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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143278
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】半導体素子搭載用基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20241003BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20241003BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L23/12 Q
H01L23/36 C
H05K1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055865
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100227732
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 祥二
(72)【発明者】
【氏名】佐野 五十鈴
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 憲三
(72)【発明者】
【氏名】近藤 洋右
(72)【発明者】
【氏名】西村 充
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 達宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 幸裕
【テーマコード(参考)】
5E338
5F136
【Fターム(参考)】
5E338AA15
5E338AA18
5E338BB12
5E338BB75
5E338CC10
5E338CD03
5E338CD33
5E338EE27
5F136AA10
5F136BA30
5F136BB05
5F136DA33
5F136FA01
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA14
(57)【要約】
【課題】 半導体素子搭載用基板において、バンプとの接続信頼性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】 半導体素子搭載用基板は、半導体素子に接続される導通パターンを備え、導通パターンの表面には、凹み部を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子搭載用基板であって、
半導体素子に接続される導通パターンを備え、
前記導通パターンの表面には、凹み部を有する、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体素子搭載用基板は、さらに、
金属からなる基材と、
前記基材と前記導通パターンとの間に配置される絶縁層と、を備え、
前記基材と前記絶縁層とは、前記基材と前記絶縁層と前記導通パターンとの積層方向において、前記凹み部に重なる部分が凹んでいる、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体素子搭載用基板であって、
前記導通パターンの表面には、平面部を有し、
前記凹み部の深さは、前記平面部の算術平均粗さRa(μm)よりも大きく、かつ、2μm以下である、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体素子搭載用基板は、さらに、
銅またはアルミニウムを主成分とする材料によって形成されている基材を備える、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の半導体素子搭載用基板は、さらに、
前記凹み部に配置され、前記導通パターンと半導体素子とに接続する導電部材を備える、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体素子搭載用基板であって、
前記凹み部の表面部分と前記導電部材とは、同じ材料によって形成されている、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
【請求項7】
請求項5に記載の半導体素子搭載用基板であって、
