(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143429
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】組合せダイス
(51)【国際特許分類】
B21H 5/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B21H5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056101
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000103367
【氏名又は名称】オーエスジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】梅林 義弘
(57)【要約】
【課題】再研磨後の固定具の交換を不要とできる組合せダイスを提供することを目的とする。
【解決手段】組合せダイス10は、テーパ面51aが形成される一対の固定部材51が第1ダイス20及び第2ダイス30の嵌装孔23a,33aに互いにテーパ面51aを合わせて嵌装される。一対の固定部材51は、一対の固定部材51を近づける方向に押し込むことでテーパ面51a上を摺動し、外形面51b間の距離を拡大させて、第1ダイス20及び第2ダイス30を固定できる。その結果、第1ダイス20及び第2ダイス30の嵌装孔23a,33aを拡大させたとしても、固定具50(一対の固定部材51)の交換を不要とできる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の外周面に所定の形状を転造する組合せダイスであって、
転造方向と直交する対向方向に貫通される断面同形状かつ同心の孔が形成される複数のダイスと、前記孔に嵌装されて前記複数のダイスを固定する固定具と、を備えた組合せダイスにおいて、
前記固定具は、一対の固定部材から構成され、
前記一対の固定部材は、前記複数のダイスの前記孔の内面に当接される外形面と、前記対向方向の一端面から他端面に向かうにつれ前記外形面から離れるように傾斜されると共に互いに当接されるテーパ面と、を備えることを特徴とする組合せダイス。
【請求項2】
前記複数のダイスのうちの前記対向方向の外方に配置されるダイスの少なくとも一方のダイスの前記孔には、前記外形面が前記内面に当接される嵌装孔と、前記嵌装孔よりも前記対向方向の外方に位置すると共に前記対向方向に沿って内周面にめねじが形成されるねじ穴とが設けられ、
前記少なくとも一方のダイスは、前記ねじ穴に配設されると共に前記めねじに螺合されるねじ部材を備えることを特徴とする請求項1記載の組合せダイス。
【請求項3】
前記外方に配置されるダイスの両方のダイスの前記孔に前記嵌装孔および前記ねじ穴が設けられ、
前記両方のダイスが前記ねじ部材を備えることを特徴とする請求項2記載の組合せダイス。
【請求項4】
前記固定具および前記孔の少なくともどちらか一方には、前記固定具の周方向の変位を規制する規制手段が設けられることを特徴とする請求項1記載の組合せダイス。
【請求項5】
前記ねじ部材は、前記めねじに螺合されるおねじが外周面に形成される基部と、前記めねじの内径よりも外径が小さく設定されると共に前記基部の先端から軸方向外方に突出される突出部とを備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の組合せダイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組合せダイスに関し、特に、再研磨後の固定具の交換を不要とできる組合せダイスに関する。
【背景技術】
【0002】
転造ダイスには、同形状または異形状の複数のダイスを組み合わせることにより、複雑なスプライン形状、ねじ形状を被加工物の外周面に転造する組合せダイスがある。組合せダイスは、複数のダイスに設けられた同軸の孔に固定具(圧入ピン)を圧入することによって、転造面を面一に合わせて固定される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-302423号公報(段落0038,0042及び
