(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143310
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20241003BHJP
H05K 7/06 20060101ALI20241003BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02G3/16
H05K7/06 C
B60R16/02 610A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055917
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】仲村 慎祐
(72)【発明者】
【氏名】永田 大樹
【テーマコード(参考)】
5G361
【Fターム(参考)】
5G361BA03
5G361BB01
5G361BC01
5G361BC02
(57)【要約】
【課題】電気接続箱の薄型化と、バスバの適正な係止と、を両立可能な電気接続箱を提供すること。
【解決手段】電気接続箱1は、端子付き電線4の端子31が導通接続されることになるバスバ3と、バスバ3を収容するケース2と、を備える。ケース2は、収容溝14へのバスバ3の収容方向に延びてバスバ3との係合部21aを一端に有する第1部分21と、収容方向に交差する方向に延びて収容溝14の溝壁12に設けられた連結部17に繋がる第2部分22と、を有する片持ち梁状の形状を有するバスバ係止片16を有する。バスバ係止片16は、収容溝14に収容されたバスバ3が収容方向へ移動することを係合部21aによって規制する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子付き電線の端子が導通接続されることになるバスバと、前記バスバを収容するケースと、を備える電気接続箱であって、
前記ケースは、
前記バスバが収容される収容溝と、
前記収容溝への前記バスバの収容方向に延びて前記バスバとの係合部を一端に有する第1部分と、前記収容方向に交差する方向に延びて前記収容溝の溝壁に設けられた連結部に繋がる第2部分と、を有する片持ち梁状のバスバ係止片と、を有し、
前記バスバ係止片は、
前記収容溝に収容された前記バスバが前記収容方向に移動することを前記係合部によって規制する、
電気接続箱。
【請求項2】
請求項1に記載の電気接続箱において、
前記バスバ係止片は、
前記第1部分の他端に前記第2部分が繋がるとともに前記第1部分と前記第2部分とが繋がる箇所において湾曲した形状を有し、且つ、前記第2部分と前記連結部とが繋がる箇所において前記連結部に近づくにつれて前記第2部分の幅が広がる形状を有する、
電気接続箱。
【請求項3】
請求項1に記載の電気接続箱において、
前記ケースの前記連結部は、
前記収容溝の前記溝壁から前記バスバに向けて突出して前記バスバに当接可能な突出部を有し、前記収容溝に収容された前記バスバが前記突出部の突出方向に移動することを前記突出部によって規制する、
電気接続箱。
【請求項4】
請求項3に記載の電気接続箱において、
前記ケースの前記溝壁は、
前記バスバとの間に前記突出部を挟んだ位置に配置されて前記突出方向において前記突出部を支持する支持部を、有する、
電気接続箱。
【請求項5】
請求項1に記載の電気接続箱において、
前記ケースは、
前記端子付き電線の電線が配索されることになる複数の配索溝を有し、且つ、複数の前記連結部を有し、
少なくとも一つの前記連結部は、
当該連結部に隣接する前記溝壁よりも前記収容方向における高さが高く、且つ、一の前記配索溝と他の前記配索溝とに挟まれる箇所に配置される、
電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線の端子が導通接続されることになるバスバと、バスバを収容するケースと、を備える電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両等に搭載される電気接続箱が提案されている。例えば、従来の電気接続箱の一つは、全体として箱状の形状を有しており、外部電源等から延びる端子付き電線の端子をボルト及びナットで締結して導通接続させるバスバと、バスバを収容するケースと、を備えている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した種類の電気接続箱では、ケースにバスバを収容してからバスバに端子付き電線の端子を締結するまでの間に、ケースからバスバが意図せず分離しないように、ケースに設けた弾性係止片(例えば、仮係止用のロックアーム)で、バスバを仮係止する場合がある。この種のロックアームは、一般に、ケースへのバスバの収容方向(通常、ケースの厚さ方向)に延びる片持ち梁状の形状を有しており、バスバの収容途中ではバスバに押圧されてバスバから離れる向きに弾性変形し、バスバの収容が完了すると元の形状に復帰してバスバに係合するようになっている。
