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特開2024-143330個装吸収性物品及びこれがパッケージに収容されてなるパッケージ製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143330
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】個装吸収性物品及びこれがパッケージに収容されてなるパッケージ製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20241003BHJP
   B65D 85/07 20170101ALI20241003BHJP
【FI】
A61F13/15 220
A61F13/15 210
B65D85/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055946
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 陽花
【テーマコード(参考)】
3B200
3E068
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BB02
3B200CA11
3B200DA25
3B200DF08
3B200DF09
3B200EA27
3E068AA40
3E068AB02
3E068AB03
3E068AC07
3E068BB01
3E068CC26
3E068CE02
3E068DD27
3E068DD34
3E068DE14
3E068DE19
3E068EE10
3E068EE13
3E068EE17
3E068EE22
3E068EE32
3E068EE37
(57)【要約】
【課題】複数個重ね合わせてパッケージに収容される場合でも印刷適正と生産効率の低下の回避とを両立させる。
【解決手段】吸収性物品が紙製の包装シートにより個装されてなる個装吸収性物品であって、前記包装シートは、吸収性物品を個装した場合に表出する表出面に印刷が施され、前記表出面は、印刷が施される前におけるMMDが0.050以下であり、かつ、印刷が施された後における複数の個装吸収性物品の当該表出面どうしの静摩擦係数が0.60以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品が紙製の包装シートにより個装されてなる個装吸収性物品であって、
前記包装シートは、吸収性物品を個装した場合に表出する表出面に印刷が施され、
前記表出面は、印刷が施される前におけるMMDが0.050以下であり、かつ、印刷が施された後における複数の個装吸収性物品の当該表出面どうしの静摩擦係数が0.60以上である、個装吸収性物品。
【請求項2】
前記包装シートは、再生繊維の配合割合が20%以上である、請求項1に記載の個装吸収性物品。
【請求項3】
前記包装シートは、繊維束を含む、請求項1に記載の個装吸収性物品。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の個装吸収性物品がパッケージに収容されてなるパッケージ製品の製造方法であって、
前記包装シートに対して印刷を施す工程と、
前記包装シート上に前記吸収性物品を載置し、印刷が施された面が表出するように前記包装シートを折り畳んで前記吸収性物品を包みこんで前記個装吸収性物品を製造する工程と、
前記個装吸収性物品を複数重ね合わせてパッケージに収容する工程と、を有する、パッケージ製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個装吸収性物品及びこれがパッケージに収容されてなるパッケージ製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品は、パッケージに収容された状態で提供される。
【0003】
特許文献1には、吸収性物品を収容したパッケージの表面に、最外層に凹凸を有するマット層を備えることで表面の摩擦力を高め、陳列時に荷崩れを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-196541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品は、保管時の衛生確保、持ち運びの際の利便性向上等の理由から、包装シートによって個別に包装された個装吸収性物品としてパッケージに収容される。包装シートは、吸収性物品を個別に包装するものであるため、パッケージと比較して使用後に生じるごみの量が多い。そのため、近年、環境問題の観点から、従来の不織布やプラスチックフィルムではなく、包装シートを紙素材から構成することが進められている。
【0006】
