(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014331
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ロープ係止具
(51)【国際特許分類】
A63B 29/02 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A63B29/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117073
(22)【出願日】2022-07-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-10
(71)【出願人】
【識別番号】500266151
【氏名又は名称】有限会社宮内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】宮内 保昌
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロープの係止が容易で、かつ、ロープの係止位置がずれないロープ係止具を提供する。
【解決手段】ロープ係止具1は、係止部3と、係止部に連接された柄部4と、柄部に連接された顎部5とを備え、左右方向Xに顎部を貫通して形成され、ロープが通される円形孔10aと、顎部の円形孔およびガイド孔10bとの際に形成され、円形孔に通されたロープのうち、顎部の左側の第1片側ロープが被連結体から離れる方向に向けて引っ張られて係止される第1開口係止部11と、柄部の後部4cに形成され、顎部の右側の第2片側ロープが顎部の左側に向けて折り返される第1折返し部8と、入隅部12に形成され、第1折返し部で折り返された第2片側ロープが顎部の右側に向けて折り返される第2折返し部13と、入隅部に形成され、第2折返し部で折り返された第2片側ロープが被連結体から離れる方向に向けて引っ張られて係止される第2折返し係止部15とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープと、このロープが連結される被連結体とを連結するために用いられるロープ係止具であって、
前記被連結体に係止が可能な係止部と、この係止部に一端が連接され、前記被連結体から離れる方向に向けて延びた柄部と、この柄部の他端に連接され、前記柄部の長手方向に直交する方向のうちの一つである前後方向の前方に向けて張り出した顎部と、を備え、
前記柄部の長手方向および前後方向のそれぞれに直交する方向である左右方向に前記顎部を貫通して形成され、前記ロープが通される第1開口部と、
前記顎部における前記第1開口部の際に形成され、前記第1開口部に通された前記ロープのうち、前記顎部の左側又は右側の一方に配置された前記ロープである第1片側ロープが、前記被連結体から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第1開口係止部と、
前記柄部の後部に形成され、前記第1開口部に通された前記ロープのうち、前記顎部の左側又は右側の他方に配置された前記ロープである第2片側ロープが、前記顎部の左側又は右側の一方に向けて折り返される第1折返し部と、
前記柄部と前記顎部との入隅である入隅部に形成され、前記第1折返し部で折り返された前記第2片側ロープが、前記顎部の左側又は右側の他方に向けて再び折り返される第2折返し部と、
前記入隅部に形成され、前記第2折返し部で折り返された前記第2片側ロープが、前記被連結体から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第2折返し係止部と、を有する、
ことを特徴とするロープ係止具。
【請求項2】
前記第1折返し部において、前記第1折返し部で折り返された前記第2片側ロープが、前記第2折返し部に向けて引っ張られることで係止される第1折返し係止部が形成された、
ことを特徴とする請求項1に記載されたロープ係止具。
【請求項3】
前記第1折返し部は、前記後部を窪ませて形成された、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたロープ係止具。
【請求項4】
前記第1開口部は、前記ロープが留められる円形孔と、前記ロープが前記円形孔まで案内されるガイド孔と、からなり、
前記ガイド孔は、前記円形孔から前記顎部に沿って延びて、前記顎部の先端側が前記被連結体から離れる方向に向けて屈曲して開口された、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたロープ係止具。
【請求項5】
前記第2折返し部の後端が、前記円形孔と前記ガイド孔との境目よりも後側に形成され、前記第2折返し部で折り返された前記第2片側ロープが、前記円形孔から前記第1折返し部に向かう前記第2片側ロープの少なくとも一部に重ねられる、
ことを特徴とする請求項4に記載されたロープ係止具。
【請求項6】
前記円形孔の直径が前記ロープの直径よりも小さく、
前記ガイド孔における前記柄部の長手方向に沿った幅が前記円形孔の直径よりも短い、
ことを特徴とする請求項4に記載されたロープ係止具。
【請求項7】
前記顎部が前記柄部の前記他端から傾斜して張り出して、前記入隅部が鋭角に形成された、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたロープ係止具。
【請求項8】
前記係止部が前方に向けて張り出した鉤状に形成され、
前記係止部の先端と前記顎部の先端との間に第2開口部が形成され、
前記第2開口部を開閉させるための開閉手段が前記顎部に設けられた、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたロープ係止具。
【請求項9】
ロープと、このロープが連結される被連結体とを連結するために用いられるロープ係止具であって、
前記被連結体に係止されて折り返された前記ロープの一端部側を係止が可能な係止部と、この係止部に一端が連接され、前記被連結体から離れる方向に向けて延びた柄部と、この柄部の他端に連接され、前記柄部の長手方向に直交する方向のうちの一つである前後方向の前方に向けて張り出した顎部と、を備え、
前記柄部の長手方向および前後方向のそれぞれに直交する方向である左右方向に前記顎部を貫通して形成され、前記被連結体に係止されて折り返された前記ロープの他端部側が通される第1開口部と、
前記顎部における前記第1開口部の際に形成され、前記第1開口部に通された前記ロープの前記他端部側が、前記被連結体から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第1開口係止部と、を有する、
ことを特徴とするロープ係止具。
【請求項10】
鉤状の係止部と、この係止部に一端が連接され、他端に向けて延びた柄部と、前記柄部の前記他端に連接され、前記柄部の長手方向に直交する方向のうちの一つである前後方向の前方に向けて張り出してロープの係止が可能な顎部と、を備え、
前記顎部は、前記柄部の長手方向に沿って互いに間隔を空けて設けられた上側顎部と下側顎部とからなり、
