(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014328
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電動送風機およびそれを備えた電気掃除機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/58 20060101AFI20240125BHJP
F04D 23/00 20060101ALI20240125BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20240125BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F04D29/58 P
F04D23/00 B
H02K9/06 G
H02K5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117068
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】本多 武史
(72)【発明者】
【氏名】坂上 誠二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢宏
(72)【発明者】
【氏名】山上 将太
(72)【発明者】
【氏名】菊地 聡
【テーマコード(参考)】
3H130
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB02
3H130AB26
3H130AB50
3H130AC21
3H130BA33G
3H130BA66A
3H130BA97A
3H130CA07
3H130CA21
3H130DA02Z
3H130DB01Z
3H130DD01X
3H130DG03X
3H130EA06A
3H130EA06G
3H130EA07A
3H130EA07G
3H130EB02A
3H130EB02G
5H605AA01
5H605BB05
5H605CC01
5H605DD11
5H609PP01
5H609PP02
5H609QQ02
5H609QQ12
5H609RR10
5H609RR35
5H609RR42
5H609RR43
5H609RR44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】効率が高く、かつ、モータの冷却効率も高い小型軽量の電動送風機およびそれを備えた電気掃除機を提供する。
【解決手段】電動送風機200は、羽根車1を通る第一流路F1と、モータ部202内を通る第二流路F2を有し、モータ部202は、回転軸、ステータコア24、側面に上流側径方向開口6aと下流側径方向開口7aをもつモータハウジング6、7を有し、送風機部は、羽根車1とファンケーシングと上流側ハウジング4を有し、第一流路F1は、羽根車1および上流側ハウジング4の内外壁間を通り、第二流路F2は、軸方向開口7b、下流側径方向開口7a、モータ部202内、上流側径方向開口6a、モータハウジング7と上流側ハウジング内壁の間、および、モータハウジング7と下流側ハウジング内壁5aの間を通り、第二のディフューザ翼9は、円管上のシュラウドとハブ5aを持ち、ハブ5aからシュラウド側にかけて下流側に突出している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機部とモータ部とを備え、
前記送風機部の内部の羽根車を通る第一流路と、
前記モータ部の内部を通る第二流路とを有し、
前記モータ部は、
回転軸および該回転軸を回転自在に支持する軸受と、
前記回転軸に固定されるロータコアおよび該ロータコアの外周を囲んで配置されるステータコアと、
該ステータコアを保持するとともに、上流側径方向開口と下流側径方向開口と軸方向開口を開口させたモータハウジングと、を有し、
前記送風機部は、
前記回転軸に固定される羽根車と、該羽根車の外周を覆うファンケーシングと、前記モータ部の上流側外周を囲む上流側ハウジングと、下流側外周を囲む下流側ハウジングとを有し、
前記第一流路は、前記羽根車および前記上流側ハウジングの内壁と外壁の間を通り、
前記第二流路は、前記軸方向開口、前記下流側径方向開口、前記モータ部の内部、前記上流側径方向開口、前記モータハウジングと前記上流側ハウジングの内壁の間、および、前記モータハウジングと前記下流側ハウジングの内壁の間を通り、
前記下流側ハウジングの第二のディフューザ翼は、
該第二のディフューザ翼の外周に位置する円管上のシュラウドと、前記第二のディフューザ翼の内径側にハブを持ち、前記第二のディフューザ翼は、前記ハブから前記シュラウド側にかけて次第に、下流側に突出している
ことを特徴とする電動送風機。
【請求項2】
送風機部とモータ部とを備え、
前記送風機部の内部の羽根車を通る第一流路と、
前記モータ部の内部を通る第二流路とを有し、
前記モータ部は、
回転軸および該回転軸を回転自在に支持する軸受と、
前記回転軸に固定されるロータコアおよび該ロータコアの外周を囲んで配置されるステータコアと、
該ステータコアを保持するとともに、側面に上流側径方向開口と下流側径方向開口と軸方向開口を開口させたモータハウジングと、を有し、
前記送風機部は、
前記回転軸に固定される羽根車と、該羽根車の外周を覆うファンケーシングと、前記モータ部の上流側外周を囲む上流側ハウジングと、下流側外周を囲む下流側ハウジングとを有し、
前記第一流路は、前記羽根車および前記上流側ハウジングの内壁と外壁の間を通り、
前記第二流路は、前記軸方向開口、前記下流側径方向開口、前記モータ部の内部、前記上流側径方向開口、前記モータハウジングと前記上流側ハウジングの内壁の間、および、前記モータハウジングと前記下流側ハウジングの内壁の間を通り、
前記下流側ハウジングの第二のディフューザ翼は、
