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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143357
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電子機器の防水構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20241003BHJP
   H05K 5/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H05K5/02 L
H05K5/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055988
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508319990
【氏名又は名称】株式会社グローセル
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高尾 晃
(72)【発明者】
【氏名】石田 直也
(72)【発明者】
【氏名】永島 正章
(72)【発明者】
【氏名】林 禎矢
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AA02
4E360AB12
4E360BA04
4E360BA12
4E360BB05
4E360BB17
4E360BC06
4E360BD03
4E360BD07
4E360EA24
4E360EC05
4E360ED02
4E360ED23
4E360GA29
4E360GA53
4E360GC08
4E360GC14
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で電子機器における良好な防水性を確保する。
【解決手段】収容物が載置される底面部と底面部の外周部から突出された周面部とを有し周面部の一端が開口として形成され内部の空間が配置空間とされたケース体と、開口から配置空間に挿入される蓋体とを備え、蓋体は収容物の少なくとも一部を覆うカバー部と少なくとも一部がカバー部の外周面より外方に突出されたパッキンとを有しカバー部とパッキンが一体成形され、カバー部には蓋体の配置空間への挿入方向及び外方に開口された切欠部が形成され、パッキンの一部が切欠部に位置され、パッキンがカバー部の厚み方向における底面部側の面に連続され、パッキンが屈曲された状態で周面部の内周面に密着される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物が載置される底面部と前記底面部の外周部から突出された周面部とを有し前記周面部の一端が開口として形成され内部の空間が配置空間とされたケース体と、
前記開口から前記配置空間に挿入される蓋体とを備え、
前記蓋体は前記収容物の少なくとも一部を覆うカバー部と少なくとも一部が前記カバー部の外周面より外方に突出されたパッキンとを有し前記カバー部と前記パッキンが一体成形され、
前記カバー部には前記蓋体の前記配置空間への挿入方向及び外方に開口された切欠部が形成され、
前記パッキンの一部が前記切欠部に位置され、
前記パッキンが前記カバー部の厚み方向における前記底面部側の面に連続され、
前記パッキンが屈曲された状態で前記周面部の内周面に密着される
電子機器の防水構造。
【請求項2】
前記配置空間が第1の空間と第2の空間を有し、
前記蓋体の前記配置空間への挿入方向において前記第2の空間と前記第1の空間が順に連続して位置され、
前記蓋体が前記第2の空間に挿入されることにより前記第1の空間が閉塞され、
前記内周面における前記第1の空間を形成する部分が第1の周面として形成され、
前記内周面における前記第2の空間を形成する部分が第2の周面として形成され、
前記第2の周面が前記第1の周面より外側に位置され、
前記パッキンが前記第2の周面に密着される
請求項1に記載の電子機器の防水構造。
【請求項3】
前記カバー部の厚みを第1の寸法とし、
前記蓋体の厚み方向に直交する方向における前記パッキンと前記カバー部の重なる長さを第2の寸法としたときに、
前記第1の寸法が3mm以下にされ、
前記第2の寸法が前記第1の寸法以下にされ、
前記第2の寸法が1mm以上にされた
請求項1又は請求項2に記載の電子機器の防水構造。
【請求項4】
前記カバー部の厚みを第1の寸法とし、
前記蓋体の厚み方向における前記パッキンと前記カバー部の重なる長さを第3の寸法としたときに、
前記第1の寸法と前記第3の寸法の差が0.7mm以上にされた
請求項1又は請求項2に記載の電子機器の防水構造。
【請求項5】
前記ケース体には配置ベース部と前記配置ベース部から前記蓋体の前記配置空間への挿入方向に直交する方向に突出された少なくとも一つの配置用突部とが設けられ、
前記開口が前記配置ベース部から前記配置用突部に亘って形成された
請求項1又は請求項2に記載の電子機器の防水構造。