前記凹み部の表面部分と前記導電部材とのそれぞれは、金を主成分とする材料、銀を主成分とする材料、銅を主成分とする材料、または、アルミニウムを主成分とする材料によって形成されている、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子搭載用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体素子と接続する導通パターンを備える半導体素子搭載用基板が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-120290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バンプを介して導通パターンと半導体素子とを接続するとき、半導体素子と半導体素子搭載用基板とを確実に接続するために半導体素子を導通パターン上のバンプに押し付け過ぎると、バンプを支持する基材が変形し、半導体素子搭載用基板が破損するおそれがあった。このため、バンプを介した半導体素子と半導体素子搭載用基板との接続信頼性を向上させる技術が求められていた。
【0005】
本発明は、半導体素子搭載用基板において、半導体素子との接続信頼性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、半導体素子搭載用基板が提供される。この半導体素子搭載用基板は、半導体素子に接続される導通パターンを備え、前記導通パターンの表面には、凹み部を有する。
【0008】
この構成によれば、半導体素子に接続される導通パターンは、表面に凹み部を有する。凹み部に半導体素子と導通パターンとを接続する導電部材を設置すると、導通パターンの平面部分に導電部材を設置する場合よりも、導電部材と導通パターンとが接する面積が大きくなる。これにより、導電部材を介した半導体素子と導通パターンとの接続信頼性を向上させることができる。
【0009】
(2)上記形態の半導体素子搭載用基板は、さらに、金属からなる基材と、前記基材と前記導通パターンとの間に配置される絶縁層と、を備え、前記基材と前記絶縁層とは、前記基材と前記絶縁層と前記導通パターンとの積層方向において、前記凹み部に重なる部分が凹んでいてもよい。この構成によれば、基材と絶縁層とは、基材と絶縁層と導通パターンとの積層方向において、凹み部に重なる部分が凹んでいる。これは、導通パターンの表面に凹み部を形成することで、導通パターンの表面とは反対側にある基材と絶縁層とが凹むためである。すなわち、半導体素子搭載用基板の製造プロセスにおいて、凹み部を形成しやすくなる。
【0010】
(3)上記形態の半導体素子搭載用基板において、前記導通パターンの表面には、平面部を有し、前記凹み部の深さは、前記平面部の算術平均粗さRa(μm)よりも大きく、かつ、2μm以下であってもよい。この構成によれば、凹み部の深さを、平面部の算術平均粗さRa(μm)よりも大きく、かつ、2μm以下とすることによって、平面部よりも凹み部の方がアンカー効果による導電部材との密着性を確保することができる。また、複数の凹み部のそれぞれに設置される導電部材の高さについてのばらつきが抑制されるとともに、導通パターンに成膜不良が発生することを抑制できる。
【0011】
(4)上記形態の半導体素子搭載用基板は、さらに、銅またはアルミニウムを主成分とする材料によって形成されている基材を備えてもよい。この構成によれば、基材は、放熱性が高い銅またはアルミニウムを主成分とする材料によって形成されている。これにより、半導体素子搭載用基板の放熱性を向上させることができる。
【0012】
(5)上記形態の半導体素子搭載用基板は、さらに、前記凹み部に配置され、前記導通パターンと半導体素子とに接続する導電部材を備えていてもよい。この構成によれば、導電部材と導通パターン部とが接する面積が大きくなるため、導電部材を介した半導体素子と導通パターンとの接続信頼性を向上させることができる。
【0013】
(6)上記形態の半導体素子搭載用基板において、前記凹み部の表面部分と前記導電部材とは、同じ材料によって形成されていてもよい。この構成によれば、凹み部の表面部分と導電部材とは、同じ材料によって形成されているため、導通パターンと導電部材との密着性が向上するとともに、導通パターンと導電部材との接合時に発生する応力を緩和しやすくなる。
【0014】
(7)上記形態の半導体素子搭載用基板において、前記凹み部の表面部分と前記導電部材とのそれぞれは、金を主成分とする材料、銀を主成分とする材料、銅を主成分とする材料、または、アルミニウムを主成分とする材料によって形成されていてもよい。この構成によれば、凹み部の表面部分と導電部材とは、比較的電気伝導性が高い金を主成分とする材料、銀を主成分とする材料、銅を主成分とする材料、または、アルミニウムを主成分とする材料によって形成されている。これにより、電気伝導性を向上させることができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、半導体素子搭載用基板を含む製品、半導体素子搭載用基板を含む半導体パッケージ、半導体素子搭載用基板および半導体パッケージの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の半導体素子搭載用基板の断面模式図である。