ところで、上述したような個装吸収性物品は、吸収性物品が包装シートに収容された状態で持ち運ばれる。そのため、包装シートの表面に印刷を施し、一見して吸収性物品とは思われないようにすることが好ましい場合もある。包装シートに印刷を施すことでデザイン性を高めるためには、包装シートとして表面の平滑性が高く印刷適正が高い紙を使用することが考えられる。
【0007】
一方、個装吸収性物品は、複数個が重ね合わされた状態でパッケージに収容される。そのため、包装シートとして表面の平滑性が高い紙を使用した場合、個装吸収性物品を複数個重ね合わせてパッケージに収容する際に個装吸収性物品どうしが滑りやすくなり、生産効率が低下してしまう虞がある。また、表面の平滑性が高い紙は、いわゆるコピー用紙のような外見、手触りとなり、チープな印象を与えてしまう。
【0008】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、複数個重ね合わせてパッケージに収容される場合でも印刷適正と生産効率の低下の回避とを両立させることができる個装吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、
吸収性物品が紙製の包装シートにより個装されてなる個装吸収性物品であって、
前記包装シートは、吸収性物品を個装した場合に表出する表出面に印刷が施され、
前記表出面は、印刷が施される前におけるMMD(平均摩擦係数の変動)が0.050以下であり、かつ、印刷が施された後における複数の個装吸収性物品の当該表出面どうしの静摩擦係数が0.60以上である。
【0010】
上記のように構成された本発明においては、吸収性物品を個装した場合に表出する表出面について印刷が施される前におけるMMDが0.050以下であることで、印刷適正を有するものとなる。また、印刷が施された後における複数の個装吸収性物品の表出面どうしの静摩擦係数が0.60以上であることで、複数個重ね合わせてパッケージに収容される際に個装吸収性物品どうしが滑りにくくなり、生産効率の低下が回避される。また、印刷が施された後における複数の個装吸収性物品の表出面どうしの静摩擦係数が0.60以上であることで、外見や手触りにてチープな印象を与えにくくなる。
【0011】
また、包装シートについて再生繊維の配合割合が20%以上である構成としてもよい。
【0012】
このように構成されたものにおいては、印刷が施された後における複数の個装吸収性物品の表出面どうしの静摩擦係数が大きくなる。
【0013】
また、包装シートが繊維束を含む構成としてもよい。
【0014】
このように構成されたものにおいても、印刷が施された後における複数の個装吸収性物品の表出面どうしの静摩擦係数が大きくなる。
【0015】
また、個装吸収性物品がパッケージに収容されてなるパッケージ製品の製造方法として、
前記包装シートに対して印刷を施す工程と、
前記包装シート上に前記吸収性物品を載置し、印刷が施された面が表出するように前記包装シートを折り畳んで前記吸収性物品を包みこんで前記個装吸収性物品を製造する工程と、
前記個装吸収性物品を複数重ね合わせてパッケージに収容する工程と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数個重ね合わせてパッケージに収容される場合でも印刷適正と生産効率の低下の回避とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の個装吸収性物品の実施の一形態を示す平面図である。
図2図1に示した個装吸収性物品を展開した状態の平面図である。
図3図1に示したI-I断面図である。
図4図1に示したII部の拡大図である。
図5図1図4に示した個装吸収性物品がパッケージに収容されてなるパッケージ製品の製造工程を説明するためのフローチャートである。
図6図1図4に示した個装吸収性物品がパッケージに収容される状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一のまたは対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0019】
〈個装吸収性物品の全体の構成〉
図1は、本発明の個装吸収性物品の実施の一形態を示す平面図である。図2は、図1に示した個装吸収性物品100を展開した状態の平面図であり、包装シート10の内面から若しくは吸収性物品1肌側から見た図である。また、図3は、図1に示したI-I断面図である。
【0020】
本実施形態は図1図3に示すように、包装シート10と、包装シート10によって個装された吸収性物品1とを含む個装吸収性物品100である。図2に示すように、包装シート10は、例えば展開した状態で細長形状であって、長手方向(縦方向)D1と、当該長手方向に直交する短手方向(横方向)D2とを有する。また、包装シート10の長手方向D1及び短手方向D2は、それぞれ吸収性物品1の長手方向及び短手方向にも対応する。
