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特開2024-143318メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素の遺伝子多型を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブ
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  • 特開-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素の遺伝子多型を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143318
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素の遺伝子多型を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20241003BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20241003BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20241003BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z ZNA
C12Q1/6827 Z
C12Q1/686 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055931
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】日比野 雅大
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR56
4B063QR62
4B063QR66
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素の遺伝子多型を検出することができるオリゴヌクレオチドプローブを提供すること。
【解決手段】MTHFRの677位における遺伝子多型を検出するために用いられる、以下の特徴(A)及び(B)を有するオリゴヌクレオチドプローブ。
(A)特定の6種類の配列のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むオリゴヌクレオチドであって、MTHFRの677位に相当する位置の塩基が末端塩基から4塩基以上離れた位置に存在するオリゴヌクレオチドを含む。
(B)少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MTHFRの677位における遺伝子多型を検出するために用いられる、以下の特徴(A)及び(B)を有するオリゴヌクレオチドプローブ。
(A)配列番号1~6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むオリゴヌクレオチドであって、MTHFRの677位に相当する位置の塩基が末端塩基から4塩基以上離れた位置に存在するオリゴヌクレオチドを含む。
(B)少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されている。
【請求項2】
前記(A)のオリゴヌクレオチドが、配列番号1~6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項3】
MTHFRの677位における遺伝子多型がCC型、TT型又はCT型のいずれであるかを検出するために用いられる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項4】
前記(B)において、蛍光消光色素で標識されている少なくとも一つの末端塩基がシトシンである請求項1に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項5】
前記(B)の蛍光消光色素が、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、BODIPY及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素である、請求項1に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項6】
前記(B)の蛍光消光色素が、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G、TAMRA、ローダミン6G、テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素である、請求項5に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のプローブを用いることを特徴とする、MTHFRの677位における遺伝子多型を検出する方法。
【請求項8】
MTHFRの677位における遺伝子多型がCC型、TT型又はCT型のいずれであるかを判別する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載のプローブを含む、MTHFRの677位における遺伝子多型を検出するためのキット。
【請求項10】
配列番号7~10のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むプライマーと、
配列番号11~14のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むプライマーとを含むプライマーセットであって、
一方のプライマーが他方のプライマーの核酸伸長生成物に相補的であるプライマーセットを更に含む、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼを更に含む、請求項9に記載のキット。
【請求項12】
ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼとして、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼを含む、請求項9に記載のキット。
【請求項13】
試料中に含まれるMTHFRの677位における変異を判別して検出する方法であって、請求項1~6のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブを含む反応液を用いて、以下の工程(1)~(6)を行うことを特徴とする、MTHFRの677位における変異の判別方法。
(1)MTHFRをコードする遺伝子配列を含む核酸又はその核酸断片であって、MTHFRの677位に相当する塩基を含む核酸又は核酸断片を含む試料を提供する工程;
(2)前記試料において核酸増幅反応を行う工程。
(3)工程(2)で得られうる増幅産物に、該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、ハイブリッドを形成する工程。
(4)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることで、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定する工程。
(5)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定する工程。
(6)前記Tm値に基づいて、前記試料中のMTHFRの677位における変異の有無を判定する工程。
【請求項14】
前記反応液が更に、配列番号7~10のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むプライマーと、
