(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143367
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/18 20060101AFI20241003BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20241003BHJP
G01N 27/16 20060101ALI20241003BHJP
G01N 27/12 20060101ALI20241003BHJP
G01N 25/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N27/18
G01N27/04 F
G01N27/16 B
G01N27/12 B
G01N25/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056005
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 誠
(72)【発明者】
【氏名】小野 志津子
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓己
【テーマコード(参考)】
2G040
2G046
2G060
【Fターム(参考)】
2G040AB09
2G040AB16
2G040BA01
2G040BA23
2G040CA01
2G040CA13
2G040CA22
2G040DA02
2G040DA12
2G040EA02
2G040EC07
2G040GA05
2G046AA05
2G046AA09
2G046AA12
2G046AA19
2G046BA09
2G046BC03
2G046BE03
2G046BE07
2G046FB02
2G046FE09
2G046FE12
2G046FE15
2G046FE39
2G046FE46
2G046FE49
2G060AA01
2G060AB00
2G060AE19
2G060AF07
2G060AG03
2G060AG10
2G060BA01
2G060BA03
2G060BA05
2G060BB02
2G060BB08
2G060HB06
2G060JA01
2G060KA01
(57)【要約】
【課題】検出精度および応答性に優れたガスセンサを提供すること。
【解決手段】ガスセンサ1は、絶縁膜の上にガス検出部12が設けられたガスセンサである。ガス検出部12は、検知体8と、検知体8に接触する電極部6とを有する。電極部6は、内側電極部62と、内側電極部62を取り囲むように配置された外側電極部63とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜の上にガス検出部が設けられたガスセンサであって、
前記ガス検出部は、検知体と、前記検知体に接触する電極部とを有し、
前記電極部は、内側電極部と、前記内側電極部を取り囲むように配置された外側電極部とを有するガスセンサ。
【請求項2】
前記外側電極部は、平面視において環状である請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記外側電極部は、平面視において周方向の一部が途切れた環状である請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記内側電極部は、平面視において円形状である請求項1~3のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記検知体の少なくとも一部は、前記内側電極部と前記外側電極部との間に位置する請求項1~3のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記内側電極部は、前記検知体の一方の主面に接触しており、
前記外側電極部は、前記検知体の他方の主面に接触している請求項1~3のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記内側電極部は、前記検知体の下に配置されている請求項1~3のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記検知体は、サーミスタ膜である請求項1~3のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記検知体は、半導体膜である請求項1~3のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項10】
前記検知体は、半導体材料で構成されており、前記内側電極部および前記外側電極部を覆うように、前記内側電極部および前記外側電極部の上に塗布されている請求項1~3のいずれかに記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサは、例えばガスの漏洩を検知することが可能であり、家電機器、産業用機器、環境モニタリング機器等に搭載されている。特許文献1に記載されているように、ガスセンサは、雰囲気中のガス濃度に応じて物理的特性が変化する検知体と、その物理的特性の変化を電気信号として取り出すための電極部とを有する。ガス濃度の変化に伴い検知体の物理的特性が変化すると、電極部から取り出される電気信号が変動する。この電気信号の変動値に基づいて、ガス濃度等を特定することが可能となっている。
【0003】
ところで、人または物体の移動、気象変動等により、雰囲気中のガス濃度の分布またはガスの流動方向は常に変動している。例えば特許文献1に示されるような従来のガスセンサでは、ガス濃度の分布またはガスの流動方向の変動により、電極部から取り出される電気信号にノイズが重畳し、ガスセンサの検出精度、応答性等が低下するおそれがあることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、検出精度および応答性に優れたガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るガスセンサは、
絶縁膜の上にガス検出部が設けられたガスセンサであって、
前記ガス検出部は、検知体と、前記検知体に接触する電極部とを有し、
前記電極部は、内側電極部と、前記内側電極部を取り囲むように配置された外側電極部とを有する。
【0007】
本発明に係るガスセンサにおいて、電極部は、内側電極部と、内側電極部を取り囲むように配置された外側電極部とを有する。内側電極部を外側電極部で取り囲むことにより、内側電極部とその周囲の外側電極部とによって、電極部の周囲に沿って、いずれの方向からも画一的に、検知体の物理的特性の変化を電気信号として取り出す構造とすることができる。これにより、ガス検出部の検出感度の方向依存性を低減することが可能となり、ガス濃度の分布またはガスの流動方向に依ることなく、ガス濃度を高精度で検出することができる。加えて、ガス検出部に熱変動(熱分布)が生じるような場合にあっては、その影響を受けにくく、ガス濃度を高精度で検出することができる。したがって、検出精度および応答性に優れたガスセンサを実現することができる。
【0008】
前記外側電極部は、平面視において環状でもよい。この場合、環状の外側電極部によって、内側電極部を全方位的に取り囲むことができる。そのため、内側電極部とその周囲の外側電極部とによって、電極部の周囲に沿って、全方位的に、検知体の物理的特性の変化を電気信号として取り出す構造とすることが可能となる。これにより、ガス検出部の検出感度の方向依存性を効果的に低減し、ガスセンサの検出精度および応答性を顕著に高めることができる。
