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特開2024-143325ポリマー付き粒子、標的物質検出試薬、標的物質検出キット、および標的物質の検出方法
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  • 特開-ポリマー付き粒子、標的物質検出試薬、標的物質検出キット、および標的物質の検出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143325
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ポリマー付き粒子、標的物質検出試薬、標的物質検出キット、および標的物質の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/547 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01N33/547
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055941
(22)【出願日】2023-03-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】中木 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】福谷 実希
(57)【要約】
【課題】分散性に優れたポリマー付き粒子を提供する。
【解決手段】本発明のポリマー付き粒子は、コア粒子と、コア粒子の表面の少なくとも一部に形成された表面改質ポリマーと、を含む、ポリマー付き粒子であって、表面改質ポリマーは、標的物質に特異的結合性を有するリガンドと結合可能な反応性官能基(A1)を含む構造単位A1と、酸性官能基(A2)と有機塩基とにより形成された塩を含む構造単位A2と、を含むものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア粒子と、前記コア粒子の表面の少なくとも一部に形成された表面改質ポリマーと、を含む、ポリマー付き粒子であって、
前記表面改質ポリマーは、
標的物質に特異的結合性を有するリガンドと結合可能な反応性官能基(A1)を含む構造単位A1と、
酸性官能基(A2)と有機塩基とにより形成された塩を含む構造単位A2と、を含む、
ポリマー付き粒子。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマー付き粒子であって、
前記酸性官能基(A2)は、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、およびヒドロキシル基からなる群から選ばれる一または二以上を含む、ポリマー付き粒子。
【請求項3】
請求項1に記載のポリマー付き粒子であって、
前記反応性官能基(A1)は、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、アクリル基、メタクリル基、および酸無水物基からなる群から選ばれる一または二以上を含む、ポリマー付き粒子。
【請求項4】
請求項1に記載のポリマー付き粒子であって、
前記有機塩基が、窒素含有塩基および/またはリン含有塩基を含む、ポリマー付き粒子。
【請求項5】
請求項1に記載のポリマー付き粒子であって、
前記表面改質ポリマーの重量平均分子量が、1,000以上10,000,000以下である、ポリマー付き粒子。
【請求項6】
請求項1に記載のポリマー付き粒子であって、
前記コア粒子が、有機粒子または無機粒子である、ポリマー付き粒子。
【請求項7】
請求項1に記載のポリマー付き粒子であって、
複数の前記反応性官能基(A1)の少なくとも一部と結合した前記リガンドを含む、ポリマー付き粒子。
【請求項8】
請求項1に記載のポリマー付き粒子であって、
前記リガンドが、抗体、抗原、タンパク質、および核酸のいずれかである、ポリマー付き粒子。
【請求項9】
請求項1に記載のポリマー付き粒子であって、
凝集法による前記標的物質の検出に用いられる、ポリマー付き粒子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー付き粒子および分散媒を含む、標的物質検出試薬。
【請求項11】
請求項10に記載の標的物質検出試薬を含む試薬容器を備える、標的物質検出キット。
【請求項12】
請求項10に記載の標的物質検出試薬に、標的物質を混合する工程を含む、標的物質の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー付き粒子、標的物質検出試薬、標的物質検出キット、および標的物質の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中の標的物質の測定方法として、ラテックス免疫凝集法が知られている。
ラテックス免疫凝集法は、例えば、標的物質に対する抗体を担持させたラテックス粒子を用い、標的物質である抗原と抗体担持ラテックス粒子とが結合することによって生じるラテックス粒子の凝集(濁り)の程度を光学的手段等により検出する測定方法である。
この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、試料中の標的物質を特異的に認識する抗体を担持するラテックス粒子を含む、ラテックス免疫凝集法を用いて試料中標的物質を測定するための試薬が記載されている(特許文献1の請求項7など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-162593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載のラテックス粒子において、分散性の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はさらに検討したところ、ラテックス粒子などのコア粒子の表面を表面改質ポリマーで表面処理してポリマー付き粒子とすることにより、分散媒中におけるポリマー付き粒子の分散性を制御できることを見出した。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、表面改質ポリマー中に、リガンド結合性を有する反応性官能基(A1)に加えて有機塩基と塩形成する酸性官能基(A2)を導入することにより、ポリマー付き粒子にリガンド結合性を付与しつつも、リガンドと標的物質とが結合する前の分散媒中におけるポリマー付き粒子の分散性を高められることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の一態様によれば、以下のポリマー付き粒子、標的物質検出試薬、標的物質検出キット、および標的物質の検出方法が提供される。