配列番号11~14のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むプライマーとを含むプライマーセットであって、
一方のプライマーが他方のプライマーの核酸伸長生成物に相補的であるプライマーセットを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記工程(2)の核酸増幅反応が、PCRである請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(2)の核酸増幅反応で用いる核酸増幅酵素が、ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼが、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼである、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(以下、MTHFRとも称する)の遺伝子多型を検出するためのオリゴヌクレオチドプローブに関する。更に、本発明は、該オリゴヌクレオチドプローブを用いて、試料中に含まれるMTHFRの遺伝子多型を検出する方法及びその方法に用いるための試薬・キット等に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトは様々な遺伝子多型を持っており、それにより個体差が生じる。遺伝子多型とは一般的に人の個体間に1%以上の頻度で見いだされる遺伝子間の相違のことであり、そのうちの90%が遺伝子の1個の塩基が変異した1塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNPs)である。
【0003】
判明しているSNPだけでも100万種類以上あるとされており、SNPの中には、高血圧、心臓疾患、がんなどの疾患の発症と関係するものや薬剤代謝と関係するもの、ヒトの体質に関係するものなどが存在し、ヒトSNP診断の重要性は年々高まっている。
【0004】
これまでに妊娠中のリスクに関係するSNPも報告されている。妊娠中のリスク要因としては、母子の栄養不良状態、飲酒、喫煙またはホルモン剤の使用等が挙げられるが、とりわけ、葉酸代謝に関する遺伝子のSNPは母子の栄養不良状態の1つである血中高ホモシステインを引き起こす。これにより、二分脊椎を代表とする胎児の神経管閉鎖障害のリスクが高まることが報告されている。また、血中高ホモシステインは心血管疾患や脳卒中、認知症のリスクを高めることも明らかにされており、血中ホモシステイン代謝にかかわる葉酸代謝関連遺伝子のSNP型判定は非常に重要である。
【0005】
葉酸代謝過程において、ホモシステインは必須アミノ酸であるメチオニンが代謝されて生成されるアミノ酸であり、再メチル化経路とイオウ転移経路により代謝される。前者では、ビタミン12(B12)を補酵素とするメチオニン合成酵素(methionine synthase:MS)によりホモシステインがメチオニンに転換される。
【0006】
ホモシステインをメチオニンに代謝するために、摂取葉酸由来の5-メチルテトラヒドロ葉酸がメチル基供与体として必要である。本経路において、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を5-メチルテトラヒドロ葉酸へ代謝する為に必須である酵素が葉酸代謝関連遺伝子の1つであるメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(methylenetetrahydrofolate reductase:MTHFR)であり、この経路の律速である。
【0007】
葉酸代謝関連遺伝子の多型はいくつか存在するが、その中でも、MTHFRの677番目のシトシンがチミンに置換されたMTHFR C677Tは心血管疾患や神経管閉鎖障害等の重篤疾患に関係することが明らかにされている(非特許文献1)。
【0008】
そこで、高感度な核酸増幅法を用いることで、MTHFRの遺伝子多型を検出する方法が開発されてきた(非特許文献2)。例えば、Direct Sequencing法やRFLP法があげられる。前記Direct Sequencing法は、例えば、試料の標的DNAについて、検出対象配列に相当する領域をPCR(Polymerase chain reaction)により増幅させ、その全遺伝子配列を解析する方法である。前記RFLP法は、例えば、まず、試料の標的DNAについて、検出対象配列に相当する領域をPCRにより増幅させる。そして、前記検出対象配列における目的の変異の有無により切断作用が異なる制限酵素によって、その増幅物を切断し、電気泳動することでタイピングを行う方法である。
【0009】
しかしながら、これらの方法は、例えば、試料から抽出したDNAの精製、電気泳動、制限酵素処理等が必須であるため、手間やコスト、時間がかかる。また、PCRを行った後、反応容器を一旦開封する必要がある。このため、前記増幅物が次の反応系に混入し、解析精度が低下するおそれがある。さらに、自動化が困難であるため、大量のサンプルを解析できないという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】平岡ら、葉酸代謝関連遺伝子に基づくテーラーメイド栄養学―さかど葉酸プロジェクト―、The vitamin Society of Japan、2009、83、p.264-275
【非特許文献2】三ツ口ら、メチレンテトラヒドロ還元酵素遺伝子多型C677Tと 葉酸摂取量、血清葉酸値および血漿ホモシステイン値との関連 ―葉酸添加発酵乳を用いたシングルアーム介入試験―、名古屋栄養科学雑誌、2017、3、p.25-38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、より簡便かつ迅速に試料中に含まれるMTHFRの遺伝子多型を検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は鋭意研究の結果、特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いることで、より簡便かつ迅速に試料中に含まれるMTHFRの遺伝子多型を検出できることを見出し、本発明に到達した。即ち、代表的な本発明の概要は以下の通りである。
【0013】
[項1] MTHFRの677位における遺伝子多型を検出するために用いられる、以下の特徴(A)及び(B)を有するオリゴヌクレオチドプローブ。
(A)配列番号1~6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むオリゴヌクレオチドであって、MTHFRの677位に相当する位置の塩基が末端塩基から4塩基以上離れた位置に存在するオリゴヌクレオチドを含む。
(B)少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されている。
[項2] 前記(A)のオリゴヌクレオチドが、配列番号1~6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなる、項1に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
[項3] MTHFRの677位における遺伝子多型がCC型、TT型又はCT型のいずれであるかを検出するために用いられる、項1に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
[項4] 前記(B)において、蛍光消光色素で標識されている少なくとも一つの末端塩基がシトシンである項1に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