【0009】
前記外側電極部は、平面視において周方向の一部が途切れた環状でもよい。この場合、同一面上に、内側電極部に接続された引出部と外側電極部とを交差させることなく配置することが可能となり、電極部の製造工程を簡素化することができる。
【0010】
前記内側電極部は、平面視において円形状でもよい。円形状の内側電極部を外側電極部で取り囲むことにより、内側電極部とその周囲の外側電極部とによって、内側電極部の円周方向に沿って、いずれの方向からも画一的に、検知体の物理的特性の変化を電気信号として取り出す構造とすることが可能となる。これにより、ガス検出部の検出感度の方向依存性をさらに低減し、ガスセンサの検出精度および応答性をさらに高めることができる。
【0011】
前記検知体の少なくとも一部は、前記内側電極部と前記外側電極部との間に位置していてもよい。また、前記内側電極部は、前記検知体の一方の主面に接触しており、前記外側電極部は、前記検知体の他方の主面に接触していてもよい。この場合、内側電極部と外側電極部とが、検知体を挟むように配置される。そのため、内側電極部と外側電極部とによって、平面方向だけではなく、検知体の膜厚方向(検知体の一方の主面と他方の主面との間)における物理的特性の変化も電気信号として取り出す構造とすることが可能となり、ガスセンサの検出精度および応答性をさらに高めることができる。
【0012】
前記内側電極部は、前記検知体の下に配置されていてもよい。この場合、検知体の表面(一方の主面)が露出し、ガス検出部によるガス濃度の検出範囲を広く確保することが可能となる。そのため、ガスセンサの検出精度および応答性をさらに高めることができる。
【0013】
前記検知体は、サーミスタ膜でもよい。あるいは、前記検知体は、半導体膜でもよい。この場合、内側電極部とその周囲の外側電極部とによって、電極部の周囲に沿って、いずれの方向からも画一的に、ガス濃度の変化に伴う検知体の抵抗変化を電気信号として取り出す構造とすることができる。
【0014】
前記検知体は、半導体材料で構成されており、前記内側電極部および前記外側電極部を覆うように、前記内側電極部および前記外側電極部の上に塗布されていてもよい。この場合、特に低濃度領域において、高精度かつ信頼性の高いガスセンサを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るガスセンサの概略的な平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すガスセンサのII-II線に沿う断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すガスセンサの中央付近における一部拡大平面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すガスセンサの中央付近における一部拡大断面図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の第2実施形態に係るガスセンサの概略的な一部拡大平面図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の第3実施形態に係るガスセンサの概略的な一部拡大平面図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の第4実施形態に係るガスセンサの概略的な一部拡大平面図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明の第5実施形態に係るガスセンサの概略的な一部拡大平面図である。
【
図10】
図10は、実施例のガスセンサの応答波形を示す図である。
【
図11】
図11は、比較例のガスセンサの応答波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図示する内容は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
(第1実施形態)
図1および
図2に示す本発明の第1実施形態に係るガスセンサ1は、例えばガスの漏洩を検知するための装置であり、家電機器、産業用機器、環境モニタリング機器等に搭載されている。ガスセンサ1は、熱伝導式のガスセンサであり、CO
2、H
2、He、H
2O(水蒸気)、CH
4等のガスを検知対象とする。
【0018】
ガスセンサ1は、例えば、基材2と、第1絶縁膜3と、ヒータ部4と、第2絶縁膜5と、電極部6と、第3絶縁膜7と、検知体8と、触媒9と、端子10a~10dとを有する。ただし、ガスセンサ1の構成は、
図1および
図2等に示す構成に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0019】
図1および
図2等において、X軸およびY軸は、それぞれ基材2の直交する2辺に対応する軸であり、Z軸は、X軸およびY軸に直交する軸である。以下では、X軸、Y軸およびZ軸の各々につき、基材2の中心に向かう方向を内側とし、基材2の中心から離れる方向を外側とする。また、Z軸につき、一方側(正方向側)を上方とし、他方側(負方向側)を下方とする。
【0020】
図1および
図2に示すように、基材2は、筒体からなり、エッチング等により形成されたキャビティ20を有する。基材2は、例えば、絶縁膜(第1絶縁膜3等)を支持可能な機械的強度を有しており、かつ、エッチングなどの微細加工に適した材料で構成されている。基材2を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、シリコン単結晶基板、サファイア単結晶基板、セラミック基板、石英基板、ガラス基板等である。基材2の形状は、平面視において正方形であるが、円形、楕円形、長方形、その他の多角形等でもよい。
【0021】
キャビティ20は、基材2の中央部に形成されており、基材2をZ軸に沿って貫通している。キャビティ20の形状は、平面視において正方形であるが、円形、楕円形、長方形、その他の多角形等でもよい。キャビティ20の外縁には複数(
図1に示す例では4つ)の湾曲部が形成されているが、湾曲部については省略してもよい。本実施形態のキャビティ20は、貫通孔であるが、基材2の頂面21から底面22に向かって凹む凹部でもよい。
【0022】
図5Aに示すように、基材2の頂面21は、四角リング形状を有し、キャビティ20の外縁に沿って形成されている。詳細な図示は省略するが、基材2の底面22は、四角リング形状を有し、キャビティ20の外縁に沿って形成されている。
【0023】
図2に示すように、第1絶縁膜3は、絶縁性を有する材料で構成され、基材2の頂面21に形成されている。
図5Bに示すように、第1絶縁膜3は、膜体からなり、公知の成膜法(スパッタ法、CVD法、熱酸化法等)によって作製される。第1絶縁膜3を構成する材料は、特に限定されないが、例えば酸化シリコン、窒化シリコン等である。第1絶縁膜3は、単層膜でもよく、あるいは多層膜でもよい。第1絶縁膜3の厚みは、特に限定されないが、たとえば0.1~3.0μmである。第1絶縁膜3の形状は、例えばエッチング(パターニング)によって付与される。第1絶縁膜3は、第1ベース部30と、第1周縁部31と、第1梁部32a~32dとを有する。
【0024】
第1ベース部30は、キャビティ20の開口縁(
図5Aに示す頂面21の内縁)よりも内側に位置し、キャビティ20の開口部23に沿って配置されている。第1ベース部30とキャビティ20の開口縁との間には、局所的に隙間が形成されている。第1ベース部30の形状は、平面視において正方形であるが、円形、楕円形、長方形、その他の多角形等でもよい。
【0025】
