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特開2024-143328包装シート、これに吸収性物品が個装されてなる個装吸収性物品、及び包装シートの製造方法
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  • 特開-包装シート、これに吸収性物品が個装されてなる個装吸収性物品、及び包装シートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143328
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】包装シート、これに吸収性物品が個装されてなる個装吸収性物品、及び包装シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61F13/15 220
A61F13/15 355A
A61F13/15 358
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055944
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊東 莉菜
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA08
3B200BA16
3B200BA20
3B200BB02
3B200BB20
3B200DA25
3B200DF09
3B200EA18
3B200EA23
(57)【要約】
【課題】表面に印刷が施される場合に破れてしまうことを回避する。
【解決手段】繊維方向に搬送されながら表面に印刷が施され、吸収性物品を個装する紙製の包装シートであって、前記包装シートは、前記繊維方向の引っ張り強度が16N以上25N以下であり、前記包装シートの印刷が施される前における前記所定方向の引っ張り強度をX(N)、前記印刷のためのインクと、前記包装シートどうしを接着するためのヒートシール剤との少なくとも一方が塗布される面積の前記包装シート全体の面積に対する割合をY(%)とした場合、8.45≦X×(1-Y/100)を満たす。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維方向に搬送されながら表面に印刷が施され、吸収性物品を個装する紙製の包装シートであって、
前記包装シートは、前記繊維方向の引っ張り強度が16N以上25N以下であり、
前記包装シートの印刷が施される前における前記繊維方向の引っ張り強度をX(N)、前記印刷のためのインクと、前記包装シートどうしを接着するためのヒートシール剤との少なくとも一方が塗布される面積の前記包装シート全体の面積に対する割合をY(%)とした場合、
8.45≦X×(1-Y/100)
を満たす、包装シート。
【請求項2】
前記印刷が施される面のMMDが、0.050以下である、請求項1に記載の包装シート。
【請求項3】
紙目付が30gsm以下である、請求項1または請求項2に記載の包装シート。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の包装シートに前記吸収性物品が個装されてなる個装吸収性物品であって、
前記包装シートは、折り畳まれて縁部がシールされることで前記吸収性物品を個装し、
前記縁部におけるシール強度が前記引っ張り強度よりも小さい、個装吸収性物品。
【請求項5】
吸収性物品を個装する包装シートの製造方法であって、
包装シートを繊維方向に搬送しながら当該包装シートの表面に印刷を施す印刷工程と、
前記包装シートを繊維方向に搬送しながら当該包装シートの表面にヒートシール剤を塗布する塗布工程と、の少なくとも一方を有し、
前記包装シートは、前記繊維方向の引っ張り強度が16N以上25N以下であり、
前記包装シートの印刷が施される前における前記繊維方向の引っ張り強度をX(N)、前記印刷のためのインクと前記ヒートシール剤との少なくとも一方が塗布される面積の前記包装シート全体の面積に対する割合をY(%)とした場合、
8.45≦X×(1-Y/100)
を満たす、包装シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装シート、これに吸収性物品が個装されてなる個装吸収性物品、及び包装シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の多くの吸収性物品は、保管時の衛生、持ち運びの際の利便性等の理由から、包装シートによって個別に包装されて封止された状態で個装吸収性物品(個別包装体)として提供されている。
【0003】
このような個装吸収性物品は、吸収性物品が包装シートに収容された状態で持ち運ばれる。そのため、包装シートの表面に印刷を施し、一見して吸収性物品とは思われないようにすることが好ましい場合もある。