[項5] 前記(B)の蛍光消光色素が、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、BODIPY及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素である、項1に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
[項6] 前記(B)の蛍光消光色素が、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G、TAMRA、ローダミン6G、テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素である、項5に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
[項7] 項1~6のいずれかに記載のプローブを用いることを特徴とする、MTHFRの677位における遺伝子多型を検出する方法。
[項8] MTHFRの677位における遺伝子多型がCC型、TT型又はCT型のいずれであるかを判別する、項7に記載の方法。
[項9] 項1~6のいずれかに記載のプローブを含む、MTHFRの677位における遺伝子多型を検出するためのキット。
[項10] 配列番号7~10のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むプライマーと、
配列番号11~14のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むプライマーとを含むプライマーセットであって、
一方のプライマーが他方のプライマーの核酸伸長生成物に相補的であるプライマーセットを更に含む、項9に記載のキット。
[項11] ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼを更に含む、項9に記載のキット。
[項12] ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼとして、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼを含む、項9に記載のキット。
[項13] 試料中に含まれるMTHFRの677位における変異を判別して検出する方法であって、項1~6のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブを含む反応液を用いて、以下の工程(1)~(6)を行うことを特徴とする、MTHFRの677位における変異の判別方法。
(1)MTHFRをコードする遺伝子配列を含む核酸又はその核酸断片であって、MTHFRの677位に相当する塩基を含む核酸又は核酸断片を含む試料を提供する工程;
(2)前記試料において核酸増幅反応を行う工程。
(3)工程(2)で得られうる増幅産物に、該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、ハイブリッドを形成する工程。
(4)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることで、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定する工程。
(5)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定する工程。
(6)前記Tm値に基づいて、前記試料中のMTHFRの677位における変異の有無を判定する工程。
[項14] 前記反応液が更に、配列番号7~10のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むプライマーと、
配列番号11~14のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むプライマーとを含むプライマーセットであって、
一方のプライマーが他方のプライマーの核酸伸長生成物に相補的であるプライマーセットを含む、項13に記載の方法。
[項15] 前記工程(2)の核酸増幅反応が、PCRである項13に記載の方法。
[項16] 前記工程(2)の核酸増幅反応で用いる核酸増幅酵素が、ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼである、項13に記載の方法。
[項17] 前記ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼが、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼである、項16に記載の方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、簡便かつ迅速に試料中に含まれるMTHFRの677位における遺伝子多型を検出できる。本発明のオリゴヌクレオチドプローブ、並びに該プローブを用いた検出方法、試薬、及びキットを使用することで、例えば、MTHFR遺伝子の野生型(MTHFR C677)と変異型(MTHFR C677T等)の判別を簡便かつ迅速に行うことが可能になり、当該多型がマーカーとなり得る疾患に関するリスクを判定する際の有効な知見を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】MTHFR遺伝子配列(野生型C677及び変異型C677T)と、本発明の各オリゴヌクレオチドプローブとの対応関係を示す図である(なお、配列番号1~3はアラインメントのために逆鎖に変換した)。各配列で四角で囲んだ塩基が、MTHFRの677位に相当する塩基に相当する。
図2】実施例1の結果を示す図である。実線、点線、破線は、それぞれ異なるオリゴヌクレオチドプローブの蛍光変化を示す。
図3】実施例2の結果を示す図である。実線、点線、破線は、それぞれ異なるMTHFR遺伝子多型の測定結果を示す。
図4】実施例3の結果を示す図である、実線、点線、破線、長破線は、それぞれ異なるプライマーを使用した場合の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書中に記載された非特許文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用され、その全体が明細書に組み込まれる。また、本明細書中の「~」は「以上、以下」を意味し、例えば明細書中で「X~Y」と記載されていれば「X以上、Y以下」を示す。本明細書中の「及び/または」は、いずれか一方または両方を意味する。本明細書中の「含む」は、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を包含する。
【0017】
また、本明細書では、核酸プライマーを単にプライマーという場合があり、核酸プローブ及び標識プローブを単にプローブという場合があり、これらを総称してオリゴヌクレオチド等ともいう。
【0018】
メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)は、ホモシステインをメチオニンに代謝する際にメチル基供与体として必要な5-メチルテトラヒドロ葉酸の産生に必須となる酵素である。MTHFRは、5-メチルテトラヒドロ葉酸の前駆物質である5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を還元する作用を有し、メチオニンの代謝過程における律速となることが知られている。
【0019】