前記上側顎部および前記下側顎部との間には、前記ロープが通される第1開口部が形成され、
前記上側顎部および前記下側顎部のそれぞれにおける前記第1開口部の際に、前記第1開口部に通された前記ロープが前記柄部の長手方向に沿って引っ張られることで係止が可能な第1開口係止部が形成された、
ことを特徴とするロープ係止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープ係止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、登山やロッククライミングでは、ロープを掛ける道具としてカラビナが使用されている。また、カラビナは、上記した本来の用途以外にも、日用品として、例えば、キーホルダーの代わりや、カップやタオル等の小物をリュックサックに吊り下げるためなど、種々の目的で使用されている。
【0003】
日用品として使用されるカラビナには、本来の用途で使用されるカラビナほどの強度が必要とされないため、軽量な材質で作製されたものが存在する。例えば、略C字形の本体と、この本体の一端にピンによって回動自在に軸支された揺動体と、本体の他端に設けられた揺動体のストッパとを備え、揺動体の両側にストッパと当接する突起部が設けられたカラビナが提案されている(特許文献1)。軽量な材質で作製されたカラビナは、その使用状態によっては軸が緩んで揺動体が傾いてしまうことがあるため、特許文献1のカラビナでは、揺動体の閉塞時に突起部をストッパに当接させることにより、摺動体がストッパから外れることが防止され、常に良好な使用状態を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、キャンプ等の屋外活動において、テントやタープなどの幕を張る際に、幕とロープ(張り綱)とを連結するため、又は、ロープとペグとを連結するためにカラビナが使用されている。一般に、カラビナを使用せずに幕を張る場合、ロープは、一端部側が幕に設けられた孔に通されて結ばれ、他端部側が地面に打ち込まれるペグに引っ掛けられて、使用される。このとき、幕には孔が数個所に設けられているため、それぞれの孔に対応するロープを、各孔に結ぶには非常に手間がかかる。また、ペグにロープを引っ掛ける際には、特殊なロープワークによって、ロープが輪になるように環状部分を作らなければならない。そのため、ロープの一端部側および他端部側に予めカラビナを連結しておき、このカラビナを幕の孔又はペグに引っ掛けて留めることで、孔とロープとの連結、又は、ペグとロープとの連結の手間をなくし、手軽に、かつ、容易に幕を張ることができる。
【0006】
しかし、例えば、ロープとカラビナとが連結される際には、通常、カラビナの環状部材に通されたロープが、環状部材に通される前のロープに結ばれて、又は、ロープワークによってロープに作られた環状部分が、カラビナの環状部材に引っ掛けられることで、連結される。そうすると、ロープとカラビナとの連結部分は、カラビナの環状部材に沿って滑る状態であるため、ロープが張られた際に張り具合が緩みやすく、ロープを介して幕に必要な張力をかけるためには、必ずしも使い勝手が良いものとは言えなかった。
【0007】
そこで、本発明は、ロープの係止が容易で、かつ、ロープの係止位置がずれないロープ係止具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るロープ係止具は、ロープと、このロープが連結される被連結体とを連結するために用いられるロープ係止具であって、被連結体に係止が可能な係止部と、この係止部に一端が連接され、被連結体から離れる方向に向けて延びた柄部と、この柄部の他端に連接され、柄部の長手方向に直交する方向のうちの一つである前後方向の前方に向けて張り出した顎部と、を備え、柄部の長手方向および前後方向のそれぞれに直交する方向である左右方向に顎部を貫通して形成され、ロープが通される第1開口部と、顎部における第1開口部の際に形成され、第1開口部に通されたロープのうち、顎部の左側又は右側の一方に配置されたロープである第1片側ロープが、被連結体から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第1開口係止部と、柄部の後部に形成され、第1開口部に通されたロープのうち、顎部の左側又は右側の他方に配置されたロープである第2片側ロープが、顎部の左側又は右側の一方に向けて折り返される第1折返し部と、柄部と顎部との入隅である入隅部に形成され、第1折返し部で折り返された第2片側ロープが、顎部の左側又は右側の他方に向けて再び折り返される第2折返し部と、入隅部に形成され、第2折返し部で折り返された第2片側ロープが、被連結体から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第2折返し係止部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るロープ係止具は、第1折返し部において、第1折返し部で折り返された第2片側ロープが、第2折返し部に向けて引っ張られることで係止される第1折返し係止部が形成された、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るロープ係止具は、第1折返し部が、後部を窪ませて形成された、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るロープ係止具は、第1開口部が、ロープが留められる円形孔と、ロープが円形孔まで案内されるガイド孔と、からなり、ガイド孔は、円形孔から顎部に沿って延びて、顎部の先端側が被連結体から離れる方向に向けて屈曲して開口された、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るロープ係止具は、第2折返し部の後端が、円形孔とガイド孔との境目よりも後側に形成され、第2折返し部で折り返された第2片側ロープが、円形孔から第1折返し部に向かう第2片側ロープの少なくとも一部に重ねられる、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るロープ係止具は、円形孔の直径がロープの直径よりも小さく、ガイド孔における柄部の長手方向に沿った幅が円形孔の直径よりも短い、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るロープ係止具は、顎部が柄部の他端から傾斜して張り出して、入隅部が鋭角に形成された、ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係るロープ係止具は、係止部が前方に向けて張り出した鉤状に形成され、係止部の先端と顎部の先端との間に第2開口部が形成され、第2開口部を開閉させるための開閉手段が顎部に設けられた、ことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るロープ係止具は、ロープと、このロープが連結される被連結体とを連結するために用いられるロープ係止具であって、被連結体に係止されて折り返されたロープの一端部側を係止が可能な係止部と、この係止部に一端が連接され、被連結体から離れる方向に向けて延びた柄部と、この柄部の他端に連接され、柄部の長手方向に直交する方向のうちの一つである前後方向の前方に向けて張り出した顎部と、を備え、柄部の長手方向および前後方向のそれぞれに直交する方向である左右方向に顎部を貫通して形成され、被連結体に係止されて折り返されたロープの他端部側が通される第1開口部と、顎部における第1開口部の際に形成され、第1開口部に通されたロープの他端部側が、被連結体から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第1開口係止部と、を有する、ことを特徴とする。
