両、ドローンや電動垂直離着陸機(eVTOL)などの電動飛行体、船舶、建設機械、農業機械である。以下では、車両に適用される例について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、
図1に基づき、車両の駆動システムの概略構成について説明する。
【0013】
<車両の駆動システム>
図1に示すように、車両の駆動システム1は、直流電源2と、モータジェネレータ3と、電力変換装置4を備えている。
【0014】
直流電源2は、充放電可能な二次電池で構成された直流電圧源である。二次電池は、たとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、有機ラジカル電池などである。モータジェネレータ3は、三相交流方式の回転電機である。モータジェネレータ3は、車両の走行駆動源、つまり電動機として機能する。モータジェネレータ3は、回生時に発電機として機能する。電力変換装置4は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で電力変換を行う。
【0015】
<電力変換装置の回路構成>
図1は、電力変換装置4の回路構成を示している。電力変換装置4は、少なくとも電力変換回路を備えている。本実施形態の電力変換回路は、インバータ5である。電力変換装置4は、平滑コンデンサ6、駆動回路7などをさらに備えてもよい。
【0016】
平滑コンデンサ6は、主として、直流電源2から供給される直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサ6は、高電位側の電源ラインであるPライン8と低電位側の電源ラインであるNライン9とに接続されている。Pライン8は直流電源2の正極に接続され、Nライン9は直流電源2の負極に接続されている。平滑コンデンサ6の正極は、直流電源2とインバータ5との間において、Pライン8に接続されている。平滑コンデンサ6の負極は、直流電源2とインバータ5との間において、Nライン9に接続されている。平滑コンデンサ6は、直流電源2に並列に接続されている。
【0017】
インバータ5は、DC-AC変換回路である。インバータ5は、図示しない制御回路によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を三相交流電圧に変換し、モータジェネレータ3へ出力する。これにより、モータジェネレータ3は、所定のトルクを発生するように駆動する。インバータ5は、車両の回生制動時、車輪からの回転力を受けてモータジェネレータ3が発電した三相交流電圧を、制御回路によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、Pライン8へ出力する。このように、インバータ5は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で双方向の電力変換を行う。
【0018】
インバータ5は、三相分の上下アーム回路10を備えて構成されている。上下アーム回路10は、レグと称されることがある。上下アーム回路10は、上アーム10Hと、下アーム10Lをそれぞれ有している。上アーム10Hおよび下アーム10Lは、上アーム10HをPライン8側として、Pライン8とNライン9との間で直列接続されている。
【0019】
上アーム10Hと下アーム10Lとの接続点、すなわち上下アーム回路10の中点は、出力ライン11を介して、モータジェネレータ3における対応する相の巻線3aに接続されている。上下アーム回路10のうち、U相の上下アーム回路10Uは、出力ライン11を介してU相の巻線3aに接続されている。V相の上下アーム回路10Vは、出力ライン11を介してV相の巻線3aに接続されている。W相の上下アーム回路10Wは、出力ライン11を介してW相の巻線3aに接続されている。
【0020】
上下アーム回路10(10U,10V,10W)は、直列回路12を有している。上下アーム回路10が有する直列回路12は、ひとつでもよいし、複数でもよい。複数の場合、直列回路12が互いに並列接続されて、一相分の上下アーム回路10が構成される。本実施形態において、上下アーム回路10のそれぞれは、ひとつの直列回路12を有している。直列回路12は、上アーム10H側のスイッチング素子と下アーム10L側のスイッチング素子とを、Pライン8とNライン9との間で直列接続して構成されている。
【0021】
直列回路12を構成するハイサイド側のスイッチング素子、ローサイド側のスイッチング素子それぞれの数は、特に限定されない。ひとつでもよいし、複数でもよい。本実施形態の直列回路12は、ハイサイド側に2つのスイッチング素子を有し、ローサイド側に2つのスイッチング素子を有している。ハイサイド側の2つのスイッチング素子が並列接続され、ローサイド側の2つのスイッチング素子が並列接続されて、ひとつの直列回路12を構成している。つまり、三相分の上下アーム回路10の6つのアーム10H,10Lのそれぞれが、互いに並列接続された2つのスイッチング素子により構成されている。
【0022】
