(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143427
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】減衰バルブおよび緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/348 20060101AFI20241003BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F16F9/348
F16F9/32 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056097
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】安井 剛
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC13
3J069EE28
(57)【要約】
【課題】製造コストの上昇を招かずに安定した減衰力を発生できる減衰バルブおよび緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明における減衰バルブVは、ポート3aとポート3aを取り囲む弁座3cを有する弁座部材3と、弁座部材3から立ち上がるとともに固定ばね受9bを有する軸部材9と、軸部材9の外周に配置されて固定ばね受9bと軸部材9の軸方向で対向するとともに、弁座部材3に対して遠近する方向へ移動可能であって、弁座3cに直接或いはポート3aを開閉する弁体8を介して離着座する環状の可動ばね受10と、可動ばね受10と固定ばね受9bとの間に介装されるばね部材11とを備え、ばね部材11の一端11aが前記軸部材により径方向に調心され、可動ばね受10は、ばね部材11の他端11bにより径方向に調心される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートと前記ポートを取り囲む弁座を有する弁座部材と、
前記弁座部材から立ち上がるとともに固定ばね受を有する軸部材と、
前記軸部材の外周に配置されて前記固定ばね受と前記軸部材の軸方向で対向するとともに、前記弁座部材に対して遠近する方向へ移動可能であって、前記弁座に直接或いは前記ポートを開閉する弁体を介して離着座する環状の可動ばね受と、
前記可動ばね受と前記固定ばね受との間に介装されるばね部材とを備え、
前記ばね部材の一端が前記軸部材により径方向に調心され、
前記可動ばね受は、前記ばね部材の他端により径方向に調心される
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
前記軸部材の前記可動ばね受の移動範囲に対向する部分の外径は、前記可動ばね受の内径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
前記ばね部材は、コイルばねであって、
前記可動ばね受は、前記コイルばねの他端の内周に嵌合する嵌合部を有し、前記コイルばねの他端の前記嵌合部への嵌合により調心される
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
前記可動ばね受は、前記弁座に直接離着座して前記ポートを開閉し、
前記可動ばね受と前記軸部材との間をシールする環状のシール部材を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
前記シール部材は、環状であって内周が前記軸部材に固定されて固定端とされて外周の撓みが許容されるとともに、外周を前記可動ばね受の弁座部材側の端面に当接させた板ばねである
ことを特徴とする請求項4に記載の減衰バルブ。
【請求項6】
アウターシェルと、前記アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドとを備えて内部に少なくとも2つの作動室を有する緩衝器本体と、
前記作動室間に設けられる請求項1から5のいずれか一項に記載の減衰バルブとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブおよび緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体と車輪との間に介装される緩衝器に利用される減衰バルブは、たとえば、ポートを有するピストンと、ピストンの圧側室側端に重ねられて内周が固定されて外周の撓みが許容されてポートを開閉する環状のリーフバルブと、ピストンロッドの先端の外周に螺子結合されてピストンをピストンロッドに固定するとともに外周に環状の固定ばね受を有するピストンナットと、環状であってピストンナットの外周に摺動可能に装着されてピストンナットに対して軸方向へ移動可能であってリーフバルブの反ピストン側面に当接するとともに固定ばね受と軸方向で対向する可動ばね受と、固定ばね受と可動ばね受との間に介装されるコイルばねとを備えるものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このように構成された減衰バルブは、コイルばねの付勢力でリーフバルブがピストンに押し付けられているので、緩衝器の伸長速度が低い場合にはコイルばねの付勢力によってリーフバルブが撓まずに着座したままとなる一方で、緩衝器の伸長速度が高くなるとコイルばねが縮んでリーフバルブが一気にポートを開放して減衰力が頭打ちになる飽和特性を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように従来の減衰バルブでは、前述のように飽和特性を実現できるが、可動ばね受の内周面がピストンナットの外周面に接触しているため、可動ばね受がピストンナットに対して移動する際にスティックスリップを生じて滑らかに移動できなくなって狙い通りの減衰力を発生できなかったり、作動する度に減衰力がバラついたりといった心配がある。