(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143312
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】水系組成物および硬化塗膜
(51)【国際特許分類】
C08L 65/00 20060101AFI20241003BHJP
C08G 61/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L65/00
C08G61/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055924
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 修平
【テーマコード(参考)】
4J002
4J032
【Fターム(参考)】
4J002CD062
4J002CD132
4J002CE001
4J002FD142
4J002GH01
4J002HA04
4J032CA34
4J032CB04
4J032CC03
4J032CE03
4J032CG06
(57)【要約】
【課題】 乳化剤を使用しない耐熱性に優れ、電着塗装に適した樹脂材料を提供すること
【解決手段】 環状オレフィン樹脂の側鎖に官能基を有する変性環状オレフィン樹脂であって、前記官能基が、さらにカルボキシ基であり、 酸価が1000当量/トン以上15000当量/トン未満である変性環状オレフィン樹脂と、水系媒体とを含む、乳化剤を使用しない水系組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン樹脂の側鎖に官能基を有する変性環状オレフィン樹脂であって、前記官能基が、さらにカルボキシ基であり、 酸価が1000当量/トン以上10000当量/トン未満である変性環状オレフィン樹脂と、水系媒体とを含む、乳化剤を使用しない水系組成物。
【請求項2】
硬化剤を含む請求項1に記載の水系組成物。
【請求項3】
電着塗装用である、請求項1または2に記載の水系組成物。
【請求項4】
請求項1または2の水系組成物を硬化させてなる硬化塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系組成物に関する。より詳しくは、変性環状オレフィン樹脂を含有する水系組成物と、それを硬化させてなる硬化塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器分野等で小型化、薄膜化、高機能化に伴い絶縁性、耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性、難燃性、寸法安定性等に優れた、高機能な材料が求められている。特に、電気電子分野等の材料については、製品の安全性や信頼性を保証するために絶縁性に加え耐熱性の高い材料が求められている。
【0003】
電気電子分野において、電気伝導体としての金属製品には、通常、絶縁膜の被覆が必要となる。金属製品の表面に絶縁膜を形成する有用な手法として、電着塗装が挙げられる。電着塗装は、電着塗料を用いて通電によって金属製品等の被塗装物表面に塗料や樹脂の塗装膜を形成する方法であり、複雑な形状であっても均一に塗装できることから、電気電子機器分野等で多用されている。
【0004】
電着塗装には、カチオン電着塗装と、アニオン電着塗装とがある。カチオン電着塗装は、陰極とした被塗装物を、カチオン電着塗料組成物中に浸漬し、電圧を印加することにより、プラスに帯電した樹脂を被塗装物に付着させることで、塗装する手法である。一方、アニオン電着塗装は、陽極とした被塗装物を、アニオン電着塗料組成物中に浸漬し、電圧を印加することにより、マイナスに帯電した樹脂を被塗装物に付着させることで、塗装する手法である。
【0005】
電着塗装には、水性樹脂が用いられ、例えば、一般的には用いられる樹脂として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0006】
特許文献1には、ポリオレフィン樹脂、中和化合物、乳化剤からなる水分散体について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年では、電気電子部品の絶縁膜以外にも、モーターコイル、金属基盤絶縁膜等に電着塗装の適用が拡大しているが、従来のポリオレフィン樹脂では、耐熱性を要求される分野への適用が困難であった。また、特許文献1では乳化剤を用いられている。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、乳化剤を使用しない耐熱性に優れ、電着塗装に適した樹脂材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、側鎖にカルボキシル基を有する変性環状オレフィン樹脂が、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は、以下の構成からなる。