MTHFR遺伝子の塩基番号677位は、野生型がシトシン(C)、変異型はチミン(T)であることが知られており、当該塩基の変異は、MTHFR C677T等と呼ばれる。従って、野生型のホモ接合体はCC型であり、変異型であるホモ接合体はTT型及びヘテロ接合体をCT型となる。MTHFRの遺伝子多型の同定は、妊婦の葉酸摂取量の重要な指針になるほか、心血管疾患や脳血管疾患を含む重篤疾患のリスクを事前に評価する為に重要である。特に本邦ではMTHFR C677T多型を有する人が約2/3を占めており、MTHFR C677T多型を有する人はCC型と比較した際に、CT型では約35%、TT型では約70%酵素活性が低下する。その結果、5-メチルテトラヒドロ葉酸低下によりホモシステインからメチオニンへの代謝が減弱し、ホモシステイン値が上昇する。TT型では高ホモシステイン値が原因と考えられる脳梗塞がCC型と比較して約3.4倍も多く、また、虚血性心疾患リスクも約16%上昇することが報告されている。そのため、MTHFRとMTHFR C677Tの鑑別は健康維持や疾病予防上重要であり、簡便、迅速な検査が求められている。本発明は、この課題解決を目的としたものであり、簡便、迅速にMTHFRの677位における遺伝子多型(CC型、CT型、およびTT型)を判別して検出できる実用上有用なオリゴヌクレオチドプローブ等を提供するものである。
【0020】
[1.MTHFRの677位における遺伝子多型を検出するオリゴヌクレオチドプローブ]
一つの実施形態において、本発明は、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)の677位における遺伝子多型を検出することができるオリゴヌクレオチドプローブを提供する。本発明のプローブは、少なくとも以下の特徴(A)及び(B)を有する:
(A)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5若しくは配列番号6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むオリゴヌクレオチドであって、MTHFRの677位に相当する位置の塩基が末端塩基から4塩基以上離れた位置に存在するオリゴヌクレオチドを含む。
(B)少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されている。
このように設計された本発明のオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより、MTHFRの677位における遺伝子多型(CC型、CT型、TT型)を高感度に判別することができる。
【0021】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、特徴(A)として、MTHFR遺伝子の677位を含む領域を標的配列として結合し得るように設計された特定塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを含むように構成される。具体的には、配列番号1~6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むように設計される。ここで、このオリゴヌクレオチドプローブの塩基配列は、MTHFRの677位に相当する位置の塩基が末端塩基から4塩基以上離れた位置に存在するように設計する。ここで、末端塩基から4塩基以上離れた位置とは、オリゴヌクレオチドの末端塩基(5’末端塩基及び3’末端塩基)の隣の塩基を1番目として4番目以降に相当する塩基をいう。例えば、図1に示されるように配列番号1~6に示される塩基配列は、末端塩基から4塩基以上離れた位置にMTHFRの677位に相当する位置の塩基(四角で囲んだ塩基)を有する。このように、5’末端及び3’末端の両方の末端塩基からやや離れた位置に677位に相当する位置に対応する塩基が存在するように設計することにより、例えば、融解曲線解析で遺伝子多型の有無を検出する場合に、標的核酸とのアニーリング及び融解反応が安定し、融解曲線分析において良好に検出を行うことが可能となり得る。好ましくは、MTHFRの677位に相当する位置の塩基が、末端塩基から4~10塩基離れた位置に存在するように、より好ましくは末端塩基から5~9塩基離れた位置に存在するように設計するのがよい。これにより、より一層安定して高感度にMTHFRの677位における遺伝子多型の有無を検出することが可能となり得る。
【0022】
特定の実施形態では、上記の特徴(A)のオリゴヌクレオチドは、配列番号3~6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むオリゴヌクレオチドであり;好ましくは、配列番号3~5のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むオリゴヌクレオチドであり得る。このような特定の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプローブにすることで、より良好にMTHFRの677位における遺伝子多型を検出することが可能となり得る。
【0023】
更に別の実施形態では、上記特徴(A)のオリゴヌクレオチドは、配列番号1~6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり;好ましくは、配列番号1~6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり;より好ましくは、配列番号3~6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり;更に好ましくは、配列番号3~5のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり得る。
【0024】
本発明のポリヌクレオチドプローブは、配列番号1~6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基以上の塩基配列において、一又は数個の塩基の相違を有するものであってもよい。本明細書において、一又は数個とは、具体的には、一又は二個であり得、より好ましくは一個であり得る。本発明のポリヌクレオチドプローブは、例えば、野生型のMTHFR遺伝子とは異なる塩基(具体的にはイノシン塩基)を含む場合であっても、MTHFRの677位における遺伝子多型を高感度に検出できたことが後述の実施例で確認できている。この結果から、本発明のポリヌクレオチドプローブには、配列番号1~6で示される塩基配列等において一又は数個程度の塩基の相違が存在してもよいことが分かる。
【0025】
特定の好ましい実施形態では、上記特徴(A)のオリゴヌクレオチドは、配列番号1~6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり;好ましくは、配列番号3~6のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり;更に好ましくは、配列番号3~5のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり得る。上記特徴(A)のオリゴヌクレオチドが、このように特定の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであることによって、より一層確実に本発明の効果が奏され得る。
【0026】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは更に、特徴(B)として、少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されていることを一つの特徴とする。
【0027】
オリゴヌクレオチドプローブを使用した核酸検査法は、従来から周知であり、既に当該技術分野において確立されている(例えば、特表2015-529090号公報、特許第5354216号公報)。このような核酸検査法に用いるオリゴヌクレオチドプローブとしては、TaqMan加水分解プローブ、モレキュラービーコン、FRETハイブリダイゼーションプローブ、QProbeなどが知られている。本発明では、(B)少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されているという特徴を備えている限り、当該分野で公知の任意の標識プローブを使用することができるが、より確実に良好な結果が得られ易いという観点から、QProbeを使用することが好ましい。
