(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143327
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】個装吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61F13/15 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055943
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】倉持 美帆子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 浩洋
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA16
3B200BB02
3B200BB08
3B200BB30
3B200DF09
3B200EA18
(57)【要約】
【課題】紙製包装シートによって吸収性物品が包まれてなる個装吸収性物品において、ヒートシールによるシール部の形成をより確実に形成できる技術を提供する
【解決手段】吸収性物品が紙製の包装シートに包まれてなる個装吸収性物品であって、前記包装シートが、当該包装シートの縦方向に内面側に折り畳まれ、前記縦方向に直交する横方向の両縁部がシールされてシール部が形成されており、前記包装シートの前記内面及び外面の一方の、少なくとも前記シール部に含まれる領域に、ヒートシール剤が設けられており、前記包装シートが、目止め剤非塗工シートであるか、又は目止め剤塗工シートであるが、前記目止め剤の塗工目付が、前記ヒートシール剤が設けられた後の包装シートの総坪量に対し10%以下である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品が紙製の包装シートに包まれてなる個装吸収性物品であって、
前記包装シートが、当該包装シートの縦方向に内面側に折り畳まれ、前記縦方向に直交する横方向の両縁部がシールされてシール部が形成されており、
前記包装シートの前記内面及び外面の一方の、少なくとも前記シール部に含まれる領域に、ヒートシール剤が設けられており、
前記包装シートが、目止め剤非塗工シートであるか、又は目止め剤塗工シートであるが、前記目止め剤の塗工目付が、前記ヒートシール剤が設けられた後の包装シートの総坪量に対し10%以下である、個装吸収性物品。
【請求項2】
前記包装シートが、目止め剤非塗工包装シートである、請求項1に記載の個装吸収性物品。
【請求項3】
前記包装シートの密度が0.42~0.74g/cm3である、請求項1又は2に記載の個装吸収性物品。
【請求項4】
前記包装シートの坪量が15~30g/m2である、請求項1又は2に記載の個装吸収性物品。
【請求項5】
前記ヒートシール剤が、前記包装シートの前記内面に設けられている、請求項1又は2に記載の個装吸収性物品。
【請求項6】
前前記包装シートの、前記ヒートシール剤が塗布された塗布面同士を対向させてシールされた部分のシール強度をSaa、前記包装シートの、前記ヒートシール剤が塗布された塗布面と前記ヒートシール剤が塗布されていない非塗布面とを対向させてシールされた部分のシール強度をSanとして、
(Saa-San)/Saa×100≦20(%)である、請求項1又は2に記載の個装吸収性物品。
【請求項7】
吸収性物品が紙製の包装シートに包まれてなる個装吸収性物品であって、
前記包装シートが、当該包装シートの縦方向に内面側に折り畳まれ、前記縦方向に直交する横方向の両縁部がシールされてシール部が形成されており、
前記包装シートの前記内面及び外面の一方の、少なくとも前記シール部に含まれる領域に、ヒートシール剤が設けられており、
前記包装シートの密度が0.42~0.74g/cm3である、個装吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個装吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の多くの吸収性物品は、保管時の衛生、持ち運びの際の利便性等の理由から、包装シートによって個別に包装されて封止された状態で個装吸収性物品(個別包装体)として提供されている。個装吸収性物品の包装構造としては、例えば、包装シートの内面に吸収性物品を配置し、吸収性物品と共に包装シートを内面側に折り畳んだ後、両縁部をシールした形態が一般的である。
【0003】
包装シートの材質としては、依然として樹脂フィルム、不織布等が主流であるが、紙製の包装シートも知られている。紙製の包装シートの場合、シート材料そのものが熱融着しないため、シール部のシール強度を高めるための工夫が必要となる。例えば特許文献1には、第1歯列と当該第1歯列に噛み合う第2歯列とをそれぞれ表面に備えた一対のロール間で、折り畳み後の包装シートの両縁部を加圧することによってシール部を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術であっても、シール部のシール強度は、熱融着により形成されたシール部のシール強度に比べて左程大きくはできない。そのため、ヒートシール剤を利用したシール部の形成が考えられる。その場合、ヒートシール剤という材料が増えて追加コストがかかることに鑑みると、ヒートシール剤を効率的に利用すること、すなわち比較的少量であってもより確実にシール部を形成できることが望まれている。
【0006】