スティックスリップが生じる原因としては、コイルばねは製品毎にばらつきが出やすく、従来の減衰バルブのようにコイルばねの終端を処理しても、コイルばねの付勢力に周方向で偏りが出てしまう場合があって可動ばね受をピストンナットに対して傾かせるような付勢力が作用すること、リーフバルブの開弁時にリーフバルブの全周が均一に撓まずにピストンナットに対して可動ばね受を傾かせる力が加わってしまうこと、ピストンナット、可動ばね受或いはピストンに寸法誤差があって可動ばね受がピストンナットに対して傾いて取り付けられてしまうこと等、様々な原因が考えられる。
【0006】
前述のようなスティックスリップを抑制するには、ピストンナット、可動ばね受およびピストンといった減衰バルブを構成する各部品の加工誤差を無くすとともに、高精度な寸法管理が必要となるが、そうすると減衰バルブの加工コストが嵩んでしまうという新たな問題が生じしまう。
【0007】
そこで、本発明は、製造コストの上昇を招かずに安定した減衰力を発生できる減衰バルブおよび緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を解決するために、本発明の減衰バルブは、ポートとポートを取り囲む弁座を有する弁座部材と、弁座部材から立ち上がるとともに固定ばね受を有する軸部材と、軸部材の外周に配置されて固定ばね受と軸部材の軸方向で対向するとともに、弁座部材に対して遠近する方向へ移動可能であって、弁座に直接或いはポートを開閉する弁体を介して離着座する環状の可動ばね受と、可動ばね受と固定ばね受との間に介装されるばね部材とを備え、ばね部材の一端が軸部材により径方向に調心され、可動ばね受は、ばね部材の他端により径方向に調心されることを特徴とする。
【0009】
このように構成された減衰バルブによれば、可動ばね受がばね部材によって軸部材に対して調心されているので、ばね部材が縮んでポートを開放する際に、可動ばね受が軸部材に干渉せずに弁座部材から軸方向へ後退できる。
【0010】
また、減衰バルブにおける軸部材の可動ばね受の移動範囲に対向する部分の外径を可動ばね受の内径よりも小さくした減衰バルブによれば、前記部分と可動ばね受との間に環状隙間が形成されるので、可動ばね受がばね部材のみによって調心されて、軸部材との干渉を防止して、スティックスリップの発生を阻止できる。
【0011】
さらに、減衰バルブにおけるばね部材がコイルばねであって、可動ばね受がコイルばねの他端の内周に嵌合する嵌合部を有し、コイルばねの他端の前記嵌合部への嵌合により調心されてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、可動ばね受をコイルばねに嵌合するという簡単な構成で可動ばね受を調心できるので加工が容易であり、製造コストも安価に済む。
【0012】
また、減衰バルブは、可動ばね受が弁座に直接離着座してポートを開閉し、可動ばね受と軸部材との間をシールする環状のシール部材を備えて構成されてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、可動ばね受を弁体として利用する場合でも可動ばね受が弁座に着座するとポートを確実に閉塞して、狙い通りの減衰力を発生できる。
【0013】
そして、減衰バルブにおけるシール部材は、環状であって内周が軸部材に固定されて固定端とされて外周の撓みが許容されるとともに、外周を可動ばね受の弁座部材側の端面に当接させた板ばねであってもよい。このように構成された減衰バルブによれば、コイルばねによる可動ばね受の調心機能に影響を与えずに軸部材と可動ばね受との間の環状隙間がポートに連通されるのを阻止できるから、可動ばね受を弁体として機能させる場合であっても可動ばね受と軸部材との干渉を防止してスティックスリップによる不利益を被ることがない。
【0014】
また、緩衝器は、アウターシェルと、アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドとを備えて内部に少なくとも2つの作動室を有する緩衝器本体と、作動室間に設けられる減衰バルブとを備えている。このように構成された緩衝器では、減衰バルブが安定した作動を呈するので、ばらつきの無い安定した減衰力を発生でき、減衰バルブを構成する各部品の加工精度を高くしたり高精度の寸法管理をする必要もないので、製造コストの上昇も招くことがない。
【発明の効果】
【0015】
よって、本発明の減衰バルブおよび緩衝器によれば、製造コストの上昇を招かずに安定した減衰力を発生できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態における減衰バルブを備えた緩衝器の縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態における減衰バルブの拡大縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態の第1変形例における減衰バルブの拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1および