【0004】
特許文献1には、吸収性物品と、吸収性物品を包装する包装材とを有して構成され、外側から視認可能な図柄を有する吸収性物品包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/095764号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、環境問題の観点から、従来の不織布やプラスチックフィルムではなく、包装シートを紙素材から構成することが進められている。包装シートを紙素材から構成する場合、印刷中等において、包装シートが破れてしまう、いわゆる断紙を回避する必要がある。
【0007】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、表面に印刷が施される場合に破れてしまうことを回避できる包装シート、これに吸収性物品が個装されてなる個装吸収性物品、及び包装シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、
繊維方向に搬送されながら表面に印刷が施され、吸収性物品を個装する紙製の包装シートであって、
前記包装シートは、前記繊維方向の引っ張り強度が16N以上25N以下であり、
前記包装シートの印刷が施される前における前記繊維方向の引っ張り強度をX(N)、前記印刷のためのインクと、前記包装シートどうしを接着するためのヒートシール剤との少なくとも一方が塗布される面積の前記包装シート全体の面積に対する割合をY(%)とした場合、
8.45≦X×(1-Y/100)
を満たす。
【0009】
上記のように構成された本発明においては、包装シートの搬送方向の引っ張り強度が16N以上25N以下であり、包装シートの印刷が施される前における引っ張り強度と、印刷のためのインクとヒートシール剤との少なくとも一方が塗布される面積の包装シート全体の面積に対する割合とを上記条件を満たすようにすることで、表面に印刷が施される場合に破れてしまうことが回避される。
【0010】
また、印刷が施される面のMMD(平均摩擦係数の変動)が、0.050以下である構成としてもよい。
【0011】
このように構成されたものにおいては、表面への印刷が均一にされ、見栄えが向上する。
【0012】
また、紙目付が30gsm以下である構成としてもよい。
【0013】
このように構成されたものにおいては、紙目付が高いことで資材コストが上昇してしまったり、また、紙のコシが強くなることで、操業性が悪くなるとともに、開封時に音がうるさいといった不具合が生じてしまったりすることが回避される。
【0014】
また、上記包装シートに吸収性物品が個装されてなる個装吸収性物品であって、
包装シートは、折り畳まれて縁部がシールされることで吸収性物品を個装し、
縁部におけるシール強度が包装シートの引っ張り強度よりも小さい構成としてもよい。
【0015】
このように構成されたものにおいては、吸収性物品を取り出すためにシールされた部分を剥離する際、包装シートが破れにくくなる。
【0016】
また、吸収性物品を個装する包装シートの製造方法であって、
包装シートを繊維方向に搬送しながら当該包装シートの表面に印刷を施す印刷工程と、
前記包装シートを繊維方向に搬送しながら当該包装シートの表面にヒートシール剤を塗布する塗布工程と、の少なくとも一方を有し、
前記包装シートは、前記繊維方向の引っ張り強度が16N以上25N以下であり、
前記包装シートの印刷が施される前における前記繊維方向の引っ張り強度をX(N)、前記印刷のためのインクと前記ヒートシール剤との少なくとも一方が塗布される面積の前記包装シート全体の面積に対する割合をY(%)とした場合、
8.45≦X×(1-Y/100)
を満たす構成としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表面に印刷が施される場合に破れてしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の個装吸収性物品の実施の一形態を示す平面図である。
図2図1に示した個装吸収性物品を展開した状態の平面図である。
図3図1に示したI-I断面図である。
図4図1に示したII部の拡大図である。
図5図1図3に示した包装シートへの印刷方法を説明するための図である。
図6図1図3に示した包装シートの印刷面の詳細な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一のまたは対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0020】
〈個装吸収性物品の全体の構成〉