【0011】
[1] 環状オレフィン樹脂の側鎖に官能基を有する変性環状オレフィン樹脂であって、前記官能基が、さらにカルボキシ基であり、 酸価が1000当量/トン以上15000当量/トン未満である変性環状オレフィン樹脂と、水系媒体とを含む、乳化剤を使用しない水系組成物。
[2] 硬化剤を含む[1]に記載の水系組成物。
[3] 電着塗装用である、[1]または[2]に記載の水系組成物。
[4] [1]または[2]の水系組成物を硬化させてなる硬化塗膜。
【発明の効果】
【0012】
本発明の変性環状オレフィン樹脂は優れた耐熱性を有し、かつアニオン電着塗装に適している。さらに乳化剤を使用せずに電着塗装用の塗料や水系組成物、これを使用した積層体などに好適に使用できる。さらに、本発明の変性環状オレフィン樹脂は耐熱性に優れることから、フィルムに機能性のコーティング剤を塗布した機能性フィルムの接着・コーティング剤としてや、食品包装用、化粧品包装用、医療包装用材料、偏光板材料用途にも適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の一形態について以下に詳述する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、既述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できる。
【0014】
<変性環状オレフィン樹脂>
本発明の変性環状オレフィン樹脂は、環状オレフィン樹脂の側鎖に官能基を有する変性環状オレフィン樹脂であって、前記官能基がカルボキシ基を含む変性環状オレフィン樹脂である。
【0015】
本発明の変性環状オレフィン樹脂を構成する環状オレフィン樹脂としては、1種のみの環状オレフィンモノマーから作製されるホモポリマー(COP)、または1種以上の環状オレフィンモノマーおよびコモノマーから構成されるコポリマー(COC)のいずれであってもよい。
【0016】
前記環状オレフィンモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセンなどの四環体、シクロペンタジエン三量体などの五環体、またはこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)置換体、アルケニル(ビニルなど)置換体、アルキリデン(エチリデンなど)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチルなど)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、またはこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーが好ましい。
【0017】
また、前記コモノマーとしては上述した環状オレフィンモノマーと共重合可能なモノマーであればよく、例えば、アルケンモノマーが好ましい。アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン等のα-オレフィンやイソブテンなどが挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
【0018】
環状オレフィン樹脂を構成する単量体成分は、その50質量%以上が前記環状オレフィンモノマーであることが好ましく、より好ましくは60質量%以上が前記環状オレフィンモノマーである。環状オレフィンモノマーが単量体成分全体の50質量%以上であると、耐熱性が良好なものとなる。単量体成分を重合する際の重合方法や重合条件等については、特に制限はなく、常法に従い適宜設定すればよい。
【0019】
本発明の変性環状オレフィン樹脂は側鎖に官能基を有し、官能基としてカルボキシ基を含むものである。カルボキシ基を有することで、環状オレフィン樹脂に良好なアニオン電着性を付与することができる。ここで、カルボキシ基は、酸無水物基であってもよい。
【0020】
変性環状オレフィン樹脂がカルボキシ基を有する場合、変性環状オレフィン樹脂の酸価は1,000当量/トン以上であることが好ましく、より好ましくは3,000当量/トン以上、さらに好ましくは5,000当量/トン以上である。また、10,000当量/トン以下であることが好ましく、より好ましくは9,500当量/トン以下、さらに好ましくは9,000当量/トン以下である。酸価が前記下限値以上であると、水性媒体への分散性や溶解性を向上したり、硬化剤との反応性を付与することができる。
【0021】
