(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143416
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品、回路基板、および包装体
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20241003BHJP
H01G 2/24 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01G4/30 201D
H01G4/30 516
H01G2/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056081
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一成
(72)【発明者】
【氏名】下舞 賢一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 真一
(72)【発明者】
【氏名】末正 里樹
(72)【発明者】
【氏名】小西 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 誉志紀
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AC09
5E001AD04
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF02
5E001AF06
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH06
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
(57)【要約】
【課題】 高い信頼性を得ることができる積層セラミック電子部品、回路基板、および包装体を提供する。
【解決手段】 積層セラミック電子部品は、第1内部電極層と第2内部電極層とが誘電体層を挟んで交互に積層され、略直方体形状を有し、前記略直方体形状の第1側面に前記第1内部電極層が引き出され、前記略直方体形状の第2側面に前記第2内部電極層が引き出された素体と、前記第1側面に設けられた第1外部電極と、前記第2側面に設けられた第2外部電極と、を備え、前記第1内部電極層の少なくとも一部の領域および前記第2内部電極層の少なくとも一部の領域は、主成分に加えて副成分を含み、前記第1内部電極層と前記第2内部電極層との間で、前記副成分が異なっており、前記第1外部電極と前記第2外部電極とを識別するための視覚的な構成が与えられている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1内部電極層と第2内部電極層とが誘電体層を挟んで交互に積層され、略直方体形状を有し、前記略直方体形状の第1側面に前記第1内部電極層が引き出され、前記略直方体形状の第2側面に前記第2内部電極層が引き出された素体と、
前記第1側面に設けられた第1外部電極と、
前記第2側面に設けられた第2外部電極と、を備え、
前記第1内部電極層の少なくとも一部の領域および前記第2内部電極層の少なくとも一部の領域は、主成分に加えて副成分を含み、
前記第1内部電極層と前記第2内部電極層との間で、前記副成分が異なっており、
前記第1外部電極と前記第2外部電極とを識別するための視覚的な構成が与えられている、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記第1内部電極層の前記主成分と前記第2内部電極層の前記主成分とが同じである、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記第1内部電極層は、ニッケルを主成分として鉄を副成分として含み、
前記第2内部電極層は、ニッケルを主成分として金を副成分として含む、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記視覚的な構成は、前記素体の表面に設けられた識別マークである、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記視覚的な構成は、前記第1外部電極と前記第2外部電極との間で非対称に異なる形状である、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品と、
前記積層セラミック電子部品の第1外部電極および第2外部電極がそれぞれ接続される複数のランドを備える実装基板と、を備える、回路基板。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品と、
シール面と、前記シール面から窪み、前記積層セラミック電子部品を収容する凹部と、を有するキャリアテープと、
前記シール面に貼り付けられ、前記凹部を覆うトップテープと、
を備える、包装体。
【請求項8】
第1内部電極層と第2内部電極層とが誘電体層を挟んで交互に積層され、略直方体形状を有し、前記略直方体形状の第1側面に前記第1内部電極層が引き出され、前記略直方体形状の第2側面に前記第2内部電極層が引き出された素体を備え、
前記第1内部電極層の少なくとも一部の領域および前記第2内部電極層の少なくとも一部の領域は、主成分に加えて副成分を含み、
前記第1内部電極層と前記第2内部電極層との間で、前記副成分が異なっており、
前記第1側面における前記第1内部電極層の形状と、前記第2側面における前記第2内部電極層の形状とが異なっている、積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記第1内部電極層と前記第2内部電極層との積層方向に直交する方向において、前記第1側面における前記第1内部電極層の幅と、前記第2側面における前記第2内部電極層の幅とが異なっている、請求項8に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品、回路基板、および包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやパーソナルコンピュータなど多様な電子機器に搭載するための積層セラミックコンデンサ(MLCC:Multilayer Ceramic Capacitor)などの積層セラミック電子部品が開発されている(例えば、特許文献1~6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/210642号
【特許文献2】国際公開第2022/210629号
【特許文献3】国際公開第2022/210628号
【特許文献4】国際公開第2022/210627号
【特許文献5】国際公開第2022/210625号
