(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143331
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】個装吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61F13/15 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055947
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡部 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】倉持 美帆子
(72)【発明者】
【氏名】伊東 莉菜
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 陽花
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 浩洋
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA08
3B200BB02
3B200BB08
3B200BB30
3B200DF09
3B200EA18
(57)【要約】
【課題】紙製の包装シートを用いてなる個装吸収性物品において、包装シートの破損を防止する。
【解決手段】吸収性物品が、紙製の包装シートにより個装されてなる個装吸収性物品であって、前記包装シートが当該包装シートの第1方向に内面側に折り畳まれ、前記第1方向に直交する第2方向の両縁部がシールされており、前記包装シートの内面及び/又は外面に強度向上層が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品が、紙製の包装シートにより個装されてなる個装吸収性物品であって、
前記包装シートが当該包装シートの第1方向に内面側に折り畳まれ、前記第1方向に直交する第2方向の両縁部がシールされており、
前記包装シートの内面及び/又は外面に強度向上層が設けられている、個装吸収性物品。
【請求項2】
前記強度向上層が、強度向上剤の塗布によって形成されており、
前記強度向上剤がヒートシール剤を含む、請求項1に記載の個装吸収性物品。
【請求項3】
前記包装シートの目付が8~50g/m2である、請求項1又は2に記載の個装吸収性物品。
【請求項4】
前記包装シートが、前記第1方向の一端を含む第1領域と、前記一端と反対側の他端を含む第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間の第3領域とを有し、前記第1領域と前記第2領域とが重なるように折り畳まれており、
前記強度向上層が、前記第1領域の前記第2領域と重なる領域、前記第2領域の前記第1領域と重なる領域、及び前記第3領域の、前記第1領域と前記第2領域との重なりに対向する領域の1つ以上に少なくとも設けられている、請求項1又は2に記載の個装吸収性物品。
【請求項5】
前記包装シートの前記両縁部に設けられた強度向上層の目付が、前記両縁部以外の領域に設けられた強度向上層の目付より小さい、請求項2に記載の個装吸収性物品。
【請求項6】
前記強度向上層が、平面視で複数の線状部を含むパターンで形成され、
前記線状部が、前記紙製の包装シートのMD方向に対し70~90°の角度をなして延在する、請求項1又は2に記載の個装吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個装吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の多くの吸収性物品は、保管時の衛生、持ち運びの際の利便性等の理由から、包装シートによって個別に包装されて封止された状態で個装吸収性物品(個別包装体)として提供されている。個装吸収性物品の包装構造としては、例えば、包装シートの内面に吸収性物品を配置し、吸収性物品と共に包装シートを内面側に折り畳んだ後、両縁部をシールした形態が一般的である。
【0003】
包装シートの材質としては、依然として樹脂フィルム、不織布等が主流であるが、紙製の包装シートも知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
個装吸収性物品の包装シートとしては、製造時の折り畳み易さ、手触り等を考慮すると、比較的目付の小さい紙を使用することが望ましい。しかしながら、目付の小さい紙は強度が弱いため、個装吸収性物品の開封時に力が局所的に掛かった場合等には破れる虞がある。そうすると、包装シートを一気に展開できずに開封時の手間が増えたり、包装シートを、使用済みの吸収性物品を包むために使用できなくなったりする可能性がある。
【0006】
上記に鑑みて、本発明の一態様は、紙製の包装シートを用いてなる個装吸収性物品において、包装シートの破損を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、吸収性物品が、紙製の包装シートにより個装されてなる個装吸収性物品であって、前記包装シートが当該包装シートの第1方向に内面側に折り畳まれ、前記第1方向に直交する第2方向の両縁部がシールされており、前記包装シートの内面及び/又は外面に強度向上層が設けられている。
【0008】
上記第一の態様は、紙製の包装シートを利用するものである。紙製の包装シートは自然で独特の風合いがあり、使用者の視覚、触覚等を通じて、安心感、リラックス感、穏やかな気持ち等を与え得る。また、紙製の材料を利用することでプラスチック材料の低減に繋がり、持続可能な開発目標の達成の観点からも好ましい。
【0009】
紙製の包装シートは強度が十分でない場合があるが、本態様では、包装シートの内面及び/又は外面に強度向上層を設けることで、包装シートの強度を向上できる。そのため、包装シートに大きな力が局所的に掛かった場合でも包装シートの破損を防止できる。よって、開封の途中で包装シートが破れることなく包装シートをスムーズに展開できる。また、吸収性物品の交換時に、破損のない若しくはほとんどの破損のない包装シートで、使用済み吸収性物品を包むことができる。
【0010】
本発明の第二の態様では、前記強度向上層が、強度向上剤の塗布によって形成されており、前記強度向上剤がヒートシール剤を含む。
【0011】
上記第二の態様によれば、ヒートシール剤が塗布されることで、両縁部のシールのためにヒートシールを利用することができるので、シール強度を向上できる。これにより、個装吸収性物品の使用前の意図せぬ開封等を防止し、封止性の高い個装吸収性物品を提供できる。