該第二のディフューザ翼の外周に位置する円管上のシュラウドと、前記第二のディフューザ翼の内径側にハブを持ち、前記第二のディフューザ翼は、前記ハブから前記羽根車の回転中心の外周外方に遠ざかるに従い、次第に前記羽根車による空気流の下流側に突出している
ことを特徴とする電動送風機。
【請求項3】
送風機部とモータ部とを備え、
前記送風機部の内部の羽根車を通る第一流路と、
前記モータ部の内部を通る第二流路とを有し、
前記モータ部は、
回転軸および該回転軸を回転自在に支持する軸受と、
前記回転軸に固定されるロータコアおよび該ロータコアの外周を囲んで配置されるステータコアと、
該ステータコアを保持するとともに、上流側径方向開口と下流側径方向開口と軸方向開口を開口させたモータハウジングと、を有し、
前記送風機部は、
前記回転軸に固定される羽根車と、該羽根車の外周を覆うファンケーシングと、前記モータ部の上流側外周を囲む上流側ハウジングと、下流側外周を囲む下流側ハウジングとを有し、
前記第一流路は、前記羽根車および前記上流側ハウジングの内壁と外壁の間を通り、
前記第二流路は、前記軸方向開口、前記下流側径方向開口、前記モータ部の内部、前記上流側径方向開口、前記モータハウジングと前記上流側ハウジングの内壁の間、および、前記モータハウジングと前記下流側ハウジングの内壁の間を通り、
半径方向における前記羽根車のハブの径の長さは、
前記第二のディフューザのシュラウド内径の長さよりも短く、
かつ前記第一のディフューザのハブの径の長さより長い
ことを特徴とする電動送風機。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電動送風機において、
前記第二のディフューザ翼が突出しているハブは、前記下流側径方向開口よりも上流に位置し、かつ前記第二のディフューザ翼の下流側の端部は前記下流側径方向開口よりも下流に位置し、
第二のディフューザ翼の端部は前記下流側径方向開口に臨む位置に配置されている
ことを特徴とする電動送風機。
【請求項5】
請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載の電動送風機において、
前記第二のディフューザ翼の上流に第一のディフューザ翼を備え、
前記第一のディフューザ翼と前記第二のディフューザ翼の軸方向の間のハブに、第一流路と第二流路をつなぐダクトが設置されている
ことを特徴とする電動送風機。
【請求項6】
請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載の電動送風機において、
前記第二のディフューザのハブは周方向に凹部がある
ことを特徴とする電動送風機。
【請求項7】
請求項5に記載の電動送風機において、
前記ダクトは第一の流路の下流側に向かって傾斜している
ことを特徴とする電動送風機。
【請求項8】
請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載の電動送風機を備えている
ことを特徴とする電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動送風機およびそれを備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機が内蔵する電動送風機(送風装置)の一例として、特許文献1には、「上下に延びる中心軸C周りに回転するインペラ(10)と、インペラ(10)の下方に配置されステータ24を有してインペラ(10)を回転させるモータ(20)と、ステータ(24)を収納するモータハウジング(21)と、インペラ(10)とモータハウジング(21)とを収納してモータハウジング(21)との隙間に第1流路5を構成するファンケーシング(2)とを備え、ファンケーシング(2)の上部はインペラ(10)の上方を覆い、かつ上下方向に開口する吸気口(3)を有し、ファンケーシング(2)の下部には第1流路(5)を介して吸気口に連通する排気口(4)が設けられ、モータハウジング(21)にはモータハウジング(21)の内面に固定されるステータ(24)の上面よりも下方において、径方向に貫通して第1流路(5)に連通する流入口(21a)が設けられ、モータハウジング(21)は流入口(21a)から上方に延びてステータ(24)よりも上方の空間に連通される第2流路(6)を有する」送風装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気掃除機は、粉塵によるフィルタの目詰まりや、掃除対象の床の材質等の運転条件によって動作風量が大きく変化することが知られている。そのため、電気掃除機用の電動送風機としては、広い風量範囲で吸引力の強い電動送風機が求められている。
また、電気掃除機の使い勝手から、使用される電動送風機の小型化や軽量化も求められている。それに伴い、電動送風機の放熱領域が減少し、内部の発熱密度は増加する。そのため、モータ(20)や軸受(26)の冷却性能の向上が必要になっている。
【0005】
特に、コードレススティック型掃除機や自律走行型掃除機(ロボット掃除機)のような電池(2次電池)で駆動する掃除機は、電池容量の関係から電動送風機の消費電力が小さく、最大風量も小さい。そのため、フィルタの目詰り時にごみ搬送能力が低下し、掃除機の吸引力が低下する課題がある。さらに、電池駆動の掃除機は、小型で軽量であることが求められ、掃除機に搭載される電動送風機は広い風量範囲で吸引力が強いこと、および小型であることの両立が求められる。
【0006】
ここで、ディフューザ翼(特許文献1では「静翼(40)」)を用いれば、設計点風量において優れた圧力回復を行うことが出来る。しかし、フィルタの目詰まり等の影響で設計点風量より風量が低下した場合は、ディフューザ翼の入口角と空気流れのディフューザへの流入角の不一致によりディフューザ性能が低下し、電気掃除機の吸引力が低下する可能性がある。
【0007】
また、特許文献1の送風装置では、添付
図4等に示されるように、外側の第1流路(5)を流通する気流(S)の一部が、モータハウジング(21)の周壁に設けた流入口(21a)を介して、内側の第2流路(6)に流れ込み、上方の軸受26を冷却した後、更に、下方の軸受(26)を冷却し、第1流路(5)と合流することなく、第2流路(6)の出口(流出口(2)9a)から送風装置(1)の外部に排気される。
