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特開2024-143388測定装置、冷凍装置、測定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143388
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】測定装置、冷凍装置、測定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20241003BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N27/22 B
F25B1/00 341L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056037
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 潤己
(72)【発明者】
【氏名】池辺 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】花崎 友哉
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA06
2G060AC02
2G060AE17
2G060AF10
2G060FA10
2G060HC02
2G060HC15
(57)【要約】
【課題】冷凍機油と冷媒との混合液中の冷凍機油の濃度の測定値の精度を向上させることにある。
【解決手段】電極部(61)を有し、冷媒と冷凍機油との混合液中に配置される該電極部(61)における静電容量値を検出する静電容量センサ(60)を備え、静電容量値に基づいて冷凍機油の濃度を示す第1指標を測定する測定装置であって、混合液の温度と静電容量値とに基づいて第1指標を求めると共に、混合液の温度と第1指標とに基づいて、該第1指標における誤差幅を求める制御部(100,101)を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極部(61)を有し、冷媒と冷凍機油との混合液中に配置される該電極部(61)における静電容量値を検出する静電容量センサ(60)を備え、静電容量値に基づいて冷凍機油の濃度を示す第1指標を測定する測定装置であって、
前記混合液の温度と静電容量値とに基づいて前記第1指標を求めると共に、前記混合液の温度と前記第1指標とに基づいて、該第1指標における誤差幅を求める制御部(100,101)を備える
測定装置。
【請求項2】
前記誤差幅は、冷媒の特性変化による静電容量値の出力公差に基づく
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記電極部(61)は、冷媒を圧縮する圧縮機構(52)を備える圧縮機(21)内に形成される油貯まり部(56)に配置される
請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記制御部(100,101)は、前記第1指標における前記誤差幅に基づいて、該第1指標の下限値または上限値を決定する
請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項5】
前記制御部(100,101)は、
静電容量値と、前記混合液の温度と、前記第1指標との関係を示す第1データと、
前記混合液の温度と前記第1指標とに基づいて定まる前記誤差幅を示す第2データとを有する
請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項6】
請求項3に記載の測定装置と、
圧縮機(21)および減圧弁(26,41)が設けられ、冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)とを備え、
前記測定装置は、冷媒と冷凍機油との混合液中の静電容量値に基づいて冷凍機油の濃度を示す第1指標を測定し、
前記第1指標に基づく冷凍機油濃度の下限値が所定値よりも低いと判定された場合、前記圧縮機(21)の回転数を低下、または前記減圧弁(26,41)の開度を小さくする冷凍装置。
【請求項7】
請求項3に記載の測定装置と、
圧縮機(21)が設けられ、冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)とを備え、
前記測定装置は、冷媒と冷凍機油との混合液中の静電容量値に基づいて冷凍機油の濃度を示す第1指標を測定し、
冷凍能力を増大させるときに、前記第1指標に基づく冷凍機油の油濃度の下限値が所定値よりも高いと判定された場合、前記圧縮機(21)の回転数を上昇させる冷凍装置。
【請求項8】
冷媒と冷凍機油との混合液中の冷凍機油の濃度を示す第1指標を測定する測定方法であって、
前記混合液の温度を検出するステップと、
前記混合液中に配置される電極部(61)における静電容量値を検出するステップと、
前記混合液の温度と、静電容量値と、前記第1指標との関係に基づいて、前記第1指標を取得するステップと、
前記混合液の温度と、取得された前記第1指標とに基づいて、所定の誤差幅を選択するステップとを有する
測定方法。
【請求項9】
冷媒と冷凍機油との混合液中の冷凍機油の濃度を示す第1指標を測定するプログラムであって、
前記混合液の温度と、前記混合液中に配置される電極部(61)における静電容量値と、前記第1指標との関係に基づいて、前記第1指標を取得する処理と、