図2】半導体素子搭載用基板の断面SEM写真の模式図である。
図3】半導体素子搭載用基板の第1の製造方法を説明する第1の図である。
図4】半導体素子搭載用基板の第1の製造方法を説明する第2の図である。
図5】半導体素子搭載用基板の第2の製造方法を説明する第1の図である。
図6】半導体素子搭載用基板の第2の製造方法を説明する第2の図である。
図7】第2実施形態の半導体素子搭載用基板の断面模式図である。
図8】半導体素子搭載用基板の製造方法を説明する第1の図である。
図9】半導体素子搭載用基板の製造方法を説明する第2の図である。
図10】第1実施形態の半導体素子搭載用基板の変形例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の半導体素子搭載用基板1の断面模式図である。本実施形態の半導体素子搭載用基板1は、半導体素子5として、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や半導体レーザー(LD:Laser Diode)などの光半導体を、導電部材70を介して支持し、発光時に発生する熱を外部に放出する放熱基板として機能する。半導体素子搭載用基板1は、基材10と、密着層20と、絶縁層30と、密着層40と、接合層50と、導通パターン60と、を備える。なお、図1における、基材10と、密着層20と、絶縁層30と、密着層40と、接合層50と、導通パターン60とのそれぞれの厚みの関係は、説明の便宜上、実際の厚みの関係とは異なるように図示されている。
【0018】
基材10は、平板形状を有する部材であって、半導体素子搭載用基板1の土台となる。本実施形態では、基材10の厚みは、1mmである。基材10は、金属からなる。本実施形態では、基材10は、銅(Cu)からなる。基材10は、銅を主成分とする材料、アルミニウム(Al)、または、アルミニウムを主成分とする材料によって形成されていてもよい。ここで、「主成分」とは、対象の材料において、質量%で50%より大きい成分を指す。基材10は、銅とアルミニウムの合金からなってもよい。基材10がこれらの金属によって形成されることで、半導体素子5において発生する熱を、基材10を介して効率的に外部に放出することができる。
【0019】
密着層20は、基材10と絶縁層30との間に配置されている。本実施形態では、密着層20は、チタンからなっており、厚みが、例えば、0.5μmである。密着層20は、基材10と絶縁層30とを密着させるとともに、熱膨張係数差によって絶縁層30にクラックが発生することを抑制する。
【0020】
絶縁層30は、基材10と導通パターン60との間、より詳細には、密着層20と密着層40との間に配置されている。絶縁層30は、アルミナ(Al23)からなっており、厚みが、例えば、5μmである。絶縁層30は、金属からなる基材10と導通パターン60とを絶縁する。
【0021】
密着層40は、絶縁層30と接合層50との間に配置されている。本実施形態では、密着層40は、チタンからなっており、厚みが、例えば、0.2μmである。密着層40は、絶縁層30と接合層50とを密着させるとともに、熱膨張係数差によって絶縁層30にクラックが発生することを抑制する。
【0022】
接合層50は、密着層40と導通パターン60との間に配置されている。接合層50は、パラジウム(Pd)からなり、厚みが、例えば、0.07μmである。接合層50は、密着層40と導通パターン60との接合強度を向上させる。
【0023】
導通パターン60は、導電部材70を介して、半導体素子5に接続される。導通パターン60は、金(Au)からなっており、厚みが、例えば、3.0μmである。導通パターン60は、搭載される半導体素子5の所定の箇所と接続するように、所定のパターン形状を有する。導通パターン60は、銅からなっていてもよい。本実施例では、導電部材70は、バンプとして記載している。
【0024】
次に、本実施形態の半導体素子搭載用基板1の特徴について説明する。半導体素子搭載用基板1において、基材10と密着層20と絶縁層30と密着層40と接合層50と導通パターン60とが積層されている方向を、半導体素子搭載用基板1の積層方向DLとする。図1に示すように、導通パターン60は、接合層50に接する側とは反対側の表面に、平面部61と凹み部62とを有する。平面部61は、表面が積層方向DLに対して略垂直な平面となっている。凹み部62は、表面が積層方向DLにおいて平面部61の表面よりも基材10側に凹んでいる。本実施形態では、凹み部62の深さDp62は、平面部61の算術平均粗さRa(μm)より大きく、かつ、2μm以下となっている。ここで、「凹み部62の深さ」とは、図1に示すように、平面部61の表面から、凹み部62の表面のうち平面部61の表面から最も離れている部分までの積層方向DLに沿った距離を指す。凹み部62の深さDp62は、レーザ顕微鏡を用いて、導通パターン60の基材10とは反対側の表面を観察することで測定される。平面部61の算術平均粗さRa(μm)は、JISB0601に基づいて測定する。
