(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143277
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】半導体素子搭載用基板、および、半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 23/14 20060101AFI20241003BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241003BHJP
H05K 1/05 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L23/14 M
H01L23/12 J
H05K1/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055864
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100227732
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 祥二
(72)【発明者】
【氏名】西村 充
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 憲三
(72)【発明者】
【氏名】近藤 洋右
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 達宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】佐野 五十鈴
【テーマコード(参考)】
5E315
【Fターム(参考)】
5E315AA03
5E315BB03
5E315BB04
5E315BB06
5E315BB11
5E315DD13
5E315GG22
(57)【要約】
【課題】 半導体素子搭載用基板において、絶縁層にクラックが発生することを抑制しつつ、基材の腐食を抑制する技術を提供する。
【解決手段】 半導体素子搭載用基板は、金属からなる基材と、半導体素子に接続される電極と、基材と電極との間に配置される絶縁層であって、外周部が基材の外周部よりも内側に位置する絶縁層と、基材と絶縁層との間に配置される中間層であって、基材の絶縁層側の表面の全体を覆う中間層と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子搭載用基板であって、
金属からなる基材と、
半導体素子に接続される電極と、
前記基材と前記電極との間に配置される絶縁層であって、外周部が前記基材の外周部よりも内側に位置する絶縁層と、
前記基材と前記絶縁層との間に配置される中間層であって、前記基材の前記絶縁層側の表面の全体を覆う中間層と、を備える、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体素子搭載用基板であって、
前記中間層は、ニッケル、ニッケル化合物、クロム、クロム化合物、チタン、または、チタン化合物のいずれかによって形成されている、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体素子搭載用基板であって、
前記基材は、銅、または、アルミニウムによって形成されている、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
【請求項4】
半導体パッケージであって、
請求項1または請求項2に記載の半導体素子搭載用基板と、
前記電極と電気的に接続される半導体素子と、
前記半導体素子を覆う樹脂部であって、前記中間層のうち、前記絶縁層の前記外周部の外側において露出する露出部を覆う樹脂部と、を備える、
ことを特徴とする半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子搭載用基板、および、半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体素子を搭載するための半導体素子搭載用基板が知られている。例えば、特許文献1には、金属からなる基材と、半導体素子に接続される配線部と、基材と配線部との間に配置される絶縁層と、を備える半導体素子搭載用基板が開示されている。特許文献1に記載の絶縁層は、外周部が、基材の外周部よりも内側に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような先行技術によっても、半導体素子搭載用基板において、絶縁層にクラックが発生することを抑制しつつ、基材の腐食を抑制する技術については、なお、改善の余地があった。例えば、特許文献1に記載の半導体素子搭載用基板では、絶縁層の外周部を基材の外周部よりも内側に位置させることで絶縁層にクラックが発生することを抑制している。しかしながら、基材の絶縁層側の表面のうち、絶縁層が成膜されていない部分は、基材を形成する金属がむき出しとなるため、腐食しやすい。このため、絶縁層にクラックが発生することを抑制しつつ、基材の腐食を抑制する技術が求められていた。