1. コア粒子と、前記コア粒子の表面の少なくとも一部に形成された表面改質ポリマーと、を含む、ポリマー付き粒子であって、
前記表面改質ポリマーは、
標的物質に特異的結合性を有するリガンドと結合可能な反応性官能基(A1)を含む構造単位A1と、
酸性官能基(A2)と有機塩基とにより形成された塩を含む構造単位A2と、を含む、
ポリマー付き粒子。
2. 1.に記載のポリマー付き粒子であって、
前記酸性官能基(A2)は、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、およびヒドロキシル基からなる群から選ばれる一または二以上を含む、ポリマー付き粒子。
3. 1.又は2.に記載のポリマー付き粒子であって、
前記反応性官能基(A1)は、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、アクリル基、メタクリル基、および酸無水物基からなる群から選ばれる一または二以上を含む、ポリマー付き粒子。
4. 1.~3.のいずれか一つに記載のポリマー付き粒子であって、
前記有機塩基が、窒素含有塩基および/またはリン含有塩基を含む、ポリマー付き粒子。
5. 1.~4.のいずれか一つに記載のポリマー付き粒子であって、
前記表面改質ポリマーの重量平均分子量が、1,000以上10,000,000以下である、ポリマー付き粒子。
6. 1.~5.のいずれか一つに記載のポリマー付き粒子であって、
前記コア粒子が、有機粒子または無機粒子である、ポリマー付き粒子。
7. 1.~6.のいずれか一つに記載のポリマー付き粒子であって、
複数の前記反応性官能基(A1)の少なくとも一部と結合した前記リガンドを含む、ポリマー付き粒子。
8. 1.~7.のいずれか一つに記載のポリマー付き粒子であって、
前記リガンドが、抗体、抗原、タンパク質、および核酸のいずれかである、ポリマー付き粒子。
9. 1.~8.のいずれか一つに記載のポリマー付き粒子であって、
凝集法による前記標的物質の検出に用いられる、ポリマー付き粒子。
10. 1.~9.のいずれか一つに記載のポリマー付き粒子および分散媒を含む、標的物質検出試薬。
11. 10.に記載の標的物質検出試薬を含む試薬容器を備える、標的物質検出キット。
12. 10.に記載の標的物質検出試薬に、標的物質を混合する工程を含む、標的物質の検出方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分散性に優れたポリマー付き粒子、およびそれを用いた標的物質検出試薬、標的物質検出キット、および標的物質の検出方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るポリマー付き粒子の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0010】
本実施形態のポリマー付き粒子の概要を説明する。
【0011】
本実施形態のポリマー付き粒子は、コア粒子と、コア粒子の表面の少なくとも一部に形成された表面改質ポリマーと、を含む。ポリマー付き粒子の表面に形成された表面改質ポリマーは、標的物質に特異的結合性を有するリガンドと結合可能な反応性官能基(A1)を含む構造単位A1と、酸性官能基(A2)と有機塩基とにより形成された塩を含む構造単位A2と、を含む。
【0012】
本発明者の知見によれば、ラテックス粒子(有機粒子)や無機粒子などのコア粒子の表面に表面改質ポリマーを形成したポリマー付き粒子において、リガンド結合性を有する反応性官能基(A1)の導入により、ポリマー付き粒子にリガンドを介して標的物質の特異的結合性を付与することができること、および、有機塩基と塩形成する酸性官能基(A2)を導入することにより、リガンドと標的物質とが結合する前の分散媒中におけるポリマー付き粒子の分散性を向上できることが見出された。
【0013】
詳細なメカニズムは定かではないが、上記の表面改質ポリマーがコア粒子表面に導入されたポリマー付き粒子は、有機塩基由来のカチオンを有する塩により、標的物質を含まない分散媒中において自己凝集が抑制されるため、上記のように分散性が向上すると考えられる。
【0014】
以下、本実施形態のポリマー付き粒子の構成を詳述する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るポリマー付き粒子10の構成の一例を模式的に示す断面図である。
ポリマー付き粒子10の一例は、少なくとも、コア粒子1と、コア粒子1の表面の少なくとも一部に形成された表面改質ポリマー2と、を有する。
【0016】
本実施形態のポリマー付き粒子10は、凝集法による標的物質の検出に用いる凝集法用粒子として使用することが可能である。
凝集法に用いるポリマー付き粒子10は、表面に化学的に固定されたリガンド3を有する。
【0017】
凝集法とは、分散媒中で、標的物質(例えば、抗原)を含む試料と、標的物質を特異的に認識(結合)するリガンド3(例えば、抗体)を担持するポリマー付き粒子10とを接触させ、標的物質にリガンド3を結合させ、標的物質とリガンド3とポリマー付き粒子10と複合体を形成させ、ポリマー付き粒子10を選択的に凝集させる方法である。
凝集法の一つである免疫凝集法(免疫比濁法ともいう)は、抗原抗体反応を利用して、ポリマー付き粒子10が表面に備える抗体に抗原を反応させ、ポリマー付き粒子10を凝集させる。
凝集法を用いた標的物質の検出方法では、ポリマー付き粒子10の凝集度合について、吸光度、散乱光強度、透過光強度等の光学的測定法により、有無の特性や定量できる。
【0018】
本実施形態によれば、ポリマー付き粒子10の分散媒中における分散性を高めることができる。これにより、標的物質を反応させる前に、分散媒中におけるポリマー付き粒子10が自身同士で凝集してしまうこと、すなわち、非特異的反応を抑制できる。
【0019】
また、本実施形態によれば、ポリマー付き粒子10の分散性を向上できるため、標的物質を反応させる前後での、ポリマー付き粒子10の凝集度合の変化量を大きくできる。つまり、標的物質の有無を比較したときに、ポリマー付き粒子10を含む分散媒における吸光度などの光学的測定値の差分が大きくなるため、ポリマー付き粒子10の感度、すなわち、標的物質の検出感度を向上させることが可能になる。
【0020】
試料は、標的物質を含有する可能性があるものであれば特に制限はなく、全血、血漿、血清、尿、髄液、唾液、羊水、尿、汗及び膵液からなる群から選択されるいずれか1以上の生体試料等が挙げられる。試料は、好ましくは全血、血漿、血清又は尿である。