【0025】
本実施形態では、基材10と絶縁層30とは、基材10と絶縁層30と導通パターン60との積層方向DLにおいて、凹み部62に重なる部分が凹んでいる。具体的には、図1に示すように、導通パターン60の表面において凹み部62が占める範囲を、積層方向DLに平行な2本の2点鎖線Dv1で挟まれた範囲Ar1として示すと、基材10は、範囲Ar1の導通パターン60側に、凹み部62と同様に凹んでいる凹み部12を有する。絶縁層30は、範囲Ar1の導通パターン60側に、凹み部62と同様に凹んでいる凹み部32を有する。本実施形態の半導体素子搭載用基板1では、2つの密着層20,40、および、接合層50のそれぞれについても、範囲Ar1の導通パターン60側に、凹み部62と同様に凹んでいる凹み部22,42,52を有する。
【0026】
図2は、半導体素子搭載用基板1の断面SEM写真の模式図であって、導電部材70が設けられている状態の半導体素子搭載用基板1の断面のSEM写真を模式的に示した図である。図2には、半導体素子搭載用基板1のうちの基材10と絶縁層30と導通パターン60とのそれぞれの断面が示されている。図2には、導通パターン60の凹み部62の凹み具合を分かりやすくするため、導通パターン60の平面部61の表面を示す外形線に重なる鎖線Lvを示している。導通パターン60の凹み部62は、図2に示すように、平面部61より基材10側に凹んでいることがわかる。半導体素子搭載用基板1は、導通パターン60の凹み部62に設けられる導電部材70を介して、半導体素子5と接続する。したがって、半導体素子搭載用基板1は、半導体素子5との接続に必要な導電部材70の数と同じ数以上の凹み部62を導通パターン60に有している。なお、凹み部62の数はこれに限定されず、複数のバンプがあっても1つだけであってもよい。また、凹み部62の外径と導電部材70の外径との大小関係は図2に示す関係に限定されない。導電部材70は、バンプ、ワイヤ、リボンなど、半導体素子5と導通パターン60とを電気的かつ物理的に接続するものであればよい。
【0027】
次に、本実施形態の半導体素子搭載用基板1の製造方法について説明する。本実施形態の半導体素子搭載用基板1は、例えば、2つの製造方法によって製造することができる。
【0028】
図3は、半導体素子搭載用基板1の第1の製造方法を説明する第1の図である。第1の製造方法では、最初に、半導体素子搭載用基板1となる積層体1aを作成する。具体的には、基材10となる銅製の平板部材10aに、密着層20となるチタン層20aと、絶縁層30となるアルミナ層30aと、密着層40となるチタン層40aと、接合層50となるパラジウム層50aと、導通パターン60となる金層60aと、を順に積層する。積層体1aでは、金層60aの平板部材10aとは反対側の表面には、平面を有する平面部61aのみを有しており、凹んだ部分を有していない。
【0029】
図4は、半導体素子搭載用基板1の第1の製造方法を説明する第2の図である。第1の製造方法では、凸形状の先端部90aを有するツール90を用いて、積層体1aの金層60aが有する平面部61aに凹みを形成する。具体的には、図4に示すように、金層60aの平面部61aに、ツール90の先端部90aを押し当て、ツール90を介して金層60aに荷重F1をかけることで凹み部62が形成される。このとき、凹み部62の形成に伴う金層60aの変形によって、パラジウム層50a、チタン層40a、アルミナ層30a、チタン層20a、および、銅製の平板部材10aのそれぞれも変形し、凹み部62に重なる凹み部52,42,32,22,12のそれぞれが形成される。これにより、導通パターン60の表面に凹み部62を有する半導体素子搭載用基板1が製造される。
【0030】
図5は、半導体素子搭載用基板1の第2の製造方法を説明する第1の図である。第2の製造方法では、最初に、半導体素子搭載用基板1の基材10となる銅製の平板部材10bを準備する。平板部材10bの表面は、平面形状を有している。第2の製造方法では、平板部材10bの表面に、ツール90の先端部90aを押し当て、ツール90を介して平板部材10bに荷重F2をかけることで凹み部12bを形成する。凹み部12bの深さDp12は、平板部材10bの平面部11bの算術平均粗さRa(μm)より大きく、かつ、2μm以下であることが望ましい。深さDp12が平面部11bの算術平均粗さRa(μm)以下になると、凹み部62における導電部材70との密着性を確保することが困難になり、深さDp12が2μmより大きくなると、後述する複数の金属層の成膜工程において、金属層に欠陥が発生するおそれがあるためである。