図2に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、アウターシェルとしてのシリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるピストンロッド2とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内に設けられる二つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2との間に設けられた減衰バルブVとを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車輪との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0018】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。
図1に示すように、緩衝器本体Aは、アウターシェルとしての有底筒状のシリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ1内に移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を作動室としての伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3とを備えている。
【0019】
そして、ピストンロッド2の
図1中上端となる基端には、ブラケット(図示せず)が設けられており、ピストンロッド2が図外の前記ブラケットを介して車体と車輪の一方に連結される。また、シリンダ1の底部1aにもブラケット(図示せず)が設けられており、シリンダ1が図外の前記ブラケットを介して車体と車輪の他方に連結される。
【0020】
このようにして緩衝器Dは車体と車輪との間に介装される。そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が車体に対して上下に振動すると、ピストンロッド2がシリンダ1に出入りして緩衝器Dが伸縮するとともに、ピストン3がシリンダ1内を上下(軸方向)に移動する。
【0021】
また、緩衝器本体Aは、シリンダ1の上端を塞ぐとともに、内周にピストンロッド2が摺動自在に挿通される環状のロッドガイド4を備えている。よって、シリンダ1内は、密閉空間とされている。そして、そのシリンダ1内のピストン3から見てピストンロッド2とは反対側に、フリーピストン5が摺動自在に挿入されている。
【0022】
シリンダ1内におけるフリーピストン5の上側には液室Lが形成され、下側にはガス室Gが形成されている。さらに、液室Lは、ピストン3でピストンロッド2側の伸側室R1とピストン3側の圧側室R2とに区画されており、伸側室R1および圧側室R2には、それぞれ液体が充填されている。なお、緩衝器本体A内に充填される液体は、作動油や水、水溶液、その他の液体等とされてもよい。その一方、ガス室Gには、エア、または窒素ガス等の気体が圧縮された状態で封入されている。
【0023】
そして、緩衝器Dの伸長作動時にピストンロッド2がシリンダ1から退出し、その退出したピストンロッド2の体積分シリンダ内容積が増加すると、フリーピストン5がシリンダ1内を上側へ移動してガス室Gを拡大させる。反対に、緩衝器Dの収縮作動時にピストンロッド2がシリンダ1内へ侵入し、その侵入したピストンロッド2の体積分シリンダ内容積が減少すると、フリーピストン5がシリンダ1内を下側へ移動してガス室Gを縮小させる。
【0024】
なお、フリーピストン5に替えて、ブラダ、またはベローズ等を利用して液室Lとガス室Gとを仕切っていてもよく、この仕切となる可動隔壁の構成は適宜変更できる。
【0025】
さらに、本実施の形態では、緩衝器Dが片ピストンロッド、単筒型の緩衝器であり、緩衝器Dの伸縮時にフリーピストン5でガス室Gを拡大または縮小させて、シリンダ1に出入りするピストンロッド2の体積補償をする。しかし、この体積補償のための構成も適宜変更できる。
【0026】
たとえば、フリーピストン5とガス室Gとを廃してシリンダ1の外周にアウターシェルを設け、シリンダ1とアウターシェルとの間に液体を貯留するリザーバを形成して、緩衝器を複筒型の緩衝器にする場合、リザーバによってシリンダ1に出入りするピストンロッド2の体積補償をしてもよい。なお、リザーバは、シリンダ1とは別置き型のタンク内に形成されていてもよい。また、緩衝器Dは、ピストンロッド2の中央にピストン3が装着されてシリンダ1の両端からピストンロッド2の端部がシリンダ1外に突出する両ピストンロッド型の緩衝器として構成されてもよい。
【0027】
ピストンロッド2は、円柱状であって先端側の外径が縮径されており、先端側の最小径の小径部2aと、小径部2aより外径が大きく小径部2aの
図2中上側に設けられた大径部2bと、小径部2aと大径部2bとの境に設けられた段部2c、小径部2aの先端外周に設けられた螺子部2dとを備えている。
【0028】