前記混合液の温度と、取得された前記第1指標とに基づいて、所定の誤差幅を選択する処理とを実行するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置、冷凍装置、測定方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧縮機内の冷媒と冷凍機油との混合液中の油濃度を検出する冷媒圧縮装置が開示されている。この冷媒圧縮機装置は、圧縮機内の油溜まりに配置される電極を備え、電極間(厳密には電極とシェル内面との間)に存在する冷凍機油の比誘電率に基づいて油濃度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/134742号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、混合液中の冷媒濃度とその比誘電率との間には概ね比例関係を有し、さらに混合液の温度と混合液中の冷媒濃度との間にも概ね比例関係を有することが知られている。そのため、混合液の温度が分かれば、混合液中の電極間の静電容量を検出することで、混合液中の冷媒濃度を測定することができる。しかし、冷凍機油種と冷媒種との組み合わせや、圧縮機の運転状態によって必ずしも上記比例関係が成立するとは限らず、混合液中の冷凍機油の濃度の測定値に誤差が生じるおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、冷凍機油と冷媒との混合液中の冷凍機油の濃度の測定値の精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、電極部(61)を有し、冷媒と冷凍機油との混合液中に配置される該電極部(61)における静電容量値を検出する静電容量センサ(60)を備え、静電容量値に基づいて冷凍機油の濃度を示す第1指標を測定する測定装置である。測定装置は、前記混合液の温度と静電容量値とに基づいて前記第1指標を求めると共に、前記混合液の温度と前記第1指標とに基づいて、該第1指標における誤差幅を求める制御部(100,101)を備える。
【0007】
第1の態様では、第1指標における誤差幅を求めることができる。例えば第1指標を混合液中の冷凍機油の濃度(以下、油濃度という)としたときに、測定された油濃度における誤差幅が求まる。このように、第1指標の測定値における誤差範囲まで求めることで、例え誤差が生じていても、実際の第1指標の値はその誤差範囲内の値に収まることが推定される。これにより、第1指標の測定値の信頼性を向上できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、
前記誤差幅は、冷媒の特性変化による静電容量値の出力公差に基づく。
【0009】
第2の態様では、冷媒特性の変化による公差に基づいて誤差幅を求めることができる。
【0010】
第3の態様は、第1または第2の態様において、
前記電極部(61)は、冷媒を圧縮する圧縮機構(52)を備える圧縮機(21)内に形成される油貯まり部(56)に配置される。
【0011】
第3の態様では、圧縮機(21)内に貯留する混合液中の油濃度または冷媒濃度を測定できる。
【0012】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、
前記制御部(100,101)は、前記第1指標における前記誤差幅に基づいて、該第1指標の下限値または上限値を決定する。
【0013】
第4の態様では、誤差幅の下限値を第1指標の測定値とすることで、第1指標の低く見積もった値を取得できる。また、誤差幅の上限値を第1指標の測定とすることで、第1指標の高く見積もった値を取得できる。
【0014】
第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、
前記制御部(100,101)は、
静電容量値と、前記混合液の温度と、前記第1指標との関係を示す第1データと、
前記混合液の温度と前記第1指標とに基づいて定まる前記誤差幅を示す第2データとを有する。
【0015】
第5の態様では、混合液の温度と静電容量値を検出するだけで、予め記憶された第1データおよび第2データに基づいて第1指標およびその誤差幅を取得できる。
【0016】
第6の態様は、第1~5の態様のいずれか1つの測定装置と、圧縮機(21)および減圧弁(26,41)が設けられ、冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)とを備える冷凍装置である。測定装置は、冷媒と冷凍機油との混合液中の静電容量値に基づいて冷凍機油の濃度を示す第1指標を測定する。冷凍装置は、前記第1指標に基づく冷凍機油の濃度の下限値が所定値よりも低いと判定された場合、前記圧縮機(21)の回転数を低下、または前記減圧弁(26,41)の開度を小さくする。
【0017】
第6の態様では、仮に油濃度の測定値に誤差が生じていても、実際の油濃度はこの下限値以上であると推定される。このように油濃度の測定値を少なく見積もることで、圧縮機(21)内の摺動部分への冷凍機油の供給不足が抑制される。これにより、圧縮機(21)の摺動部分における潤滑不良を抑えることができ、圧縮機(21)の故障を抑制できる。
【0018】
第7の態様は、第1~5の態様のいずれか1つの測定装置と、圧縮機(21)が設けられ、冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)とを備える冷凍装置である。測定装置は、冷媒と冷凍機油との混合液中の静電容量値に基づいて冷凍機油の濃度を示す第1指標を測定する。冷凍装置は、冷凍能力を増大させるときに、前記第1指標に基づく冷凍機油の油濃度の下限値が所定値よりも高いと判定された場合、前記圧縮機(21)の回転数を上昇させる。
【0019】
