(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143283
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20241003BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241003BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/52 D
H01L23/12 F
H01L23/14 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055876
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 厚司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅之
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】大竹 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】和田 章良
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA17
5F047AB06
5F047BA15
5F047BA21
5F047BB11
5F047CA00
(57)【要約】
【課題】接合部材の接合強度を高くする。
【解決手段】半導体チップ20を用意することと、搭載面11aを有する被実装部材11を用意することと、ディスペンサ法により、搭載面11aに、分散媒32にフィラー31が分散された塗布液33を塗布することと、塗布液33上に半導体チップ20を配置することと、塗布液33を焼結して接合部材を構成することと、を行い、半導体チップ20を用意することおよび被実装部材10を用意することでは、搭載面11aのうちの半導体チップ20と対向する部分および半導体チップ20の他面20bのうちの少なくとも一方に凸部12が形成されることで摩擦力が異なる構成とされたものを用意し、半導体チップ20を配置することでは、半導体チップ20と搭載面11aとの間に位置する塗布液を、半導体チップ20の他面20bの中心部側から半導体チップ20の外縁部側に流動させるようにする。
【選択図】
図4C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面(20a)および前記一面と反対側の他面(20b)を有する半導体チップ(20)と、
搭載面(11a)を有し、前記搭載面に前記半導体チップの他面が対向する状態で配置される被実装部材(10)と、
前記半導体チップの他面と前記被実装部材の搭載面との間に配置される接合部材(30)と、を備え、
前記接合部材は、板状のフィラー(31)が焼結された焼結体で構成されており、
前記搭載面のうちの前記半導体チップと対向する部分および前記半導体チップの他面は、少なくとも一方に凸部(12)が形成されることで摩擦力が異なる構成とされている半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップを用意することと、
前記搭載面を有する前記被実装部材を用意することと、
ディスペンサ法により、前記搭載面に、分散媒(32)に前記フィラーが分散された塗布液(33)を塗布することと、
前記塗布液上に前記半導体チップを配置することと、
前記塗布液を焼結して前記接合部材を構成することと、を行い、
前記半導体チップを用意することおよび前記被実装部材を用意することでは、前記搭載面のうちの前記半導体チップと対向する部分および前記半導体チップの他面のうちの少なくとも一方に前記凸部が形成されることで摩擦力が異なる構成とされたものを用意し、
前記半導体チップを配置することでは、前記半導体チップと前記搭載面との間に位置する前記塗布液を、前記半導体チップの他面の中心部側から前記半導体チップの外縁部側に流動させる半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記被実装部材を用意することでは、前記半導体チップが配置された際、前記半導体チップの他面の中心部と対向する部分から外縁部と対向する部分に向かう方向と交差する方向に延びる前記凸部が、前記向かう方向に複数形成され、前記半導体チップの他面よりも摩擦力が大きくされたものを用意する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体チップを用意することでは、円柱状のものを用意し、
前記被実装部材を用意することでは、前記搭載面のうちの前記半導体チップの他面の中心部と対向する部分を中心とし、複数の前記凸部が同心円状に形成されたものを用意する請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記被実装部材を用意することでは、前記向かう方向において隣合う前記凸部の間隔が前記フィラーの面方向における長辺の平均長さより狭くされているものを用意する請求項2または3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記被実装部材を用意することでは、前記凸部の高さが前記フィラーの面方向における長辺の平均長さより高くされているものを用意する請求項2または3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記被実装部材を用意することでは、前記凸部として、前記搭載面のうちの前記半導体チップの他面の中心部と対向する部分側の方が、前記半導体チップの他面の外縁部と対向する部分よりも高くされているものを用意する請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記被実装部材を用意することでは、前記凸部が前記被実装部材における搭載面と同じ材料で構成されているものを用意する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記被実装部材を用意することでは、凹部(11)が形成され、前記凹部の底面(11a)が搭載面とされているものを用意