第1周縁部31は、基材2の頂面21(
図5A)に配置されている。第1周縁部31の形状は、頂面21の形状に対応しており、平面視において四角リング形状である。第1周縁部31は、第1ベース部30を取り囲むように、第1ベース部30の外側に配置されている。
【0026】
梁部32a~32dは、第1ベース部30と第1周縁部31との間に位置し、第1ベース部30と第1周縁部31とを接続している。梁部32a~32dは、キャビティ20の開口部23に沿うように配置されている。梁部32a~32dは、第1ベース部30の四隅に接続されており、屈曲しつつ延在している。ただし、梁部32a~32dの位置および形状は、
図5Bに示す位置および形状に限定されない。梁部32a~32dは、第1ベース部30が開口部23に配置されるように、第1ベース部30を支持している。梁部32a~32dの数は4つであるが、梁部32a~32dの数はこれに限定されない。
【0027】
図2に示すように、ヒータ部4は、第1絶縁膜3の上に形成されている。ヒータ部4は、検知体8の温度を所定温度(動作温度)まで加熱するためのものである。ヒータ部4は、膜体からなり、公知の成膜法によって作製される。ヒータ部4の形状は、例えばリフトオフ工法によって与えられる。なお、リフトオフ工法とは、パターニング面にレジストを塗布して露光および現像を行った後、スパッタや蒸着等によりパターン材料を成膜した上で、不要なパターン材料をレジストとともに剥離することによって、所定のパターンをパターニング面に形成する方法である。
【0028】
ヒータ部4は、例えば、比較的高い融点を有する導電性材料で構成されている。ヒータ部4を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、モリブデン、白金、金、タングステン、タンタル、パラジウム、イリジウム、または上記の元素のうち1種以上を含む合金である。このうち、耐腐食性が高い白金が好ましい。ヒータ部4を白金で構成する場合、第1絶縁膜3とヒータ部4との間にチタンなどからなる密着層を形成してもよい。
図5Cに示すように、ヒータ部4は、発熱部40と、ヒータ引出部41aおよび41bと、ヒータ端子部42aおよび42bとを有する。
【0029】
発熱部40は、ミアンダパターンを有し、第1絶縁膜3の第1ベース部30(
図2)の上に配置されている。発熱部40をミアンダパターンとすることにより、検知体8を均質に加熱することができる。ガスセンサ1は、エアブリッジ構造を有するため、検知体8の加熱時において、ヒータ部4の消費電力を抑えることができる。
【0030】
ヒータ引出部41aは、発熱部40の一端に接続されており、ヒータ引出部41bは、発熱部40の他端に接続されている。ヒータ引出部41aは、第1絶縁膜3(
図5B)上において、梁部32aを介して、第1周縁部31へ引き出されている。ヒータ引出部41bは、第1絶縁膜3(
図5B)上において、梁部32dを介して、第1周縁部31へ引き出されている。
【0031】
ヒータ端子部42aは、ヒータ引出部41aに接続されており、ヒータ端子部42bは、ヒータ引出部41bに接続されている。ヒータ端子部42aおよび42bは、第1絶縁膜3の第1周縁部31(
図5B)に配置されている。ヒータ端子部42aおよび42bの各々の形状は、平面視において長方形であるが、円形、楕円形、正方形、その他の多角形等でもよい。ヒータ端子部42aおよび42bは、発熱部40に電力を供給するための端子である。
【0032】
図2に示すように、第2絶縁膜5は、第1絶縁膜3に積層されている。より詳細には、第2絶縁膜5は、第1絶縁膜3と第2絶縁膜5との間にヒータ部4(
図5C)が介在するように、第1絶縁膜3の上に配置されている。第2絶縁膜5の材質および製法は、第1絶縁膜3の材質および製法と同一であるが、異なっていてもよい。また、第2絶縁膜5は、単層膜でもよく、あるいは多層膜でもよい。
図5Dに示すように、第2絶縁膜5は、第2ベース部50と、第2周縁部51と、第2梁部52a~52dと、第2孔部53aおよび53bとを有する。
【0033】
第2ベース部50は、第1ベース部30(
図5B)と同一の構成を有し、第1ベース部30の上に配置されている。第1ベース部30と第2ベース部50との間には、発熱部40(
図5C)が配置されている。第2周縁部51は、第1周縁部31(
図5B)と同一の構成を有し、第1周縁部31の上に配置されている。
【0034】
第2梁部52a~52dは、第1梁部32a~32d(
図5B)と同一の構成を有し、第1梁部32a~32dの上に配置されている。第1梁部32aと第2梁部52aとの間にはヒータ引出部41a(
図5C)が配置されており、第1梁部32dと第2梁部52dとの間にはヒータ引出部41bが配置されている。第2孔部53aおよび53bは、第2周縁部51を貫通しており、それぞれヒータ端子部42aおよび42b(
図5C)に対応する位置に形成されている。
【0035】
図4に示すように、下部電極層60は、第2絶縁膜5(第2ベース部50等)の上に形成されている。下部電極層60は、後述する上部電極層61とともに、電極部6を構成している。電極部6は、検知体8の物理的特性(抵抗値)の変化を電気信号として取り出すためのものである。下部電極層60は、膜体からなり、公知の成膜法によって作製される。
【0036】
下部電極層60(上部電極層61も同様)は、例えば、比較的高い融点を有する導電性材料で構成されている。下部電極層60(上部電極層61も同様)を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、モリブデン、白金、金、タングステン、タンタル、パラジウム、イリジウム、または上記の元素のうち1種以上を含む合金である。
図5Eに示すように、下部電極層60は、内側電極部62と、内側引出部64と、内側端子部66と、下部導電路68aおよび68bとを有する。
【0037】
内側電極部62は、第2ベース部50(
図5D)の上に配置されている。内側電極部62の詳細な構成については後述する。内側引出部64は、内側電極部62に接続されており、梁部52b(
図5D)を介して、第2ベース部50から第2周縁部51へ引き出されている。
【0038】
内側端子部66は、内側引出部64に接続されており、第2周縁部51(
図5D)に配置されている。内側端子部66の形状は、平面視において長方形であるが、円形、楕円形、正方形、その他の多角形等でもよい。
【0039】
下部導電路68aは、ヒータ端子部42a(
図5C)と同一の形状を有しており、第2孔部53a(
図5D)を介して、ヒータ端子部42aの上に配置されている。下部導電路68aは、ヒータ端子部42aに電気的および物理的に接続されている。下部導電路68bは、ヒータ端子部42b(
図5C)と同一の形状を有しており、第2孔部53b(
図5D)を介して、ヒータ端子部42bの上に配置されている。下部導電路68bは、ヒータ端子部42bに電気的および物理的に接続されている。
【0040】
図2に示すように、第3絶縁膜7は、第2絶縁膜5に積層されている。より詳細には、第3絶縁膜7は、第2絶縁膜5と第3絶縁膜7との間に下部電極層60が介在するように、第2絶縁膜5の上に配置されている。第3絶縁膜7の材質および製法は、第2絶縁膜5の材質および製法と同一であるが、異なっていてもよい。第3絶縁膜7は、単層膜でもよく、あるいは多層膜でもよい。第1絶縁膜3と第2絶縁膜5と第3絶縁膜7とが、同一の材質で構成されている場合、各絶縁膜の界面における密着性が向上し、各絶縁膜の機械的強度を確保することができる。また、第1絶縁膜3と第2絶縁膜5と第3絶縁膜7の少なくとも1つが異種材料である場合、異種材料を積層することにより、膜応力を緩和させ、安定した絶縁膜の積層体を構成することができる。