【0008】
このように、第1流路(5)から分岐した第2流路(6)が第1流路(5)に合流しない構成を採る場合、第1流路(5)を流通する気流(S)の一部が第2流路(6)に分岐する際の圧力損失(抵抗)によって、第1流路(5)では、流入口(21a)(分岐点)の上流側の風量に比べ、流入口(21a)(分岐点)の下流側の風量が減少していた。
【0009】
加えて、特許文献1の第2流路(6)は、小型であることから流路面積が小さく、さらに、モータ(20)内部で曲がりながら流れるため、流路の圧力損失が大きく、冷却風量が低下し、モータ(20)内部の温度が高くなり、モータ効率が低下する懸念がある。
【0010】
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、効率が高く、かつ、モータの冷却効率も高い小型軽量の電動送風機およびそれを備えた電気掃除機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の電動送風機は、送風機部とモータ部とを備え、前記送風機部の内部の羽根車を通る第一流路と、前記モータ部の内部を通る第二流路とを有し、前記モータ部は、回転軸および該回転軸を回転自在に支持する軸受と、前記回転軸に固定されるロータコアおよび該ロータコアの外周を囲んで配置されるステータコアと、該ステータコアを保持するとともに、側面に上流側径方向開口と下流側径方向開口を開口させたモータハウジングと、を有し、前記送風機部は、前記回転軸に固定される羽根車と、該羽根車の外周を覆うファンケーシングと、前記モータ部の上流側外周を囲む上流側ハウジングを有し、前記第一流路は、前記羽根車および前記上流側ハウジングの内壁と外壁の間を通り、前記第二流路は、前記軸方向開口、前記下流側径方向開口、前記下流側ハウシングの開口、前記モータ部の内部、前記上流側径方向開口、前記モータハウジングと前記上流側ハウジングの内壁の間、および、前記モータハウジングと前記下流側ハウジングの内壁の間を通り、前記下流側ハウジングの第二のディフューザ翼は、該第二のディフューザ翼の外周に位置する円管上のシュラウドと、前記第二のディフューザ翼の内径側にハブを持ち、前記第二のディフューザ翼は、前記ハブから前記シュラウド側にかけて次第に下流側に突出している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、効率が高く、かつ、モータの冷却効率も高い小型軽量の電動送風機およびそれを備えた電気掃除機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3A】上流側ハウジングを上流側から見た平面図である
図1AのI方向矢視図。一実施例の上流側ハウジングの平面図。
【
図3C】上流側ハウジングを外周から見た一部断面を含む外観図。
【
図4A】下流側ハウジングを上流側から見た平面図の
図1AのI方向矢視図。
【
図4C】下流側ハウジングを外周側から見た一部断面を含む斜視図。
【
図6】第一流路と第二流路の一例の電動送風機の縦断面図。
【
図7A】変形例1の第一流路と第二流路の一例の電動送風機の縦断面図。
【
図7B】変形例2の第一流路と第二流路の一例の電動送風機の縦断面図。
【
図8A】下流側ハウジングで覆われる第二のディフューザの一部断面を含む斜視図。
【
図9】垂直なダクトあり(横線ハッチ)、傾斜ダクトあり(斜線ハッチ)の電動送風機効率を比較したグラフ。
【
図10】ダクトの無し、垂直なダクト、傾斜ダクト有りの羽根車側の上流側軸受、コイル、ステータコアの温度上昇試験結果。
【
図11】本発明の実施形態に係る電気掃除機100の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電動送風機およびそれを備えた電気掃除機の一実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<電気掃除機100の概略構成>
【0015】
図11に、本発明の実施形態に係る電気掃除機100の斜視図を示す。
図12に、実施形態の電気掃除機100の縦断面図を示す。
実施形態の電気掃除機100は、充電式のコードレススティック掃除機である。電気掃除機100は、掃除機本体110を保持部120に装着して使用される。
電気掃除機100は、充電台130に載置して充電される。なお、実施形態1では、充電式のコードレススティック掃除機を例示しているが、電源コードを備えた非充電式のスティック掃除機に、本発明の電動送風機200を内蔵してもよい。
【0016】
掃除機本体110は、単独でハンディ掃除機として使用可能である。
掃除機本体110は、上部に、利用者が把持する本体グリップ部111を備え、下部に、掃除に際して塵埃を吸引する吸口開口112(
図12参照)を備えている。
【0017】
図11に示す本体グリップ部111には、ハンディ掃除機として使用する際に電動送風機200の駆動を入/切するための本体スイッチ部111aが設けられている。
図12に示す掃除機本体110の内部には、電動送風機200と駆動回路114と電池ユニット115と集塵室113とを備えている。
電動送風機200は、集塵に必要な吸込気流を発生させる。駆動回路114は、電動送風機200を駆動制御する。電池ユニット115は、駆動回路114に電力を供給する。集塵室113には、塵埃が集塵される。
【0018】
保持部120は、掃除機本体110を着脱可能なユニットである。保持部120は、上部に、利用者が把持するグリップ部121を備えている。保持部120のグリップ部121には、スティック掃除機として使用する際に電動送風機200の駆動を入/切するためのスイッチ部121aが設けられている。
保持部120の下部には、掃除に際して塵埃を吸引する吸口体122と、吸口体122と吸気開口112を接続する接続部122aを備えている。