変性環状オレフィン樹脂の重量平均分子量(以下、「Mw」と略する。)の下限は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上である。また、Mwの上限は、好ましくは1,000,000以下であり、さらに好ましくは500,000以下である。変性環状オレフィン樹脂のMwが上記下限以上であれば、耐熱性が向上するため好ましい。また、Mwが上記上限以下であれば、溶媒への溶解性が良好となるので好ましい。変性環状オレフィン樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定によって決定される。
【0022】
本発明の変性環状オレフィン樹脂のガラス転移温度は100℃以上であることが好ましい。より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。上限は特に限定されないが、例えば250℃以下である。ガラス転移温度が前記範囲内であると、耐熱性に優れる。
【0023】
<変性環状オレフィン樹脂の製造方法>
本発明に係わる重合体は、5-ノルボルネン-2,3-カルボン酸無水物を重合させることにより得られる。あるいは、5-ノルボルネン-2,3-カルボン酸無水物の重合により得られるポリマーに、カルボキシ基を有するアルコール及び第一級或いは第二級アルコールを反応させる方法で製造できる。
【0024】
本発明に係わる5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物の重合体は5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物モノマーを適当な溶剤中で、金属触媒下、開環メタセシス重合させることにより合成できる。
【0025】
5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物の重合反応で使用可能な溶媒としては、特に限定されないが、たとえば、芳香族系炭化水素、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、メシチレン等及びキャップされたグリコールエーテルとしてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等、およびこれらの混合物が挙げられ、ジメチルアセトアミドが好適に用いられる。
【0026】
重合を溶媒中で行う場合には、単量体及び重合体の合計濃度が1~55重量%が好ましく、2~50重量%がより好ましく、5~45重量%が特に好ましい。単量体及び重合体の合計濃度が1重量%以下の場合は生産性が悪く、55重量%以上の場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の取り扱いが困難となる場合がある。
【0027】
重合温度は特に制限はないが、一般的には―30~200℃、好ましくは0~180℃である。重合時間は1分間~100時間で特に制限はない。
【0028】
開環メタセシス重合に使用される触媒は、金属カルベン有機錯体を含み、金属は必ずしもではないが、ルテニウム、モリブデン、オスミウムまたはタングステンなどの遷移金属である。用いられる触媒は、重合性官能基を有するモノマー総重量に対して100~1000ppmで十分反応させることができる。
【0029】
かかる重合反応においては、重合体の分子量を調整するために、分子量調整剤を用いることができる。そのような分子量調整剤としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどのα-オレフィン;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;エチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;アクリロニトリル、アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物などが挙げられる。単量体に対して、分子量調整剤を0.1~100モル%使用することにより、所望の分子量を有する重合体を得ることができる。
【0030】
水素化物の製造方法は、溶液中、水素と水素化触媒存在下で、重合体主鎖中の炭素―炭素二重結合を水素化する。水素化に用いられる水素化触媒は、例えば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn-ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec-ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウムのような遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなるチーグラー系触媒;ルテニウム―カルベン触媒、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、特開平7-2929、特開平7-149823、特開平11-209460、特開平11-158256、特開平11-193323などに記載されるルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;などの均一系触媒が挙げられる。