図5Fに示すように、第3絶縁膜7は、第3ベース部70と、第3周縁部71と、第3梁部72a~72dと、第3孔部73a~73cと、ベース孔部74とを有する。
【0041】
第3ベース部70は、第2ベース部50(
図5D)と同一の構成を有し、第2ベース部50の上に配置されている。第2ベース部50と第3ベース部70との間には、内側引出部64(
図5E)が配置されている。第3周縁部71は、第2周縁部51(
図5D)と同一の構成を有し、第2周縁部51の上に配置されている。
【0042】
第3梁部72a~72dは、第2梁部52a~52d(
図5D)と同一の構成を有し、第2梁部52a~52dの上に配置されている。第2梁部52bと第3梁部72bとの間には、内側引出部64(
図5E)が配置されている。第3孔部73a~73cは、第3周縁部71を貫通している。第3孔部73aは下部導電路68a(
図5E)に対応する位置に形成されており、第3孔部73bは下部導電路68b(
図5E)に対応する位置に形成されており、第3孔部73cは内側端子部66(
図5E)に対応する位置に形成されている。
【0043】
ベース孔部74は、第3ベース部70の中央部に形成されており、第3ベース部70を貫通している。ベース孔部74は、内側電極部62(
図5E)と同一の形状を有しており、平面視において円形状である。ベース孔部74の直径は、内側電極部62の直径よりも小さくなっているが、これと等しくてもよい。ベース孔部74を介して、内側電極部62(
図5E)の少なくとも一部は、検知体8(
図5G)の下面に接触する。
【0044】
ベース孔部74の開口縁の形状は、平面視において円形である。
図5Fでは、ベース孔部74の開口縁は、平面視において真円となるように図示されているが、真円に対して多少の歪みを伴った形状でもよい。ベース孔部74の中心の位置は、内側電極部62の中心の位置と一致している。ただし、ベース孔部74の中心の位置と、内側電極部62の中心の位置とは、異なっていてもよい。
【0045】
図2に示すように、検知体8は、第3絶縁膜7(第3ベース部70)の上に形成されている。本実施形態の検知体8は、サーミスタ膜であり、雰囲気中のガス濃度等に応じて放熱特性を変化させるとともに、その放熱特性の変化に応じて抵抗値を変化させる。検知体8は、公知の成膜法によって作製される。サーミスタ膜を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、複合金属酸化物、アモルファスシリコン、ポリシリコン、ゲルマニウム等である。
【0046】
図5Gに示すように、検知体8は、第3ベース部70(
図5F)に対応する形状を有している。検知体8の形状は、平面視において正方形であるが、円形、楕円形、長方形、その他の多角形等でもよい。検知体8の外縁には複数(
図5Gに示す例では4つ)の湾曲部が形成されているが、湾曲部については省略してもよい。検知体8の外縁が外側電極部63(
図5H)よりも外側に位置していれば、検知体8の大きさは特に限定されない。
【0047】
図4に示すように、上部電極層61は、検知体8等の上に形成されている。上部電極層61は、前述の下部電極層60とともに、電極部6を構成している。上部電極層61は、膜体からなり、公知の成膜法によって作製される。
図5Hに示すように、上部電極層61は、外側電極部63と、外側引出部65と、外側端子部67と、上部導電路69aおよび69bとを有する。
【0048】
外側電極部63は、検知体8(
図5G)の上に配置されている。外側電極部63の詳細な構成については後述する。外側引出部65は、外側電極部63に接続されており、梁部72c(
図5F)を介して、検知体8(
図5G)および第3ベース部70(
図5F)から第3周縁部71へ引き出されている。
【0049】
外側端子部67は、外側引出部65に接続されており、第3周縁部71に配置されている。外側端子部67の形状は、平面視において長方形であるが、円形、楕円形、正方形、その他の多角形等でもよい。
【0050】
上部導電路69aは、下部導電路68a(
図5E)と同一の形状を有しており、第3孔部73a(
図5F)を介して、下部導電路68aの上に配置されている。上部導電路69aは、下部導電路68aに電気的および物理的に接続されている。上部導電路69bは、下部導電路68b(
図5E)と同一の形状を有しており、第3孔部73b(
図5F)を介して、下部導電路68bの上に配置されている。上部導電路69bは、下部導電路68bに電気的および物理的に接続されている。上部導電路69cは、内側端子部66(
図5E)と同一の形状を有しており、第3孔部73c(
図5F)を介して、内側端子部66の上に配置されている。上部導電路69cは、内側端子部66に電気的および物理的に接続されている。
【0051】
図5Iに示す端子10a~10dは、例えばメッキ、リフトオフ法、金属ペースト印刷等の方法により形成される。端子10a~10dを構成する材料は、特に限定されないが、例えば、金、銀、白金、アルミニウム等である。端子10a~10cは、それぞれ上部導電路69a~69c(
図5H)と同一の形状を有しており、上部導電路69a~69cの上に配置されている。端子10a~10cは、それぞれ上部導電路69a~69cに電気的および物理的に接続されている。端子10dは、外側端子部67(
図5H)と同一の形状を有しており、外側端子部67の上に配置されている。端子10dは、外側端子部67に電気的および物理的に接続されている。
【0052】
端子10a~10dは、例えばワイヤボンディングにより、それぞれ外部回路(図示略)に電気的に接続される。例えば、外部回路は、端子10aおよび10bを介して電力を供給する。この電力は、上部導電路69aおよび69b(
図5H)と、下部導電路68aおよび68b(
図5E)と、ヒータ端子部42aおよび42b(
図5C)とを介して、発熱部40(
図5C)に供給される。また、外部回路は、端子10cおよび10dを介して電力を供給する。この電力は、上部導電路69c(
図5H)および内側端子部66(
図5E)を介して内側電極部62に供給されるとともに、外側端子部67(
図5H)を介して外側電極部63に供給される。これにより、外部回路は、検知体8の抵抗値の変化を電気信号として取得する。
【0053】
図4に示すように、触媒9は、検知体8に接触するように、検知体8の中央部に設けられている。触媒9は、検知体8および上部電極層61(外側電極部63および外側引出部64の一部)を覆っている。触媒9に検知対象ガス(可燃性ガス)が接触すると、触媒反応による燃焼熱が発生する。検知体8は、この燃焼熱による温度変化を、その抵抗変化により検出する。触媒9は、上方に向かって突出する凸形状(ドーム形状)を有しているが、触媒9の形状は、これに限定されない。また、触媒9の形状は、平面視において円形であるが、楕円形、四角形、その他の多角形等でもよい。
【0054】
触媒9は、ペースト塗布および熱処理工程等により形成される。触媒9を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、担体に貴金属粒子が担持された材料である。担体としては、酸化アルミニウム(γアルミナ等)、酸化シリコン等の酸化物材料が例示される。また、担体に担持される貴金属粒子としては、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム等の貴金属粒子等が例示される。
【0055】
以下、上述した内側電極部62および外側電極部63の詳細な構成に触れつつ、ガス検出部12の構成について説明する。
図3に示すように、ガス検出部12は、絶縁膜(本実施形態では、
