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特開2024-143405調節弁制御装置、調節弁制御システム、調節弁制御方法およびプログラム
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  • 特開-調節弁制御装置、調節弁制御システム、調節弁制御方法およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143405
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】調節弁制御装置、調節弁制御システム、調節弁制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056064
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】今岡 博義
(72)【発明者】
【氏名】大久保 章
【テーマコード(参考)】
5H307
【Fターム(参考)】
5H307AA08
5H307BB05
5H307EE02
5H307FF01
5H307HH01
5H307HH12
(57)【要約】
【課題】液状物の実流量の変動を抑えることが可能な調節弁制御装置を提供する。
【解決手段】調節弁制御装置(1)は、流量調節弁(3)の目標流量、流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅および液状物の実流量を取得する取得部(11)と、切替レンジ幅に応じて、目標流量に対して切替レンジを設定し、実流量が切替レンジの範囲外であれば流量調節弁(3)の開閉を第1の流量制御で行い、実流量が切替レンジの範囲内であれば流量調節弁(3)の開閉を第2の流量制御で行う制御部(12)と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量調節弁の目標流量、流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅および液状物の実流量を取得する取得部と、
前記切替レンジ幅に応じて、前記目標流量に対して切替レンジを設定し、前記実流量が前記切替レンジの範囲外であれば前記流量調節弁の開閉を第1の流量制御で行い、前記実流量が前記切替レンジの範囲内であれば前記流量調節弁の開閉を第2の流量制御で行う制御部と、
を備える調節弁制御装置。
【請求項2】
前記第1の流量制御において、前記制御部は、前記流量調節弁を開く時間を一定時間として当該流量調節弁を制御し、
前記第2の流量制御において、前記制御部は、前記流量調節弁を開く時間を前記一定時間よりも短い時間で当該流量調節弁を制御する、
請求項1に記載の調節弁制御装置。
【請求項3】
前記第2の流量制御において、前記制御部は、前記目標流量と前記実流量との偏差に応じて、前記流量調節弁を開く時間を変動させる、
請求項1または2に記載の調節弁制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記目標流量から前記切替レンジ幅を減算した値を第1の切替レンジとし、
前記目標流量に前記切替レンジ幅を加算した値を第2の切替レンジとし、
前記第2の流量制御において、前記実流量が前記第1の切替レンジに近い程、前記流量調節弁を開く時間を長くし、前記実流量が前記第2の切替レンジに近い程、前記流量調節弁を開く時間を短くする、
請求項3に記載の調節弁制御装置。
【請求項5】
流量調節弁と、液状物の実流量を計測する流量計と、前記流量調節弁の開閉を制御する調節弁制御装置と、前記調節弁制御装置に対して指示を通知する監視制御装置と、を備える調節弁制御システムであって、
前記調節弁制御装置は、
前記監視制御装置から前記流量調節弁の目標流量および流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅を取得し、前記流量計から前記実流量を取得する取得部と、
前記切替レンジ幅に応じて、前記目標流量に対して切替レンジを設定し、前記実流量が前記切替レンジの範囲外であれば前記流量調節弁の開閉を第1の流量制御で行い、前記実流量が前記切替レンジの範囲内であれば前記流量調節弁の開閉を第2の流量制御で行う制御部と、
を備える調節弁制御システム。
【請求項6】
前記第1の流量制御において、前記制御部は、前記流量調節弁を開く時間を一定時間として当該流量調節弁を制御し、
前記第2の流量制御において、前記制御部は、前記流量調節弁を開く時間を前記一定時間よりも短い時間で当該流量調節弁を制御する、