する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記被実装部材を用意することでは、前記凹部の側面(11b)に、前記凹部の深さ方向に沿って複数の凸部(14)が形成されたものを用意する請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記被実装部材を用意することでは、前記凹部の底面と側面との連結部分(11c)が丸められているものを用意する請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記被実装部材を用意することでは、前記半導体チップの他面の中心部と対向する部分を通って所定方向に延び、前記凸部よりも高さが高くされた仕切板(15)が形成されたものを用意する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記被実装部材を用意することでは、前記半導体チップの他面の外縁部と対向する部分まで前記仕切板が延設されているものを用意する請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記被実装部材を用意することでは、前記搭載面側から突出方向に向かって幅が狭くされた前記仕切板を有するものを用意する請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記被実装部材を用意することでは、前記搭載面のうちの前記半導体チップの他面の中心部と対向する部分側から、前記半導体チップの他面の外縁部と対向する部分側に向かって幅が広くされた前記仕切板を有するものを用意する請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
半導体装置であって、
一面(20a)および前記一面と反対側の他面(20b)を有する半導体チップ(20)と、
搭載面(11a)を有し、前記搭載面に前記半導体チップの他面が対向する状態で配置される被実装部材(10)と、
前記半導体チップの他面と前記被実装部材の搭載面との間に配置される接合部材(30)と、を備え、
前記接合部材は、板状のフィラー(31)が焼結された焼結体で構成されており、
前記搭載面のうちの前記半導体チップと対向する部分および前記半導体チップの他面は、少なくとも一方に凸部(12)が形成されることで摩擦力が異なる構成とされている半導体装置。
【請求項16】
前記半導体チップは、円柱状とされ、
前記凸部は、前記搭載面のうちの前記半導体チップの他面の中心部と対向する部分を中心として同心円状に複数形成されている請求項15に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップを被実装部材に接合部材を接合して構成される半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体チップを被実装部材に接合部材を接合して半導体装置を製造する製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この製造方法では、まず、被実装部材上に所定の第1厚さとなるように塗布液を塗布する。そして、この製造方法では、塗布液が第2厚さとなるように半導体チップで塗布液を押圧した後、塗布液を焼結して接合部材を構成することで半導体装置を製造する。なお、塗布液は、板状の粒子で構成されるフィラーが有機溶剤に混入されたものが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記のような製造方法では、フィラーの面方向がばらばらになり易く、接合部材の接合強度が低下する場合があることが確認された。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、接合部材の接合強度を高くできる半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1は、一面(20a)および一面と反対側の他面(20b)を有する半導体チップ(20)と、搭載面(11a)を有し、搭載面に半導体チップの他面が対向する状態で配置される被実装部材(10)と、半導体チップの他面と被実装部材の搭載面との間に配置される接合部材(30)と、を備え、接合部材は、板状のフィラー(31)が焼結された焼結体で構成されており、搭載面のうちの半導体チップと対向する部分および半導体チップの他面は、少なくとも一方に凸部(12)が形成されることで摩擦力が異なる構成とされている半導体装置の製造方法であって、半導体チップを用意することと、搭載面を有する被実装部材を用意することと、ディスペンサ法により、搭載面に、分散媒(32)にフィラーが分散された塗布液(33)を塗布することと、塗布液上に半導体チップを配置することと、塗布液を焼結して接合部材を構成することと、を行い、半導体チップを用意することおよび被実装部材を用意することでは、搭載面のうちの半導体チップと対向する部分および半導体チップの他面のうちの少なくとも一方に凸部が形成されることで摩擦力が異なる構成とされたものを用意し、半導体チップを配置することでは、半導体チップと搭載面との間に位置する塗布液を、半導体チップの他面の中心部側から半導体チップの外縁部側に流動させる。
【0007】
これによれば、半導体チップを配置する際、塗布液うちの半導体チップの他面側に位置する部分と搭載面側に位置する部分とで印加される摩擦力が異なるため、半導体チップの他面と凹部の底面との間に位置するフィラーの面方向が半導体チップの他面における面方向に沿った状態となり易くなる。このため、このようなフィラーの焼結体で構成される接合部材の接合強度を高くできる。
【0008】
請求項15は、請求項1の製造方法の発明によって製造される半導体装置であり、一面(20a)および一面と反対側の他面(20b)を有する半導体チップ(20)と、搭載面(11a)を有し、搭載面に半導体チップの他面が対向する状態で配置される被実装部材(10)と、半導体チップの他面と被実装部材の搭載面との間に配置される接合部材(30)と、を備え、接合部材は、板状のフィラー(31)が焼結された焼結体で構成されており、搭載面のうちの半導体チップと対向する部分および半導体チップの他面は、少なくとも一方に凸部(12)が形成されることで摩擦力が異なる構成とされている。