なお、本実施例の掃除機本体と吸口体122の間に接続部122aを備えた構成を記載しているが、接続部が長くてもよく、接続部は吸口体と本体と着脱可能なホースや管でもよい。
【0019】
<電動送風機200>
次に、電動送風機200について説明する。
図1Aに、実施形態の電動送風機200の外観図を示す。
【0020】
図1Bに、実施形態の電動送風機200の縦断面図を示す。
電動送風機200は、羽根車1を回転させて空気流を発生させる送風機とモータから構成される。そこで、空気流の上流側と下流側とを定義する。
また、回転軸2の設置位置に着目し、軸方向と径方向とを定義する。
【0021】
図11、
図12に示すように、電気掃除機100の下部の吸口体122から上方の集塵室113に塵埃を吸い上げることができるように、電動送風機200の吸気口200a(
図1A)を下方に向け、排気口200bを上方に向けた状態で、内部に電動送風機200が設置されている。
電動送風機200の外周は、ファンケーシング3、上流側ハウジング4、および下流側ハウジング5の三者を一体化した外殻で覆われている。
【0022】
ファンケーシング3は、羽根車1の外周を覆うカバーであり、羽根車1のシュラウド板の機能を担っている。
ファンケーシング3は、エンジニアリングプラスチックや熱可塑性樹脂で一体成型されている。ファンケーシング3は、羽根車1による空気流の上流側に吸気口200aが開口されている。
【0023】
図1Bに示すように、電動送風機200は、羽根車1の回転によって、上方の吸気口200aから空気を吸い込み、下方の排気口200bから空気を吐き出す(
図1Bの矢印F1)。
【0024】
電動送風機200の内部には、回転軸2が回転自在に配置されている。回転軸2の上端には、回転軸2と一体回転する羽根車1が固定されている。なお、
図1Bでは、回転軸2の上端に螺着したナットn1で羽根車1を固定している。なお、回転軸2の先端に羽根車1を圧入することで羽根車1を固定してもよい。
電動送風機200は、主に、送風機部201とモータ部202とで構成されている。
【0025】
図1Bに示す送風機部201は、羽根車1、回転軸2、第一のディフューザ翼8、および第二のディフューザ翼9を有している。羽根車1は、回転軸2に固定されており、モータ部202により駆動される。
モータ部202は、上流側モータハウジング6と下流側モータハウジング7とで覆われている。
羽根車1が回転すると、電動送風機200の内部には、
図1Bの左側の実線矢印F1に示すように、吸込口200aから排気口200bに向けて送風機部201内の第一流路F1を流通する空気流の第一空気流が発生する。
【0026】
第二のディフューザ9を通った第一流路F1を流れる第一空気流は、風速が早く、静圧が低下することから、第二のディフューザ翼9の出口に低圧部Tが発生する(
図6に記載)。低圧部Tによって、モータ部202内を下流側から上流側に流通する第二空気流が流れる第二流路F2a、F2bが形成される。
電動送風機200は、第一流路F1を流れる第一空気流と、第二流路F2a、F2bを流れる第二空気流とを流通させることで、広い風量範囲で電気掃除機100の吸引力を維持しながら、モータ部202の内部を十分に冷却できる。
以下、電動送風機200の構造を、送風機部201とモータ部202とに分けて順次説明する。
【0027】
<送風機部201>
図1Bに示す送風機部201は、電気掃除機100が塵埃を吸引する空気流を生成するためのユニットである。
送風機部201は、第一空気流が流れる第一流路F1の上流側から順に、回転翼である羽根車1、第一のディフューザ翼8、第二のディフューザ翼9が配置されている。
第一・第二のディフューザ翼8、9は、羽根車1の下流側での空気流の風速を減速させるものであり、風速、流れの方向を制御し、静圧を制御する。
【0028】
つまり、第一のディフューザ翼8と第二のディフューザ翼9は、羽根車1で発生させた空気流の動圧を静圧に変換する。
第一のディフューザ翼8は、上流側ハウジング4の内周に設けられている。
第二のディフューザ翼9は、下流側ハウジング5の内周に設けられている。
【0029】
<羽根車1とファンケーシング3>
図2Aに、羽根車1の斜視図を示す。
図2Bに、羽根車1の縦断面図を示す。
羽根車1は、シュラウド板のないオープン型斜流羽根車である。羽根車1は、エンジニアリングプラスチックや熱可塑性樹脂で一体成型されている。
羽根車1は、ハブ11と、複数枚の羽根12と、回転軸2を挿入するためのボス13を有している。なお、羽根車1は、シュラウド板のある斜流羽根車であってもよいし、遠心羽根車や軸流羽根車であってもよい。
【0030】
図1Bに示す羽根車1のハブの最外径11aは2段目ディフューザ(9)のシュラウド径5gとハブ径5fの間に位置する。
つまり、
図1Bに示す半径方向における羽根車1のハブ11の径の長さ11aは、第二のディフューザ9Dのシュラウド内径の長さ5gよりも短く、かつ第一のディフューザのハブの径の長さ5fより長い。すなわち、5f<11a<5gの関係がある。
【0031】
羽根車1のハブの径の長さ11aは、第一のディフューザのハブ5の径の長さ5fより長いことで、高入力化が図れる。また、羽根車1のハブの径の長さ11aは、第二のディフューザのシュラウド内径の長さ5gよりも短いことで、モータ部202の冷却の両立が図れる。また、後記のベンチュリー冷却の促進が図れる。
第二流路F2(F2a、F2b)を流れる第二空気流をディフューザハブ5aの内径とモータケーシング7の外径に流れを沿わせ、電動送風機200の小型化とモータ部202の冷却と高効率化を両立している。
【0032】
図2Bに示すハブ11の裏面側には、羽根車1のボス13と同軸に、金属製のスリーブ14が一体成型で設けられている。スリーブ14を用いることで、スリーブを用いない場合に生じる可能性の高い、羽根車1と回転軸2の嵌め合い隙間のばらつきを小さくでき、羽根車1のアンバランスを低減できる。そのため、羽根車1の回転駆動時の振動や騒音を低減できる。
