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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143286
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】土台水切りの遮水装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/70 20060101AFI20241003BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20241003BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E04B1/70 C
E04B1/64 C
E04B1/64 A
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055880
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000230607
【氏名又は名称】日本化学産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池永 豊
(72)【発明者】
【氏名】山口 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】中島 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸一
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001DB02
2E001FA21
2E001NA07
2E001NC02
2E001NC05
2E001ND01
2E139AA07
2E139AC19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】建物が水に浸かった状態であっても十分な遮水性能を有するとともに、土台水切りの遮水装置の設計において、床下空間への通気口の設計自由度を高くすることができる土台水切りの遮水装置を提供する。
【解決手段】本発明の土台水切りの遮水装置は、建築物の土台と、土台を支持する基礎との間に配置される、建築物の床下空間と外気とを連通する通気口2を有する土台水切りAにおいて、通気口2が形成された本体1と、通気口2を開閉可能な遮水板4と、本体1と遮水板4とを係合し、遮水板4が通気口2を開放する開放位置と通気口2を塞ぐ閉鎖位置間の回動を許容するヒンジ6と、ヒンジ6を挟んで反対側かつ遮水板4の下方に配置されるフロート5と、を有し、フロート5が水に浸ると、フロート5は、ヒンジ6により遮水板4を開放位置から閉鎖位置へ、フロート5の移動方向と異なる方向に移動させ、閉鎖位置で遮水板4を保持することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の土台と、前記土台を支持する基礎との間に配置される、建築物の床下空間と外気とを連通する通気口を有する土台水切りの遮水装置であって、
前記通気口が形成された本体と、前記通気口を開閉可能な遮水板と、前記本体と前記遮水板とを係合し、前記遮水板が前記通気口を開放する開放位置と前記通気口を塞ぐ閉鎖位置間の回動を許容するヒンジと、前記ヒンジを挟んで反対側かつ前記遮水板の下方に配置されるフロートと、を有し、
前記フロートが水に浸ると、前記フロートは、前記ヒンジにより前記遮水板を前記開放位置から前記閉鎖位置へ、前記フロートの移動方向と異なる方向に移動させ、前記閉鎖位置で前記遮水板を保持することを特徴とする土台水切りの遮水装置。
【請求項2】
請求項1記載の土台水切りの遮水装置であって、
前記遮水板と前記フロートは、前記ヒンジを境として屈曲して断面くの字型形状に連結されてることを特徴とする土台水切りの遮水装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の土台水切りの遮水装置であって、
前記ヒンジは、断面円形の溝と前記溝に篏合する断面円形の突条とによって構成され、前記溝は前記遮水板または前記フロートの一方に形成され、前記突条は前記遮水板または前記フロートの他方に形成されていることを特徴とする土台水切りの遮水装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の土台水切りの遮水装置であって、
前記ヒンジを挟んで前記遮水板の反対側に延長アームが形成され、前記フロートは前記延長アームの下方に配置され、前記フロートの浮力は前記延長アームを押し上げることで前記遮水板を回動させることを特徴とする土台水切りの遮水装置。