つづいて、減衰バルブVは、本実施の形態では、ピストンロッド2に装着されたピストン3を弁座部材として緩衝器Dのピストン部に設けられている。詳しくは、減衰バルブVは、ポートとしての伸側ポート3aと伸側ポート3aを取り囲む弁座としての伸側弁座3cとを有する弁座部材としてのピストン3と、ピストン3から立ち上がるとともに固定ばね受9bを有する軸部材としてのピストンナット9と、ピストンナット9の外周に配置されて固定ばね受9bとピストンナット9の軸方向で対向する可動ばね受10と、可動ばね受10と固定ばね受9bとの間に介装されるばね部材としてのコイルばね11とを備えている。
【0029】
以下、減衰バルブVおよびピストンロッド2の小径部2aに装着される各部材について詳細に説明する。ピストンロッド2の小径部2aには、バルブストッパ6、圧側リーフバルブ7、弁座部材としてのピストン3、弁体としての伸側リーフバルブ8、ピストンナット9、可動ばね受10およびコイルばね11が組み付けられている。そして、バルブストッパ6、圧側リーフバルブ7およびピストン3が小径部2aの先端の螺子部2dに螺子結合されるピストンナット9とピストンロッド2の段部2cとにより挟持されてピストンロッド2に固定されており、可動ばね受10およびコイルばね11はピストンナット9の外周に配置されている。このようにピストンナット9は、減衰バルブVにおけるピストン3から立ち上がる軸部材として機能する。なお、軸部材は、弁座部材と一体となって弁座部材と一部品で構成されてもよいし、前述のように弁座部材とは別体となっていてもよい。したがって、本実施の形態の場合、弁座部材としてのピストン3が軸部材を一体に備えていてもよい。
【0030】
ピストン3は、
図1および
図2に示すように、環状であってピストンロッド2の小径部2aの外周に固定されてシリンダ1の内周に摺接しており、シリンダ1内を
図1中上方側の伸側室R1と
図1中下方側の圧側室R2とに区画している。また、ピストン3は、上端から下端に通じて伸側室R1と圧側室R2とを連通するポートとしての伸側ポート3aと、同じく上端から下端に通じて伸側室R1と圧側室R2とを連通する圧側ポート3bと、
図2中下端であって伸側ポート3aの出口端の外周側に設けられて伸側ポート3aを取り囲む弁座としての伸側弁座3cと、
図2中上端に設けられて圧側ポート3bを取り囲む圧側弁座3dとを備えている。
【0031】
ピストン3の
図2中下端には、環状であってピストンロッド2の小径部2aの外周に嵌合されて伸側ポート3aを開閉する弁体としての伸側リーフバルブ8が積層されている。伸側リーフバルブ8は、複数枚の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、内周側がピストンロッド2の小径部2aに嵌合されるとともにピストンナット9によって小径部2aに対して不動に固定されており、外周側の撓みが許容されている。そして、伸側リーフバルブ8は、ピストン3の下端に設けられた伸側弁座3cに着座する状態では伸側ポート3aの下端の出口端を閉塞し、外周側を撓ませて伸側弁座3cから離間させると伸側ポート3aを開放するとともに伸側ポート3aを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える。なお、伸側リーフバルブ8は、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに対しては伸側弁座3cに着座して伸側ポート3aを閉塞する。また、伸側リーフバルブ8は、ピストンナット9の
図2中上端をピストン3の内周に当接させる場合、全体がピストン3に対して遠近できるようにピストンナット9の外周に軸方向へ移動可能に嵌合されてもよい。
【0032】
ピストン3の
図2中上端には、環状であってピストンロッド2の小径部2aの外周に嵌合されて圧側ポート3bを開閉する圧側リーフバルブ7が積層されている。圧側リーフバルブ7は、複数枚の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、内周側がピストンロッド2の小径部2aに固定されて外周側の撓みが許容されている。そして、圧側リーフバルブ7は、ピストン3の上端の圧側弁座3dに着座する状態では圧側ポート3bの上端の出口端を閉塞し、外周側を撓ませて圧側弁座3dから離間させると圧側ポート3bを開放するとともに圧側ポート3bを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに抵抗を与える。なお、圧側リーフバルブ7は、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに対しては圧側弁座3dに着座して圧側ポート3bを閉塞する。また、圧側リーフバルブ7の
図2中上方にはバルブストッパ6が積層されている。バルブストッパ6は、圧側リーフバルブ7が大きく撓むと圧側リーフバルブ7の反ピストン側に当接して圧側リーフバルブ7を支持して圧側リーフバルブ7に過大な応力が作用するのを阻止して圧側リーフバルブ7を保護する。なお、圧側リーフバルブ7には、伸側ポート3aの入口を閉塞しないように孔7aが設けられている。また、緩衝器Dが複筒型の緩衝器として構成される場合、圧側リーフバルブ7の代わりに開弁時に液体の流れに殆ど抵抗を与えないチェックバルブを設けてもよい。
【0033】
ピストンナット9は、筒部9aと、筒部9aの
