(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143361
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】樹脂シート及び建材積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023055994
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】菅俣 祐太郎
(72)【発明者】
【氏名】廣井 洋介
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA18B
4F100AH03C
4F100AH08B
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK07A
4F100AT00A
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100DJ00B
4F100EJ37B
4F100GB07
4F100JB04C
4F100JB09C
4F100JB16B
4F100JD04
4F100JG04C
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】本発明は、抗菌性等の機能を失うことなく、二次加工性に適した樹脂シートを提供することを目的とする。
【解決手段】基材と、前記基材の一方の主面に設けられ熱可塑性樹脂および機能剤を含む第一機能層と、前記第一機能層の表面に設けられカチオン性水溶性ポリマーを含む第二機能層とを備える樹脂シートであって、前記機能剤は、水酸化カルシウムおよび金属担持体の少なくとも一方を含み、前記第二機能層の厚みが0.1μm以下である、樹脂シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の主面に設けられ熱可塑性樹脂および機能剤を含む第一機能層と、前記第一機能層の表面に設けられカチオン性水溶性ポリマーを含む第二機能層とを備える樹脂シートであって、
前記機能剤は、水酸化カルシウムおよび金属担持体の少なくとも一方を含み、
前記第二機能層の厚みが0.1μm以下である、樹脂シート。
【請求項2】
前記第二機能層における前記カチオン性水溶性ポリマーの含有量が30~100質量%である、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
前記カチオン性水溶性ポリマーが4級アンモニウム塩を含有する、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
前記第二機能層側の表面抵抗率が1×10-1~9×1012Ω/sq.である、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項5】
前記第二機能層側の表面自由エネルギーが34~80mN/mである、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項6】
前記第一機能層が前記機能剤を1~30質量%含む、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項7】
前記第一機能層が延伸多孔質層である、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項8】
水蒸気透過係数が0.01~2.5gmm/(m2・24hr)である、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の樹脂シートと、建材ボードとを備える建材積層体であって、前記樹脂シートにおける前記第二機能層が最表面に位置する、建材積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂シート及び建材積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂シートは、生活用品、建材用品、農業用品等の種々の分野で多岐に用いられている。ここで、抗菌性等の、樹脂シートの使用目的に応じた機能を有する機能剤を用いて樹脂シートに種々の機能を付与する手段として、樹脂シート表面に機能剤を含むコーティング層を設けるコーティング法や、樹脂シートを構成する樹脂に機能剤を直接加えて成形する練り込み法等が検討されている。
【0003】
コーティング法は、機能剤の添加量が少なくても機能性を付与しやすい反面、表面に露出するために耐水性、耐湿性、耐候性等の環境安定性が低いことが懸念される。
練り込み法は、環境安定性に優れる反面、機能を発揮するために添加量を増やす必要が生じ、印刷性や、他のフィルムとの接着性等の二次加工性に影響が生じることが懸念され、量的な均衡をとることが難しい。
【0004】
特許文献1には、抗菌剤として水酸化カルシウム材料を含む樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載の樹脂組成物から製造される樹脂シートは、接着性等の二次加工性の点で改善の余地があった。
本発明は、抗菌性等の機能を失うことなく、二次加工性に適した樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の樹脂シートに関する。
〔1〕基材と、前記基材の一方の主面に設けられ熱可塑性樹脂および機能剤を含む第一機能層と、前記第一機能層の表面に設けられカチオン性水溶性ポリマーを含む第二機能層とを備える樹脂シートであって、
前記機能剤は、水酸化カルシウムおよび金属担持体の少なくとも一方を含み、
前記第二機能層の厚みが0.1μm以下である、樹脂シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、抗菌性等の機能を失うことなく、二次加工性に適した樹脂シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る樹脂シートの一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は本発明の他の実施形態に係る樹脂シートの一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は本発明の他の実施形態に係る建材積層体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る樹脂シートおよび建材積層体について詳細に説明する。以下は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれに限定されない。
【0011】
<樹脂シート>
図1に、本発明の実施形態に係る樹脂シートの断面図を示す。
図1における樹脂シート1は、基材10と、基材10の一方の主面に設けられた第一機能層11と、第一機能層11の表面に設けられた第二機能層12とを有する。
【0012】
図2に、本発明の他の実施形態に係る樹脂シートの断面図を示す。
図2における樹脂シート1は、基材10と、基材10の一方の主面に設けられた第一機能層11と、第一機能層11の表面に設けられた第二機能層12とを有し、基材10の他方の主面に設けられた第三機能層13と、第三機能層13の表面に設けられた第四機能層14とを有する。
【0013】
<基材>
基材は、樹脂シートに強度を付与するために用いられ、熱可塑性樹脂フィルムからなることが好ましい。基材として熱可塑性樹脂フィルムを用いることにより、樹脂シートや樹脂シートを用いた印刷物に、コシ等の機械強度、耐水性、耐薬品性、必要に応じて不透明性等を付与することができる。
【0014】