【0005】
本発明は、半導体素子搭載用基板において、絶縁層にクラックが発生することを抑制しつつ、基材の腐食を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、半導体素子搭載用基板が提供される。この半導体素子搭載用基板は、金属からなる基材と、半導体素子に接続される電極と、前記基材と前記電極との間に配置される絶縁層であって、外周部が前記基材の外周部よりも内側に位置する絶縁層と、前記基材と前記絶縁層との間に配置される中間層であって、前記基材の前記絶縁層側の表面の全体を覆う中間層と、を備える。
【0008】
この構成によれば、絶縁層の外周部は、基材の外周部よりも内側に位置している。これにより、例えば、1枚の金属ウェハから複数の半導体素子搭載用基板を製造する製造工程において、絶縁層などがすでに成膜されている金属ウェハを切断するとき、絶縁層が形成されていない部分を切断することで、絶縁層にクラックが発生することを抑制することができる。また、基材と絶縁層との間に配置される中間層は、基材の絶縁層側の表面のうち、絶縁層が形成されないために露出している露出部分も含めて基材の絶縁層側の表面の全体を覆っている。これにより、基材の露出部分の腐食を中間層によって抑制することができる。このように、絶縁層にクラックが発生することを抑制しつつ、中間層が基材の絶縁層側の表面の全体を覆うことで基材の腐食を抑制することができる。
【0009】
(2)上記形態の半導体素子搭載用基板において、前記中間層は、ニッケル、ニッケル化合物、クロム、クロム化合物、チタン、または、チタン化合物のいずれかによって形成されていてもよい。この構成によれば、中間層は、耐食性が比較的高い、ニッケル、ニッケル化合物、クロム、クロム化合物、チタン、または、チタン化合物のいずれかによって形成されている。これにより、基材の絶縁層側の表面のうち、絶縁層が形成されないために露出している露出部分の腐食をさらに抑制することができる。
【0010】
(3)上記形態の半導体素子搭載用基板において、前記基材は、銅、または、アルミニウムによって形成されていてもよい。この構成によれば、基材は、放熱性が高い銅またはアルミニウムによって形成されているため、半導体素子搭載用基板の放熱性を向上させることができる。
【0011】
(4)本発明の別の形態によれば、半導体パッケージが提供される。この半導体パッケージは、上記の半導体素子搭載用基板と、前記電極と電気的に接続される半導体素子と、前記半導体素子を覆う樹脂部であって、前記中間層のうち、前記絶縁層の前記外周部の外側において露出する露出部を覆う樹脂部と、を備える。この構成によれば、樹脂部は、半導体素子を封止しつつ、絶縁層の外周部の外側において露出する中間層の露出部を覆う。中間層の露出部は、基材の絶縁層側の表面のうち、絶縁層が形成されないために露出する露出部分を覆っており、基材の露出部分の腐食を抑制している。これにより、中間層を介した基材と樹脂部との密着性を担保することができるため、樹脂部によって半導体素子を封止することができる。
【0012】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、半導体素子搭載用基板を含む製品、半導体パッケージを備える装置、半導体素子搭載用基板および半導体パッケージの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の半導体素子搭載用基板の断面模式図である。
【
図2】第1実施形態の半導体パッケージの断面模式図である。
【
図4】第2実施形態の半導体素子搭載用基板の断面模式図である。
【
図5】第2実施形態の半導体パッケージの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の半導体素子搭載用基板1の断面模式図である。
図2は、第1実施形態の半導体パッケージ6の断面模式図である。本実施形態の半導体素子搭載用基板1は、半導体素子6aとして、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や半導体レーザー(LD:Laser Diode)などの光半導体を支持し、発光時に発生する熱を外部に放出する放熱基板として機能する。半導体素子搭載用基板1は、基材10と、中間層20と、密着層30と、絶縁層40と、密着層50と、接合層60と、電極70と、保護層80と、を備える。なお、