図4に示す第2絶縁膜5の第2ベース部50)の上に設けられており、検知体8と、検知体8に接触する内側電極部62と外側電極部63とを有する。上述したように、内側電極部62は、検知体8の下に配置されており、外側電極部63は、検知体8の上に配置されている。したがって、内側電極部62は、検知体8の下面に接触しており、外側電極部63は、検知体8の上面に接触している。
【0056】
ガス検出部12は、第2ベース部50(
図4)の中央部に形成されている。
図3には、ガス検出部12の範囲がドットで示されている。ガス検出部12の外縁(外周)は、外側電極部63の内縁(内周)に沿っている。すなわち、ガス検出部12は、外側電極部63の内縁で囲まれた領域であり、外側電極部63の内縁よりも内側に位置する。ただし、ガス検出部12の範囲には、外側電極部63の内縁上の位置が含まれていてもよい。検知体8は、ガス検出部12において露出している。ただし、この場合の「露出」とは、絶縁膜および電極部6によって覆われていないという意味である。
【0057】
ガス検出部12は、ヒータ部4の発熱部40の上に位置し、かつ、発熱部40の外縁よりも内側に位置する。また、ガス検出部12は、触媒9の下に位置し、触媒9によって覆われている。触媒9は、ガス検出部12よりも広い範囲を覆っており、ガス検出部12は、触媒9の外縁よりも内側に位置する。触媒9は、検知体8とともに、外側電極部63等を覆っている。ガス検出部12の外縁の形状は、触媒9の外縁の形状と同様であり、平面視において円形状である。ただし、ガス検出部12の外縁の形状は、触媒9の外縁の形状とは異なっていてもよい。
【0058】
ガス検出部12において、検知体8は、内側電極部62と外側電極部63とによって挟み込まれている。ただし、内側電極部62と外側電極部63とは、Z軸に沿って対向してはいない。そのため、検知体8は、内側電極部62と外側電極部63とによって、Z軸に対して傾斜した方向、あるいは平面方向に挟み込まれている。
【0059】
外側電極部63の形状は、平面視において環状(円環状またはリング状)である。
図3および
図5Hに示すように、外側電極部63の内縁(内周)および外縁(外周)のいずれも、平面視において円形であり、外側電極部63の内縁と外縁とは同心円状に配置されている。そのため、外側電極部63の内縁と外縁との間の径方向に沿った長さL1は、外側電極部63の周方向に沿った任意の位置で一定となっている。
図3では、外側電極部63の内縁および外縁のいずれも、平面視において真円となるように図示されているが、真円に対して多少の歪みを伴った形状であってもよい。
【0060】
外側電極部63の内縁と外縁との間の径方向に沿った長さL1は、外側引出部65の延在方向に直交する方向の長さL2よりも小さくなっているが、L2と等しくてもよく、あるいはL2よりも大きくてもよい。
【0061】
上述したように、外側電極部63の形状は平面視において円環状であるため、外側電極部63の内縁によって画定されたガス検出部12の外縁の形状は、平面視において円形となる。ガス検出部12の外縁は、平面視において真円となるように図示されているが、真円に対して多少の歪みを伴った形状でもよい。
【0062】
内側電極部62の形状は、平面視において円形状(円盤状)である。
図3では、内側電極部62は、平面視において真円となるように図示されているが、真円に対して多少の歪みを伴った形状でもよい。内側電極部62は、外側電極部63の内縁よりも内側に配置されており、外側電極部63に対して径方向に離間している。外側電極部63は、内側電極部62を取り囲むように配置されている。
図5Fに示すように、第3ベース部70の中央部には、ベース孔部74が形成されている。そのため、
図4に示すように、第3ベース部70の下に配置される内側電極部62の少なくとも一部は、ベース孔部74を介して、第3ベース部70から露出している。ただし、この場合の「露出」とは、絶縁膜によって覆われていないという意味である。内側電極部62のうちベース孔部74を介して第3ベース部70から露出した部分の外縁と、外側電極部63の内縁との間の距離が、内側電極部62と外側電極部63との間の電極幅となる。
【0063】
図4に示すように、内側電極部62は、ベース孔部74を介して第3ベース部70から露出した露出部62aと、第3ベース部70で覆われた非露出部62bとを有する。露出部62aは検知体8と接触している一方で、非露出部62bは検知体8とは接触してはいない。非露出部62bは、露出部62aよりも径方向の外側(内側電極部62の外縁部)に位置する。露出部62aおよび非露出部62bのいずれも、径方向の外側から、外側電極部63によって取り囲まれている。なお、内側電極部62の外縁部は、第3ベース部70で覆われていなくてもよい。この場合、内側電極部62は、非露出部62bを具備せず、露出部62aのみを有することになる。
【0064】
図3に示すように、内側電極部62の直径D1は、外側電極部63の内縁の直径D2よりも小さい。ただし、内側電極部62の直径D1は、外側電極部63の内縁の直径D2よりも大きくてもよい。あるいは、内側電極部62の直径D1は、外側電極部63の外縁の直径D3よりも大きくてもよい。内側電極部62の露出部62aの直径と外側電極部63の内縁の直径D2との大小関係についても同様である。内側電極部62上に形成されたベース孔部74の外縁(露出部62aの外縁)と、外側電極部63の内縁との間の径方向に沿った長さは、ベース孔部74の周方向に沿った任意の位置で一定となっている。
【0065】
内側電極部62の直径D1は、内側引出部64の延在方向に直交する方向の長さL3よりも大きい。露出部62aの直径についても同様である。露出部62aの外縁と外側電極部63の内縁(内周)との間の径方向に沿った距離(電極間距離)L4は、内側電極部62の周方向に沿った任意の位置において一定となっている。例えば、
図4に示すように、ガスセンサ1のXZ面に平行な断面において、露出部62aの外縁の位置P1aと外側電極部63の内縁の位置P2aとの間のX軸に沿った電極間距離L4aと、露出部62aの外縁の位置P1bと外側電極部63の内縁の位置P2bとの間のX軸に沿った電極間距離L4bとは、ほぼ等しくなっている。ただし、「ほぼ」とは、±1%の誤差を許容することを意味する。また、
図3に示すように、露出部62aの外縁と外側電極部63の内縁との間の径方向に沿った距離L4は、特に限定されないが、外側電極部63の内縁と外縁との間の径方向に沿った長さL1よりも大きい。
【0066】
平面視において、内側電極部62と外側電極部63とは、重複しないように配置されている。特に、平面視において、露出部62aと外側電極部63とは、重複しないように配置されている。また、内側電極部62の外縁62cによって画定される円と、露出部62aの外縁によって画定される円と、外側電極部63の内縁によって画定される円と、外側電極部63の外縁によって画定される円とは、同心円状に配置されている。すなわち、内側電極部62の中心の位置と、露出部62aの中心の位置と、外側電極部63の中心の位置とは、一致している。ただし、内側電極部62の中心の位置と、露出部62aの中心の位置と、外側電極部63の中心の位置とは、異なっていてもよい。
【0067】
平面視において、内側電極部62の外縁62cは、外側電極部63の内縁に対して径方向に対向している。より詳細には、内側電極部62の外縁62cは、内側電極部62の全周に沿って、全方位的に、外側電極部63の内縁に対して径方向に対向している。外側電極部63の全周に沿って、どの方向から電極部6を見ても、内側電極部62と外側電極部63とからなる電極対は同一の形状を有する。
【0068】
