(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143343
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】下水管の臭気物質除去装置及び該装置を用いた臭気物質除去方法
(51)【国際特許分類】
E03F 3/04 20060101AFI20241003BHJP
F16L 55/07 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E03F3/04 Z
F16L55/07 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055970
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219358
【氏名又は名称】東亜グラウト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】大岡 太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏明
(72)【発明者】
【氏名】張 満良
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA20
(57)【要約】
【課題】 下水管から発生する臭気が各家庭内に流入することを防止することのできる臭気物質除去装置、該装置を用いた臭気物質除去方法を提供すること。
【課題を解決するための手段】
下水道本管から分岐された取付管と下水道利用者の施設から延出された排水管渠500との間に設置され、下水道利用者の施設からの排水を前記取付管へ流出させる汚水桝10内に設けられ、汚水桝10内で気流を生起させるファン14と、ファン14によって生起された気流の流れ経路の途中位置に設置され気流内の臭気を生起させる臭気物質を吸着収集可能なフィルター16と、有し、汚水桝10の内部空間を用いて臭気の除去を行わんとするものである。これにより、下水道本管側から上がってきた臭気物質を汚水桝10内で除去することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道本管、該下水道本管から分岐された取付管からの臭気を除去する下水管の臭気物質除去装置において、
前記下水道本管から分岐された取付管と下水道利用者の施設から延出された排水管渠との間に設置され、下水道利用者の施設からの排水を前記取付管へ流出させる汚水桝の本体筐体内に設けられ、
前記本体筐体内で気流を生起させるファンと、
前記本体筐体内にて前記ファンによって生起された気流の流れ経路の途中位置に設置され気流内の臭気を生起させる臭気物質を吸着収集可能なフィルターと、
を含むことを特徴とする下水管の臭気物質除去装置。
【請求項2】
前記ファン及びフィルターは、前記気流を生起せしめることができる状態にて、本体筐体内に設置可能なサイズに形成された枠部材に装着されて設けられたことを特徴とする請求項1に記載の下水管の臭気物質除去装置。
【請求項3】
前記フィルターの前記気流の上流側には、水分を除去可能な除湿フィルターが設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の下水管の臭気物質除去装置。
【請求項4】
前記枠部材は、ファン及びフィルターが前記本体筐体の底部から所定高さ浮いた状態で支持可能とする脚部を有することを特徴とする請求項2に記載の下水管の臭気物質除去装置。
【請求項5】
前記フィルターは、主としてスチレンを吸着可能なフィルターであり、活性炭、ゼオライト又はシリカを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の下水管の臭気物質除去装置。
【請求項6】
前記内部枠部材には、前記ファンを駆動するための駆動源が装填されたことを特徴とする請求項2に記載の下水管の臭気物質除去装置。
【請求項7】
前記枠部材は、前記本体筐体内の空間に納められるサイズの上部が開放され且つ少なくとも底部が通気性を有する内部筐体として構成され、
前記内部筐体の最上部に形成され、前記ファンが装填される底部が通気性を有するファン収納室と、
前記ファン収納室の前記底部に仕切られて、該ファン収納室の下方に設けられ、前記フィルターが装填される底部が通気性を有するフィルター収納室と、