上記に鑑みて、本発明の一態様は、紙製包装シートによって吸収性物品が包まれてなる個装吸収性物品において、ヒートシールによるシール部の形成をより確実にできる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、吸収性物品が紙製の包装シートに包まれてなる個装吸収性物品であって、前記包装シートが、当該包装シートの縦方向に内面側に折り畳まれ、前記縦方向に直交する横方向の両縁部がシールされてシール部が形成されており、前記包装シートの前記内面及び外面の一方の、少なくとも前記シール部に含まれる領域に、ヒートシール剤が設けられており、前記包装シートが、目止め剤非塗工シートであるか、又は目止め剤塗工シートであるが、前記目止め剤の塗工目付が、前記ヒートシール剤が設けられた後の包装シートの総坪量に対し10%以下である。
【0008】
上記第一の態様によれば、包装シートの内面及び外面の一方の、少なくともシール部に含まれる領域にヒートシール剤が設けられている。このため、紙製の包装シートであっても、両縁部のシール部の形成のためにヒートシールという手段を利用できるので、従来のような噛み合う歯列間での包装シートの加圧等による、ヒートシールを利用しないシールに比べて、より確実にシール可能である(シール性が高い)。
【0009】
また、一般に、紙製のシートには目止め剤が塗布されているものが多い。すなわち、目止め剤塗工シートが利用されることが多い。目止め剤は、例えば、シート表面に所定の剤(例えばインク、インク以外の機能剤等)が塗布される工程において、所定の剤が、当該剤が塗布された側から反対側へと浸み出すこと(裏抜け)を防止するために予め塗布される。しかしながら、個装吸収性物品のシール部をヒートシールによって形成する場合、上述のヒートシール剤を紙製の包装シートに浸み込ませた方が、さらには包装シートの反対側へと浸み出させた方が、より確実なシールが可能である。本態様では、包装シートとして、目止め剤非塗工シートであるか、又は目止め剤塗工シートであっても目止め剤の塗工目付が抑えられたものを使用する。より具体的には、目止め剤の塗工目付が、ヒートシール剤塗布後の包装シートの総坪量に対し10%以下であるものを使用する。これにより、ヒートシール手段による加熱加圧時に軟化又は溶融されたヒートシール剤が紙製包装シートの繊維間に浸み込みやすくなり、包装シートとヒートシール剤との結合がより強固になる。さらに、軟化又は溶融されたヒートシール剤を、包装シートの、当該ヒートシールを塗布した側とは反対側へと浸み出させた場合には、包装シートの厚み方向に一方の側から他方の側にわたってヒートシール剤を連続して存在させることができるので、包装シートとヒートシール剤との結合は一層強くなる。また、包装シートの反対側にもヒートシール剤を出現させることができるので、当該反対側でのシール強度を向上できる。したがって、本態様によれば、ヒートシール剤の量が比較的少量であっても、個装吸収性物品の両縁部においてより高いシール強度のシール部を形成できる。
【0010】
本発明の第二の態様では、前記包装シートが、目止め剤非塗工包装シートである。
【0011】
上記第二の態様によれば、ヒートシール剤が、加熱加圧時に紙製包装シートの繊維間により一層浸み込みやすくなる。そのため、シール部のシール強度の向上という上述の効果を増大できる。
【0012】
本発明の第三の態様では、前記包装シートの密度が0.42~0.74g/cm3である。
【0013】
上記第三の態様によれば、包装シートが、所定の比較的小さい範囲の密度を有することで、個装吸収性物品の包装シートとしての強度を確保すると共に、加熱加圧時にヒートシール剤が包装シートの繊維間により一層浸み込みやすくなるので、より確実なシールができ、シール部のシール強度も一層向上できる。
【0014】
本発明の第四の態様では、前記包装シートの坪量が15~30g/m2である。
【0015】
上記第四の態様によれば、包装シートの坪量(目付)を所定範囲とすることで、包装シートとしての強度を確保できると共に、個装吸収性物品を手に持った時のゴワゴワ感を低減できる。
【0016】
本発明の第五の態様では、前記ヒートシール剤が、前記包装シートの前記内面に設けられている。
【0017】
包装シートが折り畳まれた状態では、包装シートの内面同士が対向する領域が大きい。上記第五の態様によれば、ヒートシール剤が包装シートの内面に設けられているので、ヒートシール剤を介した包装シート同士の接合がより確実になる。また、本態様によれば、ヒートシール前(熱融着前)の段階では、ヒートシール剤が外面に存在しない又は少量しか存在しないので、製造装置の部材等にヒートシール剤が付着する可能性を低減できる。
【0018】
本発明の第六の態様では、前記包装シートの、前記ヒートシール剤が塗布された塗布面同士を対向させてシールされた部分のシール強度をSaa、前記包装シートの、前記ヒートシール剤が塗布された塗布面と前記ヒートシール剤が塗布されていない非塗布面とを対向させてシールされた部分のシール強度をSanとして、
(Saa-San)/Saa×100≦20(%)である。
【0019】
上記第六の態様によれば、ヒートシール剤が塗布された塗布面同士の接合によるシール強度と、ヒートシール剤の塗布面とヒートシール剤が塗布されていない非塗布面との接合によるシール強度との差が小さいので、例えばヒートシール剤が包装シートの内面に塗布され、包装シートが三つ折りされている場合であっても、場所によって剥がしに要する力を概ね均一にできる。そのため、開封時に包装シートの全体を違和感なく剥がすことができる。
【0020】