【0005】
ここで、電気接続箱の低背化への要求からケースの厚さを薄くすると、通常、ロックアームの長さも短くなる。ロックアームの長さが短くなると、ロックアームが撓みにくくなることで、バスバを収容するときに要する押し込み力(いわゆる、挿入力)が大きくなる。更に、応力集中の度合いが増すことで、ロックアームが弾性復帰しない状態になること(永久変形)が生じる可能性が高くなる。バスバの挿入力が大きいと、バスバを収容する作業の作業性が損なわれることになるし、ロックアームに永久変形が生じると、本来の係止性能が損なわれることになる。このように、ロックアームでバスバを仮係止するにあたり、電気接続箱の低背化とバスバの適正な係止とは、一般に両立が困難である。
【0006】
本発明の目的の一つは、電気接続箱の低背化とバスバの適正な係止とを両立可能な電気接続箱の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱は、以下を特徴としている。
【0008】
端子付き電線の端子が導通接続されることになるバスバと、前記バスバを収容するケースと、を備える電気接続箱であって、
前記ケースは、
前記バスバが収容される収容溝と、
前記収容溝への前記バスバの収容方向に延びて前記バスバとの係合部を一端に有する第1部分と、前記収容方向に交差する方向に延びて前記収容溝の溝壁に設けられた連結部に繋がる第2部分と、を有する片持ち梁状のバスバ係止片と、を有し、
前記バスバ係止片は、
前記収容溝に収容された前記バスバが前記収容方向に移動することを前記係合部によって規制する、
電気接続箱であること。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケースに設けられるバスバ係止片が、従来のような単なる片持ち梁状の形状は有しておらず、バスバの収容方向に延びる第1部分と、収容方向に交差する方向に延びてバスバ収容溝の溝壁に設けられた連結部に繋がる第2部分と、を有する片持ち梁状の形状を有する。これにより、電気接続箱の低背化に伴って収容方向(例えば、ケースの厚さ方向)における第1部分の長さを十分に長くできない場合であっても、収容方向に交差する方向(例えば、ケースの幅方向や奥行き方向)における第2部分の長さを長くすることで、バスバ係止片の全体的な長さを十分に長くすることができる。よって、電気接続箱を低背化する場合であっても、ケースへのバスバの挿入力が過度に大きくならないし、バスバ係止片が弾性復帰しない状態になることを抑制することもできる。したがって、本構成の電気接続箱は、電気接続箱の低背化とバスバの適正な係止とを両立可能である。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、ケースの本体部からカバー部が取り外された状態にある本発明の実施形態に係る電気接続箱を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のA部の拡大図である(ただし、端子付き電線の端子の図示を省略)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電気接続箱1について説明する。電気接続箱1は、典型的には、車両に搭載されて使用される。
図1及び
図3に示すように、電気接続箱1は、複数の端子付き電線4A~4Eの一端に設けられた端子31(
図3参照)が導通接続されることになるバスバ3と、バスバ3を収容するケース2と、を備える。
【0013】
以下、説明の便宜上、
図1~
図5に示すように、「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。「上下方向」は、本発明の「バスバの収容方向」と一致している。なお、これらの方向は、あくまで説明の便宜のために定めているに過ぎず、電気接続箱1が自動車等に搭載されたときの自動車等の前後方向、左右方向及び上下方向に必ずしも対応する必要はない。以下、電気接続箱1を構成する各部品について順に説明する。