また、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどの金属を、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に嘆じさせた不均一触媒、例えば、ニッケル/シリカ、パラジウム/カーボンなどを用いることができる。水素化反応は、通常、有機溶媒中で実施する。有機溶媒は生成する水素化物の溶解性により適宜選択することができ、前記重合溶媒を同様の有機溶媒を使用することができる。従って、重合反応後、溶媒を入れ替えることなく、そのまま水素化触媒を添加して、反応させることもできる。
【0031】
水素化反応条件は、使用する水素化触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。反応温度は、通常、-20~250℃、好ましくは-10~220℃、より好ましくは0~200℃である。-20℃未満では反応速度が遅くなり、逆に250℃を超えると副反応が起こりやすくなる。水素の圧力は、通常0.01~10.0MPa、好ましくは0.05~8.0MPa、より好ましくは0.1~5.0MPaである。水素の圧力が0.01MPa未満では水素化速度が遅くなり、10.0MPaを超えると高耐圧反応装置が必要となる。
水素化反応の時間は水素化率をコントロールするために適宜選択される。
反応時間は通常0.1~50時間の範囲であり、重合体中の主鎖の炭素-炭素二重結合のうち80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を水素化することができる。
【0032】
水素化反応の後、触媒を除去することが好ましい。触媒の除去方法としては、シリカ、アルミナ、活性炭等の吸着剤により吸着除去する方法;イオン交換樹脂により除去する方法;キレート剤を加えて触媒残渣を不溶化させてろ過する方法;重合体溶液を多量のメタノール等の貧溶媒で凝固・分離後に乾燥する等公知の方法により行うことができる。
【0033】
<カルボキシ基との反応性を有する化合物(B)>
前記カルボキシ基との反応性を有する官能基およびカルボキシ基を有する化合物(B)(以下、化合物(B)とも言う。)が有する、カルボキシ基との反応性を有する官能基(以下、官能基(f)とも言う。)としては、例えばヒドロキシ基、チオール基、アミノ基等が挙げられるカルボキシ基含有環状オレフィン樹脂のカルボキシ基と化合物(B)の官能基(f)とを反応させることによって、側鎖にカルボキシを有する変性環状オレフィン樹脂が得られる。官能基(f)は、カルボキシ基との反応性の観点から、ヒドロキシ基であることが好ましい。
【0034】
上記化合物(B)としては、グリコール酸、15-ヒドロキシペンタデカン酸等のヒドロキシアルカン酸等が挙げられる。
【0035】
カルボキシ基含有環状オレフィン樹脂と化合物(B)との反応方法は特に限定されない。また、環状オレフィン樹脂重合体合成後、そのまま化合物(B)を供給して反応させてもよいし、一度カルボキシ基含有環状オレフィン樹脂を単離した後、化合物(B)と反応させてもよい。
【0036】
<水系組成物>
本発明の水系組成物は、本発明の変性環状オレフィン樹脂と、水系媒体とを含有する組成物である。本発明の水系組成物は、変性環状オレフィン樹脂が水系媒体に分散した分散体でもよく、変性環状オレフィン樹脂が水系媒体に溶解した溶液であってもよい。
【0037】
本発明の水系組成物は、中和化合物、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤等を含有していてもよい。
【0038】
前記中和化合物としては、例えば、(ジ)メチルアミン、(ジ)エチルアミン、(ジ)プロピルアミン、(ジ)ブチルアミン、(ジ)ヘキシルアミン、(ジ)オクチ ル アミン、(ジ)エタノールアミン、(ジ)プロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミン-2-メチル-1-プロパノール、モルフォリン等の有機の塩基性物質;アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウ ム等の無機の塩基性物質を添加することでカルボキシ基のO原子をアニオン化することができる。
これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよいが、2種以上の併用がより効果的である。
【0039】
前記硬化剤としては、例えばエポキシ樹脂、カルボジイミド化合物等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型、またはそれらに水素添加したもの、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。また、前記エポキシ樹脂は例えば、シリコーン、ウレタン、ポリイミド、ポリアミド等で変性されていてもよく、分子骨格内に硫黄原子、窒素原子等を含んでいてもよい。