本実施形態では、各スイッチング素子として、nチャネル型のMOSFET13を採用している。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。並列接続されるハイサイド側の2つのMOSFET13は、共通のゲート駆動信号(駆動電圧)により、互いに同じタイミングでオン駆動、オフ駆動する。並列接続されるローサイド側の2つのMOSFET13は、共通のゲート駆動信号(駆動電圧)により、互いに同じタイミングでオン駆動、オフ駆動する。
【0023】
MOSFET13のそれぞれには、還流用のダイオード14(以下、FWD14と示す)が逆並列に接続されている。MOSFET13の場合、FWD14は、寄生ダイオード(ボディダイオード)でもよいし、外付けのダイオードでもよい。上アーム10Hにおいて、MOSFET13のドレインが、Pライン8に接続されている。下アーム10Lにおいて、MOSFET13のソースが、Nライン9に接続されている。そして、上アーム10HにおけるMOSFET13のソースと、下アーム10LにおけるMOSFET13のドレインが相互に接続されている。FWD14のアノードは対応するMOSFET13のソースに接続され、カソードはドレインに接続されている。
【0024】
なお、スイッチング素子は、MOSFET13に限定されない。たとえばIGBTを採用してもよい。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称である。IGBTの場合にも、FWD14が逆並列に接続される。
【0025】
駆動回路7は、インバータ5などの電力変換回路を構成するスイッチング素子を駆動する。駆動回路7は、制御回路の駆動指令に基づいて、対応するMOSFET13のゲートに駆動電圧を供給する。駆動回路は、駆動電圧の印加により、対応するMOSFET13を駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させる。駆動回路は、ドライバと称されることがある。
【0026】
電力変換装置4は、スイッチング素子の制御回路を備えてもよい。制御回路は、MOSFET13を動作させるための駆動指令を生成し、駆動回路7に出力する。制御回路は、たとえば図示しない上位ECUから入力されるトルク要求、各種センサにて検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。制御回路は、上位ECU内に設けてもよい。
【0027】
各種センサとして、たとえば電流センサ、回転角センサ、電圧センサがある。電力変換装置4は、センサの少なくともひとつを備えてもよい。電流センサは、各相の巻線3aに流れる相電流を検出する。回転角センサは、モータジェネレータ3の回転子の回転角を検出する。電圧センサは、平滑コンデンサ6の両端電圧を検出する。制御回路は、たとえばプロセッサおよびメモリを備えて構成されている。制御回路は、駆動指令として、たとえばPWM信号を出力する。PWMは、Pulse Width Modulationの略称である。
【0028】
電力変換装置4は、電力変換回路として、コンバータを備えてもよい。コンバータは、直流電圧をたとえば異なる値の直流電圧に変換するDC-DC変換回路である。コンバータは、直流電源2と平滑コンデンサ6との間に設けられる。コンバータは、たとえばリアクトルと、上記した上下アーム回路10を備えて構成される。この構成によれば、昇降圧が可能である。電力変換装置4は、直流電源2からの電源ノイズを除去するフィルタコンデンサを備えてもよい。フィルタコンデンサは、直流電源2とコンバータとの間に設けられる。
【0029】
<電力変換装置の構造>
図2は、本実施形態に係る電力変換装置4の一例を示す平面図である。
図2では、便宜上、信号端子や回路基板を省略している。
図2の白抜き矢印は、冷媒の流れる方向を示している。
図3は、
図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図4では、筐体の一部、および、回路基板を省略している。
図4では、
図4の実線矢印は、冷媒の流れを示している。
図5は、放熱部材を示す平面図である。
図5の白抜き矢印も、冷媒の流れる方向を示している。
【0030】
本実施形態の電力変換装置4は、半導体モジュール20、冷却器30,40と、連結管50,60を備えている。電力変換装置4は、
図3に示すように回路基板70を備えてもよい。
【0031】
以下において、半導体モジュール20および冷却器30,40の積層方向をZ方向とする。Z方向に直交し、連結管50,60の並び方向をX方向とする。X方向およびZ方向の両方向に直交する方向をY方向とする。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する位置関係にある。特に断りのない限り、平面形状とは、Z方向から平面視した形状を示す。Z方向からの平面視を、単に平面視と示すことがある。2つの部材の相対位置を説明する際に、Z方向において冷却器30に近い部材の位置を下方、冷却器30に対して遠い部材の位置を上方と示すことがある。まず、各要素の概略構成について説明する。
【0032】
<半導体モジュール>
半導体モジュール20は、上記した上下アーム回路10、つまりインバータ5(電力変換回路)を構成する。本実施形態の電力変換装置4は、3つの半導体モジュール20を備えている。ひとつの半導体モジュール20は、ひとつの直列回路12、つまり一相分の上下アーム回路10を提供する。複数の半導体モジュール20は、上下アーム回路10Uを提供する半導体モジュール20U、上下アーム回路10Vを提供する半導体モジュール20V、および上下アーム回路10Wを提供する半導体モジュール20Wを含む。