【0017】
本発明に係るロープ係止具は、鉤状の係止部と、この係止部に一端が連接され、他端に向けて延びた柄部と、柄部の他端に連接され、柄部の長手方向に直交する方向のうちの一つである前後方向の前方に向けて張り出してロープの係止が可能な顎部と、を備え、顎部は、柄部の長手方向に沿って互いに間隔を空けて設けられた上側顎部と下側顎部とからなり、上側顎部および下側顎部との間には、ロープが通される第1開口部が形成され、上側顎部および下側顎部のそれぞれにおける第1開口部の際に、第1開口部に通されたロープが柄部の長手方向に沿って引っ張られることで係止が可能な第1開口係止部が形成された、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るロープ係止具は、ロープと、このロープが連結される被連結体とを連結するために用いられるロープ係止具であって、被連結体に係止が可能な係止部と、この係止部に一端が連接され、被連結体から離れる方向に向けて延びた柄部と、この柄部の他端に連接され、柄部の長手方向に直交する方向のうちの一つである前後方向の前方に向けて張り出した顎部と、を備えている。そして、柄部の長手方向および前後方向のそれぞれに直交する方向である左右方向に顎部を貫通して形成され、ロープが通される第1開口部と、顎部における第1開口部の際に形成され、第1開口部に通されたロープのうち、顎部の左側又は右側の一方に配置されたロープである第1片側ロープが、被連結体から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第1開口係止部と、柄部の後部に形成され、第1開口部に通されたロープのうち、顎部の左側又は右側の他方に配置されたロープである第2片側ロープが、顎部の左側又は右側の一方に向けて折り返される第1折返し部と、柄部と顎部との入隅である入隅部に形成され、第1折返し部で折り返された第2片側ロープが、顎部の左側又は右側の他方に向けて再び折り返される第2折返し部と、入隅部に形成され、第2折返し部で折り返された第2片側ロープが、被連結体から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第2折返し係止部と、を有している。
そのため、本発明に係るロープ係止具であれば、特殊なロープワークができなくても、係止部を被連結体に引っ掛けて、ロープ係止具にロープが巻きつけられた状態で、ロープを被連結体から離れる方向に向けて引っ張るだけで、ロープを容易に係止してロープと被連結体とを連結できる。また、第1開口係止部および第2折返し係止部に係止されたロープは、係止位置がずれないため、ロープをしっかりと張ることができる。さらに、本発明に係るロープ係止具は、ロープが被連結体から離れる方向に向けて強く引っ張られるほど強固に係止されるので、ロープを介して被連結体に張力をかけるために好適である。
【0019】
本発明に係るロープ係止具は、第1折返し部において、第1折返し部で折り返された第2片側ロープが、第2折返し部に向けて引っ張られることで係止される第1折返し係止部が形成されている。そのため、第2片側ロープが、第1開口係止部および第2折返し係止部に加えて、第1折返し係止部でも係止されるので、より強固にロープを係止できる。
【0020】
本発明に係るロープ係止具は、第1折返し部が、柄部の後部を窪ませて形成されている。そのため、第1折返し部の位置がわかりやすく、また、第2片側ロープを凹状の窪みに沿わせて折り返すことができるので、第2片側ロープの折返しが容易である。
【0021】
本発明に係るロープ係止具は、第1開口部が、ロープが留められる円形孔と、ロープが円形孔まで案内されるガイド孔と、からなる。そして、ガイド孔は、円形孔から顎部に沿って延びて、顎部の先端側が被連結体から離れる方向に向けて屈曲して開口されている。そのため、円形孔にロープが通される際に、ロープの一端部と他端部との間の部分を、ガイド孔の開口部分から差し込んでスライドさせることで、ガイド孔によってロープが円形孔まで案内されるので、容易にロープを円形孔に通すことができる。
【0022】
本発明に係るロープ係止具は、第2折返し部の後端が、円形孔とガイド孔との境目よりも後側に形成され、第2折返し部で折り返された第2片側ロープが、円形孔から第1折返し部に向かう第2片側ロープの少なくとも一部に重ねられる。そうすると、第2折返し部で折り返された第2片側ロープが、被連結体から離れる方向に向けて強く引っ張られると、この第2片側ロープによって、第2片側ロープの円形孔から第1折返し部に向かう部分が強く押さえつけられる。そのため、第2片側ロープが緩むことなく、より強固にロープを係止できる。
【0023】
本発明に係るロープ係止具は、円形孔の直径がロープの直径よりも小さく、また、ガイド孔における柄部の長手方向に沿った幅が円形孔の直径よりも短い。そのため、円形孔に通されたロープが、円形孔から抜けにくく、また、ガイド孔側に戻りにくいので、ロープを円形孔に留まらせることができる。したがって、円形孔にロープを留まらせた状態で、第2片側ロープを第1折返し部および第2折返し部で折り返すことができるので、ロープの係止が容易である。
【0024】
本発明に係るロープ係止具は、顎部が柄部の他端から傾斜して張り出して、入隅部が鋭角に形成されている。そのため、鋭角な入隅部に引っ掛けるようにして、入隅部に形成された第2折返し部で第2片側ロープを折り返すことができるので、第2折返し部における第2片側ロープの折返しが容易である。
【0025】
本発明に係るロープ係止具は、係止部が前方に向けて張り出した鉤状に形成され、係止部の先端と顎部の先端との間に第2開口部が形成されている。そして、この第2開口部を開閉させるための開閉手段が、顎部に設けられている。そのため、例えば、第2開口部を開いて係止部を被連結体に引っ掛けるだけで、ロープ係止具と被連結体とを容易に連結できるので、ロープ係止具をカラビナとして使用することができる。
【0026】