基材に用いられる熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体などのポリオレフィン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩(アイオノマー)、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(アルキル基の炭素数は1~8であることが好ましい)、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有オレフィン系樹脂;芳香族ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、脂肪族ポリエステル(ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等)等のポリエステル系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂;シンジオタクティックポリスチレン、アタクティックポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン(AS)共重合体、スチレン-ブタジエン(SBR)共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。これらの樹脂は2種以上混合して用いることもできる。
【0015】
なかでも、耐水性、透明性が高いことから、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂のなかでもポリプロピレン系樹脂がさらに好ましく、ポリエステル系樹脂のなかでもポリエチレンテレフタレートがさらに好ましい。
【0016】
基材は、基材の剛度、白色度及び不透明度の調整のため、フィラーを含むことができる。フィラーとしては、例えば、無機フィラー及び有機フィラーが挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて使用することができる。フィラーを含む基材を延伸した場合、フィラーを核とした微細な空孔を基材内部に多数形成することができ、白色化、不透明化及び軽量化を図ることができる。
【0017】
無機フィラーとしては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ、タルク、珪藻土、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、これらを脂肪酸、高分子界面活性剤、帯電防止剤等で表面処理した無機粒子等が挙げられる。なかでも、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレイ又はタルクが、空孔の成形性が良く、安価なために好ましい。白色度、不透明度を向上させる観点からは、酸化チタン、酸化亜鉛又は硫酸バリウムが好ましい。
【0018】
有機フィラーとしては特に限定されないが、熱可塑性樹脂とは非相溶であり、融点又はガラス転移温度が熱可塑性樹脂よりも高く、熱可塑性樹脂の溶融混練条件下で微分散する有機粒子が好ましい。例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、環状オレフィンの単独重合体、環状オレフィンとエチレンとの共重合体等の有機粒子が挙げられる。また、メラミン樹脂のような熱硬化性樹脂の微粉末を用いてもよく、熱可塑性樹脂を架橋して不溶化することも好ましい。
なお、樹脂の融点(℃)及びガラス転移温度(℃)は、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)により測定できる。
【0019】
無機フィラー及び有機フィラーは、上記のなかから1種を選択して単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組合せる場合は無機フィラーと有機フィラーの組合せであってもよい。
【0020】
無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、熱可塑性樹脂との混合の容易さの観点からは、大きいことが好ましい。また、無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、延伸により内部に空孔を発生させて不透明性や印刷性を向上させる場合に、延伸時のシート切れや基材の強度低下等のトラブルを発生させにくくする観点からは、小さいことが好ましい。具体的には、無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.1μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。また、無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは15μm以下である。
【0021】
無機フィラー及び有機フィラーの平均粒子径は、基材の切断面を電子顕微鏡で観察し、粒子の少なくとも10個の最大径を測定したときの平均値を、溶融混練と分散により熱可塑性樹脂中に分散したときの平均分散粒子径として求めることができる。
【0022】
基材中のフィラーの含有量は、基材の不透明度等を付与する観点から、1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。
基材に剛度を与えて樹脂シートの取扱い性を向上させる観点からは、基材中のフィラーの含有量は、45質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0023】
基材には、必要に応じて公知の添加剤を任意に含有することができる。添加剤としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、可塑剤、フィラーの分散剤、脂肪酸アミド等のスリップ剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料、離型剤、難燃剤等の公知の助剤が挙げられる。
【0024】
基材は、単層構造であっても、多層構造であってもよい。
基材の厚さは、十分な機械的強度が得られやすいことから、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。また、樹脂シートの重量が減り、取扱い性が向上しやすいことから、基材の厚さは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。
【0025】
基材が内部に空孔を有する場合、基材中の空孔の割合を表す空孔率は、不透明性を得る観点から、10%以上であることが好ましく、12%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることが特に好ましい。機械的強度を維持する観点からは、同空孔率は、45%以下であることが好ましく、44%以下であることがより好ましく、42%以下であることがさらに好ましく、40%以下であることが特に好ましい。
【0026】
空孔率の測定方法は、電子顕微鏡で観察した基材の断面の一定領域において、空孔が占める面積率より求めることができる。具体的には、基材の任意の一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて基材の面方向に垂直に切断し、その切断面が観察面となるように観察試料台に貼り付ける。観察面に金又は金-パラジウム等を蒸着し、電子顕微鏡にて観察しやすい任意の倍率(例えば、500倍~3000倍の拡大倍率)において空孔を観察し、観察した領域を画像データとして取り込む。得られた画像データに対して画像解析装置にて画像処理を行い、空孔部分の面積率(%)を求めて、空孔率(%)とすることができる。この場合、任意の10箇所以上の観察における測定値を平均して、空孔率とすることができる。
【0027】
<第一機能層>
本発明の実施形態に係る樹脂シートにおいて、第一機能層は、基材の一方の主面に設けられ、熱可塑性樹脂および機能剤を含む。機能剤を含む第一機能層を樹脂シートが有することで、抗菌性等の各種機能を樹脂シートに付与することができる。また、機能剤が樹脂中に含まれる(機能剤が樹脂中に練り込まれる)ことにより、樹脂シートの環境安定性を高めることができる。また、後述する第二機能層が第一機能層表面に設けられるため、第一機能層中の機能剤含有量を機能性向上のために増量しても、機能剤が樹脂シートの接着性や印刷性に影響することを防ぐことができ、二次加工性に優れた樹脂シートを得ることができる。
【0028】