【請求項5】
請求項4記載の土台水切りの遮水装置であって、
前記延長アームと前記フロートとは、両者の相対的な角度を変えることができるジョイントによって連結されることを特徴とする土台水切りの遮水装置。
【請求項6】
請求項1または2記載の土台水切りの遮水装置であって、
土台水切りの遮水装置は、前記本体に着脱自在であって、少なくとも前記フロートを覆うカバーをさらに有することを特徴とする土台水切りの遮水装置。
【請求項7】
請求項1または2記載の土台水切りの遮水装置であって、
前記換気口は、外壁と建物躯体との間の外壁換気通路に連通する換気口を兼ねることを特徴とする土台水切りの遮水装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸水時、建築物基礎と土台との間に設置される床下空間の換気口を塞いで浸水被害を防ぐ土台水切りの遮水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の床下空間は、湿気がこもるため、建築物の土台と、それを載せる基礎との間にスペーサを配置し、その間に通気口を設ける構造が一般的である。
【0003】
一方、近年の気候変動に伴って各地で水害が発生することが多発しているが、集中豪雨や河川の氾濫などにより建築物が水に浸かった場合、この通気口から水が浸入すると、床下空間に水が溜まることになり、水損被害が大きくなるという課題が生じている。
【0004】
この課題を解決するため、建築物が水に浸かった場合に通気口を自動的に塞ぐ装置として、次のような従来技術が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-132869号公開公報
【特許文献2】特開2017-95999号公開公報
【0006】
特許文献1には、建築物の基礎101と土台103との間に形成される床下換気口108aの近傍に取り付けられる土台水切1(建物基礎の土台水切りの遮水装置)が開示されている。この土台水切1は、床下換気口108aと野外側との通気を可能にする開口33c(通気口)が形成されており、この開口33cを塞ぐことが可能な可動式の止水弁20cが設けられいる。
【0007】
そして、豪雨や河川の氾濫などにより建築物に水が押し寄せると、止水弁33cは屋外側から受ける水圧によりヒンジを中心に回動して開口33cを塞ぎ、床下換気口108aへの水の侵入を防止する構造となっている。
【0008】
また、特許文献2には、同様に建築物の基礎102と土台104との間に形成される床下換気通路Aの近傍に取り付けられる土台水切10(建物基礎の土台水切りの遮水装置)が開示されている。この土台水切10は、特許文献1と同様に、床下換気通路Aに連通するスリット状の開口部20(通気口)を有しており、この開口部20の下方には、開口部20を塞ぐシール部24が取り付けられた可動部材22が配置されている。
【0009】
そして、建築物が水に浸かると、可動部材22が浮上し、シール部24が下方から開口部20を塞ぐように接触することで、床下換気通路Aへの水の侵入を防ぐ構造となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の土台水切りの遮水装置においては、止水弁20cによる、床下換気口への開口の閉鎖は、押し寄せる水の水圧に頼るため、水が引かず水勢のない状態では、止水弁20cが重いと、水圧差があるとしても自重で下方に回動してしまう可能性がある。
【0011】
このため、一時的な豪雨や洪水には有効であるが、河川の氾濫で建物が長時間水に浸かってしまう状況にあっては、床下空間への水の侵入を止められない恐れがあり、建築物が水損を免れないという問題点があった。
【0012】
また、特許文献2の土台水切りの遮水装置においては、可動部材26が水に浸かるとその天面に固定されたシール部24が真っ直ぐ上方に移動し、シール部24が開口部20に下方から接触してこれを塞ぐ構造となっている。
【0013】
可動部材26が発生させる浮力が上方方向であるため、開口部20は必ず水平に設けなければ機能しないため、充分な開口面積を確保しようとすると土台水切りの遮水装置の幅が広くなってしまう場合があり、建築物の外壁から大きく突出しないサイズに収めようとすると装置の設計に制約を生じさせるという問題点があった。
【0014】