図2中下端外周に設けられた環状の固定ばね受9bと、筒部9aの内周に設けられてピストンロッド2の螺子部2dに螺子結合される螺子部9cとを備えている。また、ピストンナット9の筒部9aの基端側であって固定ばね受9bより上方における部分の外径は、筒部9aの上方側となる先端側の外径よりも大径となっていて、筒部9aに小径部9a1と大径部9a2が設けられている。なお、固定ばね受9bは、後述するコイルばね11の付勢力を受ける部分であり、軸部材としてのピストンナット9に対して軸方向不動に取り付けられていれば、ピストンナット9と固定ばね受9bとが別部品で構成されてもよい。
【0034】
このように構成されたピストンナット9をピストンロッド2の小径部2aに螺子締結すると、ピストンナット9の筒部9aと段部2cとによって伸側リーフバルブ8、ピストン3、圧側リーフバルブ7およびバルブストッパ6を挟み込んで小径部2aに固定する。
【0035】
可動ばね受10は、環状であって、筒状の嵌合部10aと、嵌合部10aのピストン側の端部の外周にフランジ状に設けられる環状の支承部10bとを備えている。可動ばね受10の内径は、ピストンナット9の小径部9a1の外径よりも十分に大きく、可動ばね受10内にピストンナット9の小径部9a1を挿入すると可動ばね受10の内周とピストンナット9の小径部9a1の外周との間には環状隙間が形成される。このように、可動ばね受10は、ピストンナット9の小径部9a1の外周側に配置されて、ピストンナット9に対してピストンナット9の軸方向となる上下方向に移動可能とされており、弁体としての伸側リーフバルブ8の反ピストン側面に重ねられていて、伸側リーフバルブ8を介して弁座としての伸側弁座3cに対して離着座できる。
【0036】
なお、可動ばね受10は、ピストンナット9に対して
図2中上下方向へ移動できるが、可動ばね受10の移動範囲はピストンナット9の小径部9a1と対向する範囲となっており、可動ばね受10は、横方向の外力を受けない限りピストンナット9に対して接触せずに(非接触で)ピストンナット9の軸方向へ移動できる。
【0037】
ばね部材としてのコイルばね11は、ピストンナット9における固定ばね受9bと可動ばね受10の支承部10bとの間で挟み込まれて、固定ばね受9bと可動ばね受10との間に介装されており、常時、伸側リーフバルブ8に当接する可動ばね受10を軸方向でピストン3に接近させる方向へ向けて付勢している。コイルばね11は、可動ばね受10を介して伸側リーフバルブ8に付勢力を作用させており、伸側リーフバルブ8を伸側弁座3cに押し付けている。よって、コイルばね11が発生する付勢力によって、伸側リーフバルブ8が撓んで伸側弁座3cから離間して伸側ポート3aを開放する際の開弁圧が設定されている。
【0038】
コイルばね11の固定ばね受側端となる一端11aは、内周側に挿入されるピストンナット9の大径部9a2の外周に嵌合されて大径部9a2を締め付けており、ピストンナット9に対して径方向不動に固定されている。このように、コイルばね11の一端は、ピストンナット9の大径部9a2の外周に嵌合されることによって、軸部材としてのピストンナット9に対して調心されている。なお、コイルばね11の伸縮によってピストンナット9が回転しないように、固定ばね受9bとコイルばね11との間にワッシャ等の環状の部品を設けてもよい。また、コイルばね11の一端11aの軸部材であるピストンナット9に対する調心は、ピストンナット9の大径部9a2へのコイルばね11の一端11aの嵌合によるものの他にも、ピストンナット9の筒部9aの外周にコイルばね11の一端11aの内周に嵌合する部品を取り付けることによって行ってもよい。つまり、コイルばねの一端11aが軸部材であるピストンナット9により径方向に調心されることには、コイルばね11の一端11aをピストンナット9に直接的に取り付ける他にも、コイルばね11がピストンナット9に対して径方向に不動になる締結態様であればコイルばね11を軸部材であるピストンナット9に間接的に取り付けられてもよい。よって、コイルばね11をピストンナット9に対して調心できる限りにおいて、コイルばね11の一端11aをピストンナット9に溶接等の利用によって取付けてもよいし、何らかの部品を介して取り付けてもよい。
【0039】
また、コイルばね11の可動ばね受側端となる他端11bは、内周側に挿入される可動ばね受10の嵌合部10aの外周に嵌合されて嵌合部10aを締め付けており、可動ばね受10を保持している。可動ばね受10は、ピストンナット9の小径部9a1の外周に環状隙間を介して対向しており、コイルばね11の他端11bの嵌合によって保持されて、コイルばね11によってピストンナット9に対して調心(センタリング)されている。このように、可動ばね受10は、コイルばね11の他端11bへの嵌合によってピストンナット9に対して調心されるので、ピストンナット9と接触していなくとも伸側リーフバルブ8およびピストン3に対して設計通りの位置に位置決めされて、伸側リーフバルブ8にコイルばね11の付勢力を作用させる。なお、コイルばね11の伸縮によってピストンナット9が回転しないように、可動ばね受10の支承部10bとコイルばね11との間にワッシャ等の環状の部品を設けてもよい。また、コイルばね11の他端11bによる可動ばね受10の調心は、可動ばね受10の嵌合部10aへのコイルばね11の他端11bの嵌合によるものの他にも、他の部品を介在させて行ってもよい。つまり、コイルばねの他端11bによって可動ばね受10が径方向へ調心されることには、直接的にコイルばね11の他端11bを可動ばね受10に直接的に取り付ける他にも、可動ばね受10がコイルばね11に対して径方向に不動になる締結態様であれば可動ばね受10をコイルばね11に取り付けられてもよい。よって、コイルばね11によって可動ばね受10を調心できる限りにおいて、コイルばね11の他端11bを支承部10bに溶接等の利用によって取付けてもよいし、何らかの部品を介して取り付けてもよい。