【0021】
〈吸収性物品〉
包装シート10により包装される吸収性物品1は、体液(経血、おりもの、尿等)の排出口に対向させるように装着するための形状を有し、例えば、扁平で細長形状の物品である。吸収性物品1の具体例としては、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、軽失禁用パッド等が挙げられる。
【0022】
吸収性物品1は、例えば図2に示すように、液透過性のトップシート3と、液不透過性のバックシート(不図示)と、これらのトップシート3とバックシートとの間に配置された吸収体4とを有している。
【0023】
バックシートとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、透湿性を有するものが用いられてもよい。
【0024】
トップシート3としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。パルプとしては、広葉樹材から得られる広葉樹パルプ、針葉樹材から得られる針葉樹パルプ、またはその混合パルプであってよい。また、パルプは、使用済みのパルプから再生されたリサイクルパルプであってもよい。
【0026】
吸収体4の厚みは、0.5~25mmであってもよい。吸収体4は、体液排出口に対応させる領域(体液排出口対応領域)や、体液排出口対応領域より後方の、臀部の溝に対向する領域を、膨出させた構造とすることもできる。吸収体4は、トップシート3及びバックシートからはみ出さない寸法及び形状を有し、吸収体の前方及び後方の端縁部では、バックシートとトップシート3との外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。
【0027】
図2に示すように、吸収体4の側方の外方において、短手方向D2両端部のそれぞれに長手方向D1に沿ってサイドシート7を設けることもできる。サイドシート7としては、撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。
【0028】
なお、図1図3に示す例では、吸収性物品1は、ウィングのない、いわゆる羽なしのタイプのものであるが、側方にそれぞれ延出するウィングを有する羽つきの物品として構成してもよい。ウィングは、サイドシートとバックシートとの接合により形成されていてよい。
【0029】
また、吸収性物品1のバックシートの側(非肌側、すなわち装着時に下着に対向させる側)には、吸収性物品1を下着に取り付けた際に下着からズレないようにするためのズレ止め用粘着部を設けることもできる。ズレ止め用粘着部は、例えば、長手方向D1または短手方向D2に延在する複数の帯状に形成されている。
【0030】
吸収性物品1の全長は、140~430mmとすることができ、吸収性物品1の幅(ウィングを有する場合にはウィングを除いた本体の幅)は40~130mmとすることができる。
【0031】
〈包装シート〉
本実施形態における包装シート10は紙である。紙製の包装シート10を利用することで、プラスチック削減に貢献でき、持続可能な開発目標の達成に寄与することができる。また、紙は、独特の風合い、例えば天然素材の優しい印象の見た目及び手触りを付与できる。
【0032】
包装シート10は、例えば雲竜紙から構成されており、吸収性物品1を個装した状態にて表出する表出面に印刷が施されている。包装シート10は、後述する条件を満たすものであれば雲竜紙に限らない。包装シート10の印刷前及び印刷後の条件については後述する。
【0033】
包装シート10の寸法は、包装する吸収性物品1の大きさや形状に応じて、例えば、包装シート10を完全に広げた状態(折り返しされていない状態)で、長手方向D1の長さ(単に長さと呼ぶ場合がある)は100~450mmとすることができ、短手方向D2の長さ(単に幅と呼ぶ場合がある)は70~250mmとすることができる。図示の例では、包装シート10は、展開した状態で長方形の形状を有するが、例えば長楕円形等の形状を有していてもよい。
【0034】
〈個装吸収性物品の包装構造〉
図1及び図3に示すように、吸収性物品1は、包装シート10と共に折り畳まれることによって包装されて、個装吸収性物品100が形成されている。折り畳みの際には、図2に示すように、まず、包装シート10の内面に吸収性物品1を、吸収性物品1のバックシート側が対向するように載置された状態とする。そして、包装シート10と吸収性物品1とが共に、幅方向D2に沿った第1折り線F1及び第2折り線F2にて長手方向D1に共に折り畳まれる。より具体的には、第1折り線F1にて、包装シート10の長手方向D1の一端11を含む第1領域R1が長手方向D1に折り返され、第2折り線F2にて、包装シート10の長手方向D1の他端12を含む第2領域R2が折り返される。包装シート10の第1領域R1と第2領域R2との間の領域は、第3領域R3である。図示の例では、包装シート10は、第2領域R2が先に折り畳まれ、第1領域R1が第2領域R2の外面に重なるように折り畳まれているが(図1及び図2)、第1領域R1及び第2領域R2の折り順は逆であってもよい。このように、包装シート10を吸収性物品1と共に巻三つ折り(内三つ折り)にして吸収性物品1を包んだ後に、短手方向D2の両縁部が、長手方向D1に沿ってそれぞれシールされ、シール部15が形成される。