第一機能層を構成する熱可塑性樹脂としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、基材と同様の、熱可塑性樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂の中でも、加工性及び耐水性に優れる観点から、ポリオレフィン系樹脂又は官能基含有オレフィン系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。ポリオレフィン系樹脂の中でも、耐薬品性、加工性及び低コストの観点から、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0029】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン-環状オレフィン共重合体等)、ポリプロピレン系樹脂(結晶性ポリプロピレン、低結晶性ポリプロピレン、非晶性ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体(ランダム共重合体又はブロック共重合体等)、プロピレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体等)、ポリブテン、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体(ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体等)などが挙げられる。なお、前記α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテンと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等を挙げることができる。
官能基含有オレフィン系樹脂としては、例えばエチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸n-ブチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。
これらは単独で用いても併用してもよい。
【0030】
第一機能層の厚さは、第一機能層による機能を有効に得る観点から、1μm以上であることが好ましく、2μm以上がより好ましい。また、樹脂シート自体の重量を軽くし、取扱い性を良好にする観点から、第一機能層の厚さは200μm以下であることが好ましい。
第一機能層を薄膜化することで、基材の機能(不透明度など)を損ないにくく、ラベル用途や二次加工適性に適した厚み、コシ等の品質に調整可能な樹脂シートを提供できる。
【0031】
<機能剤>
機能剤とは、樹脂シートに各種機能を付与できる性質を有する剤であれば制限されず、たとえば、抗菌性、防カビ性、及び抗ウイルス性から選ばれる1種以上の機能を有する機能剤が好ましい。また、機能剤としては1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本明細書において「抗菌」とは、例えば細菌、真菌類の殺菌、損傷、又は増殖防止を意味する。「防カビ」とは、例えばカビの発生、又は増殖防止を意味する。「抗ウイルス」とは、例えばウイルスの不活化を意味する。
【0032】
機能剤は、水酸化カルシウム及び金属担持体の少なくとも一方を含む。機能剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。水酸化カルシウムおよび金属担持体は、抗菌性、防カビ性、および抗ウイルス性を有する。
【0033】
水酸化カルシウムとしては第一機能層を多孔質層とする観点から水酸化カルシウム担持体であることが好ましい。水酸化カルシウム担持体としては、貝殻粉末、焼成貝殻粉末が挙げられる。
【0034】
金属担持体は、金属と該金属を担持する担体とから構成される。金属としては、例えば、金、銀、銅、水銀、亜鉛、鉄、鉛、ビスマス、チタン、錫、及びニッケル等が挙げられる。また、金属の態様は特に制限されず、金属粒子、金属イオン、及び金属塩(金属錯体を含む)の形態が挙げられる。なかでも、より優れた抗菌性、抗ウイルス性、又は防カビ性を得る観点から、金属として、金、銀、又は銅を含むことが好ましい。担体としては、例えば、無機酸化物(例えば、ゼオライト(結晶性アルミノケイサン塩)、シリカゲル、粘土鉱物等のケイ酸塩、ガラス(水溶性ガラスを含む)、リン酸ジルコニウム、及びリン酸カルシウム等)、活性炭、金属担体、及び有機金属等が挙げられる。金属担持体は、優れた抗菌性、抗ウイルス性又は防カビ性を得る観点から、銀担持体であることが好ましい。銀担持体における銀は、具体的には、硝酸銀、塩化銀、硫酸銀、乳酸銀、及び酢酸銀等の銀塩;銀アンモニア錯体、銀クロロ錯体、及び銀チオスルファト錯体等の銀錯体;銀粒子;又は、銀イオンであることが好ましい。
【0035】
第一機能層における機能剤の含有量は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは5質量%以上である。第一機能層における機能剤の含有量は、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは28質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以下である。機能剤の含有量が1質量%以上であることで第二機能層上からでも第一機能層による抗菌性等の機能が発現しやすい。また、30質量%以下であることで、熱可塑性樹脂への分散性が向上し好ましい。
【0036】
機能剤として水酸化カルシウムを用いる場合、第一機能層における水酸化カルシウムの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。なお、水酸化カルシウム担持体である場合は水酸化カルシウムそのものの含有量に換算した数値が上記範囲であることが好ましい。
機能剤として金属担持体を用いる場合、第一機能層における金属担持体の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、特に好ましくは7質量%以下である。
【0037】
第一機能層は、延伸層であることが好ましい。第一機能層が上記機能剤を含む延伸層であることで、場合によっては、上記機能剤に加えて無機フィラーおよび有機フィラーの少なくとも一方をさらに含む延伸層であることで、延伸多孔質層となり得る。第一機能層が多孔質構造を有することで機能剤が第一機能層の表面に露出しやすくなり、機能剤による効果を発揮しやすくなり好ましい。また第一機能層が延伸された層であることにより、表面が粗面化され、機能剤の接触面積が増えるため、効果的に抗菌性等の機能が発現される。
【0038】
無機フィラーおよび有機フィラーとしては、上述の基材における無機フィラーおよび有機フィラーと同様のものが好ましい。
【0039】
第一機能層が無機フィラーまたは有機フィラーを含む場合のこれら含有量は、好ましくは10~60質量%であり、より好ましくは15~50質量%である。なお、機能剤が水酸化カルシウム担持体又は金属担持体であり、且つ、第一機能層が機能剤とは別に無機フィラーを含む場合の、上記無機フィラーの含有量は、水酸化カルシウム担持体と金属担持体の含有量を合わせた合計を示すものとする。
【0040】
第一機能層は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては基材においてあげた添加剤等が挙げられる。
【0041】
<第二機能層>
本発明の実施形態に係る樹脂シートにおいて、第二機能層は第一機能層の表面に設けられ、カチオン性水溶性ポリマーを含み、厚みが0.1μm以下である。
第一機能層は抗菌性等の機能の性質上、樹脂シートの最表面に設けることが通常である。しかし、本発明の実施形態に係る樹脂シートでは、第一機能層は第二機能層で覆われており、樹脂シートの最表面に設けられていない。ただし、第二機能層がカチオン性水溶性ポリマーを含み、厚みを一定以下に抑えることにより、第一機能層が最表面になくとも抗菌性等の機能の発現を阻害しないとともに、さらに第二機能層による表面性能、すなわち二次加工性を樹脂シートに付与することができる。
【0042】
<カチオン性水溶性ポリマー>
第二機能層がカチオン性水溶性ポリマーを含むことにより、第一機能層による抗菌性等の機能の発現を阻害しにくくなる。
カチオン性水溶性ポリマーの水溶性としては、第二機能層形成用塗工液を調製する際に、カチオン性水溶性ポリマーを含有する水性媒体が溶液状態になる程度の溶解度があればよい。