本発明はこのような従来の遮水機能を有する土台水切りの遮水装置の課題を解決するものであり、建物が水に浸かった状態であっても十分な遮水性能を有するとともに、遮水装置の設計において、床下空間への通気口の設計自由度を高くすることができる土台水切りの遮水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する代表的な土台水切りの遮水装置は、建築物の土台と、前記土台を支持する基礎との間に配置される、建築物の床下空間と外気とを連通する通気口を有する建築物基礎に設置される土台水切りにおいて、前記通気口が形成された本体と、前記通気口を開閉可能な遮水板と、前記本体と前記遮水板とを係合し、前記遮水板が前記通気口を開放する開放位置と前記通気口を塞ぐ閉鎖位置間の回動を許容するヒンジと、前記ヒンジを挟んで反対側かつ前記遮水板の下方に配置されるフロートと、を有し、前記フロートが水に浸ると、前記フロートは、前記ヒンジにより前記遮水板を前記開放位置から前記閉鎖位置へ、前記フロートの移動方向と異なる方向に移動させ、前記閉鎖位置で前記遮水板を保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては土台水切りが水に浸かると、水が通気口に至る前に遮水板より下方に位置するフロートが浮上して遮水板がこれを塞ぎ、水が引かないかぎり遮水板が通気口を塞ぐ状態を維持して建物の水損被害を確実に防止することができる。また、本発明の遮水装置では、ヒンジがフロートの上下方向の移動方向の移動を遮水板の他の方向の移動方向に変換するため、通気口を縦方向に形成しても通気口を側面方向から塞ぐことができ、結果として土台水切りの遮水装置の設計の自由度を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態にかかる、遮水装置を備えた土台水切りを取り付けた建築物の基礎構造の側断面図である。
図2】同実施形態にかかる遮水装置を備えた土台水切りの斜視図である。
図3】同実施形態にかかる遮水装置を備えた土台水切りのカバー部材の着脱を説明する基礎構造の斜視図である。
図4】(a)乃至(c)は、同実施形態にかかる遮水装置を備えた土台水切りの動作を説明する説明図である。
図5】本発明の第2実施形態にかかる、遮水装置を備えた土台水切りを取り付けた建築物の基礎構造の側断面図である。
図6】(a)乃至(c)は、同実施形態にかかる遮水装置を備えた土台水切りの動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
図1乃至図3を用いて、本発明に係る土台水切りの遮水装置の第1実施形態を具体的に説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、第1実施形態における遮水装置を備えた土台水切りAは、スチール、ステンレス、アルミなどの金属板をプレスによる折り曲げて形成した装置本体1を有し、この装置本体1には通気口2が形成される。また、装置本体1は、遮水板4、フロート5を一体に成型した回動部材3を、ヒンジ6を介して可動式に取り付けた構造を有している。すなわち、遮水装置は装置本体1、通気口2、回動部材3(遮水板4、フロート5及びヒンジの一部を構成する円形突条5c)、ヒンジ6によって構成される。なお、回動部材3はPVC,ABS,AES,PP,PE,PS,PC,PMMA,エラストマー等の合成樹脂で形成されるほか、押し出し成型によりアルミ等の軽量金属で形成される。
【0020】
遮水装置を備えた土台水切りAの装置本体1は長尺の建築資材であって、図1にその断面を示す通り、上から下に、建築物100の土台101に固定するための第1縦板部1a、縦板部1a下端から水平に張り出す第1横板部1b、上方に突設する外壁固定部1d、下方に延びる第2縦板部1e、建築物100側に後退して下向きに開放されたコ字状の第1カバーはめ込み溝1f、下方に延びる第3縦板部1g、ヒンジ6の一部を形成する円形溝1h、上記第1横板部1bに対向して水平に張り出す第2横板部1i、下方に延びる第4縦板部1j、そして、上記第1カバーはめ込み溝1fに対向し、上向きに開放されたコ字状の第2カバーはめ込み溝1kを、一枚の金属板を折り曲げて形成している。
【0021】
また、図2に図示するように、上記第3縦板部1gには、スリット状の穴が間欠状に形成されて、通気口2を形成している。また、第2横板部1bの表面には多数の小孔を開口しており、これを後述する外壁材107の裏面に設けられる外壁換気通路108に連通する換気口1cとしている。
【0022】
次に、図1を用いて、この遮水装置を備えた土台水切りAを建築物100の基礎部分に取り付けた構造を説明する。建築物100の土台101は地面にあらかじめコンクリート等で形成された基礎102は基礎パッキン(ネコ土台)103を介在させて載置される。
【0023】
土台101上に施工させる建築物の床材104の下方には床下空間105が形成されるが、上記の基礎パッキン103には換気通路106が形成されており、床下空間105はこの換気通路106を介して外気Oと連通しており、床下空間105を換気する構造となっている。
【0024】