【0009】
これによれば、半導体チップの他面と凹部の底面との間に位置するフィラーの面方向が半導体チップの他面における面方向に沿った状態となるため、接合部材の接合強度を高くできる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態における半導体装置の断面図である。
【
図4A】
図1に示す半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図4B】
図4Aに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図4C】
図4Bに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図4D】
図4Cに続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5】
図4Cの工程における塗布液の状態を説明するための図である。
【
図6】第1実施形態の半導体装置におけるフィラー角度と個数との関係を示す図である。
【
図8】比較例の半導体装置におけるフィラー角度と個数との関係を示す図である。
【
図9】第1実施形態の半導体装置および比較例の半導体装置と、接合強度との関係を示す図である。
【
図10】第2実施形態における半導体装置の断面図である。
【
図11】第3実施形態における半導体装置の断面図である。
【
図12】第3実施形態における
図4Cの工程を行った際の状態を説明するための図である。
【
図13】第4実施形態における半導体装置の断面図である。
【
図14】第5実施形態における半導体装置の断面図である。
【
図15】第5実施形態における凹部の平面図である。
【
図16A】第5実施形態の変形例における凹部の平面図である。
【
図16B】第5実施形態の変形例における凹部の平面図である。
【
図16C】第5実施形態の変形例における凹部の平面図である。
【
図16D】第5実施形態の変形例における凹部の平面図である。
【
図17】第6実施形態における半導体装置の断面図である。
【
図18】第6実施形態の変形例における半導体装置の平面図である。
【
図19】第7実施形態における凹部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の半導体装置は、例えば、車両に搭載され、車両に搭載される電子部品を駆動するのに利用されると好適である。
【0014】
本実施形態の半導体装置は、
図1に示されるように、被実装部材10に半導体チップ20が接合部材30を介して配置されることで構成されている。
【0015】
被実装部材10は、シリコン基板やプリント基板等で構成され、一面10aに凹部11が形成されている。本実施形態では、凹部11は、底面11aと側面11bとを有しており、底面11aと側面11bとの連結部分11cが略垂直とされている。また、凹部11は、開口部および底面11aが円状とされている。なお、本実施形態における円状とは、真円状に加え、楕円状も含むものであり、さらに真円および楕円が僅かに歪んだ略円状も含むものである。また、本実施形態では、凹部11の底面11aが搭載面に相当する。
【0016】
凹部11の底面11aには、複数の凸部12が形成されている。本実施形態では、凸部12は、円環状とされて複数形成され、凹部11の底面11aの中心に対して同心円状に配置されている。なお、このような凸部12は、例えば、被実装部材10にフォトエッチング等を行うことによって形成され、被実装部材10と同じ材料(すなわち、凹部11の底面11aと同じ材料)で構成される。また、本実施形態の凸部12は、後述する半導体チップ20の他面20bにおける算出平均粗さRaよりも凹部11の底面11aが粗くなるように形成されている。
【0017】
本実施形態の各凸部12は、凹部11の底面11aにおける径方向に隣合う部分の間隔が、後述するフィラー31の平均長さよりも狭くされている。また、本実施形態の各凸部12は、突出方向における高さがそれぞれ同じとされ、かつ高さが後述するフィラー31の平均長さよりも高くされている。
【0018】
半導体チップ20は、シリコン基板やシリカガラス等を用いて構成され、MOSFET素子、IGBT素子、ダイオード素子等の半導体素子が適宜形成されて構成されている。なお、MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistorの略であり、IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略である。そして、本実施形態の半導体チップ20は、一面20a、一面20aと反対側の他面20b、一面10aと他面20bを繋ぐ側面20cを有する円柱状とされている。なお、本実施形態における円柱状とは、真円柱状に加え、楕円柱状も含むものであり、さらに真円柱状および楕円柱状が僅かに歪んだ略円状も含むものである。また、本実施形態の半導体チップ20における他面20bは、略平坦面とされている。
【0019】
接合部材30は、凹部11の底面11aと半導体チップ20とを接続するように配置され、
図3に示されるように、複数のフィラー31が焼結された焼結体で構成されている。本実施形態の各フィラー31は、鱗片状等の板状とされており、面方向における最も長い部分の長さ(以下では、単に最長長さともいう)が1~10μm程度とされている。なお、上記のフィラー31の平均長さとは、各フィラー31の最長長さの平均のことである。また、各フィラー31は、厚さに対する最長長さのアスペクト比が2以上とされている。そして、各フィラー31は、面方向が半導体チップ20における他面20bの面方向に沿った状態で焼結されている。なお、フィラー31は、例えば、導電性である銀フィラーが用いられるが、絶縁性のもので構成されていてもよい。
【0020】
以上が本実施形態における半導体装置の構成である。次に、上記半導体装置における半導体装置の製造方法について説明する。
【0021】
まず、