【0012】
本発明の第三の態様では、前記包装シートの目付が8~50g/m2である。
【0013】
包装シートが紙製である場合、個装吸収性物品の製造時の折り畳み等の工程を容易にするため、或いはごわごわした感触を抑制するという観点で、比較的小さい目付のものが好ましい。しかしながら、通常、目付が小さい包装シートほど強度は小さいので、開封前に若しくは開封時に、或いは個装吸収性物品の製造時に包装シートが破損してしまうことがある。これに対し、上記第三の態様によれば、8~50g/m2のように目付が比較的小さい紙を用いた場合であっても、破れにくい包装シートを提供できる。
【0014】
本発明の第四の態様では、前記包装シートが、前記第1方向の一端を含む第1領域と、前記一端と反対側の他端を含む第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間の第3領域とを有し、前記第1領域と前記第2領域とが重なるように折り畳まれており、前記強度向上層が、前記第1領域の前記第2領域と重なる領域、前記第2領域の前記第1領域と重なる領域、及び前記第3領域の、前記第1領域と前記第2領域との重なりに対向する領域の1つ以上に少なくとも設けられている。
【0015】
三つ折り以上に折り畳まれた包装形態では、包装シートの重なり枚数が多いゾーン(例えば第1領域と第2領域とが重なるゾーン)において、局所的にシール強度が大きくなり易いので、その領域では、シールを剥がす時に包装シートがスムーズに剥がれずに包装シートの破れが生じる可能性が高い。これに対し、上記第四の態様によれば、第1領域と第2領域との重なりに対応する領域に強度向上層が設けられているので、強度向上層の材料を節約しつつ、包装シートを効率的に補強できる。
【0016】
本発明の第五の態様では、前記包装シートの前記両縁部に設けられた強度向上層の目付が、前記両縁部以外の領域に設けられた強度向上層の目付より小さい。
【0017】
強度向上層がヒートシール剤の塗布によって設けられている場合には、個装吸収性物品の両縁部におけるシール形成のためにヒートシールを利用できる。ここで、包装シートの強度向上を主として考慮した目付でヒートシール剤を塗布した場合、両縁部におけるシール強度が過度に大きくなってしまうことがある。その場合、開封時に包装シートを剥がす動作がスムーズに進まず、包装シートが破れる可能性が高まる。これに対し、上記第五の態様によれば、両縁部と両縁部以外の領域とで、強度向上層(ヒートシール剤)の目付を変えることで、高度向上層(ヒートシール剤)による包装シートの補強機能を維持しつつも、両縁部のシール強度が過度に大きくなることを防止できる。
【0018】
本発明の第六の態様では、前記強度向上層が、平面視で複数の線状部を含むパターンで形成され、前記線状部が、前記紙製の包装シートのMD方向に対し70~90°の角度をなして延在する。
【0019】
上記第六の態様によれば、強度向上層が、隙間なく連続して設けられるのではなく、パターン化され、微視的に見て強度向上層のない部分を含むように形成されている。そのため、本態様による包装シートにおいては、強度向上層による補強が得られており、且つ紙本来が有する折れ易さ等も維持されている。そのため、個装吸収性物品の包装時の折り畳み工程等が容易になる。また、強度向上層がパターン化されていることで、使用される強度向上層の材料の量も減らすことができる。
【0020】
また、包装シートに破れが生じる場合、通常、包装シートのMD方向(繊維の延在方向)に沿って進展し易い。そのため、本態様により、強度向上層を、MD方向に交わる方向に延在する線状に形成することで、破れの進展を阻むことができる。よって、少ない強度向上層材料で、破れが進展し難い包装シートを提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、紙製の包装シートを用いてなる個装吸収性物品において、包装シートの破損を防止できる。
構成が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態による個装吸収性物品の平面図である。
【
図5】第1実施形態における強度向上層の配置の変形例を示す図である。
【
図6】第1実施形態における強度向上層の配置の別の変形例を示す図である。
【
図7】本発明の第2実施形態による個装吸収性物品の平面図である。
【
図8】
図7の個装吸収性物品の包装シートを展開した状態の平面図である。
【
図10】本発明の第3実施形態による個装吸収性物品における包装シートを展開した状態の平面図を示す。
【
図11】第3実施形態における強度向上層の変形例を示す図である。
【
図12】本発明の第4実施形態による個装吸収性物品における包装シートを展開した状態の平面図を示す。
【
図13】第4実施形態における強度向上層の変形例を示す図である。
【
図14】第4実施形態における強度向上層の別の変形例を示す図である。
【
図15】第4実施形態における強度向上層のさらに別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0024】
<第1実施形態>
まず、個装吸収性物品の基本的な構成について説明する。
図1に、第1実施形態による個装吸収性物品100の平面図を示す。
図2に、
図1の個装吸収性物品100の包装シート10を展開した状態の平面図であり、包装シート10の内面から若しくは吸収性物品1肌側から見た図を示す。また、
図3に、
図1のI-I線断面を示し、
図4に、
図1のII-II線断面を示す。
【0025】
図1~
図4に示すように、個装吸収性物品100は、包装シート10と、包装シート10によって個装された吸収性物品1とを含む。
図2に示すように、包装シート10は展開した状態で細長形状であってよく、縦方向(長手方向、第1方向)D1と、当該縦方向に直交する横方向(短手方向、第2方向)D2とを有する。また、包装シート10の縦方向D1及び横方向D2は、それぞれ吸収性物品1の長手方向及び短手方向に対応していてよい。
【0026】
(吸収性物品)
包装シート10により包装される吸収性物品1は、体液(経血、おりもの、尿等)の排出口に対向させるように装着するための、扁平で細長形状の物品であってよい。吸収性物品1の具体例は、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、軽失禁用パッド等であってよい。本明細書における説明は、主として、吸収性物品が生理用ナプキンである形態に基づく。
【0027】
吸収性物品1は、例えば
図2に示すように、液透過性のトップシート3と、液不透過性のバックシート(不図示)と、これらのトップシート3とバックシートとの間に配置された吸収体4とを有していてよい。