【0033】
すべての半導体モジュール20は、互いに共通の構造を有している。各半導体モジュール20は、半導体素子21、封止体22、信号端子23、電源端子24P,24N、および出力端子25などを備えている。
【0034】
半導体素子21は、シリコン(Si)、シリコンよりもバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体などを材料とする半導体基板に、スイッチング素子が形成されてなる。スイッチング素子は、半導体基板の板厚方向に主電流を流すように縦型構造をなしている。ワイドバンドギャップ半導体としては、たとえばシリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンドがある。半導体素子21は、パワー素子、半導体チップなどと称されることがある。
【0035】
一例として本実施形態の半導体素子21は、SiCを材料とする半導体基板に、上記したnチャネル型のMOSFET13およびFWD14が形成されてなる。MOSFET13は、半導体素子21(半導体基板)の板厚方向に主電流が流れるように縦型構造をなしている。半導体素子21は、自身の板厚方向の両面に、図示しない主電極を有している。具体的には、スイッチング素子の主電極として、表面にソース電極を有し、裏面にドレイン電極を有している。ソース電極は、表面の一部分に形成されている。ドレイン電極は、裏面のほぼ全域に形成されている。
【0036】
主電流は、ドレイン電極とソース電極との間に流れる。半導体素子21は、ソース電極の形成面に、信号用の電極である図示しないパッドを有している。半導体素子21は、その板厚方向がZ方向に略平行となるように配置されている。本実施形態の半導体素子21は、直列回路12のハイサイド側のスイッチング素子を提供する2つの半導体素子21Hと、直列回路12のローサイド側のスイッチング素子を提供する2つの半導体素子21Lを含んでいる。半導体素子21H,21Lは、Y方向に並んで配置されている。2つの半導体素子21Hは、X方向に並んで配置されている。同様に、2つの半導体素子21Lは、X方向に並んで配置されている。
【0037】
4つの半導体素子21は、ひとつの直列回路12の4つのスイッチング素子を提供する。半導体モジュール20は、ひとつの直列回路12を構成するスイッチング素子の数に応じた半導体素子21を備える。直列回路12を構成するスイッチング素子が2つの場合、半導体モジュール20は、半導体素子21H,21Lをそれぞれひとつ備える。
【0038】
封止体22は、半導体モジュール20を構成する他の要素の一部を封止している。他の要素の残りの部分は、封止体22の外に露出している。封止体22は、たとえば樹脂を材料とする。封止体22は、たとえばエポキシ系樹脂を材料としてトランスファモールド法により成形されている。封止体22は、たとえばゲルを用いて形成されてもよい。
【0039】
封止体22は、たとえば平面略矩形状をなしている。封止体22は、外郭をなす表面として、一面22aと、Z方向において一面22aとは反対の面である裏面22bを有している。一面22aおよび裏面22bは、たとえば平坦面である。また、一面22aと裏面22bとをつなぐ面である側面22c,22d,22e,22fを有している。側面22cは、Y方向において側面22dとは反対の面である。側面22eは、X方向において側面22fとは反対の面である。
【0040】
信号端子23は、半導体素子21のパッドに電気的に接続された外部接続端子である。信号端子23は、封止体22から外部に突出している。たとえば半導体素子21Hのパッドに接続された信号端子23は、封止体22の側面22cから突出している。半導体素子21Lのパッドに接続された信号端子23は、封止体22の側面22dから突出している。信号端子23は、封止体22の外で屈曲し、冷却器30から離れる方向、つまり上方に延びている。信号端子23は、略L字状をなしている。
【0041】
電源端子24P,24Nおよび出力端子25は、半導体素子21の主電極に電気的に接続された外部接続端子である。このような外部接続端子は、主端子と称されることがある。電源端子24Pは、半導体素子21Hのドレイン電極に電気的に接続されている。電源端子24Nは、半導体素子21Lのソース電極に電気的に接続されている。電源端子24Pは、P端子、高電位電源端子、正極端子などと称されることがある。電源端子24Nは、N端子、低電位電源端子、負極端子などと称されることがある。電源端子24P,24Nは、平滑コンデンサ6に電気的に接続される。電源端子24P,24Nは、封止体22の側面22cから外部に突出している。電源端子24P,24Nそれぞれの突出部分は、X方向に並んで配置されている。
【0042】
出力端子25は、半導体素子21Hのソース電極と半導体素子21Lのドレイン電極との接続点、つまり直列回路12の接続点(中点)に電気的に接続されている。出力端子25は、封止体22の側面22dから外部に突出している。出力端子25は、O端子、出力端子、交流端子などと称されることがある。出力端子25は、たとえば図示しないバスバーを介して、モータジェネレータ3の対応する巻線3aに接続される。外部接続端子は、封止体22の側面22e,22fから突出していない。