第7の態様では、仮に油濃度の測定値に誤差が生じていても、実際の油濃度はこの下限値以上であると推定される。従って、冷凍能力の増大が要求されたときでも、油濃度の下限値が所定値よりも高ければ、圧縮機(21)の回転数をすぐに増大しても圧縮機(21)における摺動部分の潤滑不良を抑制できる。これにより、例えば冷凍装置の起動時間を短縮できる。起動時間は、冷凍装置の運転開始から運転が安定するまでの時間である。
【0020】
第8の態様は、冷媒と冷凍機油との混合液中の冷凍機油の濃度を示す第1指標を測定する測定方法である。測定方法は、前記混合液の温度を検出するステップと、前記混合液中に配置される電極部(61)における静電容量値を検出するステップと、前記混合液の温度と、静電容量値と、前記第1指標との関係に基づいて、前記第1指標を取得するステップと、前記混合液の温度と、取得された前記第1指標とに基づいて、所定の誤差幅を選択するステップとを有する。
【0021】
第9の態様は、冷媒と冷凍機油との混合液中の冷凍機油の濃度を示す第1指標を測定するプログラムである。プログラムは、前記混合液の温度と、前記混合液中に配置される電極部(61)における静電容量値と、前記第1指標との関係に基づいて、前記第1指標を取得する処理と、前記混合液の温度と、取得された前記第1指標とに基づいて、所定の誤差幅を選択する処理とを実行する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態に係る空気調和装置の配管系統図である。
図2図2は、空気調和装置の主要機器を示すブロック図である。
図3図3は、圧縮機の構成を示す概略図である。
図4図4は、実施形態に係る測定装置の構成を示す概略図である。
図5図5は、第1データの一例を示す図である。
図6図6は、第2データの一例を示す図である。
図7図7は、油濃度の測定方法を示すフローチャートである。
図8図8は、測定された油濃度の範囲を説明する図である。
図9図9は、圧縮機の保護制御における制御部の動作を示すフローチャートである。
図10図10は、変形例に係る空気調和装置の図9に相当するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下に説明する各実施形態、変形例、その他の例等の各構成は、本発明を実施可能な範囲において、組み合わせたり、一部を置換したりできる。
【0024】
(1)空気調和装置の構成
空気調和装置(1)は、本開示の冷凍装置(1)の一例である。空気調和装置(1)は、対象空間の空気の温度を調節する。対象空間は、例えばビル等の室内空間である。
【0025】
図1に示すように、空気調和装置(1)は、室外ユニット(20)、室内ユニット(40)、連絡配管(12)、および制御装置(100)を有する。空気調和装置(1)は、測定装置(10)を有する。測定装置(10)は、冷媒と冷凍機油との混合液中の冷凍機油の濃度(以下、油濃度という)を示す第1指標を測定する。測定装置(10)の詳細は後述する。
【0026】
室外ユニット(20)と室内ユニット(40)とは、連絡配管(12)を介して互いに接続される。この接続により、閉回路である冷媒回路(11)が構成される。冷媒回路(11)には、冷媒が充填される。空気調和装置(1)は、室外ユニット(20)と室内ユニット(40)との間で冷媒を循環させて冷凍サイクルを行い、室内空間の空気調和を行う。
【0027】
冷媒回路(11)は、室外ユニット(20)に設けられる室外回路(20a)と、室内ユニット(40)に設けられる室内回路(40a)とを含む。連絡配管(12)は、液連絡配管(13)とガス連絡配管(14)とを含む。液連絡配管(13)およびガス連絡配管(14)のそれぞれの一端は、室外回路(20a)に接続され、それぞれの他端は、室内回路(40a)に接続される。
【0028】
(1-1)室外ユニット
室外ユニット(20)は、圧縮機(21)、室外熱交換器(22)、室外ファン(23)、室外膨張弁(26)、および四方切換弁(25)を有する。
【0029】
圧縮機(21)は、吸入した冷媒を圧縮する。圧縮機(21)は、圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機(21)は、スクロール型の回転式圧縮機である。圧縮機(21)は、揺動ピストン式、ローリングピストン式、スクリュー式などの他の回転式圧縮機でああってもよい。圧縮機(21)は、インバータ装置により運転周波数(回転数)が可変に構成される。
【0030】
室外ファン(23)は、室外熱交換器(22)に室外空気を搬送する。
【0031】
室外熱交換器(22)は、その内部を流れる冷媒と室外ファン(23)により搬送された室外空気とを熱交換させる。
【0032】
室外膨張弁(26)は、冷媒を減圧する。室外膨張弁(26)は、開度が調節可能な電動膨張弁である。
【0033】
四方切換弁(25)は、第1ポート(P1)と第2ポート(P2)と第3ポート(P3)と第4ポート(P4)とを有する。四方切換弁(25)は、第1状態(図1の実線で示す状態)と、第2状態(図1の破線で示す状態)とに切り換わる。四方切換弁(25)が第1状態と第2状態とに切り換わることによって、空気調和装置(1)は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて運転する。
【0034】
(1-2)室内ユニット
室内ユニット(40)は、室内熱交換器(42)、室内ファン(43)および室内膨張弁(41)を有する。
【0035】
室内ファン(43)は、室内熱交換器(42)に室内空気を搬送する。
【0036】
室内熱交換器(42)は、室内空気と、冷媒とを熱交換させる。
【0037】
室内膨張弁(41)は、冷媒を減圧する。室内膨張弁(41)は、開度が調節可能な電動膨張弁である。室内膨張弁(41)は、減圧弁(41)の一例である。
【0038】