なお、スリーブ14を用いない場合、羽根車1と回転軸2の嵌め合い隙間のばらつき、羽根車1のアンバランスが生じる可能性が高い。
また、スリーブ14の下流側には、凹部14aが設けられている。
また、羽根車1のハブ11の端部11bは周方向に凹部(切欠き)11b1を設けている。これにより、羽根車1の成型時の熱応力が低減され、ひずみが緩和される。また、羽根車1の成型時の残留応力が低減され、疲労強度が向上する。なお、凹部11b1の断面形状は応力集中がしない円弧や楕円でもよく、回転軸に対して周方向に一様でもよく、周方向に断続的な構成でもよい。
【0033】
ファンケーシング3について説明する。ファンケーシングの外壁部の一部が上流側ハウジング4と接続する側に突出すると共に、上流側ハウジング4と接続する側から羽根車側に向かって切欠かれると共に、ファンケーシング3の周方向に伸びるように切欠かれたL字状の切欠き部3aが形成されている。切欠き部3aは、外壁部の周方向の3箇所に形成されている。なお、ファンケーシング3は軸方向に回動させ、上流側ハウジング4に組み立てられ、その後、接着固定される。
【0034】
<上流側ハウジング4と第一のディフューザ翼8>
図3Aに、上流側ハウジング4を上流側から見た平面図である
図1AのI方向矢視図を示す。
【0035】
図3Bに、上流側ハウジング4の縦断面図を示す。
図3Cに、上流側ハウジング4を外周から見た一部断面を含む外観図を示す。なお、
図3Cでは、上流側ハウジング4のシュラウドを一部省略することで、第一のディフューザ翼8の形状(特に、前縁8aと後縁8bの位置)を表示している。
上流側ハウジング4と第一のディフューザ翼8について説明する。
上流側ハウジング4と第一のディフューザ翼8は、エンジニアリングプラスチックや熱可塑性樹脂で一体成型されている。
【0036】
上流側ハウジング4の内壁4a(ハブ)と外壁4b(シュラウド)の間には、それらと一体成型される複数枚の第一のディフューザ翼8が周方向に等間隔(
図3A参照)に配置されている。
【0037】
図3Cに示す第一のディフューザ翼8の前縁8aから後縁8bまでの長さ(翼弦長)は、内壁4a側に比べ外壁4b側が長くなっている。これは、羽根車1の下流では、外周側の風速が内周側より速くなるため、第一のディフューザ翼8の内側より外側を長くすることで、損失を抑制し、かつ、動圧を静圧に変換する領域を大きくして送風機の高効率化を図るためである。なお、ここでは、第一のディフューザ翼8を15枚設けた構成を例示しているが、第一のディフューザ翼8の枚数は電動送風機200の仕様に応じて変更できる。
【0038】
図3A、
図3Cに示すように、上流側ハウジング4の外壁4bの外周3箇所には等間隔に突起4cが設けられている。
突起4cに、
図4Bに示す下流側ハウジング5の爪部5cが嵌め込まれることで、上流側ハウジング4と下流側ハウジング5を芯出しつつ一体化することができる(
図1B参照)。
【0039】
図3A、
図3Bに示すように、上流側ハウジング4の上面の2箇所には締結部4dが設けられている。締結部4dに、
図1Bに示すモータ部202を芯出ししつつ締結することができる。
第一のディフューザのシュラウド4eは軸方向下流に向って、径方向の内方に傾斜する傾斜部4e1を有する。
第一のディフューザ翼8の外壁4bは略同一半径の流路を形成している。
【0040】
シュラウド4eの傾斜部4e1で、羽根車1の出口の流れを径方向内方へ緩やかに転向することで、ディフューザハブ5aの内径と、モータケーシング7の外径に流れを沿わせ、電動送風機200の小型化とモータ部202の冷却と高効率化を両立している。
【0041】
<下流側ハウジング5と第二のディフューザ翼9>
図4Aに、下流側ハウジング5(
図1A参照)を上流側から見た平面図の
図1AのI方向矢視図を示す。
【0042】
図4Bに、下流側ハウジング5(
図1A参照)の縦断面図を示す。
図4Cに、下流側ハウジング5(
図1A参照)を外周側から見た一部断面を含む斜視図を示す。
図4Cでは、下流側ハウジング5の外壁5B(シュラウド)を一部省略することで、第二のディフューザ翼9の形状(特に、前縁9aと後縁9bの位置)を表示している。
【0043】
図4A~
図4Cに示す下流側ハウジング5と第二のディフューザ翼9について説明する。
下流側ハウジング5と第二のディフューザ翼9は、エンジニアリングプラスチックや熱可塑性樹脂で一体成型している。
下流側ハウジング5の内壁5a(ハブ)と外壁5b(シュラウド)の間には、一体成型されている複数枚の第二のディフューザ翼9が周方向に等間隔に配置されている(
図4C参照)。
【0044】
なお、第二のディフューザ翼9を15枚設けた構成を例示しているが、これは、各々の第一のディフューザ翼8の下流に第二のディフューザ翼9を配置するため、第一のディフューザ翼8の枚数と第二のディフューザ翼9の枚数を一致させるためである。なお、第二のディフューザ翼の枚数は第一のディフューザ翼の枚数と異なっていてもよい。
【0045】
図4Bに示すように、第二のディフューザ翼9の後縁9bは軸方向下流にかけて伸び、かつ、径方向外側に向かいシュラウドの外壁5b側からの翼高さが小さくなっている。
後縁9bは、単調変化でなく、湾曲、複数の曲線、複数の線で構成でき、その形状は任意である。
【0046】
図4Bに示す第二のディフューザ翼9のシュラウド側の軸方向長さL1は内壁5aの長さL2の約2倍以上としている。
第二のディフューザ翼9が半径方向外側の翼との長さが異なるため、半径方向外側にかけ圧力が高くなることで、下流側ハウジング5における内側の内壁5a(ハブ)に向かう流れを促進し、モータ部202(
図1B参照)の冷却を促進している。
【0047】
図4Cに示す第二のディフューザ翼9の突出部の羽根車1の回転方向の前進側の面9cは略平面かつ後縁9bにかけて板厚が小さくなる構成としている。これにより、第二のディフューザ翼9を、後縁9bにかけて板厚t(
図4C参照)を薄くすることで、第一流路F1の容積を拡大し、流れの減速を促進して電動送風機の効率を向上させている。