【0031】
図6は、半導体素子搭載用基板1の第2の製造方法を説明する第2の図である。第2の製造方法では、凹み部12bを有する平板部材10bに、密着層20となるチタン層20bと、絶縁層30となるアルミナ層30bと、密着層40となるチタン層40bと、接合層50となるパラジウム層50bと、導通パターン60となる金層60bと、を順に積層する。これにより、チタン層20b、アルミナ層30b、チタン層40b、パラジウム層50b、および、金層60bのそれぞれにおいて、平板部材10bの凹み部12bの形状に沿って凹む凹み部22,32,42,52,62のそれぞれが形成される。これにより、導通パターン60の表面に凹み部62を有する半導体素子搭載用基板1が製造される。なお、半導体素子搭載用基板1の製造方法は、上記の第1の製造方法および第2の製造方法に限定されない。
【0032】
次に、本実施形態の半導体素子搭載用基板1の特徴について、導通パターンの表面が平面状である比較例の半導体素子搭載用基板の課題に触れつつ、説明する。半導体素子搭載用基板では、導通パターンと半導体素子とは、バンプ(導電部材)を介して接続されている。半導体素子と半導体素子搭載用基板との接続信頼性を向上させるために、半導体素子を導通パターン上のバンプに押し付け過ぎると、バンプ下の基板が変形し、半導体素子搭載用基板が破損するおそれがある。
【0033】
本実施形態の半導体素子搭載用基板1が備える導通パターン60は、表面に、凹み部62を有する。凹み部62に導電部材70を配置すると、導電部材70と導通パターン60との接触面積が、比較例の半導体素子搭載用基板よりも増大する。これにより、半導体素子5を導通パターン60上の導電部材70に押し付けることなく、導電部材70を介した半導体素子5と半導体素子搭載用基板1との接続信頼性を向上させることができる。
【0034】
また、半導体素子搭載用基板1では、導通パターン60が有する凹み部62の深さDp62は、平面部61の算術平均粗さRa(μm)より大きく、かつ、2μm以下となっている。これにより、凹み部62のアンカー効果によって導電部材70との密着性を確保しつつ、複数の凹み部62のそれぞれに配置される導電部材70の高さがばらつくことを抑制することができる。また、凹み部62の深さDp62を、平面部61の算術平均粗さRa(μm)より大きく、かつ、2μm以下とすることによって、第1の製造方法で製造される半導体素子搭載用基板1では、絶縁層30などの破損を抑制することができる。また、第2の製造方法で製造される半導体素子搭載用基板1では、絶縁層30や導通パターン60などの成膜不良を抑制することができる。
【0035】
以上説明した、本実施形態の半導体素子搭載用基板1によれば、導電部材70を介して半導体素子5に接続される導通パターン60は、表面に凹み部62を有する。凹み部62に半導体素子5と導通パターン60とを接続する導電部材70を設置すると、導通パターン60の平面部61に導電部材70を設置する場合よりも、導電部材70と導通パターン60とが接する面積が大きくなる。これにより、導電部材70を介した半導体素子5と導通パターン60との接続信頼性を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態の半導体素子搭載用基板1によれば、基材10と絶縁層30とは、基材10と絶縁層30と導通パターン60との積層方向DLにおいて、凹み部62に重なる部分が凹んでいる。これは、導通パターン60の表面に凹み部62を形成することで、導通パターン60の表面とは反対側にある基材10と絶縁層30とが凹むためである。すなわち、半導体素子搭載用基板1の製造プロセスにおいて、凹み部62を形成しやすくなる。
【0037】
また、本実施形態の半導体素子搭載用基板1によれば、凹み部62の深さは、平面部61の算術平均粗さRa(μm)より大きく、かつ、2μm以下である。これにより、凹み部62のアンカー効果によって導電部材70との密着性を確保しつつ、複数の凹み部62のそれぞれに設置される導電部材70の高さについてのばらつきを抑制することができる。また、絶縁層30や導通パターン60に成膜不良が発生することを抑制できる。
【0038】
また、本実施形態の半導体素子搭載用基板1によれば、基材10は、放熱性が高い銅を主成分とする材料によって形成されている。これにより、半導体素子搭載用基板1の放熱性を向上させることができる。
【0039】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態の半導体素子搭載用基板2の断面図である。第2実施形態の半導体素子搭載用基板2は、第1実施形態の半導体素子搭載用基板1(図1)と比較すると、バンプを備える点が異なる。