本発明に係るロープ係止具は、ロープと、このロープが連結される被連結体とを連結するために用いられるロープ係止具であって、被連結体に係止されて折り返されたロープの一端部側を係止が可能な係止部と、この係止部に一端が連接され、被連結体から離れる方向に向けて延びた柄部と、この柄部の他端に連接され、柄部の長手方向に直交する方向のうちの一つである前後方向の前方に向けて張り出した顎部と、を備えている。そして、柄部の長手方向および前後方向のそれぞれに直交する方向である左右方向に顎部を貫通して形成され、被連結体に係止されて折り返されたロープの他端部側が通される第1開口部と、顎部における第1開口部の際に形成され、第1開口部に通されたロープの他端部側が、被連結体から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第1開口係止部と、を有している。そのため、第1開口部に通されたロープの他端部側の長さを調整しつつ、この他端部側を引っ張るだけで第1開口係止部に係止できるので、被連結体に係止されて折り返される部分のロープの長さを調整しながら、容易にロープを係止して被連結体に連結することができる。また、第1開口係止部に係止されたロープは、係止位置がずれないため、ロープをしっかりと張ることができる。
【0027】
本発明に係るロープ係止具は、鉤状の係止部と、この係止部に一端が連接され、他端に向けて延びた柄部と、柄部の他端に連接され、柄部の長手方向に直交する方向のうちの一つである前後方向の前方に向けて張り出してロープの係止が可能な顎部と、を備えている。顎部は、柄部の長手方向に沿って互いに間隔を空けて設けられた上側顎部と下側顎部とからなり、上側顎部および下側顎部との間には、ロープが通される第1開口部が形成され、上側顎部および下側顎部のそれぞれにおける第1開口部の際に、第1開口部に通されたロープが柄部の長手方向に沿って引っ張られることで係止が可能な第1開口係止部が形成されている。そのため、係止部を被連結体に引っ掛けた状態で、第1開口部に通されたロープを柄部の長手方向に沿って引っ張るだけで、第1開口係止部にロープを容易に係止できる。また、第1開口係止部に係止されたロープは、係止位置がずれないため、ロープをしっかりと張ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係るロープ係止具を右前方から見た斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るロープ係止具を左後方から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るロープ係止具を用いた第1のロープの係止方法において、第1開口部にロープが通された状態を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るロープ係止具を用いた第1のロープの係止方法において、第1折返し部でロープが折り返された状態を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るロープ係止具を用いた第1のロープの係止方法において、第2折返し部でロープが折り返され、ロープが係止された状態を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るロープ係止具を用いた第2のロープの係止方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係るロープ係止具を
図1から
図6を参照して説明する。なお、以下の説明において、
図1に示すロープ係止具1を基準として、ロープ係止具1の厚み方向を左右方向X、左右方向Xに直交するロープ係止具1の奥行方向を前後方向Y、左右方向Xおよび前後方向Yに直交するロープ係止具1の高さ方向を上下方向Zとする。
【0030】
ロープ係止具1は、主として、
図3から
図6に示すように、ロープ2と、このロープ2が連結されるテント又はタープ等の幕、ペグ、フェンス、立木などの被連結体20(
図6)とを連結するために用いられる。なお、ロープ係止具1は、ロープ2を介してランタン等の照明器具を被連結体20に吊り下げるためなど、ロープ係止具1を用いてロープ2に張力がかけられる使用方法であれば、種々の目的に応じて使用できる。
【0031】
ロープ係止具1は、
図1および
図2に示すように、環状に形成されている。ロープ係止具1は、ロープ係止具1の上部を構成する係止部3と、ロープ係止具1の後部を構成する柄部4と、ロープ係止具1の下部を構成する顎部5とを備えている。係止部3、柄部4および顎部5は、ステンレス又は鉄等の金属製であり、一体に形成されている。
【0032】
係止部3は、上下方向Zに延びた柄部4の一端である上端部4aに連接され、顎部5は、柄部4の他端である下端部4bに連接されている。また、係止部3および顎部5は、それぞれ上端部4aおよび下端部4bから、前方に向けて張り出している。なお、本明細書における「前方」とは、左右方向Xおよび上下方向Zのそれぞれに直交する前後方向Yに沿った前方のみに限られず、左右方向X若しくは上下方向Zのいずれか又は両方に向けて傾けられた前方が含まれる。そのため、柄部4の「前方」とは、柄部4の「前側」に向けた全ての方向が含まれる。
【0033】
ロープ係止具1では、係止部3、柄部4および顎部5が前方を開口させたC字形状をなしており、係止部3の前端である先端3aと、顎部5の前端である先端5aとの間には、第2開口部6が形成されている。そして、この第2開口部6を開閉させる開閉手段7が、顎部5の先端5aに設けられている。そのため、ロープ係止具1は、係止部3、柄部4、顎部5および開閉手段7からなるカラビナとして用いることもできる。
【0034】
係止部3は、左右方向Xを厚み方向とした細板状のプレートである。係止部3は、柄部4の上端部4aから前方の斜め上方に向けて張り出して、頂部3bにおいて斜め下方に向けて屈曲し、さらに、先端3aが下方に向けて屈曲している。この上端部4aから張り出した先端3aまでの形状により、鉤状の係止部3が形成されている。係止部3は、この鉤状部分が被連結体20に設けられた孔などに引っ掛けられることで、被連結体20に係止が可能であり、また、この鉤状部分に、ロープワークによってロープ2に作られた環状部分を係止することも可能である。先端3aの後部3cには、先端3aの一部を窪ませて凹状部3dが形成されており、この凹状部3dには、開閉手段7の先端部7aが係止される。
【0035】
柄部4は、左右方向Xを厚み方向とした細板状のプレートであり、係止部3と同じ厚みに形成されている。柄部4は、上下方向Zを長手方向として、上端部4aから下端部4bにかけて直線状に延びている。柄部4の後部4cには、この後部4cの一部を凹状に窪ませて第1折返し部8が形成されている。この第1折返し部8には、左右方向Xにおける両端において、柄部4における左右それぞれの側面4dと、第1折返し部8の表面8aとから形成された角部である第1折返し係止部9が形成されている。
なお、上記の説明では、便宜上、柄部4を上下方向Zに延びたものとして説明したが、ロープ係止具1が使用される際に、係止部3が被連結体20に係止されている場合、顎部5側に係止されたロープ2が引っ張られることにより、柄部4は、被連結体20から離れる方向に向かって延びたものとなる。したがって、本明細書における上下方向Zのうち、下方に向かう方向が「被連結体20から離れる方向」となる。
【0036】