本発明の第七の態様は、吸収性物品が紙製の包装シートに包まれてなる個装吸収性物品であって、前記包装シートが、当該包装シートの縦方向に内面側に折り畳まれ、前記縦方向に直交する横方向の両縁部がシールされてシール部が形成されており、前記包装シートの前記内面及び外面の一方の、少なくとも前記シール部に含まれる領域に、ヒートシール剤が設けられており、前記包装シートの密度が0.42~0.74g/cm3である。
【0021】
上記第七の態様によれば、包装シートの内面及び外面の一方の、少なくともシール部に含まれる領域にヒートシール剤が設けられている。このため、紙製の包装シートであっても、両縁部のシール部の形成のためにヒートシールを利用できるので、ヒートシールを利用せずに、例えば物理的な凹凸形成等によるシールに比べて、より確実にシール可能である(シール性が高い)。
【0022】
また、個装吸収性物品のシール部をヒートシールによって形成する場合、上述のヒートシール剤を紙製の包装シートに浸み込ませた方が、さらには包装シートの反対側へと浸み出させた方が、より確実なシールが可能である。本態様では、紙製の包装シートの密度を所定範囲内とすることで、ヒートシール手段による加熱加圧時に、ヒートシール剤が紙製包装シートの繊維間に浸み込みやすくなり、包装シートとヒートシール剤との結合がより強固になる。さらに、ヒートシール剤を、包装シートの、当該ヒートシールを塗布した側とは反対側へと浸み出させた場合には、包装シートの厚み方向に一方の側から他方の側にわたってヒートシール剤を連続して存在させることができるので、包装シートとヒートシール剤との結合は一層強くなる。また、包装シートの反対側にもヒートシール剤を出現させることができるので、当該反対側でのシール強度を向上できる。したがって、本態様によれば、ヒートシール剤の量が比較的少量であっても、個装吸収性物品の両縁部においてより高いシール強度のシール部を形成できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、紙製包装シートによって吸収性物品が包まれてなる個装吸収性物品において、ヒートシールによるシール部の形成をより確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態による個装吸収性物品の平面図である。
【
図5】一実施形態におけるヒートシール剤の作用について説明するための図である。
【
図6】一実施形態におけるヒートシール剤の作用について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0026】
<個装吸収性物品の基本構造>
まず、個装吸収性物品の基本的な構造について説明する。
図1に、個装吸収性物品100の平面図を示す。
図2に、
図1の個装吸収性物品100の包装シート10を展開した状態の平面図であって、包装シート10の内面から若しくは吸収性物品1肌側から見た図を示す。また、
図3に、
図1のI-I線断面を示し、
図4に、
図1のII-II線断面を示す。
【0027】
図1~
図4に示すように、個装吸収性物品100は、包装シート10と、包装シート10によって個装された吸収性物品1とを含む。
【0028】
(包装シート)
図2に示すように、包装シート10は展開した状態で細長形状であってよく、縦方向(長手方向)D1と、当該縦方向に直交する横方向(短手方向)D2とを有する。また、包装シート10の縦方向D1及び横方向D2は、それぞれ吸収性物品1の長手方向及び短手方向に対応していてよい。また、包装シート10の形状は、
図2に示すような長方形の形状に限らず、例えば長楕円形等の形状を有していてもよい。
【0029】
また、包装シート10の寸法は、包装する吸収性物品1の大きさや形状に応じて適宜選択できる。例えば、包装シート10を完全に広げた状態(折り返しされていない状態)で、縦方向D1の長さ(単に長さと呼ぶ場合がある)は100~450mm、横方向D2の長さ(単に幅と呼ぶ場合がある)は70~250mmであってよい。
【0030】
本形態における包装シート10は紙製である。紙製の包装シート10を利用することで、プラスチック削減に貢献でき、持続可能な開発目標の達成に寄与できる。また、紙は、独特の風合い、例えば天然素材の優しい印象の見た目及び手触りを付与できるので、使用者に心地良さを提供できる。なお、本明細書において、紙とは、植物繊維その他の繊維を膠着剤で膠着させて薄い平板状にしたものを指す。特に、植物繊維を主原料としたもの、例えば含有繊維のうち植物繊維、特にセルロース繊維が50%以上であるもの、好ましくは80%以上であるものを指す。紙の原料たる植物繊維としては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ、綿セルロースが挙げられ、パルプは、機械パルプ、化学パルプのいずれであってもよい。また、上記植物繊維は、レーヨン、キュプラ等の再生繊維であってもよいし、吸収性物品の構成要素及び/又は吸収性物品用の包装シートからリサイクルされた植物繊維(リサイクルパルプ等)であってもよい。
【0031】
紙には、クレー、炭酸カルシウム、澱粉、ラテックス、着色顔料、防腐剤等の公知の紙用の添加剤が添加されていてよい。具体的な紙の例としては、洋紙、和紙、加工紙、合成紙等の様々な種類の紙を挙げることができる。さらに、従来他の用途で使用されている紙、例えば、新聞用紙、印刷用紙(上質紙を含む)、筆記用紙、図画用紙、包装用紙、薄葉紙、雑種紙等と呼ばれる紙であってもよい。薄葉紙である場合、薄口模造紙、インディアンペーパー、ライスペーパー、グラシン紙、ティシュペーパー、トイレットペーパー、ろ紙等であってもよい。
【0032】