【0014】
樹脂製のケース2は、
図1及び
図3に示すように、上端が開口した略矩形箱状の本体部2Aと、本体部2Aの上端開口を塞ぐように本体部2Aに組み付けられるカバー部2Bと、で構成される。本体部2Aにカバー部2Bが組み付けられることで、ケース2の右端面にケース2の内外を連通する電線挿通孔2aが画成され、ケース2の左端面にケース2の内外を連通する電線挿通孔2b,2cが画成される。電線挿通孔2aには、端子付き電線4A,4Bが挿通することになり、電線挿通孔2bには、端子付き電線4C,4Dが挿通することになり、電線挿通孔2cには、端子付き電線4Eが挿通することになる。
【0015】
金属製のバスバ3には、第1バスバ3Aと、第2バスバ3Bと、が含まれる。第1バスバ3Aは、単一の平板である。第2バスバ3Bは、平板部である第1部分3aと、平板部である第2部分3bと、下方に向けて突出するように湾曲しながら延びて第1部分3a及び第2部分3bを連結する連結部3cと、で構成される。第1バスバ3Aには、後述するスタッドボルト15A,15Dに対応して一対の貫通孔(図示省略)が形成され、第2バスバ3Bの第1部分3aには、後述するスタッドボルト15B,15Cに対応して一対の貫通孔(図示省略)が形成され、第2バスバ3Bの第2部分3bには、後述するスタッドボルト15Eに対応して単一の貫通孔(図示省略)が形成されている。
【0016】
以下、ケースの2の本体部2Aについて詳細に説明する。
図1及び
図3に示すように、本体部2Aは、略矩形平板状の底板部11と、底板部11の複数個所から上方に突出し且つ底板部11に沿って延びる複数の立壁部12と、で構成される。この結果、本体部2Aには、上方に開口する複数の電線配索溝13A~13E、及び、上方に開口する複数のバスバ収容溝14A~14Cが、底板部11及び対応する複数の立壁部12によってそれぞれ画成されている。電線配索溝13A~13Eにはそれぞれ、端子付き電線4A~4Eが配索されることになる。電線配索溝13A,13Bの各々の一端部は電線挿通孔2aに連通し、電線配索溝13C,13Dの各々の一端部は電線挿通孔2bに連通し、電線配索溝13Eの一端部は電線挿通孔2cに連通している。バスバ収容溝14Aには第1バスバ3Aが収容され、バスバ収容溝14Bには第2バスバ3Bの第1部分3aが収容され、バスバ収容溝14Cには第2バスバ3Bの第2部分3bが収容されることになる。バスバ収容溝14Aは電線配索溝13A,13Dの各々の他端部と連通し、バスバ収容溝14Bは電線配索溝13B,13Cの各々の他端部と連通し、バスバ収容溝14Cは電線配索溝13Eの他端部と連通している。
【0017】
バスバ収容溝14Aを画成する底板部11には上方に突出するように延びる一対の金属製のスタッドボルト15A,15Dが設けられ、バスバ収容溝14Bを画成する底板部11には上方に突出するように延びる一対の金属製のスタッドボルト15B,15Cが設けられ、バスバ収容溝14Cを画成する底板部11には上方に突出するように延びる単一の属製のスタッドボルト15Eが設けられている。スタッドボルト15A~15Eの各々は、例えばインサート成形等によって、対応する底板部11に一体化されている。スタッドボルト15A~15Eは、それぞれ、端子付き電線4A~4Eの端子31に設けられた孔に挿入される。
【0018】
バスバ収容溝14A~14Cの各々を画成する1つ又は複数の立壁部12には、
図1~
図3等に示すように、連結部17を介してロックアーム16が設けられている。各ロックアーム16は、対応するバスバ収容溝14に収容されたバスバ3を仮係止する機能を果たす(詳細は後述する)。具体的には、バスバ収容溝14Aを画成する前後一対の立壁部12には、バスバ収容溝14Aに収容されることになる第1バスバ3Aの前端縁及び後端縁に対応する前後一対の位置にて、前後一対のロックアーム16が、第1バスバ3Aを前後方向に挟むように設けられている。バスバ収容溝14Bを画成する1つの立壁部12には、バスバ収容溝14Bに収容されることになる第2バスバ3Bの第1部分3aの後端縁に対応する位置にて、単一のロックアーム16が設けられている。バスバ収容溝14Cを画成する1つの立壁部12には、バスバ収容溝14Cに収容されることになる第2バスバ3Bの第2部分3bの左端縁に対応する位置にて、単一のロックアーム16が設けられている。バスバ収容溝14A~14Cの各々に対応して設けられた連結部17及びロックアーム16は、互いに同一の形状を有している。よって、以下、バスバ収容溝14Cに対応して設けられた連結部17及びロックアーム16についてのみ詳細に説明し、バスバ収容溝14A,14Bの各々に対応して設けられた連結部17及びロックアーム16についての説明は省略する。