【0040】
第2実施形態の半導体素子搭載用基板2は、基材10と、密着層20と、絶縁層30と、密着層40と、接合層50と、導通パターン60と、バンプ(導電部材)70と、を備える。なお、図7における、基材10と、密着層20と、絶縁層30と、密着層40と、接合層50と、導通パターン60と、バンプ70とのそれぞれの厚みの関係は、説明の便宜上、実際の厚みの関係とは異なるように図示されている。
【0041】
バンプ70は、導通パターン60の凹み部62に配置され、導通パターン60と半導体素子5とに接続する。凹み部62の表面部分とバンプ70とは、同じ材料によって形成されている。本実施形態では、凹み部62の表面部分とバンプ70とのそれぞれは、金によって形成されている。凹み部62の表面部分とバンプ70とのそれぞれは、金、銀、銅、または、アルミニウムによって形成されていてもよいし、金を主成分とする材料、銀を主成分とする材料、銅を主成分とする材料、または、アルミニウムを主成分とする材料によって形成されていてもよい。また、凹み部62の表面部分とバンプ70とは、異なる材料によって形成されていてもよい。
【0042】
図8は、半導体素子搭載用基板2の製造方法を説明する第1の図である。ここで、本実施形態の半導体素子搭載用基板2の製造方法について説明する。最初に、半導体素子搭載用基板2となる積層体2aを作成する。具体的には、基材10となる銅製の平板部材10aに、密着層20となるチタン層20aと、絶縁層30となるアルミナ層30aと、密着層40となるチタン層40aと、接合層50となるパラジウム層50aと、導通パターン60となる金層60aと、を順に積層する。積層体2aでは、金層60aの平板部材10aとは反対側の表面には、平面を有する平面部61aのみを有しており、凹んだ部分を有していない。
【0043】
図9は、半導体素子搭載用基板2の製造方法を説明する第2の図である。半導体素子搭載用基板2の製造方法では、バンプ形成用ノズル91を用いて金層60aの平面部61a上にバンプ70を形成する。このとき、バンプ形成用ノズル91から供給されるバンプ70の原料の供給圧F2を制御することで、金層60aの表面を凹ませる。このとき、金層60aの表面が凹むことに伴って、パラジウム層50a、チタン層40a、アルミナ層30a、チタン層20a、および、銅製の平板部材10aのそれぞれも、金層60aの表面が凹んだ部分に重なる部分が凹む。これにより、凹み部62を有する導通パターン60が形成され、凹み部62に重なる凹み部52,42,32,22,12のそれぞれが形成され、半導体素子搭載用基板2が製造される。半導体素子搭載用基板2の製造方法では、バンプ70を形成するときに、凹み部62の深さを制御することが可能である。凹み部62の深さは、平面部61aの算術平均粗さRa(μm)より大きく、かつ、2μm以下であることが望ましい。凹み部62の深さが平面部61aの算術平均粗さRa(μm)以下であると、凹み部62におけるバンプ70との密着性を確保することが困難になり、金層60aの表面を2μmより大きく凹ませると、バンプ70の高さにばらつきが生じるため、接続信頼性が低下するおそれがある。
【0044】
以上説明した、本実施形態の半導体素子搭載用基板2によれば、半導体素子5に接続される導通パターン60は、表面に凹み部62を有する。凹み部62に設置されるバンプ70は、導通パターン60の平面部61に設置されるバンプ70よりも、導通パターン60と接する面積が大きくなる。これにより、バンプ70を介した半導体素子5と導通パターン60との接続信頼性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態の半導体素子搭載用基板2によれば、凹み部62の表面部分とバンプ70とは、同じ材料によって形成されている。これにより、導通パターン60とバンプ70との密着性が向上するとともに、導通パターン60とバンプ70とを接合するときに発生する応力を緩和しやすくなる。
【0046】
また、本実施形態の半導体素子搭載用基板2によれば、凹み部62の表面部分とバンプ70とは、比較的電気伝導性が高い金によって形成されている。これにより、導通パターン60とバンプ70との間の電気伝導性を向上させることができる。
【0047】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
[変形例1]
上述の実施形態では、半導体素子搭載用基板は、光半導体を支持し、発光時に光半導体に発生する熱を外部に放出する放熱基板として機能するとした。しかしながら、半導体素子搭載用基板に搭載される半導体は、光半導体に限定されない。
【0049】
[変形例2]