空気調和装置(1)は、各種のセンサを有する。例えば、空気調和装置(1)は、図示しない吐出温度センサ、吸入温度センサ、高圧圧力センサおよび低圧圧力センサを有する。吐出温度センサは、圧縮機(21)の吐出管(19)の冷媒の温度を検出する。吸入温度センサは、圧縮機(21)の吸入管(18)の冷媒の温度を検出する。高圧圧力センサは、圧縮機(21)の吐出圧力(冷媒回路(11)の高圧圧力)を検出する。低圧圧力センサは、圧縮機(21)の吸入圧力(冷媒回路(11)の低圧圧力)を検出する。高圧圧力センサおよび吐出温度センサは、圧縮機(21)の吐出過熱度(DSH)を検出するための吐出過熱度検知部を構成する。具体的に、高圧圧力センサで検出された高圧圧力(HP)に相当する飽和温度と、吐出温度センサの検出温度との差により、吐出過熱度(DSH)が求められる。
【0039】
(1-3)制御装置
制御装置(100)は、運転指令に応じて、空気調和装置(1)が有する各種の機器を制御する。図2に示すように、制御装置(100)は、第1制御装置(100A)および第2制御装置(100B)を有する。第1制御装置(100A)は室外ユニット(20)に配置される。第2制御装置(100B)は室内ユニット(40)に配置される。第1制御装置(100A)および第2制御装置(100B)は、マイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリディバイス(具体的には半導体メモリ)とを用いて構成されている。
【0040】
第1制御装置(100A)は、圧縮機(21)、室外ファン(23)、四方切換弁(25)および室外膨張弁(26)を制御する。具体的には、第1制御装置(100A)は、圧縮機(21)の運転および停止と、圧縮機(21)の回転数と、室外ファン(23)の運転および停止と、室外ファン(23)の回転数と、四方切換弁(25)の流路の連通状態と、室外膨張弁(26)の開度とを制御する。
【0041】
第2制御装置(100B)は、室内ファン(43)および室内膨張弁(41)を制御する。第2制御装置(100B)は、室内ファン(43)の回転数と、室内膨張弁(41)の開度とを制御する。
【0042】
(1-4)圧縮機の詳細
図3に示すように、圧縮機(21)は、ケーシング(50)と、ケーシング(50)の内部に収容される電動機(51)および圧縮機構(52)を有する。圧縮機(21)は、電動機(51)と圧縮機構(52)とを連結する回転軸(53)を有する。ケーシング(50)は、中空の縦長の容器である。ケーシング(50)の内部は、圧縮機構(52)から圧縮された吐出冷媒が満たされる。圧縮機(21)は、いわゆる高圧ドーム型である。ケーシング(50)の内部には、吐出冷媒が流れる内部流路(54)が形成される。ケーシング(50)の外部は、外気雰囲気となる。
【0043】
電動機(51)は、ステータ(51a)とロータ(51b)とを有する。ステータ(51a)は、ケーシング(50)の内周面に固定される。ステータ(51a)は、ステータコアと、ステータコアに巻回されるコイルとを有する(図示省略)。ロータ(51b)は、ステータ(51a)の内部に配置され、回転軸(53)と連結する。電動機(51)では、コイルが通電することで回転磁界が形成される。この回転磁界によりロータ(51b)および回転軸(53)が回転する。
【0044】
圧縮機構(52)は、回転軸(53)によって駆動される。圧縮機構(52)は、その内部の圧縮室において冷媒を圧縮する。圧縮機構(52)には、圧縮室で圧縮した冷媒が吐出される吐出ポート(52a)が形成される。
【0045】
ケーシング(50)の胴部(50a)には、吐出管(19)が接続される。吐出管(19)の入口端はケーシング(50)の内部に連通し、吐出管(19)の出口端は冷媒回路(11)の高圧ガスラインと繋がる。
【0046】
ケーシング(50)の内部には、圧縮機構(52)の吐出ポート(52a)から吐出管(19)までの間に内部流路(54)が形成される。圧縮機構(52)の吐出ポート(52a)から吐出された冷媒は、内部流路(54)を通過して吐出管(19)に送られる。
【0047】
ケーシング(50)の底部には、油貯まり部(56)が形成される。油貯まり部(56)には、冷凍機油と冷媒との混合液が貯まる。本実施形態では、冷媒はR410Aである。冷凍機油は、PVE(ポリビニルエーテル)を主成分とする。油貯まり部(56)には、静電容量センサ(60)の電極部(61)と、油温度センサ(70)のセンサ部(70a)とが配置される。静電容量センサ(60)および油温度センサ(70)の詳細は後述する。
【0048】
回転軸(53)の下端部には、給油ポンプ(53b)が設けられている。給油ポンプ(53b)の吸込口は、ケーシング(50)の油貯まり部(56)に開口している。給油ポンプ(53b)の吐出口は、回転軸(53)の内部に設けられた給油路(53a)に接続されている。給油ポンプ(53b)は、油貯まり部(56)の混合液を給油路(53a)へ搬送する。混合液は給油路(53a)を介して、圧縮機構(52)の摺動部分(図示省略)や回転軸(53)の軸受け(図示省略)へ供給される。
【0049】
(2)運転動作
空気調和装置(1)の運転動作について図1を参照しながら説明する。空気調和装置(1)は、冷房運転と暖房運転とを切り換える。図1では、冷房運転時の冷媒の流れを実線矢印で示し、暖房運転時の冷媒の流れを破線矢印で示している。
【0050】
(2-1)冷房運転
冷房運転では、第1制御装置(100A)が圧縮機(21)および室外ファン(23)を運転させ、四方切換弁(25)を第1状態とし、室外膨張弁(26)を全開とする。第2制御装置(100B)が室内ファン(43)を運転させ、室内膨張弁(41)を所定開度に調節する。
【0051】