図3(c)など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の組合せダイスでは、固定された複数のダイスを一度それぞれに分解した後、それぞれのダイスごとに再研磨が行われる。再研磨後のダイスを転造面で合わせると固定具を圧入する孔の軸がずれるので、孔を同軸同径とするためにワイヤカット加工で孔を大きくする。再研磨後は、孔が大きくなるため、拡大した孔の内径に合った圧入ピンを圧入していた。即ち、再研磨後に圧入ピン(固定具)の交換をする必要があるという問題点があった。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、再研磨後の固定具の交換を不要とできる組合せダイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の組合せダイスは、被加工物の外周面に所定の形状を転造するものであって、転造方向と直交する対向方向に貫通される断面同形状かつ同心の孔が形成される複数のダイスと、前記孔に嵌装されて前記複数のダイスを固定する固定具と、を備えたものであり、前記固定具は、一対の固定部材から構成され、前記一対の固定部材は、前記複数のダイスの前記孔の内面に当接される外形面と、前記対向方向の一端面から他端面に向かうにつれ前記外形面から離れるように傾斜されると共に互いに当接されるテーパ面と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の組合せダイスによれば、一対の固定部材を軸方向に互いに近づける方向に相対移動させることで、一対の固定部材の重なる方向の外形面間の距離を大きくできる。よって、拡大させた孔に一対の固定部材の外形面を押し当てて、複数のダイスどうしを固定することができる。その結果、ダイスを再研磨するごとに固定具を交換することを不要とできる。
【0008】
請求項2記載の組合せダイスによれば、請求項1記載の組合せダイスの奏する効果に加え、ねじ部材を固定具側にねじ込むと、ねじ部材の端面が固定部材に接触するので、固定部材が振動などによって緩む方向へ移動することを規制できる。よって、複数のダイスどうしの固定を緩み難くすることができる。
【0009】
請求項3記載の組合せダイスによれば、請求項2記載の組合せダイスの奏する効果に加え、以下の効果を奏する。一方側の孔のみにねじ部材が配設される場合、他方側の孔の固定部材の移動を規制するため、例えば、転造盤の取付面を利用するが、この場合、複数のダイスを転造盤に取り付けた後に一対の固定部材を挿入するので、複数のダイスどうしが固定されていない状態で転造盤に取り付けられる。そのため、転造盤に取り付けた後に、転造面の位置合わせを行う必要があり、複数のダイスを転造盤に取り付ける取付作業が煩雑になる。これに対して、両側の孔にねじ部材が配設されるので、転造盤に取り付ける前に複数のダイスどうしの転造面を位置合わせできる。よって、取付作業を容易にできる。
【0010】
請求項4記載の組合せダイスによれば、請求項1記載の組合せダイスの奏する効果に加え、一対の固定部材の周方向の変位を規制することができるので、一対の固定部材が孔の内面に当接する周方向の位置を維持し易くできる。よって、転造により繰り返し振動が発生しても、複数のダイスどうしの固定を安定させ易くできる。
【0011】
請求項5記載の組合せダイスによれば、請求項2又は3に記載の組合せダイスの奏する効果に加え、ねじ部材の軸方向の位置を固定部材側に近づけることができる。よって、めねじが形成される軸方向の距離が短くても突出部により固定部材を押し込み易くできる。
【0012】
また、固定部材の軸方向への押し込む距離の不足分をスプリングワッシャ及びナットなどを固定部材とねじ部材との間に介在させて補完する場合と比べて、部品点数を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は、第1実施形態における組合せダイスの正面図であり、(b)は、
図1(a)のIb矢視における組合せダイスの平面図である
【
図2】(a)は、
図1(a)のIIa-IIa線における組合せダイスの断面図であり、(b)は、
図2(a)のIIb-IIb線における組合せダイスの部分断面図である。