顎部5は、左右方向Xを厚み方向とした板状のプレートであり、柄部4および係止部3と同じ厚みに形成されている。顎部5は、上側の上側顎部5bと下側の下側顎部5cとから構成され、上側顎部5bおよび下側顎部5cが、上下方向Zに互いに間隔を空けて、柄部4の下端部4bから前方の斜め上方に向けて傾斜して、平行に張り出している。上側顎部5bは、その先端5aが係止部3の先端3aの下方に位置し、前後方向Yにおいて、下側顎部5cよりも長く張り出している。上側顎部5bの先端5aには、開閉手段7が設けられ、さらに、上側顎部5bの先端5aの下端には、下方に向けて張り出した凸状部5dが形成されている。
【0037】
顎部5には、顎部5の厚み方向である左右方向Xに沿って顎部5を貫通して第1開口部10が形成されている。第1開口部10は、柄部4の下端部4bから互いに平行に張り出した上側顎部5bと下側顎部5cとの間に形成されている。第1開口部10のうち、柄部4の下端部4b側に形成された円形状の孔が円形孔10aであり、この円形孔10aよりも先端5a側に形成され、顎部5に沿って延びた溝状の孔がガイド孔10bである。円形孔10aとガイド孔10bとの境目には、凸部10cが形成されている。
【0038】
円形孔10aは、その直径Dが、ロープ2の直径よりも小さく形成されている。一般に、テント又はタープ等の幕が張られる際には、直径が4mm又は5mmであるロープ2が使用されることが多い。これらのロープ2が円形孔10aに通された状態で軽く引っ張られたときに、ロープ2の外周面が、円形孔10aを形成する内周面10dに擦れて抵抗感が感じられる程度に、円形孔10aの直径Dがロープ2の直径よりもわずかに小さく形成されていることが好ましい。これにより、円形孔10aに通されたロープ2が、円形孔10aに留まりやすくなる。
【0039】
ガイド孔10bは、先端5a側が、先端5aから張り出した凸状部5dに沿って下方に向けて屈曲し、そのまま下方に向けて開口している。ガイド孔10bの上下方向Zに沿った幅、すなわち、高さHの長さは、円形孔10aの直径Dよりもわずかに短く形成されている。そのため、円形孔10aに通されたロープ2が、ガイド孔10bに戻りにくくなっている。
なお、上記の説明では、便宜上、ガイド孔10bにおける先端5a側が、下方に向けて屈曲して開口したものとして説明したが、本明細書における上下方向Zのうち、下方に向かう方向が「被連結体20から離れる方向」であるため、ガイド孔10bにおける先端5a側は、被連結体20から離れる方向に向けて屈曲して開口している。
【0040】
顎部5には、円形孔10aおよびガイド孔10bとの際、より具体的には、円形孔10aを形成する内周面10dおよびガイド孔10bを形成する内側面10eと、顎部5における左右それぞれの側面5eとの際において、第1開口係止部11が形成されている。この第1開口係止部11は、内周面10dおよび内側面10eと側面5eとから形成された角部であり、内周面10dおよび内側面10eの縁に沿って左右方向Xの両端に形成されている。また、第1開口係止部11には、円形孔10aとガイド孔10bとの境目である凸部10cと、顎部5の側面5eとによって形成された突起部11aが含まれている。
【0041】
柄部4と上側顎部5bとの連接部のうち、柄部4の前面4eと上側顎部5bの上面5fとの入隅には、入隅部12が形成されている。この入隅部12は、上下方向Zに沿って延びた前面4eと、柄部4の下端部4bから斜め上方に向けて張り出した上側顎部5bの上面5fとによって、鋭角に形成されている。
【0042】
入隅部12には、柄部4の前面4eと上側顎部5bの上面5fとからなる入隅を埋めるようにして、第2折返し部13が設けられている。第2折返し部13は、柄部4の前面4eから前方に向けて斜め下方に傾斜して上側顎部5bの上面5fまで延びた斜面であり、柄部4の前面4eに連接された第2折返し部13の後端13aが、円形孔10aとガイド孔10bとの境目である凸部10cよりも後側に位置するように形成されている。
【0043】
また、入隅部12には、前方に向けて斜め下方に傾斜する第2折返し部13と、前方に向けて斜め上方に傾斜する上側顎部5bの上面5fとの連接部において、下方に向けて窪んだ凹部14が形成されている。この凹部14の左右方向Xにおける両端には、顎部5における左右それぞれの側面5eと凹部14とから形成された角部である第2折返し係止部15が形成されている。
【0044】
開閉手段7は、上下方向Zに沿って逆U字形状に折り曲げられたステンレス又は鉄等の金属製のワイヤーであり、第2開口部6を塞ぐようにして設けられている。開閉手段7は、逆U字形状に折り曲げられた先端部7aを上側にして、下方に向かうワイヤーの一端7bが上側顎部5bの先端5aに右方から連結され、下方に向かうワイヤーの他端7cが先端5aの左方から連結されている。ワイヤーの一端7bおよび他端7cは、それぞれ上下方向Zに位置をずらして先端5aに連結され、一端7bが上側顎部5bの先端5aの下側に、他端7cが上側顎部5bの先端5aの上側に連結されている。
【0045】
開閉手段7は、先端部7a側が後方に向けて押し込まれて、一端7bおよび他端7c側を軸にして後方に向けて傾けられることで、第2開口部6が開かれた状態となる。また、このとき、開閉手段7は、一端7b側のワイヤーが他端7c側のワイヤーよりも下方に向けて長く延在し、さらに、一端7bおよび他端7cのそれぞれが先端5aに上下方向Zに位置をずらして連結されているので、先端部7a側が後方に向けて押し込まれると、ワイヤーの弾性力によって、元の位置に戻される方向に向けて付勢される。そのため、先端部7a側の押し込みを止めると、開閉手段7が元の位置に戻ることで、第2開口部6が閉じられた状態となる。これにより、第2開口部6の開閉が自在な開閉手段7となる。なお、第2開口部6が閉じられた状態では、先端部7aは、係止部3の先端3aにおける凹状部3dに当接して係止されている。
【0046】
次に、ロープ係止具1を用いてロープ2を係止する第1の方法について説明する。
【0047】
まず、
図3に示すように、第1開口部10のうち、円形孔10aにロープ2が通された状態とする。このとき、円形孔10aへのロープ2の通し方は任意であるが、ロープ2の端部である一端部2a又は他端部2bを円形孔10aに直接差し込むのではなく、ロープ2の一端部2aと他端部2bとの間の部分を、ガイド孔10bの開口部分から差し込み、ガイド孔10bに沿ってロープ2を円形孔10aに向かって滑らせることで、ガイド孔10bによってロープ2が円形孔10aまで案内されて、容易にロープ2を円形孔10aに通すことができる。
なお、第1の方法において、円形孔10aに通されたロープ2のうち、顎部5の左側に配置された一端部2a側のロープ2が第1片側ロープ2cであり、顎部5の右側に配置された他端部2b側のロープ2が第2片側ロープ2dである。
【0048】
次に、第2片側ロープ2dが第1折返し部8に向けて屈曲させられる。このとき、第1開口係止部11のうち、右側の第1開口係止部11が第2片側ロープ2dに食い込んで、ロープ2の移動が制限される。
続けて、