図1は、本発明の個装吸収性物品の実施の一形態を示す平面図である。図2は、図1に示した個装吸収性物品100を展開した状態の平面図であり、包装シート10の内面から若しくは吸収性物品1肌側から見た図である。また、図3は、図1に示したI-I断面図である。
【0021】
本実施形態は図1図3に示すように、包装シート10と、包装シート10によって個装された吸収性物品1とを含む個装吸収性物品100である。図2に示すように、包装シート10は、例えば展開した状態で細長形状であって、長手方向(縦方向)D1と、当該長手方向に直交する短手方向(横方向)D2とを有する。また、包装シート10の長手方向D1及び短手方向D2は、それぞれ吸収性物品1の長手方向及び短手方向にも対応する。
【0022】
〈吸収性物品〉
包装シート10により包装される吸収性物品1は、体液(経血、おりもの、尿等)の排出口に対向させるように装着するための形状を有し、例えば、扁平で細長形状の物品である。吸収性物品1の具体例としては、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、軽失禁用パッド等が挙げられる。本明細書では主に、吸収性物品が生理用ナプキンである例に基づき説明する。
【0023】
吸収性物品1は、例えば図2に示すように、液透過性のトップシート3と、液不透過性のバックシート(不図示)と、これらのトップシート3とバックシートとの間に配置された吸収体4とを有している。
【0024】
バックシートとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、透湿性を有するものが用いられてもよい。
【0025】
トップシート3としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。パルプとしては、広葉樹材から得られる広葉樹パルプ、針葉樹材から得られる針葉樹パルプ、またはその混合パルプであってよい。また、パルプは、使用済みのパルプから再生されたリサイクルパルプであってもよい。
【0027】
吸収体4の厚みは、0.5~25mmであってもよい。吸収体4は、体液排出口に対応させる領域(体液排出口対応領域)や、体液排出口対応領域より後方の、臀部の溝に対向する領域を、膨出させた構造とすることもできる。吸収体4は、トップシート3及びバックシートからはみ出さない寸法及び形状を有し、吸収体の前方及び後方の端縁部では、バックシートとトップシート3との外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。
【0028】
図2に示すように、吸収体4の側方の外方において、短手方向D2両端部のそれぞれに長手方向D1に沿ってサイドシート7を設けることもできる。サイドシート7としては、撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。
【0029】
なお、図1図3に示す例では、吸収性物品1は、ウィングのない、いわゆる羽なしのタイプのものであるが、側方にそれぞれ延出するウィングを有する羽つきの物品として構成してもよい。ウィングは、サイドシートとバックシートとの接合により形成されていてよい。
【0030】
また、吸収性物品1のバックシートの側(非肌側、すなわち装着時に下着に対向させる側)には、吸収性物品1を下着に取り付けた際に下着からズレないようにするためのズレ止め用粘着部を設けることもできる。ズレ止め用粘着部は、例えば、長手方向D1または短手方向D2に延在する複数の帯状に形成されている。
【0031】
吸収性物品1の全長は、140~430mmとすることができ、吸収性物品1の幅(ウィングを有する場合にはウィングを除いた本体の幅)は40~130mmとすることができる。
【0032】
〈包装シート〉
本実施形態における包装シート10は紙である。紙製の包装シート10を利用することで、プラスチック削減に貢献でき、持続可能な開発目標の達成に寄与することができる。また、紙は、独特の風合い、例えば天然素材の優しい印象の見た目及び手触りを付与できる。
【0033】
包装シート10は、50%以上がパルプ繊維で構成されており、吸収性物品1を個装した状態にて表出する表出面にデザイン印刷が施されている。包装シート10の詳細な条件については後述する。
【0034】
包装シート10の寸法は、包装する吸収性物品1の大きさや形状に応じて、例えば、包装シート10を完全に広げた状態(折り返しされていない状態)で、長手方向D1の長さ(単に長さと呼ぶ場合がある)は100~450mmとすることができ、短手方向D2の長さ(単に幅と呼ぶ場合がある)は70~250mmとすることができる。図示の例では、包装シート10は、展開した状態で長方形の形状を有するが、例えば長楕円形等の形状を有していてもよい。
【0035】
〈個装吸収性物品の包装構造〉