前記内部筐体内の前記ファン収納室とフィルター収納室の側部に壁部にて仕切られて設けられた駆動源収容部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の下水管の臭気物質除去装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載の下水管の臭気物質除去装置を用いた下水管の臭気物質除去方法において、
前記本体筐体内でファンを駆動させて気流を生起させ、
該ファンによって生起された前記本体筐体内での気流の流れ経路の途中位置に臭気物質を吸着収集可能なフィルターを設置し、前記本体筐体内にて臭気物質を除去することを特徴とする臭気物質除去方法。
【請求項9】
前記フィルターの前記気流の上流側に水分を除去可能な除湿フィルターを設け、前記フィルターを通過する前の気流から水分を除去する工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の臭気物質除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水管の臭気物質除去装置及び該装置を用いた有害物質除去方法、特に下水道本管や取付管などの下水管の補修直後に多く発生する下水管内のスチレンなどの物質に起因する臭気を除去するための下水管の臭気物質除去装置及び該装置を用いた臭気物質除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水管等の既設管は長年の使用により劣化し、その耐用年数は一般に約50年とされている。そのため、耐用年数を超えた既設管は年々増加の一途をたどっている。特に地中に埋設されている下水道本管などの既設管は、地盤変動等による様々な変形、例えばズレによる段差の発生や径の変化などを生じることが不可避である。また、この様な変形の発生だけでなく、経時的な老朽化に伴って補修や交換が必要になる。こうした種々の事情から、既設管は所定の時期に何らかの補修が必要となるのが現状である。
【0003】
特に下水道の場合、下水道本管だけでなく、本管から分岐し、汚水桝を介して各戸の汚水管渠につながる取付管もまた、老朽化に伴って補修(更生)工事が必要となる。
【0004】
特許文献1には、上記の様な下水道本管下水道本管や取付管を更生する方法として、管の内壁に新たな管の層を形成する既設管の補修方法が開示されている。
【0005】
すなわち、既設管を取り壊したり、交換したりすることなく、その既設管の内側に未硬化の樹脂製の内管(管状のライニング材)を導入し、その後、これを管内側からの光照射や熱の付加により硬化させることで、既設管の内側に新たな管路(更生管)を構築する技術が既知である。
【0006】
このような管路の補修方法によれば、地表の道路等を掘り返して既設管の取り替え工事を行う必要がなく、交通網への影響や近隣の住民の不便を最小限で済ませる事ができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、下水管等の既設管の内側に更生管を形成する方法では、既設管補修用のライニング材を構成する樹脂材料の中には、これを硬化させるための材料としてスチレンが含有されていることがある。そして、既設管の補修工事の後、特に数日の間は、硬化したライニング材の中に残留している遊離スチレンがライニング材から気化し、更生管の内側空間に入り、スチレン濃度の高い臭気となる。したがって、スチレンの臭気は、この更生された既設管が下水道本管の場合には、そこから分岐された取付管を介して、また、取付管の更生の場合にはこの取付管から桝を通し、直接、地上や各家庭の排水管渠まで達し、地上や各家庭内まで異臭などによる悪影響を与えるおそれが有る。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、下水管からの臭気、特に、補修後の下水管から発生するスチレン等に起因する臭気が各家庭内に流入することを防止することのできる汚水桝、該汚水桝を用いた臭気物質除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る下水管の臭気物質除去装置は、
下水道本管、該下水道本管から分岐された取付管からの臭気を除去する下水管の臭気物質除去装置において、
前記下水道本管から分岐された取付管と下水道利用者の施設から延出された排水管渠との間に設置され、下水道利用者の施設からの排水を前記取付管へ流出させる汚水桝の本体筐体内に設けられ、
前記本体筐体内で気流を生起させるファンと、