【0035】
このような三つ折り以上の包装形式は、比較的簡便に形成でき、吸収性物品1を衛生的に包むことができるし、また吸収性物品1の取出しも容易である。なお、折り畳みの形式は三つ折りに限られず、四つ折り以上としてもよいし、二つ折りにすることもできる。
【0036】
さらに、個装吸収性物品100には、第1領域R1の端縁(包装シート10の一端11)付近において短手方向D2中央には、止着テープ30が設けられている。止着テープ30は、図1に示すように、包装シート10の一端11を跨ぐように、第1領域R1及び第2領域R2に亘って設けることができる。止着テープ30が設けられていることで、個装吸収性物品100の開封時には、使用者は止着テープ30を持って第1領域R1を持ち上げて引っ張ることができるので、開封がより容易となる。その際には、第1領域R1が、その下に位置する第2領域R2から剥がされる。
【0037】
〈シール部〉
図1に示すように、個装吸収性物品100においては、短手方向D2の両縁の、吸収性物品1が存在しない領域がそれぞれシールされ、シール部15が形成されている。本形態においては、このシール部15は、加熱された一対のロールに挿通させることで、包装シート10どうしを厚み方向に圧着することで形成されている。
【0038】
図1に示すように、シール部15は、例えば、個装吸収性物品100の長手方向D1の全長にわたって形成されている。これにより、ごみや塵、或いは誤って指または小さな物体が短手方向の端縁から侵入することを防止できる(封止性が得られる)という観点で好ましい。
【0039】
シール部15が設けられている短手方向D2の範囲は、例えば、短手方向D2の端縁から20mmまでの範囲である。シール部15は、上記範囲全体に形成されていてもよいし、上記範囲内の一部分に、例えば短手方向D2の端縁から離れた位置に形成されていてもよい。シール部15自体の短手方向D2の長さ(幅)は、3~15mmであることが好ましい。シール部15の短手方向D2の内縁は、長手方向D1に沿って直線状に延在していてもよいし、曲線状に、例えば波状に延在していてもよい。
【0040】
図4は、図1に示したII部の拡大図であり、シール部15を含む部分を示す。
【0041】
図4に示すように、シール部15は、例えば、平面視で互いに離隔した複数の圧着部(若しくは接合部)15aを含んでいる。各圧着部15aは、包装シート10どうしが厚み方向に、圧着により接合されてなる部分である。図示の例では、複数の圧着部15a以外の部分は、包装シート10どうしが接合されていない非接合部となっている。このように、複数の圧着部15aが互いに離隔して点在していることで、例えばシール部15の全面に亘って連続して包装シート10どうしが接合されている場合等に比べて、開封時の包装シートどうしを容易に剥がすことができて開封性を向上させることができる。また、個装吸収性物品100の両縁部が過度に硬くなり手触りを損ねることも防止できる。
【0042】
なお、圧着部15aのそれぞれの平面視形状は、図4に示す例では正方形であるが、図示の形状に限らず、例えば、長方形、平行四辺形等の正方形以外の四角形、四角形以外の多角形、円形、楕円形、ハート形、星形、滴形等であってもよい。また、圧着部15aのそれぞれのサイズは、例えば、一辺が0.25~2.5mmの正方形、またはそれと同等の面積を有するサイズとすることができる。
【0043】
〈個装吸収性物品の製造工程〉
図5は、図1図4に示した個装吸収性物品100がパッケージに収容されてなるパッケージ製品の製造工程を説明するためのフローチャートである。
【0044】
上記のように構成された個装吸収性物品100を製造する場合は、まず、包装シート10に対して印刷が施される(ステップS1)。なお、包装シート10に対する印刷は、包装シート10が吸収性物品1を個装した場合に表出する表出面に対して施される。
【0045】
ここで、上述したように、個装吸収性物品100のデザイン性を高めるために包装シート10に印刷を施す場合、包装シート10として印刷適正が高い紙を使用することが考えられる。ここで、表面の平滑性が高く、滑らかな紙を使用することで印刷適正を高いものとすることが考えられる。
【0046】