図1および
図2における、基材10と、中間層20と、密着層30と、絶縁層40と、密着層50と、接合層60と、電極70と、保護層80と、半導体素子6aとのそれぞれの厚みの関係は、説明の便宜上、実際の厚みの関係とは異なるように図示されている。
【0015】
基材10は、平板形状を有する部材であって、半導体素子搭載用基板1の土台となる。本実施形態では、基材10の厚みは、1mmである。基材10は、金属からなる。本実施形態では、基材10は、銅(Cu)によって形成されている。基材10は、アルミニウム(Al)によって形成されていてもよい。基材10は、銅を主成分とする材料、アルミニウムを主成分とする材料、または、銅とアルミニウムの合金によって形成されていてもよい。基材10がこれらの金属によって形成されることで、半導体素子6aにおいて発生する熱を、基材10を介して効率的に外部に放出することができる。
【0016】
中間層20は、基材10と電極70との間に配置されている。より詳細には、中間層20は、基材10と密着層30との間に配置されている。本実施形態では、中間層20は、基材10の表面のうち、後述する絶縁層40が形成されている一方の表面11に設けられており、基材10の一方の表面11の全体を覆う。本実施形態では、
図1に示すように、密着層30や電極70の幅が基材10の幅より小さいため、中間層20は、少なくとも一部が、基材10と密着層30との間に配置されている。
【0017】
中間層20は、基材10を形成する材料とは異なる材料であって、耐食性が比較的高く、かつ、酸化しにくい材料から形成されている。本実施形態の中間層20は、基材10を形成する銅よりも、高い耐食性、および、高い耐酸化性を有するニッケルによって形成されている。中間層20は、ニッケルコバルト合金などのニッケル化合物、クロム、クロム化合物、チタン、または、チタン化合物のいずれかによって形成されていてもよい。また、中間層20を形成する材料は、ニッケル、ニッケル化合物、クロム、クロム化合物、チタン、または、チタン化合物に限定されない。中間層20は、基材10よりも耐食性が高い材料、または、基材10よりも酸化しにくい材料によって形成されることが望ましい。
【0018】
密着層30は、中間層20と絶縁層40との間に配置されている。本実施形態では、密着層30は、チタンからなっており、厚みが、例えば、0.5μmである。密着層30は、中間層20と絶縁層40とを密着させるとともに、基材10と絶縁層40との熱膨張差を緩和させることで絶縁層40にクラックが形成されることを抑制する。
【0019】
絶縁層40は、基材10と電極70との間、より詳細には、密着層30と密着層50との間に配置されている。絶縁層40は、アルミナ(Al2O3)からなっており、厚みが、例えば、5μmである。絶縁層40は、金属からなる基材10と電極70とを絶縁する。本実施形態の絶縁層40の特徴の詳細は、後述する。
【0020】
密着層50は、絶縁層40と接合層60との間に配置されている。本実施形態では、密着層50は、チタンからなっており、厚みが、例えば、0.2μmである。密着層50は、絶縁層40と接合層60とを密着させるとともに、絶縁層40と接合層60との熱膨張差を緩和させることで絶縁層40にクラックが形成されることを抑制する。本実施形態では、密着層50は、パターニングによって絶縁層40に2つ形成されている。
【0021】
接合層60は、密着層50と電極70との間に配置されている。接合層60は、パラジウム(Pd)からなり、厚みが、例えば、0.07μmである。接合層60は、密着層50と電極70との接合強度を向上させる。本実施形態では、接合層60は、パターニングによって2つの密着層50のそれぞれに形成されている。
【0022】
電極70は、図示しないバンプを介して、半導体素子6aに接続される(
図2参照)。電極70は、金(Au)からなっており、厚みが、例えば、3.0μmである。本実施形態では、電極70は、パターニングによって2つの接合層60のそれぞれに形成されている。
【0023】
保護層80は、基材10の表面のうち、一方の表面11とは反対側の他方の表面12に設けられている。保護層80は、基材10の他方の表面12の全体を覆う。保護層80は、中間層20と同様に、ニッケルによって形成されている。保護層80は、ニッケル化合物、クロム、クロム化合物、チタン、または、チタン化合物のいずれかによって形成されていてもよい。保護層80は、基材10の他方の表面12側の腐食を抑制する。保護層80は、半導体素子搭載用基板1の製造プロセスにおいて、複数の半導体素子搭載用基板1に個片化される前の1枚の金属部材に対して、中間層20を形成する際に同時に形成されてもよい。