前記本体筐体内にて前記ファンによって生起された気流の流れ経路の途中位置に設置され気流内の臭気を生起させる臭気物質を吸着収集可能なフィルターと、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明は、取付管と排水管渠との間で所定の空間を形成している汚水桝に着眼し、この汚水桝の内部空間を用いて臭気の除去を行わんとするものである。上記構成によれば、例えば、管路の更生作業等の後において下水道本管側から上がってきたスチレンなどの物質、さらにこれらの物質に起因して生起する臭気が汚水桝の本体筐体内に設けられたファンによって生起された気流によって、フィルターを通過することとなる。汚水桝の本体筐体は仕切られた空間で有ることから、その中で生じせしめた気流においてフィルターを機能させることで、より効率的な臭気除去が可能となっている。
【0012】
したがって、下水道本管から取付管を通って上がってきた臭気物質及び臭気は汚水桝の段階で収集除去され、臭気が汚水桝の上流へ上り、下水道使用者の生活領域に悪影響を与えることが的確に防止される。
【0013】
請求項2に係る下水管の臭気物質除去装置は、請求項1に記載の下水管の臭気物質除去装置において、
前記ファン及びフィルターは、前記気流を生起せしめることができる状態にて、本体筐体内に設置可能なサイズに形成された枠部材に装着されて設けられたことを特徴とする。
【0014】
これによれば、前記ファン及びフィルターを汚水桝の本体筐体の内壁等にそれぞれ取り付ける作業を行うことなく、内部枠部材を本体筐体内に装填することで設置することが可能となり、既設の汚水桝について改変する作業を回避して、本発明の適用が可能となる。
請求項3に係る下水管の臭気物質除去装置は、請求項1又は2に記載の下水管の臭気物質除去装置において、
前記フィルターの前記気流の上流側には、水分を除去可能な除湿フィルターが設けられたことを特徴とする。
【0015】
この除湿の工程を含むことで、除湿された気流が下流側の臭気用のフィルターを通過することから臭気用のフィルターによる臭気の作用を向上させることができる。
【0016】
請求項4に係る下水管の臭気物質除去装置は、請求項2に記載の下水管の臭気物質除去装置において、
前記枠部材は、ファン及びフィルターが前記本体筐体の底部から所定高さ浮いた状態で支持可能とする脚部を有することを特徴とする。
【0017】
これによれば、ファン及びフィルターの設けられた内部枠部材を既設の汚水桝の本体筐体内に煩雑な取付作業を行うことなく簡単に設置することができ、さらにファンやフィルターの高さを予め的確に調整しておくことが可能となる。すなわち、水が溜まる状況も生じる汚水桝において、その地域や環境に応じて脚部の長さを調整することで高さ調整が可能であり、での適切な設置が実現される。
【0018】
請求項5に係る汚水桝は、請求項1に係る下水管の臭気物質除去装置において、
前記フィルターは、主としてスチレンを吸着可能なフィルターであり、活性炭、ゼオライト又はシリカを含んでいることを特徴とする。
【0019】
これにより、一般の利用者に臭気による悪影響の生じる典型的な状況である下水道本管や取付管の補修工事におけるスチレンの発生とそれによる臭気を的確に除去することが可能となる。さらに、スチレン以外の種々の有害物質や臭気に付いても適宜除去することができる。
【0020】
請求項6に係る下水管の臭気物質除去装置は、請求項2に係る下水管の臭気物質除去装置において、
前記内部枠部材には、前記ファンを駆動するための駆動源が装填されたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、前記ファンの駆動のために汚水桝の外側に駆動源を設置し、それと前記ファンと接続するための配線の引き回しなどの煩雑さを解消することができる。
【0022】
請求項7に係る下水管の臭気物質除去装置は、請求項2に係る下水管の臭気物質除去装置において、
前記枠部材は、前記本体筐体内の空間に納められるサイズの上部が開放され且つ少なくとも底部が通気性を有する内部筐体として構成され、
前記内部筐体の最上部に形成され、前記ファンが装填される底部が通気性を有するファン収納室と、
前記ファン収納室の前記底部に仕切られて、該ファン収納室の下方に設けられ、前記フィルターが装填される底部が通気性を有するフィルター収納室と、
前記内部筐体内の前記ファン収納室とフィルター収納室の側部に壁部にて仕切られて設けられた駆動源収容部と、
を有することを特徴とする。
【0023】
これによれば、必要な構成要素であるファンやフィルター、さらに駆動部を一つの筐体内にコンパクトに収納することが可能となり、本体筐体内に筐体として構成された内部枠部材を装填するだけで本発明の汚水桝を構成することができる。また、上部開放とした筐体として構成し、底部も通気性を有することから、前記ファンによる気流の形成が的確に行われる。すなわち、内部筐体の側壁により仕切られた気流の経路が形成され、効率的に気流による臭気物質の除去を行うことができる。