【0043】
半導体モジュール20は、上記した要素以外に、配線部材を備えてもよい。配線部材は、半導体素子21の主電極と主端子とを電気的に接続する配線機能を提供する。配線部材は、半導体素子21の熱を放熱する放熱機能を提供する。配線部材は、たとえばZ方向において半導体素子21を挟むように配置される。配線部材としては、絶縁基材の両面に金属体が配置された基板を用いてもよいし、金属部材であるヒートシンクを採用してもよい。ヒートシンクは、たとえばリードフレームの一部として提供される。配線部材の一部を封止体22の一面22aおよび裏面22bの少なくとも一方から露出させてもよい。これにより、放熱性を高めることができる。
【0044】
半導体モジュール20は、裏面22bが後述する放熱部材33のベースプレート331と対向するように、ベースプレート331上に配置されている。半導体モジュール20とベースプレート331との間には、必要に応じてセラミック板などの電気絶縁部材が配置されてもよいし、TIMなどの熱伝導部材が配置されてもよい。TIMは、Thermal Interface Materialの略称である。
【0045】
図2に示すように、3つの半導体モジュール20は、X方向に並んでいる。つまり、複数の半導体モジュール20は、X方向に沿って横並びで配置されている。3つの半導体モジュール20は、たとえば半導体モジュール20U、半導体モジュール20V、半導体モジュール20Wの順に並んでいる。X方向において、隣り合う半導体モジュール20の側面同士が、所定の間隔を有して対向している。具体的には、半導体モジュール20Uの側面22fと半導体モジュール20Vの側面22eとが対向し、半導体モジュール20Vの側面22fと半導体モジュール20Wの側面22eとが対向している。
【0046】
<下段冷却器>
冷却器30は、半導体モジュール20を裏面22b側から冷却する。冷却器30は、半導体モジュール20に対して下方に配置されている。冷却器30は、ケース31を備えている。ケース31は、冷媒80が流れる流路32を規定している。ケース31は、アルミニウムなどの金属材料を用いて形成されている。ケース31は、後述の放熱部材33よりも高剛性の材料を用いて形成されている。一例として本実施形態のケース31は、AlSiCu合金であるADC12を用いて形成されている。
【0047】
流路32は、半導体モジュール20を効果的に冷却するように、平面視において半導体モジュール20それぞれの少なくとも一部と重なるように設けられている。一例として本実施形態の流路32は、平面視において半導体モジュール20それぞれの大部分を内包するように設けられている。流路32は、3つの半導体モジュール20の並び方向、つまりX方向に沿って延びている。なお、冷媒80としては、たとえば水やアンモニアなどの相変化する冷媒や、エチレングリコール系などの相変化しない冷媒を用いることができる。
【0048】
ケース31は、平面視において半導体モジュール20と重なる位置に、開口部311を有している。開口部311は、流路32を規定する壁部のうち、半導体モジュール20との対向壁に設けられている。開口部311は、対向壁を貫通している。開口部311は、たとえばX方向を長手方向とする平面略矩形状を有している。ケース31の開口部311には、放熱部材33が配置されている。
【0049】
放熱部材33は、ベースプレート331と、複数のピンフィン332を有している。放熱部材33は、ケース31よりも熱伝導率に優れる金属材料、たとえばアルミニウム合金の中でも熱伝導率に優れるものを用いて形成されている。一例として本実施形態の放熱部材33は、AlMgSi合金であるA6063を用いて形成されている。放熱部材33は、平面視において半導体モジュール20と重なるように配置されている。
【0050】
ベースプレート331は、ケース31の開口部311を閉塞するように配置されている。ベースプレート331は、たとえばX方向を長手方向とする平面略矩形状を有している。ベースプレート331の周縁部は、摩擦撹拌接合などにより、ケース31の外面の開口縁部に液密に接合されている。これにより、開口部311を通じて冷媒80が流路32の外に漏れるのを抑制することができる。ベースプレート331は、ケース31とともに流路32を規定している。ベースプレート331とケース31との接合部分であるシール部34は、液密にシールしている。
【0051】
ピンフィン332は、
図3、
図4、および
図5に示すようにピン型のフィンである。ピンフィン332は、ベースプレート331に対して、連続して一体的に設けられてもよいし、接合によって一体的に設けられてもよい。ピンフィン332は、開口部311を通じて、流路32に配置されている。ピンフィン332は、ベースプレート331から突出している。複数のピンフィン332は、ベースプレート331の一面からZ方向に延びている。ピンフィン332は、Z方向に所定の長さを有している。ピンフィン332は、平面略円形、略楕円形などを有している。複数のピンフィン332は、Y方向において所定のピッチを有して設けられている。複数のピンフィン332は、X方向において所定のピッチを有して設けられている。
【0052】