本実施形態では、環状の外側電極部63によって、内側電極部62(露出部62a)を全方位的に取り囲むことができる。そのため、内側電極部62(露出部62a)とその周囲の外側電極部63とによって、全方位的に、検知体8の抵抗変化を電気信号として取り出す構造とすることが可能である。これにより、ガス検出部12の検出感度の方向依存性を効果的に低減し、ガスセンサ1の検出精度および応答性を顕著に高めることができる。
【0069】
図5E~
図5Gに示すように、内側電極部62の上には、第3絶縁膜7の第3ベース部70が形成され、第3ベース部70の上には、検知体8が形成される。ここで、第3ベース部70の中央部には、ベース孔部74が形成されている。そのため、
図4に示すように、検知体8は、ベース孔部74を介して、内側電極部62(露出部62a)と直接的に接触している。ベース孔部74の直径は、内側電極部62の直径D1とほぼ等しくなっており、内側電極部62の上面のほぼ全域が、検知体8の下面に接触している。ただし、「ほぼ」とは、±1%の誤差を許容することを意味する。内側電極部62の外縁部には、ベース孔部74の周縁部が乗り上がるように積層されており、非露出部62bが形成されている。そのため、非露出部62bにおいて、内側電極部62の外縁部とベース孔部74の周縁部とは重複している。ただし、内側電極部62の外縁部とベース孔部74の周縁部とは、重複しないように、隣接して配置されていてもよい。
【0070】
図3および
図4に示すように、検知体8は、外側電極部63の内縁よりも内側(すなわち、ガス検出部12)において露出している。ただし、この場合の「露出」とは、絶縁膜および電極部6によって覆われていないという意味である。上述したように、検知体8の下には、平面視において円形状の内側電極部62が配置されている。そのため、外側電極部63の内縁よりも内側において、検知体8の上面は、内側電極部62によって覆われていない。このように、検知体8の表面(上面)が露出することにより、ガス検出部12によるガス濃度の検出範囲を広く確保することが可能となる。そのため、ガスセンサ1の検出精度および応答性をさらに高めることができる。
【0071】
ガス検出部12において、検知体8は、露出部62aの上方に位置する内側感応部80と、露出部62aの外縁と外側電極部63の内縁との間に位置する外側感応部81とを有する。
図4に示すように、内側感応部80は、露出部62aを介して、第2絶縁膜5(第2ベース部50)の上に配置されている。これに対して、外側感応部81は、第3絶縁膜7(第3ベース部70)の上に直接的に配置されている。内側感応部80の大部分は、外側感応部81よりも上方に位置する。ただし、内側感応部80と外側感応部81との位置関係は、これに限定されない。例えば、第3ベース部70の厚みが内側電極部62の厚みよりも大きい場合、外側感応部81の上面が内側感応部80の上面の上方に配置される場合がある。
【0072】
図3および
図4に示すように、内側感応部80の形状は、露出部62aによって画定され、平面視において円形状である。外側感応部81の形状は、露出部62aと外側電極部63との間の領域によって画定され、平面視において環状(円環状またはリング状)である。
【0073】
図4に示すように、第3ベース部70の一部(ベース孔部74の周縁部)は、第2ベース部50から内側電極部62の外縁部に乗り上げている。また、外側感応部81の一部は、ベース孔部74の周縁部に乗り上げている。そのため、外側感応部81には、段差部82が局所的に形成されている。なお、外側感応部81に段差部82が形成されないように、絶縁膜(第3絶縁膜7等)あるいは検知体8の厚みを調整してもよい。
【0074】
外側電極部63(ただし、内側引出部64と重複していない部分)の下面の高さ位置は、内側電極部62の上面の高さ位置と等しくなっている(ほぼ面一となっている)。ただし、外側電極部63の下面の高さ位置は、内側電極部62の上面の高さ位置よりも高くてもよく、あるいは低くてもよい。
【0075】
図3および
図4に示すように、外側電極部63の一部は、内側引出部64と交差している。そのため、外側電極部63の内側引出部64との交差部における高さ位置は、外側電極部63の他の部分の高さ位置に比べて、高くなっている。外側電極部63と内側引出部64との交差部において、外側電極部63と内側引出部64とは、第3ベース部70によって絶縁されている。
【0076】
内側引出部64の一部は、内側電極部62からX軸に沿って一方側に引き出されている。また、外側引出部65の一部は、外側電極部63からX軸に沿って他方側に引き出されている。すなわち、内側引出部64の引出方向と外側引出部65の引出方向とは、X軸方向に関して反対側である。ただし、これらの引出方向については、適宜変更してもよい。また、内側引出部64の他の一部と、外側引出部65の他の一部とは、Y軸に沿って同一方向に引き出されている。ただし、これらの引出方向については、適宜変更してもよい。
【0077】
外側電極部63の上面または下面の面積S1は、内側電極部62(さらには、露出部62a)の上面または下面の面積S2とは異なっている。本実施形態では、外側電極部63の面積S1は、内側電極部62(さらには、露出部62a)の面積S2よりも小さい。ただし、外側電極部63の面積S1は、内側電極部62(さらには、露出部62a)の面積S2と等しくてもよい。あるいは、外側電極部63の面積S1は、内側電極部62(さらには、露出部62a)の面積S2よりも小さくてもよい。
【0078】
本実施形態では、検知体8の上面側と下面側とに、それぞれ外側電極部63と内側電極部62とが分離して配置されているため、内側電極部62に接続された検知体8の下面において感度効果を得ることができる。
【0079】
次に、ガスセンサ1の製造方法の一例について説明する。まず、
図5Aに示す基材2の基となる基材材料(キャビティ20が形成されていない基材2)を準備する。次に、公知の成膜法により、基材材料の上面に、順次、
図5B~
図5Iに示す各膜体をこの順番で形成する。
図5B~
図5Iに示す各膜体の形状は、例えばリフトオフ法によって形成する。次に、第1絶縁膜3の第1ベース部30(
図5B)が露出するまで、基材材料の底面にエッチング等を施し、キャビティ20を形成する。これにより、
図5Aに示すキャビティ20を有する基材2が形成される。次に、
図3および
図4に示すように、少なくともガス検出部12が覆われるように、検知体8および外側電極部63の上から、
図5Jに示す触媒9を塗布する。以上のようにして、ガスセンサ1を製造することができる。
【0080】
図3および
図4に示すように、本実施形態では、電極部6が、内側電極部62と、内側電極部62(特に、露出部62a)を取り囲むように配置された外側電極部63とを有する。内側電極部62を外側電極部63で取り囲むことにより、内側電極部62とその周囲の外側電極部63とによって、電極部6の周囲に沿って、いずれの方向からも画一的に、検知体8の物理的特性の変化(本実施形態では、検知体8の抵抗変化)を電気信号として取り出す構造とすることができる。これにより、ガス検出部12の検出感度の方向依存性を低減することが可能となり、ガス濃度の分布またはガスの流動方向に依ることなく、ガス濃度を高精度で検出することができる。加えて、ガス検出部12に熱変動(熱分布)が生じるような場合にあっては、その影響を受けにくく、ガス濃度を高精度で検出することができる。したがって、検出精度および応答性に優れたガスセンサ1を実現することができる。
【0081】