【0024】
請求項8に係る下水管の臭気物質除去装置を用いた臭気物質除去方法は、
請求項1から7の何れかに記載の下水管の臭気物質除去装置を用いた下水管の臭気物質除去方法において、
前記本体筐体内でファンを駆動させて気流を生起させ、
該ファンによって生起された前記本体筐体内での気流の流れ経路の途中位置に臭気物質を吸着収集可能なフィルターを設置し、前記本体筐体内にて臭気物質を除去することを特徴とする。
【0025】
本発明に係る下水管の臭気物質除去装置を用いた臭気物質除去方法によれば、取付管と排水管渠との間において、所定の空間を形成している汚水桝の本体筐体内で、空気の臭気の除去を行うことが可能となる。すなわち、下水道本管側から上がってきたスチレンなどの物質、さらにこれらの物質に起因して生起する臭気が一般家庭などの下水道の利用者の段階に至る前段階で、効果的に除去しようとするものである。汚水桝は、仕切られた空間を形成しており、この空間で臭気物質の除去を行うことは外部に拡散される前に臭気を抑えることができることから、一般の下水道の利用者においても有意な効果となる。
請求項9に係る下水管の臭気物質除去装置を用いた臭気物質除去方法は、請求項8に記載の臭気物質除去方法において、
前記フィルターの前記気流の上流側に水分を除去可能な除湿フィルターを設け、前記フィルターを通過する前の気流から水分を除去する工程を含むことを特徴とする。
【0026】
この除湿の工程を含むことで、除湿された気流が下流側の臭気用のフィルターを通過することから臭気用のフィルターによる臭気の作用を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、下水道本管や取付管の側から下水道利用者側への臭気物質の流れを汚水桝の段階で除去することができる。特に、既設の汚水桝に対してその基本構成を改変するなどの作業を行うことなく、例えば、下水道本管や取付管の補修工事の後に発生するスチレン等の臭気物質による悪影響を効果的に抑制することが可能となる。特に、下水管の上流側の一般家庭などへの臭気の流れを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る臭気物質除去装置の設置された汚水桝の概念構成を示す概念説明図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る臭気物質除去装置の構成説明図である。
【
図3】本発明の他の実施の形態に係る臭気物質除去装置の構成説明図であり、除湿フィルターを付加した構成を示している。
【
図4】本発明の他の実施の形態(駆動部を内部に装填した例)を示す構成説明図である。
【
図5】本発明の汚水桝の本体筐体内に設置される枠状体の一部切り欠き斜視図である。
【
図6】本発明の臭気物質除去装置が適用される下水道システムの概略説明図である(本願発明装置を破線で示している)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図6は本発明の下水管の臭気物質除去装置が適用される下水道システムの概略構成を示しており、図示の様に、下水道本管100は地下に埋設されており、所定間隔毎にマンホール200が設けられている。そして、この下水道本100には取付管300が分岐して形成されている。取付管300は、下水道利用者の家400などから排出される使用後の水を下水道管100に流し込むための管路であり、家400からの排水管渠500に連通されている。
【0030】
そして、これら取付管300と排水管渠500との連結部分には、汚水桝10が設けられている。この汚水桝10は、上記家400からの排水を一旦溜め異物などを止めて取付管300側に流すためのものである。また、汚水桝10によっては雨水なども同時に集水するもの(合流式下水道)も存在しており、サイズや形状は種々のものが存在する。
円形のものでは、内径は150mm、200mm、500mm、深さは400mm~1000mm程度である。また、材質は古いものではコンクリートが使用され、近年はポリ塩化ビニル製のものが使用されている。なお、上部はゴミなどが進入しないように蓋で塞がれているが、密閉状態までは確保されていないが、できるだけ外部への臭気の防止が図られる程度に塞がれている。なお、上記合流式下水道で雨水も流れ込む汚水桝の場合、蓋はグレーチング(格子状のもの)が用いられている。
【0031】