遮水装置を備えた土台水切りAは、この建築物100の土台101と基礎102との間に、建築物100の外側から取り付ける。すなわち、遮水装置を備えた土台水切りAの第2横板部1iを基礎102の縁部上縁に載せるように位置決めし、第1縦板部1aを土台101の側面に釘、ネジ等の固定材109で固定することにより、建築物100の土台101と基礎102との連結帯を覆う。
【0025】
そして、さらに外壁材107を、その下端に形成された溝107aを土台水切りAの外壁固定部1dの突条に載せることで、外壁材107を建築物100に対して位置決めして施工する。
【0026】
なお、土台水切りAの第2横板部1iと基礎102との間、同第1横板部1bと外壁材107との間には、それぞれEPDM、PVCの発泡体や、吸水ポリマーを使った水膨張材、あるいはゴム等である水密部材1n、1m、を取り付けている。このため、土台水切りAの装置本体1は土台101と基礎102との間で密閉基礎空間110を形成し、床下空間105(換気通路106)、外壁換気通路108と建築物の外気Oは、換気通路2のみを介して連通することとなる。
【0027】
土台水切りAの装置本体1の外側には、遮水板4、フロート5を合成樹脂により一体に成型した回動部材3とさらにこの回動部材3を覆うカバー7が取り付けられている。この回動部材3は装置本体1と同様に長尺状の部材である。遮水板4とフロート5は所定角度をもって一体に成型され、このくの字形状を構成する連結部分には、断面が円形となった円形突条5cがさらに成型されている。
【0028】
そして、この円形突条5cを装置本体1の、円形突条5cの直径より狭い開口部を有する円形溝1hに篏合することで、両者が容易に分離せず、かつ装置本体1に対して遮水板4及びフロート5を回動させるヒンジ6を形成する。なお、フロート5は、下方から上昇する水を遮水板4より先に受けて早期に遮水板4を作動させるため、遮水板4に対して下方に位置するように設計している。
【0029】
遮水板4は、平板部4aと、同平板部4aの建築物100側の表面に適度な弾性を有する帯状の水密部材4bを固定した部材である。水密部材4bの材質としては、EPDM,PVCの発泡体や、吸水ポリマーを使った水膨張材、あるいはゴム等を用いることができる。そして、遮水板4はヒンジ6を支点に回動し、上方に移動した際には、装置本体の第3縦板部1gに略水平方向に対向し、通気口2を覆うように構成されている。
【0030】
フロート5は、円筒形状の中空体である浮子部5aと、この浮子部5aを遮水板4に連結させるアーム部5bと、上述した建築物100側に円形突条5cとからなる。浮子部5aは、内部が中空であって、図示しない長手方向両端部は蓋等により塞がれて内部に空気層が形成され、水没した際に浮力を発生させる。
【0031】
カバー7は、適度な可撓性を有する金属若しくは合成樹脂により形成された長尺部材であり、建築物100の外側に張り出すコ字状のカバー本体7aを有し、その両端には、それぞれ装置本体1の第1カバーはめ込み溝1fと第2カバーはめ込み溝1kに篏合する上部突条7b、下部突条7cとを形成する。また、カバー本体7aの下面には、装置本体1の通気口2と外気Oとの外気換気口7dを形成している。
【0032】
図3にカバー7の、装置本体1への着脱方法を説明する。まず、カバー7の下部突条7cを装置本体1下端の第2はめ込み溝1kに篏合する。そして、この部分を支点にカバー7のカバー本体7aを回動させ、上部突条7bを装置本体1上部に形成される第1はめ込み溝1fに篏合することで、カバー7が遮水板4及びフロート5を覆うように装置本体1に装着する。
【0033】
なお、上述のように、カバー7は可撓性を有する材料で形成されるため、作業者がカバー本体7aを変形させることで、簡単に突条7b、7cとはめ込み溝1f、1kとの係合を解除することができる。そして、カバー7を外して回動部材3を露出させることで、作業者は、回動部材3の修理や交換を簡単に行うことができる。
【0034】
カバー7が装置本体1に装着された状態では、装置本体1との間にカバー空間111が形成され、このカバー空間111は装置本体1の通気口2を介して、装置本体1裏側の密閉基礎空間110と連通し、また、このカバー空間111はカバー7下面の外気換気口7dを介して、外気Oと連通する。なお、カバー7は回動部材3を保護するためのものであり、カバー空間111に気密性は要求されない。
【0035】
なお、カバー空間111は、可動する遮水板4及びフロート5の動きを妨げず、またフロート5が下がった状態において通気口2と外気換気口7との間の空気流路が妨げられないような空間を持つように設計される。
【0036】
図4を用いて、本実施形態の土台水切りAの作動を説明する。同図(a)に示すように、通常時、遮水板4は回動部材3の自重により、通気口2から離れた開放位置に位置して、この通気口2を通して床下空間105と外気Oとの通気を可能としている。この状態で洪水等が発生し、建築物100の基礎102が水没すると、水Wはカバー7の外気換気口7dやその他から侵入し、フロート5の下端に至る。