【0028】
バックシートとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、透湿性を有するものが用いられてもよい。
【0029】
トップシート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。パルプとしては、広葉樹材から得られる広葉樹パルプ、針葉樹材から得られる針葉樹パルプ、又はその混合パルプであってよい。また、パルプは、使用済みのパルプから再生されたリサイクルパルプであってもよい。
【0031】
吸収体4の厚みは、0.5~25mmであってよい。吸収体4は、体液排出口に対応させる領域(体液排出口対応領域)や、体液排出口対応領域より後方の、臀部の溝に対向する領域を、膨出させた構造とすることもできる。吸収体4は、トップシート3及びバックシートからはみ出さない寸法及び形状を有し、吸収体の前方及び後方の端縁部では、バックシートとトップシート3との外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。
【0032】
図2に示すように、吸収体4の側方の外方においては、横方向D2両端部に縦方向D1に沿ってサイドシート7、7が設けられていてもよい。サイドシート7としては、撥水処理不織布又は親水処理不織布を使用することができる。
【0033】
なお、
図1~
図4に示す例では、吸収性物品1は、ウィングのない、いわゆる羽なしのタイプのものであるが、側方にそれぞれ延出するウィングを有する羽つきの物品として構成してもよい。ウィングは、サイドシートとバックシートとの接合により形成されていてよい。
【0034】
また、吸収性物品1のバックシートの側(非肌側、すなわち装着時に下着に対向させる側)には、吸収性物品1を下着に取り付けた際に下着からズレないようにするためのズレ止め用粘着部が設けられていてもよい。ズレ止め用粘着部は、縦方向D1又は横方向D2に延在する複数の帯状に形成されていてよい。
【0035】
吸収性物品1の全長は、140~430mmとすることができ、吸収性物品1の幅(ウィングを有する場合にはウィングを除いた本体の幅)は40~130mmとすることができる。
【0036】
(包装構造)
図1~
図4に示すように、吸収性物品1は、包装シート10と共に折り畳まれることによって包装されて、個装吸収性物品100が形成される。折り畳みの際には、
図2に示すように、包装シート10の内面に吸収性物品1を、吸収性物品1のバックシート側が対向するように載置された状態とする。そして、包装シート10と吸収性物品1とが共に、幅方向D2に沿った第1折り線F1及び第2折り線F2にて縦方向D1に内面側に折り畳まれる。より具体的には、第1折り線F1にて、包装シート10の縦方向D1の一端11を含む第1領域R1が縦方向D1に折り返され、第2折り線F2にて、包装シート10の縦方向D1の他端12を含む第2領域R2が折り返される。包装シート10の第1領域R1と第2領域R2との間の領域は、第3領域R3である。図示の例では、包装シート10は、第2領域R2が先に折り畳まれ、第1領域R1が第2領域R2の外面に重なるように折り畳まれているが(
図1及び
図2)、第1領域R1及び第2領域R2の折り順は逆であってもよい。このように、包装シート10を吸収性物品1と共に巻三つ折り(内三つ折り)にして吸収性物品1を包んだ後に、横方向D2の両縁部が、縦方向D1に沿ってシールされ、シール部15、15が形成される。
【0037】
このような三つ折り以上の包装形式は、比較的簡便に形成でき、吸収性物品1を衛生的に包むことができるし、また吸収性物品1の取出しも容易である。なお、折り畳みの形式は三つ折りに限られず、四つ折り以上(後に詳述)としてもよいし、二つ折りであってもよい。
【0038】
図1に示すように、シール部15、15は、包装シート10の縦方向D1の全長にわたって形成されていてよい。シール部15、15によって、ごみや塵、或いは誤って指又は小さい物体が横方向D2の端縁から個装吸収性物品100内に侵入することを防止できる(封止性が得られる)。シール部15が設けられている横方向D2の範囲は、横方向D2の端縁から20mmまでの範囲であってよい。シール部15は、上記範囲全体に形成されていてもよいし、上記範囲内の一部分に、例えば横方向D2の端縁から離れた位置に形成されていてもよい。シール部15自体の横方向D2の長さ(幅)は、3~15mmであってよい。
【0039】
シール部15、15は、例えば、包装シート10が折り畳まれた後の両縁部(包装シート10の横方向D2の両縁部)を、一対のロールに挿通させ、両ロールによって加圧及び加熱することによって、包装シート10同士を厚み方向に押し付けて形成されたものであってよい。一対のロールは、例えば、表面に複数の凸部を有するロールと、表面に凹凸のないロールとの組み合わせであってよく、その場合、一方のロールの複数の凸部が包装シートに押し付けられて、包装シートに、凸部に対応した複数の着圧部が形成され得る。或いは、双方のロールの表面に互いに噛み合う凹凸が形成されていて、その噛み合わせによって、包装シートが変形されてもよい。シール部の形成の際には、ロールが加熱されていてもよいし、加熱なしであってもよい。後に詳述するヒートシール剤が塗布された包装シートを利用する場合には、加熱及び加圧によりヒートシールを形成することができる。
【0040】
(包装シートの材料)
本形態における包装シート10は、紙製である。紙製の包装シート10を利用することで、プラスチック削減に貢献でき、持続可能な開発目標の達成に寄与できる。また、紙は、独特の風合い、例えば天然素材の優しい印象の見た目及び手触りを付与できるので、使用者に心地良さを提供できる。なお、本明細書において、紙とは、植物繊維その他の繊維を膠着剤で膠着させて薄い平板状にしたものを指す。特に、植物繊維を主原料としたもの、例えば含有繊維のうち植物繊維、特にセルロース繊維が50%以上であるもの、好ましくは80%以上であるものを指す。紙の原料たる植物繊維としては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ、綿セルロースが挙げられ、パルプは、機械パルプ、化学パルプのいずれであってもよい。また、上記植物繊維は、レーヨン、キュプラ等の再生繊維であってもよいし、吸収性物品の構成要素及び/又は吸収性物品用の包装シートからリサイクルされた植物繊維(リサイクルパルプ等)であってもよい。
【0041】