そこで、包装シート10として用いられることが考えられる様々な紙について、紙表面の滑らかさを示す指標となるMMD(平均摩擦係数の変動)を測定し、印刷適正が高いかどうかについて実験を行った。なお、本実験では、KES摩擦試験機にてMMDを測定した。その際の測定条件として、端子としてピアノ線を巻いた端子を用い、30mmの距離を、50gの荷重をかけながら1mm/secの速度でその表面をなぞることとした。
【0047】
【表1】
表1に示すように、実施例1として、目付が14gsmのレーヨンPM(丸菱ペーパーテック株式会社製)の平滑面について測定を行った。また、実施例2として、目付が14gsmのレーヨンPM(丸菱ペーパーテック株式会社製)の粗面について測定を行った。また、実施例3として、目付が17gsmの雲竜紙(丸菱ペーパーテック株式会社製)の平滑面について測定を行った。また、実施例4として、目付が17gsmの雲竜紙(丸菱ペーパーテック株式会社製)の粗面について測定を行った。また、実施例5として、目付が24.4gsmの金鯱紙(大王製紙株式会社製)の平滑面について測定を行った。また、実施例6として、目付が24.4gsmの金鯱紙(大王製紙株式会社製)の粗面について測定を行った。また、比較例1として、目付が18gsmのクレープ紙(大王製紙株式会社製)の平滑面について測定を行った。なお、レーヨンPMは、レーヨン15%、パルプ85%で構成された紙である。
【0048】
すると、比較例1におけるMMDは0.052であった。また、実施例1におけるMMDは0.011、実施例2におけるMMDは0.017であった。また、実施例3におけるMMDは0.014、実施例4におけるMMDは0.021であった。また、実施例5におけるMMDは0.008、実施例6におけるMMDは0.013であった。なお、比較例1における紙は、表面にクレープ加工が施されていることで、平滑性が低いものとなっている。
【0049】
表1には、印刷適正として、インクが均一に印刷面に載らず、白抜け部分が生じてしまう、いわゆる印刷抜けが生じたものに"×"、印刷抜けが生じなかったものに"〇"を付している。表1に示すように、比較例1については印刷抜けが生じ、実施例1~6については、印刷抜けが生じなかった。また、比較例1については、印刷後に表面に皺が発生しやすい傾向が見られ、これが印刷抜けが生じることにつながっていると考えられる。
【0050】
この結果から、包装シート10として、印刷が施される前における表面のMMDが0.050以下の紙が印刷適正を有し、この紙を使用することで、包装シート10の表面に印刷を施してデザイン性を向上させることができる。
【0051】
包装シート10に印刷が施された後、包装シート10上に吸収性物品1が載置され、印刷が施された面が表出するように包装シート10が吸収性物品1と共に巻三つ折り(内三つ折り)にされて吸収性物品1が包みこまれる。
【0052】
その後、個装吸収性物品100の短手方向D2の両縁部が、長手方向D1に沿ってそれぞれシールされ、シール部15が形成される(ステップS2)。
【0053】
なお、包装シート10に対して印刷を施す工程と、吸収性物品1を包装シート10に包み込む工程と、シール部15を形成する工程とは、包装シート10が長尺状となった状態で行ってもよい。その場合、シール部15が形成された後、包装シート10が単片状に断裁されて個装吸収性物品100の形態となる。
【0054】
このようにして製造された個装吸収性物品100は、その後パッケージに収容され、個装吸収性物品100がパッケージに収容されてなるパッケージ製品が完成する(ステップS3)。
【0055】
図6は、図1図4に示した個装吸収性物品100がパッケージに収容される状態を示す図である。
【0056】
図6に示すように、上記のようにして製造された個装吸収性物品100は、複数の個装吸収性物品100が重ね合わされた状態でパッケージに収容される。その際、包装シート10として平滑性が高く印刷適正が高い紙を使用した場合、個装吸収性物品100どうしが滑りやすくなる。そのため、個装吸収性物品100を搬送する搬送ライン上において、重ね合わされた個装吸収性物品100がばらけてしまうことになる。特に、紙の繊維方向にばらけが生じやすい。ここで、上述したような個装吸収性物品100のパッケージへの収容は、搬送ライン上にて自動で行ってもよい。そのため、重ね合わされた個装吸収性物品100がばらけてしまうと、ばらけた個装吸収性物品100を手作業でパッケージに収容することとなり、生産効率が低下してしまう。
【0057】
そこで、包装シート10として用いられてもよい様々な紙について、印刷を施した後における紙どうしの静摩擦係数を測定し、パッケージに挿入する際にばらけが生じるかどうかについて実験を行った。なお、本実験では、トライボ摩擦試験機にて静摩擦係数を測定した。その際の測定条件として、2cm×2cmの紙片どうしを、70gの荷重をかけながら43mm/secの速度で50mmの距離だけ移動させることとした。
【0058】
【表2】