【
図3】(a)は、再研磨後の組合せダイスの断面図であり、(b)は、
図3(a)のIIIb-IIIb線における組合せダイスの部分断面図である。
【
図4】(a)は、第2実施形態における組合せダイスの断面図であり、(b)は、第3実施形態における組合せダイスの断面図である。
【
図5】(a)は、第4実施形態における組合せダイスの正面図であり、(b)は、
図5(a)のVb-Vb線における組合せダイスの断面図である。
【
図6】(a)は、第5実施形態における組合せダイスの部分断面図であり、(b)は、第6実施形態における組合せダイスの部分断面図であり、(c)は、第7実施形態における組合せダイスの部分断面図であり、(d)は、第8実施形態における組合せダイスの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1及び
図2を参照して第1実施形態における組合せダイス10を説明する。
図1(a)は、第1実施形態における組合せダイス10の正面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の矢視Ib方向から視た組合せダイス10の平面図である。
図2(a)は、
図1(a)のIIa-IIa線における組合せダイス10の断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のIIb-IIb線における組合せダイス10の部分断面図である。なお、
図2(a)及び
図2(b)は、再研磨前の組合せダイス10を図示したものである。
【0015】
なお、以下の説明では、各図面の矢印U,D,F,B,L,R方向をそれぞれ組合せダイス10の上方向、下方向、前方向、後方向、左方向、右方向として説明する。
【0016】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、組合せダイス10は、被加工物(図示せず)の外周面にスプライン形状の歯形を転造するための転造ダイスである。対向するように一対の組合せダイス10が転造盤70に取り付けられ、その一対の組合せダイス10の転造面に被加工物を挟んだ状態で一対の組合せダイス10が相対移動することで被加工物の外周面にスプライン形状が転造される。
【0017】
一対の組合せダイス10のそれぞれは、被加工物にスプライン形状を転造する第1ダイス20及び第2ダイス30と、その第1ダイス20及び第2ダイス30の間に挟持され、スプライン部分に溝形状を転造する溝プレート40とを備え、それらがボルト(図示せず)及び固定具50(後述する)により固定されている。
【0018】
組合せダイス10は、被加工物への転造加工を繰り返し行った後に、転造面を再研磨して再利用される。このとき、固定具50は、第1ダイス20、第2ダイス30及び溝プレート40の嵌装孔23a,33a,43の拡大された内面に向かって固定具50の外形面51bが当接するように拡大可能な構造となっているので、再研磨ごとの固定具50の交換を不要にできる。
【0019】
第1ダイス20及び第2ダイス30は、合金工具鋼または高速度工具鋼等の金属材料で形成される。第1ダイス20及び第2ダイス30は、長手方向(矢印L-R方向)に延びると共に上側(矢印U方向側)に形成され、被加工物にスプラインを転造する歯形が形成される転造面21,31と、その転造面21,31の反対側(矢印D方向側)に形成される平面状の底面24,34と、長手方向の一端側(矢印R方向側)に形成される平面状の一端面25,35と、その一端面25,35の反対側(矢印L方向側)に形成される平面状の他端面26,36と、一端面25,35及び他端面26,36のそれぞれから長手方向の外方に突出する部分の上面である基準面27,37と、第1ダイス20及び第2ダイス30が互いに対向する対向面29,39と、その対向面29,39の反対側の側面28,38とを有する平面視略長方形状とされる。基準面27,37は、互いに平行な面とされる。
【0020】