【0040】
前記カルボジイミド化合物としては、分子内にカルボジイミド基を有するものであれば、特に限定されない。好ましくは分子内にカルボジイミド基を2個以上有するポリカルボジイミドである。ポリカルボジイミドを使用することによって、変性環状オレフィン樹脂のカルボキシ基とカルボジイミド基とが反応し、基材との相互作用を高め、密着性を向上することができる
【0041】
カルボジイミド化合物は、芳香族カルボジイミド化合物、脂環族カルボジイミド化合物または脂肪族カルボジイミド化合物のいずれでも良く、これらを単独で使用することができるし、2種以上を併用することもできる。芳香族カルボジイミド化合物としては、ポリ-m-フェニレンカルボジイミド、ポリ-p-フェニレンカルボジイミド、ポリトリレンカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)などが挙げられる。脂環族カルボジイミド化合物としては、ポリ-m-シクロヘキシルカルボジイミド、ポリ-p-シクロヘキシルカルボジイミド、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、ポリ(3,3’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドなどが挙げられる。脂肪族カルボジイミド化合物としては、直鎖状または分岐状の脂肪族カルボジイミド化合物のいずれであっても構わない。好ましくは直鎖状の脂肪族カルボジイミド化合物であり、具体的には、ポリメチレンカルボジイミド、ポリエチレンカルボジイミド、ポリプロピレンカルボジイミド、ポリブチレンカルボジイミド、ポリペンタメチレンカルボジイミド、ポリヘキサメチレンカルボジイミドなどが挙げられる。これらを単独で、または2種以上を併用して使用することができる。
【0042】
前記硬化促進剤は、変性環状オレフィン樹脂の有するカルボキシ基とエポキシ樹脂との反応を促進させる目的で使用するものであり、第三級アミン系硬化促進剤、第三級アミン塩系硬化促進剤およびイミダゾール系硬化促進剤等を使用することができる。
【0043】
第三級アミン系硬化促進剤としては、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等が挙げられる。
【0044】
第三級アミン塩系硬化促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンや1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネンの、ギ酸塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、o-フタル酸塩、フェノール塩またはフェノールノボラック樹脂塩等が挙げられる。
【0045】
イミダゾール系硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明の水系組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.5~10質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の含有量が前記範囲内であれば、優れた密着性および耐熱性を有する。
【0047】
前記酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノ-ル系酸化防止剤;ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-ジチオプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤;トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。酸化防止剤の含有量は、変性環状オレフィン樹脂100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~5質量部であることがより好ましい。酸化防止剤の含有量が上記範囲内であることにより、耐熱性を向上させることができる。
【0048】
<電着塗料用組成物>
本発明の水系組成物は、電着塗料用組成物として好適に使用することができる。特に本発明に用いる変性環状ポリオレフィン樹脂はカルボキシ基を有しており、アニオン電着用として特に適している。本発明の水系組成物を用いた電着塗装方法としては、公知の電着塗装方法を適用することができる。具体的には、本発明の水系組成物を電着塗料用組成物として使用してアニオン電着塗装をする場合、電着塗料用組成物に被塗装物を浸漬する工程と、被塗装物を陰極とし、陽極との間に電圧を印加して、被塗装物の表面に変性環状オレフィン樹脂被膜を電着させる工程とを含む方法によって、アニオン電着塗装を行うことができる。