【0028】
QProbe(グアニン消光プローブともいう)とは、少なくとも一方の末端塩基がグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素で標識されているハイブリダイゼーションプローブである。QProbe単体で存在している時は蛍光色素が蛍光を発しているが、QProbeと相補的な塩基配列を有する標的核酸と結合している時は、蛍光色素が消光するという特徴を有する。
【0029】
蛍光消光色素とは、それ単独では蛍光を示すが、標的核酸とハイブリッド形成をすることで蛍光が減少あるいは消光する色素である。
例えば、Qprobeで用いられる蛍光消光色素としては特に限定されないが、フルオレセインまたはその誘導体(例えば、フルオレセインイソチオシアネート)、ローダミンまたはその誘導体(例えば、テトラメチルローダミン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、カルボキシローダミン、x-ローダミン、スルホローダミン101酸クロリド)、BODIPYまたはその誘導体(例えば、BODIPY-FL、BODIPY-FL/C3、BODIPY-FL/C6、BODIPY-5-FAM、BODIPY-TMR、BODIPY-TR、BODIPY-R6G、BODIPY-564、BODIPY-581、BODIPY-591、BODIPY-630、BODIPY-650、BODIPY-665)等が挙げられる。蛍光消光色素の詳細は、特許第5813263号公報等に記載があり、本発明も該技術を参照できる。
【0030】
なかでも、本発明では蛍光消光色素として、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G、TAMRA、ローダミン6G、テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つを用いることが好ましく、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)又はカルボキシローダミン6Gを用いることがより好ましい。
【0031】
特定の実施形態では、蛍光消光色素で標識されている少なくとも一つの末端塩基(即ち、両端が標識されている場合は、少なくとも一方の末端塩基)がシトシンであるオリゴヌクレオチドプローブがより好ましい。
このように標識末端塩基をシトシンとしたオリゴヌクレオチドプローブは、増幅産物にハイブリダイズした際に、増幅産物中のグアニン塩基と塩基対を形成して相互作用することで消光できるため、非常に簡便に反応液の蛍光強度の変化を測定することができる。
【0032】
オリゴヌクレオチドプローブは、その目的に応じて、上記特徴(B)で規定したグアニンで消光する蛍光消光色素に加えて、更に一つ以上の標識物質を付加してもよい。このような更なる標識物質には、蛍光物質、化学発光物質、放射性物質、ビオチン、アルカリホスファターゼ、ジゴキシゲニン、ペルオキシダーゼなどが挙げられるが、これらに限定されない。このような標識物質は、上記特徴(B)で規定したグアニンで消光する蛍光消光色素による効果を阻害しない限り特に限定されず、検査法に応じて当該分野で公知の任意の標識物質を使用することができる。また、オリゴヌクレオチドプローブの標識化のためにリンカーやスペーサーなどを付加してもよい。
【0033】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、一方の末端塩基のみが前記蛍光消光色素で標識されていてもよいし、両方の末端塩基が前記蛍光消光色素で標識されたものであってもよいが、好ましくは、一方の末端塩基のみ蛍光消光色素(グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素)で標識されたものであり得る。このように蛍光消光色素での標識を一方の末端塩基のみとすることで、両方の末端塩基を標識する場合と比べて低コストで容易に製造できる利点がある。また、一方の末端塩基の標識のみでも十分な感度でMTHFRの677位における遺伝子多型を検出できることが確認できている。
【0034】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、MTHFRの677位における任意の遺伝子多型(MTHFRのC677T変異等)を検出できる。例えば、本発明のポリヌクレオチドプローブは、MTHFRの677位における遺伝子多型がCC型、TT型又はCT型のいずれであるかを検出するために好適に使用され得る。本発明によれば、各遺伝子多型毎に設計した複数のプローブを用意する必要がなく、一つのオリゴヌクレオチドプローブを使用するだけで、例えば融解曲線解析でピークを示す検出温度(ピーク温度)の差により、MTHFRの677位におけるCC型、TT型、CT型の3つの型のいずれであるかを容易に判別できる。好ましい実施形態では、本発明のポリヌクレオチドプローブは、融解曲線解析に用いられた場合に、MTHFRの677位がC(シトシン)である場合のピーク温度とT(チミン)である場合のピーク温度の差が5℃以上離れ、好ましくは6℃以上離れ、より好ましくは7℃以上離れ、更に好ましくは8℃以上離れて検出されるプローブであり得る。このように野生型と変異型の検出温度が離れるように設計されたポリヌクレオチドプローブであることによって、より明瞭にMTHFRの677位における遺伝子多型を検出することができる。
【0035】
[2.MTHFRの677位における遺伝子多型を検出する方法]
前述のような本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、MTHFRの677位における遺伝子多型を検出する任意の方法において用いられる。本発明の方法は、MTHFRの677位における遺伝子多型がCC型、TT型又はCT型のいずれであるかを判別するのに特に適している。従って、本発明のオリゴヌクレオチドプローブを用いる本発明の方法は、例えば、妊婦の葉酸摂取量の指針を提供するため、心血管疾患や脳血管疾患等を含むホモシステインの代謝が関連する重篤疾患のリスクを評価するために好適に実施され得る。
【0036】
[3.MTHFRの677位における変異を判別して検出する方法]
本発明の実施態様の一つは、試料中に含まれるMTHFRの677位における変異(C677Tの遺伝子多型等)を検出する方法であって、前記のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブを少なくとも含む反応液を用いて、少なくとも以下の工程(1)~(6)を行うことを特徴とする方法である:
(1)MTHFRをコードする遺伝子配列を含む核酸又はその核酸断片であって、MTHFRの677位に相当する塩基を含む核酸又はその核酸断片を含む試料を提供する工程。
(2)前記試料において核酸増幅反応を行う工程。
(3)工程(2)で得られうる増幅産物に、該オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、ハイブリッドを形成する工程。
(4)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることで、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定する工程。
(5)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定する工程。
(6)前記Tm値に基づいて、前記試料中のMTHFRの677位における変異の有無を判定する工程。