試料は、標的物質が含まれる水性溶媒であってもよく、例えば、リン酸緩衝化生理食塩水等で希釈された標的物質が挙げられる。
【0021】
水性溶媒としては、凝集法を可能とする水性溶媒であれば特に制限はなく、例えば、脱イオン水、蒸留水、緩衝液等が挙げられ、緩衝液が好ましい。緩衝液に含まれる緩衝剤としては、例えば、リン酸系、酢酸系、トリス系、ほう酸系、炭酸系、グリシン系、グット系の緩衝剤等が挙げられる、
グッド系緩衝剤として、例えば、HEPES、PIPES、MOPS等が好適に用いられる。
緩衝剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、緩衝成分を含有する緩衝液のpHを調節する酸類としては通常の塩酸や、硫酸、硝酸の他、酢酸等の有機酸等を使用することができ、アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウムなどを使用することができる。
【0022】
標的物質としては、凝集法を可能とする標的物質であれば特に制限はなく、例えば、CRP(C-反応性蛋白質);前立腺特異抗原(PSA);フェリチン;α2-マクログロブリン;β2-マイクログロブリン;ミオグロビン;フィブリン;フィブリノーゲン分解産物;Dダイマー;トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT);可溶性フィブリン(SF);可溶性インターロイキン-2レセプター(sIL-2R);心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)等のナトリウム利尿ペプチド;N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP);抗ストレプトリジンO;リウマチ因子;トランスフェリン;ハプトグロビン;α1-アンチトリプシン;α1-アシドグリコプロテイン;ヘモペキシン;アンチトロンビン-III;α-フェトプロテイン;CEA(カルシノエンブリオニック抗原);HBs-Ag(B型肝炎外被抗原);Anti-HBs(抗B型肝炎外被抗体);HBe-Ag(B型肝炎e抗原);Anti-HBe(抗B型肝炎e抗体);Anti-HBc(抗B型肝炎コア抗体);IgG;IgA;IgM等が挙げられる。
なお、標的物質は、抗体との結合が可能な形態であれば特に制限はなく、例えば、物質単体による遊離形態であってもよく、他の物質(例えばタンパク質等)との複合形態であってもよい。
【0023】
リガンド3とは、所定の標的物質が有する受容体に特異的に結合する化合物のことである。
リガンドが標的物質と結合する部位は決まっており、選択的または特異的に高い親和性を有する。例えば、抗原と抗体、酵素タンパク質とその基質、ホルモンや神経伝達物質などのシグナル物質とその受容体、核酸などが例示されるが、リガンドはこれらに限定されない。
リガンドとしては、例えば、全長抗体、抗原結合フラグメント(例えば、Fab、F(ab')、F(ab')、Fv、scFvなどの抗体フラグメント)等の抗体;抗原;天然由来核酸、人工核酸等の核酸;アプタマー、ペプチドアプタマー、オリゴペプチド、酵素、補酵素等のタンパク質;等が挙げられる。なお、標的物質を特異的に認識する抗体には、市販の抗体を用いることができる。
【0024】
コア粒子1は、ポリマー付き粒子10の核となる粒子であり、有機粒子および無機粒子のいずれか一方で構成されてもよい。本実施形態によれば、有機粒子・無機粒子に由来するコア粒子特性(例えば、比重や粒子分布等の粒子特性等)を生かした上で、ポリマー付き粒子10の分散性を高めることができる。
【0025】
有機粒子は、有機高分子で構成された粒子を用いることができる。
有機高分子として、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、(メタ)アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、シリコンラバー等の合成樹脂、ニトロセルロース、セルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、フェノール樹脂、ポリ乳酸、ポリエチレン、メラミンフェノール等、これらの1種を主成分とする共重合体(例えば、スチレンを主成分とする共重合体)、または、これらの2種以上を含む共重合体等が挙げられる。有機高分子は、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、有機粒子を構成する有機高分子は、表面改質ポリマー2と異なるポリマーで構成されていればとくに限定されない。
【0026】
有機粒子として、公知のラテックス粒子を使用することができ、例えば、ポリスチレンラテックスなどのスチレン系ラテックス粒子、アクリル酸系ラテックス粒子、種々の変性ラテックス粒子(例えば、上記ポリスチレン中にカルボキシル基を導入したカルボン酸変性ラテックス粒子)、着色ラテックス粒子、蛍光ラテックス粒子、などが挙げられる。
上記ラテックス粒子は、既知の方法で製造することができるが、市販されているものでもよい。また、上記ラテックス粒子は、2種以上を併用してもよい。
【0027】
有機粒子(樹脂粒子)の製造方法は、例えば、原料モノマー(スチレンやメタクリル酸等)を、重合開始剤(ラジカル合開始剤など)により重合させ、溶媒(水等)中で粒状有機高分子を形成する方法などが挙げられる。粒状有機高分子を形成させる方法は、ラジカル重合法として、乳化重合、ソープフリー乳化重合、懸濁重合を用いることができるが、ラジカル重合に限定されない。
【0028】
無機粒子は、無機物で構成された粒子を用いることができる。
無機物として、たとえば、金属、セラミック、ガラス等の無機材料が挙げられる。無機物の具体例は、例えば、シリカ等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、無機物として、磁性を有する無機材料を使用してもよい。
このように無機粒子として、非磁性粒子または磁性粒子を用いてもよい。
【0029】
コア粒子1の形状は、特に制限されるものではないが、例えば、球状、楕円状、凹凸形状等を挙げることができる。
【0030】
コア粒子1の平均粒子径(D50)は、例えば、0.01μm~1.0μm、0.02μm~0.8μm、0.03μm~0.6μmであってもよい。
コア粒子1の粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布計にて測定することができる。平均粒子径(D50)は、体積基準の粒度分布における小粒子側からの積算値が50%となる粒径とする。
【0031】
表面改質ポリマー2は、コア粒子1の表面の少なくとも一部に形成されていればよく、コア粒子1の表面の一部または全部を被覆するポリマー被覆層を形成してもよい。