【0049】
被塗装物としては、被塗装部分が導電性を有する物品等であって、例えば、銅、鉄、鋼、アルミニウムなどの金属により構成された被塗装部分を有するものが挙げられる。被塗装物の形状については、電着塗料用組成物を接触させることができれば、特に制限されない。
【0050】
アニオン電着塗装では、例えば、被塗装物を陰極とし、陽極との間に、通常、1V以上500V以下の電圧を印加して行うことができる。印加電圧が1V以上であれば十分な電着塗装が可能であり、500V以下であれば、消費電力を抑制し得、経済的である。
【0051】
本発明において電着塗料用組成物を用いてアニオン電着塗装する場合、電着塗料用組成物の温度は、例えば10~60℃である。
【0052】
本発明において、電着塗料用組成物は、本発明の水系組成物と、必要に応じて各種添加剤を混合することによって製造することができる。
【0053】
<硬化塗膜>
本発明の硬化塗膜は、例えば、被塗装物に電着後、乾燥および硬化させることにより得ることができる。硬化塗膜の、測定周波数10GHzにおける、誘電正接は0.0030未満であることが好ましい。誘電正接は低ければ低いほど回路基板とした際の電気信号の伝達効率、高速化が得られるために好ましい。
【実施例0054】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。なお、本実施例および比較例において、単に部とあるのは質量部を示すこととする。
【0055】
<物性評価方法>
(酸価の測定)
600MHzの核磁気共鳴スペクトル装置(以下、NMRと略記することがある)を用いて、1H-NMRおよび13C―NMR測定を以下の条件により行い、カルボキシ基を有する化合物が環状オレフィン樹脂に導入された量から、酸価を特定した。
(13C-NMR測定条件)
・装置:BRUKER社製 AVANCE NEO 600分光計
・測定溶媒:重ベンゼン/o-ジクロロベンゼン(体積比2/8)
・試料濃度:約50mg/約0.60mL
・共鳴周波数:150.9MHz
・フリップ角:30度
・データ取得時間:2秒
・パルス繰り返し時間:0.5秒
・積算回数:512回
・測定温度:120℃
(1H-NMR測定条件)
・装置:BRUKER社製 AVANCE NEO 600分光計
・測定溶媒:重ジメチルスルホキシド、または重ジメチルスルホキシド/塩酸(1モル/L)(0.6mL/0.02mL)
・試料濃度:約20mg/約0.60mL
・共鳴周波数:600MHz
・フリップ角:30度
・データ取得時間:4秒
・パルス繰り返し時間:1秒
・積算回数:64
・測定温度:30℃
【0056】
(ガラス転移温度の測定)
示差走査型熱量計(SII社、DSC-200)を用いて測定した。試料5mgをアルミニウム抑え蓋型容器に入れ密封し、液体窒素を用いて-50℃まで冷却した。次いで150℃まで20℃/分の昇温速度にて昇温させ、昇温過程にて得られる吸熱曲線において、吸熱ピークが出る前(ガラス転移温度以下)のベースラインの延長線と、吸熱ピークに向かう接線(ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線)との交点の温度をもって、ガラス転移温度(単位:℃)とした。
【0057】
(平均粒子径)
大塚電子(株)製濃厚系粒径アナライザー“FPAR―1000”を用いた動的光散乱法により、平均粒子径を測定した。水系組成物作製時、硬化剤を加える前にサンプリングし、脱イオン水で希釈し、光量を15000~40000cpsの範囲に調整した。測定時間60秒、測定温度25℃で測定し、得られたヒストグラム解析による平均粒子径D50(μm)を平均粒子径とした。
【0058】
<電着塗装>
陰極として銅板、陽極としてSUS板(被塗装物)を使用し、水系組成物に浸して100Vの電圧を印加して銅板の表面に電着塗装を行い、樹脂塗装物が得られれば〇、得られなければ×とした。
【0059】
<合成例1>
(変性環状オレフィン樹脂(P-1)の作製)
4つ口フラスコに常温、窒素雰囲気下にて、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製を100重量部、溶剤として、DMAc(三菱ガス化学(株)製)を150重量部40℃にて1hr攪拌、溶解させた。次に1-ヘキセン((東京化成工業(株)製)を0.5重量部、さらにジクロロ[1,3―ビス(2,4,6―トリメチルフェニル)―2-イミダゾリジニリデン](ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(シグマアルドリッチ(株)製)0.03重量部を添加した。2hr攪拌後、常温まで冷却し、重合溶液を得た。次に水添工程として、前記溶液を十分に窒素置換した内容積1 L のS U S 製オートクレーブに100重量部移し、Pd-C(Pd 10%) (約55%水湿潤品、東京化成工業(株)製)25重量部を添加した後、5.0MPaGの圧力で水素ガス(H2)を入れ、60℃まで昇温し4hr攪拌、水素化反応を完結した。不溶物をろ過にて除去し、大過剰のメチルエチルケトンにて精製することにより、変性環状オレフィン樹脂(P―1)を得た。得られた変性環状オレフィン樹脂(P-1)の物性測定結果を表1に示す。