【0043】
カチオン性水溶性ポリマーとしては、例えばアミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系ポリマー、ホスホニウム塩構造を有する水溶性ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を変性によりカチオン化したビニル系ポリマー等が挙げられ、これらのうちの1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系ポリマーが、第二機能層に対するインク又はトナーの転移性及び密着性の観点から、好ましく、アミノ基を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系ポリマーがより好ましい。
【0044】
アミノ基又はアンモニウム塩構造を有する(メタ)アクリル系ポリマー又はエチレンイミン系ポリマーは、安全性の観点からは、第1級~第3級のアミノ基又は第1級~第3級のアンモニウム塩構造を有することが好ましく、第2級~第3級のアミノ基又は第2級~第3級のアンモニウム塩構造を有することがより好ましく、第3級のアミノ基又は第3級のアンモニウム塩構造を有することがさらに好ましい。また、後述するシランカップリング剤との反応により架橋度の高い樹脂が得られ、インクやトナーと第二機能層との高い密着性が得られるという観点からは、第1級~第3級のアミノ基又は第1級~第3級のアンモニウム塩構造が好ましく、第1級~第2級のアミノ基又は第1級~第2級のアンモニウム塩構造がより好ましく、第1級のアミノ基又は第1級のアンモニウム塩構造がさらに好ましい。
【0045】
なかでも、エチレンイミン系ポリマーは、各種印刷方式で使用されるインク又はトナー、特にフレキソ印刷方式で使用される紫外線硬化型インクとの親和性が高いことから、第二機能層とインクとの密着性が向上し、好ましい。
エチレンイミン系ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン-尿素)、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、これらのアルキル変性体、シクロアルキル変性体、アリール変性体、アリル変性体、アラルキル変性体、ベンジル変性体、シクロペンチル変性体、環状脂肪族炭化水素変性体、グリシドール変性体、これらの水酸化物等が挙げられる。変性体を得るための変性剤としては、例えば塩化メチル、臭化メチル、塩化n-ブチル、塩化ラウリル、ヨウ化ステアリル、塩化オレイル、塩化シクロヘキシル、塩化ベンジル、塩化アリル、塩化シクロペンチル等が挙げられる。
【0046】
カチオン性水溶性ポリマーの重量平均分子量は、第一機能層との密着性およびインク等との密着性向上の観点から、1,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることがさらに好ましく、25,000以上であることが特に好ましい。一方で、同重量平均分子量は、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましい。
なお、ポリマーの重量平均分子量及び数平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法により測定した値をポリスチレン換算することによって得ることができる。
【0047】
第二機能層は、カチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤との反応物である樹脂を含むことが好ましい。シランカップリング剤と反応させることで、第一機能層との密着性を高めることができる。シランカップリング剤は、有機材料との反応性が高い官能基を有し、この官能基が第一機能層の熱可塑性樹脂とカチオン性水溶性ポリマーを架橋反応させて第一機能層との密着性を高め、第一機能層と第二機能層の間への水分の浸入を防いでいると推定される。これにより、第二機能層の剥離、ひいては印刷物からのインク又はトナーの剥がれを抑えて耐擦過性を高めていると推定される。また、シランカップリング剤は、カチオン性水溶性ポリマー同士を架橋反応させて網目構造を形成し、この網目構造がインク又はトナーの転写性及び密着性を高めていると推定される。さらに、シランカップリング剤は、カチオン性水溶性ポリマーと架橋反応し、カチオン性水溶性ポリマーの親水性成分(極性樹脂成分)をより高分子量化させることによって、耐水性を向上させていると推定される。なお、第二機能層がカチオン性水溶性ポリマーとシランカップリング剤との反応物を含む場合も、未反応分としてカチオン性水溶性ポリマーを含み得る。
【0048】
シランカップリング剤はカチオン性ポリマーとの反応物を構成しない未反応分として第二機能層に含まれ得る。使用できるシランカップリング剤の具体例としては、エポキシ系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、(メタ)アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤等が挙げられる。
【0049】
第二機能層におけるカチオン性水溶性ポリマー成分の含有量(未反応分と、シランカップリング剤との反応分の総量)は、好ましくは30~100質量%である。第二機能層におけるカチオン性水溶性ポリマー成分の含有量(未反応分と、シランカップリング剤との反応分の総量)は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。
カチオン性水溶性ポリマーの含有量が30質量%以上であることにより、第一機能層による防カビ性等の機能が得られやすくなる。
【0050】
第二機能層がエチレンイミン系ポリマーを含む場合のエチレンイミン系ポリマー成分の含有量(未反応分と、シランカップリング剤との反応分の総量)は、好ましくは30~100質量%である。第二機能層におけるエチレンイミン系ポリマー成分の含有量(未反応分と、シランカップリング剤との反応分の総量)は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
エチレンイミン系ポリマーの含有量が30質量%以上であることにより、第二機能層とインクとの密着性が向上しやすくなる。
【0051】
第二機能層がシランカップリング剤を含む場合のシランカップリング剤成分(未反応分と反応分の総量)の含有量は、当該第二機能層中のカチオン性ポリマー成分(未反応分と反応分の総量)100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。また、第二機能層中のシランカップリング剤成分(未反応分と反応分の総量)の含有量は、当該第二機能層中のカチオン性ポリマー成分(未反応分と反応分の総量)100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。
【0052】
また、第二機能層がシランカップリング剤を含む場合のシランカップリング剤成分(未反応分と反応分の総量)の含有量は、第二機能層の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、第二機能層中のシランカップリング剤成分(未反応分と反応分の総量)の含有量は、第二機能層の全質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0053】
第二機能層に含まれるシランカップリング剤の量が上記の範囲であることにより、第二機能層中の未反応シランカップリング剤の残存量を抑えることができる。これにより第二機能層の硬さが適度なものとなり、樹脂シートのしなりに追従可能なものとなり、第二機能層の割れも防ぐことができる。加えて、シランカップリング剤の量が上記の範囲であることにより、未反応カチオン性ポリマーの残存量を抑えることができ、これにより第二機能層の耐水性が優れたものとなる。
【0054】
<帯電防止剤>
第二機能層は、表面抵抗率を向上させ、帯電防止性が得られやすくなる観点から、帯電防止剤を含有することが好ましい。
帯電防止剤のなかでも、ブリードアウトによる表面の汚染等を減らす観点から、ポリマー型帯電防止剤が好ましい。