【0032】
表面改質ポリマー2がコア粒子1の表面に形成された状態とは、コア粒子1の表面に表面改質ポリマー2が物理的結合した状態、および/またはコア粒子1の表面に存在するポリマー反応性基と表面改質ポリマー2中に含まれる所定の反応性基とが化学結合した状態である。
【0033】
表面改質ポリマー2をコア粒子1の表面に形成する方法は、例えば、化学反応により、コア粒子1の表面に表面改質ポリマー2を導入するポリマー導入工程が用いられる。化学反応には、抗体の固定化方法で知られているカルボキシ基を利用した固定化方法やアミノ基を利用した固定化方法が利用できる。
これらの化学反応には、必要なら、カルボジイミド系架橋剤およびアミン反応性架橋剤等の、縮合剤を使用してもよい。
EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、別称:EDACまたはWSC)等のカルボジイミド系架橋剤を用いると、カルボキシ基とアミノ基とを反応させることができる。
また、アミン反応性架橋剤を用いると、第一級アミノ基または第二級アミノ基と合成化学基とを反応させることができる。この合成化学基として、例えば、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、NHSエステル、スルホニルクロリド、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カーボネート、アリールハライド、イミドエステル、カルボジイミド、無水物、フルオロエステル等が挙げられる。
【0034】
コア粒子1が有機粒子(樹脂粒子)の場合、有機粒子の原料モノマーに含まれるポリマー反応性基(カルボキシ基やアミノ基など)と表面改質ポリマー2中に含まれる所定の反応性基と反応させる方法が用いられる。例えば、有機粒子の製造工程において、原料モノマー重合時に有機高分子中にポリマー反応性基を含ませることが可能になる。なお、コア粒子1として、市販されている、カルボキシ基を含むポリスチレン粒子を用いてもよい。
具体的な一例として、カルボキシ基を含むコア粒子1にカルボキシ基を含む表面改質ポリマー2を固定する場合、コア粒子1中のカルボキシ基の一部にアミノ処理により第一級アミノ基(-NH)を導入してもよい(アミノ処理)。そして、アミノ処理後のコア粒子1中の第一級アミノ基(ポリマー反応性基)と、表面改質ポリマー2中の所定の反応性基とを、必要なら上記の縮合剤を加えて、化学反応させる方法が挙げられる。
表面改質ポリマー2がアクリル基/メタクリル基を含む場合、上記の縮合剤を介して、第一級アミノ基(ポリマー反応性基)と、アクリル基/メタクリル基に含まれるカルボキシ基(所定の反応性基)とを、反応させることが可能である。
また、別の形態では、表面改質ポリマー2が無水物基を含む場合、上記の縮合剤を用いずに、第一級アミノ基(ポリマー反応性基)と、無水マレイン酸基等の無水物基(所定の反応性基)とを、反応させることが可能である。
一方、コア粒子1が無機粒子の場合、必要に応じてカップリングなどを用いて無機粒子の表面にポリマー反応性基を導入した後、かかるポリマー反応性基と表面改質ポリマー2中に含まれる所定の反応性基と反応させる方法が用いられる。
【0035】
なお、表面改質ポリマー2の導入工程の後に残存したカルボキシ基等の反応性官能基(A1)は、感作時において、リガンド3が有するアミノ基等の官能基と化学反応により結合できる。また、感作時において、表面改質ポリマー2中に存在する反応性官能基(A1)と同様の官能基においても、リガンド3が有するアミノ基等の官能基と化学反応することが可能である。
【0036】
表面改質ポリマー2は、(メタ)アクリル系ポリマー、無水マレイン酸系ポリマー、メチレンマロネート系ポリマー、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等で構成されてもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態によれば、コア粒子1とは別に表面改質ポリマー2を用いることにより、表面改質ポリマー2において多種多様な分子設計が可能となり、分子設計の自由度が高くなる。
【0037】
(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、メタクリル系ポリマー、アクリル系ポリマー等が挙げられる。
無水マレイン酸系ポリマーは、例えば、無水マレイン酸-ノルボルネン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合、無水マレイン単重合、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合、オレフィン-無水マレイン酸共重合等が挙げられる。
【0038】
表面改質ポリマー2は、ホモポリマー、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、周期共重合体などのいずれであってもよい。
【0039】
表面改質ポリマー2の重量平均分子量が、例えば、1,000以上10,000,000以下、好ましくは2,000以上5,000,000以下、より好ましくは3,000以上1,000,000以下である。
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めた、ポリスチレン換算値を用いることができる。
【0040】
表面改質ポリマー2は、リガンド3と結合可能な反応性官能基(A1)を含む構造単位A1を含む。
【0041】
凝集法に用いるポリマー付き粒子10は、複数の反応性官能基(A1)の少なくとも一部と結合したリガンド3を含んでもよい。リガンド3を備えるポリマー付き粒子10を感作粒子という。
反応性官能基(A1)とリガンド3とを化学固定する化学反応の方法は、従来公知の方法を適用することができる。化学反応方法として、上述のカルボジイミド媒介性反応やNHSエステル活性化反応等を用いることができるが、これに限定されない。必要なら縮合剤を使用してもよい。例えば、ポリマー付き粒子10にリガンド3を結合(担持)させるには、リガンド3(抗体)とポリマー付き粒子10とを緩衝液中で懸濁させ、20~37℃程度で所定時間反応させる感作処理の後、洗浄処理、およびブロッキング処理等を実施してもよい。なお、必要なら、遠心分離処理、超音波処理、加熱(エイジング)処理等の他の操作処理を適当なタイミングで施してもよい。感作処理、洗浄処理、ブロッキング処理等の感作粒子の技術分野にて通常使用される処理を一または二以上含むことにより、感作粒子が得られる。
【0042】