【請求項6】
前記電子機器はトルクセンサである
請求項1又は請求項2に記載の電子機器の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口が形成されたケース体とケース体の内部空間に挿入される蓋体とを有する電子機器の防水構造についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
開口が形成されたケース体と一部がケース体の内部空間に挿入された状態で開口を閉塞する蓋体とを有し、ケース体の内部空間に収納物が収納された状態において収納物に対する防水を図る防水構造を有する電子機器がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-107207号公報
【特許文献2】特開平8-204356号公報
【0004】
特許文献1に記載された電子機器(トルクセンサ)は、内部空間にセンサが収納される複数の凹部が形成されたケース体と弾性を有する材料から成る蓋体(キャップ)とを備え、蓋体が各凹部にそれぞれ圧入されることによりセンサに対する防水が図られている。
【0005】
また、特許文献2には、矩形の板状ケースの外周部における端面にパッキンが接合された蓋体と一方の面が開口されたケース体(箱状ケース)とを備え、蓋体がケース体に挿入されることにより防水が図られる電子機器が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような電子機器においては、簡素な構成で良好な防水性を確保することが望まれている。
【0007】
ところが、特許文献1のようにケース体に複数の凹部が形成される場合には、凹部に対応した数の蓋体が必要になり部品点数の増加を来すおそれがある。また、特許文献2に記載の電子機器においては、パッキンがケース体に対する蓋体の挿入方向と平行な面に接合されているため、蓋体の挿入時にパッキンが板状ケースから捲れ上がったり外れたりして電子機器の防水に支障を来すおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、簡素な構成で電子機器における良好な防水性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子機器の防水構造は、収容物が載置される底面部と前記底面部の外周部から突出された周面部とを有し前記周面部の一端が開口として形成され内部の空間が配置空間とされたケース体と、前記開口から前記配置空間に挿入される蓋体とを備え、前記蓋体は前記収容物の少なくとも一部を覆うカバー部と少なくとも一部が前記カバー部の外周面より外方に突出されたパッキンとを有し前記カバー部と前記パッキンが一体成形され、前記カバー部には前記蓋体の前記配置空間への挿入方向及び外方に開口された切欠部が形成され、前記パッキンの一部が前記切欠部に位置され、前記パッキンが前記カバー部の厚み方向における前記底面部側の面に連続され、前記パッキンが屈曲された状態で前記周面部の内周面に密着されるものである。
【0010】
これにより、蓋体が配置空間に挿入された状態においてパッキンが弾性力によってケース体の周面部に密着される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パッキンが弾性力によって周面部に密着されて配置空間が密閉されるため、簡素な構成で電子機器における良好な防水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図2乃至図9と共に本発明の実施の形態を示すものであり、本図は、防水構造を備える電子機器の斜視図である。
図2】電子機器の断面図である。
図3】電子機器の分解斜視図である。
図4】蓋体とケース体が分離された状態を示す拡大断面図である。
図5】蓋体が第2の空間に挿入された状態を示す拡大断面図である。
図6】パッキンが第2の周面と段差面に密着された状態を示す拡大断面図である。
図7】パッキンの一部がカバー部から下方に突出された例を示す拡大断面図である。
図8】パッキンに補助密着突部が形成された例を示す拡大断面図である。
図9】配置用突部に幅の異なる部分が形成された例を示す電子機器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の電子機器の防水構造を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0014】
以下に示す実施の形態は、本発明電子機器の防水構造をトルクセンサの防水構造に適用したものである。ただし、本発明の適用範囲はトルクセンサの防水構造に限られることはなく、トルクセンサ以外の各種のセンサ装置や他の各種の電子機器の防水構造に広く適用することができる。
【0015】