【0037】
同図(b)に示すように、水Wの量が増え、水面W.L.が上昇すると、フロート5の浮子部5aに浮力を発生させて、フロート5を上方に押し上げる。この時、フロート5の移動方向M1は上方向となるが、ヒンジ6が支点となって遮水板4の移動方向M2を横方向に変換する。
【0038】
そして、同図(c)に示すように、さらに水Wの量が増え、基礎102の上方まで水面W.L,が上昇すると、フロート5の上昇に伴って遮水板4の水密部材4bが閉鎖位置に移動し、装置本体1の垂直な第3縦板部1gに形成された通気口2に側面から当接する。すなわち、水面W.L.が通気口2より低い位置にある状態で、通気口2を塞ぐことができる。このため、建築物100が水Wに浸かったとしても、水Wが換気口2を通り、基礎密閉空間110さらに床下空間105に侵入することを防止することができる。
【0039】
この後、さらに水Wの量が増え、水面W.L.が通気口2の高さに至っても、水没してさらに大きくなったフロート5の浮力(上方への移動方向M1)が、より強い力で遮水板4が横方向(移動方向M2)の力に変換されて装置本体1側に当接するため、換気口2の確実な閉鎖を継続することになる。
【0040】
なお、水Wが引いて水面W.L.が下がった際には、フロート5は自重で下方に下がり、遮水板4による通気口2の閉鎖も自動的に解除される。
【0041】
このように、本実施形態の土台水切りAに拠れば、建築物100の基礎102に水Wが迫った場合、床下空間105に連通する通気口2をいち早く閉鎖することができ、洪水の際の床下空間105への水Wの浸入を自動的に防止することができる。
【0042】
特に、本実施形態の土台水切りAでは、遮水板4とフロート5を一体とした回動部材3の円形突条5cを装置本体1の円形溝1hにパチリと篏合するだけで簡単にヒンジ6を形成することができ、また、篏合を解除するだけで回動部材3を装置本体1から分離することができるので、部品点数を減らし、メンテナンスも容易にすることができる。なお、円形突条5cは、装置本体1が可撓性に乏しい場合、その側面から円形溝1hに差し込んで、係合させることもできる。
【0043】
さらに、土台水切りAは回動部材3を有し、材質の劣化や虫や小動物の侵入などによってメンテナンスが必要となる場合があるが、これを覆うカバー7を簡単に着脱することができるために、回動部材3の修理や交換を円滑に行うことができる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態にかかる遮水装置を備えた土台水切りBを、図5及び図6を用いて説明する。第1実施形態と同様の構造については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
本実施例の土台水切りBの特徴は、フロート15の浮子15aを別部材として構成し、遮水板4に、くの字を形成するように所定角度で連結される延長アーム15bとを結するジョイント15d、15fを設けたことである。浮子15aは、縦長の断面矩形を有しており、長手方向両端を閉鎖された合成樹脂製の中空体である。土台水切りBの遮水装置は、装置本体1、通気口2、遮水板4、フロート15、ヒンジ6によって構成される。
【0046】
ここで、浮子15aと延長アーム15bを連動させるジョイントは、延長アーム15bの下端に形成される溝15dと、これに篏合する、浮子15aの上面に形成された突条15fとにより構成され、浮子15aと延長アーム15bとは、両者の連結角度を所定範囲で変えることができる構造を有している。
【0047】
なお、延長アーム15bの溝15dと浮子15aの突条15fは、上述したヒンジ6のように両者が離れないように連結する必要はなく、浮子15aが浮力を得て上昇した際に、この浮力を延長アーム15bが受けることができればよい。
【0048】
また、延長アーム15bの先端部には浮子押さえ部15gが形成されており、フロート15の浮子15aがカバー7内で下がった位置にある通常時は、この浮子押さえ部15gが浮子15aの横方向の移動を抑えて位置決めするため、浮子15aと延長アーム15bとが強固に連結されていなくとも、浮子15aがカバー空間111内で大きく動くことがなく、浮子15aが換気経路を塞ぐ恐れがないために、カバー空間111内で十分な換気経路を確保することができる。
【0049】
図6を用いて、本実施形態の土台水切りBの作動を説明する。同図(a)に示すように、通常時、遮水板4は延長アーム15bなどの自重により、通気口2から離れた開放位置に位置して、床下空間105と外気Oとの通気を可能としている。この状態で、洪水等が発生し、建築物100の基礎102が水没すると、水Wはカバー7の外気換気口7dやその他から侵入し、フロート15の浮子15aの下端部に達する。