請求項5に記載の調節弁制御システム。
【請求項7】
前記第2の流量制御において、前記制御部は、前記目標流量と前記実流量との偏差に応じて、前記流量調節弁を開く時間を変動させる、
請求項5または6に記載の調節弁制御システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記目標流量から前記切替レンジ幅を減算した値を第1の切替レンジとし、
前記目標流量に前記切替レンジ幅を加算した値を第2の切替レンジとし、
前記第2の流量制御において、前記実流量が前記第1の切替レンジに近い程、前記流量調節弁を開く時間を長くし、前記実流量が前記第2の切替レンジに近い程、前記流量調節弁を開く時間を短くする、
請求項7に記載の調節弁制御システム。
【請求項9】
流量調節弁の目標流量、流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅および液状物の実流量を取得し、
前記切替レンジ幅に応じて、前記目標流量に対して切替レンジを設定し、
前記実流量が前記切替レンジの範囲外であれば前記流量調節弁の開閉を第1の流量制御で行い、
前記実流量が前記切替レンジの範囲内であれば前記流量調節弁の開閉を第2の流量制御で行う、
調節弁制御方法。
【請求項10】
コンピュータに、
流量調節弁の目標流量、流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅および液状物の実流量を取得する処理と、
前記切替レンジ幅に応じて、前記目標流量に対して切替レンジを設定する処理と、
前記実流量が前記切替レンジの範囲外であれば前記流量調節弁の開閉を第1の流量制御で行う処理と、
前記実流量が前記切替レンジの範囲内であれば前記流量調節弁の開閉を第2の流量制御で行う処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調節弁制御装置、調節弁制御システム、調節弁制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場等において、液状物の流量を自動制御するシステムが使用されており、監視操作員が、下水処理場における液状物の処理状況に応じて、目標流量を設定できる構成となっている。これに関連する技術として、下記の特許文献1に開示された発明がある。
【0003】
特許文献1は、上下水道プラントにおいて、配管系に設けられて、通水の流量を調節する流量調節弁と、流量調節弁の開閉を制御し、流量調節弁の開閉圧力差に基づいて流量調節弁の開閉速度を制御するコントローラとを備えた制御システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-052508号公報(2008年3月6日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のシステムにおいて、流量調節弁の開閉動作に対して流量変動が大きい場合、設定する目標流量に対して実流量が一致せず、結果的に自動開閉動作が繰り返し行われ、制御系が不安定になる場合がある。また、制御を安定させるために自動制御不感帯を設けた場合、結果的に目標流量と実流量が一致しないことが起こり得る。その結果、下水処理場における液状物の流量が不安定となり、下水処理が安定しないといった問題が発生する。上述の特許文献1に開示された技術を用いたとしても、このような問題を解決することはできない。
【0006】
本発明の一態様は、液状物の実流量の変動を抑えることが可能な調節弁制御装置、調節弁制御システム、調節弁制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る調節弁制御装置は、流量調節弁の目標流量、流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅および液状物の実流量を取得する取得部と、前記切替レンジ幅に応じて、前記目標流量に対して切替レンジを設定し、前記実流量が前記切替レンジの範囲外であれば前記流量調節弁の開閉を第1の流量制御で行い、前記実流量が前記切替レンジの範囲内であれば前記流量調節弁の開閉を第2の流量制御で行う制御部と、を備える。