【特許文献6】国際公開第2022/210624号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層セラミック電子部品を小型化かつ大容量化しようとするために、誘電体層が薄層化されている。しかしながら、誘電体層を薄層化しようとすると、誘電体層1層あたりに加わる電界強度が相対的に高くなる。したがって、電圧印加時における信頼性の向上が求められる。
【0005】
信頼性向上の手段として、内部電極に副成分を含ませることが挙げられる。内部電極の副成分によって、誘電体/電極の界面抵抗を高めることができる。しかし、陽極として用いられる内部電極層に含まれる成分と、陰極として用いられる内部電極層に含まれる成分とが同じであると、陽極および陰極の両側の誘電体/内部電極層界面において高い界面抵抗が得られず、高い信頼性が得られないおそれがある。さらに、陽極と陰極が区別されることで、使用時に陽極にマイナス、陰極にプラスという逆の電位を接続するような間違いを予防することが可能となり信頼性が向上する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、高い信頼性を得ることができる積層セラミック電子部品、回路基板、および包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る積層セラミック電子部品は、第1内部電極層と第2内部電極層とが誘電体層を挟んで交互に積層され、略直方体形状を有し、前記略直方体形状の第1側面に前記第1内部電極層が引き出され、前記略直方体形状の第2側面に前記第2内部電極層が引き出された素体と、前記第1側面に設けられた第1外部電極と、前記第2側面に設けられた第2外部電極と、を備え、前記第1内部電極層の少なくとも一部の領域および前記第2内部電極層の少なくとも一部の領域は、主成分に加えて副成分を含み、前記第1内部電極層と前記第2内部電極層との間で、前記副成分が異なっており、前記第1外部電極と前記第2外部電極とを識別するための視覚的な構成が与えられている。
【0008】
上記積層セラミック電子部品において、前記第1内部電極層の前記主成分と前記第2内部電極層の前記主成分とが同じであってもよい。
【0009】
上記積層セラミック電子部品において、前記第1内部電極層は、ニッケルを主成分として鉄を副成分として含み、前記第2内部電極層は、ニッケルを主成分として金を副成分として含んでいてもよい。
【0010】
上記積層セラミック電子部品において、前記視覚的な構成は、前記素体の表面に設けられた識別マークであってもよい。
【0011】
上記積層セラミック電子部品において、前記視覚的な構成は、前記第1外部電極と前記第2外部電極との間で非対称に異なる形状であってもよい。
【0012】
本発明に係る回路基板は、上記積層セラミック電子部品と、前記積層セラミック電子部品の第1外部電極および第2外部電極がそれぞれ接続される複数のランドを備える実装基板と、を備える。
【0013】
本発明に係る包装体は、上記積層セラミック電子部品と、シール面と、前記シール面から窪み、前記積層セラミック電子部品を収容する凹部と、を有するキャリアテープと、前記シール面に貼り付けられ、前記凹部を覆うトップテープと、を備える。
【0014】
本発明に係る他の積層セラミック電子部品は、第1内部電極層と第2内部電極層とが誘電体層を挟んで交互に積層され、略直方体形状を有し、前記略直方体形状の第1側面に前記第1内部電極層が引き出され、前記略直方体形状の第2側面に前記第2内部電極層が引き出された素体を備え、前記第1内部電極層の少なくとも一部の領域および前記第2内部電極層の少なくとも一部の領域は、主成分に加えて副成分を含み、前記第1内部電極層と前記第2内部電極層との間で、前記副成分が異なっており、前記第1側面における前記第1内部電極層の形状と、前記第2側面における前記第2内部電極層の形状とが異なっている。
【0015】
上記積層セラミック電子部品において、前記第1内部電極層と前記第2内部電極層との積層方向に直交する方向において、前記第1側面における前記第1内部電極層の幅と、前記第2側面における前記第2内部電極層の幅とが異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い信頼性を得ることができる積層セラミック電子部品、回路基板、および包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
【
図4】(a)は第1外部電極付近の拡大断面図であり、(b)は第2外部電極付近の拡大断面図である。
【
図7】積層セラミックコンデンサが実装基板上に実装された回路基板を例示する図である。
【
図8】(a)~(c)は第1外部電極と第2外部電極とを識別するための視覚的な構成を例示する図である。
【
図11】(a)は素体において第1内部電極層が引き出される第1側面を例示する図であり、(b)は素体において第2内部電極層が引き出される第2側面を例示する図である。
【
図13】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
【
図14】(a)および(b)は積層を例示する図である。
【
図17】サイドマージン部の貼り付けを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0019】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、
図1のB-B線断面図である。
図1~
図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する素体10を備える。素体10において、積層方向の上面および下面以外の4面を側面と称する。素体10において、対向する2側面(第1側面および第2側面)に、第1外部電極20aと第2外部電極20bとがそれぞれ設けられている。第1外部電極20aは、第1側面から隣接する4面に延在している。第2外部電極20bは、第2側面から隣接する4面に延在している。ただし、第1外部電極20aと第2外部電極20bとは、互いに離間している。
【0020】
本実施形態においては、一例として、第1外部電極20aを陽極として用い、第2外部電極20bを陰極として用いることにする。第1外部電極20aと第2外部電極20bとを区別できるようにマーカー等、外観上の区別をつけると好ましい。
【0021】
なお、
図1~
図3において、Z軸方向(第1方向)は、積層方向であり、各内部電極層が対向する方向である。X軸方向(第2方向)は、素体10の長さ方向であって、素体10の第1側面と第2側面とが対向する方向であり、第1外部電極20aと第2外部電極20bとが対向する方向である。Y軸方向(第3方向)は、内部電極層の幅方向であり、素体10の4側面のうち第1側面および第2側面以外の2側面(第3側面および第4側面)が対向する方向である。X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とは、互いに直交している。