冷却器30のケース31は、ケース31単体で提供されてもよいし、電力変換装置4の他の要素を収容する筐体の一部分として提供されてもよい。一例として本実施形態のケース31は、筐体35の一部分として提供される。ケース31は、筐体35の底壁351の一部分として提供される。筐体35は、他の要素を収容すべく開口を有している。筐体35は、底壁351と、底壁351に連なり、底壁351とともに収容空間を規定する側壁352を有している。一例として本実施形態の筐体35は、一面が開口する箱状をなしている。筐体35は、Z方向の平面視において略矩形状をなしている。筐体35の収容空間には、半導体モジュール20、冷却器40、回路基板70などが配置されている。
【0053】
筐体35には、冷却器30,40に冷媒を供給するための導入管36と、冷却器30,40から冷媒を排出するための排出管37が取り付けられている。導入管36および排出管37は、対応する貫通孔(図示略)を挿通し、筐体35の内外にわたって配置されている。導入管36および排出管37それぞれの取り付け位置は、特に限定されない。底壁351に取り付けてもよいし、側壁352に取り付けてもよい。導入管36および排出管37を、互いに共通の面に取り付けてもよいし、異なる面に取り付けてもよい。一例として本実施形態では、X方向において互いに対向する壁部のひとつに導入管36が取り付けられ、壁部の他のひとつに排出管37が取り付けられている。
【0054】
ケース31を含む筐体35は、単一の部材により構成されてもよいし、複数の部材を組み合わせて構成されてもよい。筐体35の底壁351は、その一部分において複数の部材を組み合わせ、他の部分において単一の部材により構成されてもよい。電力変換装置4は、筐体35の開口を閉塞する図示しないカバー(蓋)を備えてもよい。
【0055】
<上段冷却器>
冷却器40は、半導体モジュール20を一面22a側から冷却する。冷却器40は、半導体モジュール20に対して上方に配置されている。冷却器40は、半導体モジュール20の一面22a上に配置されている。冷却器40と半導体モジュール20との間には、必要に応じてセラミック板などの電気絶縁部材が配置されてもよいし、TIMなどの熱伝導部材が配置されてもよい。冷却器40は、Z方向において冷却器30とは反対側から半導体モジュール20を冷却する。
【0056】
冷却器40は、ケース41を備えている。ケース41は、冷媒80が流れる流路42を規定している。ケース41は、アルミニウムなどの金属材料を用いて形成されている。Z方向において、冷却器40は、冷却器30よりも薄い。冷却器40は、たとえば全体として扁平形状の管状体となっている。冷却器40は、たとえば一対のプレート(金属製薄板)を用いて内部に流路を有するように構成されている。一対のプレートの少なくとも一方を、プレス加工によってZ方向に膨らんだ形状に加工する。その後、一対のプレートの外周縁部同士を、かしめなどによって固定するとともに、ろう付けなどによって全周で互いに接合する。これにより、一対のプレート間に冷媒80が流通可能な流路42が形成される。
【0057】
流路42は、半導体モジュール20を効果的に冷却するように、平面視において半導体モジュール20それぞれの少なくとも一部と重なるように設けられている。本実施形態の流路42は、平面視において半導体モジュール20それぞれの大部分と重なるように設けられている。流路42は、3つの半導体モジュール20の並び方向、つまりX方向に沿って延びている。流路42は、3つの半導体モジュール20をX方向に横切っている。平面視において、流路42は、流路32に内包されている。流路42の延設長さは、流路32の延設長さよりも短い。
【0058】
冷却器40は、フィンを備えてもよい。一例として本実施形態の冷却器40は、フィン43を備えている。フィン43は、一対のプレートによるケース41内、つまり流路42に配置されている。フィン43は、平面視において半導体モジュール20と重なるように配置されている。フィン43は、たとえばウェーブ型(波型)のフィンである。フィン43は、Z方向において所定の高さを有している。フィン43の高さは、ピンフィン332の高さ(長さ)よりも低い。図示を省略するが、複数のフィン43は、Y方向において所定のピッチを有して設けられている。
【0059】
冷却器40は、半導体モジュール20を介して冷却器30に積層配置されている。冷却器40は、図示しない加圧部材によって、半導体モジュール20とは反対側の面からZ方向に押圧されてもよい。押圧により、冷却器40と半導体モジュール20、および、半導体モジュール20と冷却器30のそれぞれが、熱伝導良好に保持される。加圧部材は、たとえば加圧プレートと、弾性部材を含んでもよい。弾性部材は、たとえばゴムなどの弾性変形により加圧力を発生するものや金属製のばねである。弾性部材は、Z方向において加圧プレートと冷却器40との間に配置される。加圧プレートを筐体35に対して所定位置に固定することにより弾性部材が弾性変形する。弾性変形の反力により冷却器40および半導体モジュール20は、冷却器30に押し付けられる。
【0060】
<連結管>
連結管50,60は、冷却器30と冷却器40を連結する。連結管50は、導入管36が連結されていない流路に冷媒80を供給する。連結管60は、排出管37が連結されていない流路から冷媒80を排出する。一例として本実施形態の連結管50は、導入管36を通じて冷却器30に供給された冷媒80の一部を、冷却器40に供給する。連結管60は、冷却器40を流れた冷媒80を、冷却器30を介して排出管37から排出する。