ポリマー型帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、カチオン型、アニオン型、両性型又はノニオン型の帯電防止剤を用いることができ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせることができる。第二機能層がカチオン型ポリマー型帯電防止剤を含む場合、帯電防止剤をカチオン性水溶性ポリマーとして含むことになる。
【0055】
カチオン型の帯電防止剤としては、アンモニウム塩構造、ホスホニウム塩構造等を有する帯電防止剤を例示できる。アニオン型の帯電防止剤としては、スルホン酸、リン酸、カルボン酸等のアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等。)の構造を有する帯電防止剤を例示できる。アニオン型の帯電防止剤は、分子構造中に、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸等のアルカリ金属塩の構造を有する帯電防止剤であってよい。
【0056】
両性型の帯電防止剤としては、同一分子中に、カチオン型の帯電防止剤及びアニオン型の帯電防止剤の両方の構造を含有する帯電防止剤を例示できる。両性型の帯電防止剤としては、ベタイン型の帯電防止剤が挙げられる。ノニオン型の帯電防止剤としては、アルキレンオキシド構造を有するエチレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合成分を分子鎖中に有する重合体等を例示できる。その他の帯電防止剤としては、分子構造中にホウ素を有するポリマー型帯電防止剤が挙げられる。
【0057】
なかでも、ポリマー型帯電防止剤としては、カチオン型の帯電防止剤が好ましく、窒素含有ポリマー型帯電防止剤がより好ましく、4級アンモニウム塩構造を有する帯電防止剤がさらに好ましく、4級アンモニウム塩構造を有するアクリル系樹脂が特に好ましい。
ポリマー型帯電防止剤としては、三菱化学株式会社製のサフトマーST-1000、ST-1100、ST-3200(商品名)等の市販品を使用することができる。
ポリマー型帯電防止剤としては、シランカップリング剤と反応する化合物を使用してもよいし、反応しない化合物を使用してもよい。ただし、帯電防止性能の発現しやすさの観点からは、シランカップリング剤と反応しない化合物が好ましい。
【0058】
第二機能層が帯電防止剤を含む場合の帯電防止剤の含有量は、第二機能層の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、第二機能層中の帯電防止剤の含有量は、第二機能層の全質量に対して、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、30質量%以下であることが特に好ましい。
【0059】
第二機能層は必要に応じて、架橋促進剤、アンチブロッキング剤、pH調整剤、消泡剤等のその他の助剤成分を含むことができる。架橋促進剤としては、例えばリン酸、硫酸、クエン酸、コハク酸等が挙げられる。
【0060】
<無機フィラー>
第二機能層における無機フィラーの含有量は、カチオン性水溶性ポリマー100質量部に対し9質量部以下である。すなわち、無機フィラーを含まないか、含む場合はその含有量が9質量部以下である。無機フィラーの含有量が9質量部以下であることにより、無機フィラーに起因する第二機能層の凹凸による印刷部の白抜けを防止し、高いインク転写率が得られやすくなる。同様の観点から、第二機能層における無機フィラーの含有量は、カチオン性水溶性ポリマー100質量部に対し5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。
【0061】
<熱可塑性樹脂粒子>
第二機能層は熱可塑性樹脂粒子を含まないことが好ましい。熱可塑性樹脂粒子は、第二機能層形成用塗工液中の分散媒体に分散している、オレフィン系共重合体等の熱可塑性樹脂のエマルジョン由来の粒子をいう。第二機能層が熱可塑性樹脂粒子を含まないことにより、光沢、透明性等の外観に優れた記録用紙を得ることができる。同様の観点から、第二機能層における熱可塑性樹脂粒子の含有量は、カチオン性水溶性ポリマー100質量部に対し5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。
【0062】
第二機能層の厚さは、0.1μm以下であり、好ましくは0.09μm以下、より好ましくは0.08μm以下である。第二機能層の厚さが0.1μm以下と非常に薄いことで、第一機能層の機能を阻害しないため機能が発現しやすくなるとともに、樹脂シートの二次加工性が得られやすい。均一な第二機能層を安定的に形成する観点からは、第二機能層の厚さは0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることがさらに好ましい。
【0063】
<第三機能層>
本発明の実施形態に係る樹脂シートは、基材の他方の主面に第三機能層を有してもよい。第三機能層は、上述の第一機能層と同一であることが好ましい。他方の主面にも機能剤を含む層を有することで、他方の主面側にも抗菌性等が求められる用途において有用である。
たとえば、本発明の実施形態に係る樹脂シートが後述する建材積層体に用いられる場合は、抗菌性等の機能は、一方の主面側(第一機能層側)に有していれば足り、他方の主面側(第三機能層側)は、樹脂シートが建材ボードに接着され表面に露出しないため機能を付与する必要性が小さい。
一方、本発明の実施形態に係る樹脂シートがたとえば植物工場用反射シート等に用いられる場合には、両面に抗菌性等の機能を有することが望ましいため、第三機能層を有することが好ましい。
【0064】
第三機能層の構成は、第一機能層の構成と好ましい態様を含め同一であることが好ましい。
【0065】
<第四機能層>
本発明の実施形態に係る樹脂シートは、第三機能層の表面に第四機能層を有してもよい。第四機能層は、上述の第二機能層と同一であることが好ましい。
本発明の実施形態に係る樹脂シートが後述する建材積層体に用いられる場合、第四機能層を有することで建材ボードとの接着性が得られやすい。
本発明の実施形態に係る樹脂シートがたとえば植物工場用反射シート等に用いられる場合、第四機能層を有することで、第二機能層と同様に、帯電防止性や印刷性が得られやすい。
【0066】
第四機能層の構成は、第二機能層の構成と好ましい態様を含め同一であることが好ましい。
【0067】
<樹脂シートの製造方法>
<基材、第一機能層、第三機能層の製造方法>
本発明の実施形態に係る樹脂シートにおける基材は、基材を構成する材料と、必要に応じて他の成分とを混合した後、成形することにより得ることができる。第一機能層は、熱可塑性樹脂、機能剤、および必要に応じて他の成分を混合した後、成形することにより得ることができる。第三機能層も、第一機能層と同様に得ることができる。
成形方法は特に限定されず、公知の種々の成形方法を単独で又は組み合わせて製造することができる。例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等を用いて、フィルム状に成形することができる。熱可塑性樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することにより、基材、第一機能層、または第三機能層を成形してもよい。
【0068】
基材、第一機能層、第三機能層は、それぞれ別に成形してから積層してもよいし、あるいは、基材と第一機能層、または第一機能層と基材と第三機能層とを、一緒にまとめて成形してもよい。例えば、共押し出し等の成形方法を用いることにより、基材と第一機能層や第三機能層とをまとめて一緒に積層させた積層体を得ることもできる。
【0069】
基材と第一機能層や第三機能層とを一緒にまとめて積層させる場合の成形方法としては、例えばフィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス方式、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等が挙げられ、各方法を組み合わせることもできる。
【0070】
基材、第一機能層、第三機能層は、それぞれ無延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