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る調節弁制御システムは、流量調節弁と、液状物の実流量を計測する流量計と、前記流量調節弁の開閉を制御する調節弁制御装置と、前記調節弁制御装置に対して指示を通知する監視制御装置と、を備える調節弁制御システムであって、前記調節弁制御装置は、前記監視制御装置から前記流量調節弁の目標流量および流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅を取得し、前記流量計から前記実流量を取得する取得部と、前記切替レンジ幅に応じて、前記目標流量に対して切替レンジを設定し、前記実流量が前記切替レンジの範囲外であれば前記流量調節弁の開閉を第1の流量制御で行い、前記実流量が前記切替レンジの範囲内であれば前記流量調節弁の開閉を第2の流量制御で行う制御部と、を備える。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る調節弁制御方法は、流量調節弁の目標流量、流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅および液状物の実流量を取得し、前記切替レンジ幅に応じて、前記目標流量に対して切替レンジを設定し、前記実流量が前記切替レンジの範囲外であれば前記流量調節弁の開閉を第1の流量制御で行い、前記実流量が前記切替レンジの範囲内であれば前記流量調節弁の開閉を第2の流量制御で行う。
【0010】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、流量調節弁の目標流量、流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅および液状物の実流量を取得する処理と、前記切替レンジ幅に応じて、前記目標流量に対して切替レンジを設定する処理と、前記実流量が前記切替レンジの範囲外であれば前記流量調節弁の開閉を第1の流量制御で行う処理と、前記実流量が前記切替レンジの範囲内であれば前記流量調節弁の開閉を第2の流量制御で行う処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、液状物の実流量の変動を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る調節弁制御装置を含んだ調節弁制御システムの構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る調節弁制御装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
図3】流量調節弁の開閉を通常制御およびインチング制御で行った場合の液状物の実流量を示すグラフである。
図4】流量調節弁の開閉を通常制御のみで行った場合の液状物の実流量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
<調節弁制御システム100の構成例>
図1は、本発明の実施形態に係る調節弁制御装置1を含んだ調節弁制御システム100の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、調節弁制御システム100は、調節弁制御装置1と、監視制御装置2と、流量調節弁3と、流量計4と、を備えている。なお、調節弁制御システム100は、下水処理場に設けられる場合について説明するが、設置場所は特に限定されない。
【0014】
流量調節弁3は、下水処理場内に設けられており、液状物の流量を調節するための調節弁である。流量調節弁3は、開状態(100%)および閉状態(0%)のいずれかで制御され、中間的な状態で開かれることはないものとする。
【0015】
流量計4は、下水処理場内に設けられており、流量調節弁3によって流量が調節された後の液状物の実流量を計測する計測器であり、計測した液状物の実流量Bを調節弁制御装置1に通知する。
【0016】
監視制御装置2は、監視操作員が、下水処理場における液状物の処理状況に応じて、液状物の目標流量および切替レンジ幅を設定する装置である。監視制御装置2は、監視操作員によって設定された目標流量Aおよび切替レンジ幅Cを調節弁制御装置1に通知する。なお、切替レンジ幅Cは、目標流量Aに対して切替レンジを設定する際に使用される値であり、目標流量から切替レンジまでの幅を示す情報である。
【0017】
調節弁制御装置1は、取得部11と、制御部12と、を備えている。取得部11は、監視制御装置2から通知された目標流量Aおよび切替レンジ幅Cを取得する。また、取得部11は、流量計4から通知された液状物の実流量Bを取得する。
【0018】