図4Aに示されるように、一面10aに凹部11が形成されると共に凹部11の底面11aに複数の凸部12が形成された被実装部材10を用意する。なお、上記のように、凹部11は開口部および底面11aが円状とされており、各凸部12は、凹部11の底面11aにおける中心に対して同心円状に形成されている。また、このような凹部11および凸部12は、被実装部材10にフォトエッチング等を行うことで形成される。
【0022】
次に、
図4Bに示されるように、ディスペンサ40を用いたディスペンサ法により、フィラー31を分散材32に混入させた塗布液33を凹部11に塗布する。なお、分散材32は、粘性を有する有機系材料や高分子材料等が用いられ、例えば、1~10Pa・S程度の粘性を有するアルコール系材料やエポキシ樹脂等が用いられる。また、ディスペンサ40によって塗布された塗布液33は、各フィラー31の面方向がばらばらになっている。そして、本実施形態では、後述の
図4Cの工程において、塗布液33が凹部11から溢れ出さないように、塗布液33の塗布量が調整されている。
【0023】
続いて、
図4Cに示されるように、凹部11内に、例えば、1~5Nの押し込み力で半導体チップ20を塗布液33上に配置する。具体的には、他面20bにおける中心部と凹部11の底面11aにおける中心部とが対向するように、半導体チップ20を塗布液33上に配置する。
【0024】
なお、本実施形態では、他面20bが凸部12と離れた状態となるように半導体チップ20が配置される。例えば、半導体チップ20は、凹部11の底面11aと半導体チップ20の他面20bとの間隔が100μm程度となるように配置される。また、本実施形態では、他面20bにおける中心部と凹部11の底面11aにおける中心部とが対向するように半導体チップ20が配置される。このため、各凸部12は、凹部11の底面11aにおいて、半導体チップ20の他面20bの中心部と対向する部分を中心として同心円状に形成されているともいえる。
【0025】
ここで、半導体チップ20を凹部11内に配置した際の塗布液33の流動について説明する。半導体チップ20を凹部11内に配置すると、半導体チップ20の他面20bと凹部11の底面11aとの間に位置する塗布液33は、凹部11の側面11b側へと押し出される。つまり、塗布液33は、凹部11の底面11aの中心部側から径方向へと押し出される。言い換えると、塗布液33は、半導体チップ20の他面20bの中心部側から外縁部側へと押し出される。
【0026】
この際、本実施形態では、凹部11の底面11aに、凹部11の底面11aを中心した同心円状の複数の凸部12が形成されている。言い換えると、塗布液33の流動方向と交差する方向に延びる凸部12が、塗布液33の流動方向に沿って複数形成されている。また、半導体チップ20の他面20bは、略平坦状とされている。このため、塗布液33は、半導体チップ20の他面20b側に位置する部分と、凹部11の底面11a側に位置する部分とで印加される摩擦力(すなわち、せん断力)が異なる。
【0027】
具体的には、
図5に示されるように、塗布液33には、凹部11の底面11a側に位置する部分の方が、半導体チップ20の他面20b側に位置する部分よりも大きな摩擦力が印加される。つまり、本実施形態では、半導体チップ20の他面20bおよび凹部11の底面11aには、摩擦力を異ならせる構造が付加されている。このため、塗布液33は、凹部11の底面11a側に位置する部分の方が、半導体チップ20の他面20b側に位置する部分よりも流速が小さくなる。なお、
図5では、フィラー31を省略して示している。そして、フィラー31は、上記のように板状とされている。したがって、フィラーは、この流速差により、面方向が半導体チップ20の面方向と平行な方向に向き易くなる。
【0028】
また、本実施形態では、凸部12は、径方向に隣合う間隔がフィラー31の平均長さよりも狭くされている。このため、隣合う凸部12の間にフィラー31が完全に入り込み難くなる。つまり、隣合う凸部12の間に入り込んだフィラー31は、一部が凸部12上にはみ出した状態となり易い。したがって、このフィラー31も摩擦力を高くする要因となり、さらに、凹部11の底面11a側の摩擦力を高くできる。
【0029】
さらに、本実施形態では、凸部12は、高さがフィラー31の平均長さより高くされている。このため、隣合う凸部12の間に一部が入り込んだフィラー31は、隣合う凸部12の間から抜け難くなる。したがって、隣合う凸部12の間に入り込んだフィラー31は、継続して凹部11の底面11a側の摩擦力を高くする要因となる。
【0030】
その後、
図4Dに示されるように、塗布液33を加熱してフィラー31を焼結する。これにより、フィラー31の面方向が半導体チップ20の他面20bの面方向に沿った焼結体で構成される接合部材30が形成されて上記の半導体装置が製造される。
【0031】
そして、上記のように製造した半導体チップ20について発明者らが確認したところ、
図6に示される結果が得られた。なお、
図6は、
図7のように、半導体チップ20の他面20bの面方向に沿った方向を0deg、半導体チップ20の面方向に対する法線方向であって、半導体チップ20側に向かう方向を+90deg、凹部11の底面側に向かう方向を-90degとしている。また、凹部11の底面11aに凸部12が形成されていない半導体装置を比較例の半導体装置とし、本発明者らは、比較例の半導体装置についても確認を行って
図8の結果を得た。
【0032】
なお、比較例の半導体装置は、凹部11の底面11aに凸部12が形成されていないこと以外は、上記の製造方法と同様の製造方法で製造したものである。また、
図6および
図8は、フィラー31の大きさが大きいものから順に100個のフィラー31を測定した結果である。
【0033】
図6および
図8に示されるように、本実施形態の半導体装置では、比較例の半導体装置と比較すると、半導体チップ20の他面20bの面方向に沿った(すなわち、0deg)フィラー31の数を多くできることが確認される。
【0034】
そして、本発明者らは、本実施形態の半導体装置と比較例の半導体装置について接合強度を確認し、
図9に示される結果を得た。
図9に示されるように、本実施形態の半導体装置では、比較例の半導体装置よりも接合強度を高くできることが確認される。なお、
図9における接合強度は、引張試験によって得られた結果である。
【0035】