紙には、クレー、炭酸カルシウム、澱粉、ラテックス、着色顔料、防腐剤等の公知の紙用の添加剤が添加されていてよい。具体的な紙の例としては、洋紙、和紙、加工紙、合成紙等の様々な種類の紙を挙げることができる。さらに、従来他の用途で使用されている紙、例えば、新聞用紙、印刷用紙(上質紙を含む)、筆記用紙、図画用紙、包装用紙、薄葉紙、雑種紙等と呼ばれる紙であってもよい。薄葉紙である場合、薄口模造紙、インディアンペーパー、ライスペーパー、グラシン紙、ティシュペーパー、トイレットペーパー、ろ紙等であってもよい。
【0042】
本形態で用いられる包装シート10の目付(強度向上層を設ける前の目付)は、好ましくは8~50g/m2、より好ましくは10~30g/m2であってよい。上記範囲の目付を有する包装シート10を用いることで、ゴワゴワとした触感を抑えた手触りの良い個装吸収性物品を得ることができ、持ち運び時、開封時等における音の発生も防止できる。また、包装シート10の厚み(クレープ紙の場合にはクレープ加工後の厚み)は、好ましくは30~200μm、より好ましくは35~100μmであってよい。
【0043】
包装シート10の寸法は、包装する吸収性物品1の大きさや形状に応じて、例えば、包装シート10を完全に広げた状態(折り返しされていない状態)で、縦方向D1の長さ(単に長さと呼ぶ場合がある)は100~450mmとすることができ、横方向D2の長さ(単に幅と呼ぶ場合がある)は70~250mmとすることができる。図示の例では、包装シート10は、展開した状態で長方形の形状を有するが、例えば長楕円形等の形状を有していてもよい。
【0044】
また、個装吸収性物品100には、包装シート10の一端11を跨るように、すなわち、個装吸収性物品100の外面において、第1領域R1と第2領域R2とに跨るように、幅方向D2の中央に、止着テープ30が設けられていてよい。止着テープ30があることで、第1領域R1と第2領域R2との間に物、指等が入って引っ掛かり、使用前に意図せずシールが開封されてしまうことを防止できる。また、開封時には止着テープ30を持って第1領域R1を持ち上げることができるので、開封動作が容易になる。
【0045】
(強度向上層)
本実施形態における包装シート10には、内面及び/又は外面に、強度向上層が設けられている。強度向上層は、紙製の包装シート10の引張強度、引裂強度、及び破裂強度の1つ以上を向上させる層であってよく、好ましくは引張強度(紙のMD方向及びCD方向の少なくとも一方の引張強度)を向上させる層であってよい。引張強度は、例えば公知の引張試験機を利用して測定できる。なお、
図2~
図4に示す例では、強度向上層20は、紙製の包装シート10の内面に設けられているが、強度向上層20は、外面に設けられていてもよいし、或いは内面及び外面の両方に設けられていてもよい。そして、内面及び外面のいずれに設けられていても、包装シート10の強度を向上させる作用効果を奏する。また、内面及び外面の両方に設けられている場合には、強度向上の作用はさらに高まる。
【0046】
強度向上層を設けることで、包装シートの強度を向上できる。そのため、開封時、或いは製造中に個装吸収性物品をパッケージに収容する際、使用開始前の持ち運び時等において、包装シートに大きな力が局所的に掛かった場合でも包装シートの破損を防止できる。よって、開封の途中で包装シートが破れることなく包装シートをスムーズに展開できる。また、吸収性物品の交換時には、破損のない若しくはほとんどの破損のない包装シートで、使用済み吸収性物品を包むこともできる。
【0047】
強度向上層20は、強度向上層形成加工を施すことによって、例えば、強度向上剤を包装シート10に塗布することによって形成できる。また、強度向上機能を有する層若しくはシートを包装シート10に貼り合わせて、積層シートを形成することもできる。
【0048】
強度向上剤の塗布によって強度向上層20を形成する場合、強度向上剤は樹脂を含むものが好ましい。このような強度向上剤を塗布する際には、液状の形態で、例えば液体の樹脂、樹脂の溶液、樹脂の分散液の形態で使用することができる。強度向上剤としては、ヒートシール剤、防滑剤、目止め剤等を利用できる。このように、強度向上剤は、包装シート10の強度を向上させる機能と、当該機能に追加的な機能とを有するものが好ましい。
【0049】
なお、強度向上層20を設ける面は、強度向上層20の種類によって適宜選択できる。より具体的には、強度向上層20の独自の追加的な機能(包装シート10の強度向上機能以外の機能)に応じて選択できる。例えば、インクの裏抜け防止のための目止めを包装シート10の外面で行いたい場合には、強度向上層20として目止め剤を選択し、目止め剤を包装シート10の外面に塗布しておくことができる。これにより、包装シート10の強度が向上すると共に、目止めの機能も発揮される。
【0050】
強度向上剤を塗布する場合、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等の印刷、スプレーガン、ディスペンサー、ロールコーターによる塗布等を利用できる。このうち、安価な水性インクを用いて大量に印刷することが可能でありコストを抑えられることからフレキソ印刷を利用することが好ましい。
【0051】
強度向上層20を、貼り合わせ(ラミネート)によって形成する場合には、公知のラミネート技術を利用できる。その場合、予め準備する強度向上機能を有する層若しくはシートは、ポリエステル、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂製、ポリ塩化ビニル等の樹脂フィルムであってよい。
【0052】
なお、強度向上層20が、強度向上剤の塗布によって形成されている場合も、強度向上機能を有する層若しくはシートを積層させて形成される場合も、強度向上層形成後の包装シートの強度が、強度向上層形成前の包装シートの強度に対して10%以上の強度増加が得られるようにすることが好ましい。また、強度向上層20が、層若しくはシートを積層させて形成される場合には、強度向上機能を有する層若しくはシートの厚みは、好ましくは0超~20μm、より好ましくは0超~10μmであってよい。
【0053】
強度向上層20は、包装シート10の内面及び外面のいずれに形成されている場合であっても、強度向上層20の形成範囲は、包装シート10の面全体であってもよいし、面の一部であってもよい。
図2に示す例では、強度向上層20は、包装シート10の内面の全体に形成されている。強度向上層20が面全体に形成されている場合、包装シート10全体にわたって強度を向上できる。また、強度向上層20を形成する領域と形成しない領域とを分けないことで、強度向上層20の形成の工程が煩雑にならないという点で好ましい。なお、強度向上層20が形成された領域、すなわち強度向上層20の形成加工を施した領域においては、強度向上層20がベタで(面方向にわたって隙間なく連続して)形成されていてもよいし、不連続なパターンで形成されていてもよい。後者の場合、使用者が通常の方法で見て認識可能な不連続なパターンで形成されていてもよいし、使用者が通常の方法で見て認識できない若しくはし難い配置で、例えば強度向上層20が微視的に網点状に散在して形成されていてもよい。