なお、本明細書において、紙製の包装シートとは、主として上述の紙を含むシートを指す。紙製の包装シートには、紙のみからなる包装シートはもちろん、紙と、紙以外の材料からなるシートとが積層された積層シートも含まれ得る。包装シート10が、紙以外の材料からなるシートを含む場合、紙以外の材料は、樹脂フィルム、不織布等であってよい。但し、包装シート10が、紙以外の材料シートと積層されておらず、紙からなるものである場合、プラスチック削減の観点から且つ/又は紙独特の自然な風合いを製品に付与できるという観点で、特に好ましい。
【0033】
本形態で用いられる包装シート10の坪量(目付)は、好ましくは8~50g/m2、より好ましくは15~30g/m2であってよい。上記範囲の坪量の包装シート10を用いることで、ゴワゴワとした触感を抑えた手触りの良い個装吸収性物品を得ることができ、持ち運び時、開封時等における音の発生も防止できる。また、包装シート10の厚み(クレープ紙の場合にはクレープ加工後の厚み)は、好ましくは30~200μm、より好ましくは35~100μmであってよい。なお、上記包装シートの坪量は、未加工状態での包装シートの坪量、すなわち目止め剤も塗工されておらず且つヒートシール剤も設けられていない状態での紙製包装シートの坪量である。
【0034】
本実施形態における紙製の包装シート10には、何らかの加工が施されていてよい。この加工には、例えば、クレープ加工、エンボス加工、カレンダー加工、スリット加工、プライ加工等の包装シート10に物理的な変形を加える加工が含まれ得るし、撥水加工、離型加工、インク印刷加工等の包装シート10に物質を追加する加工が含まれ得る。但し、物質を追加する加工を行う場合には、シール部のシール性に影響がないよう、好ましくはヒートシール剤(後に詳述)が塗布された領域以外の領域に、或いはシール部に対応する領域以外の領域に加工する。また、上記のインク印刷加工は、例えば包装シートの外面に施されていると好ましく、これにより、個装吸収性物品100のデザイン性が向上する。包装シート10にインク印刷を施す場合、包装シート10としては、クレープ加工、エンボス加工等の包装シートの表面に凹凸を形成する加工がされていない材料(非クレープ紙、非エンボス紙)を用いることが好ましい。
【0035】
(吸収性物品)
包装シート10により包装される吸収性物品1は、体液(経血、おりもの、尿等)の排出口に対向させるように装着するための、扁平で細長形状の物品であってよい。吸収性物品1の具体例は、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、軽失禁用パッド等であってよい。本明細書における説明は主として、生理用ナプキンを例とした形態に基づく。
【0036】
吸収性物品1は、例えば
図2に示すように、液透過性のトップシート3と、液不透過性のバックシート(不図示)と、これらのトップシート3とバックシートとの間に配置された吸収体4とを有していてよい。
【0037】
バックシートとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、透湿性を有するものが用いられてもよい。
【0038】
トップシート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。パルプとしては、広葉樹材から得られる広葉樹パルプ、針葉樹材から得られる針葉樹パルプ、又はその混合パルプであってよい。また、パルプは、使用済みのパルプから再生されたリサイクルパルプであってもよい。
【0040】
吸収体4の厚みは、0.5~25mmであってよい。吸収体4は、体液排出口に対応させる領域(体液排出口対応領域)や、体液排出口対応領域より後方の、臀部の溝に対向する領域を、膨出させた構造とすることもできる。吸収体4は、トップシート3及びバックシートからはみ出さない寸法及び形状を有し、吸収体の前方及び後方の端縁部では、バックシートとトップシート3との外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。
【0041】
図2に示すように、吸収体4の側方の外方においては、横方向D2両端部に縦方向D1に沿ってサイドシート7、7が設けられていてもよい。サイドシート7としては、撥水処理不織布又は親水処理不織布を使用することができる。
【0042】
なお、
図1~
図4に示す例では、吸収性物品1は、ウィングのない、いわゆる羽なしのタイプのものであるが、側方にそれぞれ延出するウィングを有する羽つきの物品として構成してもよい。ウィングは、サイドシートとバックシートとの接合により形成されていてよい。
【0043】
また、吸収性物品1のバックシートの側(非肌側、すなわち装着時に下着に対向させる側)には、吸収性物品1を下着に取り付けた際に下着からズレないようにするためのズレ止め用粘着部が設けられていてもよい。ズレ止め用粘着部は、縦方向D1又は横方向D2に延在する複数の帯状に形成されていてよい。
【0044】
吸収性物品1の全長は、140~430mmとすることができ、吸収性物品1の幅(ウィングを有する場合にはウィングを除いた本体の幅)は40~130mmとすることができる。
【0045】
(包装構造)
図1~
図4に示すように、吸収性物品1は、包装シート10と共に折り畳まれることによって包装され、これにより個装吸収性物品100が形成されている。折り畳みの際には、