以上説明した本実施形態によれば、半導体チップ20の他面20bと凹部11の底面11aとの間に位置するフィラー31の面方向が半導体チップ20の他面20bにおける面方向に沿った状態で接合部材30が構成されている。このため、接合部材30の接合強度を高くできる。
【0036】
(1)本実施形態では、ディスペンサ40を用いたディスペンサ法によって塗布液33を配置している。このため、印刷法等で塗布液33を配置する場合と比較して、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0037】
(2)本実施形態では、半導体チップ20を円柱状とし、各凸部12を同心円状に配置している。このため、塗布液33上に半導体チップ20を配置した際、各凸部12が塗布液33の流動方向と交差する方向に延びる状態となる。このため、塗布液33における半導体チップ20側の部分と凹部11の底面11a側の部分とに印加される摩擦力の大きさを異ならせ易くなり、フィラー31の面方向を半導体チップ20の他面20bにおける面方向に沿った方向とし易くできる。
【0038】
(3)本実施形態では、凸部12は、径方向に隣合う間隔がフィラー31の平均長さよりも狭くされている。このため、隣合う凸部12の間にフィラー31が完全に入り込み難くなる。つまり、隣合う凸部12の間に入り込んだフィラー31は、一部が凸部12上にはみ出した状態となり易い。したがって、このフィラー31も摩擦力を高くする要因となり、さらに、凹部11の底面11a側の摩擦力を高くできる。
【0039】
(4)本実施形態では、凸部12は、高さがフィラー31の平均長さより高くされている。このため、隣合う凸部12の間に一部が入り込んだフィラー31は、隣合う凸部12の間から抜け難くなる。したがって、隣合う凸部12の間に入り込んだフィラー31は、継続して凹部11の底面11a側の摩擦力を高くする要因となる。
【0040】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、凸部12の高さを変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0041】
本実施形態の半導体装置では、
図10に示されるように、凸部12は、凹部11の底面11aにおける中心部側に位置する部分の高さが、凹部11の底面11aにおける外縁部側に位置する部分の高さよりも高くされている。本実施形態の凸部12は、凹部11の底面11aにおける中心部側に位置する部分から、凹部11の底面11aにおける外縁部側に位置する部分に向かって順に高さが低くされている。
【0042】
以上が本実施形態における半導体装置の構成である。このような半導体装置は、次のように製造される。
【0043】
すなわち、上記
図4Aの工程では、上記のように高さが調整された凸部12を有する被実装部材10を用意する。そして、上記
図4Cの工程では、塗布液33上に半導体チップ20を配置する。
【0044】
ここで、塗布液33上に半導体チップ20を配置した際、塗布液33の流速は次のようになり易い。すなわち、塗布液22は、半導体チップ20の他面20bにおける中心部と凹部11の底面11aとの間に位置する部分の方が、半導体チップ20の他面20bにおける外縁部と凹部11の底面11aとの間に位置する部分よりも流速が小さくなり易い。このため、本実施形態のように凹部11の底面11aにおける中心部側の凸部12の高さを高くすることにより、塗布液33の流路を狭くすることで流速を大きくできる。したがって、半導体チップ20の他面20bにおける中心部と凹部11の底面11aとの間に位置する部分のフィラー31においても、面方向を半導体チップ20の他面20bの面方向に沿った方向とし易くできる。
【0045】
以上説明した本実施形態によれば、半導体チップ20の他面20bと凹部11の底面11aとの間に位置するフィラー31の面方向が半導体チップ20の他面20bにおける面方向に沿った状態で接合部材30が構成されている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
(1)本実施形態では、凸部12は、凹部11の底面11aにおける中心部側に位置する部分の高さが、凹部11の底面11aにおける外縁部側に位置する部分よりも高さが高くされている。したがって、塗布液33上に半導体チップ20を配置した際、半導体チップ20の他面20bにおける中心部と凹部11の底面11aとの間に位置する部分のフィラー31においても、面方向を半導体チップ20の他面20bの面方向に沿った方向とし易くできる。したがって、さらに接合強度の向上を図ることができる。
【0047】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、凹部11の側面11bにも凸部を追加したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
本実施形態の半導体装置では、
図11に示されるように、凹部11の側面11bにも凸部14が形成されている。本実施形態では、凸部14は、側面11bに沿って環状に形成されていると共に、側面11bの深さ方向に沿って複数形成されている。なお、半導体チップ20の側面20cは、略平坦状とされている。
【0049】
以上が本実施形態における半導体装置の構成である。このような半導体装置は、次のように製造される。
【0050】
すなわち、上記
図4Aの工程では、上記のように側面11bにも凸部14が形成された被実装部材10を用意する。そして、そして、上記
図4Cの工程では、塗布液33上に半導体チップ20を配置する。
【0051】
この場合、塗布液33は、
図12に示されるように、半導体チップ20の側面20cと凹部11の側面11bとの間の部分にも流動する。この際、本実施形態では、凹部11の側面11bにも凸部14が形成されているため、塗布液33は、半導体チップ20の側面20c側に位置する部分と、凹部11の側面11b側に位置する部分とで印加される摩擦力が異なる。具体的には、塗布液33には、凹部11の側面11b側に位置する部分の方が、半導体チップ20の側面20c側に位置する部分よりも大きな摩擦力が付加される。このため、塗布液33は、凹部11の側面11b側に位置する部分の方が、半導体チップ20の側面20c側に位置する部分よりも流速が小さくなる。したがって、半導体チップ20の側面20cと凹部11の側面11bとの間の部分に位置するフィラー31は、この流速差により、面方向が半導体チップ20の側面20cにおける面方向と平行な方向になり易くなる。