【0019】
図2、
図4及び
図5に示すように、バスバ収容溝14Cを画成する立壁部12における第2バスバ3Bの第2部分3bの左端縁に対応する位置には、連結部17を介してロックアーム16が設けられている。
図2に示すように、連結部17は、バスバ収容溝14Cに面する立壁部12の前後方向に延びる側壁12aと立壁部12の上端壁とが交差する角部から上方に突出し且つ前後方向に延びる矩形平板状の平板部18と、平板部18の前後両端部及び立壁部12の側壁12aから右方に向けて(第2バスバ3Bの第2部分3bに向けて)突出し且つ上下方向に連続して延びる前後一対の突出部19と、で構成されている。ここで、立壁部12のうちの連結部17の左方にある部分12bは、第2バスバ3Bの第2部分3bとの間に突出部19を挟むように配置され且つ突出部19に繋がり、左右方向(収容方向に交差する方向)において突出部19を支持している。この部分12bは、本発明の「支持部」に対応する。
【0020】
ロックアーム16は、一対の突出部19の間に位置して上下方向に延びる第1部分21と、第1部分21の上端から左方に向けて(平板部18に向けて)延びて平板部18に繋がる第2部分22と、を有する片持ち梁状の形状を有しており、左右方向に弾性変形可能となっている。これにより、上下方向(即ち、ケース2の厚さ方向)におけるロックアーム16の長さ(=第1部分21の長さ)を長くしなくても、ロックアーム16の全体的な長さ(=第1部分21の長さ+第2部分22の長さ)を長くすることができる。第1部分21の下端(ロックアーム16の自由端)には、右方に向けて(第2バスバ3Bの第2部分3bに向けて)突出するように第1部分21の板厚が厚くなっている肉厚部21aが設けられている。肉厚部21aは、バスバ収容溝14Cに収容された第2バスバ3Bの第2部分3bの左端縁と係合することになる箇所であり、本発明の「係合部」に対応する。
【0021】
ロックアーム16は、第1部分21と第2部分22とが繋がる箇所p(
図5参照)において湾曲した形状を有するとともに、第2部分22と連結部17の平板部18とが繋がる箇所q(
図2参照)において平板部18に近づくにつれて第2部分22の幅(前後方向の長さ)が広がる形状を有している。これにより、第1部分21と第2部分22との繋ぎ目(p)の周辺での応力集中や、第2部分22と連結部17の平板部18との繋ぎ目(q)での応力集中を抑制し、且つ、ロックアーム16が弾性復帰しない状態になることが抑制される。以上、ケースの2の本体部2Aについて説明した。
【0022】
次いで、電気接続箱1の組み付け手順について説明する。まず、カバー部2Bが取り外されたケース2の本体部2Aのバスバ収容溝14(バスバ収容溝14A~14C)に、バスバ3(第1バスバ3A及び第2バスバ3B)が収容される。このため、第1バスバ3Aが、第1バスバ3Aに設けられた一対の貫通孔にスタッドボルト15A及び15Dがそれぞれ挿通されるように、バスバ収容溝14Aに向けて下方に押し込まれる。同様に、第2バスバ3Bの第1部分3aが、第1部分3aに設けられた一対の貫通孔にスタッドボルト15B及び15Cがそれぞれ挿通されるように、バスバ収容溝14Bに向けて下方に押し込まれる。同様に、第2バスバ3Bの第2部分3bが、第2部分3bに設けられた単一の貫通孔にスタッドボルト15Eが挿通されるように、バスバ収容溝14Cに向けて下方に押し込まれる。
【0023】
バスバ3の収容完了直前の段階では、バスバ3の縁部がロックアーム16の肉厚部21aに乗り上がることで、立壁部12の側壁12aに近づく向き(バスバ3から離れる向き)へロックアーム16が一時的に弾性変形し、その後、バスバ3の縁部がロックアーム16の肉厚部21aを乗り超えることで、立壁部12の側壁12aから遠ざかる向き(バスバ3に近づく向き)へロックアーム16が弾性復帰する(