【0061】
連結管50は、流路32,42に連通する連結流路51を有している。連結管60は、流路32,42に連通する連結流路61を有している。連結流路51,61は、Z方向に延びている。連結流路51,61それぞれの一端は流路32に連通し、他端は流路42に連通している。連結管50は、冷却器40におけるX方向一端付近に連結されている。連結管60は、冷却器40における他端付近に連結されている。
図4に示す符号52は、冷却器30に設けられた連結管50周りのシール部である。符号62は、冷却器30に設けられた連結管60周りのシール部である。シール部52,62は、たとえばグロメットなどにより提供される。
【0062】
連結管50は、導入管36と冷却器30との連結位置と、放熱部材33との間に配置されている。連結管60は、放熱部材33と、排出管37と冷却器30との連結位置との間に配置されている。導入管36から供給される冷媒80の一部は、流路32を流れて排出管37から排出される。冷媒80の他の一部は、流路32および連結管50の連結流路51を通じて、流路42に供給される。流路42を流れた冷媒80は、連結管60の連結流路61を通じて流路32に流れ込み、排出管37から排出される。連結管50,60は、冷却器40とともに、冷媒80の迂回経路を提供する。
【0063】
一例として本実施形態の2段構造の冷却器において、流路32を流れる冷媒80の流量は、流路42を流れる冷媒80の流量よりも大きい。流路32は主流路であり、流路42は流路32から分岐された副流路である。連結管50による分岐箇所を通過した流路32の流量は、流路42を流れる冷媒80の流量よりも大きい。流路32の断面積は、流路42の断面積よりも大きい。Z方向において、冷却器30の厚み(高さ)は、冷却器40の厚みよりも厚い。副流路である流路42は、連結流路51,61を介して主流路である流路32から分岐されている。連結流路51,61それぞれの断面積は、流路32の断面積よりも小さい。なお、各流路の断面積は、流路の延設方向、つまり冷媒の流れ方向に直交する断面の面積である。また、連結流路51,61の通水抵抗は、流路42の通水抵抗よりも小さい。
【0064】
<回路基板>
回路基板70は、図示を省略するが、樹脂などの絶縁基材に配線が配置された配線基板、配線基板に実装された電子部品、コネクタなどを備えている。実装された電子部品と配線により回路が構成されている。回路基板70には、上記した駆動回路7が構成されている。
【0065】
回路基板70は、Z方向の平面視において、半導体モジュール20と重なるように配置されている。回路基板70は、3つの半導体モジュール20の上方に配置されている。回路基板70には、3つの半導体モジュール20の信号端子23が実装されている。一例として本実施形態の回路基板70は、筐体35内に配置されている。回路基板70は、冷却器40の上方に位置している。
【0066】
<ベースプレートの配置>
上記したように、放熱部材33のベースプレート331は、ケース31の開口部311を閉塞するように配置されている。X方向において、ベースプレート331の長さL1は、連結管50の外端と連結管60の外端との間の長さL2よりも短い。一例として本実施形態のベースプレート331の長さL1は、X方向における連結管50,60(連結流路51,61)の中心間の長さよりも短い。ベースプレート331の長さL1は、連結管50の内端と連結管60の内端との間の長さよりも短い。
図4に示すように、ベースプレート331とケース31とのシール部34は、ケース31と連結管50,60とのシール部52,62よりも内側に位置している。
【0067】
<第1実施形態のまとめ>
図6は、参考例を示している。
図6は、
図4に対応している。参考例では、本実施形態の関連する要素の符号に対して末尾にrを付与している。参考例の電力変換装置4rも、2段構造の冷却器30r,40rを備えている。流路32rを規定するケース31rは、半導体モジュール20rとの対向面の全面において開口している。ベースプレート331rは、ケース31rの開口を閉塞するカバーである。このため、連結管50r,60rの並び方向であるX方向において、ベースプレート331rの長さL1rは、連結管50rの外端と連結管60rの外端との間の長さL2rよりも長い。電力変換装置4rのその他の構成は、本実施形態の電力変換装置4と同様である。
【0068】
上記したようにベースプレート331rが長いため、水圧によってベースプレート331rが外側に撓む、つまり外側に凸の変形をする虞がある。ベースプレート331rが外側に撓むと、ピンフィン332rとケース31rとの間の隙間が大きくなり、ピンフィン332rに当たらずに素通りする冷媒が増えて冷却器30rの冷却性能(熱交換の性能)が低下する。ベースプレート331rが変形すると、ベースプレート331rと半導体モジュール20rとの密着性が低下し、熱抵抗が大きくなる。以上より、参考例の構成によれば放熱性が低下するため、2段構造の冷却器30r,40rに放熱部材33rを付加した構造を十分に活かすことができない。
【0069】