制御部12は、目標流量Aから切替レンジ幅Cを減算した値を第1の切替レンジ(以下、切替レンジ(-)と表記する場合もある。)とし、目標流量Aに切替レンジ幅Cを加算した値を第2の切替レンジ(以下、切替レンジ(+)と表記する場合もある。)として、目標流量Aに対して切替レンジを設定する。なお、切替レンジ(-)を算出するときの切替レンジ幅と、切替レンジ(+)を算出するときの切替レンジ幅とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0019】
制御部12は、実流量Bが切替レンジの範囲外であれば、流量調節弁3の開閉を通常制御(以下、第1の流量制御と表記する場合もある。)で行う。また、制御部12は、実流量Bが切替レンジの範囲内であれば、流量調節弁3の開閉をインチング制御(以下、第2の流量制御と表記する場合もある。)で行う。
【0020】
通常制御において、制御部12は、流量調節弁3を開く時間を一定時間として、流量調節弁3を制御する。図1に示すように、通常制御において、制御部12は、固定秒であるワンショット信号を流量調節弁3に対して出力する。流量調節弁3は、ワンショット信号が出力されている間、調節弁を開状態にし、ロウレベルの間、調節弁を閉状態にする。制御部12は、流量調節弁3を開状態にする場合にワンショット信号を出力し、流量調節弁3を閉状態にする場合にワンショット信号を出力しない。制御部12は、実流量Bが切替レンジ(-)よりも小さい場合、液状物の流量を増やすためにワンショット信号を出力する。また、制御部12は、実流量Bが切替レンジ(+)よりも大きい場合、液状物の流量を減らすためにワンショット信号を出力せずに閉状態のままとする。
【0021】
インチング制御において、制御部12は、流量調節弁3を開く時間を上記一定時間よりも短い変動秒として、流量調節弁3を制御する。図1に示すように、インチング制御において、制御部12は、変動秒であるインチング出力信号を流量調節弁3に対して出力する。流量調節弁3は、インチング出力信号がハイレベルの間、調節弁を開状態(寸開状態)にし、ロウレベルの間、調節弁を閉状態(寸閉状態)にする。制御部12は、流量調節弁3をインチング制御する場合、後述のようにインチング出力信号のハイレベルの幅を制御する。
【0022】
制御部12は、目標流量A、実流量Bおよび切替レンジ幅Cに応じて、以下のように流量制御を行う。なお、インチング制御における寸開動作とは、通常制御における開動作よりも流量調節弁3を開状態にする時間が短い動作を示している。また、インチング制御における寸閉動作とは、通常制御における閉動作よりも流量調節弁3を閉状態にする時間が短い動作を示している。
【0023】
(1)B<(A-C)の場合、流量調節弁3に対して通常制御の開動作を指示する
(2)(A-C)≦B<Aの場合、流量調節弁3に対してインチング制御の寸開動作を指示する
(3)A≦B<(A+C)の場合、流量調節弁3に対してインチング制御の寸閉動作を指示する
(4)(A+C)≦Bの場合、流量調節弁3に対して通常制御の閉動作を指示する。
【0024】
<調節弁制御装置1の調節弁制御方法の処理手順>
図2は、本発明の実施形態に係る調節弁制御装置1の処理手順を説明するためのフローチャートである。まず、取得部11は、監視制御装置2から、流量調節弁3の目標流量Aおよび流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅Cを取得する(S11)。
【0025】
次に、制御部12は、切替レンジ幅Cに応じて、目標流量Aに対して切替レンジを設定し、流量計4から液状物の実流量Bを取得する(S12)。そして、制御部12は、実流量Bが切替レンジの範囲内であるか否かを判定する(S13)。実流量Bが切替レンジの範囲内であれば(S13,Yes)、制御部12は、流量調節弁3の開閉をインチング制御で行う(S14)。また、実流量Bが切替レンジの範囲外であれば(S13,No)、制御部12は、流量調節弁3の開閉を通常制御で行う(S15)。
【0026】
最後に、制御部12は、処理を終了するか否かを判定する(S16)。監視制御装置2から処理を終了する通知があれば(S16,Yes)、制御部12は、そのまま処理を終了する。また、監視制御装置2から処理を終了する通知がなければ(S16,No)、制御部12は、ステップS12に戻って以降の処理を繰り返す。
【0027】
図3は、流量調節弁3の開閉を通常制御およびインチング制御で行った場合の液状物の実流量を示すグラフである。図3に示すように、制御単位時間T毎に流量調節弁3の開閉制御が行われる。図3の上図において、横軸を時間、縦軸を実流量としている。また、図3の下図において、横軸を時間、縦軸を流量調節弁3への出力信号としている。
【0028】