これらの転造面21,31には、第1ダイス20及び第2ダイス30の一端面25,35側から他端面26,36側へ向けて、傾斜角度と、スプライン歯形の深さとがそれぞれ異なる食いつき部、仕上げ部および逃げ部が順に連続して設けられており、第1ダイス20及び第2ダイス30の一端面25,35側から他端面26,36側へ向けて被加工物が相対的に転動移動されることにより溝付きスプラインが被加工物の外周面に転造される。被加工物の外周面の溝は、溝プレート40の転造部41により転造される。
【0021】
第1ダイス20及び第2ダイス30の底面24,34には、図示されないねじ穴が加工され、そのねじ穴により組合せダイス10が転造盤70の第1取付面71にねじ止めされる。第1取付面71にねじ止めされた組合せダイス10は、さらに、第2ダイス30の側面38が転造盤70の第2取付面72に押圧されながら固定される(
図4参照)。なお、本実施形態では、第1ダイス20及び第2ダイス30の両方にねじ穴が加工されたが、第1ダイス20又は第2ダイス30のどちらか一方のダイスの前後方向(矢印F-B方向)の幅が小さい場合は、その一方のダイスの底面のねじ穴は省略されても良い。この場合、他方のダイスのみにねじ穴が加工される。
【0022】
第1ダイス20には、側面28から対向面29まで貫通する複数のボルト孔22(本実施形態では8つ)が長手方向(左右方向(矢印L-R方向))に所定の距離だけ離間されて設けられ、第2ダイス30には、側面38から対向面39まで貫通する複数のボルト孔が長手方向に所定の距離だけ離間されて設けられる。第1ダイス20のボルト孔22と第2ダイス30のボルト孔とが配置される位置は、互いに対応している。第1ダイス20のボルト孔22には、側面28側に座面を有する座グリ部分が形成される。第2ダイス30のボルト孔には、ボルトが螺合されるめねじが形成される。
【0023】
図2(a)に示すように、第1ダイス20及び第2ダイス30には、固定具50が嵌装される複数の固定孔23,33(本実施形態では3つ)が長手方向(左右方向(矢印L-R方向)に所定の距離だけ離間されて設けられる。固定孔23,33は、側面28,38から対向面29,39まで貫通する。固定孔23,33のそれぞれの対向面29,39側には、固定具50が嵌装される断面円形の嵌装孔23a,33aが形成され、側面28,38側には、座面を有する座グリ部23b,33bが形成される。座グリ部23b,33bの内周面には、めねじが側面28,38から座面の手前まで形成され、おねじが形成されたねじ部材60が螺合される。
【0024】
溝プレート40は、第1ダイス20及び第2ダイス30の対向面29,39に挟持される平板状の部材であり、合金工具鋼または高速度工具鋼等の金属材料で形成される。溝プレート40は、第1ダイス20及び第2ダイス30に固定された状態で、第1ダイス20及び第2ダイス30の転造面21,31から上方(矢印U方向)に突出すると共に被加工物の外周面に溝を転造する転造部41と、第1ダイス20及び第2ダイス30の対向面29,39と対向する側面45,45と、転造部41の反対側(矢印D方向側)の面を形成する底面44(
図3(a)参照)とを有する。
【0025】
溝プレート40には、第1ダイス20及び第2ダイス30に固定された状態で、第1ダイス20のボルト孔22および第2ダイス30のボルト孔に対応する位置にボルト孔が、第1ダイス20及び第2ダイス30の嵌装孔23a,33aに対応する位置に嵌装孔43が、それぞれ設けられる。嵌装孔43の形状および大きさは、第1ダイス20及び第2ダイス30の嵌装孔23a,33aの形状および大きさと同一とされる。
【0026】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、固定具50は、第1ダイス20及び第2ダイス30の嵌装孔23a,33aと、溝プレート40の嵌装孔43とに嵌装される一対の固定部材51から構成される金属製の部材である。一対の固定部材51は、それぞれ、一端面51cから他端面51dに延びる円柱状の部材をその軸に対して傾斜する平面で切断した形状とされる同形状の部材であり、その切断して除去される部分が切断して残る部分よりも小さい形状とされる。これにより、固定部材51は、一端面51cから他端面51dに向かって外形面51bに対して角度10°(好ましくは5°~20°の範囲)ほど傾斜させた面であるテーパ面51aが形成される形状とされる。一端面51c及び他端面51dは、軸方向に直交する平行な平面とされる。