冷房運転時の冷媒回路(11)は、室外熱交換器(22)が放熱器(厳密には、凝縮器)として機能し、室内熱交換器(42)が蒸発器として機能する冷凍サイクルを行う。
【0052】
具体的には、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、室外熱交換器(22)を流れる。室外熱交換器(22)では、冷媒が室外空気へ放熱して凝縮する。室外熱交換器(22)で凝縮した冷媒は、液連絡配管(13)を流れ、室内回路(40a)に流入する。室内回路(40a)では、冷媒が室内膨張弁(41)で減圧された後、室内熱交換器(42)を流れる。室内熱交換器(42)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。各室内熱交換器(42)で蒸発した冷媒は、ガス連絡配管(14)を流れ、圧縮機(21)に吸入される。
【0053】
(2-2)暖房運転
暖房運転では、第1制御装置(100A)が圧縮機(21)および室外ファン(23)を運転させ、四方切換弁(25)を第2状態とし、室外膨張弁(26)を所定開度に調節する。第2制御装置(100B)が室内ファン(43)を運転させ、室内膨張弁(41)を所定開度に調節する。
【0054】
暖房運転時の冷媒回路(11)は、室内熱交換器(42)が放熱器(厳密には、凝縮器)として機能し、室外熱交換器(22)が蒸発器として機能する冷凍サイクルを行う。
【0055】
具体的には、圧縮機(21)で圧縮された冷媒は、ガス連絡配管(14)を流れ、室内回路(40a)に流入する。室内回路(40a)では、冷媒が室内熱交換器(42)を流れる。室内熱交換器(42)では、冷媒が室内空気に放熱して凝縮する。室内熱交換器(42)で凝縮した冷媒は、室内膨張弁(41)で減圧されたのち、液連絡配管(13)に流入する。液連絡配管(13)の冷媒は、室外膨張弁(26)で減圧された後、室外熱交換器(22)を流れる。室外熱交換器(22)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(22)で蒸発した冷媒は、圧縮機(21)に吸入される。
【0056】
(3)油濃度の測定に関する課題
圧縮機内において、冷凍機油は冷媒との混合液として存在する。圧縮機内の油貯まり部に貯留された混合液は、給油ポンプによって圧縮機内の摺動部分に供給され、該摺動部分を潤滑する。混合液中の油濃度が低下すると(冷媒濃度が上昇すると)、摺動部分での潤滑が悪くなる。従って、混合液中の油濃度を正確に把握することは重要である。
【0057】
ここで、混合液中の冷媒濃度とその比誘電率との間、および、混合液の温度と冷媒濃度との間には、概ね比例関係が成立することが知られている。従って、混合液の温度および混合液中の電極部における静電容量値に基づいて、混合液中の冷媒濃度、ひいては油濃度を測定できる。
【0058】
しかし、冷媒の種類や冷凍機油の種類によって、それらの特性(組成)は異なる。また、圧縮機の運転状態によって冷媒は過飽和状態になることがある。このことより、上述した比例関係は必ずしも成立せず、このような比例関係にのみ基づいて求められた油濃度には誤差が生じることが知見として得られている。そのため、正確な油濃度を把握するのが難しいという課題があった。
【0059】
これに対して、本実施形態の測定装置(10)は、混合液中の油濃度と該油濃度における誤差幅を求める。これにより、例え混合液の油濃度の測定値に誤差が生じていても、油濃度の実測値は求められた誤差範囲にあることを把握できる。以下、本実施形態の測定装置(10)について説明する。
【0060】
(4)測定装置
測定装置(10)は、静電容量値に基づいて冷凍機油の濃度を示す第1指標を測定する。具体的に、測定装置(10)は、圧縮機(21)内の油貯まり部(56)内に貯留する混合液における第1指標を測定する。本実施形態の測定装置(10)は、油濃度を測定する。以下の説明において、第1指標は、混合液中の冷凍機油の濃度であってもよいし、混合液中の冷媒濃度であってもよい。具体的に、冷凍油の濃度(%)は、油濃度(%)=100(%)-混合液中の冷媒濃度(%)により求めることができる。すなわち、第1指標は、油濃度を示すし、冷媒濃度も示す。以下の説明において混合液中の油濃度がゼロwt%(すなわち冷媒が100wt%)であっても、混合液と呼ぶ。
【0061】
図2および図5に示すように、測定装置(10)は、静電容量センサ(60)と、油温度センサ(70)と、制御部(101)とを有する。
【0062】
(4-1)静電容量センサ
静電容量センサ(60)は、電極部(61)と検知基板(62)とを有する。電極部(61)は、圧縮機(21)内に形成される油貯まり部(56)に配置される。電極部(61)は、例えば一対の電極を有するコンデンサである。検知基板(62)は、電極部(61)と有線で繋がれており、電極部(61)から出力(または入力)される静電容量値を検知する。このように、静電容量センサ(60)は、混合液中に配置される電極部(61)における静電容量値を検出する。
【0063】
(4-2)油温度センサ
油温度センサ(70)は、センサ部(70a)と図示しない検知基板とを有する。センサ部(70a)は、油貯まり部(56)に配置される。油温度センサ(70)は、油貯まり部(56)内の混合液の温度を検出する。
【0064】
(4-3)制御部
制御部(101)は、静電容量センサ(60)および油温度センサ(70)と有線で接続される。制御部(101)は、マイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリディバイス(具体的には半導体メモリ)とを用いて構成されている。制御部(101)は、制御装置(100)に含まれてもよい。
【0065】