上記の本発明の方法により、例えば、MTHFRの677位におけるCC型、CT型、又はTT型を判別して検出することができる。
【0037】
[試料]
本発明において使用できる試料は被検核酸(MTHFRをコードする遺伝子配列を含む核酸又は核酸断片であって、MTHFRの677位に相当する塩基を含む核酸又は核酸断片)を含む可能性のあるものであれば特に限定されない。例えば、生体試料や精製核酸等が挙げられる。また、試料は核酸抽出やいくつかの前処理を行ってもよい。試料の核酸抽出や前処理は、当該技術分野で一般的に行われている。前処理としては、ろ過、遠心分離、希釈処理、加熱処理、酸処理、アルカリ処理、有機溶媒処理、懸濁処理、破砕処理、磨砕処理等が挙げられるが、本発明ではこれらに限定されない。
【0038】
生体試料の例としては、特に制限されず、例えば、ヒト又は哺乳動物から採取される任意の生体試料であり得るが、好ましくは、血液、口腔粘膜擦過物が挙げられる。
【0039】
試料の採取方法、DNAやRNA等の核酸の調製方法等は、特に制限されず、試料の種類、目的に応じて公知の方法を用いることができる。
【0040】
[核酸増幅反応]
核酸増幅法は数コピーの標的核酸を可視化可能なレベル、すなわち数億コピー以上に増幅する技術であり、生命科学研究分野のみならず、臨床診断、食品衛生検査、環境検査等の分野においても広く用いられている。そのような核酸増幅法としては、PCR法、LAMP法、LCR法、TMA法、SDA法、RT-PCR法、RT-LAMP法、NASBA法、TRC法、TMA法等が挙げられる。これらの技術は既に当該技術分野において確立されており、目的に合わせて方法を選択することができる。本発明において核酸増幅反応はPCR法で行うことが好ましいが、これに限定されない。
【0041】
[PCR]
PCR反応は、主にDNAポリメラーゼによって触媒される反応であり、(1)熱処理によるDNA変性(2本鎖DNAから1本鎖DNAへの解離)、(2)鋳型1本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(3)DNAポリメラーゼを用いた前記プライマーの伸長、という3ステップを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことによって標的核酸を増幅する。DNAポリメラーゼとしては、Taq、Tth、Bst、KOD、Pfu、Pwo、Tbr、Tfi、Tfl、Tma、Tne、Vent、DEEPVENTやその変異体が挙げられる。より簡便、迅速にMTHFR C677Tの変異を検出することが可能にできるという観点から、本発明では、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼを用いることが好ましい。
【0042】
[ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ]
本発明で用いるDNAポリメラーゼは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが好ましいが、これに限定されない。前記ファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、特に制限されないが、好ましくは古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼである。
【0043】
[古細菌由来のDNAポリメラーゼ]
ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼとしては、パイロコッカス(Pyrococcus)属およびサーモコッカス(Thermococcus)属の細菌から単離されるDNAポリメラーゼ、及びそれらの変異体が挙げられる。前記変異体は、ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼ活性を失っていない限り、任意の変異体であり得る。例えば、ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼの変異体には、ポリメラーゼ活性の増強、エキソヌクレアーゼ活性の欠損、基質特異性の調整等を目的とした変異体が挙げられるが、これらに限定されない。なお、本明細書においてDNAポリメラーゼの変異体とは、例えば、野生型DNAポリメラーゼと高いアミノ酸配列同一性(例えば、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上又は99%以上のアミノ酸配列同一性)を示すDNAポリメラーゼ変異体又は当該野生型DNAポリメラーゼのアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたDNAポリメラーゼ変異体であって、DNAポリメラーゼ活性を失っていないものをいう。
【0044】
パイロコッカス属由来のDNAポリメラーゼとしては、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus sp.GB-D、Pyrococcus woesei、Pyrococcus abyssi、Pyrococcus horikoshiiから単離されたDNAポリメラーゼ、及びこれらに由来するDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体を含むが、これらに限定されない。
サーモコッカス属に由来するDNAポリメラーゼとしては、Thermococcus kodakaraensis、Thermococcus gorgonarius、Thermococcus litoralis、Thermococcus sp.JDF-3、Thermococcus sp.9degrees North-7(Thermococcus sp.9°N-7)、Thermococcus siculiから単離されたDNAポリメラーゼ、及びこれらに由来するDNAポリメラーゼ活性を失っていないその変異体を含むが、これらに限定されない。なかでも好ましくは、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼであり、野生型のDNAポリメラーゼだけでなく、その野生型DNAポリメラーゼの活性を失っていない変異体も好適に使用することができる。
これらのDNAポリメラーゼを用いたPCR酵素は市販されており、Pfu(Staragene社)、KOD(Toyobo社)、Pfx(Life Technologies社)、Vent(New England Biolabs社)、Deep Vent(New England Biolabs社)、Tgo(Roche社)、Pwo(Roche社)などが挙げられ、そのいずれもが本発明に用いられ得る。
【0045】
なかでも、伸長性や熱安定性の優れたThermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼ、具体的には、KOD DNAポリメラーゼ及びその変異体(例えば、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠失させたKOD DNAポリメラーゼ等)が好ましい。
【0046】
Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼは、ファミリーAに属するDNAポリメラーゼであるTaq DNAポリメラーゼに比べて、正確性、増幅効率、伸長性、クルードサンプル耐性に優れている。本発明では、Thermococcus kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼを使用することで、後述の実施例に示すように、簡便でありながら迅速かつ高感度でMTHFRのCC型、CT型およびTT型を判別して検出することが可能となる。
【0047】
[プライマー又はプライマーセット]