図3の上図に示すように、制御部12は、目標流量Aから切替レンジ幅Cを減算した値を切替レンジ(-)とし、目標流量Aに切替レンジ幅Cを加算した値を切替レンジ(+)として、目標流量Aに対して切替レンジを設定する。
【0029】
図3の上図のタイミングT1において、実流量Bが切替レンジの範囲外であるため、制御部12は、T1~T2の期間において、通常制御を行う。図3の下図に示すように、流量調節弁3への出力信号のハイレベルの幅が、流量調節弁3を開状態にする時間であり、インチング制御におけるハイレベルの幅と比較して、流量調節弁3を開状態にする時間が長いことを示している。
【0030】
図3の上図のタイミングT2において、実流量Bが切替レンジの範囲内((A-C)≦B<A)であるため、制御部12は、T2~T3の期間において、インチング制御(寸開動作)を行う。図3の下図に示すように、このときの流量調節弁3への出力信号のハイレベルの幅が短くなっている。
【0031】
また、図3の上図のタイミングT4において、実流量Bが切替レンジの範囲内(A≦B<(A+C))であるため、制御部12は、T4~T5の期間において、インチング制御(寸閉動作)を行う。
【0032】
図3の上図のタイミングT2~T10において、液状物の実流量Bが安定するため、インチング制御が行われることになる。このとき、制御部12は、目標流量Aと実流量Bとの偏差に応じて、流量調節弁3を開く時間を変動させるようにしてもよい。
【0033】
さらに具体的には、インチング制御において、制御部12は、実流量Aが切替レンジ(-)に近い程、流量調節弁3を開く時間を長くし、実流量Aが切替レンジ(+)に近い程、流量調節弁3を開く時間を短くするようにしてもよい。
【0034】
図4は、流量調節弁3の開閉を通常制御のみで行った場合の液状物の実流量を示すグラフである。図4に示すように、制御単位時間T毎に流量調節弁3の開閉制御が行われる。図4の上図において、横軸を時間、縦軸を実流量としている。また、図4の下図において、横軸を時間、縦軸を流量調節弁3への出力信号としている。
【0035】
図4の上図のタイミングT1において、実流量Bが目標流量Aよりも小さいため、制御部12は、図4の下図に示すように、T1~T2の期間において、流量調節弁3の開動作を行う(ワンショット信号を出力する)。その結果、実流量Bが急激に増加することになる。
【0036】
また、タイミングT2において、実流量Bが目標流量Aよりも大きいため、制御部12は、図4の下図に示すように、T2~T3の期間において、流量調節弁3の閉動作を行う(ワンショット信号を出力しない)。その結果、実流量Bが急激に減少することになる。T3~T10においても同様の動作が繰り返される。
【0037】
このように、流量調節弁3の開閉を通常制御のみで行った場合、流量調節弁3の開閉動作に対して流量変動が大きくなり、設定する目標流量Aに対して実流量Bが一致しなくなる。図3に示すように、通常制御とインチング制御とを併用することにより、液状物の実流量Bを安定させることが可能となる。
【0038】
<調節弁制御装置1の効果>
以上説明したように、本実施形態に係る調節弁制御装置1によれば、制御部12は、実流量Bが切替レンジの範囲外であれば、流量調節弁3の開閉を通常制御で行い、実流量Bが切替レンジの範囲内であれば、流量調節弁3の開閉をインチング制御で行う。したがって、実流量Bが切替レンジの範囲内であれば、流量の変動を抑えることが可能となる。
【0039】
また、制御部12は、インチング制御において、目標流量Aと実流量Bとの偏差に応じて、流量調節弁3を開く時間を変動させる。したがって、実流量Bが切替レンジの範囲内であれば、流量の変動をさらに効率よく抑えることが可能となる。
【0040】
また、制御部12は、インチング制御において、実流量Aが切替レンジ(-)に近い程、流量調節弁3を開く時間を長くし、実流量Aが切替レンジ(+)に近い程、流量調節弁3を開く時間を短くする。したがって、実流量Bが切替レンジの範囲内であれば、流量の変動をさらに効率よく抑えることが可能となる。
【0041】
〔ソフトウェアによる実現例〕
調節弁制御装置1の制御ブロック(特に制御部12)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0042】
後者の場合、調節弁制御装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0043】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る調節弁制御装置は、流量調節弁の目標流量、流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅および液状物の実流量を取得する取得部と、前記切替レンジ幅に応じて、前記目標流量に対して切替レンジを設定し、前記実流量が前記切替レンジの範囲外であれば前記流量調節弁の開閉を第1の流量制御で行い、前記実流量が前記切替レンジの範囲内であれば前記流量調節弁の開閉を第2の流量制御で行う制御部と、を備える。