反応性官能基(A1)は、例えば、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基等の求核性基、エポキシ基、マレイミド基、アクリル基、メタクリル基、および酸無水物基等の求電子性基からなる群から選ばれる一または二以上を含むことができる。酸無水物基として、例えば、マレイン酸無水物基またはコハク酸無水物基等が挙げられる。この中でも、反応性官能基(A1)は、カルボキシ基を含んでもよい。
【0043】
また、表面改質ポリマー2は、酸性官能基(A2)と有機塩基とにより形成された塩を含む構造単位A2を含む。
酸性官能基(A2)は、表面改質ポリマー2の主鎖に結合する側鎖の一部を構成する。酸性官能基(A2)は、表面改質ポリマー2の主鎖に直接結合していてもよく、例えば、炭素数が5個以上のスペーサーを介さずに結合してもよい。主鎖に上記スペーサーを介さずに直接結合している場合、周囲の側鎖の立体障害により、塩のイオン結合強度を適切に調整可能となる。
【0044】
構造単位A2中の塩において、酸性官能基(A2)はH(プロトン)が脱離してアニオン(共役塩基)の状態であり、有機塩基はH(プロトン)を受容してカチオン(共役酸)の状態である。構造単位A2中の塩では、酸性官能基(A2)のアニオンと有機塩基のカチオンとがイオン結合した状態であると推察される。
【0045】
酸性官能基(A2)は、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、およびヒドロキシル基からなる群から選ばれる一または二以上を含む。
酸性官能基(A2)の一部または全部は、反応性官能基(A1)と同一の基で構成されていてもよく、反応性官能基(A1)と異なる基で構成されてもよい。例えば、酸性官能基(A2)がカルボキシル基の場合、反応性官能基(A1)はカルボキシル基でもよいが、カルボキシル基以外の上述の基から選択された異なる基であってもよい。
酸性官能基(A2)および反応性官能基(A1)が同一の基を含む場合、表面改質ポリマー2に含まれる複数の同一の基において、有機塩基と化学的結合を形成していない他の同一の基は、その少なくとも一部が、反応性官能基(A1)として機能する。ただし、他の同一の基のすべてが、反応性官能基(A1)として機能しなくてもよく、親水性基等の他機能(リガンド結合や塩形成以外の機能)を有する官能基となってもよい。
【0046】
有機塩基は、例えば、窒素含有塩基および/またはリン含有塩基を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
窒素含有塩基として、窒素元素が容易にプロトンを受容してカチオンになる窒素含有化合物であれば限定されないが、例えば、有機アミン化合物が用いられる。
有機アミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン、脂肪族環状アミン、芳香族アミン、複素環アミンなどが挙げられる。脂肪族アミン、脂肪族環状アミンおよび芳香族アミンは、それぞれ第三級アミンが好ましい。なお、有機アミン化合物の窒素原子に結合する基の一部が、ヒドロキシル基などの置換基で置換されていてもよい。
リン含有塩基として、リン元素が容易にプロトンを受容してカチオンになるリン含有化合物であれば限定されないが、例えば、有機リン化合物が用いられる。
有機リンとしては、例えば、第三級ホスフィンが挙げられる。第三級ホスフィン中のリン元素に結合する3つの基は、それぞれ、芳香族基および環状炭化水素基のいずれかであることが好ましい。
【0047】
有機塩基は、例えば、下記に例示する窒素含有塩基およびリン含有塩基の少なくとも一つ以上を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
【化1】
【0049】
ここで、ポリマー付き粒子10の製造工程の一例を説明する。
上記の製造工程は、上述のコア粒子1を準備する工程と、コア粒子1の表面に上述の表面改質ポリマー2を形成する工程と、を含む。
コア粒子1の表面に表面改質ポリマー2を形成する工程は、
表面改質ポリマー2が有する上述の酸性官能基(A2)と上述の有機塩基とによる塩を形成する塩基導入工程と、
コア粒子1が有する上述のポリマー反応性基と表面改質ポリマー2が有する所定の反応性基(ポリマー反応性基と反応可能な官能基)とを化学反応させる上述のポリマー導入工程と、を含んでもよい。
ここで、塩基導入工程とポリマー導入工程との順番は、とくに限定されないが、塩基導入工程の後にポリマー導入工程を実施してもよく、あるいは、ポリマー導入工程の後に塩基導入工程を実施してもよい。なお、これらの工程の間に、精製などの公知の処理が一以上含まれていてもよい。
【0050】
塩基導入工程の後にポリマー導入工程を実施する順番の場合、塩基導入工程は、酸性官能基(A2)を有するが有機塩基を有しない表面改質ポリマー前駆体に対して、上述の窒素含有化合物および/または有機アミン化合物(有機塩基)を混合して、塩を形成させる方法が用いられる。
【0051】
一方、ポリマー導入工程の後に塩基導入工程を実施する順番の場合、塩基導入工程は、酸性官能基(A2)を有するが有機塩基を有しない表面改質ポリマー前駆体が表面に形成されたコア粒子1に、上述の有機塩基を混合して、塩を有する表面改質ポリマー2を形成させる方法が用いられる。なお、上記のコア粒子1は、水などの分散媒に分散させた分散液としたものを使用できる。
【0052】
また、上記の窒素含有化合物および/または有機アミン化合物(有機塩基)は、化合物の形態で使用してもよいが、化合物を含む溶液の形態で使用してもよい。
有機塩基を含む溶液における濃度は、例えば、0.1wt%~90wt%、好ましくは0.2wt%~80wt%、さらに好ましくは0.3wt%~70wt%である。
また、有機塩基を含む溶液におけるpHは、例えば、4~10、好ましくは5~9、さらに好ましくは6~8である。
有機塩基を含む溶液は、コア粒子1を溶解しないが、表面改質ポリマー2を溶解する溶媒を含むことが好ましい。かかる溶解選択性の観点から、溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール溶媒を用いることが好ましい。なお、溶液は、必要なら、緩衝剤等の他の添加剤を含んでもよい。
【0053】
本実施形態のポリマー付き粒子10の製造工程は、必要なら、コア粒子1の表面に表面改質ポリマー2を形成する工程の後に、表面改質ポリマー2の反応性官能基(A1)とリガントとを反応させる工程を含んでもよい。
【0054】
ここで表面改質ポリマー2の合成方法の一例を説明する。
表面改質ポリマー2の合成方法は、原料モノマーを1種又は2種以上を重合して表面改質ポリマー前駆体を製造するポリマー前駆体製造工程と、表面改質ポリマー前駆体と上述の有機塩基とを混合して、塩を形成させる有機塩基導入工程と、を含むことができる。