【0027】
固定部材51の素材である円柱状の部材の外径の大きさは、嵌装孔23a,33a,43の内径の大きさと略同一とされる。これにより、組合せダイス10が再研磨前(嵌装孔23a,33a,43の拡大前)の状態において、嵌装孔23a,33a,43に嵌装された一対の固定部材51は、一対の固定部材51のテーパ面51aが互いに当接される部分の軸方向(矢印F-B方向)に直交する断面が真円形状とされ、その一対の固定部材51が形成する外径の大きさが、嵌装孔23a,33a,43の内径の大きさと略同一とされる。
【0028】
一対の固定部材51は、嵌装孔23a,33a,43の内周面に外形面51bが当接し、一対の固定部材51のテーパ面51aどうしを当接させてそれぞれの嵌装孔に嵌装される。一対の固定部材51は、一方の固定部材51の他端面51dが他方の固定部材51の一端面51cよりも長手方向(左右方向(矢印L-R方向))の外方に位置する状態における所定の位置で外形面51b,51bが真円形状(
図2(b)参照)を形成する。
【0029】
一対の固定部材51のテーパ面51aの外形面51bに対する角度が5°~20°の範囲に設定されるので、一対の固定部材51が左右方向(矢印L-R方向)に互いに押し込まれる量に対する一対の固定部材51の上下方向(矢印U-D方向)の拡大量を確保しつつ、一対の固定部材51の長さを確保することができる。
【0030】
ねじ部材60は、一方側の端面(座グリ部23b,33bに配置された状態における側面28,38側の端面)に六角穴が形成され、外周面におねじが形成される基部61と、その基部61の他方側の端面から軸方向(座グリ部23b,33bに配置された状態における対向面29,39側に向かう方向)に突出される突出部62とから構成される。突出部62は、第1ダイス20及び第2ダイス30の座グリ部23b,33bのめねじの内径よりも小さい外径に設定される。ねじ部材60の突出部62が形成する端面63は軸方向に直交する平面とされる。ねじ部材60の端面63と、一対の固定部材51の他端面51dとが軸方向に直交する平面とされるので、ねじ部材60によって軸直方向に押し込む力を一対の固定部材51にそのまま伝達し易くできる。
【0031】
ここで、座グリ部23b,33bは、加工上、固定部材51が嵌装される部分(座グリ部23b,33bの座面)までめねじを加工できないので、ねじ部材60が固定部材51に当接されないことがある。この場合、固定部材51を対向方向に押し込むことができず、第1ダイス20,第2ダイス30及び溝プレート40どうしを固定できない。これに対して、ねじ部材60は突出部62を備えるので、ねじ部材60を固定部材51に当接させ易くできる。
【0032】
ねじ部材60は、端面63を一対の固定部材51の他端面51dに対向させるするようにして座グリ部23b,33bに螺合される。ねじ部材60によって、一対の固定部材51の長手方向(左右方向(矢印L-R方向))外方への移動が規制される。よって、一対の固定部材51が長手方向外方に離れることを抑制できるので、一対の固定部材51の外形面51b間の距離が小さくなることを抑制できる。その結果、一対の固定部材51による第1ダイス20、第2ダイス30及び溝プレート40の固定を緩み難くできる。
【0033】
次に、
図3(a)及び
図3(b)を参照して、再研磨後の組合せダイス10の固定方法について説明する。
図3(a)は、再研磨後の組合せダイス10の断面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のIIIb-IIIb線における組合せダイス10の部分断面図である。なお、
図3(a)は、
図1(a)のIIb-IIb線における断面図(
図2(a))に対応される。
【0034】
繰り返して転造加工を行うことにより、転造面21,31の損耗が進行した組合せダイス10を転造盤70の第1取付面71及び第2取付面72から取り外す。第1ダイス20、第2ダイス30及び溝プレート40の座グリ部23b,33bに螺合されているねじ部材60と、嵌装孔23a,33a,43に嵌装されている固定部材51と、第1ダイス20のボルト孔22と第2ダイス30及び溝プレート40のボルト孔とにボルト止めされているボルトとを取り外し、組合せダイス10を第1ダイス20、第2ダイス30及び溝プレート40のそれぞれに分離する。分離したそれぞれの第1ダイス20、第2ダイス30及び溝プレート40の転造面21,31及び転造部41を、基準面27,37を基準として別々に再研磨する。