制御部(101)は、混合液の温度と静電容量値とに基づいて第1指標を求めると共に、混合液の温度と第1指標とに基づいて、該第1指標における誤差幅を求める。
【0066】
図5に示すように、制御部(101)は、静電容量値と、混合液の温度と、第1指標との関係を示す第1データを有する。第1データは、制御部(101)が有する記憶部に格納される。本実施形態の第1データの第1指標は、混合液中の冷媒濃度(wt%)である。
【0067】
具体的に、第1データでは、静電容量値と冷媒濃度との関係を示す情報が混合液の温度ごとに設けられている。これにより、混合液の温度及び静電容量値がわかれば、第1データに基づいて油濃度(または冷媒濃度)を把握できる。
【0068】
第1データは、冷媒種と冷凍機油種との組み合わせによって異なる。本実施形態の第1データは、R410AとPVE油との組み合わせに基づいて作成されたデータである。本実施形態の第1データは、-30℃から55℃までの複数の温度の混合液について、静電容量値と冷媒濃度との関係を測定することによって作成されたデータである。具体的に、冷媒溶解度が0%(油濃度100%)のときの静電容量値は、どの温度の混合液も概ね同じであるが、温度が高い混合液ほど静電容量値は、低い冷媒溶解度でプラトーに達する。言い換えると、温度が低い混合液ほど溶媒溶解度が高くなるにつれて静電容量値も高くなる。
【0069】
図6に示すように、制御部(101)は、混合液の温度と第1指標とに基づいて定まる第1指標の誤差幅を示す第2データを有する。第2データは、制御部(101)が有する記憶部に格納される。本実施形態の第2データは、制御部(101)は、混合液の温度と油濃度(第1指標)とに基づいて定まる油濃度の誤差幅を示す。なお、図6の白抜きの領域は誤差幅のデータがない領域である。
【0070】
具体的に、油濃度の誤差幅は、混合液の温度と油濃度とによって定まる。例えば第2データによると、混合液の温度が55℃であり、かつ、油濃度が45wt%のとき、油濃度の誤差幅は5%以上かつ10%以下となる。
【0071】
本実施形態の第2データについて説明する。本実施形態の油濃度の誤差幅は、静電容量センサ(60)を構成する冷媒の特性変化による静電容量値の出力公差に基づく。
【0072】
ここで、複数の異なる成分を含む冷媒では、印加される電圧に応じて冷媒の体積低効率が変化することで、混合液の静電容量値の出力に誤差が生じることが知見として得られた。このような冷媒と冷凍機油との混合液では、同じ油温度でも静電容量値の測定を繰り返す度に誤差が生じる。これは冷媒の特性の変化に基づく静電容量値の出力公差となる。すなわち、静電容量値の出力公差は、このように複数回測定された静電容量値のばらつきに基づくものである。
【0073】
本開示では、混合液の各温度における油濃度を繰り返し測定することで、その油濃度における誤差幅を算出した。具体的に、基準値からの油濃度の誤差幅を0%以上かつ5%未満、および5%以上かつ10%未満の2種類に分類したときに、この2種類の誤差幅は第2データのように分布することが知見として得られた。なお、基準値は、校正済みの静電容量センサ(60)の検出値(静電容量値)とする。
【0074】
(5)油濃度の測定方法
次に、本実施形態の油濃度(第1指標)の測定方法について図7を参照しながら説明する。
【0075】
ステップS11では、制御部(101)は、油温度センサ(70)から混合液の温度を取得する。
【0076】
ステップS12では、制御部(101)は、静電容量センサ(60)から静電容量値を取得する。
【0077】
ステップS13では、制御部(101)は、第1データから、ステップS11で取得した混合液の温度に対応する静電容量値と油濃度との関係を示すデータを選択する。
【0078】
ステップS14では、制御部(101)は、ステップS12で取得された静電容量値と、ステップS13で選択されたデータとに基づいて、混合液中の冷媒の溶解度(第1指標)を取得する。
【0079】
ステップS15では、制御部(101)は、ステップS14で取得された冷媒の溶解度に対応する油濃度と、ステップS11で取得された混合液の温度とに基づいて、第2データから油濃度の誤差幅を選択する。
【0080】
ステップS16では、制御部(101)は、ステップS14~S15で取得された第1指標に基づく油濃度の測定値と、該油濃度における誤差幅とに基づいて、油濃度の範囲を求める。具体的に、図8に示すように第1データから混合液のある温度に対応する冷媒の溶解度曲線(実線)が選択されると、その各静電容量値に対応する誤差幅が設定される(破線)。油濃度の範囲は、ある静電容量値における誤差幅の下限値から上限値までの間の値を示す(図8中の油濃度の範囲R)。
【0081】
ステップS17では、制御部(101)は、ステップS16で取得された油濃度の測定の範囲Rから油濃度の測定値の下限値と上限値とを決定する。
【0082】
(6)圧縮機の保護制御
圧縮機構(52)の各摺動部分に供給される混合液の液量は、圧縮機(21)の回転数や圧縮する冷媒量に相関する。すなわち、圧縮機(21)の回転数や圧縮する冷媒量に応じて、摺動部分へ供給される混合液の液量も変化する。
【0083】
例えば、圧縮機(21)が比較的高い回転数で運転しているときに、摺動部分に供給される混合液の油濃度が比較的低い場合、該摺動部分に潤滑不良が生じ、圧縮機(21)の動作不良や圧縮機(21)の部品の破損に繋がる。そのため、混合液の油濃度に応じて、圧縮機の運転を制御したり、摺動部分に供給される混合液量を調節することが好ましい。
【0084】
本実施形態の測定装置(10)は、油濃度の測定値に対応する誤差幅の下限値を油濃度として採用する。本実施形態では、誤差幅の下限値の油濃度に基づいて圧縮機の運転を制御する保護制御が実行される。このように、誤差範囲に基づいて油濃度を低く見積もることで、圧縮機(21)の摺動部分における冷凍機油不足が抑制される。