図2に示すように、包装シート10の内面に吸収性物品1を、吸収性物品1のバックシート側が対向するように載置された状態とする。そして、包装シート10と吸収性物品1とが共に、幅方向D2に沿った第1折り線F1及び第2折り線F2にて縦方向D1に内面側に折り畳まれる。より具体的には、第1折り線F1にて、包装シート10の縦方向D1の一端11を含む第1領域R1が縦方向D1に折り返され、第2折り線F2にて、包装シート10の縦方向D1の他端12を含む第2領域R2が折り返される。包装シート10の第1領域R1と第2領域R2との間の領域は、第3領域R3である。図示の例では、包装シート10は、第2領域R2が先に折り畳まれ、第1領域R1が第2領域R2の外面に重なるように折り畳まれているが(
図1及び
図2)、第1領域R1及び第2領域R2の折り順は逆であってもよい。
【0046】
図1及び
図2に示す例では、包装シート10を吸収性物品1と共に巻三つ折り(内三つ折り)にして吸収性物品1を包んでいる。このような三つ折りの包装形式は、比較的簡便に形成でき、吸収性物品1を衛生的に包むことができるし、また吸収性物品1の取出しも容易である。なお、折り畳みの形式は三つ折りに限られず、四つ折り以上(後に詳述)としてもよいし、二つ折りであってもよい。
【0047】
図1~
図4に示す三つ折りの構成では、第1領域R1と第2領域R2とが重なるゾーンでは、包装シート10が3枚重なることになり、第1領域R1と第2領域R2との重なりがないゾーンでは、包装シート10は2枚重なっている。
図1、
図3及び
図4では、包装シート10が3枚重なっているゾーンを3枚重ねゾーンZb、包装シート10が2枚重なっているゾーンをそれぞれ2枚重ねゾーンZa1、Za2(合わせてZa)として示す。
【0048】
包装シート10が吸収性物品1と共に折り畳まれて、吸収性物品1を包んだ後、横方向D2の両縁部が、縦方向D1に沿ってシールされて、シール部15、15が形成される(
図1)。
図1に示すように、シール部15、15は、包装シート10の縦方向D1の全長にわたって形成されていてよい。シール部15、15によって、ごみや塵、或いは誤って指又は小さい物体が横方向D2の端縁から個装吸収性物品100内に侵入することを防止できる(封止性が得られる)。
【0049】
シール部15は、横方向D2の端縁から20mmまでの範囲内に形成されていてよい。シール部15は、当該範囲の全体にわたって形成されていてもよいし、上記範囲内の一部分に、例えば横方向D2の端縁から離れた位置に形成されていてもよい。シール部15自体の横方向D2の長さ(幅)は、3~15mmであってよい。また、
図1に示す例では、シール部15、15の横方向D2内側の輪郭は、波線状になっているが、シール部15、15の横方向D2内側の輪郭は、直線状になっていて、縦方向D1にわたって、同じ横方向D2の長さ(幅)で形成されていてもよい。
【0050】
なお、個装吸収性物品100には、包装シート10の一端11を跨るように、すなわち、個装吸収性物品100の外面において、第1領域R1と第2領域R2とに跨るように、幅方向D2の中央に、止着テープ30が設けられていてよい。止着テープ30があることで、第1領域R1と第2領域R2との間に物、指等が入って引っ掛かり、使用前に意図せずシールが開封されてしまうことを防止できる。また、開封時には止着テープ30を持って第1領域R1を持ち上げることができるので、開封動作が容易になる。
【0051】
<ヒートシール剤及びヒートシール>
個装吸収性物品100におけるシール部15、15の形成にはヒートシール剤が利用される。ヒートシール剤は、熱可塑性樹脂、好ましくは70~170℃で軟化又は溶融する樹脂を含むものであってよく、オレフィン系ヒートシール剤であると好ましい。また、ヒートシール剤は、樹脂粒子の水分散体であってよい。ヒートシール剤の具体例としては、三井化学株式会社製「ケミパール(登録商標)」シリーズ等が挙げられる。
【0052】
ヒートシール剤を利用することで、紙製の包装シート10であっても、熱を利用したシール(ヒートシール)によって包装シート同士を接合させることができる。ヒートシールでは、上述のように折り畳まれた後の包装シート10の両縁部(包装シート10の横方向D2の両縁部)を、例えば一対のロールに挿通させ、両ロールによって加圧及び加熱して、包装シート10同士を厚み方向に押し付けることができる。一対のロールは、例えば、表面に複数の凸部を有するロールと、表面に凹凸のないロールとの組み合わせであってよく、その場合、一方のロールの複数の凸部が包装シートに押し付けられて、包装シートに、凸部に対応した複数の圧着部が形成され得る。この圧着部において、対向する包装シート間にヒートシール剤が介在してれば、熱によりヒートシール剤が溶融若しくは軟化して包装シートに密着し、その後ヒートシール剤が冷えて固化することで、包装シートとヒートシール剤とで材料同士が強く結合する。よって、ヒートシール剤を用いる本形態では、ヒートシール剤を用いずに包装シートの物理的な変形(凹凸形成等)を利用する従来のシールと比べて、より確実にシール部を形成できる(シール性が高い)。
【0053】
さらに、ヒートシール剤によって得られるシール強度は、ヒートシール剤を、紙製の包装シートに浸み込ませることによって高めることができる。これは、ヒートシール手段によって加熱及び加圧されて軟化又は溶融されたヒートシール剤が紙の繊維間に入り込み、紙製包装シートとヒートシール剤との結合が強固になるためである。さらに、軟化又は溶融されたヒートシール剤を、紙製包装シートの、当該ヒートシール剤を塗布した面(塗布面)とは反対側(裏側)の非塗布面へと浸み出させることによって、シール強度を一層高めることができる。ヒートシール剤が紙製包装シートの反対側へ浸み出した後、冷えて固化した状態では、固体のヒートシール剤が紙製包装シートの厚み方向で一方の側から他方の側に連続して存在することになるので、包装シートとヒートシール剤との結合はより強固になる。また、ヒートシール剤を、当該ヒートシール剤を塗布した塗布面と反対側の非塗布面に出現させることで、包装シートの反対側でもヒートシール剤の接着性を発現させることができる。そのため、例えば包装シートが3枚重ねになっているゾーンにおいて中央に配置された包装シートの領域(後述のゾーンZbにおける第2領域R2)の両面でのシール性も向上できる。