また、第二のディフューザ翼9の板厚t(
図4C参照)を薄くすることで、成型時の樹脂の引けを抑制している。
【0048】
図4A~
図4Cに示すように、下流側ハウジング5の上端外周の3箇所には等間隔に爪部5cが設けられている。
図4B、
図4Cに示す上端外周の爪部5cを除く部分には嵌合部5dが設けられている。上流側ハウジング4の下端を下流側ハウジング5の嵌合部5dに押し当てつつ、3箇所の爪部5c(
図4B、
図4C参照)を3箇所の突起4c(
図3A参照)に嵌め込むことで、上流側ハウジング4と下流側ハウジング5を芯出ししながら一体化することができる(
図1B参照)。なお、ファンケーシング3と上流側ハウジング4、上流側ハウジング4と下流側ハウジング5は接着にて固定されることで微小隙間が生じた場合のガタツキによる騒音増加を抑制する。
【0049】
さらに、
図4B、
図4Cに示すように、下流側ハウジング5の下流側には、第二のディフューザ翼9を設けない円環ディフューザ5eを設けている。
図1Bに示す電動送風機200では、上流側ハウジング4の内壁4a(
図3A参照)と下流側ハウジング5の内壁5a(
図4A、
図4B参照)、および、上流側ハウジング4の外壁4b(
図3A、
図3B参照)と下流側ハウジング5の外壁5b(
図4A、
図4B参照)の何れの組合せについても、径方向位置を略一致させつつ一体化している。
【0050】
これにより、上流側ハウジング4および下流側ハウジング5で形成される各流路の内面を滑らかにすることで、各流路中での損失を低減している。
また、電動送風機200では、一対の第一のディフューザ翼8と第二のディフューザ翼9が一つのディフューザ翼として機能するように、
図3Cに示す第一のディフューザ翼8の後縁8bと、
図4Cに示す第二のディフューザ翼9の前縁9aの周方向位置を一致させ、かつ第一のディフューザ翼8と第二のディフューザ翼9の曲面を滑らかに連続させている。
【0051】
<モータ部202>
図5Aに、モータ部202の側面外観図を示す。
図5Bに、モータ部202の縦断面図を示す。
次に、モータ部202について説明する。
モータ部202は、送風機部201(
図1B参照)の羽根車1を、例えば50,000~200,000rpmの範囲内で回転させるためのユニットである。
【0052】
図5Bに示すモータ部202は、回転軸2、上流側軸受21、下流側軸受22、ロータコア23、ステータコア24、カラー25、上流側モータハウジング6、および下流側モータハウジング7を有して構成されている。以下、各部を順次説明する。
【0053】
<モータ部202の筐体>
図5Aに示すように、モータ部202は、ステータコア24等(
図5B参照)を保持する筐体として、上流側モータハウジング6と下流側モータハウジング7を有している。
【0054】
図1Bに示す上流側ハウジング4の下面に上流側モータハウジング6の上面をネジ等で固定することで、モータ部202が電動送風機200に内蔵されている。
図5Aに示す上流側モータハウジング6は、モータ部202の上流側を覆う金属製(アルミニウム合金材、鋼材など)の筐体である。
上流側モータハウジング6は、側面に複数(例えば、6個)の径方向開口6aを有している。
【0055】
図5Bに示すように、上流側モータハウジング6の上面中央は上方に突出しており、その内部には、回転軸2の上流側を回転自在に支持する上流側軸受21が設けられている。
そして、上流側軸受21の下方の上流側スペーサー21aによって、上流側軸受21の軸方向の位置決めが行なわれている。なお、上流側モータハウジング6には軸方向開口を設けてもよく、設けた場合は軸受21へ冷却風が流れ冷却が行うことができる。
【0056】
図5Aに示す下流側モータハウジング7は、モータ部202の下流側を覆う金属製(アルミニウム合金材、鋼材など)の筐体である。
下流側モータハウジング7は、側面に複数(例えば、6個)の径方向開口7aを有し、下面に複数の軸方向開口7b(
図5B参照)を有している。
下流側モータハウジング7の下面中央は下方に突出しており、その内部には、回転軸2の下流側を回転自在に支持する下流側軸受22が設けられている。そして、下流側軸受22の上方の下流側スペーサー22aによって、下流側軸受22の軸方向の位置決めが行なわれている。
【0057】
図5Aに示すように、上流側の径方向開口6aと下流側の径方向開口7aは、軸方向(
図5Aに紙面上下方向)に重ならないように設置されている。
各モータハウジング(6、7)の径方向開口(6a、7a)は、後記するコイル24bの軸方向端部と軸方向に重なるように配置されている。なお、各モータハウジング(6、7)のの径方向開口(6a、7a)は周方向に均一に配置されている。
径方向開口(6a、7a)の個数とディフューザ翼(8、9)の枚数の最大公約数が3となるように、径方向開口(6a、7a)個数とディフューザ翼(8、9)枚数が設定されている。
【0058】
これにより、モータ部202の内部では、周方向の3箇所で同一の流れ場が形成されるため、周方向の温度分布を低減することができる。なお、3以外の所定値を最大公約数として、径方向開口(6a、7a)の個数やディフューザ翼(8、9)の枚数を設定しても良い。
なお、本実施形態では、モータ部202の冷却性能を高めるため下記の構成としている。
【0059】
第1に、各モータハウジング(6、7)を、熱伝導率が高い金属製にして放熱性能を高めている。
第2に、上下のモータハウジング(6,7)間に、ステータコア24が露出する領域の露出部24a(
図5A参照)を設けることでステータコア24を外側から冷却できるようにしている。
なお、モータ部202の発熱量が比較的少ない場合等には、各モータハウジング(6、7)を、熱伝導率が低下する耐熱樹脂製にしたり、上下のモータハウジング(6、7)を連結または、上流側のモータハウジングを軸方向に長くして、下流側のモータハウジングを短くし、ステータコア24が露出しない放熱性が低下する構造にしたりしても良い。
【0060】