【0085】
以下、圧縮機(21)の保護制御について図9を参照しながら説明する。なお、測定装置(10)の制御部(101)と冷凍装置(1)の制御装置(100)とは有線また無線で接続される。制御装置(100)は、測定装置(10)の制御部(101)受信した油濃度に関する情報に基づいて空気調和装置(1)を制御する。
【0086】
ステップS21では、制御部(101)は、空気調和装置(1)の運転を開始する。冷凍装置(1)は制御部(101)の指令により冷房運転または暖房運転を行う。
【0087】
ステップS22では、制御部(101)は、油濃度の範囲Rの下限値が所定値より低いか否かを判定する。油濃度の範囲Rの下限値が所定値よりも低いと判定された場合(ステップS22のYES)、ステップS23が実行される。油濃度の範囲Rの下限値が所定値よりも低くないと判定された場合(ステップS22のNO)、空気調和装置(1)の運転が継続される。
【0088】
ステップS23では、制御部(101)は、圧縮機(21)の回転数を低下、または室内膨張弁(41)の開度を小さくする。これにより、摺動部分に必要な冷凍機油の量が抑えられ、油濃度が比較的低くても摺動部分における潤滑不足が回避される。特に、油濃度の測定値に誤差が生じていても、実際の油濃度は測定値の下限値を下回っていないと推測される。すなわち、実際の油濃度が測定値よりも低くても、誤差範囲の下限値が油濃度として採用されることで、摺動部分における冷凍機油の供給不足を抑えることができる。
【0089】
(7)混合液中の冷凍機油の濃度の測定プログラム
制御部(101)の記憶部には、上述した測定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが記憶される。制御部(101)は、プログラムに基づいて測定装置(10)を制御する。
【0090】
(8)実施形態の効果
(8-1)効果1
実施形態の測定装置(10)は、静電容量値に基づいて冷凍機油の濃度を示す第1指標を測定する。測定装置(10)は、混合液の温度と静電容量値とに基づいて第1指標を求めると共に、混合液の温度と第1指標とに基づいて、該第1指標における誤差幅を求める制御部(101)を備える。
【0091】
これにより、第1指標である油濃度における誤差幅を求めることができる。油濃度の測定値における誤差範囲まで求めることで、例え油濃度の測定値に誤差が生じていたとしても、実際の油濃度の値はその誤差範囲内の値に収まることが推定される。これにより、油濃度の測定値の信頼性を向上できる。
【0092】
(8-2)効果2
実施形態の測定装置(10)において、誤差幅は、冷媒の特性変化による静電容量値の出力公差に基づく。冷媒の種類によって出力公差が異なるため、冷媒ごとに誤差範囲を求めることができる。これにより、より正確な油濃度を把握できる。
【0093】
(8-3)効果3
実施形態の測定装置(10)において、電極部(61)は、冷媒を圧縮する圧縮機構(52)を備える圧縮機(21)内に形成される油貯まり部(56)に配置される。
【0094】
油貯まり部(56)に貯留する混合液は、圧縮機構(52)の摺動部分に供給される。このような混合液中の油濃度を測定することで、実際に摺動部分に供給される混合液中の油濃度を把握できる。特に、冷凍装置(1)の運転中において、温度や圧力が変化する圧縮機(21)内において、油濃度を繰り返し測定することのばらつきや、静電容量センサ(60)の個体差などを考慮することで、実際の油濃度を把握できる。これにより油濃度の誤検知よる圧縮機構(52)の摺動部分における潤滑不良や、潤滑不良による圧縮機(21)の故障などを抑制できる。
【0095】
(8-4)効果4
実施形態の測定装置(10)では、制御部(101)は、測定された油濃度における誤差幅に基づいて、該油濃度の下限値または上限値を決定する。
【0096】
第4の態様では、例え油濃度の測定値に誤差が生じていても、実際の油濃度は油濃度の誤差幅の下限値を下回らないと推定される。このように誤差幅に基づいて、油濃度の測定値を低く見積もることができる。この下限値に基づいて、圧縮機(21)の運転を制御したり、圧縮機(21)内の摺動部分に供給される混合液量を調節したりすることで、圧縮機構(52)の摺動部分における潤滑不良を抑制できる。
【0097】
誤差幅の上限値についても同様に、実際の油濃度は油濃度の誤差幅の上限値を上回らないと推定される。このように、誤差幅に基づいて、油濃度の測定値を高く見積もることができる。
【0098】
(8-5)効果5
実施形態の測定装置(10)では、制御部(101)は、静電容量値と、混合液の温度と、冷媒濃度(第1指標)との関係を示す第1データと、混合液の温度と油濃度とに基づいて定まる誤差幅を示す第2データとを有する。
【0099】
第1データおよび第2データは、繰り返し測定することで予め作成される。混合液の温度と静電容量値を検出するだけで、予め制御部(101)の記憶部に記憶された第1データおよび第2データに基づいて第1指標およびその誤差幅を取得できる。
【0100】
(8-6)効果6
実施形態の空気調和装置では、制御部(101)は、第1指標に基づく冷凍機油の濃度の下限値が所定値よりも低いと判定された場合、圧縮機(21)の回転数を低下、または室内膨張弁(41)の開度を小さくする。
【0101】
これにより、仮に油濃度の測定値に誤差が生じていても、実際の油濃度はこの下限値以上であると推定される。このように油濃度の測定値を少なく見積もることで、圧縮機(21)内の摺動部分への冷凍機油の供給不足が抑制される。これにより、圧縮機(21)の潤滑不良を抑えることができ、圧縮機(21)の故障を抑制できる。
【0102】
(9)変形例