図5参照)。このように、ロックアーム16が弾性復帰することで、バスバ3のバスバ収容溝14への収容が完了する。ここで、上下方向(即ち、ケース2の厚さ方向)におけるロックアーム16の長さ(=第1部分21の長さ)を長くしなくても、ロックアーム16の全体的な長さ(=第1部分21の長さ+第2部分22の長さ)が長いので、バスバ3を収容するときに要する挿入力を低減しつつ、ロックアーム16が弾性復帰しない状態になることを抑制し、ケース2を薄型化(低背化)することができる。
【0024】
バスバ3(第1バスバ3A及び第2バスバ3B)の収容完了状態では、
図2及び
図5に示すように、ロックアーム16の自由端である肉厚部21aの下側にバスバ3の縁部が隣接配置されることで、肉厚部21aとバスバ3の縁部とが係合している。この係合により、バスバ収容溝14に収容されたバスバ3がバスバ収容溝14に仮係止されて、バスバ3の上向きの移動(即ち、バスバ収容溝14からの分離)が規制される。ここで、ロックアーム16の自由端にバスバ3に向けて突出する肉厚部21aが設けられていることで、バスバ3の縁部とロックアーム16の自由端との係り代が十分に確保されている。バスバ3の収容完了状態では、
図2に示すように、連結部17の一対の突出部19が、バスバ3の縁部に当接可能となっている。このため、バスバ収容溝14に収容されたバスバ3における突出部19とバスバ3の縁部との当接方向(収容方向に交差する方向)への移動が、一対の突出部19によって規制される。バスバ3(具体的には、第2バスバ3B)の収容完了状態では、
図1及び
図3に示すように、第2バスバ3Bの連結部3cが、電線配索溝13Dの一部を横断するように配置されている。
【0025】
バスバ3(第1バスバ3A及び第2バスバ3B)のバスバ収容溝14への収容が完了すると、次いで、複数の端子付き電線4A~4Eの端子31(
図3参照)がそれぞれ、スタッドボルト15A~15Eに締結固定される。具体的には、複数の端子付き電線4A~4Eの端子31に設けられた貫通孔(図示省略)にスタッドボルト15A~15Eがそれぞれ挿通される。次いで、端子付き電線4Aが電線配索溝13Aを通って電線挿通孔2aから延出し、端子付き電線4Bが電線配索溝13Bを通って電線挿通孔2aから延出し、端子付き電線4Cが電線配索溝13Cを通って電線挿通孔2bから延出し、端子付き電線4Dが第2バスバ3Bの連結部3cの上側を横断しつつ電線配索溝13Dを通って電線挿通孔2bから延出し、端子付き電線4Eが電線配索溝13Eを通って電線挿通孔2cから延出するように、端子付き電線4A~4Eがそれぞれ配索される。ここで、バスバ収容溝14Cに対応して設けられている連結部17の平板部18は、
図1及び
図2に示すように、電線配索溝13Dと電線配索溝13Eとを隔てる立壁部12の上端壁から上方に突出している。このため、この連結部17の平板部18の存在により、電線配索溝13D(13E)から抜け出した端子付き電線4D(4E)が、電線配索溝13E(13D)に誤って入り込むことが抑制される。
【0026】
次いで、スタッドボルト15A~15Eの各々に対して、ナット32(
図3参照)を捻じ込んでバスバ3及び端子31が共締めされる。これにより、端子付き電線4A~4Eの端子31がそれぞれスタッドボルト15A~15Eに締結固定されると共に、バスバ収容溝14に収容されたバスバ3(第1バスバ3A及び第2バスバ3B)がバスバ収容溝14(バスバ収容溝14A~14C)に本係止される。ここで、ナット32を捻じ込む際、連結部17の突出部19がバスバ3の縁部に当接可能となっているため、ナット32の回転方向にバスバ3が位置ズレすること(いわゆる、連れ回り)を抑制できる。更に、連結部17の突出部19が立壁部12の一部12bにより支持されているため、バスバ3が連結部17に及ぼす外力によって連結部17そのものが変形することを抑制できる。
【0027】
そして、端子付き電線4A~4Eの端子31のスタッドボルト15A~15Eへの締結固定(即ち、バスバ3のバスバ収容溝14への本係止)が完了すると、ケース2の本体部2Aの上端開口を塞ぐように、カバー部2Bが本体部2Aに組み付けられる。以上により、電気接続箱1の組み付けが完了する。