【0054】
ここで、一般に、紙製シートには目止め剤が設けられているものが多い。目止め剤が塗工されたシートを、目止め剤塗工シートと呼ぶ。目止め剤は、シート表面に、当該目止め剤とは別の所定の剤(インク等)が塗布される工程において、当該所定の剤が塗布された側から反対側へと浸み出すこと(裏抜け)を防止することを目的として塗工されるものである。そして、多くの場合、シートの面全体に連続して塗工されている。また、本明細書において、目止め剤には、防汚、防水(撥水)、離型等を目的として塗布された剤も含まれる。目止め剤の具体例としては、シリコーン系樹脂、パラフィン系樹脂、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、フッ素樹脂等の樹脂、クレー等が挙げられる。目止め剤は、溶液又は分散液の形態で、包装シートの内面又は外面に塗布することができる。或いは、予めフィルム状の樹脂成形体を形成しておき、紙製包装シートの内面又は外面に貼り付けてもよい。
【0055】
上記のような目止め剤が紙製包装シートに予め塗工されている場合、目止め剤が、上述のヒートシール剤の紙製包装シートへの浸み込みを阻害し得る。よって、ヒートシール剤の浸み込みを促進してシール強度を高めるという観点では、目止め剤の塗工量を抑制することが好ましい。より具体的には、目止め剤の塗工目付を、包装シートの総坪量に対して10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下とする。ここで、包装シートの総坪量とは、最終製品である個装吸収性物品における加工後の包装シートの坪量、すなわち目止め剤が塗工されている場合には目止め剤の塗工後であり且つヒートシール剤が塗布された後の坪量である。さらに、上記目止め剤の塗工目付が0%である、すなわち、包装シートが目止め剤を塗工していない、目止め剤非塗工シートであることが好ましい。
【0056】
このように、本形態では、包装シートとして目止め剤非塗工シートを用いるか、又は目止め剤塗工シートを用いたとしても包装シート10に設けられる目止め剤塗工目付を所定量以下とすることで、上述のように、ヒートシール手段による加熱加圧時におけるヒートシール剤の紙製包装シートへの浸み込みが促進される。このため、同量のヒートシール剤を使用しているが包装シート10への浸み込みがない場合と比較して、シール部15のシール強度を高めることができる。
【0057】
また、目止め剤の有無に関わらず、ヒートシール手段によって加熱加圧されて軟化又は溶融されたヒートシール剤の紙製包装シート10への浸み込みを促進させ、シール強度を上げるために、密度の小さい紙製包装シートを使用してもよい。その場合、包装シート10の密度は、0.74g/cm3以下、好ましくは0.72g/cm3以下、より好ましくは0.71g/cm3以下であってよい。このような密度の包装シート10の場合、紙製包装シート10の繊維同士の間隔が粗くなっているので、加熱加圧により軟化又は溶融されたヒートシール剤が繊維間に容易に入り込むことができ、ヒートシール剤の包装シートへの浸み込みが促進される。また、包装シート10の密度は、個装吸収性物品100の包装シート10としての強度を確保するために、密度は好ましくは0.30g/cm3以上、より好ましくは0.40g/cm3以上、さらに好ましくは0.42g/cm3以上であってよい。
【0058】
さらに、包装シート10の密度を0.42g/cm3以上、好ましくは0.55g/cm3以上、より好ましくは0.60g/cm3以上とすることで、製造の初期段階であるヒートシール剤を塗布する工程、すなわち、樹脂粒子の水分散体の状態であるヒートシール剤を包装シートに塗布する工程で、ヒートシール剤が包装シート10の反対側に浸み出しにくくすること(裏抜けを防止すること)ができる。ヒートシール剤の塗布時に、樹脂粒子の水分散体の状態のヒートシール剤が裏抜けしてしまうと、ヒートシール剤が製造装置の部材(搬送用コンベアの表面等)に付着して不都合が生じる可能性が高いが、上記密度により、そのような不都合も防止できる。
【0059】
さらに以下、図面を参照して、ヒートシール剤の浸み出しについてさらに説明する。
図5に、ヒートシール剤20が内面に設けられた包装シート10の模式図を示す。
図5は、
図1のII-II線に沿った包装シート10の断面図であり、包装シート10同士を離して表示した図である。
図5に示すように、ヒートシール剤20は、塗布直後では包装シート10の内面に付着している状態であるが、ヒートシール時に熱及び圧力が加わると、塗布されたヒートシール剤20、すなわちヒートシール剤の樹脂粒子は軟化又は溶融して、包装シート10中へ、具体的には紙製包装シート10に含まれる繊維間に侵入し、ヒートシール剤20が塗布された面の反対側の面(外面)へと浸み出ることができる。
【0060】