【0024】
半導体パッケージ6は、
図2に示すように、半導体素子搭載用基板1と、半導体素子6aと、蛍光体6bと、樹脂部6cと、を備える(
図2参照)。半導体素子6aは、図示しないバンプを介して、半導体素子搭載用基板1の電極70に接続されている。蛍光体6bは、半導体素子6aに対して半導体素子搭載用基板1とは反対側に設けられる。蛍光体6bは、光半導体である半導体素子6aが発する光の波長を変換し、波長変換された光を半導体パッケージ6の外部に放出する。
【0025】
樹脂部6cは、半導体素子6aを覆うように形成されている。樹脂部6cの基材10側の端部6dは、基材10の一方の表面11の全体を覆う中間層20に接している。樹脂部6cは、半導体素子6aを封止する。
【0026】
次に、本実施形態の半導体素子搭載用基板1の特徴について、説明する。半導体素子搭載用基板1では、絶縁層40は、外周部が基材10の外周部よりも内側に位置し、中間層20は、基材10の絶縁層40側の表面の全体を覆う。
【0027】
図3は、
図1のA-A線断面図であって、半導体素子搭載用基板1を電極70側から見た図である。
図3に示すように、絶縁層40の外周部40aは、基材10の外周部10aよりも内側に位置している。具体的には、絶縁層40の外周部40aは、基材10の外周部10aよりも半導体素子搭載用基板1における積層方向の中心軸C1寄りに位置している。本実施形態では、絶縁層40は、中心軸C1に垂直な断面における形状が略矩形形状となるように形成されている。絶縁層40は、
図3に示す断面において、外周部40aのうち4つの角の部分40bのそれぞれの外形線が、曲線形状を有する。
【0028】
中間層20は、基材10の絶縁層40側の表面の全体を覆う。これにより、中間層20は、半導体素子搭載用基板1を電極70側から見た図である
図3に示すように、絶縁層40の外周部40aの外側において露出する露出部21を有する。露出部21は、絶縁層40の周囲を囲むように形成されている。これにより、
図3のように半導体素子搭載用基板1を電極70側から見た場合、基材10の一方の表面11は、露出していない。半導体パッケージ6が備える樹脂部6cの端部6dは、中間層20の露出部21に接している。
【0029】
例えば、複数の半導体素子搭載用基板を製造する場合、1枚の金属からなる基材の上に絶縁層などを形成したのち、基材を切断して個片化する。基材を切断するときに絶縁層にクラックが発生することを抑制するため、複数の絶縁層を1枚の基材上に形成し、隣接する絶縁層の間から露出している基材を切断する。このため、1つの半導体素子搭載用基板において、絶縁層の外周部は、基材の外周部よりも内側に位置することとなる。しかしながら、1つの半導体素子搭載用基板において、絶縁層が形成されていない基材の表面は露出するため、露出した部分の基材が、製造工程で使用するエッチング液や実使用時の塩水などによって腐食するおそれがある。基材が腐食すると、半導体パッケージの樹脂部との間に隙間が形成されるため、半導体素子搭載用基板と樹脂部との密着性が低下する。半導体素子搭載用基板と樹脂部との密着性が低下すると、樹脂部による半導体素子の封止状態を維持することが困難となる。
【0030】
本実施形態の半導体素子搭載用基板1では、基材10の一方の表面11は、絶縁層40が形成されないために露出する露出部分も含めて、中間層20によって全体が覆われている。これにより、基材を切断して個片化するときには絶縁層40にクラックが発生することを抑制し、基材10の一方の表面11の全体を覆う中間層20によって基材10の腐食を抑制することができる。基材10の腐食が抑制されると、中間層20を介した基材10と半導体パッケージ6の樹脂部6cとの密着性が担保される。これにより、絶縁層40にクラックが発生することを抑制しつつ、半導体パッケージ6において樹脂部6cによって半導体素子6aを確実に封止することができる。
【0031】
以上説明した、本実施形態の半導体素子搭載用基板1によれば、絶縁層40の外周部40aは、基材10の外周部10aよりも内側に位置している。これにより、例えば、1枚の金属ウェハから複数の半導体素子搭載用基板1を製造する製造工程において、絶縁層40などがすでに成膜されている金属ウェハを切断するとき、絶縁層40が形成されていない部分を切断することで、絶縁層40にクラックが発生することを抑制することができる。また、中間層20は、基材10の一方の表面11のうち、絶縁層40が形成されないために露出している露出部分を含めて基材10の一方の表面11の全体を覆う。これにより、基材10の露出部分の腐食を中間層20によって抑制することができる。