本発明においては、核酸増幅反応においてオリゴヌクレオチドプライマーを用いることが好ましい。なかでも核酸増幅反応をPCRで行う場合は、プライマーとして、一方のプライマーが他方のプライマーの核酸伸長生成物に相補的である一対のプライマーセット(プライマーペア等ともいう)を用いることが好ましい。プライマーは、核酸増幅反応において核酸増幅の起点として使用されるオリゴヌクレオチドであり、当該技術分野において一般的に使用されている。また、実施する核酸増幅反応によって複数種類のオリゴヌクレオチドプライマーが使用されてもよい。実験の目的によって異なるが、好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズする標的配列を含む50~500bp程度、好ましくは50~200bp程度を増幅できるようなフォワードプライマーとリバースプライマーとをセットで用いるのがよい。
【0048】
プライマーは、標的核酸の塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列からなるように設計されたオリゴヌクレオチドであってもよいし、一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むオリゴヌクレオチドであってもよい。一つの実施形態においては、オリゴヌクレオチドプライマーとして、3’末端がターゲット配列に対して相補的なプライマーであることが特異性が高まるので好ましい。プライマーの3’末端がターゲット配列に対して相補的であれば5’末端が相補的でなくとも有効なプライマーとなり得る。このことから、本発明で使用するオリゴヌクレオチドプライマーは、3’末端がMTHFR遺伝子をコードするゲノム配列に対して相補的な配列を有するように設計することが好ましい。さらに、標的遺伝子周辺が塩基配列多型である場合、縮重プライマーを使用してもよい。
【0049】
好ましい実施形態において、本発明の前記検出方法では、核酸増幅反応のために、配列番号7~10のいずれかに示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列を含むプライマー、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列と、配列番号11~14のいずれかに示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むプライマーとを含むプライマーセットを含むことが好ましい。なかでも、配列番号9~10のいずれかの塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列を含むプライマーと、配列番号13~14のいずれかの塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列、或いはそれらの塩基配列において一又は数個の塩基の相違を有する塩基配列とを含むプライマーセットを含むことで、より高感度にMTHFRの677位における遺伝子多型を検出できるようになる。ここで、プライマーセットは、一方のプライマーが他方のプライマーの核酸伸長生成物に相補的であるように設計される。
【0050】
本発明のMTHFR遺伝子多型の検出方法においては、上記プライマーセットを含む反応液で行う核酸増幅工程により得られた増幅産物に、前記の本発明のオリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイズさせ、該反応液の蛍光強度を測定し、MTHFRのCC型、CT型およびTT型を検出する。
【0051】
[核酸増幅産物とプローブとの複合体の形成]
前記のMTHFR遺伝子多型の検出方法における工程(3)の増幅産物とオリゴヌクレオチドプローブの複合体の形成は、例えば、前記反応液の温度変化により行うことができる。
反応液中の2本鎖の増幅産物を解離させる温度は特に限定されないが、例えば85℃から98℃である。加熱時間も特に限定されないが、通常1秒から10分間であり、好ましくは1秒から5分間である。
解離した増幅産物とオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイズは、例えば、解離工程後の反応液の温度を降下することで行うことが出来る。この複合体形成工程は、増幅産物とオリゴヌクレオチドプローブとが十分にハイブリダイズする温度条件下で実施されることが好ましい。このような温度条件としては、例えば、オリゴヌクレオチドプローブのTm値より少なくとも5℃低い温度、又は少なくとも10℃低い温度等を挙げることができ、例えば35℃~50℃であり得るが、これに限定されない。
【0052】
[核酸増幅産物とプローブとの複合体の解離による蛍光シグナルの変動の測定]
前記のMTHFR遺伝子多型の検出方法における工程(4)の蛍光シグナルの変動の測定は、例えば、工程(3)後の増幅産物とオリゴヌクレオチドプローブの複合体を含む反応液を加熱し、温度を上昇させることで、増幅産物からオリゴヌクレオチドプローブが解離することに伴う蛍光シグナルの増減を測定することである。温度の上昇速度は特に制限されないが、例えば、0.05℃~20℃/秒であり、好ましくは0.08℃/秒~5℃/秒である。
【0053】
[蛍光シグナルの変動に基づいたハイブリッドの解離温度であるTm値を測定する工程]
前記のMTHFR遺伝子多型の検出方法における工程(5)の蛍光シグナルの変動に基づくハイブリッドの解離温度であるTm値の測定は、工程(4)で得られた蛍光シグナルについて温度で一次微分することにより、オリゴヌクレオチドプローブ固有の融解温度(Tm値)を求めることができる。また、蛍光強度は目的に合わせて蛍光消光率等に変換してもよい。
Tm値を用いた標的核酸の検出、分析等を融解曲線解析という。一般的に、Tm値は、オリゴヌクレオチドがその相補鎖と二本鎖を形成している割合と二本鎖を形成せず一本鎖である割合が等しいときの温度をいう。
【0054】
[Tm値に基づいた試料中のMTHFR 677位における変異の有無の判定]
設計したオリゴヌクレオチドプローブに対して標的核酸の塩基配列が異なる場合(例えば、標的核酸の塩基配列に変異がある場合)、プローブがハイブリダイズした際に塩基がミスマッチしているため、一般的にTm値は低くなる。したがって、Tm値の大きさを比較することで一塩基多型の解析を行うことができる。本発明は、この原理を利用してMTHFRの677位における遺伝子多型(例えば、CC型、CT型、TT型)を判別して検出する。例えば、野生型(CC型)の標的核酸に完全に相補的となるように設計されたプローブが増幅産物にハイブリダイズした際に、MTHFR C677T置換を有する核酸又は核酸断片であった場合、プローブと増幅産物間で塩基がミスマッチしているため、CC型と比較するとCT型およびTT型は融解曲線解析時のTm値が低くなる。このように融解曲線解析時のTm値の違いからCC型、CT型あるいはTT型を判別することができる。
【0055】
[MTHFRの677位における遺伝子多型を検出するための試薬]
本発明の別の実施態様として、試料中に含まれるMTHFRの677位における遺伝子多型(例えば、C677T等)を検出するための試薬が挙げられる。試薬には、前述の特徴(A)及び(B)を備えた本発明のオリゴヌクレオチドプローブに加えて、核酸増幅に必要な成分が少なくとも含まれる。必要な成分は、実施する核酸増幅反応によって異なっており、当業者は技術常識に従い、それぞれ公知の方法に応じて必要な成分を適宜選択して用いることができる。例えば、PCR反応を用いて試料中に含まれるMTHFRの677位における遺伝子多型を検出する場合、本発明のオリゴヌクレオチドプローブ、DNAポリメラーゼ、前記のようなオリゴヌクレオチドプライマー、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、マグネシウム塩等の無機塩類を少なくとも含むことが好ましい。目的の実験に応じて各成分の濃度は適宜調整できるが、例えば、オリゴヌクレオチドプローブは0.1~1μMが好ましく、0.2~0.5μMがより好ましい。DNAポリメラーゼは0.01~1U/μLが好ましく、0.1~0.5U/μLがより好ましい。オリゴヌクレオチドプライマーはそれぞれ異なるが、0.1~10μMが好ましい。デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)は0.02~1mMが好ましく、0.1~0.5mMがより好ましい。マグネシウム塩は0.1~6mMが好ましく、1~5mMがより好ましい。上記の各成分の濃度は、PCR反応液における終濃度であり得、当業者はこのような濃度となるように試薬中における各成分の濃度を適宜調整し得る。