【0040】
なお、ばね部材は、前述したところでは円筒形のコイルばね11とされているが、円錐形、樽形、つつみ形のコイルばねであってもよいし、可動ばね受10を調心できる限りにおいて断面円形でなくてもよいし金属製以外の材料で形成されてもよい。
【0041】
つづいて、以上のように構成された減衰バルブVおよび緩衝器Dの作動について説明する。まず、ピストン3がシリンダ1に対して
図1中上方側へ移動する緩衝器Dの伸長作動時における減衰バルブVおよび緩衝器Dの作動について説明する。ピストン3がシリンダ1に対して
図1中上方へ移動すると、ピストン3の移動に伴って伸側室R1が縮小されるとともに圧側室R2が拡大される。縮小される伸側室R1内の液体は、伸側ポート3aを通過して伸側リーフバルブ8を撓ませようとする。緩衝器Dの伸長速度が低く伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差が開弁圧に達しない状態では、伸側ポート3aを通過しようとする液体の圧力の作用で伸側リーフバルブ8を撓ませる力がコイルばね11の付勢力に打ち勝つことができず、伸側リーフバルブ8が伸側弁座3cに着座したままとなる。このような状態では、液体は、伸側弁座3c或いは圧側弁座3dに設けられる図示しない凹部で形成されるオリフィスを通じて伸側室R1から圧側室R2へ移動し、オリフィスが液体の流れに抵抗を与える。よって、緩衝器Dの伸長速度が低く伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差が開弁圧に達しない状態では、減衰バルブVは、図外のオリフィスによって緩衝器Dの伸長を妨げる減衰力を発生する。なお、オリフィスは、伸側弁座3c或いは圧側弁座3dに設けられるほか、伸側リーフバルブ8の伸側弁座3cに当接する環状板の外周に設けられる切欠或いは圧側リーフバルブ7の圧側弁座3dに当接する環状板の外周に設けられる切欠によって形成されてもよい。また、緩衝器Dの伸長作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内から退出するため、ピストンロッド2がシリンダ1内で押し退ける体積が減少するが、フリーピストン5がシリンダ1内を
図1中上昇してガス室Gの容積を拡大することによって、ピストンロッド2がシリンダ1内から退出する体積を補償する。
【0042】
他方、緩衝器Dの伸長速度が高くなり伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差が開弁圧以上になると、伸側リーフバルブ8の外周側が撓むとともにコイルばね11を縮んで伸側ポート3aが開放されるので、液体は、伸側リーフバルブ8と伸側弁座3cとの間の隙間を通過して圧側室R2へ移動する。よって、この場合には、伸側リーフバルブ8が伸側ポート3aを通過する液体の流れに抵抗を与えることによって、緩衝器Dは伸長作動を抑制する伸側減衰力を発生する。
【0043】
このように減衰バルブVが開弁する際には、コイルばね11が縮んで伸側リーフバルブ8が撓んで伸側ポート3aを開放するが、コイルばね11によってピストンナット9に対して調心されているので、可動ばね受10は軸部材としてのピストンナット9に干渉せずにピストン3から軸方向へ後退できる。コイルばね11が可動ばね受10に偏荷重を作用させたり、伸側リーフバルブ8の全周が均一に撓まなかったり、軸部材としてのピストンナット9、弁座部材としてのピストン3および可動ばね受10といった減衰バルブVの各構成部品の寸法誤差が生じていても、可動ばね受10はピストンナット9に対して干渉せずにピストン3に遠近できるため、スティックスリップを生じることなく、ピストンナット9に対して円滑に移動でき、伸側リーフバルブ8の開弁圧や撓みに対して悪影響を与えることがない。
【0044】
これに対して、ピストン3がシリンダ1に対して
図1中下方側へ移動する緩衝器Dの収縮作動時では、ピストン3の移動に伴って圧側室R2が縮小されるとともに伸側室R1が拡大される。縮小される圧側室R2内の液体は、圧側ポート3bを通過して圧側リーフバルブ7を撓ませて伸側室R1へ移動する。よって、緩衝器Dの収縮作動時には、圧側リーフバルブ7が圧側ポート3bを通過する液体の流れに抵抗を与えることによって、圧側室R2内の圧力が伸側室R1内の圧力より高くなって、緩衝器Dは、収縮作動を抑制する圧側減衰力を発生する。また、緩衝器Dの収縮作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内に侵入するため、ピストンロッド2がシリンダ1内で押し退ける体積が増大するが、フリーピストン5がシリンダ1内を
図1中下降してガス室Gの容積を縮小させることによって、ピストンロッド2がシリンダ1内へ侵入する体積を補償する。
【0045】