本発明において特徴的なことは、下水道本管100と家400との間において所定の空間を形成している上記汚水桝10において臭気の除去を行うための構成を設けたことである。本願発明に係る構成の設置状態の理解を容易にするため本願発明に係る装置を破線にて示している。
【0032】
図1は、汚水桝10内に設置される本発明に係るの概念構成を示しており、図面の簡略化のために線図にて示し、壁部の肉厚などは省略している。図示の様に、汚水桝10は本体筐体10a及び蓋10bで構成されており、本体筐体10aには、下流側に取付管300、上流側に排水管渠500が接続され、上部開口は蓋10bによって塞がれ、仕切られた空間12が形成されている。
【0033】
そして、この本体筐体10a内には、この内部空間12で気流を生起させるためのファン14、このファン14の駆動によって生じる気流600の途中位置、本例ではファン14の直下にフィルター16が配置されている。すなわち、内部空間12の内部で気流を生起させ、下流である取付管300さらにその下流の下水道本管100から上昇してくる気体がフィルター16を通過する様に構成している。
【0034】
上記の様に、汚水桝10は密閉ではないものの所定の仕切り状態は確保されているので、この内部空間12で内部の気体を循環させることで効果的なフィルター16による臭気の除去が可能となっている。
【0035】
すなわち、本体筐体という仕切られた空間での気流の発生とその気流経路でのフィルター機能の発揮により集中した効率的な臭気除去が可能となっている。なお、下水道システム全体における本発明の下水管の臭気物質除去装置の配置の理解の容易化のために、
図6に臭気物質除去装置(枠部材20)を破線にて示している。
【0036】
本願発明の必須要素であるファン14やフィルター16の本体筐体10a内での設置は、空間12で気流が生じ、その気流がフィルター16を通過するように行われれば良く、設置の仕方は種々設定される。すなわち、下記の様に別部材にそれらを装填する様にしても良く、また、状況によってはファン14やフィルター16をそのまま本体筐体10内に取り付けることで設置することも許容される。
【0037】
また、フィルター16は、例えば、主としてスチレンを吸着可能なフィルターが使用可能であり、活性炭、ゼオライト又はシリカを含んでいるフィルターでいることが好適であり、例えば、1~3mmの粒径の粒状の形態で設置される。一般の利用者に臭気による悪影響の生じる典型的な状況は、下水道本管や取付管の補修工事におけるスチレンの発生であることから、それによる臭気を的確に除去することが可能な材料を利用することが好適である。
【0038】
図2~
図4は本発明の実施の形態を示しており、図示の様に、ファン14やフィルター16が、気流を生起せしめることができる状態にて、汚水桝10の本体筐体10a内に設置可能なサイズに形成された枠部材20に装着されて設けられている。
【0039】
この枠部材20は本体筐体10a内に収まるサイズに調整されており、内部又は側部近傍にファン14の駆動用のバッテリー18も設置されている。さらには、下部に脚部22を備えており、枠部材20が本体筐体10aの底部から浮いた状態が確保されるようになっている。
【0040】
この構成によれば、ファン14やフィルター16を汚水桝10の本体筐体10aの内壁等に固定する作業を行うことなく、本体筐体内10a内に配置することができる。すなわち、この内部枠部材20に必要な構成要素を取付配置することにより、枠部材20を汚水桝10内に設置するだけで、本発明に係る装置構成を完成させることができ、既設の汚水桝10をそのまま使用しての設置が可能となっている。既設の汚水桝を改変するという煩雑な作業を回避することが可能である。
【0041】
これにより、ファン14が駆動されることにより本体筐体10a内部で気流が発生する。そして、この気流の途中位置にはフィルター16が存在しており、シリカなどの臭気発生物質及び発生している臭気を除去することができる。すなわち、更生作業などが行われたばかりの下水道本管100からの臭気は、家400に流れる前に汚水桝10にて解消される。
【0042】
図2に係る実施の形態では、汚水桝の本体筐体10a内に設置される枠部材20の上部位置に、ファン14が下方から上方への気流を生じさせるように配置され、その下方位置にフィルター16が配置されている。フィルター16の設けられている箇所の底部24は、気流600が通過し得る様に有孔の構成となっている。さらに、フィルター16とファン14との間の仕切り26の部分も気体の通過が良好になされる様に有孔の構成となっている。
【0043】