表2に示すように、比較例1として、目付が14gsmのレーヨンPMの粗面について測定を行った。また、比較例2として、目付が17gsmの雲竜紙の平滑面について測定を行った。また、実施例1として、目付が17gsmの雲竜紙の粗面について測定を行った。
【0059】
すると、比較例1における静摩擦係数は0.577、比較例2における静摩擦係数は0.562であった。一方、実施例1における静摩擦係数は0.603であった。
【0060】
表2には、パッケージに挿入する際にばらけが生じたものに"×"、ばらけが生じなかったものに"〇"を付している。表2に示すように、比較例1,2においては、ばらけが生じ、実施例1においては、ばらけが生じなかった。
【0061】
この結果から、包装シート10として、印刷が施された後における紙どうしの表出面の静摩擦係数が0.60以上の紙であれば、複数の個装吸収性物品100が重ね合わされた状態でパッケージに収容される際に滑ることによるばらけが生じにくくなる。それにより、個装吸収性物品100がパッケージに収容される際の生産効率の低下を回避することができる。また、外見や手触りについてチープな印象を与えにくくなる。
【0062】
ここで、上述したような個装吸収性物品100どうしの滑りやすさと再生繊維の配合割合との関係について説明する。
【0063】
包装シート10として用いられることが考えられる様々な紙について、印刷を施した後における紙どうしの静摩擦係数を測定し、パッケージに挿入する際に生じるばらけに再生繊維の配合割合が影響するかどうかについて実験を行った。なお、本実験では、トライボ摩擦試験機にて静摩擦係数を測定した。その際の測定条件として、2cm×2cmの紙片どうしを、70gの荷重をかけながら43mm/secの速度で50mmの距離だけ移動させることとした。
【0064】
【表3】
表3に示すように、比較例1として、目付が14gsmのレーヨンPMの粗面について測定を行った。また、実施例1として、目付が17gsmの雲竜紙の粗面について測定を行った。この際、比較例1においては、再生繊維の配合割合は15%であり、実施例1においては、再生繊維の配合割合は20~25%である。
【0065】
すると、比較例1における静摩擦係数は0.577であった。一方、実施例1における静摩擦係数は0.603であった。
【0066】
表3には、パッケージに挿入する際にばらけが生じたものに"×"、ばらけが生じなかったものに"〇"を付している。表3に示すように、比較例1のレーヨンPMの粗面については、ばらけが生じ、実施例1の雲竜紙の粗面については、ばらけが生じなかった。
【0067】
この結果から、包装シート10として、再生繊維の配合割合が20%以上の紙であれば、複数の個装吸収性物品100が重ね合わされた状態でパッケージに収容される際に滑ることによるばらけが生じにくくなる。それにより、個装吸収性物品100がパッケージに収容される際の生産効率の低下を回避することができる。
【0068】
ここで、上述したような個装吸収性物品100どうしの滑りやすさと、紙の繊維束との関係について説明する。
【0069】
上述したように、雲竜紙は、紙どうしの静摩擦係数が大きく滑りにくくなっている。ここで、雲竜紙は、レーヨン繊維を、こより状にして抄き込んで束となった繊維束が含まれていることで表面の凹凸が大きくなっている。
【0070】
このように、繊維束を含む紙においては、表面の凹凸が大きくなることで静摩擦係数が大きくなる。これにより、雲竜紙に限らず、繊維束を含む紙を包装シート10に用いることにより、印刷が施された後に個装吸収性物品100を重ね合わせてパッケージに収容する際、ばらけが生じにくくなる。
【0071】
なお、上述した実施形態においては、雲竜紙について特に効果を有するものとして説明したが、雲竜紙に限らず、印刷が施される前における表出面のMMDが0.050以下であり、かつ、印刷が施された後における複数の個装吸収性物品の当該表出面どうしの静摩擦係数が0.60以上であれば、本発明の効果を得ることができる。
【0072】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、様々な変更、修正、置換、付加、削除、及び組合せ等が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。また、上述した構成要素は任意に組合せが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 吸収性物品
3 トップシート
4 吸収体
7 サイドシート
10 包装シート
11 長手方向の一端
12 長手方向の他端
15 シール部
15a 圧着部
30 止着テープ
100 個装吸収性物品
D1 包装シートの長手方向
D2 包装シートの短手方向
F1 第1折り線
F2 第2折り線
R1 第1領域
R2 第2領域
R3 第3領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6