【0028】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係る電気接続箱1によれば、ケース2に設けられるロックアーム16が、従来のような単なる片持ち梁状の形状ではなく、ケース2へのバスバ3の収容方向(上下方向)に延びる第1部分21と、第1部分21の上端部から第1部分21に交差する方向に延びてバスバ収容溝14の立壁部12に設けられた連結部17に繋がる第2部分22と、を有する片持ち梁状の形状を有する。これにより、収容方向(即ち、ケース2の厚さ方向)におけるロックアーム16の長さを長くしなくても、ロックアーム16の全体的な長さを長くすることができる。よって、ロックアーム16の係合部(肉厚部21a)でバスバ3の脱落等を適正に抑制しながら、バスバ3のケース2への挿入力を低減しつつロックアーム16が弾性復帰しない状態になることを抑制し、ケース2を薄型化(低背化)することができる。したがって、本実施形態に係る電気接続箱1は、電気接続箱1の薄型化と、バスバ3の適正な係止と、を両立可能である。
【0029】
更に、ロックアーム16が、第1部分21と第2部分22とが繋がる箇所p(
図2及び
図5参照)において湾曲した形状を有するとともに、第2部分22と連結部17とが繋がる箇所q(
図2参照)において連結部17に近づくにつれて第2部分22の幅が広がる形状を有する。これにより、第1部分21と第2部分22との繋ぎ目の周辺での応力集中や、第2部分22と連結部17との繋ぎ目での応力集中を抑制できる。よって、ロックアーム16が弾性復帰しない状態になることを更に強固に抑制できる。
【0030】
更に、ケース2の連結部17が、バスバ収容溝14の立壁部12からバスバ3に向けて突出してバスバ3の縁部に当接可能な突出部19を有する。そして、突出部19により、バスバ収容溝14に収容されたバスバ3が突出部19の突出方向に移動することが規制される。これにより、端子付き電線4の端子31をスタッドボルト15及びナット32でバスバ3に締結する場合、ナット32の回転方向にバスバ3が位置ズレすること(いわゆる、連れ回り)を抑制できる。よって、端子付き電線4の端子31をバスバ3に接続する作業の作業性が向上する。
【0031】
更に、ケース2の立壁部12が、バスバ3との間に突出部19を挟んだ位置に配置されて突出方向において突出部19を支持する支持部(立壁部12の一部12b)を有する。これにより、端子付き電線4の端子31をスタッドボルト15及びナット32でバスバ3に締結する場合、バスバ3が突出部19に及ぼす外力によって突出部19そのものが変形することを抑制できる。
【0032】
更に、少なくとも一つの連結部17が、連結部17に隣接するバスバ収容溝14Cの立壁部12よりも収容方向における高さが高く、且つ、一の電線配索溝(電線配索溝13D)と他の電線配索溝(電線配索溝13E)とに挟まれる箇所に配置される。これにより、例えば、バスバ収容溝14Cの立壁部12よりも高い(換言すると、立壁部12の上面よりも収容方向に突出する)連結部17により、一の電線配索溝から抜け出した端子付き電線4が、他の電線配索溝に誤って入り込むこと等が抑制される。即ち、連結部17が、ロックアーム16が連結する箇所としての機能に加え、端子付き電線4を電線配索溝13に適正に案内する機能を兼ね備えることになる。
【0033】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0034】
ここで、上述した本発明に係る電気接続箱1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
【0035】
[1]
端子付き電線(4)の端子(31)が導通接続されることになるバスバ(3)と、前記バスバ(3)を収容するケース(2)と、を備える電気接続箱(1)であって、
前記ケース(2)は、
前記バスバ(3)が収容される収容溝(14)と、
前記収容溝(14)への前記バスバ(3)の収容方向に延びて前記バスバ(3)との係合部(21a)を一端に有する第1部分(21)と、前記収容方向に交差する方向に延びて前記収容溝(14)の溝壁(12)に設けられた連結部(17)に繋がる第2部分(22)と、を有する片持ち梁状のバスバ係止片(16)と、を有し、
前記バスバ係止片(16)は、
前記収容溝(14)に収容された前記バスバ(3)が前記収容方向に移動することを前記係合部(21a)によって規制する、
電気接続箱(1)。
【0036】
上記[1]の構成の電気接続箱によれば、ケースに設けられるバスバ係止片が、従来のような単なる片持ち梁状の形状は有しておらず、バスバの収容方向に延びる第1部分と、収容方向に交差する方向に延びてバスバ収容溝の溝壁に設けられた連結部に繋がる第2部分と、を有する片持ち梁状の形状を有する。これにより、電気接続箱の低背化等に伴って収容方向(例えば、ケースの厚さ方向)における第1部分の長さを十分に長くできない場合であっても、収容方向に交差する方向における第2部分の長さを長くすることで、バスバ係止片の全体的な長さを、十分に長くすることができる。よって、ケースを低背化する場合であっても、ケースへのバスバの挿入力が過度に大きくならないし、バスバ係止片が弾性復帰しない状態になることを抑制することができる。したがって、本構成の電気接続箱は、電気接続箱の低背化とバスバの適正な係止とを両立可能である。