本実施形態の電力変換装置4によれば、連結管50,60の並び方向であるX方向において、ベースプレート331の長さL1が、連結管50,60の外端間の長さL2よりも短い。このように、放熱部材33を構成するベースプレート331の長さが短いため、水圧によるベースプレート331の変形、具体的には外側への撓みを抑制することができる。よって、ピンフィン332とケース31との隙間が拡大し、ピンフィン332に当たらずに素通りする冷媒80が増えるのを抑制することができる。また、ベースプレート331と半導体モジュール20との密着性が低下し、これにより熱抵抗が増大するのを抑制することができる。
【0070】
以上より、本実施形態の電力変換装置4によれば、放熱性の低下を抑制することができる。よって、2段構造の冷却器30,40に放熱部材33を付加した構造を十分に活かすことができる。つまり放熱性の高い電力変換装置4を提供することができる。なお、本実施形態では、冷却器30が第1冷却器に相当し、流路32が第1流路に相当する。冷却器40が第2冷却器に相当し、流路42が第2流路に相当する。連結管50が第1連結部に相当し、連結流路51が第1連結流路に相当する。連結管60が第2連結部に相当し、連結流路61が第2連結流路に相当する。
【0071】
ベースプレート331(放熱部材33)は、ケース31と同じ材料を用いて形成されてもよいし、ケース31とは異なる材料を用いて形成されてもよい。一例として本実施形態のベースプレート331は、ケース31とは異なる材料を用いて形成されている。ベースプレート331の熱伝導率はケース31の熱伝導率よりも高く、ケース31の剛性はベースプレート331の剛性よりも高い。
【0072】
上記したように、ベースプレート331の長さL1が連結管50,60の外端間の長さL2よりも短いため、ベースプレート331の剛性が低くても、水圧によるベースプレート331の変形を抑制することができる。変形を抑制し、且つ、ベースプレート331の熱伝導率が高いため、放熱性をさらに高めることができる。
【0073】
<変形例>
3つの半導体モジュール20U,20V,20Wの並び順は、上記した例に限定されない。半導体モジュール20Uまたは半導体モジュール20Wを、真ん中に配置してもよい。
【0074】
導入管36および排出管37が冷却器30に接続される例を示したが、これに限定されない。導入管36および排出管37が冷却器40に接続されてもよい。この場合、冷媒80の一部は、流路42から連結管50を介して冷却器30の流路32に流れる。流路32を流れた冷媒80は、連結管60を介して流路42に戻り、排出される。
【0075】
冷却器30がベースプレート331およびピンフィン332を備える例を示したが、冷却器40がベースプレートおよびピンフィンを備えてもよい。そして、冷却器40が備えるベースプレートの長さが、連結管50,60の外端間の長さL2より短い構成としてもよい。冷却器40のケース41が半導体モジュール20との対向面に開口部を有し、この開口部を閉塞するようにベースプレートが配置される。この場合、冷却器40が第1冷却器に相当し、流路42が第1流路に相当する。また、冷却器30が第2冷却器に相当し、流路32が第2流路に相当する。
【0076】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、放熱部材を構成するベースプレートの長さを連結管の外端間の長さよりも短くした。これに付加して、第1流路が整流室を備えてもよい。
【0077】
図7は、本実施形態に係る電力変換装置4を示す平面図である。
図7は、
図2に対応している。
図7でも、便宜上、信号端子や回路基板を省略している。
図7の白抜き矢印は、冷媒の流れる方向を示している。
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図8は、
図4に対応している。
図7でも、筐体の一部、および、回路基板を省略している。
図7の実線矢印は、冷媒の流れを示している。
【0078】
本実施形態の冷却器30は、壁部38を有している。壁部38は、ケース31の内壁から突出している。壁部38は、ケース31に対して連続して一体的に設けられてもよいし、接合により一体的に設けられてもよい。壁部38は、X方向において連結管50とベースプレート331との間に設けられている。壁部38は、流路32を局所的に狭めている。一例として本実施形態の壁部38は、ケース31の内壁のうち、底面とY方向の両側面に連なっている。壁部38は、ケース31の内壁のうち、上面には連なっていない。壁部38とケース31の内壁の上面との間には、冷媒80が流通可能な隙間が存在する。壁部38は、流路32を2つの領域に区画している。
【0079】
流路32は、壁部38により区画された領域として、熱交換室321と、整流室322を有している。熱交換室321は、流路32の長手方向、つまりX方向において、壁部38よりも下流側の領域である。熱交換室321は、壁部38よりも排出管37側の領域である。熱交換室321には、放熱部材33のピンフィン332が配置されている。整流室322は、X方向において、壁部38よりも上流側の領域である。整流室322は、壁部38よりも導入管36側の領域である。X方向において、整流室322の長さは、熱交換室321の長さよりも短い。一例として本実施形態の整流室322は、熱交換室321よりも小さい。整流室322の容積は、熱交換室321の容積よりも小さい。整流室322は、小部屋である。