図4に示すように、第2片側ロープ2dが、第1折返し部8に沿って、顎部5の左側に向けて折り返される。このとき、第1折返し部8で折り返された第2片側ロープ2dが、第2折返し部13に向けて引っ張られると、第1折返し係止部9が第2片側ロープ2dに食い込んで、第2片側ロープ2dが係止される。
【0049】
さらに、
図5に示すように、第1折返し部8で折り返された第2片側ロープ2dが、第2折返し部13に沿って、顎部5の右側に向けて再び折り返される。そして、第2折返し部13で折り返された第2片側ロープ2dと、円形孔10aに通されて顎部5の左側に配置された第1片側ロープ2cとが、それぞれ下方に向けて屈曲された状態で引っ張られる。
【0050】
そうすると、第2折返し係止部15が第2片側ロープ2dに食い込むことで、第2片側ロープ2dが係止され、さらに、第1開口係止部11のうち、左側の第1開口係止部11が第1片側ロープ2cに食い込むことで、第1片側ロープ2cが係止される。このとき、左側の第1開口係止部11では、突起部11aが、突起部11a以外の部分よりも強く第1片側ロープ2cに食い込むため、第1片側ロープ2cがしっかりと係止される。
【0051】
また、ロープ係止具1では、第2折返し部13の後端13aが、円形孔10aとガイド孔10bとの境目である凸部10cよりも後側に位置するため、前後方向Yにおいて、第2折返し部13および円形孔10aはそれぞれの一部が重なっている。そのため、第2折返し部13で折り返されて下方に向けて引っ張られた第2片側ロープ2dは、円形孔10aから第1折返し部8に向かう第2片側ロープ2dの一部に重ねられた状態となる。
【0052】
なお、上記したロープ2を係止する第1の方法の説明では、便宜上、「被連結体20から離れる方向」を「下方」として説明している。そのため、ロープ係止具1の使用時には、第1片側ロープ2cおよび第2片側ロープ2dは、被連結体20から離れる方向に向けて引っ張られる。
【0053】
以上により、ロープ2がロープ係止具1に係止され、また、係止部3が被連結体20に設けられた孔などに引っ掛けられて係止されることにより、ロープ2と被連結体20とがロープ係止具1を介して連結される。また、被連結体20に係止部3が係止されている状態では、第1片側ロープ2cおよび第2片側ロープ2dを被連結体20から離れる方向に向けて引っ張りやすく、より強固にロープ2をロープ係止具1に係止できる。
【0054】
なお、上記したロープ2を係止する第1の方法の説明では、第2片側ロープ2dが、第1折返し部8および第2折返し部13で折り返される例を示したが、第1片側ロープ2cと第2片側ロープ2dとの取り扱いを逆にして、第1片側ロープ2cが、第1折返し部8および第2折返し部13で折り返されるものでもよい。そのため、ロープ係止具1では、第1片側ロープ2c又は第2片側ロープ2dのうち、ロープ係止具1を使用する使用者が折り返しやすい方を第1折返し部8および第2折返し部13で折り返して、ロープ2を係止することができる。
【0055】
次に、ロープ係止具1を用いてロープ2を係止する第2の方法について説明する。
【0056】
まず、
図6に示すように、ロープ2の一端部2a側が、被連結体20に引っ掛けられて折り返される。そして、折り返されたロープ2の一端部2a側において、ロープ2を結んで輪を作り、この輪に係止部3を通すことで、ロープ2の一端部2a側が係止部3に引っ掛けられて係止された状態とする。その後、被連結体20に引っ掛けられて折り返されたロープ2の他端部2b側が、第1開口部10の円形孔10aに通される。このとき、円形孔10aへのロープ2の通し方は、第1の方法と同様に、他端部2bを円形孔10aに直接通すのではなく、折り返されたロープ2の他端部2b側を、ガイド孔10bの開口部分から差し込み、円形孔10aに向かって滑らせると通しやすい。
【0057】
続けて、ロープ係止具1の左側から右側に向けて円形孔10aを通されたロープ2の他端部2b側が、柄部4の長手方向、すなわち、上下方向Zの下方に向けて、屈曲された状態で引っ張られる。そうすると、第1開口係止部11のうち、右側の第1開口係止部11がロープ2の他端部2b側に食い込むことで、ロープ2の他端部2b側が第1開口係止部11に係止される。さらに、このとき、右側の第1開口係止部11では、突起部11aが、突起部11a以外の部分よりも強くロープ2の他端部2b側に食い込むので、ロープ2がしっかりと係止される。
【0058】
以上により、ロープ2がロープ係止具1に係止され、ロープ2と被連結体20とが連結される。なお、上記したロープ2を係止する第2の方法の説明では、便宜上、「被連結体20から離れる方向」を「下方」として説明している。そのため、ロープ係止具1の使用時には、ロープ2の他端部2b側は、被連結体20から離れる方向に向けて引っ張られる。
【0059】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0060】
ロープ係止具1は、被連結体20に係止が可能な係止部3と、係止部3に上端部4aが連接された柄部4と、柄部4の下端部4bに連接された顎部5とを備えている。そして、左右方向Xに顎部5を貫通して形成され、ロープ2が通される円形孔10aおよびガイド孔10bからなる第1開口部10と、顎部5における円形孔10aおよびガイド孔10bの際に形成され、円形孔10aに通されたロープ2のうち、顎部5の左側に配置された第1片側ロープ2cが、被連結体20から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第1開口係止部11と、柄部4の後部4cに形成され、円形孔10aに通されたロープ2のうち、顎部5の右側に配置された第2片側ロープ2dが、顎部5の左側に向けて折り返される第1折返し部8と、入隅部12に形成され、第1折返し部8で折り返された第2片側ロープ2dが、顎部5の右側に向けて再び折り返される第2折返し部13と、入隅部12に形成され、第2折返し部13で折り返された第2片側ロープ2dが、被連結体20から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第2折返し係止部15と、を有している。
そのため、ロープ係止具1であれば、特殊なロープワークができなくても、上記したロープ2を係止する第1の方法に基いてロープ2を巻きつけて、係止部3が被連結体20に引っ掛けられた状態で、ロープ2を被連結体20から離れる方向に向けて引っ張るだけで、ロープ係止具1にロープ2を容易に係止できる。また、これにより、ロープ2と被連結体20とを容易に連結できる。さらに、第1開口係止部11および第2折返し係止部15に係止されたロープ2は、係止位置がずれないため、ロープ2をしっかりと張ることができる。さらに、ロープ係止具1は、ロープ2が被連結体20から離れる方向に向けて強く引っ張られるほど強固に係止されるので、ロープ2を介して被連結体20に張力をかけるために好適である。
【0061】