図1図3に示すように、吸収性物品1は、包装シート10と共に折り畳まれることによって包装されて、個装吸収性物品100が形成されている。折り畳みの際には、図2に示すように、まず、包装シート10の内面に吸収性物品1を、吸収性物品1のバックシート側が対向するように載置された状態とする。そして、包装シート10と吸収性物品1とが共に、幅方向D2に沿った第1折り線F1及び第2折り線F2にて長手方向D1に共に折り畳まれる。より具体的には、第1折り線F1にて、包装シート10の長手方向D1の一端11を含む第1領域R1が長手方向D1に折り返され、第2折り線F2にて、包装シート10の長手方向D1の他端12を含む第2領域R2が折り返される。包装シート10の第1領域R1と第2領域R2との間の領域は、第3領域R3である。図示の例では、包装シート10は、第2領域R2が先に折り畳まれ、第1領域R1が第2領域R2の外面に重なるように折り畳まれているが(図1及び図2)、第1領域R1及び第2領域R2の折り順は逆であってもよい。このように、包装シート10を吸収性物品1と共に巻三つ折り(内三つ折り)にして吸収性物品1を包んだ後に、短手方向D2の両縁部が、長手方向D1に沿ってそれぞれシールされ、シール部15が形成される。
【0036】
このような三つ折り以上の包装形式は、比較的簡便に形成でき、吸収性物品1を衛生的に包むことができるし、また吸収性物品1の取出しも容易である。なお、折り畳みの形式は三つ折りに限られず、四つ折り以上としてもよいし、二つ折りにすることもできる。
【0037】
〈シール部〉
図1に示すように、個装吸収性物品100においては、短手方向D2の両縁の、吸収性物品1が存在しない領域がそれぞれシールされ、シール部15が形成されている。本形態においては、このシール部15は、包装シート10のシールされる面にヒートシール剤が塗布された後、加熱された一対のロールに挿通させることで、包装シート10どうしを厚み方向に圧着することで形成されている。
【0038】
図1に示すように、シール部15は、例えば、個装吸収性物品100の長手方向D1の全長にわたって形成されている。これにより、ごみや塵、或いは誤って指または小さな物体が短手方向の端縁から侵入することを防止できる(封止性が得られる)という観点で好ましい。
【0039】
シール部15が設けられている短手方向D2の範囲は、例えば、短手方向D2の端縁から20mmまでの範囲である。シール部15は、上記範囲全体に形成されていてもよいし、上記範囲内の一部分に、例えば短手方向D2の端縁から離れた位置に形成されていてもよい。シール部15自体の短手方向D2の長さ(幅)は、3~15mmであることが好ましい。
【0040】
図4は、図1に示したII部の拡大図であり、シール部15を含む部分を示す。
【0041】
図4に示すように、シール部15は、例えば、平面視で互いに離隔した複数の圧着部(若しくは接合部)15aを含んでいる。各圧着部15aは、包装シート10どうしが厚み方向に、圧着により接合されてなる部分である。図示の例では、複数の圧着部15a以外の部分は、包装シート10どうしが接合されていない非接合部となっている。このように、複数の圧着部15aが互いに離隔して点在していることで、例えばシール部15の全面に亘って連続して包装シート10どうしが接合されている場合等に比べて、開封時の包装シートどうしを容易に剥離することができて開封性を向上させることができる。また、個装吸収性物品100の両縁部が過度に硬くなり手触りを損ねることも防止できる。
【0042】
なお、圧着部15aのそれぞれの平面視形状は、図4に示す例では正方形であるが、図示の形状に限らず、例えば、長方形、平行四辺形等の正方形以外の四角形、四角形以外の多角形、円形、楕円形、ハート形、星形、滴形等であってもよい。また、圧着部15aのそれぞれのサイズは、例えば、一辺が0.25~2.5mmの正方形、またはそれと同等の面積を有するサイズとすることができる。また、複数の圧着部15aの配置も、図4に示すような格子状であってもよいし、千鳥状になっていてもよい。
【0043】
(止着テープ)
図1図3に示すように、個装吸収性物品100には、第1領域R1の端縁(包装シート10の一端11)付近において短手方向D2中央に、止着テープ30が設けられていてもよい。そして、止着テープ30は、図1に示すように、包装シート10の一端11を跨ぐように、第1領域R1及び第2領域R2にわたって設けられていてもよい。止着テープ30は、平面視で、第1領域R1に貼着されている根元部31と、第2領域R2に貼着されている先端部32と有する。
【0044】
止着テープ30が設けられていることで、個装吸収性物品100の開封時には、使用者は止着テープ30(より具体的には止着テープ30の先端部32)を持って第1領域R1を持ち上げて引っ張ることができるので、開封がより容易となる。また、止着テープ30があることで、吸収性物品の交換時に、使用済みの吸収性物品を、新たに開封した個装吸収性物品から得られた包装シートで包んだ後、包装シートの端部を包装シートの他の場所に止着することができる。これ移により、包装シートが開いてしまって使用済み吸収性物品が露出すること等を防止でき、使用済みの吸収性物品を衛生的に廃棄することができる。