【0055】
ポリマー前駆体製造工程に用いられる原料モノマーとしては、ジエン化合物と親ジエン化合物とを含む原料モノマーA、官能基および二重結合等の不飽和基を含む原料モノマーBの1種又は2種以上を用いることができる。
【0056】
ジエン化合物と親ジエン化合物との重合物に対して、(i)無水物基が含まれる場合には、無水物基を開環させることにより反応性官能基(A1)および酸性官能基(A2)や他の官能基(機能性官能基)を側鎖に導入してもよく、(ii)カルボキシ基が含まれる場合には、縮合反応などにより、各種の官能基を側鎖に導入してもよく、(iii)二重結合等の不飽和基が含まれる場合には、付加反応等により、上述の各種官能基を側鎖に導入してもよい。
上述の他の官能基として、例えば、各種の反応性基、疎水性基、親水性基(水溶性基)、酸性基等の、公知の機能性官能基が挙げられる。
また、(i)無水物基が含まれる場合、水やアルコールや等により無水物基を開環させてもよいが、上記の有機塩基により無水物基を開環させてもよい。有機塩基により無水物基を開環させることにより、有機塩基導入工程を実現できる。加えて、無水物基が開環して形成されたカルボキシ基等の官能基に対して、上記(ii)のように、縮合反応などにより、上述の機能性官能基をポリマー前駆体の側鎖に導入してもよい。
【0057】
無水マレイン酸系ポリマーのポリマー前駆体の合成には、例えば、ジエン化合物として、ノルボルネン等のノルボルネン系モノマー、新ジエン化合物として、無水マレイン酸等の分子内に環状構造を有する不飽和カルボン酸無水物を用いることができる。
【0058】
一方、原料モノマーBは、反応性官能基(A1)および酸性官能基(A2)を有する原料モノマーB1、または、反応性官能基(A1)を有する原料モノマーB2と酸性官能基(A2)を有する原料モノマーB2との組み合わせ等を使用してもよい。必要なら、これらに加えて、反応性官能基(A1)および酸性官能基(A2)以外の、他の官能基を有する原料モノマーB3を使用してもよい。
【0059】
(メタ)アクリル系ポリマーのポリマー前駆体の合成には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、および(メタ)アクリル酸エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル等が用いられる。これらの(メタ)アクリルモノマーの1種または2種以上を用いることができる。
【0060】
重合には、付加重合および/または縮合重合が用いられるが、これに限定されない。
例えば、ラジカル重合により付加重合が行われてもよい。また、得られたポリマー前駆体の側鎖に対して、開環反応、縮合反応、付加反応などにより、反応性官能基(A1)および酸性官能基(A2)や他の官能基(機能性官能基)を導入してもよい。
具体的な一例を説明する。まず、1種又は2種以上の原料モノマーと、重合開始剤と、を溶剤に溶解した後、所定時間加熱することにより溶液重合を行うことができる。このとき、加熱温度は、たとえば50℃~80℃とすることができる。また、加熱時間は、たとえば1時間~20時間とすることができる。なお、窒素バブリングにより溶剤中の溶存酸素を除去したうえで、溶液重合を行うことがより好ましい。
【0061】
上記重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物などを使用できる。
アゾ化合物として具体的には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)などを挙げることができる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化水素、ジターシャリブチルパーオキサイド(DTBP)、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルパーオキサイド,BPO)および、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKP)などを挙げることができる。重合開始剤については、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
また、必要に応じて分子量調整剤や連鎖移動剤を使用する事ができる。連鎖移動剤としては、例えば、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、4,4-ビス(トリフルオロメチル)-4-ヒドロキシ-1-メルカプトブタン等のチオール化合物を挙げることができる。これらの連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
重合反応に用いられる溶剤としては、たとえば、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステルのうち一種または二種以上を使用することができる。また、上記重合開始剤としては、アゾ化合物および有機過酸化物のうちの一種または二種以上を使用できる。アゾ化合物としては、たとえばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)が挙げられる。有機過酸化物としては、たとえば過酸化水素、ジターシャリブチルパーオキサイド(DTBP)、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルパーオキサイド(BPO))およびメチルエチルケトンパーオキサイド(MEKP)が挙げられる。
【0064】
このようにして得られた(共)重合体を含む反応液を、例えば、ヘキサンやメタノール等のアルコールまたはエーテル中に添加してポリマーを析出させる。次いで、ポリマーを濾取し、例えば、ヘキサンやメタノール等のアルコール等により洗浄した後、これを乾燥させる。このようにしてポリマーを合成することができる。これにより、残留モノマー、オリゴマー、重合開始剤等の低分子量成分を除去することができる。
【0065】
本実施形態の標的物質検出試薬は、上記のポリマー付き粒子10の粒子群および分散媒を含む。
分散媒中のポリマー付き粒子10の濃度(重量%)は、適宜設定可能である。
分散媒としては、例えば、上記水性溶媒が好ましく用いられる。
水性溶媒には、発明の効果を損なわない範囲において、例えば、緩衝剤、防腐剤(アジ化ナトリウムなど)、タンパク質(アルブミン)等のブロッキング剤、水溶性高分子(糖類、ポリエチレングリコール、デキストランなど)等の増感剤、塩類(塩化ナトリウム、アミノ酸など)、界面活性剤等の第三物質が含有されてもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、試薬中のポリマー付き粒子10は、ウシ血清アルブミン(BSA)等のブロッキング剤によりブロッキング処理がなされていてもよい。