図5に示すように包装シート10が内三つ折りされている場合、第1領域R1と第3領域R3とが対向している場所、及び第2領域R2と第3領域R3とが対向する場所では、包装シート10の内面に塗布されたヒートシール剤20同士が対向するので、十分なシール強度が得られる。一方、第1領域R1と第2領域R2が対向する場所では、ヒートシール剤20が一方の包装シート10に塗布されているだけなので、シール強度はやや弱い。このため、例えば、開封時に第1領域R1を一端11から剥がしていった場合、3枚重ねゾーンZbと2枚重ねゾーンZa1とでは剥がしに要する力が異なり、開封時に違和感が生じたり、或いは3枚重ねゾーンZbにおける第1領域R1が開封前に意図せず剥がれてしまったりすることがあった。これに対し、本形態では、包装シートを目止め剤非塗工シートとするか、又は包装シートが目止め剤塗工シートであっても目止め剤の塗工目付が、ヒートシール剤が設けられた後の包装シートの総坪量に対して所定値以下とすることにより、又は所定密度の包装シートを使用することにより、ヒートシール剤20を包装シート10に浸みこませ、さらには外面に浸み出させることが可能である。ヒートシール剤20を特に第2領域R2の内面から外面に浸み出させることで、第1領域R1と第2領域R2が対向する場所でも、ヒートシール剤20同士が対向することができ、包装シート同士のシール強度が高まる。これにより、開封時に第1領域R1を一端11から剥がしていった場合、3枚重ねゾーンZbと2枚重ねゾーンZa1とで剥がしに要する力の差が小さくなり、違和感を抑制でき、また3枚重ねゾーンZbにおける第1領域R1が意図せず開封してしまうことも防止できる。
【0061】
また、
図6に、ヒートシール剤20が外面に設けられた包装シート10の模式図を示す。
図6も、
図1のII-II線に沿った包装シート10の断面図であって、包装シート10同士を離して表示した図である。なお、ヒートシール剤20が包装シート10の外面に塗布される場合、塗布された水分散体の溶媒(水)が揮発して、ヒートシール剤樹脂粒子が包装シート10上に定着した後に、包装シート10を折り畳むことが好ましい。
【0062】
図6に示すように、ヒートシール剤20は、塗布直後では包装シート10の外面に付着している状態であるが、ヒートシール時に熱及び圧力が加わると、塗布されたヒートシール剤20、すなわちヒートシール剤の樹脂粒子は軟化又は溶融して、包装シート10中へ、具体的には紙製包装シート10に含まれる繊維間に侵入し、ヒートシール剤20が塗布された面の反対側の面(内面)へと浸み出ることができる。
【0063】
図6に示す例では、第1領域R1と第2領域R2とが対向する場所ではヒートシール剤20は片面にのみ設けられていて、それ以外の場所では、包装シート10間にヒートシール剤20が存在していない。このような場合であっても、本形態では、包装シートを目止め剤非塗工シートとするか、又は包装シートが目止め剤塗工シートであっても目止め剤の塗工目付が、ヒートシール剤が設けられた後の包装シートの総坪量に対して所定値以下とすることにより、又は所定密度の包装シートを使用することにより、ヒートシール剤20を包装シート10に浸みこませ、さらに内面にも浸み出させることができるので、縦方向D1にわたってヒートシールによるシールが可能となる。さらに、第1領域R1と第2領域R2とが対向する場所と、第1領域R1と第3領域R3とが対向する場所とで、シール強度の差も小さくできる。よって、開封時に第1領域R1を一端11から剥がしていった場合、3枚重ねゾーンZbと2枚重ねゾーンZa1とで剥がしに要する力の差が小さくなり、違和感を抑制できると共に、3枚重ねゾーンZbにおける第1領域R1が意図せず開封してしまうことも防止できる。
【0064】
このように、ヒートシール剤の浸み出しを生じさせている本形態では、ヒートシール剤が塗布された面(塗布面)同士を対向させヒートシールして得られた接合(例えば
図5の例で、第1領域R1と第3領域R3との接合、又は第2領域R2と第3領域R3との接合)のシール強度Saaと、ヒートシール剤が塗布された面(塗布面)と、ヒートシール剤が塗布されていない面(非塗布面)とを対向させてヒートシールして得られた接合(例えば
図5の例で、第1領域R1と第2領域R2との接合)のシール強度Sanとの差を小さくすることができる。ここで、Saaを100%とした時のSaaとSanとの差は、すなわち(Saa-San)/Saa×100は、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下であってよい。
【0065】
なお、包装シート10にヒートシール剤が設けられる領域は、特に限定されないが、個装吸収性物品100における少なくともシール部15に含まれる領域であってよい。ヒートシール剤は包装シート10の内面及び外面のいずれに設けてもよい。
図2には、ヒートシール剤20が包装シート10の内面に設けられている例を示す。
図2に示す例では、ヒートシール剤20は、上記シール部形成予定領域14、14が含まれる、包装シート10の横方向D2の両縁部領域18、18に帯状に設けられている。但し、ヒートシール剤20は、包装シート10のシール部15、15の形成予定領域(シール部形成予定領域、
図2では点線で輪郭を表記)14、14に設け、それ以外の領域に設けないようにしてもよい。これにより、ヒートシールにより圧着される領域に最小限、ヒートシール剤20を塗布することになるので、ヒートシール剤20の使用量を節約できる。
【0066】
ヒートシール剤20の塗布手段としては、例えば、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、スプレーガン、ディスペンサー、ロールコーターによる塗布が挙げられる。このうち、安定した塗布量、及び塗布パターンが得られること、安価な水性インクを利用できること等から、フレキソ印刷が好ましい。ヒートシール剤は、ベタ塗布であってもよいし、所定のパターン、例えば網点状のパターンで塗布されてもよい。