【0060】
<実施例1>(水系組成物(d-1)の作製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、変性環状オレフィン樹脂(a―1)を25重量部、NMPを10重量部、純水を5重量部加え、80℃2hr攪拌した。その後、ジエチルエタノールアミンを10重量部、純水を50重量部、を加え、80℃にて3時間攪拌し、常温に冷却した。ここでサンプリングした水系組成物は、ほとんど水溶液の状態であり、平均粒子径(D50)は測定できなかった。さらに、硬化剤としてTETRAD―X(三菱ガス化学社製、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン)1.5質量部をメチルエチルケトン5質量部に溶解した溶液を添加して攪拌することにより、水系組成物(d-1)を得た。
【0061】
<合成例2>
(変性環状オレフィン樹脂(P-2)の作製)
4つ口フラスコに常温、窒素雰囲気下にて、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製を100重量部、溶剤として、DMAc(三菱ガス化学(株)製)を150重量部40℃にて1hr攪拌、溶解させた。次に1-ヘキセン((東京化成工業(株)製)を0.5重量部、さらにジクロロ[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン](ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(シグマアルドリッチ(株)製)0.03重量部を添加した。さらにアルコール化合物(B)としてグリコール酸を55.5質量部およびDMAc81.5重量部添加し、2時間攪拌した添加し、2hr攪拌後、常温まで冷却し、重合溶液を得た。次に水添工程として、前記溶液を十分に窒素置換した内容積1LのSUS 製オートクレーブに100重量部移し、Pd-C(Pd 10%) (約55%水湿潤品、東京化成工業(株)製)5重量部を添加した後、5.0MPaGの圧力で水素ガス(H2)を入れ、60℃まで昇温し4hr攪拌、水素化反応を完結した。不溶物をろ過にて除去し、大過剰のメチルエチルケトンにて精製することにより、変性環状オレフィン樹脂(P-2)を得た。得られた変性環状オレフィン樹脂(P-2)の物性測定結果を表1に示す。
【0062】
<実施例2>(水系組成物(d-2)の作製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、変性環状オレフィン樹脂(a-2)を25重量部、NMPを10重量部、純水を5重量部加え、80℃2hr攪拌した。その後、ジエチルエタノールアミンを10重量部、純水を50重量部、を加え、80℃にて3時間攪拌し、常温に冷却した。ここでサンプリングした水系組成物は、ほとんど水溶液の状態であり、平均粒子径(D50)は測定できなかった。さらに、硬化剤としてTETRAD―X(三菱ガス化学社製、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン)1.5質量部をメチルエチルケトン5質量部に溶解した溶液を添加して攪拌することにより、水系組成物(d-2)を得た。
【0063】
<合成例3>
(変性環状オレフィン樹脂(P-3)の作製)
4つ口フラスコに常温、窒素雰囲気下にて、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(東京化成工業(株)製を100重量部、溶剤として、DMAc(三菱ガス化学(株)製)を150重量部40℃にて1hr攪拌、溶解させた。次に1-ヘキセン((東京化成工業(株)製)を0.5重量部、さらにジクロロ[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン](ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(シグマアルドリッチ(株)製)0.03重量部を添加した。さらにアルコール化合物(B)としてステアリルアルコールを150.5質量部およびDMAc81.5重量部添加し、2時間攪拌した添加し、2hr攪拌後、常温まで冷却し、重合溶液を得た。次に水添工程として、前記溶液を十分に窒素置換した内容積1 L のS U S 製オートクレーブに100重量部移し、Pd-C(Pd 10%) (約55%水湿潤品、東京化成工業(株)製)5重量部を添加した後、5.0MPaGの圧力で水素ガス(H2)を入れ、60℃まで昇温し4hr攪拌、水素化反応を完結した。不溶物をろ過にて除去し、大過剰のメチルエチルケトンにて精製することにより、変性環状オレフィン樹脂(P-3)を得た。得られた変性環状オレフィン樹脂(P-3)の物性測定結果を表1に示す。