【0066】
(キット)
本実施形態の標的物質検出試薬は、保存、運搬、流通等の観点からキットの形態を取ることもできる。キットの形態としては、本発明の測定方法を可能とする形態であれば特に制限はない。
本実施形態の標的物質検出キットは、上記の標的物質検出試薬を含む試薬容器を備える。
【0067】
キットは、次のような様々な態様を採用可能である。
第一形態のキットは、ポリマー付き粒子10の粒子群および分散媒を含む第一試薬容器を備える。
第二形態のキットは、ポリマー付き粒子10の粒子群を含む第二試薬容器Aと、分散媒を含む第二試薬容器Bとを備える。
第一形態のキットの第一試薬容器、第二形態のキットの第二試薬容器A、および第二試薬容器Bのそれぞれには、上記で例示した第三物質の少なくとも1または2以上を含んでもよい。また、第一形態および第二形態のキットのそれぞれは、第三物質の少なくとも1を含む第三試薬容器をさらに備えてもよい。
また、第一形態および第二形態のキットのそれぞれは、上記の試薬容器に加えて、陽性コントロール、陰性コントロール、希釈液、洗浄液、使用説明書等のいずれか一つ以上を含む第四試薬容器を備えていてもよい。
なお、陽性コントロール、陰性コントロールの媒体として、測定し得る標的物質が含まれていない血清、生理食塩、溶剤等が用いられる。
【0068】
(標的物質の検出方法)
本実施形態の標的物質の検出方法は、標的物質検出試薬に標的物質を混合する接触工程を含む。
接触工程では、標的物質を含む試料とリガンド3を備えるポリマー付き粒子10とを同じ反応容器中に添加して共存させ、ポリマー付き粒子10に結合したリガンド3と標的物質とを接触可能な状態とする。
標準物質を含む試料と、ポリマー付き粒子10を含む標的物質試薬とは任意の順番で添加してよい。
また、標的物質とポリマー付き粒子10との混合は、pH3.0以上pH11.0以下程度で実施されもよく、混合液の液温が20℃以上50℃以下程度で実施されてもよい。
【0069】
標的物質とリガンド3とを接触させ、両者を反応させ、該試料中の測定対象物質とラテックス粒子に担持された該抗体とが反応し、標的物質とリガンド3とポリマー付き粒子10と複合体を形成させ、複合体形成に伴うポリマー付き粒子10の凝集を生じさせる。
【0070】
標的物質の検出方法は、接触工程の後、ポリマー付き粒子10の凝集を光学的手段により測定する検出工程を含んでもよい。凝集を光学的に測定する方法としては、吸光度、散乱光強度又は透過光強度を光学機器で測定する方法等が挙げられる。
吸光度の測定波長は、通常は340nm~1000nm、好ましくは500nm~900nmで測定すればよい。
凝集反応を測光する時間は、凝集反応が生じている時間を時間当たりの変化速度、あるいは一定時間の変化量によって測光することができる。例えば、吸光度を測定する場合、凝集反応が始まってから30秒後から5分後の時間当たりの吸光度変化速度、あるいは一定時間の吸光度変化量によって測光することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0072】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0073】
<表面改質ポリマーの合成>
(無水マレイン酸系ポリマー)
ノルボルネンと無水マレイン酸とを、所定の仕込み比で、アゾ化合物(重合開始剤)を用いて、ラジカル重合により反応させることにより、ポリマー前駆体Aを得た。続いて、下記の機能性基1~4を有する各種の機能性モノマーを、所定の仕込み比で、有機塩基存在下(トリチエルアミン)で開環反応させ、各ポリマー前駆体Aの側鎖(開環した無水マレイン酸基)に導入した後(有機塩基導入処理)、ヘキサン、もしくは、ジエチルエーテルで再沈殿処理を施し、無水マレイン酸系ポリマー(表1に示すポリマーA1~A8)を得た。
【0074】
【表1】
【0075】
【化2】
【化3】
【0076】
((メタ)アクリル系ポリマー)
メタクリル酸ブチルとメタクリル酸とを、所定の仕込み比で、アゾ化合物(重合開始剤)を用いて、ラジカル重合により反応させた。重合後、反応液を水、もしくは、ジエチルエーテルで再沈殿処理を施し、ポリマー前駆体Bを得た。
続いて、各ポリマー前駆体B、および有機塩基(トリエチルアミン、もしくは、ジイソプロピルエチルアミン)をエタノール中に溶解し、室温で5時間撹拌した後に(有機塩基導入処理)、ヘキサンで再沈殿処理を施し、(メタ)アクリル系ポリマー(表2に示す、ポリマーB1~B4)を得た。
【0077】
【表2】
【0078】
【化4】
【0079】
上記で得られた無水マレイン酸系ポリマー、および(メタ)アクリル系ポリマーについて、下記の測定条件に従って、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準PEGサンプルによる検量線を基に重量平均分子量(Mw)をそれぞれ算出した。結果を表1または表2に示す。
【0080】
上記で得られた無水マレイン酸系ポリマーについて、下記の測定条件に従って、13C-NMRのスペクトルを測定した。また、上記で得られた(メタ)アクリル系ポリマーについて、下記の測定条件に従って、H-NMRのスペクトルを測定した。得られたNMRスペクトルの結果に基づいて各ポリマー中の組成比率(官能基を有する構造単位の含有率)を算出した。結果を表1または表2に示す。なお、表1には、無水マレイン酸基の開環率(%)も併せて示す。
また、無水マレイン酸系ポリマーは、上記一般式(A)で示される各官能基を有する構成単位を含むことが分かった。一般式(A)中のRは、上記に例示される機能性基1~4の1つ、または2つで表される。
一方、(メタ)アクリル系ポリマーは、上記一般式(B)で示される各官能基を有する構成単位を含むことが分かった。
【0081】
上記のポリマー前駆体Aと上記のポリマーA1~A8とのそれぞれに対して、下記の測定条件に従って、13C-NMRのスペクトルを測定した。NMRスペクトルの結果より、ポリマー前駆体Aと対応するポリマーA1~A8とで、ピークシフトが生じたことから、上記で得られた無水マレイン酸系ポリマー(表面改質ポリマー)中のカルボキシ基と有機塩基とのイオン結合により塩が形成されていることが確認された。
また、同様にして、上記のポリマー前駆体Bと上記のポリマーB1~B4とのそれぞれに対して、H-NMRのスペクトルを測定した結果、ポリマー前駆体Bと対応するポリマーB1~B4とで、ピークシフトが生じたことから、上記で得られた(メタ)アクリル系ポリマー(表面改質ポリマー)中のカルボキシ基と有機塩基とのイオン結合により塩が形成されていることが確認された。