【0071】
樹脂シートに適度なコシを与える観点及び多孔質として水蒸気透過係数を調整する観点から、基材および第一機能層のうち、少なくとも一方は延伸されていることが好ましい。
また、基材が多層構造である場合は、少なくともそのうちの一層が延伸されていることが好ましい。
複数層を延伸する場合は、各層を積層する前に個別に延伸しておいてもよいし、積層した後にまとめて延伸してもよい。また、延伸した層を積層後に再び延伸してもよい。
【0072】
延伸を実施するときの延伸温度は、熱可塑性樹脂が非結晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂の融点よりも2~60℃低い温度が好ましい。
【0073】
延伸を実施するときの延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20~350m/分の範囲内であることが好ましい。
【0074】
延伸を実施するときの延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。例えば、プロピレンの単独重合体又はその共重合体を含む熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、通常は約1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。一方、二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で通常は1.5倍以上であり、好ましくは10倍以上である一方、通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。
【0075】
また、ポリエステル系樹脂を含む熱可塑性樹脂フィルムを一方向に延伸する場合、その延伸倍率は、通常は1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上であり、通常は10倍以下であり、好ましくは5倍以下である。二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で、通常は1.5倍以上であり、好ましくは4倍以上であり、通常は20倍以下であり、好ましくは12倍以下である。
例えば、基材がフィラーを含有する場合、これを延伸する場合の延伸倍率が、上記範囲内であれば、目的の空孔率が得られて不透明性が向上しやすい。また、基材の破断が起きにくく、安定した延伸成形ができる傾向がある。
【0076】
上記により、第一機能層/基材の樹脂積層体、または第一機能層/基材/第三機能層の樹脂積層体を得ることができる。
【0077】
<表面処理>
第一機能層及び/又は第三機能層には、表面処理が施されていることが好ましい。第一機能層及び/又は第三機能層にコロナ処理等の表面処理を施すことにより表面自由エネルギーが所望の範囲になりやすい。第一機能層及び/又は第三機能層の表面が活性化することで、第二機能層及び/又は第四機能層との密着性を高めることができる。
【0078】
表面処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ処理がより好ましい。
【0079】
コロナ放電処理を実施する場合の放電量は、好ましくは600J/m2(10W・分/m2)以上であり、より好ましくは1,200J/m2(20W・分/m2)以上である。また、同放電量は、好ましくは12,000J/m2(200W・分/m2)以下であり、より好ましくは10,800J/m2(180W・分/m2)以下である。フレーム処理を実施する場合の放電量は、好ましくは8,000J/m2以上であり、より好ましくは20,000J/m2以上である。また、同放電量は、好ましくは200,000J/m2以下であり、より好ましくは100,000J/m2以下である。
【0080】
<第二機能層、第四機能層の製造>
第二機能層は、第一機能層の表面に、カチオン性水溶性ポリマーと水性溶媒を含有し、必要に応じてシランカップリング剤や帯電防止剤等を含有する水溶液(以下、「第二機能層形成用塗工液」とも称する。)を塗工した後、乾燥させることにより形成することができる。
第四機能層も同様に、第三機能層の表面に、カチオン性水溶性ポリマーと水性溶媒を含有し、必要に応じてシランカップリング剤や帯電防止剤等を含有する水溶液(以下、「第四機能層形成用塗工液」とも称する。)を塗工した後、乾燥させることにより形成することができる。
【0081】
水性溶媒としては、水であってもよいし、水を主成分としてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン等の水溶性有機溶媒を含有してもよい。水を主成分とするとは、全体の50質量%以上が水であることをいう。水性溶媒を用いることにより、工程管理が容易になり、安全上の観点からも好ましい。
【0082】
第二機能層形成用塗工液または第四機能層形成用塗工液(以下、まとめて「塗工液」とも称する。)に含まれるカチオン性水溶性ポリマーの量は、塗工液の水性媒体以外の全成分の質量を基準として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。
【0083】
シランカップリング剤を用いる場合、シランカップリング剤の含有量は、塗工液中のカチオン性ポリマー100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。また、塗工液中のシランカップリング剤の含有量は、当該塗工液中のカチオン性ポリマー100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。また、シランカップリング剤の含有量は、塗工液の水性媒体以外の全成分の質量を基準として、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、塗工液中のシランカップリング剤の含有量は、塗工液の水性媒体以外の全成分の質量を基準として、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0084】
帯電防止剤を用いる場合、塗工液に含まれる帯電防止剤の量は、塗工液の水性媒体以外の全成分の質量を基準として、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、30質量%以下であることが特に好ましい。
【0085】
塗工液は、必要に応じて、架橋促進剤、アンチブロッキング剤、pH調整剤、消泡剤等のその他の助剤成分を含むことができる。
【0086】
塗工液の塗工は、例えばダイコーター、バーコーター、ロールコーター、リップコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター等の塗工装置を用いて行うことができる。
塗工液の塗工量は、乾燥後の第二機能層または第四機能層の厚さや含有成分の濃度等を考慮して適宜調整することができる。
塗工液の塗工及び塗工膜の乾燥は、積層樹脂フィルムの成形に合わせてインラインで実施してもよく、オフラインで実施してもよい。
【0087】
塗工膜の乾燥は、熱風送風機、赤外線乾燥機等の乾燥装置を用いることができる。
塗工液がシランカップリング剤を含む場合、塗工膜を乾燥させることにより、塗工膜中のシランカップリング剤による脱水縮合反応が進み、シランカップリング剤とカチオン性水溶性ポリマーの反応物である樹脂が生成すると推定される。
【0088】
上記により、第二機能層/第一機能層/基材の構成を有する本発明の実施形態に係る樹脂シート、または第二機能層/第一機能層/基材/第三機能層/第四機能層の構成を有する本発明の実施形態に係る樹脂シートを得ることができる。
【0089】
<樹脂シートの表面抵抗率>
本発明の実施形態に係る樹脂シートにおいて、第二機能層側の表面抵抗率が好ましくは1×10-1~9×1012Ω/sq.である。これにより樹脂シートをロール状に又は重ね合わせて保管する際に、シート同士のブロッキング等のトラブルを防止できる。第二機能層側の表面抵抗率はより好ましくは1×1011Ω/sq.以下、さらに好ましくは1×1010Ω/sq.以下である。