【0064】
<実施例2>
(水系組成物(d-3)の作製)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、変性環状オレフィン樹脂(a-3)を25重量部、NMPを10重量部、純水を5重量部加え、80℃2hr攪拌した。その後、ジエチルエタノールアミンを10重量部、純水を50重量部、を加え、80℃にて3時間攪拌し、常温に冷却した。ここでサンプリングした水系組成物は、ほとんど水溶液の状態であり、平均粒子径(D50)は測定できなかった。
さらに、硬化剤としてTETRAD-X(三菱ガス化学社製、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン)1.5質量部をメチルエチルケトン5質量部に溶解した溶液を添加して攪拌することにより、水系組成物(d-3)を得た。
【0065】
<合成比較例1>
(ポリプロピレン樹脂(p-4)の作製)
エチレン-プロピレン共重合体(重量平均分子量:320000、エチレン成分4.6mol%)280重量部、無水マレイン酸(東京化成工業社製)21.2重量部、ジクミルパーオキサイド(東京化成工業社製)4.2重量部およびトルエン420重量部を、撹拌器を取り付けたオートクレーブに仕込んで窒素置換を約5分間行った後、加熱撹拌しながら140℃で5時間反応を行った 。 反応終了後、反応液を大量のメチルエチルケトン中に投入して樹脂を析出させ、これをさらにメチルエチルケトンで数回洗浄して未反応のモノマーを除去し、60℃、10torrの圧力下で充分に減圧乾燥して、変性ポリオレフィンを得た。
このポリオレフィン25重量部を125重量部のトルエンに溶解させ、N,N-ジメチルエタノールアミン(東京化成工業社製)を樹脂に対して8重量%、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(ノイゲンEA-197D、第一工業製薬社製)を、樹脂に対して5重量%添加して、さらに脱イオン水100重量部を入れて、50℃に保った。上記溶液を10分間撹拌してプレエマルションを得た。このプレエマルション粒子の粒径を測定したところ、平均粒径は0.31μmであった。
【0066】
<合成比較例2>
(ポリイミド樹脂(p-5)の作製)
4つ口フラスコに乾燥窒素下にて、溶剤のN-メチル-2-ピロリドン(東京化成工業社製)369.7重量部に、ジアミンである4,4’-ジアミノジフェニルエーテル((東京化成工業社製)43.8重量部を溶解させた。その後、溶剤のNMPに、カルボン酸無水物であるピロメリット酸無水物(東京化成工業社製)46.3重量部を溶解させた。そして、窒素環境下において、室温で12時間撹拌しながら合成することにより、ポリアミック酸を含むポリイミド樹脂(p-5)の溶液を調製した。
【0067】
【0068】
合成例、実施例で使用した原料は、以下のとおりである。
(アルコール化合物(B))
B2: グリコール酸
B3: ステリルアルコール
(硬化剤)
H1: テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン(TETRAD―X、三菱ガス化学社製)
H2: フェノールノボラック型エポキシ樹脂(jER152、三菱ケミカル社製)
H3: テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(jER604、三菱ケミカル社製)
(乳化剤)
E1: ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(ノイゲンEA-197D、第一工業製薬社製)
E2: ポリオキシエチレンイソデシルエーテル(ノイゲンSD-80、第一工業製薬社製)
【0069】
得られた水系組成物d-1~d-8の評価結果を表2に示す。
【0070】
【0071】
表1および表2の結果からわかるように、実施例1~6の変性環状オレフィン樹脂を用いた水系組成物は、乳化剤フリーで製造可能であり、耐熱性に優れ、アニオン電着塗装性も良好であった。一方、比較例1では変性オレフィン樹脂は環状構造を有していないため、耐熱性に劣り、水系組成物製造のために乳化剤が必要であった。比較例2ではポリイミド樹脂を使用しており、水系組成物製造のために乳化剤が必要であった。
本発明の変性環状オレフィン樹脂は優れた耐熱性を有し、かつアニオン電着塗装に適していることから、電着塗装用の塗料や水系組成物、これを使用した積層体などに好適に使用できる。さらに、フィルムに機能性のコーティング剤を塗布した機能性フィルムの接着・コーティング剤としてや、食品包装用、化粧品包装用、医療包装用材料、偏光板材料用途にも適用することができる。