【0080】
迂回経路の冷媒導入口を提供する連結管50の連結流路51は、整流室322に連通している。迂回経路の冷媒排出口を提供する連結管60の連結流路61は、熱交換室321に連通している。熱交換室321と整流室322は、壁部38の上方の隙間を通じて互いに連通している。その他の構成は、先行実施形態に記載の構成と同様である。
【0081】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態の電力変換装置4によれば、先行実施形態と同等の効果を奏することができる。さらに電力変換装置4の冷却器30が、ケース31の内壁から突出する壁部38を有している。この壁部38により、流路32が、ピンフィン332が配置された熱交換室321と、整流室322に区画されている。整流室322は、壁部38よりも上流側の領域であり、連結管50の連結流路51が連通している。
【0082】
このように電力変換装置4は、熱交換室321や流路42の前室として整流室322を有する。整流室322により、ウォータポンプによる脈動を受け止め、整流することができる。よって、冷却効果のばらつきを抑制することができる。つまり、放熱性を高めることができる。なお、冷却器30が第1冷却器に相当し、流路32が第1流路に相当する。冷却器40が第2冷却器に相当し、流路42が第2流路に相当する。連結管50が第1連結部に相当し、連結流路51が第1連結流路に相当する。連結管60が第2連結部に相当し、連結流路61が第2連結流路に相当する。
【0083】
<変形例>
ケース31の内壁において、壁部38の連なる面は特に限定されない。底面のみに連なってもよいし、側面のみに連ねってもよい。上面のみに連なってもよい。側面および上面に連なってもよい。
【0084】
冷却器30は、X方向において連結管60とベースプレート331との間に設けられた壁部を備えてもよい。この壁部は、上記した熱交換室321を、ピンフィン332が配置された領域と、連結管60が連通する領域とに区画する。
【0085】
導入管36および排出管37が冷却器40に接続される構成において、冷却器40に壁部を設け、流路42を熱交換室と整流室とに区画してもよい。この場合、冷却器40が第1冷却器に相当し、流路42が第1流路に相当する。また、冷却器30が第2冷却器に相当し、流路32が第2流路に相当する。
【0086】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0087】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0088】
ある要素または相が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の相に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在相が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または相に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在相は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0089】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0090】
車両の駆動システム1は、上記した構成に限定されない。たとえば、モータジェネレータ3をひとつ備える例を示したが、これに限定されない。複数のモータジェネレータを備えてもよい。
【0091】
電力変換装置4が、電力変換回路としてインバータ5を備える例を示したが、これに限定されない。たとえば、複数のインバータを備える構成としてもよい。少なくともひとつのインバータと、コンバータを備える構成としてもよい。
【0092】
半導体モジュール20の数は、上記した例に限定されない。たとえば、ひとつの半導体モジュール20が6つのアーム10H,10Lを提供してもよい。ひとつの半導体モジュール20がひとつのアーム、つまりひとつの上アーム10Hまたはひとつの下アーム10Lを提供してもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…駆動システム、2…直流電源、3…モータジェネレータ、4…電力変換装置、5…平滑コンデンサ、6…インバータ、7…駆動回路、8…Pライン、9…Nライン、10…上下アーム回路、10H…上アーム、10L…下アーム、11…出力ライン、12…直列回路、13…MOSFET、14…FWD、20,20U,20V,20W…半導体モジュール、21,21H,21L…半導体素子、22…封止体、22a…一面、22b…裏面、22c,22d,22e,22f…側面、23…信号端子、24P,24N…電源端子、25…出力端子、30…冷却器、31…ケース、311…開口部、32…流路、321…熱交換室、322…整流室、33…放熱部材、331…ベースプレート、332…ピンフィン、34…シール部、35…筐体、351…底壁、352…側壁、36…導入管、37…排出管、38…壁部、40……冷却器、41…ケース、42…流路、43…フィン、50,60…連結管、51,61…連結流路、52,62…シール部、70…回路基板、80…冷媒