【0045】
止着テープ30の幅(短手方向D2長さ)は、好ましくは5~30mm、より好ましくは10~20mmであってよい。また、止着テープ30全体の長さは、好ましくは10~50mm、より好ましくは15~40mmであってもよい。
【0046】
<包装シート強度及びインクの塗布面積率>
上記のように構成された個装吸収性物品100を製造する場合は、まず、包装シート10に対して印刷が施される。
【0047】
図5は、図1図3に示した包装シート10への印刷方法を説明するための図である。
【0048】
図1に示した包装シート10を製造する場合は、図5に示すように、印刷工程において、複数の包装シート10が短手方向となる繊維方向(MD方向:マシンデレクション方向)に連接した状態でその表面に印刷が施される。その際、包装シート10は、短手方向を搬送方向Aとして搬送されながら印刷が施されるが、包装シート10の引っ張り強度が弱いと、印刷中等において、包装シートが破れてしまう、いわゆる断紙が生じてしまう。
【0049】
また、包装シート10は、印刷が施されると、印刷によるインクが包装シート10に浸透することで、繊維組織に緩みが生じ、繊維間結合が弱くなる。これによっても、引っ張り強度が弱くなり、断紙が生じてしまう。この現象は、印刷によるインクに限らず、印刷工程がある場合でもない場合でも、包装シート10どうしをシールするためのヒートシール剤を包装シート10に塗布する塗布工程において、ヒートシール剤が塗布されることによっても生じる。
【0050】
図6は、図1図3に示した包装シート10に対する印刷例を示す図であり、(a)は個装吸収性物品の平面図、(b)はドット印刷の場合におけるB部拡大図である。
【0051】
包装シート10に対して印刷を施す場合、図6(a)に示すように、印刷が施されることで着色される着色領域41と、印刷が施さなない非着色領域42とが存在する。ここで、グラビア印刷による、いわゆるベタ印刷の場合、着色領域41においては、着色領域41の全てにインクが塗布される。そのため、包装シート10全体に対するインクの塗布面積率は、
(着色領域41の面積)/(包装シート10全体の面積)
となる。
【0052】
一方、ドット印刷によって印刷を施す場合は、図6(b)に示すように、印刷が施されることによる着色領域41の中にも、インクが塗布される塗布領域41aと、インクが塗布されない非塗布領域41bとが存在することになる。そのため、包装シート10全体に対するインクの塗布面積率は、
(塗布領域41aの面積)/{(非着色領域42の面積)+(非塗布領域41bの面積)}となる。すなわち、ドット印刷においては、包装シート10全体に印刷を施しても、包装シート10全体に対するインクの塗布面積率を100%としないようにすることができる。
【0053】
そこで、包装シート10として用いられることが考えられる様々な紙について、引っ張り強度と、インクやヒートシール剤の包装シート10全体に対する塗布面積率とによる印刷操業適正について検証を行った。その際、本実施形態における包装シート10は、紙の繊維方向に搬送されながら印刷が施されるため、引っ張り強度は、包装シート10の繊維方向の引っ張り強度を測定した。なお、本検証では、テンシロンの引っ張り試験機にて常温下にて測定を行った。測定条件としては、包装シート10となる紙基材を繊維方向に120mm、繊維方向に直交する方向に25mmの個片にカットし、500mm/secの速度で繊維方向に引っ張りながら引っ張り強度を測定した。その際のチャック間距離は、50mmとした。
【0054】
【表1】
表1に示すように、実施例1として、目付が14gsmの雲竜紙(丸菱ペーパーテック株式会社製)において、包装シート10にヒートシール剤が塗布されておらず、包装シート10全体に対するインクの塗布面積率が20%のものを用いた。また、実施例2として、目付が14gsmの雲竜紙(丸菱ペーパーテック株式会社製)において、包装シート10にインクが塗布されておらず、包装シート10全体に対するヒートシール剤の塗布面積率が50%のものを用いた。また、実施例3として、目付が18gsmのクレープ紙(大王製紙株式会社製)において、包装シート10にインクが塗布されておらず、包装シート10全体に対するヒートシール剤の塗布面積率が100%のものを用いた。また、実施例4として、目付が18gsmのクレープ紙(大王製紙株式会社製)において、包装シート10にヒートシール剤が塗布されておらず、包装シート10全体に対するインクの塗布面積率が12%のものを用いた。