このように、絶縁層40の外周部40aが基材10の外周部10aよりも内側に位置することで絶縁層40にクラックが発生することを抑制し、中間層20が基材10の絶縁層40側の一方の表面11の全体を覆うことで基材10の露出部分の腐食を抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態の半導体素子搭載用基板1によれば、中間層20は、耐食性が比較的高いニッケルによって形成されている。これにより、基材10の一方の表面11のうち、絶縁層40が形成されないために露出している露出部分の腐食を抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態の半導体素子搭載用基板1によれば、基材10は、放熱性が高い銅によって形成されているため、半導体素子搭載用基板1の放熱性を向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態の半導体パッケージ6によれば、樹脂部6cは、半導体素子6aを封止しつつ、絶縁層40の外周部40aの外側において露出する中間層20の露出部21を覆う。中間層20の露出部21は、基材10の一方の表面11のうち、絶縁層40が形成されないために露出する露出部分を覆うように形成されており、基材10の露出部分の腐食を抑制している。これにより、基材10と樹脂部6cとの密着性を担保することができるため、樹脂部6cによって半導体素子6aを封止することができる。
【0035】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態の半導体素子搭載用基板2の断面図である。
図5は、第2実施形態の半導体パッケージ7の断面模式図である。第2実施形態の半導体素子搭載用基板2は、第1実施形態の半導体素子搭載用基板1(
図1)と比較すると、絶縁層までパターニングされている点が異なる。
【0036】
第2実施形態の半導体素子搭載用基板2は、基材10と、中間層20と、密着層30と、絶縁層40と、密着層50と、接合層60と、電極70と、保護層80と、を備える。なお、
図4および
図5における、基材10と、中間層20と、密着層30と、絶縁層40と、密着層50と、接合層60と、電極70と、保護層80と、半導体素子6aとのそれぞれの厚みの関係は、説明の便宜上、実際の厚みの関係とは異なるように図示されている。
【0037】
中間層20は、基材10と電極70との間、より詳細には、基材10と2つの密着層30との間に配置されている。本実施形態では、
図4に示すように、密着層30や電極70の幅が基材10の幅より小さいため、中間層20は、少なくとも一部が、基材10と密着層30との間に配置されている。中間層20は、基材10を形成する材料とは異なる材料であって、耐食性が比較的高く、かつ、酸化しにくい材料から形成されている。本実施形態の中間層20は、基材10を形成する銅よりも、高い耐食性、および、高い耐酸化性を有するニッケルによって形成されている。中間層20は、基材10よりも耐食性が高い材料、または、基材10よりも酸化しにくい材料によって形成されることが望ましい。
【0038】
半導体素子搭載用基板2では、密着層30と絶縁層40とをそれぞれ2つ備える。2つの密着層30は、基材10の一方の表面11の全体を覆う中間層20上に形成されている。2つの絶縁層40のそれぞれは、2つの密着層30のそれぞれに形成されている。2つの絶縁層40のそれぞれには、密着層50と、接合層60と、電極70とがそれぞれ形成されている。
【0039】
半導体パッケージ7は、
図5に示すように、半導体素子搭載用基板2と、半導体素子6aと、蛍光体6bと、樹脂部7cと、を備える。樹脂部7cは、半導体素子6aを覆うように形成されている。樹脂部7cの基材10側の端部7dは、基材10の一方の表面11の全体を覆う中間層20に接している。
【0040】
図6は、
図4のB-B線断面図であって、半導体素子搭載用基板2を電極70側から見た図である。
図6に示すように、2つの絶縁層40のそれぞれの外周部40aは、基材10の外周部10aよりも内側(半導体素子搭載用基板2の積層方向の中心軸C2寄り)に位置している。中間層20は、基材10の絶縁層40側の表面の全体を覆っているため、絶縁層40が形成されないために露出する露出部22を有する。露出部22は、2つの絶縁層40のそれぞれの周囲を囲むように形成されている。これにより、半導体素子搭載用基板2を電極70側から見た場合、基材10の一方の表面11は、露出していない。半導体パッケージ7が備える樹脂部7cの端部7dは、中間層20の露出部22に接している。
【0041】