【0052】
したがって、上記
図4Dの工程にてフィラー31を焼結した際、半導体チップ20の側面20cと凹部11の側面11bとの間に位置する接合部材30の接合強度も高くできる。
【0053】
以上説明した本実施形態によれば、半導体チップ20の他面20bと凹部11の底面11aとの間に位置するフィラー31の面方向が半導体チップ20の他面20bにおける面方向に沿った状態で接合部材30が構成されている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
(1)本実施形態では、凹部11の側面11bにも凸部14が形成されている。このため、半導体チップ20の側面20cと凹部11の側面11bとの間に位置する接合部材30の接合強度も高くできる。
【0055】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第3実施形態に対し、凹部11の底面11aと側面11bとの連結部分11cを丸めたものである。その他に関しては、第3実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0056】
本実施形態の半導体装置は、
図13に示されるように、凹部11は底面11aと側面11bとの連結部分11cに丸みが付けられている。言い換えると、凹部11は底面11aと側面11bとの連結部分11cが曲面状とされている。
【0057】
以上説明した本実施形態によれば、半導体チップ20の他面20bと凹部11の底面11aとの間に位置するフィラー31の面方向が半導体チップ20の他面20bにおける面方向に沿った状態で接合部材30が構成されている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
(1)本実施形態では、凹部11は、底面11aと側面11bとの連結部分11cが丸められている。このため、
図4Cの工程を行う際、底面11aと側面11bとの連結部分11cが直角とされている場合と比較して、連結部分11cの近傍に塗布液33が滞留し難くなり、半導体チップ20の側面20cと凹部11の側面11bとの間に塗布液33が流動し易くなる。このため、半導体チップ20の側面20cと凹部11の側面11bとの間に位置する部分において、フィラー31の面方向を半導体チップ20の側面20cにおける面方向に沿った方向とし易くできる。
【0059】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、仕切板を追加したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0060】
本実施形態の半導体装置では、
図14および
図15に示されるように、凹部11の底面11aに仕切板15が備えられている。仕切板15は、凸部12よりも高さが高くされ、凹部11の底面11aにおける中心部を複数の領域に分割するように設けられている。言い換えると、仕切板15は、半導体チップ20の他面20bにおける中心部と対向する部分を複数の領域に分割するように設けられている。本実施形態では、仕切板15は、凹部11の底面11aにおける中心部を4分割するように、略+字状に備えられている。
【0061】
具体的には、凹部11の底面11aの面方向に沿った一方向を第1方向とし、第1方向と交差する方向であって、凹部11の底面11aの面方向に沿った方向を第2方向とすると、仕切板15は、次のように構成されている。すなわち、仕切板15は、第1方向に沿って延びる第1仕切板15aと、第2方向に沿って延びる第2仕切板15bとを有している。そして、第1仕切板15aと第2仕切板15bとは、凹部11の底面11aにおける中心にて交差するように配置されている。
【0062】
また、本実施形態では、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bは、凹部11の底面11aにおける中心部から外縁部に向かって延設されている。本実施形態では、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bは、凹部11の底面11aのうちの半導体チップ20の他面20bと対向する部分に形成されている。
【0063】
また、本実施形態では、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bは、凹部11の底面11aにおける中心部側に位置する部分と、外縁部側に位置する部分との間がスリット16にて分割されている。言い換えると、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bは、半導体チップ20の他面20bの中心部と対向する部分と、半導体チップ20の外縁部と対向する部分とが分離されている。以下、第1仕切板15aにおいて、半導体チップ20の他面20bの中心部と対向する部分を第1内側仕切板151aともいい、半導体チップ20の外縁部と対向する部分を第1外側仕切板152aともいう。同様に、第2仕切板15bにおいて、半導体チップ20の他面20bの中心部と対向する部分を第2内側仕切板151bともいい、半導体チップ20の外縁部と対向する部分を第2外側仕切板152bともいう。
【0064】
そして、半導体チップ20は、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bと当接するように配置されている。
【0065】
以上が本実施形態における半導体装置の構成である。このような半導体装置は、次のように製造される。
【0066】
すなわち、上記
図4Aの工程では、凹部11に仕切板15が備えられた被実装部材10を用意する。
【0067】
そして、