以上、本実施の形態の減衰バルブVは、伸側ポート(ポート)3aと伸側ポート(ポート)3aを取り囲む伸側弁座(弁座)3cを有するピストン(弁座部材)3と、ピストン(弁座部材)3から立ち上がるとともに固定ばね受9bを有するピストンナット(軸部材)9と、ピストンナット(軸部材)9の外周に配置されて固定ばね受9bとピストンナット(軸部材)9の軸方向で対向するとともにピストン(弁座部材)3に対して遠近する方向へ移動可能であって伸側弁座(弁座)3cに伸側ポート(ポート)3aを開閉する伸側リーフバルブ(弁体)8を介して離着座する環状の可動ばね受10と、可動ばね受10と固定ばね受9bとの間に介装されるコイルばね(ばね部材)11とを備え、コイルばね(ばね部材)11の一端11aがピストンナット(軸部材)9により径方向に調心され、可動ばね受10は、コイルばね(ばね部材)11の他端11bにより径方向に調心されている。
【0046】
このように構成された減衰バルブVによれば、可動ばね受10がコイルばね(ばね部材)11によってピストンナット(軸部材)9に対して調心されているので、コイルばね11が縮んで伸側リーフバルブ(弁体)8が撓んで伸側ポート(ポート)3aを開放する際に、可動ばね受10はピストンナット(軸部材)9に干渉せずにピストン(弁座部材)3から軸方向へ後退できる。このように減衰バルブVによれば、可動ばね受10はピストンナット9に対して干渉せずにピストン3に遠近できるため、スティックスリップを生じることなく、ピストンナット9に対して円滑に移動でき、伸側リーフバルブ8の開弁圧や撓みに対して悪影響を与えることがない。以上より、本実施の形態の減衰バルブVによれば、ばらつきの無い安定した減衰力を発生でき、減衰バルブVを構成する各部品の加工精度を高くしたり高精度の寸法管理をする必要もないので、製造コストの上昇も招くことがない。
【0047】
また、本実施の形態の減衰バルブVは、ピストンナット(軸部材)9の可動ばね受10の移動範囲に対向する小径部(部分)9a1の外径は、可動ばね受10の内径よりも小さく、小径部(部分)9a1と可動ばね受10との間に環状隙間が形成されるので、可動ばね受10がコイルばね(ばね部材)11のみによって調心されて、ピストンナット(軸部材)9との干渉を防止して、スティックスリップの発生を阻止できる。なお、ピストンナット(軸部材)9の可動ばね受10の移動範囲に対向する小径部(部分)9a1の外径と可動ばね受10の内径との差は、減衰バルブVに入力される振動と動作によって可動ばね受10がピストンナット(軸部材)9と干渉することがないように設定されればよい。よって、コイルばね11の横方向への剛性も考慮にいれて前記差を設定するのが好ましい。
【0048】
さらに、本実施の形態の減衰バルブVでは、ばね部材がコイルばね11であって、可動ばね受10は、コイルばね11の他端11bの内周に嵌合する嵌合部10aを備え、コイルばね11の他端11bの嵌合部10aへの嵌合により調心されている。このように構成された減衰バルブVによれば、可動ばね受10をコイルばね11に嵌合するという簡単な構成で可動ばね受10を調心できるので加工が容易であり、製造コストも安価に済む。
【0049】
なお、前述したところでは、可動ばね受10が伸側リーフバルブ8を弁体として、伸側リーフバルブ8を介して伸側弁座3cに離着座するようにしているが、
図3に示す減衰バルブV1のように、伸側リーフバルブ8を廃止して、可動ばね受10を伸側弁座3cに離着座させることによって可動ばね受10を弁体として利用して可動ばね受10で伸側ポート3aを開閉してもよい。この場合、可動ばね受10とピストンナット9の小径部9a1との間に環状隙間が設けられていて、伸側ポート3aが環状隙間を通じて圧側室R2に常時連通されてしまうため、ピストンナット9と可動ばね受10との間の隙間を閉塞するシール部材12を設けている。
【0050】
シール部材12は、ピストンナット9の筒部9aとピストン3の内周部との間で挟持される環状の板ばねで形成されている。詳しくは、シール部材12は、弾性を備えた環状板でなる板ばねであって、内周がピストン3の内周部に重ねられる環状の間座14とともにピストンロッド2の小径部2aの外周に装着された後、ピストンロッド2に螺子結合されるピストンナット9の筒部9aと段部2cとによって挟持されてピストンロッド2に固定されている。
【0051】
間座14の外径は、シール部材12の外径よりも小径となっており、シール部材12は、内周側が固定されて外周の撓みが許容されている。シール部材12は、外周を可動ばね受10の
図3中上端のピストン側端面の内周に当接させていて、可動ばね受10が伸側弁座3cに着座する状態では外周を
図3中上方側へ撓ませて自己が発生する弾発力で可動ばね受10に密着している。このように可動ばね受10が伸側弁座3cに着座した状態でシール部材12が可動ばね受10に密着するので、ピストンナット9と可動ばね受10との間の環状隙間が伸側ポート3aに連通するのを阻止でき、可動ばね受10は、伸側弁座3cに着座するとシール部材12と協働して伸側ポート3aを閉塞できる。
【0052】
また、シール部材12は、環状の板ばねとされており、緩衝器Dの収縮作動時に圧側室R2の圧力を受けて外周側をピストン3側に撓ませて可動ばね受10の内周から離間するので、圧側室R2内の液体が可動ばね受10とピストンナット9との間、伸側ポート3aおよび圧側リーフバルブ7の孔7aを介して伸側室R1へ移動するのを許容できる。よって、減衰バルブV1では、緩衝器Dの収縮作動時に圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体は、圧側ポート3bに加えて伸側ポート3aを通過し得るので流路面積が増えて伸側室R1内へ速やかに移動でき、伸側室R1内での過剰な減圧による気泡の発生を抑制できる。