【0035】
次に、分離したそれぞれの第1ダイス20、第2ダイス30及び溝プレート40をボルトで仮止めする。第1ダイス20,第2ダイス30の基準面27,37を基準にして、転造面21,31が面一となるように位置(高さ)合わせを行う。また、溝プレート40は、転造部41の転造面21,31から突出する長さを調整することにより位置合わせが行われる。
【0036】
転造面21,31及び転造部41の位置合わせを行った状態で、嵌装孔23a,33a,43が同形状かつ同軸の円となるように、ワイヤカット加工により拡大加工を行う。
【0037】
拡大加工された嵌装孔23a,33a,43に一対の固定部材51を互いが上下方向に重なる状態で嵌装させ、座グリ部23b,33bにねじ部材60を螺合させる。ねじ部材60を対向面29,39に向けてねじ込んでいくことで、端面63が一対の固定部材51の他端面51dと当接され、さらにねじ込んでいくことで、ねじ部材60が一対の固定部材51を互いに近づく方向に摺動させる。
【0038】
一対の固定部材51は、互いに近づく方向に摺動するときに互いのテーパ面51a上を摺動しながら近づくので、外形面51bの上下方向(矢印U-D方向)の距離が大きくなる方向に移動する。よって、一対の固定部材51の外形面51bは、拡大加工された嵌装孔23a,33a,43の上下方向に位置する部分の内周面に当接し、第1ダイス20、第2ダイス30及び溝プレート40を固定することができる。
【0039】
この状態で、固定された第1ダイス20、第2ダイス30及び溝プレート40(即ち、組合せダイス10)を転造盤70に取り付ける。転造面21,31の損耗が進むごとに、繰り返し再研磨を行い、上述した再研磨後の組合せダイス10の固定方法により固定される。座グリ部23b,33bのめねじの内径は、設定される再研磨の回数から推算される嵌装孔23a,33a,43の拡大代を考慮した嵌装孔23a,33a,43の内径よりも大きい値とされる。
【0040】
本実施形態の組合せダイス10によれば、転造面21,31の再研磨を行ったとしても、一対の固定部材51を互いに近づく方向に押し込んでいくことにより、一対の固定部材51の外形面51b間の距離を嵌装孔23a,33a,43の内周面に向けて拡大させることができるので、拡大させた嵌装孔23a,33a,43に当接できる。その結果、繰り返し転造面21,31の再研磨を行ったとしても、固定具50の交換を不要とできる。
【0041】
組合せダイス10は、第1ダイス20の嵌装孔23a、第2ダイス30の嵌装孔33a及び溝プレート40の嵌装孔43が貫通孔とされるので、それぞれの嵌装孔23a,33a,43の拡大加工を行う際に、ワイヤカット加工による加工を行うことができる。ワイヤカット加工による高精度な嵌装孔23a,33a,43の拡大加工が可能となるので、嵌装孔23a,33a,43が必要以上に拡大することを抑制できる。
【0042】
組合せダイス10は、第1ダイス20及び第2ダイス30に形成される嵌装孔23a,33aの両方が貫通孔とされるので、組合せダイス10を分解する際に固定具50を取り外し易くできる。
【0043】
ここで、一方側のダイス(例えば、第1ダイス20)のみにねじ部材60が配設される場合、他方側のダイス(例えば、第2ダイス30)に配置される固定部材51の他端面51dが転造盤70の面(第2取付面72)に当接される構造にしたり、他方側のダイスの固定孔33(嵌装孔33a)を側面38側まで貫通しない袋穴形状にしたりするなど、他方側に配置される固定部材51の軸方向の移動を規制する構造とされる。これらの場合、第1ダイス20及び第2ダイス30をボルトで仮止めした状態で転造盤70に取り付け、その後、一対の固定部材51を嵌装孔23a,33a,43に嵌装させる必要がある。
【0044】
これに対して、第1ダイス20及び第2ダイス30の両側の座グリ部23b,33bに形成されるめねじにねじ部材60が螺合されるので、一対の固定部材51の他端面51dをねじ部材60の端面63に当接させることができる。よって、組合せダイス10を固定する際に転造盤70の面(第2取付面72)を不要とできる。その結果、組合せダイス10の固定作業を容易にできる。