また、内側電極部62(特に、露出部62a)は、平面視において円形状である。円形状の内側電極部62を外側電極部63で取り囲むことにより、内側電極部62とその周囲の外側電極部63とによって、内側電極部62の円周方向に沿って、いずれの方向からも画一的に、検知体8の抵抗変化を電気信号として取り出す構造とすることが可能となる。特に、円形状の内側電極部62を円環状の外側電極部63で取り囲むことにより、内側電極部62とその周囲の外側電極部63とによって、内側電極部62の円周方向に沿って、全方位的に、検知体8の抵抗変化を電気信号として取り出す構造とすることが可能となる。これにより、ガス検出部12の検出感度の方向依存性をさらに低減し、ガスセンサ1の検出精度および応答性をさらに高めることができる。
【0082】
また、検知体8の少なくとも一部は、内側電極部62(特に、露出部62a)と外側電極部63との間に位置する。また、内側電極部62(特に、露出部62a)は、検知体8の下面に接触しており、外側電極部63は、検知体8の上面に接触している。そのため、内側電極部62と外側電極部63とは、検知体8を挟むように配置される。これにより、内側電極部62と外側電極部63とによって、平面方向だけではなく、検知体8の膜厚方向(検知体8の上面と下面との間)における抵抗変化も電気信号として取り出す構造とすることが可能となる。したがって、ガス検出部12の検出感度の方向依存性をさらに低減し、ガスセンサ1の検出精度および応答性をさらに高めることができる。
【0083】
(第2実施形態)
図6Aおよび
図6Bに示す第2実施形態のガスセンサ1Aは、以下に示す点を除いて、第1実施形態のガスセンサ1と同様の構成を有する。第1実施形態のガスセンサ1と重複する部分には、同一符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0084】
図6Aおよび
図6Bに示すように、ガスセンサ1Aには触媒9が具備されていない一方で、検知体(ガス感応体)8Aが半導体(金属酸化物半導体)膜で構成されている。半導体膜を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化タングステン、酸化インジウム、酸化コバルト等である。その他の構成は、第1実施形態のガスセンサ1と同様である。
【0085】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態では、検知体8Aが半導体膜で構成されているため、特に低濃度領域において、高精度かつ信頼性の高いガスセンサ1Aを実現することができる。
【0086】
(第3実施形態)
図7Aおよび
図7Bに示す第3実施形態のガスセンサ1Bは、以下に示す点を除いて、第2実施形態のガスセンサ1Aと同様の構成を有する。第2実施形態のガスセンサ1Aと重複する部分には、同一符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0087】
図7Bに示すように、ガスセンサ1Bは、検知体(ガス感応体)8Bを有する。検知体8Bは、上述した半導体(金属酸化物半導体)材料で構成されている。検知体8Bは、少なくとも内側電極部62、外側電極部63および第3ベース部70を覆うように、これらの上に塗布されている。検知体8Bの一部は、外側電極部63の径方向の外側の領域にも及んでおり、外側引出部65の一部も検知体8Bで覆われている。ただし、検知体8Bの形成領域は、
図7Aおよび
図7Bに示す領域に限定されない。
【0088】
上部電極層61は、第3ベース部70の上に形成されており、上部電極層61と第3ベース部70とは接触している。検知体8Bは、上方に向かって突出する凸形状(ドーム形状)を有しているが、検知体8Bの形状は、これに限定されない。検知体8Bの形状は、平面視において、円形であるが、楕円形、四角形、その他の多角形等でもよい。
【0089】
本実施形態においても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、検知体8Bが、塗布された半導体材料により構成されているため、特に低濃度領域において、高精度かつ信頼性の高いガスセンサ1Bを実現することができる。
【0090】
(第4実施形態)
図8Aおよび
図8Bに示す第4実施形態のガスセンサ1Cは、以下に示す点を除いて、第1実施形態のガスセンサ1と同様の構成を有する。第1実施形態のガスセンサ1と重複する部分には、同一符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0091】
図8Aに示すように、ガスセンサ1Cは、電極部6Cを有する。電極部6Cは、外側電極部63Cを有する。外側電極部63Cの形状は、平面視において周方向の一部が途切れた環状(C字状)である。外側電極部63Cは、内側電極部62の外縁(外周)に沿って延在しており、内側電極部62の一部を取り囲んでいる。外側電極部63Cは、内側電極部62の外縁に沿って、270度以上湾曲(回転)している。ただし、外側電極部63Cは、内側電極部62の外縁に沿って、少なくとも180度以上湾曲(回転)していれば、外側電極部63Cの湾曲(回転)度合は、特に限定されない。
【0092】
外側電極部63Cの曲率半径は、内側電極部62の曲率半径よりも大きく、外側電極部63Cの中心の位置は、内側電極部62の中心の位置と一致している。ただし、外側電極部63Cの中心は、内側電極部62の中心から離間した位置に配置されていてもよい。外側電極部63Cの内縁と外縁との間の径方向に沿った長さL1は、外側電極部63Cの周方向に沿った任意の位置で一定となっている。
【0093】
内側電極部62と外側電極部63Cとは、径方向に沿って離間している。内側電極部62と外側電極部63Cとの間の径方向に沿った距離L4は、内側電極部62の周方向に沿った任意の位置で一定となっている。本実施形態では、L4>L1であるが、第1実施形態と同様に、これらの大小関係については適宜変更してもよい。
【0094】
外側電極部63Cの周方向の一端と他端とは離間しており、外側電極部63Cの周方向の一端と他端との間には隙間Gが形成されている。内側引出部64は、隙間Gを通過するように、内側電極部62からX軸に沿って引き出されている。そのため、外側電極部63Cは、内側引出部64とは交差していない。
【0095】
内側引出部64と外側電極部63Cの延在方向(周方向)の一端との間のY軸に沿った距離L5aは、内側電極部62の外縁と外側電極部63Cの内縁との間の径方向に沿った距離L4とほぼ等しい。また、内側引出部64と外側電極部63Cの延在方向(周方向)の他端との間のY軸に沿った距離L5bは、内側電極部62の外縁と外側電極部63Cの内縁との間の径方向に沿った距離L4とほぼ等しい。ただし、「ほぼ」とは、±1%の誤差を許容することを意味する。
【0096】
図8Bに示すように、内側電極部62および外側電極部63Cのいずれも、第2絶縁膜5の第2ベース部50の上に形成されている。すなわち、内側電極部62および外側電極部63Cは、同一面上に位置する。
【0097】
また、内側電極部62および外側電極部63Cのいずれも、検知体8で覆われており、検知体8の下面に接触している。すなわち、検知体8の上面には、内側電極部62および外側電極部63Cのいずれも配置されていない。そのため、検知体8は、全体的に露出している。ただし、この場合の「露出」とは、絶縁膜および電極部6Cによって覆われていないという意味である。
【0098】
ガス検出部12Cは、内側電極部62の外縁と外側電極部63Cの内縁との間に形成されており、外側電極部63Cの内縁に沿って延在している。ガス検出部12Cの形状は、外側電極部63Cの形状に対応しており、平面視において周方向の一部が途切れた環状(C字状)である。ガス検出部12Cは、隙間Gに対応する位置には形成されていない。