図4Cの工程を行う際には、半導体チップ20が仕切板15と当接するように配置する。この際、仕切板15が備えられているため、塗布液33は、仕切板15により、各仕切板15で囲まれる領域に均等に流動し易くなる。このため、半導体チップ20の他面20bと凹部11の底面11aとの間において、特定領域の塗布液33が多くなったり、少なくなったりすることを抑制できる。したがって、部分毎に接合強度がばらつくことを抑制できる。また、本実施形態では、半導体チップ20が仕切板15と当接するように配置されている。このため、半導体チップ20の凹部11の底面11aからの高さがばらつくことを抑制できる。
【0068】
また、本実施形態では、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bにスリット16が形成されている。このため、スリット16を通じて各領域の塗布液33が流動できるため、さらに特定領域の塗布液33が多くなったり、少なくなったりすることを抑制できる。
【0069】
以上説明した本実施形態によれば、半導体チップ20の他面20bと凹部11の底面11aとの間に位置するフィラー31の面方向が半導体チップ20の他面20bにおける面方向に沿った状態で接合部材30が構成されている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
(1)本実施形態では、半導体チップ20の他面20bにおける中心部と対向する部分を複数の領域に分割するように仕切板15が配置されている。このため、半導体チップ20の他面20bと凹部11の底面11aとの間において、特定領域の塗布液33が多くなったり、少なくなったりすることを抑制できる。
【0071】
(2)本実施形態では、半導体チップ20は、仕切板15と当接するように配置されている。このため、半導体チップ20の凹部11の底面11aからの高さがばらつくことを抑制できる。
【0072】
(3)本実施形態では、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bにスリット16が形成されている。このため、スリット16を通じて各領域の塗布液33が流動できるため、さらに特定領域の塗布液33が多くなったり、少なくなったりすることを抑制できる。
【0073】
(第5実施形態の変形例)
第5実施形態の変形例について説明する。第5実施形態において、
図16Aに示されるように、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bにスリット16が形成されていなくてもよい。また、特に図示しないが、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bの一方のみにスリット16が形成されていてもよい。さらに、
図16Bに示されるように、仕切板15は、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bに加え、第1方向および第2方向と交差する方向に沿って延びる第3仕切板15cを備えるようにしてもよい。なお、
図16Bの構成では、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bと同様に、第3仕切板15cは、スリット16にて分割されている。そして、この構成では、第3仕切板15cにおいて、半導体チップ20の他面20bの中心部と対向する部分が第3内側仕切板151cとなり、半導体チップ20の外縁部と対向する部分が第3外側仕切板152cなる。そして、
図16Cに示されるように、例えば、第3仕切板15cは、第3外側仕切板152cのみが形成されていてもよい。この場合、仕切板15は、凹部11の底面11aにおいて、半導体チップ20の他面20bの中心部と対向する部分より、半導体チップ20の他面20bにおける外縁部と対向する部分の方が密の状態となる。このため、領域の大きい外縁部側においても均等に塗布液33を流し易くできる。さらに、
図16Dに示されるように、第1外側仕切板152aおよび第2外側仕切板152bは、凹部11の底面11aにおける中心部側に位置する部分(すなわち、塗布液33の流れ方向の上流側に位置する部分)が先細り形状とされていてもよい。これによれば、塗布液33が凹部11の底面11aにおける中心部側から外縁部側へ流れる際の損失を低減できる。また、特に図示しないが、仕切板15は、第1仕切板15aまたは第2仕切板15bの一方のみで構成されるようにしてもよい。
【0074】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。本実施形態は、第5実施形態に対し、仕切板15の形状を変更したものである。その他に関しては、第5実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0075】
本実施形態の半導体装置では、
図17に示されるように、第2仕切板15bは、凹部11の底面11a側から半導体チップ20の他面20b側に向かって幅が狭くされている。なお、
図17は、
図15中のXVII-XVII線に沿った断面図に相当している。また、特に図示しないが、第1仕切板15aは、凹部11の底面11a側から半導体チップ20の他面20b側に向かって幅が狭くされている。なお、本実施形態では、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bは、突出方向の先端が面状とされている。つまり、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bは、断面台形状とされている。
【0076】
以上が本実施形態における半導体装置の構成である。このような半導体装置は、次のように製造される。
【0077】
すなわち、上記
図4Aの工程では、上記のような仕切板15が形成された被実装部材10を用意する。そして、上記
図4Cの工程では、塗布液33上に半導体チップ20を配置する。
【0078】
この際、仕切板15が上記のように構成されているため、塗布液33の流路が広くなる。特に、半導体チップ20の他面20bにおける中心部と凹部11の底面11aにおける中心部との間に位置する部分は、塗布液33の流れ方向における始点となるため、流路を広くすることで塗布液33の流れを安定させ易くできる。
【0079】
以上説明した本実施形態によれば、半導体チップ20の他面20bと凹部11の底面11aとの間に位置するフィラー31の面方向が半導体チップ20の他面20bにおける面方向に沿った状態で接合部材30が構成されている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