【0022】
素体10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、内部電極層とが、交互に積層された構成を有する。内部電極層は、複数の第1内部電極層12aおよび複数の第2内部電極層12bを備えている。第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bは、交互に積層されている。第1内部電極層12aの端縁は、素体10の第1外部電極20aが設けられた第1側面に引き出されている。第2内部電極層12bの端縁は、素体10の第2外部電極20bが設けられた第2側面に引き出されている。それにより、第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bは、第1外部電極20aと第2外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、コンデンサ単位が積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13は、誘電体層11と組成が同じであっても、異なっていても構わない。なお、第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bが積層体の表面の異なる領域に露出して、異なる外部電極に導通していれば、
図1から
図3の構成に限られない。積層体の表面の異なる領域とは、積層体の対向する面のそれぞれの表面領域であってもよく、積層体の隣接する面のそれぞれの表面領域であってもよく、積層体の同一面のそれぞれ異なる表面領域であってもよい。異なる外部電極は互いに離間していれば、第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bがそれぞれ積層体の表面領域に露出している面から他の面に延伸していてもよい。
【0023】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ>幅≧高さであってもよく、幅>長さ≧高さであってもよく、高さ>長さ≧幅であってもよく、高さ>幅≧長さであってもよい。
【0024】
誘電体層11は、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主相とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む(0≦α≦1:αは化学量論組成から外れた量を表す:以下、αは省略して表記される)。例えば、当該セラミック材料として、チタン酸バリウム(BaTiO3),ジルコン酸カルシウム(CaZrO3),チタン酸カルシウム(CaTiO3),チタン酸ストロンチウム(SrTiO3),チタン酸マグネシウム(MgTiO3),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等のうち少なくとも1つから選択して用いることができる。Ba1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3は、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよびチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどである。例えば、誘電体層11において、主成分セラミックは、50at%以上含まれており、一例として90at%以上含まれている。誘電体層11の厚みは、例えば、5.0μm以下であり、3.0μm以下であり、1.0μm以下であり、0.5μm以下であり、0.4μm以下であり、0.3μm以下であり、0.2μm以下である。誘電体層11の厚みは、積層セラミックコンデンサ100の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、異なる10層の誘電体層11についてそれぞれ10点ずつ厚みを測定し、全測定点の平均値を導出することによって測定することができる。
【0025】
誘電体層11には、添加物が添加されていてもよい。誘電体層11への添加物として、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(スカンジウム(Sc)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。
【0026】
図2で例示するように、第1外部電極20aに接続された第1内部電極層12aと第2外部電極20bに接続された第2内部電極層12bとが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において電気容量を生じる領域である。そこで、当該電気容量を生じる領域を、容量部14と称する。すなわち、容量部14は、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層同士が対向する領域である。
【0027】
第1外部電極20aに接続された第1内部電極層12a同士が、第2外部電極20bに接続された第2内部電極層12bを介さずに積層方向に対向する領域を、第1エンドマージン15aと称する。また、第2外部電極20bに接続された第2内部電極層12b同士が、第1外部電極20aに接続された第1内部電極層12aを介さずに積層方向に対向する領域を、第2エンドマージン15bと称する。各エンドマージンは、同じ外部電極に接続された内部電極層が、異なる外部電極に接続された内部電極層を介さずに積層方向に対向する領域である。第1エンドマージン15aおよび第2エンドマージン15bは、電気容量を生じない領域である。第1内部電極層12aのうち第1外部電極20a側の端部に位置し第1エンドマージン15aを含む領域を、第1領域30aと称する。第2内部電極層12bのうち第2外部電極20b側の端部に位置し第2エンドマージン15bを含む領域を、第2領域30bと称する。
【0028】
図3で例示するように、素体10において、サイドマージン16は、誘電体層11、第1内部電極層12a、および第2内部電極層12bの、第3側面側および第4側面側の端部(Y軸方向の端部)を覆うように設けられた領域である。すなわち、
図3においては、サイドマージン16は、Y軸方向において、容量部14の外側に設けられた領域である。即ちサイドマージン16は、積層方向から見た容量部14に隣接した外側の領域であって、内部電極層が引き出されていない側の容量部14に隣接した外側の領域である。サイドマージン16も、電気容量を生じない領域である。
【0029】
図4(a)は、第1外部電極20a付近の拡大断面図である。
図4(a)では、ハッチングを省略している。