また、実施例5として、目付が18gsmのクレープ紙(大王製紙株式会社製)において、包装シート10にヒートシール剤が塗布されておらず、包装シート10全体に対するインクの塗布面積率が35%のものを用いた。また、比較例1として、目付が17gsmの雲竜紙(丸菱ペーパーテック株式会社製)において、包装シート10全体に対するヒートシール剤の塗布面積率が100%であって、包装シート10全体に対するインクの塗布面積率が72%のものを用いた。また、比較例2としては、目付が14gsmのレーヨンPM(丸菱ペーパーテック株式会社製)において、包装シート10全体に対するヒートシール剤の塗布面積率が100%であって、包装シート10全体に対するインクの塗布面積率が72%のものを用いた。また、比較例3として、目付が25gsmの雲竜紙(丸菱ペーパーテック株式会社製)を用いた。また、比較例4として、目付が24.4gsmの金鯱紙(大王製紙株式会社製)において、包装シート10全体に対するヒートシール剤の塗布面積率が100%であって、包装シート10全体に対するインクの塗布面積率が72%のものを用いた。また、比較例5としては、目付が30gsmの金鯱紙(大王製紙株式会社製)において、包装シート10全体に対するヒートシール剤の塗布面積率が100%であって、包装シート10全体に対するインクの塗布面積率が72%のものを用いた。なお、レーヨンPMは、レーヨン15%、パルプ85%で構成された紙である。
【0055】
表1には、印刷操業適正として、断紙なく印刷可能であるものに"〇"、断紙してしまい印刷不可であるものに"×"を付している。また、使用感適正として、紙が硬くなることで、個装端が鋭くなったり、カサカサ音が出たりする等の使用感に不具合が生じないかどうかを判断した。そして、使用感に問題がないものに"〇"、個装も硬く、使用時の音も出るものに"×"硬さ、もしくは音のどちらか一方のみに不具合があるものに"△を付している。
【0056】
すると、比較例3と比較例5においては、個装端が鋭くなったり、使用時のカサカサ音が大きくなったりした。これにより、引っ張り強度が54Nを超えるものについては、個装端が鋭くなったり、使用時のカサカサ音が大きくなったりすることがわかった。また、実施例3~5に用いた引っ張り強度が17.7Nの紙において、印刷時に断紙が発生した場合があった。一方、引っ張り強度が25.7Nの紙を用いた比較例1においては断紙が発生しなかった。これにより、引っ張り強度が25N以下のものについては、印刷時に断紙が発生してしまう可能性があることがわかった。
【0057】
そこで、引っ張り強度が25N以下のものについて、インクやヒートシール剤の包装シート10全体に対する塗布面積率を確認してみる。すると、引っ張り強度が17.7Nの紙について、ヒートシール剤の包装シート10全体に対する塗布面積率を100%とした実施例3において、印刷時に断紙が発生した。一方、引っ張り強度が17.7Nの紙について、インクの包装シート10全体に対する塗布面積率を35%とした実施例5においては、印刷時に断紙が発生しなかった。
【0058】
また、引っ張り強度が16.9Nの紙について、インクの包装シート10全体に対するヒートシールの塗布面積率を50%とした実施例2においては、印刷時に断紙が発生しなかった。
【0059】
ここで、紙の強度に対して、印刷操業を可能とするインクの塗布面積率は比例的に大きくなる。すなわち、紙の引っ張り強度が大きくなるほど、印刷操業が可能となるインクの塗布面積率を大きくすることができる。そのため、印刷操業を可能とするためのしきい値となる
(引っ張り強度)×(1-インク(ヒートシール剤)の塗布面積率)
は、一定の値となる。
【0060】
そこで、上記結果から、今回検証した中で引っ張り強度が最も弱い実施例2に用いた紙について、印刷操業適正が"〇"であったヒートシールの塗布面積率の50%を上記式に代入するとともに、引っ張り強度として16.9Nを代入することで、
16.9×(1-0.50)=8.45
という値が導き出される。そして、この値を下限とすれば、印刷時に断紙が発生しないことになる。
【0061】
これにより、引っ張り強度をX(N)、インクとヒートシール剤との少なくとも一方が塗布される面積の包装シート全体の面積に対する割合をY(%)とした場合、
8.45≦X×(1-Y/100)
を満たすものおいては、印刷時に断紙が発生しないことがわかった。なお、この代数X,Yに、印刷操業適正が"〇"であったいずれのケースを代入しても、上記式は成立する。
【0062】
なお、雲竜紙、レーヨンPM、金鯱については、ヒートシール剤の塗布面積率が100%であっても印刷操業適正を有するため、引っ張り強度が25Nを超える紙においては、塗布面積に関する制約は不要となる。また、引っ張り強度が16N未満のものは、インクやヒートシール剤の塗布面積率にかかわらずに印刷操業適正が乏しく、また、開封時の個装破れにもつながりやすいと考えられる。