ここで、上記一般式(A)および一般式(B)において、カルボキシ基とおよび/または隣接または近接した2つのカルボキシ基と有機塩基とがイオン結合しているものと推察される。
【0082】
(NMR測定条件)
・NMRの測定は、日本電子社製のECA500を用い、重ジメチルスルホキシド溶媒または重エタノール溶媒で行った。
(GPC測定条件)
GPCの測定には、東ソー製TSKgel SuperAWM-H 1本、TSKgel SuperAW2500 1本、TSKgel guardcolumn SuperAW-H 1本を用い、展開溶媒として、メタノール 70%/HO 30%(10mM LiBr添加)を使用し、カラム温度40℃、流量0.6ml/分の条件を使用した。
【0083】
<ポリマー付き粒子の作製>
[実施例1~9]
下記のラテックス液Aにジアミンを混合して、ポリスチレンラテックス粒子のカルボキシ基に、ジアミンと反応させて、第一級アミノ基を導入し、精製した(アミノ処理)。
続いて、第一級アミノ基を有するポリスチレンラテックス粒子を含む溶液に、表3に示す表面改質ポリマー(ポリマーA1~A8)を混合して、第一級アミノ基と無水マレイン酸基とを反応させ、精製し、表面に表面改質ポリマーが導入されたコア粒子を含む分散液を得た(ポリマー導入処理)。
【0084】
[実施例10~13]
表3に示す表面改質ポリマー(ポリマーB1~B4)を混合して、下記の縮合剤を用いて、第一級アミノ基とカルボキシ基とを反応させた以外、実施例1と同様にアミノ処理およびポリマー導入処理を実施して、表面に表面改質ポリマーが導入されたコア粒子を含む分散液を得た。
【0085】
[比較例1]
ラテックス粒子を含む分散液(下記のラテックス液A)を使用した。
【0086】
[比較例2]
下記のラテックス液Aに、TEAを混合した分散液を使用した。
【0087】
・ラテックス液A:カルボキシル基修飾ポリスチレンラテックス粒子(JSR製、商品名:IMMUNTEX、平均粒子径:351nm、固形分:10%)
・縮合剤:カルボジイミド系架橋剤(EDC、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、別称:WSC)
【0088】
【表3】
【0089】
表1~3中、TEAはトリエチルアミン、DIEAはジイソプロピルエチルアミンを表す。
【0090】
上記で得られたポリマー付き粒子について、以下の項目を評価した。
【0091】
<感作粒子分散体の製造>
(感作処理)
上記の縮合剤を含む上記で得られた実施例1~13のポリマー付き粒子の分散液(0.4%w/vol)、または上記の比較例1、2のラテックス粒子を含む分散液(0.4%w/vol)600μLと、下記の抗体A溶液(0.27mg/mL)600μLと、を混和し、20℃で180分間振とう撹拌し、混合液を得た。
・抗体A溶液:フェリチン抗体(ミクリ免疫研究所社製、Ferritin clone No.7またはNo.14)、10mM MES(pH6.5)
【0092】
(洗浄処理)
得られた混合液を、遠心分離機(ローター:R15A(HI抗体ACH))を用いて、10000rpmの条件で、10℃で15分間遠心分離した。上清をデカンテーションし、得られた沈査に、下記のHEPES緩衝液3.5mLを添加し、ソニケーションにて分散した。
続いて、上記の遠心分離機を用いて、10000rpmの条件で、10℃で15分間遠心分離した。上清をデカンテーションし、得られた沈査に、下記のHEPES緩衝液3.5mLを添加し、ソニケーションにて分散させ、懸濁液を得た。
・HEPES緩衝液:0.1%BSA、10mM HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、pH7.2)、0.1%Tween20 0.05%NaN
【0093】
(ブロッキング処理)
得られた懸濁液に、下記のブロッキング液を3.5mL加え、充分分散させてから、37℃で1時間攪拌した。この後、上記の遠心分離機を用いて、10000rpmの条件で、10℃で15分間遠心分離し、リガンド感作粒子を得た。
・ブロッキング液:ウシ血清アルブミン(BSA)溶液(1%BSA、20mM MES緩衝液(pH6.0)、0.05%NaN
【0094】
(試薬化処理)
下記の組成成分を、所定配合比率で混合して、超音波処理により均一に分散して(分散処理)、固形分0.1%の試薬(感作粒子分散体)を調製した。
・上記で得られたリガンド感作粒子
・0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)含有HEPES緩衝液
・100mM NaCl
・0.09%NaN
・100mM HEPES緩衝液(pH7.0)
【0095】
<吸光度>
自動分析装置TBA-120FR(キャノンメディカルシステムズ株式会社製)を用いて、10℃に保持した、各実施例および各比較例の試薬、下記の測定用試薬、標的物質(フェリチン抗原溶液)の各々について、波長700nmの吸光度を測定した。
続いて、各実施例および各比較例の試薬の各々20μLに、下記の測定用試薬80μL、標的物質(抗原量が0ng/mL、もしくは、1,000ng/mL)を4μL加えた混合物について、均一攪拌し、37℃で保持しながら、測定用試薬添加直後、および、5分経過後の波長700nmの吸光度を測定した。
なお、抗原量が0ng/mL、および抗原量が1,000ng/mLのときの各試薬における吸光度については、5分経過後の吸光度から測定用試薬添加直後の吸光度を差し引いた値を採用した。
感度の指標として、標的物質添加有無の吸光度差(ΔAbs)には、上記抗原量が1,000ng/mLの波長700nmの吸光度から、上記抗原量が0ng/mLの波長700nmの吸光度を差し引いた値を採用した。
【0096】
(測定用試薬)
下記の組成成分を、所定の配合比率で混合して、測定用試薬を調整した。
・0.1%Tween20
・ポリエチレングリコール(PEG)(5000~50000)
・1%ウシ血清アルブミン(BSA)含有HEPES緩衝液
・150mM NaCl
・0.09%NaN
・100mM HEPES緩衝液(pH7.6)
【0097】
実施例1~13のポリマー付き粒子は、比較例1、2と比べて、抗原量が0ng/mLの波長700nmの吸光度、つまり、標的物質(抗原)を添加しない状態における吸光度が低い結果を示したことから、分散性に優れることが分かった。
このような実施例1~13のポリマー付き粒子は、免疫凝集法に用いられる感作粒子分散体(試薬)として好適に使用できることが分かった。
【符号の説明】
【0098】
1 コア粒子
2 表面改質ポリマー
3 リガンド
10 ポリマー付き粒子
図1