図4(a)で例示するように、第1外部電極20aは、下地層21a上に、めっき層22aが設けられた構造を有している。下地層21aは、ニッケル、銅などを主成分とする。下地層21aは、共材としてセラミック粒子を含んでいてもよく、ガラス成分を含んでいてもよい。めっき層22aは、ニッケル、銅、アルミニウム、亜鉛、スズなどの金属またはこれらの2以上の合金を主成分とする。めっき層22aは、単一金属成分のめっき層でもよく、互いに異なる金属成分の複数のめっき層でもよい。例えば、
図4では、めっき層22aは、下地層21a側から順に、第1めっき層23a、第2めっき層24aおよび第3めっき層25aが形成された構造を有する。第1めっき層23aは、例えば、銅めっき層である。第2めっき層24aは、例えば、ニッケルめっき層である。第3めっき層25aは、例えば、スズめっき層である。
【0030】
図4(b)は、第2外部電極20b付近の拡大断面図である。
図4(b)では、ハッチを省略している。
図4(b)で例示するように、第2外部電極20bは、下地層21b上に、めっき層22bが設けられた構造を有している。下地層21bは、ニッケル、銅などを主成分とする。下地層21bは、共材としてセラミック粒子を含んでいてもよく、ガラス成分を含んでいてもよい。めっき層22bは、ニッケル、銅、アルミニウム、亜鉛、スズなどの金属またはこれらの2以上の合金を主成分とする。めっき層22bは、単一金属成分のめっき層でもよく、互いに異なる金属成分の複数のめっき層でもよい。例えば、めっき層22bは、下地層21b側から順に、第1めっき層23b、第2めっき層24bおよび第3めっき層25bが形成された構造を有する。第1めっき層23bは、例えば、銅めっき層である。第2めっき層24bは、例えば、ニッケルめっき層である。第3めっき層25bは、例えば、スズめっき層である。
【0031】
下地層21aおよび下地層21bは、同じ組成を有していてもよいが、異なる組成を有していてもよい。めっき層22aおよびめっき層22bは、同じ積層構造を有していてもよいが、異なる積層構造を有していてもよい。例えば、めっき層の積層数が異なっていてもよい。第1めっき層23aおよび第1めっき層23bは、同じ組成を有していてもよいが、異なる組成を有していてもよい。第2めっき層24aおよび第2めっき層24bは、同じ組成を有していてもよいが、異なる組成を有していてもよい。第3めっき層25aおよび第3めっき層25bは、同じ組成を有していてもよいが、異なる組成を有していてもよい。
【0032】
このような積層セラミックコンデンサ100において、小型化かつ大容量化を実現しようとするためには、誘電体層の薄層化が求められる。しかしながら、誘電体層を薄層化しようとすると、誘電体層1層あたりに加わる電界強度が相対的に高くなる。したがって、電圧印加時における信頼性の向上が求められる。しかしながら、陽極として用いられる内部電極層に含まれる成分と、陰極として用いられる内部電極層に含まれる成分とが同じであると、陽極および陰極の両側の誘電体/内部電極層界面において高い界面抵抗が得られず、高い信頼性が得られないおそれがある。
【0033】
そこで、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、高い信頼性を得ることができる構成を有している。以下、詳細について説明する。
【0034】
第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bは、主成分に加えて副成分を含んでいる。主成分は、各内部電極層において50at%以上含まれている。第1内部電極層12aに含まれる副成分と第2内部電極層12bに含まれる副成分とが異なっている。この構成により、第1内部電極層12aと誘電体層11との界面、第2内部電極層12bと誘電体層11との界面、の双方において高い界面抵抗を得ることができる。それにより、第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bのそれぞれを陽極および陰極のいずれかに用いる際に、高い信頼性を得ることができるようになる。
【0035】
第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bは、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)等の卑金属やこれらを含む合金を主成分とする。第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bの主成分として、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。第1内部電極層12aにおける主成分と第2内部電極層12bにおける主成分とは、同じであってもよいが、異なっていてもよい。一例として、第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bの主成分は、どちらもニッケルで同じであってもよく、どちらも銅で同じであってもよい。
【0036】
第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bにおける副成分は、例えば、鉄(Fe)、クロム(Cr)、スズ(Sn)、バナジウム(V)、ハフニウム(Hf)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ケイ素(Si)、ボロン(B)、レニウム(Re)、銅(Cu)、コバルト(Co)、タングステン(W)、ゲルマニウム(Ge)、マンガン(Mn)、タンタル(Ta)、銀(Ag)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、タリウム(Tl)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド元素から選択された、主成分と重複しない1種または2種以上である。
【0037】
ここで、第1内部電極層12aに含まれる副成分と第2内部電極層12bに含まれる副成分とが異なっていることの効果の詳細について説明する。
【0038】
積層セラミックコンデンサ100の劣化が進行すると、陰極として用いられる第2外部電極20bに接続される第2内部電極層12bではドナー欠陥(主に酸素欠損)が集積し、電子伝導が支配的になり、陽極として用いられる第1外部電極20aに接続される第1内部電極層12aではアクセプタ欠陥に付随した正孔伝導が支配的になると考えられる。つまり、両極側で電気伝導のメカニズムが異なるため、両極で同じ元素を副成分として含有しても、高い信頼性が得られないおそれがある。
【0039】
第2内部電極層12bにおいて副成分として仕事関数が高い元素を含有した場合は、電子に対する界面抵抗が高くなり、上述のごとく好ましい結果が得られる。一方で、第1内部電極層12aにおいて副成分として仕事関数が高い元素を含有した場合は、正孔に対する界面抵抗が低くなり、望ましい仕事関数とは逆の状態となってしまうため高信頼が得られなくなるおそれがある。