なお、電子機器は開口が形成されたケース体と開口からケース体の内部空間に挿入される蓋体とを有し、ケース体はケース体に対する蓋体の挿入方向に直交する方向において長手方向を有する形状にされている。以下の説明においては、ケース体に対する蓋体の挿入方向を下方とし、ケース体における長手方向を左右方向として各方向を示す。ただし、以下に示す方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0016】
<電子機器の構成>
まず、電子機器1の構成について説明する(図1乃至図4参照)。
【0017】
電子機器1は、ケース体2と蓋体3とを有している(図1乃至図3参照)。
【0018】
ケース体2は上下方向を向く底面部4と底面部4の外周部から上方に突出された周面部5とを有し、上端に開口6が形成された浅い箱状にされている(図2及び図3参照)。ケース体2の内部は配置空間7として形成されている。ケース体2は、例えば、金属材料によって形成されている。
【0019】
底面部4は略矩形状のベース面部4aとベース面部4aの前後両端部における左右両端部からそれぞれ外方に突出された突状面部4b、4bとを有している(図2及び図3参照)。突状面部4b、4bはベース面部4aより細幅の形状にされている。ベース面部4aの左右方向における中央部には上方に突出された固定部8、8が前後方向に離隔して設けられている。固定部8の上端部には上方に開口された螺穴8aが形成されている。
【0020】
周面部5はベース面部4aから突出された側壁部5a、5aと突状面部4b、4bからそれぞれ突出された突状壁部5b、5bとから成る。ケース体2はベース面部4aと側壁部5a、5aによって形成される部分が配置ベース部9として設けられ、突状面部4b、4bと突状壁部5b、5bによって形成される部分がそれぞれ配置用突部10、10として設けられている。開口6は配置ベース部9から配置用突部10、10に亘って形成されている。なお、ケース体2に配置用突部10は一つだけが設けられていてもよく、三つ以上が、例えば、周方向に離隔して設けられていてもよい。配置ベース部9には制御基板等の図示しない収納物が収納されている。
【0021】
周面部5は底面部4に連続された第1の壁部11と第1の壁部11の上端面における外周側の部分から上方に突出された第2の壁部12とから成る(図3及び図4参照)。第2の壁部12における第1の壁部11からの突出量は第1の壁部11における底面部4からの突出量より小さくされている。
【0022】
第1の壁部11の内周面は第1の周面13として形成され、第2の壁部12の内周面は第2の周面14として形成されている。第2の周面14は第1の周面13より外側に位置され、第1の周面13と第2の周面14の間には上下方向を向く段差面15が形成されている。
【0023】
配置空間7は、底面部4と第1の周面13に囲まれた部分が第1の空間16として形成され、第2の周面14に囲まれた部分が第2の空間17として形成されている。第2の空間17はケース体2の外部の空間に連通されている。第1の空間16は第2の空間17の下側において第2の空間17に連通されている。
【0024】
底面部4には突状面部4bからベース面部4aの一部に亘る部分にセンサ基板18が配置されている(図2及び図3参照)。ベース面部4aには図示しない制御基板が配置されている。センサ基板18は制御基板等を介してセンシングを行う機能を有している。
【0025】
蓋体3はカバー部19とパッキン20が一体成形されることにより形成されている(図2乃至図4参照)。
【0026】
カバー部19は底面部4と同じ形状に形成され大きさが底面部4より一回り大きくされている。カバー部19は略矩形状のベース蓋部19aとベース蓋部19aの左右両端部からからそれぞれ外方に突出された突状蓋部19b、19bとを有している。カバー部19は外形がケース体2の開口6より一回り小さい形状にされ、開口6から第2の空間17に挿入可能にされている。カバー部19は、例えば、全体が第2の空間17に挿入される厚みにされている。カバー部19の厚みを第1の寸法D1とすると、第1の寸法D1は、例えば、3mm以下にされている。カバー部19は、例えば、ガラス繊維が含有された樹脂材料によって形成されている。
【0027】
ベース蓋部19aには上下方向に貫通された挿通孔23、23がケース体2における固定部8、8に対応する位置に形成されている(図3参照)。
【0028】
カバー部19の外周部における下面側には下方及び外方に開口された切欠部21が形成されている(図4参照)。切欠部21を形成する下方を向く面はパッキン20が連続される連続面22として形成されている。カバー部19の外周部における切欠部21の上側の部分は薄肉部19dとして形成されている。
【0029】
パッキン20は外形がケース体2の開口6よりわずかに大きい環状に形成され、厚みがカバー部19における切欠部21の上下方向における深さと略同じにされている(図4参照)。パッキン20は、例えば、ゴム材料によって形成されている。
【0030】
パッキン20は上面における内周側の部分が被連続面24として形成され、被連続面24より外側の部分がカバー部19の外周面19cより外方に突出された突出部25として設けられている。パッキン20は突出部25以外の部分がカバー部19の切欠部21に位置された状態で被連続面24が連続面22に連続されている。したがって、パッキン20はカバー部19の厚み方向に直交する方向(図4の矢印A参照)においてカバー部19と重なって位置されている。