【0056】
[MTHFRの677位における遺伝子多型を検出するためのキット]
さらに、本発明の別の実施態様として、試料中に含まれるMTHFRの遺伝子多型を検出するための試薬を含むキットが挙げられる。キットの構成は、本発明のオリゴヌクレオチドプローブを含む前記MTHFRの遺伝子多型を検出するための試薬を含み、MTHFRの遺伝子多型を検出できるよう構成されていれば特に限定されない。本発明のキットに使用され得るオリゴヌクレオチドプローブやプライマー、その他の成分の種類や濃度等は、上記で詳述したものと同様であり得る。
【実施例0057】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0058】
実施例1:本発明の各オリゴヌクレオチドプローブを用いたMTHFR遺伝子の検出
(1-1)試料の調製
MTHFR遺伝子について677位がCT型を有するBioChain Institute Inc. Genomic DNA-Human Tumor Cell Line:HeLaを1.0ng/テストとなるように調製した溶液を試料としてPCR反応を行った。
(1-2)反応液
ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社)を使用して以下に示される成分を含む反応液を調製した。反応液の調製等はジーンキューブ(登録商標)テストベーシックの取扱説明書に従った。
0.25μM 配列番号10で示されるプライマー
3.00μM 配列番号14で示されるプライマー
0.35μM 配列番号4、配列番号5、配列番号6で示されるオリゴヌクレオチドプローブ(3’末端塩基をBODIPY-FLで標識)
(1-3)反応
GENECUBE(登録商標)を用いて、前記反応液を以下の温度サイクルでPCR反応させた。その後、下記の融解曲線解析の条件にて蛍光強度を測定した。
PCR条件
94℃ 30秒
----------
97℃ 1秒
60℃ 3秒
63℃ 5秒
(サイクル数50回)
----------
94℃ 30秒
39℃ 30秒
融解曲線解析条件
40-75℃ 0.09℃/秒
(1-4)結果
図2に、融解曲線解析の結果を示す。点線、実線、破線はそれぞれ配列番号4、配列番号5、配列番号6のオリゴヌクレオチドプローブを用いて測定したときの融解曲線解析結果である。図2より、いずれのオリゴヌクレオチドプローブを用いた際でも、ヘテロ型を示す二峰性の明確なピークが確認でき、MTHFR CT型が高感度に検出可能であることが示された。
また、オリゴヌクレオチドプローブとして配列番号1、配列番号2、配列番号3で示される配列を有するものを用いた場合においても、それぞれ同様の結果が得られることが確認された。
【0059】
実施例2:本発明の検出方法によるMTHFR遺伝子多型の検出
(2-1)試料の調製
MTHFR遺伝子について677位がCC型、CT型、TT型を有する試料をそれぞれ1.0ng/テストとなるように調製した溶液を試料としてPCR反応を行った。
(2-2)反応液
ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社)を使用して以下に示される成分を含む反応液を調製した。反応液の調製等はジーンキューブ(登録商標)テストベーシックの取扱説明書に従った。
3.00μM 配列番号10で示されるプライマー
0.10μM 配列番号14で示されるプライマー
0.35μM 配列番号3で示されるオリゴヌクレオチドプローブ(3’末端塩基をBODIPY-FLで標識)
(2-3)反応
GENECUBE(登録商標)を用いて、前記反応液を以下の温度サイクルでPCR反応させた。その後、下記の融解曲線解析の条件にて蛍光強度を測定した。
PCR条件
94℃ 30秒
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97℃ 1秒
60℃ 3秒
63℃ 5秒
(サイクル数50回)
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94℃ 30秒
39℃ 30秒
融解曲線解析条件
40-75℃ 0.09℃/秒
(2-4)結果
図3に、融解曲線解析の結果を示す。実線、点線、破線がそれぞれCC型、TT型、CT型の試料を測定したときの融解曲線解析結果である。図3より、本プライマープローブセットを用いた際、3種類のMTHFRの各遺伝子多型を明確に判別して検出可能であることが示された。
【0060】
実施例3:各プライマーを用いたMTHFR遺伝子の検出
(3-1)試料の調製
MTHFR遺伝子について677位がCT型を有するBioChain Institute Inc. Genomic DNA-Human Tumor Cell Line:HeLaを1.0ng/テストとなるように調製した溶液を試料としてPCR反応を行った。
(3-2)反応液
ジーンキューブ(登録商標)テストベーシック(東洋紡社)を使用して以下に示される成分を含む反応液を調製した。反応液の調製等はジーンキューブ(登録商標)テストベーシックの取扱説明書に従った。
0.50μM 配列番号7で示されるプライマー
2.50μM 配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14で示されるプライマー
0.50μM 配列番号4で示されるオリゴヌクレオチドプローブ(3’末端塩基をBODIPY-FLで標識)
(3-3)反応
GENECUBE(登録商標)を用いて、前記反応液を以下の温度サイクルでPCR反応させた。その後、下記の融解曲線解析の条件にて蛍光強度を測定した。
PCR条件
94℃ 30秒
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97℃ 1秒
60℃ 3秒
63℃ 5秒
(サイクル数50回)
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94℃ 30秒
39℃ 30秒
融解曲線解析条件
40-75℃ 0.09℃/秒
(3-4)結果
図4に、融解曲線解析の結果を示す。実線、点線、破線、長破線がそれぞれ配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14のプライマーを用いて測定したときの融解曲線解析結果である。図4より、いずれのプライマーを用いた際でも、MTHFR CT型が明確に検出可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に記載のオリゴヌクレオチドプローブを使用することで、簡便、迅速に試料中に含まれるMTHFRの677番目の塩基に関する遺伝子多型を高感度に検出可能になった。本発明は研究用途のみならず、体内のホモシステイン代謝能に関するマーカーとしてMTHFR多型を判定する必要がある場合に、明確に判定することを可能とし、臨床診断に大きく貢献することができる。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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