【0054】
なお、強度向上層20の機能の妨げとならないのであれば、紙製の包装シート10は、上述の強度向上層20の形成以外にも何かの加工が施されていてよい。この加工には、例えば、クレープ加工、エンボス加工、カレンダー加工、スリット加工、プライ加工等の包装シート10に物理的な変形を加える加工が含まれていてよい。
【0055】
また、上述の強度向上層20の形成に加え、包装シート10の外面に、インクが印刷されていてもよい。インク印刷が施されることで、個装吸収性物品のデザイン性が向上し、また外面からも包装シート10を補強できる。包装シート10にインク印刷を施す場合、包装シート10としては、クレープ加工、エンボス加工等の包装シートの表面に凹凸を形成する加工がされていない材料(非クレープ紙、非エンボス紙)を用いることが好ましい。
【0056】
図5に、包装シート10に設けられた強度向上層20の変形例を示す。
図5に示す例では、強度向上層20は、包装シート10の全体ではなく、包装シート10に部分的に設けられている。
【0057】
図1及び
図4を再度参照すると、本形態のような三つ折りの包装構造を有する個装吸収性物品100においては、包装シート10の重なり枚数が場所によって異なる。例えば、
図1に示すように、第1領域R1と第2領域R2とが重なる場所は、包装シート10が3枚重ねられた厚ゾーンZaとなる。厚ゾーンZaは、3枚以上重ねゾーンとも呼ぶ。上述の一対のロールを利用したシール部15、15の形成においては、通常、ロールの軸線が縦方向D1に沿った方向に配置されるので、シールは縦方向D1に沿って同じタイミングで、縦方向に沿って同様の力で形成される。よって、厚ゾーンZaにおいては、重なり枚数のより少ない他のゾーンよりも、重ねられた包装シート10の圧縮度合が大きくなるので、シール部15、15のシール強度がより強くなる傾向がある。ここで、開封時にシールを剥がす際、シール強度が強いゾーンにおいては、シール強度が包装シートの強度に勝って包装シートが破損する可能性が高まる。そのため、包装シート10の、厚ゾーンZaに含まれる領域を補強しておくことで、開封時の包装シート10の破損を効果的に防止できる。
【0058】
よって、例えば、
図5に示す変形例のように、包装シートが3枚重ねられている厚ゾーンZa(
図1及び
図4)に対応する領域のいずれかに少なくとも、強度向上層20を形成することができる。より具体的には、第1領域R1のうち個装吸収性物品100の状態で第2領域R2に重なる領域R1a、第2領域R2のうち個装吸収性物品100の状態で第1領域R1に重なる領域R2a、及び第3領域R3の、第1領域R1と第2領域R2との重なりに対応する領域R3aの1つ以上に、強度向上層20を形成できる。また、領域R1a、領域R2a、及び領域R3aの全てに強度向上層20を形成することが好ましい。
【0059】
さらに、
図5に示すように、強度向上層20は、領域R1aを含む領域、領域R2aを含む領域、及び領域R3aを含む領域の1つ以上の設けることができる。例えば、領域R1aは、包装シート10の縦方向D1の一端11から始まる領域であるが、強度向上層20は、領域R1aの縦方向D1の終端位置を越えた位置まで延在している。また、領域R2aは、包装シート10の縦方向D1の他端12から始まる領域であるが、強度向上層20は、領域R2aの縦方向D1の終端位置を越えた位置まで延在している。さらに、強度向上層20は、第3領域においても、領域R3aの縦方向D1の両端位置をそれぞれ越えて延在している。このように、強度向上層20が、包装シート10の、厚ゾーンZaに対応する領域(領域R1a、領域R2a、領域R3a)のみならず、当該領域を含むように当該領域より大きい領域にわたって形成されていることで、厚ゾーンZaに隣接した部分に対応する包装シート10の領域も補強されるので、好ましい。
【0060】
強度向上層20が厚ゾーンZaに対応する領域を越えて延在する場合、その縦方向D1の延在長さは、具体的には、領域R1aの縦方向D1の終端を越えて延在する延在長さd
1a、領域R2aの縦方向D1の終端を越えて延在する延在長さd
2a、及び領域R3aの縦方向D1の両端をそれぞれ越える延在長さd
3a(
図5)は、0超~20mm、或いは5~10mmであってよい。なお、延在長さd
3aは縦方向D1の両方に存在するが、両長さは同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0061】
図5に示すような例では、強度向上層20は、横方向D2にわたって、すなわち横方向D2の一方の端縁から他方の端縁まで延在している。この構成は、横方向D2を搬送方向として強度向上剤を塗布する場合には、包装シートの搬送中に剤のON/OFFの切り替えをする必要がないことから、好ましい。また、本例では、包装シート10において強度向上層20がない領域が存在するので、その分、強度向上層20の材料を節約しつつ、包装シート10の強度向上を効果的に行うことができる。
【0062】
図6に、強度向上層20の配置の別の変形例を示す。
図6に示す例では、
図5に示す例と同様に、強度向上層20が、領域R1aを含む領域、領域R2aを含む領域、及び領域R3aを含む領域にそれぞれ形成されている。但し、強度向上層20が形成されている領域R3aを含む領域が、
図5に示す例よりも縦方向D1により長い。
図6に示す例では、縦方向D1の中央の強度向上層20は、第3領域R3をも含むように、より具体的には第1折り線F1及び第2折り線F2をそれぞれ越えて、形成されている。
【0063】
第1折り線F1及び第2折り線F2は、個装吸収性物品100をパッケージに収容したり、持ち運んだりした場合に、装置や人の手等に当たり易く、損傷しやすい箇所であるので、第1折り線F1及び/又は第2折り線F2の位置で包装シート10を補強することで、破損し難い包装シート10が得られる。
図6に示す例でも、包装シート10において強度向上層20がない領域が存在するので、強度向上層20の材料を節約しつつ、包装シート10の強度向上を効果的に行うことができる。
【0064】
図6において、強度向上層20が第1折り線F1を越えて延在する延在長さd
F1、及び第2折り線F2を越えて延在する延在長さd
F2はそれぞれ、0超~10mmであってよい。
【0065】
<第2実施形態>
図7に、第2実施形態による個装吸収性物品100Aの平面図を示し、
図8に、