また、枠部材20の上部は、本体筐体10aの外部からの水の落下浸入や蓋10bからの結露水滴の落下などを考慮して塞がれており、ファン14から吹き出された気流は、枠部材20の側壁に設けられた開口から矢印700方向(横方向)に吹き出される。
また、脚部22はその伸長長さを変えることができる構成を有しており、フィルター16やファン14を所定の高さで保持するように調整される。すなわち、取付管300の開口300aや排水管渠500の開口(図示せず)よりも高い位置に保持する様に長さ調整されている。汚水桝10に家400から流入してくる水等が一旦汚水桝10内に溜まる状況が生じてもフィルター16やファン14が水に浸かることのない様に調整されている。
なお、ファン14の駆動電源は外部のものを用いることも可能であるが、フィルター16やファン14の近傍に駆動源18を設置することも可能である。
【0044】
図3は、2層のフィルター16a、16bを設けた実施の形態を示しており、図示の様に、上下に二つの層を重ねている。この構成の場合、下方側のフィルター16bは、例えば、除湿用のフィルターとすることが可能であり、除湿剤としての粒状(例えば、1~3mm)の塩化カルシウムを保持したフィルターとすることが可能である。塩化カルシウムを用いた場合、湿気を吸収して液状化し、下方へ落下し、下水と共に流されることから管理は容易である。
【0045】
この除湿フィルター16bが設けられることで、除湿された気流が上層の臭気用のフィルター16aを通過することから臭気の作用も向上する。なお、この2層のフィルター構造は、両層共に臭気用のフィルターとすることも可能である。
【0046】
また、本図に示した2層式のフィルターにおいても汚水桝10の蓋10bを通しての水の浸入を考慮して、
図2に示した構成と同様に上部を閉塞した横方向への排気方式がとられている。
【0047】
図4は、さらに他の実施の形態を示しており、図示の様に、フィルタ16が立てられて配置されている。この構成では、内部枠部材20の側面が空気流通可能な有孔の面として構成されており、それを通過した気流はフィルター16を通過して、上昇してファン14を通り上方の内部枠部材20の開口部から流出して行く。なお、本実施の形態における配置では、駆動源18はフィルター16の下方側に設置されている。
【0048】
この様にフィルター16やファン14の配置は、汚水桝10の内部の仕切られた空間12内で、ファン14によって気流を生じさせその気流の途中でフィルター16を配置することができれば様々なパターンで配置を行うことが可能である。
【0049】
次に、
図5はさらに具体的な実施の形態を示しており、内部枠部材20の具体的構成の一例が表されている。図示の様に、本体筐体10aに納められるサイズに形成された内部筐体40が脚部22に支持される様に構成されている。内部筐体40の上部は開放されており、また、底部40aも通気性を有する様に貫通孔40bが形成されている。
【0050】
さらに、底部40aの上方には仕切り部40cが形成され、内部筐体40aを上下に分けている。仕切り部40cも通気性を有するように貫通孔40dが形成されている。本実施の形態では底部40a上にフィルター16(図示せず)が設置され、仕切り部材40c上にファン(14)が設置される。
【0051】
さらに、本実施の形態で特徴的なことは、内部筐体40の側部にもう一つの壁部40eで仕切られた部屋として、駆動源収容部40fが形成されている。すなわち、この駆動源収容部40fに図示していない電源や配線を収納するものである。これにより、ファン14の電源などを外部に求めた場合に生じる内部筐体40内と外部電源との接続電線の引き回しなどの煩雑さを解消することができる。また、内部筐体40内での電線の引き回しのために壁部40eには切欠き部40gが設けられている。
【0052】
なお、外部電源を用いる場合には本発明に係る装置を設置してる期間は汚水桝10の蓋10bはその電線を通す為の隙間を確保するために若干開放しておくこととなる。
【0053】
内部筐体40は汚水桝10内において、可及的に浸水しないようにすることが望ましく、脚部22はその長さを調整できるように構成されている。本実施の形態では二重の筒状体にて構成し、筒体に形成された孔22aにピン22bを差し込むことで高さ調整後の脚部22の長さを保持している。
【0054】
さらに、脚部22の下部には内部筐体40の設置状態の安定化を図るため、ベース部24が設けられており、容易な転倒が防止されている。
【符号の説明】
【0055】
10 汚水桝
10a 本体筐体
14 ファン
16 フィルター
20 内部枠部材
22 脚部
24 ベース部
40 内部筐体
40a 内部筐体の底部
40b 内部筐体の仕切り部
40e 壁部
40e 駆動源収容部