【0031】
蓋体3において蓋体3の厚み方向に直交する方向におけるパッキン20とカバー部19の重なる長さ、即ち、薄肉部19dの幅を第2の寸法D2とすると、第2の寸法D2は第1の寸法D1以下にされると共に、例えば、1mm以上にされている。また、蓋体3の厚み方向におけるパッキン20とカバー部19の重なる長さを第3の寸法D3とすると、第1の寸法D1と第3の寸法D3の差、即ち、薄肉部19dの厚みは、例えば、0.7mm以上にされている。
【0032】
パッキン20は、少なくとも突出部25の下面がカバー部19からの突出方向へ行くに従って上方に変位する傾斜面26として形成されている。パッキン20の下面における傾斜面26より内周側の部分は補助密着面27として形成されている。パッキン20の外周面は外方に凸の曲面28として形成されている。
【0033】
蓋体3は、上記したように、カバー部19とパッキン20が一体成形により形成されている。以下に蓋体3における成形の手順の概要について説明する。
【0034】
まず、カバー部19が所定の形状に形成され、カバー部19の連続面22にレーザー処理が施される。連続面22はレーザー処理が施されることによりガラス繊維が露出された状態にされる。
【0035】
次に、カバー部19とパッキン20を一体成形するための金型のキャビティに装填し、カバー部19とパッキン20を一体成形する。このとき、連続面22において露出されたガラス繊維にゴム材料が絡みつくようにして連続面22と被連続面24が密着されるため、小さい面積でカバー部19とパッキン20の高い密着性が確保される。
【0036】
このように、蓋体3は連続面22にレーザー処理を施すことによってカバー部19とパッキン20が一体成形される。これにより、接着剤を用いてカバー部19とパッキン20を接合する場合に必要となる接着剤の塗布工程や前処理としての脱脂工程を必要とせず、接着剤の塗布状態や脱脂状態のバラつきが生じないため、カバー部19とパッキン20の安定した成形状態を確保することができる。また、ゴム材料の熱によってカバー部19を溶融することによりカバー部19とパッキン20を接合する方法のようにカバー部19を形成する樹脂材料とパッキン20を形成するゴム材料との融点差を考慮する必要がないため、パッキン20として使用するゴム材料の選択の幅が大きく、パッキン20として、例えば、難燃性のゴム材料を使用することが可能である。
【0037】
<電子機器における防水状態>
次に、電子機器1における防水状態について説明する(図4乃至図9参照)。
【0038】
電子機器1はケース体2の第1の空間16に制御基板やセンサ基板18等の所要の各部が収容された状態において、蓋体3が開口6から第2の空間17に挿入される(図4の矢印B参照)。蓋体3が第2の空間17に挿入されると、カバー部19によって第1の空間16が上方から覆われた状態にされ、パッキン20が第2の周面14に摺動されて突出部25が上方に屈曲される(図5参照)。屈曲されたパッキン20は弾性力によって突出部25が第2の周面14に密着され、第1の空間16が密閉される。このとき、蓋体3は全体が第2の空間17に位置される厚みにされているため、蓋体3がケース体2から上方に突出されず、上下方向における電子機器1の小型化を図ることができる。
【0039】
上記のように、電子機器1においては、パッキン20の一部が切欠部21に位置され連続面22と被連続面24が密着された状態でカバー部19とパッキン20が一体成形され、蓋体3が配置空間7に挿入されることによりパッキン20が屈曲された状態でケース体2の周面部5に密着される。したがって、パッキン20が弾性力によって周面部5に密着されて配置空間7が密閉されるため、パッキン20をケース体2に押し付けるための専用の部材等を設ける必要がなく、簡素な構成で電子機器1の良好な防水性を確保することができる。
【0040】
また、電子機器1においては、第2の周面14が第1の周面13の外側に位置され、第2の空間17に蓋体3が挿入されることによりパッキン20が第2の周面14に密着される。したがって、第1の空間16においてセンサ基板18等の収容物を収容するためのスペースが確保されるため、蓋体3と収容物の干渉を防止することができる。
【0041】
さらに、パッキン20は外形が開口6より大きい環状に形成されているため、蓋体3は第2の空間17に圧入される。蓋体3が第2の空間17に圧入された状態においては第2の周面14の全周に亘ってパッキン20が密着される。したがって、蓋体3が第2の空間17から取り外れ難く、ネジ止め等によって蓋体3がケース体2に固定されていない状態においても蓋体3を第2の空間17に保持することができる。
【0042】
さらにまた、突出部25が蓋体3の挿入方向に直交する方向(図4の矢印A参照)において第2の周面14に押し付けられるため、ケース体2やカバー部19の寸法精度に多少のバラつきが生じた場合においても、パッキン20と第2の周面14の間に隙間が生じず、電子機器1において安定した防水性を確保することができる。