図7の個装吸収性物品100Aの包装シート10を展開した状態を内面から見た平面図を示すが、
図7及び
図8においては、吸収性物品1の図示は省略する。また、
図9に、
図7のIII-III線断面を示す。なお、以下の第2実施形態は、強度向上層20が包装シート10の内面に設けられた例に基づき説明するが、上述のように強度向上層20は、強度向上層20の種類に応じて包装シート10の外面に形成されていてもよいし、包装シート10の両面に形成されていてもよい。
【0066】
第2実施形態による個装吸収性物品100Aも、第1実施形態(
図1~
図6)と同様に、生理用ナプキン等の吸収性物品が包装シートの内面に配置されて、両者が共に折り畳まれてなる包装構成を有するが、本例による個装吸収性物品100Aには、第1実施形態のものよりも縦方向D1の長さが長い吸収性物品が包装されており、包装シート10が吸収性物品と共に四つ折りで折り畳まれている。
【0067】
本形態における四つ折りの包装構造では、基本的な折り畳み方は三つ折りと同様であり、包装シート10の縦方向D1の一端11を有する第1領域R1と、他端12を有する第2領域R2とが重なり合うように、内面側に折り畳まれている。但し、第2領域R2を折り畳む前に、第2折り線F2と他端12との間に位置する第3折り線F3にて、他端12を含む端部領域Reを折り返す。
図8に示す例では、端部領域Reは、包装シート10の内面側に折り返されているが、外面側に折り返してもよい。包装シート10の四つ折り後に得られる個装吸収性物品100においては、包装シートが2枚重ねられたゾーンと、包装シートが3枚重ねられたゾーンと、包装シートが4枚重ねられたゾーンとが形成される。すなわち、
図7及び
図9に示すように、縦方向D1の中央に、包装シートが3枚以上重ねられたゾーン(3枚以上重ねゾーン若しくは厚ゾーンZa)が形成され、さらにこの3枚以上重ねゾーンZa内に、4枚重ねゾーンZbが形成される。
【0068】
上述のように、包装シートの重ね枚数が多いゾーンほど、シール15、15のシール強度が強くなる傾向があり、開封時に破損し易くなるので、上記の3枚以上重ねゾーンZaに含まれる包装シート10の領域を補強しておくことが好ましい。すなわち、第1領域R1の第2領域R2に重なる領域R1a、第2領域R2のうち第1領域R1に重なる領域R2a、及び第3領域R3の、第1領域R1と第2領域R2との重なりに対応する領域R3aの1つ以上に、強度向上層20を形成することが好ましい。また、領域R1a、領域R2a、及び領域R3aの全てに強度向上層20を形成することが好ましい。
【0069】
また、本形態の四つ折り構造においては、
図8に示すように、4枚以上重ねゾーンZbに含まれる包装シート10の領域を少なくとも、補強しておくことが好ましい。そのために、強度向上層20を、第1領域R1のうち包装シートの4枚重ねゾーンZbに含まれる領域R1b、第2領域R2のうち包装シートの4枚重ねゾーンZbに含まれる領域R2b、及び第3領域R3のうち包装シートの4枚重ねゾーンZbに含まれる領域R3bの1つ以上に強度向上層20を形成することが好ましい。
【0070】
図5を参照して説明したように、領域R1a、領域R2a、及び領域R3aのいずれに設けられる強度向上層20についても、それぞれ領域R1a、領域R2a、及び領域R3aを含むように、すなわち、それぞれ領域R1a、領域R2a、及び領域R3aの縦方向D1の端縁を越えて形成されていてよい。また、
図8に示すように、強度向上層20は、領域R1bの縦方向D1の両端位置を越えて、領域R2bの縦方向D1の終端位置を越えて、また領域R3bの縦方向D1の両端位置を越えて延在していてよい。領域R1b、領域R2b、及び領域R3bのいずれについても、これらの領域の縦方向D1の終端位置を越えて延在する延在長さはそれぞれ、0超~20mm、或いは5~10mmであってよい。但し、領域R1bを含む範囲で形成された強度向上層20は、
図8に示すように、平面視で止着テープ30と重なっていてよい。包装シート10の、止着テープ30が設けられている周辺部分も、開封時に力が集中し易いので破損が生じ易い部分であるので、
図9に示すように、強度向上層20が平面視で止着テープ30に重なることで、止着テープ30が設けられている付近の部分が補強される。
【0071】
第2実施形態においても、包装シート10の面全体ではなく、開封時に包装シート10の破損が生じ易い領域に強度向上層20を形成し、破損が生じ難い領域には強度向上層20を形成しないことで、強度向上層20の材料を節約しつつ、効率的に包装シート10の強度を向上できる。なお、包装シート10の全体の強度向上という観点からは、
図2に示す例と同様に、包装シート10の面全体にわたって強度向上層20が設けることが好ましい。
【0072】
<第3実施形態>
図10及び
図11に、第3実施形態による個装吸収性物品における包装シート10を展開した状態を内面から見た平面図を示す。
図10及び
図11においては吸収性物品1の図示は省略するが、
図10及び
図11に示す形態においても、吸収性物品1を包装する構造は、第1実施形態(
図1~
図4等)と同様である。なお、以下の第3実施形態は、強度向上層20が包装シート10の内面に設けられた例に基づき説明するが、上述のように強度向上層20は、強度向上層20の種類に応じて包装シート10の外面に形成されていてもよいし、包装シート10の両面に形成されていてもよい。
【0073】
第3実施形態では、強度向上層20は、ヒートシール剤を塗布することによって形成されている。ヒートシール剤を2つの材料間に介在させることで、その2つの材料の接合を助成する剤である。ヒートシール剤は、熱可塑性樹脂を含むものであってよく、オレフィン系ヒートシール剤であると好ましい。また、ヒートシール剤は、樹脂粒子の水分散体であってよい。ヒートシール剤の具体例としては、三井化学株式会社製「ケミパール(登録商標)」シリーズ等が挙げられる。
【0074】
強度向上剤がヒートシール剤であることで、紙製の包装シート10のシール部15、15(
図1)の形成に、ヒートシールを利用できる。ヒートシールによって形成されたシール部のシール強度は、剤を介在させることなく包装シートの物理的な変形によるシールと比べて、高いシール強度を得ることができる。
【0075】
本形態でも、ヒートシール剤は、
図2に示すように、包装シート10の面の全体に塗布されていてもよいし、包装シート10の面の一部のみに塗布されていてもよい。但し、ヒートシール剤を内面全体に均一に塗布した場合、ヒートシール剤の種類、ヒートシール時の条件によっては、シール部15、15のシール強度が強くなり過ぎる場合がある。そのため、強度向上層20の目付を、シール部15が形成される包装シート10の横方向D2の両縁部と、その他の領域とで異ならせることができる。例えば、