【0040】
同様に、第1内部電極層12aにおいて副成分として仕事関数が低い元素を含有した場合は、正孔に対する界面抵抗が高くなり、上述のごとく好ましい結果が得られる一方で、第2内部電極層12bにおいて副成分として仕事関数が低い元素を含有した場合は、電子に対する界面抵抗が低くなり望ましい仕事関数とは逆の状態となってしまうため高信頼が得られなくなるおそれがある。
【0041】
これに対して、本実施形態では、第1内部電極層12aに含まれる副成分と第2内部電極層12bに含まれる副成分とを異ならせているのである。
【0042】
このような態様を実現するためには、陽極側を構成する第1内部電極層12aの主成分の金属元素と陰極を構成する第2内部電極層12bの主成分の金属元素が以下のような条件であることが好ましい。
1)第1内部電極層12aを構成する主成分の金属元素と第2内部電極層12bを構成する主成分の金属元素が同一であるか、異なっていても仕事関数が等しい場合。
この場合においては、上述のように、第2内部電極層12bにおいて副成分として仕事関数が高い元素を含有し電子に対する界面抵抗を高くなるようにし、第1内部電極層12aにおいて副成分として仕事関数が低い元素を含有し正孔に対する界面抵抗を高くなるようにすることで高い信頼性を得ることができる。
2)第1内部電極層12aを構成する主成分の金属元素と第2内部電極層12bを構成する主成分の金属元素が異なった金属元素であってもその仕事関数がほぼ等しいとみなせる近い値である場合。
ここでいう仕事関数がほぼ等しいとみなせる近い値であるとは、例えばその差が0.05eV以内であり、好ましくは0.02eV以内の差である。このように主成分の金属元素の仕事関数の差異が小さい場合、副成分として含有した金属元素の仕事関数による変化の方が大きくなる、第1内部電極層12aを構成する主成分の金属元素と第2内部電極層12bを構成する主成分の金属元素が同一である場合と同様に扱うことができる。
3)第1内部電極層12aを構成する主成分の金属元素と第2内部電極層12bを構成する主成分の金属元素が異なった金属元素であっても第2内部電極層12bを構成する主成分の仕事関数が第1内部電極層12aを構成する主成分の仕事関数よりも高い場合。
主成分の金属元素のみであっても、第2内部電極層12bの仕事関数は高いことに加え副成分として仕事関数が高い元素を含有することでより一層電子に対する界面抵抗を高くすることができ、第1内部電極層12aの仕事関数は低いことに加え副成分として仕事関数が低い元素を含有することでより一層正孔に対する界面抵抗を高くすることができる。主成分金属元素が第1内部電極層12aと第2内部電極層12bとで等しい場合に比べてさらに高い信頼性を得ることができる好ましい様態である。
【0043】
第1内部電極層12aを構成する主成分の金属元素と第2内部電極層12bを構成する主成分の金属元素が異なっている場合で、第1内部電極層12aを構成する主成分の金属元素の仕事関数が第2内部電極層12bを構成する主成分の金属元素の仕事関数に比べ0.05eVよりも大きく、2つの仕事関数の差がほぼ等しいとみなすことができないほど大きい場合、副成分として仕事関数が多少高い元素を含有した場合でも、第2内部電極層12bにおいては主成分の仕事関数の低さを補うことができず、電子に対する界面抵抗を高くすることができないので信頼性を高めるという好ましい結果が得られないおそれがある。同様に、第1内部電極層12aについても副成分として仕事関数が多少低い元素を含有した場合でも、第1内部電極層12aにおいては主成分の仕事関数の高さを補うことができず、正孔に対する界面抵抗を高くすることができないので信頼性を高めるという好ましい結果が得られないおそれがある。
【0044】
このため、(第1内部電極層12aを構成する主成分の金属元素の仕事関数)-(第2内部電極層12bを構成する主成分の金属元素の仕事関数)≦0.05eVであることが好ましいのである。
【0045】
例えば、第1内部電極層12aがニッケルを主成分として、鉄、クロム、スズ、バナジウム、ハフニウム、オスミウム、ルテニウム、ケイ素、ボロン、レニウム、銅、コバルト、タングステン、ゲルマニウム、マンガン、タンタル、銀、ニオブ、モリブデン、ガリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、ジルコニウム、マグネシウム、チタン、タリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド元素から選ばれる少なくとも一種の元素を副成分として含み、例えば、第2内部電極層12bがニッケルを主成分として、金、白金、イリジウム、パラジウム、セレンから選ばれる少なくとも一種の元素を副成分として含むことが好ましい。例えば、第1内部電極層12aが銅を主成分として、鉄、クロム、スズ、バナジウム、ハフニウム、タングステン、ゲルマニウム、マンガン、タンタル、銀、ニオブ、モリブデン、ガリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、ジルコニウム、マグネシウム、チタン、タリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド元素から選ばれる少なくとも一種の元素を副成分として含み、例えば、第2内部電極層12bが銅を主成分として、金、白金、イリジウム、パラジウム、セレン、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、ケイ素、ボロンから選ばれる少なくとも一種の元素を副成分として含むことが好ましい。例えば、第1内部電極層12aと第2内部電極層12bの主成分は同一の金属元素であってもよく、異なった金属元素の組み合わせであってもよい。この場合、各々の内部電極層の主成分毎に副成分元素は選択される。主成分元素に対して副成分元素で第2内部導体電極層が第1内部電極層より仕事関数が高いことが条件になるが、例えば第1内部電極層12aの主成分はニッケルであって第2内部電極層12bの主成分は銅であってもよく、例えば例えば第1内部電極層12aの主成分は銅であって第2内部電極層12bの主成分はニッケルであってもよい。
【0046】
第1内部電極層12aにおいて、副成分は、例えば、0.01at%以上10.0at%以下含まれ、または0.05at%以上5.0at%以下含まれ、または0.1at%以上3.0at%以下含まれる。第2内部電極層12bにおいて、副成分は、例えば、0.01at%以上10.0at%以下含まれ、または0.05at%以上5.0at%以下含まれ、または0.1at%以上3.0at%以下含まれる。
【0047】
副成分は、各内部電極層において偏析していてもよい。例えば、副成分は、各内部電極層において、表面に偏析していてもよい。