【0044】
本発明の態様2に係る調節弁制御装置は、上記態様1において、前記第1の流量制御において、前記制御部は、前記流量調節弁を開く時間を一定時間として当該流量調節弁を制御し、前記第2の流量制御において、前記制御部は、前記流量調節弁を開く時間を前記一定時間よりも短い時間で当該流量調節弁を制御する。
【0045】
本発明の態様3に係る調節弁制御装置は、上記態様1または2において、前記第2の流量制御において、前記制御部は、前記目標流量と前記実流量との偏差に応じて、前記流量調節弁を開く時間を変動させる。
【0046】
本発明の態様4に係る調節弁制御装置は、上記態様1~3のいずれかにおいて、前記制御部は、前記目標流量から前記切替レンジ幅を減算した値を第1の切替レンジとし、前記目標流量に前記切替レンジ幅を加算した値を第2の切替レンジとし、前記第2の流量制御において、前記実流量が前記第1の切替レンジに近い程、前記流量調節弁を開く時間を長くし、前記実流量が前記第2の切替レンジに近い程、前記流量調節弁を開く時間を短くする。
【0047】
本発明の態様5に係る調節弁制御システムは、流量調節弁と、液状物の実流量を計測する流量計と、前記流量調節弁の開閉を制御する調節弁制御装置と、前記調節弁制御装置に対して指示を通知する監視制御装置と、を備える調節弁制御システムであって、前記調節弁制御装置は、前記監視制御装置から前記流量調節弁の目標流量および流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅を取得し、前記流量計から前記実流量を取得する取得部と、前記切替レンジ幅に応じて、前記目標流量に対して切替レンジを設定し、前記実流量が前記切替レンジの範囲外であれば前記流量調節弁の開閉を第1の流量制御で行い、前記実流量が前記切替レンジの範囲内であれば前記流量調節弁の開閉を第2の流量制御で行う制御部と、を備える。
【0048】
本発明の態様6に係る調節弁制御システムは、上記態様5において、前記第1の流量制御において、前記制御部は、前記流量調節弁を開く時間を一定時間として当該流量調節弁を制御し、前記第2の流量制御において、前記制御部は、前記流量調節弁を開く時間を前記一定時間よりも短い時間で当該流量調節弁を制御する。
【0049】
本発明の態様7に係る調節弁制御システムは、上記態様5または6において、前記第2の流量制御において、前記制御部は、前記目標流量と前記実流量との偏差に応じて、前記流量調節弁を開く時間を変動させる。
【0050】
本発明の態様8に係る調節弁制御システムは、上記態様5~7のいずれかにおいて、前記制御部は、前記目標流量から前記切替レンジ幅を減算した値を第1の切替レンジとし、前記目標流量に前記切替レンジ幅を加算した値を第2の切替レンジとし、前記第2の流量制御において、前記実流量が前記第1の切替レンジに近い程、前記流量調節弁を開く時間を長くし、前記実流量が前記第2の切替レンジに近い程、前記流量調節弁を開く時間を短くする。
【0051】
本発明の態様9に係る調節弁制御方法は、流量調節弁の目標流量、流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅および液状物の実流量を取得し、前記切替レンジ幅に応じて、前記目標流量に対して切替レンジを設定し、前記実流量が前記切替レンジの範囲外であれば前記流量調節弁の開閉を第1の流量制御で行い、前記実流量が前記切替レンジの範囲内であれば前記流量調節弁の開閉を第2の流量制御で行う。
【0052】
本発明の態様10に係るプログラムは、コンピュータに、流量調節弁の目標流量、流量制御の切替範囲を示す切替レンジ幅および液状物の実流量を取得する処理と、前記切替レンジ幅に応じて、前記目標流量に対して切替レンジを設定する処理と、前記実流量が前記切替レンジの範囲外であれば前記流量調節弁の開閉を第1の流量制御で行う処理と、前記実流量が前記切替レンジの範囲内であれば前記流量調節弁の開閉を第2の流量制御で行う処理と、を実行させる。
【0053】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1 調節弁制御装置
2 監視制御装置
3 流量調節弁
4 流量計
11 取得部
12 制御部
100 調節弁制御システム
図1
図2
図3
図4