ロープ係止具1は、第1折返し部8において、第1折返し部8で折り返された第2片側ロープ2dが、第2折返し部13に向けて引っ張られることで係止される第1折返し係止部9が形成されている。そのため、ロープ係止具1では、第2折返し部13で折り返された第2片側ロープ2dが被連結体20から離れる方向に向けて引っ張られると、第2折返し部13を介して引っ張られる第2片側ロープ2dのうち、第1折返し部8で折り返された部分が、第1折返し係止部9に係止される。そうすると、ロープ係止具1は、第2片側ロープ2dが、第1開口係止部11および第2折返し係止部15に加えて、第1折返し係止部9でも係止されるので、より強固にロープ2を係止できる。したがって、ロープ2の係止位置がずれることがなく、ロープ2をしっかりと張ることができる。
【0062】
ロープ係止具1は、第1折返し部8が柄部4の後部4cを窪ませて形成されている。そのため、第1折返し部8の位置がわかりやすく、また、第2片側ロープ2dを凹状の窪みに沿わせて折り返すことができるので、第2片側ロープ2dの折返しが容易である。さらに、第2片側ロープ2dが第1折返し部8からずれにくいので、ロープ2の係止が容易である。
【0063】
ロープ係止具1は、第1開口部10が、ロープ2が留められる円形孔10aと、ロープ2が円形孔10aまで案内されるガイド孔10bとからなる。そして、このガイド孔10bが、円形孔10aから顎部5に沿って延びて、顎部5の先端5a側が被連結体20から離れる方向に向けて屈曲して開口されている。そのため、円形孔10aにロープ2が通される際に、ロープ2の一端部2aと他端部2bとの間の部分を、ガイド孔10bの開口部分から差し込んでスライドさせることで、ガイド孔10bによってロープ2が円形孔10aまで案内され、容易にロープ2を円形孔10aに通すことができる。
【0064】
ロープ係止具1は、第2折返し部13の後端13aが、円形孔10aとガイド孔10bとの境目である凸部10cよりも後側に形成されている。そして、第2折返し部13で折り返された第2片側ロープ2dが、円形孔10aから第1折返し部8に向かう第2片側ロープ2dの少なくとも一部に重ねられる。言い換えれば、第2折返し部13で折り返された第2片側ロープ2dが被連結体20から離れる方向に向けて引っ張られると、この第2片側ロープ2dが、円形孔10aから第1折返し部8に向かう第2片側ロープ2dに押し付けられる。そうすると、第2折返し部13で折り返された第2片側ロープ2dが、被連結体20から離れる方向に向けて強く引っ張られるほど、この第2片側ロープ2dによって、円形孔10aから第1折返し部8に向かう第2片側ロープ2dが強く押さえつけられるため、第2片側ロープ2dが緩むことなく、より強固にロープ2を係止できる。
【0065】
ロープ係止具1は、円形孔10aの直径Dがロープ2の直径よりも小さく、また、ガイド孔10bの高さHの長さが、円形孔10aの直径Dよりも短い。そうすると、円形孔10aに通されたロープ2が、円形孔10aから抜けにくく、また、ガイド孔10bに戻りにくいので、ロープ2を円形孔10aに留まらせることができる。そのため、円形孔10aにロープ2を留まらせた状態で、第2片側ロープ2dを第1折返し部8および第2折返し部13で折り返すことができるので、ロープ2の係止が容易である。
【0066】
ロープ係止具1は、顎部5が柄部4の下端部4bから傾斜して張り出して、入隅部12が鋭角に形成されている。そのため、鋭角な入隅部12に引っ掛けるようにして、入隅部12に形成された第2折返し部13で第2片側ロープ2dを折り返すことができるので、第2折返し部13における第2片側ロープ2dの折返しが容易である。
【0067】
ロープ係止具1は、係止部3が鉤状であり、係止部3の先端3aと顎部5の先端5aとの間に第2開口部6が形成されている。そして、顎部5には、第2開口部6を開閉させるための開閉手段7が設けられている。そのため、ロープ係止具1を、係止部3と柄部4と顎部5と開閉手段7とによって環状に形成されたカラビナとして使用できる。例えば、開閉手段7の先端部7a側を後方に向けて押し込み、第2開口部6を開いた状態で、係止部3を被連結体20の孔に通して引っ掛けるだけで、ロープ係止具1と被連結体20とを容易に連結できる。また、ロープ係止具1と被連結体20とを連結できるので、ロープ係止具1に係止されたロープ2が強く引っ張られたときに、被連結体20からロープ係止具1が外れてしまうことがないため、ロープ2をしっかりと張ることができる。
【0068】
また、ロープ係止具1は、被連結体20に係止されて折り返されたロープ2の一端部2a側を係止が可能な係止部3と、この係止部3に上端部4aが連接された柄部4と、この柄部4の下端部4bに連接されて前方に向けて張り出した顎部5と、を備えている。そして、左右方向Xに顎部5を貫通して形成され、被連結体20に係止されて折り返されたロープ2の他端部2b側が通される円形孔10aおよびガイド孔10bからなる第1開口部10と、顎部5における円形孔10aおよびガイド孔10bの際に形成され、円形孔10aに通されたロープ2の他端部2b側が、被連結体20から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第1開口係止部11と、を有している。そのため、上記したロープ2を係止する第2の方法に基き、円形孔10aに通されたロープ2の他端部2b側の長さを調整しつつ、この他端部2b側を引っ張るだけでロープ2を第1開口係止部11に係止できるので、被連結体20に係止されて折り返される部分のロープ2の長さを調整しながら、容易にロープ2を係止して被連結体20と連結することができる。また、被連結体20に連結されて張られたロープ2の張り具合を調整する際にも、ロープ2の他端部2b側を被連結体20に近づく方向に向けて引っ張り、第1開口係止部11への係止を解除した状態で、折り返されたロープ2の長さを短く調整して、再度、第1開口係止部11に係止し直すことが容易であるため、ロープ2の張り具合の調整も容易になる。さらに、第1開口係止部11に係止されたロープ2は、係止位置がずれないため、ロープ2をしっかりと張ることができる。
【0069】
また、ロープ係止具1は、鉤状の係止部3と、この係止部3に上端部4aが連接され、下端部4bに向けて延びた柄部4と、柄部4の下端部4bに連接され、前方に向けて張り出した上側顎部5bおよび下側顎部5cと、を備えている。上側顎部5bと下側顎部5cとの間には、ロープ2が通される円形孔10aおよびガイド孔10bからなる第1開口部10が形成されており、また、上側顎部5bおよび下側顎部5cのそれぞれにおける円形孔10aおよびガイド孔10bの際には、円形孔10aおよびガイド孔10bに通されたロープ2が上下方向Zに沿って引っ張られることで係止が可能な第1開口係止部11が形成されている。そのため、係止部3が被連結体20に引っ掛けられた状態で、円形孔10aに通されたロープ2を柄部4の長手方向、すなわち、上下方向Zに沿って引っ張るだけで、第1開口係止部11にロープ2を容易に係止できる。また、第1開口係止部11に係止されたロープ2は、係止位置がずれないため、ロープ2をしっかりと張ることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0071】