【0048】
Z軸方向における第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bの1層当たりの平均厚みは、例えば、1.5μm以下であり、1.0μm以下であり、0.7μm以下であり、0.5μm以下であり0.3μm以下であり、0.1μm以下である。第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bの厚みは、積層セラミックコンデンサ100の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、異なる10層の内部電極層についてそれぞれ10点ずつ厚みを測定し、全測定点の平均値を導出することによって測定することができる。
【0049】
また、第1内部電極層12aの連続率と第2内部電極層12bの連続率とが異なっていてもよいが、著しく連続性の悪い内部電極層は信頼性を悪化させるため、双方の内部電極層の連続率が50%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上であることが好ましい。なお、
図5で例示するように、ある内部電極層における長さL0の観察領域において、その金属部分の長さL1,L2,・・・,Lnを測定して合計し、金属部分の割合であるΣLn/L0をその層の連続率と定義することができる。
【0050】
なお、第1内部電極層12aの一部に副成分が含まれ、第2内部電極層12bの一部に副成分が含まれていてもよい。例えば、第1内部電極層12aの第1外部電極20a側の端部および第2内部電極層12bの第2外部電極20b側の端部は、主成分に加えて副成分を含んでいてもよい。この場合においても、第1内部電極層12aと誘電体層11の界面、第2内部電極層12bと誘電体層11の界面、の双方において高い界面抵抗を得ることができる。それにより、第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bのそれぞれを陽極および陰極のいずれかに用いる際に、高い信頼性を得ることができるようになる。特に、電界集中が生じやすい第1外部電極20a付近および第2外部電極20b付近の内部電極層間の抵抗値が高くなる。それにより、高い信頼性を得ることができる。
【0051】
第1内部電極層12aの第1外部電極20a側の端部は、第1エンドマージン15a内の第1内部電極層12aを含み、容量部14の第1内部電極層12aの第1エンドマージン15a側の領域を含む第1領域30aの全体のことであってもよい。第2内部電極層12bの第2外部電極20b側の端部は、第2エンドマージン15b内の第2内部電極層12bを含み、容量部14の第2内部電極層12bの第2エンドマージン15b側の領域を含む第2領域30bの全体のことであってもよい。
【0052】
副成分は、濃度勾配を有していてもよい。例えば、第1内部電極層12aの第1外部電極20a側の端部において、
図6で例示するように、第1外部電極20aに近いほど副成分の濃度が高く、第2外部電極20bに近いほど副成分の濃度が低くなっていてもよい。なお、
図6において、横軸の「0」が第1外部電極20aと素体10との境界である。横軸において右側ほど、第2外部電極20bに近づくことになる。すなわち、第1内部電極層12aの第1外部電極20a側の端部である第1領域30aは、副成分濃度を減少させながら第2外部電極20bに達していてもよい。
【0053】
第2内部電極層12bの第2外部電極20b側の端部においても、
図6で例示するように、第2外部電極20bに近いほど副成分の濃度が高く、第1外部電極20aに近いほど副成分の濃度が低くなっていてもよい。この場合においては、
図6の横軸の「0」が第2外部電極20bと素体10との境界である。横軸において右側ほど、第1外部電極20aに近づくことになる。すなわち、第2内部電極層12bの第2外部電極20b側の端部である第2領域30bは、副成分濃度を減少させながら第1外部電極20aに達していてもよい。
【0054】
第1外部電極20aは、第1内部電極層12aの第1外部電極20a側の端部に含まれる副成分を含んでいることが好ましい。第1外部電極20aと第1内部電極層12aとの固着強度が高くなるからである。第2外部電極20bは、第2内部電極層12bの第2外部電極20b側の端部に含まれる副成分を含んでいることが好ましい。第2外部電極20bと第2内部電極層12bとの固着強度が高くなるからである。
【0055】
図7は、積層セラミックコンデンサ100が実装基板201上に実装された回路基板を例示する図である。
図7で例示するように、積層方向の下面が実装基板201上のランドと対向するように配置される。実装基板201上のランドに対して、ハンダ202を介して第1外部電極20aおよび第2第2外部電極20bがそれぞれ独立して実装基板201に電気的に接続される。例えば、各ランドは、正負いずれかの端子であるのかが決められている。例えば、第1外部電極20aはプラス端子として用いられているランドに接続され、第2外部電極20bはマイナス端子として用いられているランドに接続されている。
【0056】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100には、第1外部電極20aと第2外部電極20bとを識別するための視覚的な構成が与えられている。例えば、
図8(a)で例示するように、Y軸を対称軸とした場合にX軸方向に非対称な形状を有する識別マーク60が付されている。識別マーク60は、Z軸を対称軸とした場合にX軸方向に非対称な形状を有していてもよい。
図8(a)の例では識別マーク60は三角形状を有しているが、矢印などであってもよい。識別マーク60の位置は、積層セラミックコンデンサ100の表面に付されていれば特に限定されるものではないが、例えば、第1外部電極20aと第2外部電極20bとの間である。この構成によれば、積層セラミックコンデンサ100の極性を視認できるようになる。それにより、第1外部電極20aおよび第2外部電極20bを実装基板201に対して適切な極性で接続することができるようになるため、信頼性が向上する。
【0057】
または、第1外部電極20aの表面形状と第2外部電極20bの表面形状との間に差異を設ける。例えば、
図8(b)で例示するように、素体10の特定の面において、Y軸方向またはZ軸方向の中央部で、一方の外部電極を他方の外部電極に向けて突出させ、当該他方の外部電極を凹ませてもよい。または、
図8(c)で例示するように、第1外部電極20aのX軸方向の延在長さと、第2外部電極20bのX軸方向の延在長さとを異ならせてもよい。
【0058】
積層セラミックコンデンサ100は、実装基板201に実装する際に包装体300として包装された状態で準備される。
図9および
図10は、包装体300を例示する図である。
図9は、包装体300の部分平面図である。