【0063】
この結果から、包装シート10として、印刷時の搬送方向の引っ張り強度が16N以上25N以下であり、包装シート10の印刷が施される前における引っ張り強度をX(N)、印刷のためのインクと、包装シートどうしを接着するためのヒートシール剤との少なくとも一方が塗布される面積の包装シート10全体の面積に対する割合をY(%)とした場合、
8.45≦X×(1-Y/100)
を満たすものを用いれば、表面に印刷が施される場合に破れてしまうことを回避できる。またそれとともに、個装端が鋭くなったり、使用時のカサカサ音が大きくなったりすることを回避できる。
【0064】
これにより、操業性や使用感を担保しつつ、包装シート10として、薄い紙を使用して印刷を施すことができ、デザイン性の高い紙製の包装シート10を用いた個装吸収性物品100を提供することができる。
【0065】
またこの際、包装シート10の表面がざらついていると、印刷が均一にされず、見栄えが悪くなる。そこで、紙表面の滑らかさを示す指標となるMMD(平均摩擦係数の変動)を測定し、印刷適正が高いかどうかについて実験を行った。その結果、印刷が施される前における表面のMMDが0.050以下の紙が印刷適正を有し、この紙を使用することで、包装シート10の表面に印刷を施してデザイン性を向上させることができることがわかった。
【0066】
また、紙目付が高いと、資材コストが上昇してしまう。また、紙のコシが強くなり、それにより、操業性が悪くなるとともに、開封時に音がうるさいといった不具合が生じてしまう。そのため、紙目付は、30gsm以下であることが好ましい。
【0067】
<シール部強度>
上述したように、個装吸収性物品100においては、包装シート10を吸収性物品1と共に巻三つ折り(内三つ折り)にして吸収性物品1を包んだ後に、短手方向D2の両縁部が、長手方向D1に沿ってそれぞれシールされ、シール部15が形成される。そして、シール部15において接合された包装シート10どうしが剥離されることで、個装吸収性物品100が開封され、吸収性物品1が取り出される。
【0068】
ここで、シール部15におけるシール強度が大きいと、吸収性物品1を取り出すためにシール部15にて包装シート10どうしを剥離する際、包装シート10が破れてしまう虞がある。
【0069】
そこで、包装シート10どうしを剥離した際に包装シート10が破れなかった構成について、シール部分の引っ張り強度とシール強度との関係について検証を行った。なお、本検証では、テンシロンの引っ張り試験機にて常温下にて測定を行った。測定条件としては、包装シート10を、包装シート10の長手方向にシール部15(シール幅6mm)を含む25mm幅にカットし、カットしたサンプルのシール部を包装シート10の長手方向に引っ張ることで引っ張り強度を測定した。その際の引っ張り速度は、100mm/sec、チャック間距離は、10mmとした。そして、最大点荷重(N/測定幅)をシール部15の強度とした。
【0070】
【表2】
表2に示すように、実施例1として、目付が18gsmのクレープ紙(大王製紙株式会社製)を用いた。また、比較例1として、目付が17gsmの雲竜紙(丸菱ペーパーテック株式会社製)を用いた。また、比較例2としては、目付が14gsmのレーヨンPM(丸菱ペーパーテック株式会社製)を用いた。これらにおいて検証を行った結果、実施例1の紙と比較例1,2の紙のいずれにおいても、シール部15におけるシール強度が包装シート10の引っ張り強度よりも小さかった。
【0071】
これにより、シール部15におけるシール強度が包装シート10の引っ張り強度よりも小さければ、吸収性物品1を取り出すためにシール部15にて包装シート10どうしを剥離する際、包装シート10が破れにくくなることがわかった。
【0072】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、様々な変更、修正、置換、付加、削除、及び組合せ等が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。また、上述した構成要素は任意に組合せが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 吸収性物品
3 トップシート
4 吸収体
7 サイドシート
10 包装シート
11 長手方向の一端
12 長手方向の他端
15 シール部
15a 圧着部
30 止着テープ
31 根元部
32 先端部
41 着色領域
41a 塗布領域
41b 非塗布領域
42 非着色領域
100 個装吸収性物品
D1 包装シートの長手方向
D2 包装シートの短手方向
F1 第1折り線
F2 第2折り線
R1 第1領域
R2 第2領域
R3 第3領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6