【0053】
なお、減衰バルブV1では、可動ばね受10のピストン側端の内周にピストン側へ向かうほど内径が大きくなる傾斜面10cを設けて、当該傾斜面10cにシール部材12を離着座させている。このようにすると、シール部材12が可動ばね受10の傾斜面10cに面接触して可動ばね受10との間を密にシールできるとともに、傾斜面10cに環状の板ばねでなるシール部材12が当接して可動ばね受10を軸部材としてのピストンナット9に対して調心できるので傾斜面10cを設けるとよい。ただし、シール部材12を可動ばね受10のピストン側端の内周に当接させればシール部材12と可動ばね受10との間をシールできるので傾斜面10cの省略も可能である。
【0054】
間座14は、シール部材12の外周のピストン側へ撓みを可能とすることの他、シール部材12が可動ばね受10への当接タイミングを調整することを目的として設けられている。なお、間座14は、複数枚の環状板で構成されてもよく、間座14を環状板の積層枚数で構成することにより前記当接タイミングの調整を容易に行える利点を享受できる。
【0055】
なお、シール部材12は、可動ばね受10が伸側弁座3cに着座した状態で、ピストンナット9と可動ばね受10との間の環状隙間が伸側ポート3aに連通するのを阻止できればよいので、ピストンナット9の筒部9aの先端の外周に装着されるOリング等で形成されてもよい。
【0056】
このように第1変形例の減衰バルブV1では、可動ばね受10が伸側弁座(弁座)3cに直接離着座して伸側ポート(ポート)3aを開閉し、可動ばね受10とピストンナット(軸部材)9との間をシールする環状のシール部材12を備えているので、可動ばね受10を弁体として利用する場合でも可動ばね受10が伸側弁座(弁座)3cに着座すると伸側ポート(ポート)3aを確実に閉塞して、狙い通りの減衰力を発生できる。
【0057】
また、本実施の形態の減衰バルブV1におけるシール部材12は、環状であって内周がピストンナット(軸部材)9に固定されて固定端とされて外周の撓みが許容されるとともに、外周を可動ばね受10のピストン側(弁座部材側)の端面に当接させた板ばねとされている。このように構成された減衰バルブVによれば、コイルばね11による可動ばね受10の調心機能に影響を与えずにピストンナット(軸部材)9と可動ばね受10との間の環状隙間が伸側ポート(ポート)3aに連通されるのを阻止できるから、可動ばね受10を弁体として機能させる場合であっても可動ばね受10とピストンナット(軸部材)9との干渉を防止してスティックスリップによる不利益を被ることがない。
【0058】
また、シール部材12に板ばねを利用することによって、可動ばね受10がピストン3から離間してから伸側弁座3cに着座する前にシール部材12が可動ばね受10に当接して可動ばね受10のピストン側への移動を抑制する付勢力を発生するから、可動ばね受10と伸側弁座3cとの衝突を緩衝できる。
【0059】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ(アウターシェル)1と、シリンダ(アウターシェル)1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、シリンダ(アウターシェル)1に対するピストンロッド2の移動によって液体が行き来する少なくとも伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2とを有する緩衝器本体Aと、伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2との間に設けられた減衰バルブVを備えている。このように構成された緩衝器Dでは、減衰バルブVが安定した作動を呈するので、ばらつきの無い安定した減衰力を発生でき、減衰バルブVを構成する各部品の加工精度を高くしたり高精度の寸法管理をする必要もないので、製造コストの上昇も招くことがない。
【0060】
なお、
図1に示したところでは、減衰バルブVが緩衝器Dの伸側の減衰バルブに適用されているが、圧側の減衰バルブに適用されてもよい。また、二つの作動室を伸側室R1と圧側室R2としているが、緩衝器Dがシリンダの外周にアウターシェルとして外筒を備えてシリンダと外筒との間にリザーバを備える複筒型緩衝器とされる場合には、圧側室とリザーバとの間に減衰バルブVを設けてもよい。よって、減衰バルブにおけるポートは、伸側室R1と圧側室R2とを連通してもよいし、圧側室とリザーバとを連通してもよい。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1・・・シリンダ、2・・・ピストンロッド、3・・・ピストン(弁座部材)、3a・・・伸側ポート(ポート)、3c・・・伸側弁座(弁座)、8・・・伸側リーフバルブ(弁体)、9・・・ピストンナット(軸部材)、9b・・・固定ばね受、10・・・可動ばね受、10a・・・嵌合部、11・・・コイルばね(ばね部材)、12・・・シール部材、A・・・緩衝器本体、D・・・緩衝器、V・・・減衰バルブ