【0037】
[2]
上記[1]に記載の電気接続箱(1)において、
前記バスバ係止片(16)は、
前記第1部分(21)の他端に前記第2部分(22)が繋がるとともに前記第1部分(21)と前記第2部分(22)とが繋がる箇所(p)において湾曲した形状を有し、且つ、前記第2部分(22)と前記連結部(17)とが繋がる箇所(q)において前記連結部(17)に近づくにつれて前記第2部分(22)の幅が広がる形状を有する、
電気接続箱(1)。
【0038】
上記[2]の構成の電気接続箱によれば、バスバ係止片が、第1部分と第2部分とが繋がる箇所において湾曲した形状を有するとともに、第2部分と連結部とが繋がる箇所において連結部に近づくにつれて第2部分の幅が広がる形状を有する。これにより、第1部分と第2部分との繋ぎ目の周辺での応力集中や、第2部分と連結部との繋ぎ目での応力集中を抑制できる。よって、バスバ係止片が弾性復帰しない状態になることを更に強固に抑制できる。
【0039】
[3]
上記[1]に記載の電気接続箱(1)において、
前記ケース(2)の前記連結部(17)は、
前記収容溝(14)の前記溝壁(12)から前記バスバ(3)に向けて突出して前記バスバ(3)に当接可能な突出部(19)を有し、前記収容溝(14)に収容された前記バスバ(3)が前記突出部(19)の突出方向に移動することを前記突出部(19)によって規制する、
電気接続箱(1)。
【0040】
上記[3]の構成の電気接続箱によれば、ケースの連結部が、バスバ収容溝の溝壁からバスバに向けて突出してバスバの縁部に当接可能な突出部を有する。そして、突出部により、収容溝に収容されたバスバが突出部の突出方向に移動することが規制される。これにより、端子付き電線の端子をボルト及びナットでバスバに締結する場合、ナットの回転方向にバスバが位置ズレすること(いわゆる、連れ回り)を抑制できる。よって、端子付き電線の端子をバスバに接続する作業の作業性が向上する。
【0041】
[4]
上記[3]に記載の電気接続箱(1)において、
前記ケース(2)の前記溝壁(12)は、
前記バスバ(3)との間に前記突出部(19)を挟んだ位置に配置されて前記突出方向において前記突出部(19)を支持する支持部(12b)を、有する、
電気接続箱(1)。
【0042】
上記[4]の構成の電気接続箱によれば、ケースの溝壁が、バスバとの間に突出部を挟むように配置され、突出部の突出方向において突出部を支持する支持部を有する。これにより、端子付き電線の端子をボルト及びナットでバスバに締結する場合、バスバが連結部に及ぼす外力によって連結部そのものが変形することを抑制できる。
【0043】
[5]
上記[1]に記載の電気接続箱(1)において、
前記ケース(2)は、
前記端子付き電線(4)の電線が配索されることになる複数の配索溝(13)を有し、且つ、複数の前記連結部(17)を有し、
少なくとも一つの前記連結部(17)は、
当該連結部(17)に隣接する前記溝壁(12)よりも前記収容方向における高さが高く、且つ、一の前記配索溝(13D)と他の前記配索溝(13E)とに挟まれる箇所に配置される、
電気接続箱(1)。
【0044】
上記[5]の構成の電気接続箱によれば、少なくとも一つの連結部が、連結部に隣接する収容溝の溝壁よりも収容方向における高さが高く、且つ、一の配索溝と他の配索溝とに挟まれる箇所に配置される。これにより、例えば、収容溝の溝壁よりも高い(換言すると、溝壁の上面よりも収容方向に突出する)連結部により、一の配索溝から抜け出した電線が、他の配索溝に誤って入り込むこと等が抑制される。即ち、連結部が、バスバ係止片が連結する箇所としての機能に加え、電線を配索溝に適正に案内する機能を兼ね備えることになる。
【符号の説明】
【0045】
1 電気接続箱
2 ケース
3 バスバ
4 端子付き電線
12 立壁部(溝壁)
12b 部分(支持部)
13 電線配索溝(配索溝)
14 バスバ収容溝(収容溝)
16 ロックアーム(バスバ係止片)
17 連結部
19 突出部
21 第1部分
21a 肉厚部(係合部)
22 第2部分
31 端子