図10は、
図9のC-C線に沿った包装体300の断面図である。
【0059】
包装体300は、積層セラミックコンデンサ100と、キャリアテープ310と、トップテープ320と、を備える。キャリアテープ310は、Y軸方向に延びる長尺状のテープとして構成されている。キャリアテープ310には、積層セラミックコンデンサ100を1個ずつ収容する複数の凹部311がY軸方向に間隔をあけて配列されている。
【0060】
キャリアテープ310は、Z軸方向と直交する上向きの面であるシール面Pを有し、複数の凹部311はシール面PからZ軸方向の下向きに窪んでいる。つまり、キャリアテープ310は、シール面P側から複数の凹部311内の積層セラミックコンデンサ100を取り出すことが可能なように構成されている。
【0061】
キャリアテープ310では、複数の凹部311の列とはX軸方向にずれた位置に、Y軸方向に間隔をあけて配列されたZ軸方向に貫通する複数の送り孔312が設けられている。送り孔312は、テープ搬送機構がキャリアテープ310をY軸方向に搬送するために用いられる係合孔として構成される。
【0062】
包装体300では、トップテープ320が複数の凹部311の列に沿ってキャリアテープ310のシール面Pに貼り付けられ、複数の積層セラミックコンデンサ100を収容した複数の凹部311がトップテープ320によって一括して覆われている。これにより、複数の積層セラミックコンデンサ100が複数の凹部311内に保持される。
【0063】
図10に示すように、キャリアテープ310の凹部311内の積層セラミックコンデンサ10では、素体10におけるZ軸方向上方を向いた主面がトップテープ320と対向している。また、素体10のZ軸方向下方を向いた主面は、凹部311の底面と対向している。凹部311内において、X軸方向のいずれか一方が第1外部電極20aであって、他方が第2外部電極20bであることが定められている。第1外部電極20aと第2外部電極20b、すなわち陽極と陰極が区別されることで、使用時に陽極にマイナス、陰極にプラスという逆の電位を接続するような間違いを予防することが可能となり信頼性が向上する。
【0064】
なお、第1外部電極20aおよび第2外部電極20bを設ける前の状態の素体10は、第1内部電極層12aが引き出される面と、第2内部電極層12bが引き出される面とを識別できる構成を有していてもよい。例えば、
図11(a)は、素体10において第1内部電極層12aが引き出される第1側面を例示する図である。
図11(b)は、素体10において第2内部電極層12bが引き出される第2側面を例示する図である。
図11(a)および
図11(b)で例示するように、第1側面に引き出されている部分における第1内部電極層12aのY軸方向の幅と、第2側面に引き出されている部分における第2内部電極層12bのY軸方向の幅とが異なっていてもよい。この場合、素体10の極性を視認できるようになる。
【0065】
例えば、
図11(a)の構成は、第1内部電極層12aの幅に変化を持たせることで実現することができる。例えば、
図12で例示するように、第1内部電極層12aは、第1外部電極20aに接続され幅W1を有する接続部を含む第1a領域121と、容量部14の端面側付近に相当する領域において幅W2を有する第1b領域122とを有する。第1内部電極層12aの第1領域は第1a領域121と第1b領域122からなる。幅W1は、幅W2よりも小さくなっている。幅W1および幅W2は、Y軸方向の幅のことである。このような構成により、
図11(a)の構成が得られる。
【0066】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図13は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0067】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABO3の粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、チタン酸バリウムは、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い比誘電率を示す。このチタン酸バリウムは、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11の主成分セラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル-ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0068】
得られたセラミック原料粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(スカンジウム(Sc)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。
【0069】
例えば、セラミック原料粉末に添加化合物を含む化合物を湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック材料を調製する。例えば、上記のようにして得られたセラミック材料について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。以上の工程により、誘電体材料が得られる。
【0070】
次に、サイドマージン16を形成するための誘電体パターン材料を用意する。誘電体パターン材料は、サイドマージン16の主成分セラミックの粉末を含む。主成分セラミックの粉末として、例えば、誘電体材料の主成分セラミックの粉末を用いることができる。目的に応じて所定の添加化合物を添加する。
【0071】
(塗工工程)
次に、得られた原料粉末に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上にセラミックグリーンシート51を塗工して乾燥させる。基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。塗工工程を例示する図は省略した。
【0072】
(内部電極形成工程)
次に、
図13(a)で例示するように、セラミックグリーンシート51の表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、第1内部電極層12a用の第1内部電極パターン52aまたは第2内部電極層12b用の第2内部電極パターン52bを配置する。金属導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。第1内部電極層12a形成用の金属導電ペースト、第2内部電極層12b形成用の金属導電ペーストには、互いに異なった副成分元素が含まれていてもよい。内部電極形成用の金属導電ペーストには副成分元素が含まれていなくてもよい。この場合、副成分元素は外部電極に含まれ得る。