【0043】
また、電子機器1においては、第1の寸法D1が3mm以下にされ、第2の寸法D2が第1の寸法D1以下1mm以上にされている。これにより、カバー部19とパッキン20の密着面の十分な面積が確保される。したがって、パッキン20における被連続面24を過度に大きくすることなくカバー部19とパッキン20の高い密着性を確保することができると共に、カバー部19における薄肉部19dの幅が過度に大きくなり難く、薄肉部19dの変形や破損を防止することができる。第1の寸法D1が3mmより大きくされ蓋体3の厚さが必要以上に大きくされた場合には、配置空間7における各部のレイアウト設計の自由度の低下や電子機器1全体の大型化を来すおそれがある。また、第2の寸法D2が第1の寸法D1より大きくなると、蓋体3をケース体2に挿入する際に薄肉部19dにおける内周側の部分に応力が集中し易くなり、蓋体3の変形や破損が生じるおそれがある。一方、第2の寸法D2が1mmより小さい場合には、カバー部19とパッキン20の密着面の面積が小さくなるため、両者の安定した密着状態を確保することができないおそれがある。
【0044】
さらに、第1の寸法D1と第3の寸法D3の差が0.7mm以上にされている。これにより、薄肉部19dの厚み方向における十分な強度が確保されるため、薄肉部19dの変形や破損を防止することができる。第1の寸法D1と第3の寸法D3の差が0.7mmより小さい場合には、薄肉部19dの十分な強度が確保され難く、蓋体3をケース体2に挿入する際に蓋体3の変形や破損が生じるおそれがある。
【0045】
また、パッキン20にはカバー部19の外周面19cより外方に突出された突出部25が設けられ、パッキン20は少なくとも突出部25における下面が突出部25のカバー部19からの突出方向へ行くに従って上方に変位する傾斜面26として形成されている。これにより、蓋体3の第2の空間17への挿入時に傾斜面26が第2の周面14に摺動される。
【0046】
したがって、パッキン20がケース体2に対する挿入方向と反対の方向に屈曲され易くなるため、蓋体3を第2の空間17に容易に挿入することができると共にパッキン20を屈曲させた状態で第2の周面14に確実に密着させることができる。また、蓋体3の挿入時に傾斜面26が第2の周面14に面接触され易くなるため、電子機器1のより良好な防水性を確保することができる。さらに、パッキン20がケース体2に対する挿入方向と反対の方向に屈曲された状態で第2の周面14に密着されることにより、ネジ止め等によって蓋体3がケース体2に固定されていない状態においても蓋体3が第2の空間17から取り外れ難く、蓋体3の第2の空間17に安定した状態で保持することができる。
【0047】
さらにまた、蓋体3はカバー部19の厚み方向に直交する方向においてパッキン20の少なくとも一部がカバー部19と重なって位置され、パッキン20がカバー部19の連続面22に連続されている。これにより、パッキン20がカバー部19の厚み方向における一方の面に連続され、カバー部19の厚み方向においてパッキン20の一部がカバー部19と重なって位置される。
【0048】
したがって、カバー部19の厚みに拘わらずカバー部19に対するパッキン20の高い密着性を確保することができると共に蓋体3の薄型化を図ることができる。
【0049】
また、ケース体2には配置ベース部9と配置ベース部9から蓋体3の挿入方向に直交する方向に突出された少なくとも一つの配置用突部10とが設けられ、開口6が配置ベース部9から配置用突部10に亘って形成されている。
【0050】
これにより、蓋体3が第2の空間17に挿入された状態において、配置ベース部9と配置用突部10のそれぞれにおいてパッキン20が第2の周面14と密着されるため、ベース蓋部19aに蓋体3を第2の空間17から取り外す方向の力が付与された場合には突状蓋部19bが配置用突部10から取り外れ難く、突状蓋部19bに蓋体3を第2の空間17から取り外す方向の力が付与された場合にはベース蓋部19aが配置ベース部9から取り外れ難くされる。したがって、蓋体3のケース体2からの脱落が防止され、ケース体2に対する蓋体3の安定した取付状態を確保することができる。
【0051】
なお、このとき蓋体3を取り外す方向の力に抗する力はパッキン20と第2の周面14の間に生じる摩擦力である。この摩擦力は、パッキン20の弾性力、及びパッキン20と第2の周面14との間の接触面の摩擦係数が一定の場合には、接触面の面積、実質的にはパッキン20と第2の周面14の周長に比例する。したがって、ケース体2に配置ベース部9と配置用突部10とを有する形状にされることにより、ケース体が配置ベース部のみからなる形状にされた場合と比較して蓋体3がケース体2から脱落され難くなる。また、蓋体3におけるカバー部19が突状蓋部19bを有する形状は、突状蓋部19bを有さない形状に比べて、パッキン20の周長が同じにされた場合の面積が小さくなる。したがって、上記した取り外す方向の力が、例えば、ケース体2の外部の圧力より第1の空間16の圧力の方が高い場合に生じる圧力差に起因する力である場合には、圧力差による力を受ける面積が小さく、蓋体3に作用する取り外す方向の力が小さくなるため、蓋体3がケース体2から脱落され難くなる。