図5Bに示す下流側モータハウジング7の径方向開口7aと軸方向開口7bは、径方向開口7aだけでもモータ冷却が可能である。しかし、軸方向開口7bがあることで、モータ冷却の空気流(第二流路F2の空気流)を取り込む際の圧力損失が低減できる。これにより、モータ部202の冷却風量が増加して冷却が可能となる。
【0061】
<モータ部202の回転子>
図5Bに示す回転軸2には、上下のスペーサー(21a、22a)で挟まれる領域に、ロータコア23が固定されている。ロータコア23は、サマリウム鉄窒素磁石やネオジム磁石等の希土類系のボンド磁石を内蔵した、モータ部202の回転子を形成する。
【0062】
図5Aに示すように、上流側モータハウジング6の上部から突出した回転軸2には、カラー25が固定されている。カラー25の上部には凸部25a(
図5A参照)が設けられている。凸部25aを、羽根車1のスリーブ14の凹部14a(
図2B参照)に嵌合させる。凸部25aと凹部14a(
図2B参照)の嵌合により、回転軸2のトルクを確実に羽根車1に伝達することができ、羽根車1の空転を防止することができる。
【0063】
<モータ部202の固定子>
図5Bに示すモータ部202の外周には、モータ部202の回転子であるロータコア23を囲んで、モータ部202の固定子のステータコア24が配置されている。
ステータコア24の巻き枠部には、アルミニウム線や銅線を被覆材で覆ったコイル24b(
図5B参照)が巻かれている。コイル24bに、
図12に示す駆動回路114から所望の交流電力を供給することで、ステータコア24を電磁石にする。これにより、ロータコア23と回転軸2と回転軸2に固定される羽根車1を一体に高速回転させることができる。
【0064】
図5Bに示すように、ステータコア24の上流側に上流側モータハウジング6を打ち込み(圧入し)、接着剤により固定する。また、ステータコア24の下流側に下流側モータハウジング7を打ち込み(圧入し)、接着材により固定する。これにより、ステータコア24と上流側モータハウジング6と下流側モータハウジング7を一体化することができる。
そして、コイル24bの上流側端部の高さに、上流側モータハウジング6の径方向開口6aを設ける。また、コイル24bの下流側端部の高さに、下流側モータハウジング7の径方向開口7aを設ける。
【0065】
<第一流路F1と第二流路F2>
図6に、第一流路F1と第二流路F2の一例の電動送風機200の縦断面図を示す。
次に、
図1Bと
図6Aを用いて、実施形態の羽根車1による空気流が流れる第一流路F1と、モータ部202の冷却風の空気流が流れる第二流路F2(F2a、F2b)とについて詳述する。
第二ディフューザ翼9のハブ端部5iは下流側の下流側モータハウジング7の半径方向の径方向開口7aの前側端部7cより上流側に位置する。また、第二ディフューザ翼9の後縁9bの最下流点9dは前側端部7cより下流に位置する。第二ディフューザ翼9の後縁9bが前側端部7cをまたいだ構成により、第二のディフューザ9Dの出口流れを、モータ部202の側(半径方向内向き、
図6の紙面下向き)へ転向させる圧力差を生じさせることで、冷却性能向上と高効率化(シュラウド翼長さを長くすること)が可能になっている。
【0066】
具体的には、羽根車1によって発生した第一流路F1を流れる空気流は、第一のディフューザ翼8がある第一のディフューザ8Dと、第二のディフューザ翼9がある第二のディフューザ9Dとを通って下流側に流れる。
第二のディフューザ9Dを通った第一流路F1を流れる空気流は、風速が早く第二のディフューザ翼9の出口に低圧部Tが発生する。そして、第二流路F2を流れる空気流はモータ側に向かって流れる(コアンダ効果)。
【0067】
また、第二ディフューザ翼9のシュラウド側が軸方向に長いことで、外壁5(シュラウド)からモータ部202にかけて空気流に圧力差を付けることで、空気流を内向きにしてモータ部202に向けて空気流を流すことができる。
下流側モータハウジング7の径方向開口7aと軸方向開口7bから、ベンチュリ効果により、低圧部Tに向かう流れが生じ、モータ内部に第二流路F2(F2a、F2b)を流れる冷却風の空気流が取り込まれ、ステータのステータコア24、コイル24b、下流側軸受22および上流側軸受21が冷却される。
【0068】
冷却後の第二流路F2を流れる空気流は、上流側モータハウジング6の径方向開口6aを通過して低圧部Tで主流(羽根車1を通過した第一空気流F1の空気流)と混合する。この際、温度が低下し、その後に電動送風機200の下流に第一流路F1を流れる空気流とともに排気口200b(
図1B参照)から排出される。
【0069】
図7Aに、変形例1の第一流路F1と第二流路F2の一例の電動送風機200Aの縦断面図を示す。
変形例1では、モータ部202の冷却風を増加させるために、1段目の第一のディフューザ翼8と2段目の第二のディフューザ翼9の間に、風路であるディフューザハブ5aの形状によりダクト20を設ける。これ以外の構成は、実施形態の
図6の構成と同様である。
【0070】
ダクト20の下流側の開始点20aは上流側モータハウジング6の径方向開口6aの開口端部6bより下流に位置する。
ダクト20を、上流側モータハウジング6の径方向開口6aの同一軸方向位置より下流側に位置させる。これにより、径方向開口6aからダクト20に流れる第二流路F2の空気流の方向が第一流路F1の空気流の方向と沿い、ディフューザ流路と混合する際の損失を低減できる。
【0071】
図7Bに、変形例2の第一流路F1と第二流路F2の一例の電動送風機200Bの縦断面図を示す。
変形例1のダクト20は垂直のダクトであるが、変形例2では、第一流路F1を流れる空気流と第二流路Fを流れる空気流とが混合する際の損失を低減するため、傾斜させた傾斜面20aを有した傾斜ダクト20Aとしている。その他の構成は、変形例1と同様である。
【0072】
変形例2は、変形例1と比較した傾斜の損失低減効果は実験により確認され、電動送風機の高効率化が可能である。
なお、
図5A~