表面抵抗率を所望の範囲にするには、たとえば第二機能層が帯電防止剤を含むことが挙げられる。
なお、樹脂シートが第四機能層を有する場合、第四機能層側の表面抵抗率も上記の範囲であることが好ましい。
樹脂シートの表面抵抗率は、JIS K6911:1995に準拠して測定できる。
【0090】
<樹脂シートの表面自由エネルギー>
本発明の実施形態に係る樹脂シートは、第二機能層側の表面自由エネルギーが好ましくは34~80mN/mである。表面自由エネルギーが高いことにより、水への親和性(濡れ性)が高まり、機能剤の機能発現が向上し、抗菌性等の効果が得られやすくなる。また、第二機能層側の表面自由エネルギーが上記範囲であれば、第二機能層が安定的に形成されやすくなる。さらに、第二機能層表面にさらに印刷層を設けた場合に、印刷層との密着性が向上する。また、第二機能層が安定的に形成されやすくなる。
表面自由エネルギーを所望の範囲にするには、たとえば第一機能層にコロナ処理等の表面処理を施すことが挙げられる。
なお、樹脂シートが第四機能層を有する場合、第四機能層側の表面自由エネルギーも上記の範囲であることが好ましい。
樹脂シートの表面自由エネルギーは、JIS K6768:1999に準拠して測定できる。
【0091】
<樹脂シートの水蒸気透過係数>
本発明の実施形態に係る樹脂シートは、水蒸気透過係数が好ましくは0.01~2.5gmm/(m2・24hr)であり、より好ましくは0.05~2.4gmm/(m2・24hr)であり、さらに好ましくは0.1~2.3gmm/(m2・24hr)であり、特に好ましくは0.5~2.2gmm/(m2・24hr)である。水蒸気透過係数が上記範囲であることで、たとえば樹脂シートを後述する建材積層体に用いた場合に、冬期における室内の空気の室外への流出や、夏季における室外の暖かく湿気を含んだ空気の室内への流入を遮断し、エアコンなど特別なエネルギーの使用がなくとも、室内空間を快適に維持しやすくなる。
水蒸気透過係数を所望の範囲にするには、たとえば繊維等ではなく熱可塑性樹脂を成形した樹脂シートとすることや、樹脂シートの空孔度を制御すること等が挙げられる。
樹脂シートの水蒸気透過係数は、たとえばJIS-Z-0208:1976に準拠しカップ法により、温度40℃、相対湿度90%の条件にて透湿度(g/m2・24hr)を測定し、樹脂シートの厚み(mm)から換算して算出できる。
【0092】
<樹脂シートの用途>
本発明の実施形態に係る樹脂シートは、抗菌性等の機能を十分に発揮でき、かつ、二次加工性にも優れることから、建材積層体の部材や植物工場用反射シート等に有用である。
【0093】
<建材積層体>
図3に、本発明の実施形態に係る建材積層体の断面図を示す。
図3における建材積層体2は、建材ボード20と、建材ボード20の一方の主面に設けられた本発明の実施形態に係る樹脂シート1とを有する。
図3に示すように、第二機能層12が最表面となるように設置される。なお、図示していないが、樹脂シート1は、建材ボード20の他方の主面にも設けられていてもよいが、その場合も第二機能層が最表面となるように設置される。
【0094】
建材ボードとしては、不燃系の建材ボードと木材系の建材ボードが挙げられる。不燃系の建材ボードとしては繊維強化セメント板、金属板が挙げられる。繊維強化セメント板としては、石膏ボード、スラグ石膏ボード、ケイカル(ケイ酸カルシウム)板、フレキシブルボードが挙げられる。金属板としては、ガルバリウム鋼鈑、アルミスパンドレルが挙げられる。木材系の建材ボードとしては、ベニヤ板が挙げられる。
建材ボードの厚さは好ましくは3~20mm程度である。
【0095】
建材積層体は、建材ボードの少なくとも一方の面上に、本発明の実施形態に係る樹脂シートを、例えば接着剤を介して貼り合わせることで製造できる。接着剤としては、タンパク質系接着剤、含水炭素系接着剤、合成樹脂系接着剤、溶剤系接着剤などを使用することができる。
【0096】
建材積層体において、抗菌性等の機能や印刷性等の二次加工性を発揮する観点から、樹脂シートの第二機能層が最表面に位置することが好ましい。建材積層体は壁体の内装材として用いられ得るものであり、断熱材及び外装材等と併せて壁体を構成し得る。
【0097】
また、植物工場用反射シートには本発明の実施形態に係る樹脂シートをそのまま使用することができる。このような植物工場用反射シートの少なくとも一方の面、及び上記建材積層体の上記一方の主面側(建材ボードが設けられるのとは反対側)の表面には、種々印刷が施されることがある。印刷方式としては、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット記録方式、感熱記録方式、熱転写記録方式、又は電子写真記録方式等の種々の公知の手法が挙げられる。
【0098】
以上より、本明細書は下記の樹脂シートおよび建材積層体を開示する。
〔1〕基材と、前記基材の一方の主面に設けられ熱可塑性樹脂および機能剤を含む第一機能層と、前記第一機能層の表面に設けられカチオン性水溶性ポリマーを含む第二機能層とを備える樹脂シートであって、
前記機能剤は、水酸化カルシウムおよび金属担持体の少なくとも一方を含み、
前記第二機能層の厚みが0.1μm以下である、樹脂シート。
〔2〕前記第二機能層における前記カチオン性水溶性ポリマーの含有量が30~100質量%である、〔1〕に記載の樹脂シート。
〔3〕前記カチオン性水溶性ポリマーが4級アンモニウム塩を含有する、〔1〕または〔2〕に記載の樹脂シート。
〔4〕前記第二機能層側の表面抵抗率が1×10-1~9×1012Ω/sq.である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の樹脂シート。
〔5〕前記第二機能層側の表面自由エネルギーが34~80mN/mである、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の樹脂シート。
〔6〕前記第一機能層が前記機能剤を1~30質量%含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の樹脂シート。
〔7〕前記第一機能層が延伸多孔質層である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の樹脂シート。
〔8〕水蒸気透過係数が0.01~2.5gmm/(m2・24hr)である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の樹脂シート。
〔9〕〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の樹脂シートと、建材ボードとを備える建材積層体であって、前記樹脂シートにおける前記第二機能層が最表面に位置する、建材積層体。
【実施例0099】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は本発明を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0100】
以下に使用した材料を示す。
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ(株)製、商品名:ノバテックPP FY4、MFR(230℃、2.16kg荷重):5g/10分、融点:165℃)
重質炭酸カルシウム(備北粉化工業((株))製、商品名:ソフトン1800、平均粒子径:1.2μm)
機能剤:金属担持体(石塚硝子(株)製、商品名:イオンピュアZAF HS、平均粒子径:1.0μm)
機能剤:ホタテ貝焼成粉末((株)日研化学研究所製、商品名:シェルナチュレ平均粒子径:3.0μm、水酸化カルシウム35質量%配合)
カチオン性水溶性ポリマー:第1~3級アミノ基含有ポリエチレンイミン系ポリマー(三菱ケミカル(株)製、商品名:サフトマーAC-72)
帯電防止剤:高分子型帯電防止剤(商品名:サフトマーST-3200(三菱ケミカル(株)製)、固形分濃度:25質量%、第4級アンモニウム塩)
シランカップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM-403)
非カチオン性水溶性ポリマー(アクリル酸系ポリマー):ポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アクアリックL DL-453(日本触媒(株)製)、固形分濃度:35質量%)