(1)本実施形態では、仕切板15は、凹部11の底面11a側から半導体チップ20の他面20b側に向かって幅が狭くされている。このため、塗布液33の流路を広くすることで塗布液33の流れを安定させ易くできる。
【0081】
(第6実施形態の変形例)
上記第6実施形態では、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bの全体をテーパ状とする例について説明した。この場合、塗布液33に対する整流効果は、塗布液33の流れ方向における上流側で行われることが好ましい。このため、第1仕切板15aおよび第2仕切板15bは、少なくとも第1内側仕切板151aおよび第1外側仕切板152aがテーパ状とされることが好ましい。
【0082】
また、
図18に示されるように、第2仕切板15bは、さらに流路を確保し易くするために突出方向の先端が尖った形状とされていてもよい。同様に、特に図示しないが、第1仕切板15aは、突出方向の先端が尖った形状とされていてもよい。
【0083】
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。本実施形態は、第5実施形態に対し、第1外側仕切板152aおよび第2外側仕切板152bの構成を変更したものである。その他に関しては、第5実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0084】
本実施形態の半導体装置は、
図19に示されるように、第1外側仕切板152aは、凹部11の底面11aにおける中心部側から外縁部側に向かって幅が広くなるテーパ状とされている。同様に、第2外側仕切板152bは、凹部11の底面11aにおける中心部側から外縁部側に向かって幅が広くなるテーパ状とされている。言い換えると、第1外側仕切板152aおよび第2外側仕切板152bは、凹部11の底面11aのうちの半導体チップ20の他面20bの中心部と対向する部分から半導体チップ20の他面20bの外縁部と対向する部分に向かって、幅が広くなるテーパ状とされている。
【0085】
以上が本実施形態における半導体装置の構成である。このような半導体装置は、次のように製造される。
【0086】
すなわち、上記
図4Aの工程では、上記のような仕切板15が形成された被実装部材10を用意する。そして、上記
図4Cの工程では、塗布液33上に半導体チップ20を配置する。
【0087】
この際、仕切板15が上記のように構成されているため、凹部11の底面11aにおける外縁部側では塗布液33の流路が狭くなる。このため、凹部11の底面11aにおける外縁部側の流速をさらに速くでき、さらに凹部11の底面11aにおける外縁部側のフィラー31の面方向を半導体チップ20の他面20bの面方向に沿った方向にし易くできる。
【0088】
以上説明した本実施形態によれば、半導体チップ20の他面20bと凹部11の底面11aとの間に位置するフィラー31の面方向が半導体チップ20の他面20bにおける面方向に沿った状態で接合部材30が構成されている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
(1)本実施形態では、第1外側仕切板152aおよび第2外側仕切板152bは、凹部11の底面11aのうちの半導体チップ20の他面20bの中心部と対向する部分から半導体チップ20の他面20bの外縁部と対向する部分に向かって、幅が広くなるテーパ状とされている。このため、凹部11の底面11aにおける外縁部側の流速をさらに速くでき、さらに凹部11の底面11aにおける外縁部側のフィラー31の面方向を半導体チップ20の他面20bの面方向に沿った方向にし易くできる。
【0090】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0091】
例えば、上記各実施形態では、被実装部材10にフォトエッチングで凸部12を形成する例について説明した。しかしながら、凸部12は、被実装部材10とは別に用意され、接着剤等で凹部11の底面11aに配置されることで備えられるようにしてもよい。
【0092】
また、上記各実施形態では、凹部11の底面11aに凸部12を形成する例について説明した。しかしながら、フィラー31を半導体チップ20の他面20bの面方向に沿った方向とするためには、半導体チップ20の他面20bおよび凹部11の底面11aから塗布液33に印加される摩擦力が異なるようにすればよい。このため、半導体チップ20の他面20bに凸部を形成してもよい。この場合、塗布液33には、半導体チップ20の他面20b側に位置する部分の方が、凹部11の底面11a側に位置する部分よりも大きな摩擦力が印加される。また、上記第3、第4実施形態では、半導体チップ20の側面20cに凸部が形成され、凹部11の側面11bに凸部14が形成されていなくてもよい。さらに、半導体チップ20の他面20bおよび凹部11の底面11aから塗布液33に印加される摩擦力が異なるのであれば、凹部11の底面11aおよび半導体チップ20の他面20bの両方に凸部が形成されていてもよい。
【0093】
さらに、上記各実施形態では、被実装部材10に凹部11を形成する例について説明した。しかしながら、凹部11を形成せず、被実装部材10の一面10aに接合部材30を介して半導体チップ20を搭載するようにしてもよい。この場合は、被実装部材10の一面10aが搭載面となる。
【0094】
そして、上記各実施形態を組み合わせることもできる。例えば、上記第2実施形態を上記第3~第7実施形態に組み合わせ、凸部12の高さを変更するようにしてもよい。上記第3、第4実施形態を上記第5、第6実施形態に組み合わせ、側面11bに凸部14を形成するようにしてもよい。また、上記第6実施形態を上記第7実施形態に組み合わせ、仕切板15の幅を適宜調整するようにしてもよい。さらに、上記各実施形態を組み合わせたもの同士をさらに組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 被実装部材
12 凸部
20 半導体チップ
20a 一面
20b 他面
30 接合部材
31 フィラー
32 分散媒
33 塗布液