【0099】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態では、外側電極部63Cが、平面視において周方向の一部が途切れた環状である。そのため、同一面上(第2ベース部50上)に、内側電極部62に接続された内側引出部64と外側電極部63Cとを交差させることなく配置することが可能となり、電極部6Cの製造工程を簡素化することができる。
【0100】
(第5実施形態)
図9Aおよび
図9Bに示す第5実施形態のガスセンサ1Dは、以下に示す点を除いて、第1実施形態のガスセンサ1と同様の構成を有する。第1実施形態のガスセンサ1と重複する部分には、同一符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0101】
図9Aに示すように、ガスセンサ1Dは、電極部6Dを有する。電極部6Dは、内側電極部62Dを有する。
図9Aと
図3とを対比して明らかなように、内側電極部62D(さらには、露出部62a)の面積は、第1実施形態の内側電極部62の面積よりも大きい。内側電極部62Dの外縁(外周)は、外側電極部63の外縁(外周)よりも外側に位置する。そのため、外側電極部63は、内側電極部62Dの内側に位置しており、内側電極部62Dの一部(露出部62aの外縁部)と、外側電極部63の少なくとも一部とは、平面視において重複している。
【0102】
図9Bに示すように、検知体8の一部は、外側電極部63と露出部62aとの間に位置し、外側電極部63と露出部62aとでZ軸方向(検知体8の膜厚方向)に挟まれている。ガス検出部12Dは、外側電極部63と、露出部62aの外縁部と、これらによって挟まれた検知体8とによって形成されている。すなわち、ガス検出部12Dは、Z軸方向において外側電極部63と露出部62aの外縁部との間に位置し、平面視において外側電極部63と露出部62aとが重複している部分に位置する。
【0103】
本実施形態では、内側電極部62D(特に、露出部62a)と外側電極部63とによって、検知体8の膜厚方向(検知体8の上面と下面との間)における抵抗変化を電気信号として取り出す構造とすることが可能である。したがって、ガス検出部12Dの検出感度の方向依存性を低減し、ガスセンサ1Dの検出精度および応答性を高めることができる。
【0104】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。例えば、上記第1実施形態では、
図3に示すように、内側電極部62は、平面視において円形であったが、楕円形、四角形、その他の多角形等でもよい。上記第2実施形態~第5実施形態についても同様である。
【0105】
上記第1実施形態では、
図3に示すように、外側電極部63は、いずれの方向からも外側電極部63と内側電極部62との間の電極幅が等距離となるように、平面視において円環状であることが望ましいが、楕円環状、四角環状、その他の多角環状でもよい。上記第2実施形態、第3実施形態および第5実施形態についても同様である。
【0106】
上記第1実施形態において、
図3に示すように、外側電極部63は、その周方向に沿って連続的に延在していたが、断続的に延在していてもよい。すなわち、外側電極部63の周方向の一部が、1か所において、断絶していてもよい。また、外側電極部63は、その周方向に沿って、幅(外側電極部63の内縁と外縁との間の径方向に沿った幅)の変動を伴うような形状でもよい。また、外側電極部63の外縁および/または内縁は、うねりを伴うような形状でもよい。上記第2実施形態~第5実施形態についても同様である。
【0107】
上記第4実施形態において、内側電極部62および外側電極部63Cは、いずれも検知体8の下に配置されていた。しかしながら、第1実施形態と同様に、外側電極部63Cについては、検知体8の上に配置されていてもよい。
【0108】
上記第4実施形態で示した技術(外側電極部63Cを平面視において周方向の一部が途切れた環状とする技術)を、上記第2実施形態および第3実施形態に適用してもよい。また、上記第5実施形態で示した技術(内側電極部62Dと外側電極部63とを平面視において重複させる技術)を、上記第2実施形態に適用してもよい。
【0109】
上記第1実施形態では、検知体8は、サーミスタ膜あるいは半導体材料で構成されていたが、Pt線等で構成されてもよい。上記第2実施形態~第5実施形態についても同様である。
【実施例0110】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0111】
実施例
以下の材料を用いて、
図1および
図2に示すガスセンサ1の試料を作製した。なお、触媒9の平面視における直径を150μmとし、厚さを20μmとした。
基材2:Si
第1絶縁膜3、第2絶縁膜5および第3絶縁膜7:SiO
2
ヒータ部4:Pt
電極部6(内側電極部62および外側電極部63):Pt
検知体8:Co-Ni-Mn-Ox(サーミスタ膜)
触媒9:Al
2O
3およびPt(Al
2O
3にPtが担持された材料)
端子10a~10d:Pt
【0112】
上記試料について、COガスの検出における応答波形を取得した。結果を
図10に示す。
図10には、応答波形とともに、ガスセンサ1に供給したCOガスの濃度変化を示している。ガス検出部12の温度が300℃の下、COガスの濃度を、300秒毎に、100ppm、300ppm、500ppmへと変化させる処理を3回行った。
【0113】
1回目の処理では、経過時間が1200秒においてCOガスの濃度を0ppmから100ppmに変化させ、経過時間が1500秒においてCOガスの濃度を100ppmから300ppmに変化させ、経過時間が1800秒においてCOガスの濃度を300ppmから500ppmに変化させた。2回目の処理では、経過時間が2400秒においてCOガスの濃度を0ppmから100ppmに変化させ、経過時間が2700秒においてCOガスの濃度を100ppmから300ppmに変化させ、経過時間が3000秒においてCOガスの濃度を300ppmから500ppmに変化させた。3回目の処理では、経過時間が3600秒においてCOガスの濃度を0ppmから100ppmに変化させ、経過時間が3900秒においてCOガスの濃度を100ppmから300ppmに変化させ、経過時間が4200秒においてCOガスの濃度を300ppmから500ppmに変化させた。
【0114】
比較例
実施例と同様の材料を用いて、比較例の試料を作製した。比較例の試料では、例えば特許6917843号の
図5に示されるように、平面視において長方形である一対の電極部を作製した。そして、一対の電極部の各々の短辺に平行な方向に沿って、一対の電極部を対向するように配置した。上記試料について、実施例と同様に、COガスの検出における応答波形を取得した。結果を
図11に示す。
【0115】
図10と
図11とを対比して明らかなように、実施例では、比較例に比べて、
図10および
図11中の破線で示されるベースラインの変動が低減されることが確認された。また、実施例では、比較例に比べて、検出値が安定するまでの時間が短く、飽和応答性が安定することが確認された。また、実施例では、比較例に比べて、低濃度(例えば、100ppm)における波形が安定することが確認された。また、これらの傾向は、3回の測定のいずれにおいても確認され、ばらつきが少なく、応答波形の再現性が高いことが確認された。
【0116】
実施例では、ガス検出部12の検出感度の方向依存性を低減し、ガス濃度の分布またはガスの流動方向に依ることなく、ガス濃度を高精度で検出することができる。加えて、ガス検出部12が熱変動(熱分布)の影響を受けにくくなり、ガス濃度を高精度で検出することができる。実施例においては、以上の効果が得られることが、
図10の結果から明らかになった。