【0052】
電子機器1においては、蓋体3が第2の空間17に挿入された状態において、固定用ネジ50がベース蓋部19aの挿通孔23に挿通されて固定部8の螺穴8aに螺合されることにより、蓋体3がケース体2に確実に固定される。
【0053】
このとき、固定部8が配置ベース部9に設けられているため、配置用突部10に蓋体3を固定するための構成を設ける必要がなく、ケース体2の全体として構成の簡素化を図ることができると共に配置用突部10における第1の空間16に収容される収容物に関するレイアウトの自由度の向上を図ることができる。
【0054】
上記には、蓋体3が第2の空間17に挿入された状態においてパッキン20における突出部25が第2の周面14に密着される例を示したが、パッキン20が第2の周面14に加えて段差面15に密着されてもよい(図6及び図7参照)。この場合には、例えば、パッキン20の切欠部21に位置された部分の下面が補助密着面27として形成され、補助密着面27が段差面15に密着される。これにより、パッキン20が第2の周面14と段差面15の双方に密着された状態で第1の空間16が密閉される。したがって、電子機器1における一層良好な防水性を確保することができる。
【0055】
また、パッキン20の一部がカバー部19から下方に突出される構成にし、パッキン20の下面の一部が補助密着面27として形成されてもよい(図7参照)。パッキン20をこのような構成にすることにより、補助密着面27を段差面15に密着させ易くすることができる。
【0056】
さらに、パッキン20には補助密着面27から下方に突出された補助密着突部29が形成されていてもよい(図8参照)。この場合には、蓋体3が第2の空間17に挿入された状態において、補助密着突部29が段差面15に密着されるため、パッキン20を段差面15に一層密着させ易くすることができる。また、補助密着面27が段差面15に密着された状態と比較してパッキン20と段差面15の接触する面積が小さくなるため、蓋体3を押し上げる方向の反力が抑制され、ケース体2に対する蓋体3の安定した取付状態を確保し易くすることができる。
【0057】
なお、上記には、ケース体2における配置用突部10の幅が一様に形成された例を示したが、配置用突部10の形状はこれに限られることはない。例えば、配置用突部10の先端側の部分が先端側配置部30として形成され、先端側配置部30と配置ベース部9をつなぐ部分が先端側配置部30より細幅にされた配置接続部31として形成されていてもよい(図9参照)。このとき、カバー部19は、突状蓋部19bにおける先端側配置部30に対応する部分が先端側蓋部32として形成され、配置接続部31に対応する部分が先端側蓋部32より細幅の接続蓋部33として形成される。
【0058】
ところで、一般に、カバー部の突状蓋部において幅の異なる部分が形成された場合には、蓋体をケース体に挿入したときに各部の剛性の違いにより蓋体に反りが生じるおそれがあるため、十分な防水性を確保するために、ベース蓋部に加えて突状蓋部の先端部分においてもネジ止め等によってケース体2に対する固定が必要となることがある。
【0059】
しかしながら、上記のように、電子機器1においては、蓋体3が配置空間7に挿入された状態においてパッキン20が弾性力によって周面部5に押し付けられた状態で密着されるため、先端側蓋部32をネジ止め等によって固定することなく蓋体3の反りが防止され、良好な防水性を確保した状態で蓋体3が配置空間7に保持される。したがって、ケース体2における先端側配置部30に蓋体3を固定するための構成を設ける必要がなく、構成の簡素化を図ることができると共に先端側配置部30の内部空間におけるレイアウトの自由度の向上を図ることができる。
【0060】
なお、上記には、ケース体2が配置ベース部9と配置用突部10を有し、配置用突部10が配置ベース部9から蓋体3の挿入方向に直交する方向に突出された例を示したが、ケース体2の形状や構成は上記に限られることはない。例えば、ケース体2が配置ベース部9のみから成る構成にされていてもよい。また、配置用突部10が配置ベース部9から蓋体3の挿入方向に直交する方向以外の方向に突出されていてもよく、配置用突部10が配置ベース部9から曲線状や屈曲された状態に突出されていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…電子機器
2…ケース体
3…蓋体
6…開口
8…固定部
9…配置ベース部
10…配置用突部
13…第1の周面
14…第2の周面
15…段差面
16…第1の空間
17…第2の空間
19…カバー部
20…パッキン
21…切欠部
25…突出部
26…傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9