上述の実施形態では、基材10と絶縁層30とは、基材10と絶縁層30と導通パターン60との積層方向DLにおいて、凹み部62に重なる部分が凹んでいるとした。しかしながら、導通パターン60の凹み部62に重なる部分は、凹んでいなくてもよい。導通パターン60の表面に、凹み部62があればよい。
【0050】
図10は、第1実施形態の半導体素子搭載用基板1の変形例の断面模式図である。図10に示す半導体素子搭載用基板1では、導通パターン60の凹み部62に重なる部分、すなわち、2本の2点鎖線Dv1で挟まれた範囲Ar1において、基材10や絶縁層30は、凹んでいない。すなわち、図10に示す半導体素子搭載用基板1の変形例では、導通パターン60の表面のみが凹んでいる。このような半導体素子搭載用基板1であっても、導電部材70と導通パターン60とが接する面積が大きくなるため、導電部材70を介した半導体素子5と導通パターン60との接続信頼性を向上させることができる。
【0051】
[変形例3]
上述の実施形態では、凹み部62の深さDp62は、平面部61の算術平均粗さRa(μm)よりも大きく、かつ、2μm以下であるとした。しかしながら、凹み部62の深さは、これに限定されず、平面部61の算術平均粗さRa(μm)より小さくてもよいし、2μmより大きくてもよい。凹み部62の深さが平面部61の線粗さRa(μm)より大きくなることで、平面部61よりも凹み部62の方がアンカー効果による導電部材70との密着性を確保することができる。また、凹み部62の深さが2μm以下になることによって、半導体素子搭載用基板1が有する複数の凹み部62のそれぞれに設置される導電部材(バンプ)70の高さについてのばらつきが抑制されるとともに、絶縁層30や導通パターン60に成膜不良が発生することを抑制できる。
【0052】
[変形例4]
上述の実施形態では、導通パターン60は銅からなり、導電部材(バンプ)70も銅からなるとした。しかしながら、導通パターン60と導電部材(バンプ)70とのそれぞれは、同じ材料である銅から形成されていなくてもよい。別々の材料から形成されていてもよい。
【0053】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0054】
(適用例1)
半導体素子搭載用基板であって、
半導体素子に接続される導通パターンを備え、
前記導通パターンの表面には、凹み部を有する、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
(適用例2)
適用例1に記載の半導体素子搭載用基板は、さらに、
金属からなる基材と、
前記基材と前記導通パターンとの間に配置される絶縁層と、を備え、
前記基材と前記絶縁層とは、前記基材と前記絶縁層と前記導通パターンとの積層方向において、前記凹み部に重なる部分が凹んでいる、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
(適用例3)
適用例1または適用例2に記載の半導体素子搭載用基板であって、
前記導通パターンの表面には、平面部を有し、
前記凹み部の深さは、前記平面部の算術平均粗さRa(μm)よりも大きく、かつ、2μm以下である、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
(適用例4)
適用例1から適用例3のいずれか一例に記載の半導体素子搭載用基板であって、
前記基材は、銅またはアルミニウムを主成分とする材料によって形成されている、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
(適用例5)
適用例1から適用例4のいずれか一例に記載の半導体素子搭載用基板は、さらに、
前記凹み部に配置され、前記導通パターンと半導体素子とに接続する導電部材を備える、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
(適用例6)
適用例1から適用例5のいずれか一例に記載の半導体素子搭載用基板であって、
前記凹み部の表面部分と前記導電部材とは、同じ材料によって形成されている、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
(適用例7)
適用例1から適用例6のいずれか一例に記載の半導体素子搭載用基板であって、
前記凹み部の表面部分と前記導電部材とのそれぞれは、金を主成分とする材料、銀を主成分とする材料、銅を主成分とする材料、または、アルミニウムを主成分とする材料によって形成されている、
ことを特徴とする半導体素子搭載用基板。
【符号の説明】
【0055】
1,2…半導体素子搭載用基板
5…半導体素子
10…基材
12,32,62…凹み部
30…絶縁層
60…導通パターン
61…平面部
70…導電部材(バンプ)
DL…積層方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10