図10に示すように、横方向D2の両縁に形成された縁部強度向上層21、21の目付を、縁部強度向上層21、21間の領域の中央強度向上層22の目付より小さくすることができる。
【0076】
一方、ヒートシール剤の種類、ヒートシール時の条件によっては、ヒートシール剤を面全体に均一に塗布した場合、包装シート10が十分に補強されているものの、シール強度が弱くなってしまう場合もあり得る。そのような場合は、縁部強度向上層21、21の目付を、縁部強度向上層21、21間の領域の中央強度向上層22の目付より大きくしてもよい。
【0077】
なお、中央強度向上層22は、縦方向D1にわたって連続して形成されていなくてもよく、
図11に示すように、縦方向D1に不連続に形成されていてもよい。
図11における中央強度向上層22の形成範囲は、
図5を参照して説明した強度向上層22の形成範囲に対応している。すなわち、中央強度向上層22が、厚ゾーン(3枚以上重ねゾーン)Za(
図1及び
図4)に含まれる領域R1aを含む領域、領域R2aを含む領域、及び領域R3aを含む領域に形成されている。
図11に示す例では、包装シート10の、横方向D2の両縁部間の主領域において、破損が生じ易い厚ゾーン(3枚以上重ねゾーン)Zaに対応する領域の強度を向上できる。上記主領域に強度向上層を設けない領域があることで、強度向上層の材料を節約しつつ、効率的に包装シート10の強度を向上できる。
【0078】
<第4実施形態>
図12及び
図13に、第4実施形態による個装吸収性物品における包装シート10を展開した状態を内面から見た平面図を示す。第4実施形態も、第1実施形態(
図1~
図4等)で説明したものと同様の吸収性物品1が包装シート10で包装された構成を有するが、
図12及び
図13においては、吸収性物品1の図示は省略する。なお、以下の第4実施形態についても、強度向上層20が包装シート10の内面に設けられた例に基づき説明するが、上述のように強度向上層20は、強度向上層20の種類に応じて包装シート10の外面に形成されていてもよいし、包装シート10の両面に形成されていてもよい。
【0079】
第4実施形態では、強度向上層20がパターンで形成されている。また、
図12及び
図13に示す例における強度向上層20のパターンは、使用者が通常の方法で包装シート10の面を見た時に、強度向上層の形成加工を施した領域内で、強度向上層20が設けられていない部分が使用者に認識可能なものである。しかしながら、強度向上層20のパターンは、使用者に通常の方法で認識可能でない微細なパターンであってもよい。強度向上層20のパターンは、例えば、
図12に示すように、複数の線状部を含むパターンであってよい。
図12に示す例では、強度向上層20のパターンは、所定の一方向に沿って延在する、互いに離隔した複数の線状部20A、20A、…と、当該複数の線状部20A、20A、…と交差する方向に延在する、互いに離隔した線状部20B、20B、…とを含む。
【0080】
強度向上層20がパターン化されていることで、包装シート10の強度向上を図ることができると共に、紙が元来有する折れ易さ、手触り等もより強く維持することができる。よって、例えば、個装吸収性物品の製造時に包装シート10の折り畳み工程において、包装シート10の折り畳みが容易になる等の利点がある。また、強度向上層20の材料も減らすことができるので、コスト削減に繋がる。
【0081】
なお、強度向上層20がパターンで形成されている場合、強度向上層の形成加工を施した領域の面積に対し、強度向上層が配された面積の割合は40~95%とすることができる。
【0082】
強度向上層20のパターンは、
図12のものに限られず、別の角度で延在する線状部の組合せ、例えば格子状であってもよいし、使用者が通常の方法で可能なドット状であってもよい。また、強度向上層20が、絵、文字等の情報を含むパターンで配されていてもよいし、ランダムに配されていてもよい。強度向上層20のパターンは、包装シート10の破れを防止できるように形成されることが好ましい。ここで、繊維の集合体である紙は抄紙時には進行方向に繊維が配向するので、繊維の延在方向(繊維の主配向)であるMD方向と、MD方向に直交する方向であるCD方向とを有する。よって、紙製の包装シート10もMD方向とCD方向とを有し、その場合、縦方向D1及び横方向D2のどちらかが紙のMD方向(紙の繊維の延在方向)となっていてもよく、横方向D2がMD方向となることが多い。紙はMD方向に沿って破れ易いので、上記の強度向上層20のパターンの線状部も、包装シート10のMD方向に沿った破れを阻止するように、例えばMD方向に交差するような方向に形成されていると好ましい。すなわち、紙のMD方向に交差する方向に延在した線状部を含むパターンで強度向上層20を形成することで、特に効果的に包装シート10の破れを防止できる。強度向上層20の線状部パターンと包装シート10の繊維延在方向との関係については、以下の変形例(
図13)においても更に説明する。
【0083】
図13に、第4実施形態における強度向上層20の変形例を示す。強度向上層の形成加工は、
図12に示すように面全体にわたって施されているのではなく、
図13に示すように、内面の一部に施されていてもよい。包装シート10の面の一部に強度向上層20を形成する場合、
図5を参照して説明したように、破損が生じ易い厚ゾーン(3枚以上重ねゾーン)Zaに対応する領域R1a、領域R2a、及び領域R3aの1つ以上に強度向上層形成加工を施すことが好ましい。
【0084】
強度向上層形成加工を面の一部に施す場合、厚ゾーン(3枚以上重ねゾーン)Zaに対応する領域R1aを含む領域、領域R2aを含む領域、及び領域R3aを含む領域の1つ以上に施すことが好ましい。また、
図6を参照して説明したように、強度向上層20の形成加工が施される領域R3aを含む領域が、第1折り線F1及び第2折り線F2をそれぞれ越える範囲であると、好ましい。
図13に示す強度向上層20の形成加工が施される範囲は、
図6に示す範囲と同様であり、同様の効果を奏する。
【0085】
また、
図13には、個装吸収性物品100(
図1)を開封する際の、典型的な破れの例TRを示す。破れTRは、例えば、包装シート10の第1領域R1の止着テープ30が設けられている付近に生じ易い。また、破れ例TRは、3枚以上重ねゾーンZa(
図1及び
図4等)における包装シート10に生じ易く、特に第1領域R1を縦方向D1外側に展開した後、第2領域R2を縦方向D1外側に展開して第3領域R3から剥がしていく際に、第3領域R3における領域R3aに生じ易い。上述のように包装シート10の縦方向D1及び横方向D2のどちらがMD方向(又はCD方向)になっていてもよいが、