【0101】
<基材用、第一機能層用、第三機能層用の各樹脂組成物の調製>
表1に示す各材料を表1に示す割合で混合した樹脂組成物a~hを調製した。
【0102】
【0103】
<調製例1~6:第二機能層用または第四機能層用の塗工液の調製>
表2に示す種類および含有量(ポリマーは固形分換算)の材料を含む水溶液を、塗工液として調製した。
【0104】
【0105】
<実施例1>
樹脂組成物bを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。
次いで、樹脂組成物cを250℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して、上記樹脂組成物bからなる樹脂層の第1面に積層した。
次いで、樹脂組成物gを250℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して、先に形成した樹脂組成物bからなる樹脂層の第2面に積層した。
このようにして、樹脂組成物gからなる樹脂層、樹脂組成物bからなる樹脂層、及び樹脂組成物cからなる樹脂層の3層が積層された積層シートを得た。
次いで、この3層の積層シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて積層シートを約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃に冷却し、耳部をスリットして、80μmの総厚みを有する樹脂シートを得た。樹脂シートにおいて樹脂組成物(g/b/c)からなる各層は、第三機能層、基材層及び第一機能層にそれぞれ対応し、それぞれ厚み(10μm/60μm/10μm)、延伸軸数(1軸/2軸/1軸)を有する。基材の空孔率を測定したところ35%であった。
樹脂シートの両面に30W・分/m2の条件でコロナ放電処理を施した後、各面に乾燥厚みが0.05μmとなるように、調製例1で調製した塗工液をロールコーターにより塗工した。60℃のオーブンにおいて塗工膜を乾燥して第二機能層及び第四機能層を形成し、樹脂シートを得た。
【0106】
<実施例2~実施例10、比較例1~比較例6>
樹脂組成物の種類、各層の厚み、延伸条件、塗工液の種類等の条件を表3に示す条件に変更した点以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを得た。
【0107】
【0108】
<抗菌性試験>
実施例及び比較例で得られた樹脂シートの第二機能層側表面において、JIS Z2801に準じた抗菌試験を、試験菌株として黄色ぶどう球菌、及び大腸菌を用いて行った。両試験菌株において得られた抗菌活性値を用いて下記基準に従って抗菌性を評価した。
〇:抗菌活性値が3.0以上
△:抗菌活性値が2.0以上3.0未満
×:抗菌活性値が2.0未満
(○または△が合格)
【0109】
<防カビ性試験>
実施例及び比較例で得られた樹脂シートの第二機能層側表面においてJIS Z2911(プラスチック製品の試験 方法B)に準じたかび抵抗性試験を、試験カビとしてAspergillus niger, Penicillium pinophilum, paecilomyces variotii, Trichoderma virens, Cheatomium globosumを用いて行った。各試験カビにおいて、4週後のカビ発育状態が二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製 FOS-AQ 非コロナ処理面)と比較し、下記基準に従って防カビ性を評価した。
〇:菌糸の発育が認められない
△:菌糸の発育は試験片面積の1/3以内
×:菌糸の発育は試験片面積の1/3を超える
(○または△が合格)
【0110】
<抗ウイルス性試験>
実施例及び比較例で得られた樹脂シートの第二機能層側表面において、ISO 21702に準じた抗ウイルス性試験を、ウイルスとしてInfluenza A virus(H3N2) : ATCC VR 167を用いて行った。得られた抗ウイルス活性値を用いて下記基準に従って抗菌性を評価した。
〇:抗ウイルス活性値が3.0以上
△:抗ウイルス活性値が2.0以上3.0未満
×:抗ウイルス活性値が2.0未満
(○または△が合格)
【0111】
<印刷性試験>
カラーレーザプリンタ(カシオ(株)製、商品名:N4-612II)を使用し、実施例及び比較例で得られた樹脂シートの第二機能層上にイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色カラートナーによるテスト画像記録を実施した。続いて、当該テスト画像が記録された樹脂シートを、バットに充満させた水(イオン交換水)の中に浮かないように浸漬録画像をコインで強く擦り以下の評価基準によって目視判定した。
〇:記録画像に変化なし
△:記録画像の擦り箇所の一部に剥がれが生じる
×:記録画像の擦り箇所の全面に剥がれが生じる
(○または△が合格)
【0112】
<接着性試験>
剥離シートとしてシリコーン処理を施したグラシン紙(G7B、王子タック株式会社製)を準備した。グラシン紙のシリコーン処理面に、溶剤系アクリル系粘着剤(オリバインBPS1109、トーヨーケム株式会社製)と、イソシアネート系架橋剤(オリバインBHS8515、トーヨーケム株式会社製)と、トルエンとを100:3:45の割合で混合した混合液を、乾燥後の坪量が25g/m2となるようにコンマコーターで塗工し、乾燥して粘着層を形成した。
次いで、実施例及び比較例で得られた樹脂シートを、上記粘着層と第四機能層が接するように積層し、圧着ロールで加圧接着して、樹脂シート上に粘着層を形成した。粘着ラベルの剥離シートを剥がし、石膏ボード(吉野石膏(株)製、商品名「タイガーボード」)の上に貼着させ、これを常温にて一週間保管した。
樹脂シートの4辺のうち1辺に粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名「セロテープ(登録商標)」、銘柄名「CT-18」)を辺の全長にわたって辺に沿って貼り、手で持ち易い状態にし、石膏ボード表面と樹脂シートの剥離部分のなす角度を約135°に維持しながら、樹脂シートの剥離部分を引っ張ることにより樹脂シートを石膏ボードより引き剥がした。このときの樹脂シートの剥離伝播状態と剥離力を、下記基準に従って評価した。
〇:剥離力が強く、剥離の際には全面きれいに剥離する
△:剥離力が少し弱いが、剥離の際には全面きれいに剥離する
×:剥離力が弱い
(○または△が合格)
【0113】
<防湿性試験>
実施例及び比較例で得られた樹脂シートの水蒸気透過係数を測定し、下記基準にしたがって防湿性を評価した。
〇:5.0g・mm/(m2・24hr)以下
△:5.0g・mm/(m2・24hr)超10.0g・mm/(m2・24hr)以下
×:10.0g・mm/(m2・24hr)超
(○または△が合格)
【0114】
上記各試験の結果を、下記表4に示す。
【0115】
【0116】
上記結果より、実施例1~10の樹脂シートは、抗菌性、防カビ性、抗ウイルス性の機能性試験、接着性、印刷性の二次加工性試験のいずれにおいても合格基準を満たした。実施例1および実施例2の対比、実施例3~実施例6の対比から、機能剤含有量を増やすことで抗菌性、防カビ性、抗ウイルス性などの機能が向上したことが分かる。実施例9および実施例10は、第二機能層形成時にシランカップリング剤を含まない塗工液を用いたことにより、抗菌性等の機能性や、接着性等の二次加工性がやや低下したが合格基準は満たした。
比較例1および比較例2の樹脂シートは、第一機能層が機能剤を含まないため、抗菌性、防カビ性、抗ウイルス性の各機能が発揮されなかった。
比較例3の樹脂シートは、第二機能層を有さないため、接着性、印刷性、防湿性の二次加工性が発揮されなかった。
比較例4の樹脂シートは、コロナ放電処理を行わなかったため、第二機能層が層状に形成されなかった。そのため二次加工性が不十分であった。
比較例5の樹脂シートは、機能剤が第一機能層中には存在せず、樹脂シート表面に存在しているため、吸湿してしまい、塗膜の凝集力が低下した結果、接着性や印刷性が発揮されなかった。
比較例6の樹脂シートは、第二機能層がカチオン性水溶性ポリマーを含まないため、機能剤の効果が十分に発揮されなかった。