以上説明した、本実施形態の半導体素子搭載用基板2によれば、絶縁層40の外周部40aは、基材10の外周部10aよりも内側に位置している。これにより、絶縁層40が形成されていない部分を切断することで、絶縁層40にクラックが発生することを抑制することができる。中間層20は、基材10の一方の表面11の全体を覆うため、基材10の露出部分の腐食を中間層20によって抑制することができる。このように、絶縁層40の外周部40aが基材10の外周部10aよりも内側に位置することで絶縁層40にクラックが発生することを抑制し、中間層20が基材10の一方の表面11の全体を覆うことで基材10の露出部分の腐食を抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態の半導体パッケージ7によれば、樹脂部7cは、半導体素子6aを封止しつつ、絶縁層40の外周部40aの外側において露出する中間層20の露出部22を覆う。中間層20の露出部22は、基材10の一方の表面11のうち、絶縁層40が形成されない露出部分を覆うように形成されており、基材10の露出部分の腐食を抑制している。これにより、基材10と樹脂部7cとの密着性を担保することができるため、樹脂部7cによって半導体素子6aを封止することができる。
【0043】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0044】
[変形例1]
上述の実施形態では、半導体素子搭載用基板は、光半導体を支持し、発光時に発生する熱を外部に放出する放熱基板として機能するとした。しかしながら、半導体素子搭載用基板に搭載される半導体は、光半導体に限定されない。
【0045】
[変形例2]
上述の実施形態では、中間層20は、ニッケルによって形成されているとした。中間層20は、ニッケルコバルト合金などのニッケル化合物、クロム、クロム化合物、チタン、または、チタン化合物のいずれかによって形成されていてもよい。また、中間層20を形成する材料は、これらに限定されないが、基材10を形成する材料とは異なる材料であって、基材10よりも耐食性が高い材料、または、基材10よりも酸化しにくい材料によって形成されることが望ましい。
【0046】
[変形例3]
第1実施形態では、密着層50から電極70までは、絶縁層40上に2つ形成されているとした。第2実施形態では、密着層30から電極70までは、中間層20上に2つ形成されているとした。半導体素子搭載用基板の構成は、これらに限定されない。例えば、基材10上に中間層20から電極70までが順に成膜された直後の状態であって、パターニングされる前の状態であってもよい。
【0047】
[変形例4]
上述の実施形態では、半導体素子搭載用基板は、基材10の表面のうち、絶縁層40などが成膜されない他方の表面12に、保護層80が設けられるとした。保護層80は、なくてもよいが、基材10の他方の表面12側の腐食を抑制することができる。
【0048】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0049】
(適用例1)
半導体素子搭載用基板であって、
金属からなる基材と、
半導体素子に接続される電極と、
前記基材と前記電極との間に配置される絶縁層であって、外周部が前記基材の外周部よりも内側に位置する絶縁層と、
前記基材と前記絶縁層との間に配置される中間層であって、前記基材の前記絶縁層側の表面の全体を覆う中間層と、を備える、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
(適用例2)
適用例1に記載の半導体素子搭載用基板であって、
前記中間層は、ニッケル、ニッケル化合物、クロム、クロム化合物、チタン、または、チタン化合物のいずれかによって形成されている、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
(適用例3)
適用例1または適用例2に記載の半導体素子搭載用基板であって、
前記基材は、銅、または、アルミニウムによって形成されている、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
(適用例4)
半導体パッケージであって、
適用例1から適用例3のいずれか一例に記載の半導体素子搭載用基板と、
前記電極と電気的に接続される半導体素子と、
前記半導体素子を覆う樹脂部であって、前記中間層のうち、前記絶縁層の前記外周部の外側において露出する露出部を覆う樹脂部と、を備える、
ことを特徴とする半導体パッケージ。
【符号の説明】
【0050】
1,2…半導体素子搭載用基板
6,7…半導体パッケージ
6a…半導体素子
6c,7c…樹脂部
10…基材
10a…(基材の)外周部
11,12…表面
20…中間層
21,22…露出部
40…絶縁層
40a…(絶縁層の)外周部
70…電極