図7Bに示す構成は同一モータケーシングである上流側モータハウジング6と下流側モータハウジング7を、ステータのステータコア24を挟むように構成しているが、上流側モータハウジング6がステータを覆うように配置していても、モータケーシングの半径方向の開口(径方向開口6a、7a)と軸方向開口(7b)と、ディフューザ翼(8,9)、ダクト20、20Aの構成が同一であれば効果が得られる。
【0073】
また、
図5Aに示すように、ステータのステータコア24の一部がモータケーシング(上流側モータハウジング6、下流側モータハウジング7)から露出している際には、ステータのステータコア24の表面を第二流路F2の冷却風が流れ、冷却効果を高くできる。
【0074】
図8Aに、下流側ハウジング5で覆われる第二のディフューザ9Dの一部断面を含む斜視図を示す。
図8Bに、
図8Aの一部断面を含むII方向矢視図を示す。
従来、ディフューザハブ5aから第一流路F1の空気流が剥離し易い傾向にあった。
そこで、第二のディフューザ9Dの出口において、内向き流れを促進する方法として、2段目の第二のディフューザ9Dのディフューザハブ5aに切欠(凹部)5hを設けている。
【0075】
ディフューザハブ5aに切欠(凹部)5hを設けることで、第一流路F1の空気流が剥離しにくくなり、第一流路F1の空気流が切欠(凹部)5hから内側に流れる(
図8Aの矢印α11)。つまり、第二のディフューザ9Dの出口流れの第一流路F1の空気流が、モータ部202の側へ流れる半径方向内向きの流れが形成できる。そのため、モータ部202の冷却効果を高くすることができる。
【0076】
図8Bにおいて、羽根車1の回転軸Cを垂直方向に見て、切欠(凹部)5hの深さLcとし、切欠(凹部)5hの幅寸法Wcとし、第二のディフューザ翼9間のディフューザハブ5aの寸法Wである場合、下式(1)の関係がある。
Lc≧0.6×L2 Wc≧0.5W (1)
羽根車1の回転軸Cに対する切欠(凹部)5hの傾斜面5h1の傾斜角度θは、約30degとしている。
【0077】
切欠(凹部)5hの冷却効果に対しては、切欠(凹部)5hの幅寸法Wcと切欠(凹部)5hの深さLcの感度が高い。
図8Bに示す切欠5hの周方向位置は、第二のディフューザ翼9の羽根車1の回転方向の前進側9cと一致させることで、はく離しやすいディフューザハブ5aの側かつ第二のディフューザ翼9の前進側9c側(負圧面)の流れをモータ部202側に吸い出すことができる。そのため、電動送風機200の効率低下が抑制され冷却性能向上が可能となる。
【0078】
<ダクト20の有無、垂直なダクト20、傾斜ダクト20Aの効果>
図9に、垂直なダクト20あり(横線ハッチ)、傾斜ダクト20Aあり(斜線ハッチ)の電動送風機効率を比較したグラフを示す。縦軸の1目盛りは、電動送風機効率が2%である。
傾斜ダクト20Aを設けた場合は、垂直なダクト20を設けた場合よりも電動送風機効率がやや高いことが確認された。
【0079】
図10に、ダクト20の無し(黒塗り)、垂直なダクト20(横線ハッチ)、傾斜ダクト20A(斜線ハッチ)有りの羽根車1側の上流側軸受21、コイル24b、ステータコア24の温度上昇試験結果を示す。縦軸の1目盛りは、10K(ケルビン)である。
ダクト20有り時の上流側軸受21、コイル24bの温度低減量が大きく、冷却性能が高いことが確認された。
上流側軸受21、コイル24bの温度低減は、1段目の第一のディフューザ8Dと2段目の第二のディフューザ9Dとの間にダクト20を追加したことで、ダクト20なし(
図6参照)に比べて、開口7b(
図5B参照)から入りモータ部202内を流れる冷却風量が増加し冷却性能が向上したためである。
【0080】
なお、ダクト20を追加したことによる冷却風量の増加量はダクト20無しに比べて、流体解析結果によれば約1.3倍である。
傾斜ダクト20Aの傾斜による温度低減効果は、主流の第一流路F1を流れる空気流(羽根車1からの流れ)との第二流路F2を流れる空気流が混合する際に、
図7Bに示す傾斜角度45degとすることで、主流の第一流路F1を流れる空気流がディフューザハブ5a側(ハブ端部5iに沿って流れる)を流れやすくなり、2段目の第二ディフューザ9D出口から傾斜ダクト20Aに向かう流れがステータコア24に衝突することで、ステータのステータコア24の冷却が促進される。
【0081】
実施形態によれば、上述の構成の電動送風機200を備えた電気掃除機100は、上述の電動送風機200の作用効果を奏する電気掃除機100を得られる。
以上のことから、効率が高く、かつ、モータの冷却効率も高い小型軽量の電動送風機200およびそれを備えた電気掃除機100を提供できる。
【0082】
<<その他の実施形態>>
1.本発明は、前記した実施形態、変形例の構成に限られることなく、添付の特許請求の範囲内で様々な変形形態、具体的形態が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 羽根車
2 回転軸
3 ファンケーシング
3a ファンケーシングの切欠き部
4 上流側ハウジング
4a 上流側ハウジングの内壁(上流側ハウジング)
4b 上流側ハウジングの外壁(上流側ハウジング)
5 下流側ハウジング
5a 下流側ハウジング内壁(下流側ハウジング、ハブ)
5b 下流側ハウジング外壁(下流側ハウジング、シュラウド)
5i 第二のディフューザの下流側の端部
5f 第一のディフューザのハブの径の長さ、ハブ径
5g 第二のディフューザのシュラウド内径の長さ、シュラウド径
6 上流側モータハウジング(モータハウジング)
6a 径方向開口(上流側径方向開口)
7 下流側モータハウジング(モータハウジング)
7a 径方向開口(下流側径方向開口)
7b 軸方向開口
8 第一のディフューザ翼
9 第二のディフューザ翼
11a 羽根車のハブの径の長さ、ハブの最外径
11b1 切れ込み(凹部)
20 ダクト
20A 傾斜ダクト(ダクト)
21 上流側軸受(軸受)
22 下流側軸受(軸受)
23 ロータコア
24 ステータコア
100 電気掃除機
200 電動送風機
201 送風機部
202 モータ部
F1 第一流路
F2 第二流路