保護制御の変形例について説明する。変形例では、制御部(101)は、冷凍装置(1)の冷凍能力を増大させるときに、冷凍機油の油濃度の下限値が所定値よりも高いと判定された場合、前記圧縮機(21)の回転数を上昇させる。以下、図10を参照しながら暖房運転時の制御部(101)の動作について説明する。
【0103】
ステップS31では、制御部(101)は、暖房運転を開始する。
【0104】
ステップS32では、制御部(101)は、油濃度の範囲の下限値が所定値より高いか否かを判定する。油濃度の範囲の下限値が所定値よりも高いと判定された場合(ステップS32のYES)、ステップS33が実行される。油濃度の範囲の下限値が所定値よりも高くないと判定された場合(ステップS32のNO)、再度ステップS32が実行される。
【0105】
ステップS33では、制御部(101)は、圧縮機(21)の回転数を上昇させる。
【0106】
このように本変形例では、仮に油濃度の測定値に誤差が生じていても、実際の油濃度はこの下限値以上であると推定される。従って、冷凍能力の増大が要求されたときでも、油濃度の下限値が所定値よりも高ければ、圧縮機(21)の回転数をすぐに増大しても圧縮機の潤滑不良を抑制できる。
【0107】
特に、暖房運転が行われる冬期では外気温が比較的低い。そのため、空気調和装置(1)の運転が停止した状態では圧縮機(21)内の冷凍機油の温度は、外気温とほぼ同じ低い温度になっているため、冷媒は冷凍機油に溶けやすい状態となっている。従って、この状態の混合液中の油濃度は比較的低いと推測される。このような状態で、空気調和装置(1)の運転が開始され、空気調和装置(1)の空調能力(冷凍能力)の増大が求められるとき、混合液中の油濃度の下限値が所定値よりも高ければ、圧縮機(21)の回転数を増大させても圧縮機(21)の摺動部分における潤滑不良が抑制され、圧縮機(21)の故障、ひいては空気調和装置(1)の故障を抑制できる。
【0108】
また、このような油濃度を考慮しながら圧縮機(21)の運転を制御しなければいけない状況において、油濃度の下限値が所定値以上であることを判定するだけで、圧縮機の回転数を増大できるため、空気調和装置(1)が起動してから圧縮機の回転数が安定するまでの起動時間を短縮できると共に、圧縮機(21)の運転の複雑な制御を不要にできる。また、デフロスト運転から暖房運転への切り換える場合にも、空調能力の増大が要求される。従って、デフロスト運転から暖房運転に切り換えるときも、本変形例の保護制御を行うことで、圧縮機(21)の故障、ひいては空気調和装置(1)の故障を抑制できると共に、デフロスト運転終了時から暖房運転開始までの起動時間を短縮できる。
【0109】
(10)その他の実施形態
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0110】
上記実施形態および変形例において、測定装置(10)と空気調和装置(1)とは別体として説明したが、測定装置(10)および空気調和装置(1)は一体に構成されていてもよい。この場合、空気調和装置(1)は、油温度センサ(70)および静電容量センサ(60)を有する。また、制御装置(100)は、制御部(101)と一体に構成される。具体的に、制御装置(100)は、第1データおよび第2データを記憶すると共に、制御部(101)としても機能する。
【0111】
誤差幅は、冷凍機油の特性の変化による静電容量値の公差に基づいてもよい。
【0112】
上記実施形態の測定装置(10)は、冷媒特性の変化による静電容量値の出力値の公差に加え、静電容量センサ(60)を構成する電極部分や基板などの部品の公差、または、静電容量センサ(60)の設置状態の公差を考慮して静電容量値を測定してもよい。具体的に、電極や基板などの部品の公差により、同じ静電容量センサ(60)の製品であっても個体によって静電容量値の出力値に誤差が生じる。また、個々の圧縮機(21)によって静電容量センサ(60)の部品の設置位置(電極や配線)の微妙の差異により、静電容量値の出力値に誤差が生じる。
【0113】
測定装置(10)は、このような公差に基づいて生じる誤差を抑える処理を行う。この処理は、例えば予め設定された補正値を用いて、静電容量値を補正する補正処理であってもよいし、このような誤差を含んだ測定値(静電容量値)が出力されないように、予め測定前に予め静電容量値を初期化しておく初期化処理であってもよい。これにより、測定された静電容量値の誤差を抑えることができ、より正確な静電容量値を把握できる。
【0114】
上記実施形態および変形例において、混合液の冷媒と冷凍機油の組み合わせは、R410およびPVE油であるが、これに限定されない。他種の冷媒と冷凍機油との組み合わせについても、第1データと第2データとを取得することで、該第1データおよび第2データを上記測定方法または上記保護制御に適用してもよい。すなわち、冷媒と冷凍機油との組み合わせに基づいて、第1データまたは第2データを取得できる。
【0115】
第1指標は、混合液中の油濃度を示す指標であればよく、上述したように油濃度の値であってもよい、冷媒濃度であってもよいし、冷媒の溶解度であってもよいし、油濃度または冷媒濃度に相関する値であってもよい。
【0116】
減圧弁(26,41)の一例は、室外膨張弁(26)であってもよい。
【0117】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上説明したように、本開示は、測定装置について有用である。
【符号の説明】
【0119】
1 空気調和装置(冷凍装置)
10 測定装置
11 冷媒回路
21 圧縮機
26,41 減圧弁
52 圧縮機構
60 静電容量センサ
61 電極部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10