図13に示す例では、紙のMD方向を横方向D2とし、CD方向を縦方向D1としている。そのため、破れ例TRはいずれも、
図13に示されているように、概ね横方向D2に形成され易い。さらに詳細に言えば、破れ例TRの方向の典型的な進展方向は、MD方向(横方向D2)からやや逸脱して、横方向D2に対して0°超~20°の角度をなす。よって、強度向上層20が、この破れTRの進展方向に対して直交するように形成されていれば、破れの進行を阻止する作用が高まるので、好ましい。よって、例えば、強度向上層20のパターンに含まれる線状部の延在方向が横方向D2に対してなす角度を70°~90°、好ましくは70°~90°未満とすることが好ましい。より具体的には、
図13において右側に傾いている線状部20A、20A、…の延在方向の、横方向D2に対する角度α
Aを70°~90°、好ましくは70°~90°未満とし、同様に、左側に傾いている線状部20B、20B、…の延在方向の、横方向D2に対する角度α
Bも70°~90°、好ましくは70°~90未満とすることができる。線状部20A、20A、…及び線状部20B、20B、…の両方が形成されていることで、第3領域R3の領域R3aにおいて生じやすい左右の破れのいずれも防止することができる。
【0086】
さらに、
図14に、第4実施形態による個装吸収性物品における包装シート10の強度向上層20の別の変形例を示す。
図14に示す例でも、強度向上層20は、複数の線状部を含むパターンで形成されているが、各線が不連続になっている。より具体的には、線状部20Aが、離隔した線状部要素25A、25A、…で構成されており、線状部20Bが、離間した線状部要素25B、25B、…で構成されている。この場合、一直線状に配置された線状部要素同士の間隔は、線状部要素の長さより小さくなっていることが好ましい。
図14に示すように、複数の線状部が不連続な線状部要素からなるパターンは、強度向上層が散在して配置されることになるので、強度向上層の材料を節約するという観点、及び紙本来の特性(折れ易さ、手触り等)をできるだけ維持するという観点からは好ましい。
【0087】
図15に、第4実施形態による個装吸収性物品における包装シート10のさらに別の変形例を示す。
図15には、
図14に示す例のように、強度向上層20のパターンが、複数の線状部20A、20A、…及び20B、20B、…を含み、且つ線状部20Aが離隔した線状部要素25A、25A、…を含んでおり、線状部20Bが離隔した線状部要素25B、25B、…を含んでいる。ここで、同じ傾斜を有する線状部20A、20A、…に着目する(着目のため、
図15においては、線状部20B、20B、…を点線で示す)。
図15に示すように、同じ傾斜を有する線状部20A、20A、…のうち隣り合う線状部同士で比較すると、含まれる線状部要素25A、25A、…は、互いに千鳥状に配置されていてよい。
【0088】
さらに、上述の裂けTRの進展方向がMD方向(横方向D2)に対して0°~20°であることに鑑みると、
図15に示すように、隣り合う線状部20A、20Aのうち一方の線状部20Aに含まれる線状部要素25A、25A間の任意の位置で(すなわち強度向上層がない任意の場所において)横方向D2に対して0°~20°の角度をなす任意の仮想直線を引いた場合、当該仮想直線が、もう一方の線状部20Aに含まれる線状部要素25Aに交差することが好ましい。
図15には、仮想直線の例として、横方向D2に平行な仮想直線X
0、横方向D2に対して10°の角度をなす仮想直線X
10、及び横方向D2に対して20°の角度をなす仮想直線X
20を示す。これにより、少ない材料で強度向上層20による包装シート10の補強が確実にできる。なお、
図15においては、線状部20A、20A、…について説明したが、線状部20B、20B、…についても同様である。
【実施例0089】
紙製の包装シートのMD方向及びCD方向の引張強度をそれぞれ測定した。
【0090】
=引張強度の測定=
包装シートから、包装シートのMD方向120mm×包装シートのCD方向25mmの大きさの長方形の試験片を切り出した。試験片のMD方向の両端を、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン」)のチャック(クランプ)により把持し、チャック間隔50mm、引張速度500mm/分で引っ張り、破断時の荷重(最大荷重)を測定した。なお、測定は5回行い、その算術平均を、試験対象の包装シートのMD方向引張強度(N)として記録した。
【0091】
包装シートから、包装シートのMD方向25mm×包装シートのCD方向120mmの大きさの長方形の試験片を切り出し、試験片のCD方向の両端を、上記引張試験機のチャックにより把持して、上記同様に荷重を測定した。同様にして、CD方向引張強度(N)を求めた。
【0092】
(例1-1)
目付17g/m2の雲竜紙(丸菱ペーパーテック株式会社製)の外面に、フレキソ印刷によって4色ベタ印刷を施した包装シートを準備した。
【0093】
(例1-2)
例1-1の包装シートの内面に、ヒートシール剤(三井化学株式会社製「ケミパール(登録商標)S500」)を、フレキソ印刷によって2.7g/m2の目付でベタ塗布した。
【0094】
表1に、例1-1及び例1-2の測定結果を示す。
【0095】
【0096】
表1に示すように、強度向上層(ヒートシール剤)を設けることで、MD方向及びCD方向の両方で引張強度が顕著に向上することが分かった。
【0097】
(例2-1)
目付20g/m2の雲竜紙(丸菱ペーパーテック株式会社製)からなる包装シートを準備した。
【0098】
(例2-2)
例2-1の包装シートの内面に、PEフィルムを厚み6μmとなるように押出ラミネート加工した。
【0099】
(例2-3)
目付14g/m2の雲竜紙(丸菱ペーパーテック株式会社製)からなる包装シートを準備した。
【0100】
(例2-4)
例2-3の包装シートの内面に、PEフィルムを厚み8μmとなるように押出ラミネート加工した。
【0101】
表2に、例2-1~例2-4の測定結果を示す。
【0102】
【0103】
表2に示すように、強度向上層(樹脂フィルムのラミネート)を設けることによっても、MD方向及びCD方向の両方で引張強度が顕著に向上することが分かった。
【0104】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、様々な変更、修正、置換、付加、削除、及び組合せ等が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。また、上述した構成要素は任意に組合せが可能である。