【0050】
次に、同図(b)に示すように、水Wの量が増え、水面W.L.が上昇すると、浮子15aに浮力を発生させて、その上面にある延長アーム15bを上方に押し上げる。この時、浮子15aが延長アーム15bに伝える移動方向M1は上方向となるが、ヒンジ6が支点となって遮水板4の移動方向M2を横方向に変換する。
【0051】
また、この時、ヒンジ6が延長アーム15bも回動させるが、カバー7の内壁がガイドとなることでジョイント15d、15fが浮子15aの延長アーム15bに対する連結角度を変え、カバー空間111が十分に広くなくとも浮子15の動きを阻害することがない。
【0052】
そして、同図(c)に示すように、さらに水Wの量が増え、基礎102の上方まで水面W.L,が上昇すると、浮子15aの上昇に伴って遮水板4の水密部材4bが通気口2に側面から当接し、水面W.L.が通気口2に至る前に、これを塞ぐ。
【0053】
水Wが引いて水面W.L.が下がった際には、浮子15aと延長アーム15bは自重で下方に下がり、延長アーム15bと一体となっている遮水板4は通気口2を離れ、その閉鎖は自動的に解除されることは第1実施形態の土台水切りAと同様である。
【0054】
このように、本実施形態の遮水装置を備えた土台水切りBに拠っても、建築物100の基礎102に水Wが迫った場合の、水面が通気口2に至る前に、いち早く通気口2の閉鎖をすることができ、洪水の際の床下空間105の水損を確実に回避させることができる。
【0055】
特に、本実施形態の土台水切りBでは、浮子15aの断面形状を縦長の矩形とし、ジョイント15d、15fにより延長アーム15bとの連結角度を可変としたことで、カバー7のカバー空間111内で空気層を縦方向に増積して、設計上浮力を調整することが容易となる。すなわち、縦長の浮子15aとすることで、土台水切りBの、建築物100の外側に張り出す幅を大きくすることなく、カバー空間111で、通気口2と外気換気口7d間の通気路を十分確保することができるという効果を有する。
【0056】
[他のバリエーション]
本発明の土台水切りの遮水装置は、上述した第1実施形態及び第2実施形態以外のバリエーションを以下の通り、採用することもできる。
【0057】
上記実施形態では、フロート5,15の浮子部5aあるいは浮子15aを合成樹脂で成型した中空材として構成したが、所定の浮力を有するものであれば機能する。このため、発泡スチロールなどの中実の部材でフロートを構成してもよい。
【0058】
また、特に第2実施形態の土台水切りBでは浮子15aを延長アーム15bにジョイント15d、15fを介して連結したが、ジョイントを排して、浮子15aは浮上した際に、直接、延長アーム15bに当接して、これを押し上げる構造であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、遮水板4とフロート5,15の浮子部5aあるいは浮子15aから構成される回動部材3は、装置本体1と同様の長尺材として構成したが、これを所定長さに分割して、複数の回動部材3をカバー7内に配置する構成とすることもできる。
【0060】
さらに、上記実施形態では、通気口2を装置本体1の、垂直に形成された第3縦板部1gに形成したが、通気口2を形成する装置本体1の面は建築物100の外側にある程度の角度を持ってオーバーハングさせてもよく、また逆に建築物100の側に寝かせて形成してもよい。
【0061】
本実施形態のA,Bの装置本体1は、折り曲げ成形で形成したが、アルミなど金属の押出成形によって、同じ形状の装置本体を形成することもできる。また、第1実施形態の遮水板4及びフロート5や第2実施形態の別体となった遮水板4及びフロート15は合成樹脂で形成されるが、これに限らず、同様に金属の押出成形によって形成してもよい。
【0062】
また、本実施形態のA,Bのヒンジ6は円形溝1hと円形突起5cを勘合して両者が回動可能に構成したが、円形突起5cと遮水板4及びフロート5との連結部を軟性樹脂で形成することにより可撓性を持たせ、あるいはこの部分に機械的な別の関節を構成してヒンジとすることで、遮水板4及びフロート5を回動可能としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
A,B…遮水装置を備えた土台水切り
1…装置本体(本体)
2…通気口
3…回動部材
4…遮水板
5,15…フロート
5a…浮子部
15a…浮子
15b…延長アーム
15d,15f…ジョイント
6…ヒンジ
7…カバー
100…建築物
101…土台
102…基礎
105…床下空間
108…外壁換気通路
110…密閉基礎空間
111…カバー内空間
O…外気
M1…フロートの移動方向
M2…遮水板の移動方向
W…水
W.L.…水面
図1
図2
図3
図4
図5
図6