【実施例0067】
[実験例1]
例1-1~例1-7の紙製包装シート(MD方向長さ100mm×CD方向長さ100mm、目止め剤塗工なし)を準備し、坪量及び厚み等を測定した。さらに、紙製の包装シートにヒートシール剤を塗布して、塗布時のヒートシール剤の裏抜け、及びシール時のシール性を評価した。用いた包装シートは以下の通りであった。
例1-1:雲竜紙(丸菱ペーパーテック株式会社製)、表記坪量14g/m2
例1-2:雲竜紙(丸菱ペーパーテック株式会社製)、表記坪量17g/m2
例1-3:雲竜紙(丸菱ペーパーテック株式会社製)、表記坪量30g/m2
例1-4:FSレーヨン紙PM(丸菱ペーパーテック株式会社製)、表記坪量17g/m2
例1-5:FSレーヨン紙PM(丸菱ペーパーテック株式会社製)、表記坪量30g/m2
例1-6:金鯱紙(大王製紙株式会社製)、表記坪量24.4g/m2
例1-7:金鯱紙(大王製紙株式会社製)、表記坪量35g/m2
【0068】
=塗布時の裏抜け評価=
各例の紙製包装シートの片面の全面に、ヒートシール剤(三井化学株式会社製「ケミパール(登録商標)S500」)を、フレキソ印刷機によって1.8g/m2の目付でベタ塗布した。塗布時のフレキソ印刷機のセンタードラムへの包装シートの巻き付き状況を目視で観察し、塗布時のヒートシール剤の裏抜けを評価した。評価の基準は以下の通りとした。
〇:裏抜けは確認できなかった(巻き付きなく操業できた)。
△:裏抜けがやや認められた(やや巻き付きがあり操業性が悪かった)。
×:明らかな裏抜けが認められた(巻き付きがあり操業できなかった)。
【0069】
=ヒートシール後の浸み込み評価=
上記のようにヒートシール剤が塗布された紙製包装シートを、ヒートシール剤が塗布された側に長手方向に、
図1に示すような内三つ折りに折り畳み、ヒートシール剤が塗布されている部分に相当する短手方向の縁部を、一対のロール間に挿通させることによってヒートシールし、幅6mmのシール部を形成した。一対のロールは、一方が表面に圧着部形成用凸部を備えたロールであり、他方が表面に凹凸のない平坦なロールであるものであり、一対のロールは、その軸線方向が、包装シートの長手方向に沿うように配置した。また、設定ロール圧は3.0MPa、ロール温度は105℃、ヒートシール速度は1.2m/秒であった。そして、形成されたシール部を目視で、包装シートの長手方向全体にわたって観察し、シール性を評価した。評価の基準は以下の通りとした。
〇:縦方向全体にわたってシールされていた。
×:シールされていない箇所が認められた。
【0070】
測定値、及び評価の結果を、表1に示す。
【0071】
【0072】
表1に示されているように、所定の密度(0.74g/cm3以下)を有する包装シート(例1-1、例1-2、例1-4及び例1-6)で、高いシール性が得られることが分かった。さらに、所定の密度(0.42g/cm3以上)を有する包装シート(例1-2、例1-4、例1-6及び例1-7)で、ヒートシール剤塗布時の裏抜けを防止できることも分かった。
【0073】
[実験例2]
紙製包装シート(FSレーヨン紙PM、MD方向長さ95mm×CD方向長さ35mm、目止め剤塗工なし)の片面の全面に、ヒートシール剤(三井化学株式会社製「ケミパール(登録商標)S500」)を、フレキソ印刷によって2.7g/m2の目付でベタ塗布した。。上記包装シート2枚を、ヒートシール剤塗布面同士を向かい合わせて重ね、例2-1とした。また、上記包装シート2枚を、塗布面と非塗布面とを向かい合わせて重ね、例2-2とした。各例のサンプルを、表面に圧着部形成用凸部を備えた金属板と、表面に凹凸のない平坦な金属板との間で挟み、エアー式プレス機で加圧してヒートシールした。ヒートシールの条件は、設定エアー0.8MPa、プレス温度115℃、ヒートシール時間100秒であった。各例のシール強度を測定し、評価した。
【0074】
=シール強度の評価=
各例のサンプルのシール部の端を10mm剥がして一方の包装シートをめくり、2枚の包装シートの各端部を、引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン試験機「RTC1210」)のチャックにそれぞれ取り付け、互いに反対方向に引っ張って荷重(N)を測定した。測定は、チャック間隔10mm、引張速度100mm/分で行った。測定における最大荷重を各例のシール強度(剥離強度)(N)とした。また、例2-1(塗布面同士の接合)のシール強度と、例2-2(塗布面と被塗布面との接合)のシール強度との差を評価するために、シール強度の差の割合を以下の式より求めた:
シール強度差の割合(%)
={(例2-1のシール強度)-(例2-2のシール強度)}/(例2-1のシール強度)×100
【0075】
結果を表2に示す。
【0076】
【0077】
表2より、塗布面同士の接合の強度(例2-1)と、塗布面と非塗布面との接合の強度(例2-2)との差がわずかになっていることが分かった。これは、ヒートシール剤が片面のみに塗布されていても、ヒートシール剤が、ヒートシール時の加熱及び加圧により包装シートの当該ヒートシール剤の塗布面とは反対側の面にも十分浸み出したためと考えられる。
【0078】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、様々な変更、修正、置換、付加、削除、及び組合せ等が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。また、上述した構成要素は任意に組合せが可能である。