【0073】
次に、原料粉末作製工程で得られた誘電体パターン材料に、エチルセルロース系等のバインダと、ターピネオール系等の有機溶剤とを加え、ロールミルにて混練して逆パターン層用の誘電体パターンペーストを得る。
図14(a)で例示するように、セラミックグリーンシート51上において、内部電極パターンが印刷されていない周辺領域に誘電体パターンペーストを印刷することで誘電体パターン53を配置し、内部電極パターンとの段差を埋める。内部電極パターンおよび誘電体パターン53が印刷されたセラミックグリーンシート51を積層単位と称する。
【0074】
その後、
図14(b)で例示するように、内部電極層と誘電体層とが互い違いになるように、かつ内部電極層が誘電体層の長さ方向の両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極に交互に引き出されるように、積層単位を積層していく。具体的には、第1内部電極パターン52aおよび誘電体パターン53が印刷されたセラミックグリーンシート51と、第2内部電極パターン52bおよび誘電体パターン53が印刷されたセラミックグリーンシート51とを順に積層する。例えば、積層単位の積層数を100~500層とする。
【0075】
(圧着工程)
図15で例示するように、積層単位が積層された積層体の上下にカバーシート54を所定数(例えば2~10層)だけ積層して熱圧着する。
【0076】
(塗布工程)
このようにして得られたセラミック積層体を、N2雰囲気で脱バインダ処理した後に、下地層21a,21bとなる金属ペーストをディップ法で塗布する。
【0077】
(焼成工程)
その後、酸素分圧が10-5~10-8atm、温度範囲1100℃~1300℃の還元雰囲気で、5分~10時間の焼成を行なう。
【0078】
(再酸化処理工程)
還元雰囲気で焼成された誘電体層11の部分的に還元された主相に酸素を戻すために、第1内部電極層12aおよび第2内部電極層12bを酸化させない程度に、約1000℃でN2と水蒸気の混合ガス中、もしくは500℃~700℃の大気中での熱処理を行う。この工程は、再酸化処理工程とよばれる。
【0079】
(識別マーク作成工程)
セラミックス積層体を焼成した後に識別マーク60用のペーストを塗布して焼き付けたり、メッキやスパッタリング技術によって識別マーク60を形成してもよい。これにより、第1外部電極20aと第2外部電極20bとを識別するための視覚的な構成とすることができる。
【0080】
(めっき処理工程)
その後、下地層21a上に、めっき処理により、銅、ニッケル、スズ等の金属コーティングを行う。また、下地層21b上に、めっき処理により、銅、ニッケル、スズ等の金属コーティングを行う。以上の工程により、積層セラミックコンデンサ100が完成する。なお、下地層21aと下地層21bに異なるメッキ処理を行うこともできる。メッキの材質、色、つやを変えることにより、第1外部電極20aと第2外部電極20bとを識別するための視覚的な構成とすることができる。また、、
図8(a)~
図8(c)の構成は、ディップ法での外部電極ペーストの塗布の際の塗膜厚み、ペースト粘度、塗布位置などを調整することによって得ることができ、第1外部電極20aと第2外部電極20bとを識別するための視覚的な構成とすることができる。
【0081】
なお、
図6のような構成、すなわち第1内部電極層12aについて第1外部電極20aに近いほど副成分の濃度が高く、第2外部電極20bに近いほど副成分の濃度が低くなっており、第2内部電極層12bについて第2外部電極20bに近いほど副成分の濃度が高く、第1外部電極20aに近いほど副成分の濃度が低くなっているような副成分の濃度勾配を得るためには、第1内部電極パターン52aおよび第2内部電極パターン52bの代わりに、互いに副成分を含まない内部電極パターンを用い、
図16で例示するように、セラミック積層体の一方の端面に、下地層21aとなる金属ペースト40aをディップ法で塗布し、他方の端面に、下地層21bとなる金属ペースト40bをディップ法で塗布し、その後に焼成を行えばよい。例えば、金属ペースト40aは、主成分の金属と副成分の金属とを含む。金属ペースト40bは、主成分の金属と副成分の金属とを含む。金属ペースト40aの副成分と金属ペースト40bの副成分とを異ならせる。この場合、第1内部電極層12aの第1外部電極20a側の端部と、第2内部電極層12bの第2外部電極20b側の端部とに、異なる副成分の金属元素が拡散する。このような構成とすることで、内部電極を共通の材料とすることができるため、異なる内部電極となるパターンが形成された誘電体シートを交互にハンドリングして積層する煩雑さを解消することができ、また、内部電極の焼結挙動を均一にすることができるため、応力を均一化することができ微細な構造上の欠陥の発生を防ぐことができる。
【0082】
サイドマージン部は、上記積層部分の側面に貼り付けまたは塗布してもよい。具体的には、
図17で例示するように、セラミックグリーンシート51と、当該セラミックグリーンシート51と同じ幅の第1内部電極パターン52aおよび第2内部電極パターン52bとを積層することで、積層部分を得る。次に、積層部分の側面に、誘電体パターンペーストで形成したシートをサイドマージン部55として貼り付けてもよい。
【0083】
なお、上記では、外部電極用の下地層とセラミック積層体とを同時に焼成しているが、それに限られない。例えば、セラミックス積層体を焼成した後にNi,Cu,Agのペーストを塗布して焼き付けたり、メッキやスパッタリング技術によって端子電極を形成させたりしてもよい。
【0084】
また、上記の実施形態は、端子電極が2つの積層セラミックコンデンサについて適用されているが、3端子以上を持つ積層セラミックコンデンサについて適用してもよい。特に、一般的に低ESLで高周波に用いられる3端子コンデンサではESRも十分に低くすることが求められるため、上記実施形態で説明した誘電体層は、3端子コンデンサにも適している。
【0085】
なお、上記各実施形態においては、積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、バリスタやサーミスタなどの、他の積層セラミック電子部品を用いてもよい。
【0086】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 素体
11 誘電体層
12a 第1内部電極層
12b 第2内部電極層
13 カバー層
14 容量部
15 エンドマージン
16 サイドマージン
20a 第1外部電極
20b 第2外部電極
51 セラミックグリーンシート
52a 第1内部電極パターン
52b 第2内部電極パターン
53 誘電体パターン
54 カバーシート
55 サイドマージン部
60 識別マーク
100 積層セラミックコンデンサ