例えば、本発明の実施形態では、第1折返し部8に第1折返し係止部9が形成された例を示したが、第1折返し部8に、角部がなく、第1折返し係止部9が形成されていないものでもよい。また、第1折返し係止部9、第1開口係止部11および第2折返し係止部15の形状は、角部に限られず、それぞれ第1折返し部8の表面8a、内周面10dおよび内側面10e、凹部14の表面に形成された突起など、ロープ2を係止できるものであれば任意である。
【0072】
また、本発明の実施形態では、第1折返し部8が柄部4の後部4cを窪ませて形成された例を示したが、例えば、柄部4の後部4cにおいて、上下方向Zに位置をずらして二箇所の凸状部を形成し、これらの凸状部の間にロープ2を沿わせて折り返す第1折返し部8でもよい。
【0073】
さらに、本発明の実施形態では、第1開口部10が円形孔10aとガイド孔10bとからなる例を示したが、第1開口部10は、円形孔10aのみでもよく、また、その形状もロープ2を通すことができるものであれば任意である。
【0074】
また、本発明の実施形態では、第2折返し部13の後端13aが、円形孔10aとガイド孔10bとの境目である凸部10cよりも後側に形成され、第2折返し部13で折り返された第2片側ロープ2dが、円形孔10aから第1折返し部8に向かう第2片側ロープ2dの少なくとも一部に重ねられる例を示したが、第2折返し部13と第1開口部10との位置関係は任意であり、第2片側ロープ2dが、円形孔10aから第1折返し部8に向かう第2片側ロープ2dに重ねられないものでもよい。
【0075】
さらに、本発明の実施形態では、円形孔10aの直径Dがロープ2の直径よりも小さく、ガイド孔10bの高さHの長さが円形孔10aの直径Dよりも短い例を示したが、直径Dの大きさ、および、高さHの長さは、任意である。
【0076】
また、本発明の実施形態では、入隅部12が鋭角である例を示したが、入隅部12が鈍角に形成されたものでもよい。さらに、係止部3は、被連結体20に係止できるものであれば鉤状でなくてもよく、例えば、係止部3が被連結体20に連結が可能なカラビナであってもよい。また、ロープ係止具1は、開閉手段7がないものでもよい。
【0077】
さらに、本発明の実施形態において、ロープ2を係止する第1の方法では、係止部3が被連結体20に設けられた孔などに直接引っ掛けられる場合を例に示したが、係止部3は、別のロープ2やカラビナ等の連結具を介して被連結体20に連結されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 ロープ係止具
2 ロープ
2a 一端部
2b 他端部
2c 第1片側ロープ
2d 第2片側ロープ
3 係止部
3a 先端
3b 頂部
3c 後部
3d 凹状部
4 柄部
4a 上端部
4b 下端部
4c 後部
4d 側面
4e 前面
5 顎部
5a 先端
5b 上側顎部
5c 下側顎部
5d 凸状部
5e 側面
5f 上面
6 第2開口部
7 開閉手段
7a 先端部
7b 一端
7c 他端
8 第1折返し部
8a 表面
9 第1折返し係止部
10 第1開口部
10a 円形孔
10b ガイド孔
10c 凸部
10d 内周面
10e 内側面
11 第1開口係止部
11a 突起部
12 入隅部
13 第2折返し部
13a 後端
14 凹部
15 第2折返し係止部
20 被連結体
D 直径
H 高さ
X 左右方向
Y 前後方向
Z 上下方向
【手続補正書】
【提出日】2023-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープと、このロープが連結される被連結体とを連結するために用いられるロープ係止具であって、
前記被連結体に係止が可能な係止部と、この係止部に一端が連接され、前記被連結体から離れる方向に向けて延びた柄部と、この柄部の他端に連接され、前記柄部の長手方向に直交する方向のうちの一つである前後方向の前方に向けて張り出した顎部と、を備え、
前記柄部の長手方向および前後方向のそれぞれに直交する方向である左右方向に前記顎部を貫通して形成され、前記ロープが通される第1開口部と、
前記顎部における前記第1開口部の際に形成され、前記第1開口部に通された前記ロープのうち、前記顎部の左側又は右側の一方に配置された前記ロープである第1片側ロープが、前記被連結体から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第1開口係止部と、
前記柄部の後部に形成され、前記第1開口部に通された前記ロープのうち、前記顎部の左側又は右側の他方に配置された前記ロープである第2片側ロープが、前記顎部の左側又は右側の一方に向けて折り返される第1折返し部と、
前記柄部と前記顎部との入隅である入隅部に形成され、前記第1折返し部で折り返された前記第2片側ロープが、前記顎部の左側又は右側の他方に向けて再び折り返される第2折返し部と、
前記入隅部に形成され、前記第2折返し部で折り返された前記第2片側ロープが、前記被連結体から離れる方向に向けて引っ張られることで係止される第2折返し係止部と、を有する、
ことを特徴とするロープ係止具。
【請求項2】
前記第1折返し部において、前記第1折返し部で折り返された前記第2片側ロープが、前記第2折返し部に向けて引っ張られることで係止される第1折返し係止部が形成された、
ことを特徴とする請求項1に記載されたロープ係止具。
【請求項3】
前記第1折返し部は、前記後部を窪ませて形成された、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたロープ係止具。
【請求項4】
前記第1開口部は、前記ロープが留められる円形孔と、前記ロープが前記円形孔まで案内されるガイド孔と、からなり、
前記ガイド孔は、前記円形孔から前記顎部に沿って延びて、前記顎部の先端側が前記被連結体から離れる方向に向けて屈曲して開口された、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたロープ係止具。
【請求項5】
前記第2折返し部の後端が、前記円形孔と前記ガイド孔との境目よりも後側に形成され、前記第2折返し部で折り返された前記第2片側ロープが、前記円形孔から前記第1折返し部に向かう前記第2片側ロープの少なくとも一部に重ねられる、
ことを特徴とする請求項4に記載されたロープ係止具。
【請求項6】
前記円形孔の直径が前記ロープの直径よりも小さく、
前記ガイド孔における前記柄部の長手方向に沿った幅が前記円形孔の直径よりも短い、
ことを特徴とする請求項4に記載されたロープ係止具。
【請求項7】
前記顎部が前記柄部の前記他端から傾斜して張り出して、前記入隅部が鋭角に形成された、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたロープ係止具。
【請求項8】
前記係止部が前方に向けて張り出した鉤状に形成され、
前記係止部の先端と前記顎部の先端との間に第2開口部が形成され、
前記第2開口部を開閉させるための開閉手段が前記顎部に設けられた、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたロープ係止具。