【0045】
また、第1ダイス20及び第2ダイス30の両側からねじ部材60をねじ込むことができるので、第1ダイス20及び第2ダイス30の両側のどちらからでも固定具50の上下方向(矢印U-D方向)の距離の調整をできる。よって、組合せダイス10の固定作業の作業性を向上できる。
【0046】
次に、
図4(a)を参照して、第2実施形態における組合せダイス200について説明する。第1実施形態では、ねじ部材60が第1ダイス20及び第2ダイス30の固定孔23,33の両方に配置される場合について説明したが、これに対して第2実施形態では、ねじ部材60が第1ダイス20の固定孔23のみに配置される場合について説明する。
【0047】
図4(a)は、第2実施形態における組合せダイス200の断面図である。
図4(a)は、
図1(a)のIIa-IIa線における断面図(
図2(a))に対応する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する(
図4(b)から
図6において同様)。
【0048】
第2実施形態では、第2ダイス230の固定孔233には、座グリ部が形成されず、嵌装孔33aのみが形成される。嵌装孔33aは、第2ダイス230の側面38から対向面39まで貫通される。固定具250の第2ダイス230側の固定部材251は、上記第1実施形態における固定部材51と比べて、テーパ面251a及び外形面251bが一端面251cから側面38まで延び、他端面251dが側面38と面一となるように嵌装される形状とされる。他端面251dが側面38の面一となるように嵌装孔23a,33a,43に嵌装されるので、組合せダイス200を転造盤70の第1取付面71及び第2取付面72に取り付けた状態で、固定部材251の他端面251dが第2取付面72に当接される。
【0049】
第2実施形態の組合せダイス200によれば、組合せダイス200を転造盤70の第1取付面71及び第2取付面72に取り付けた状態で、固定部材251の他端面251dが第2取付面72に当接されるので、第2ダイス230側のねじ部材60と、第2ダイス230の座グリ部の加工および座グリ部へのめねじの加工とを不要にできる。よって、組合せダイス200の製造コストを抑制できる。
【0050】
次に、
図4(b)を参照して、第3実施形態における組合せダイス300について説明する。上記第1実施形態では、ねじ部材60が第1ダイス20及び第2ダイス30の固定孔23,33の両方に配置される場合について説明したが、これに対して第3実施形態では、ねじ部材60に代えて介在部材380が第2ダイス330の固定孔333に配置される場合について説明する。
図4(b)は、第3実施形態における組合せダイス300の断面図である。
図4(b)は、
図1(a)のIIa-IIa線における断面図(
図2(a))に対応する。
【0051】
第3実施形態では、第2ダイス330の固定孔333は、座グリ部333bにめねじが形成されない形状とされる。座グリ部333bには、ねじ部材60に代えて介在部材380が嵌装される。介在部材380は、座グリ部333bの座面から側面38まで嵌装される部材であり、一方側の端面が側面38と面一とされ、対向面39側の端面が座グリ部333bの座面と面一とされる。従って、組合せダイス300を転造盤70の第1取付面71及び第2取付面72に取り付けた状態で、介在部材380の一方側の端面が第2取付面72に当接されつつ、介在部材380の対向面39側の端面に固定部材51の他端面51dが当接される。
【0052】
第3実施形態の組合せダイス300によれば、組合せダイス300を転造盤70の第1取付面71及び第2取付面72に取り付けた状態で、介在部材380の一方側の端面が第2取付面72に当接されつつ、介在部材380の対向面39側の端面に固定部材51の他端面51dが当接されるので、第2ダイス330側のねじ部材60と、第2ダイス330の座グリ部へのめねじの加工とを不要にできる。よって、組合せダイス300の製造コストを抑制できる。
【0053】
次に、
図5(a)及び
図5(b)を参照して、第4実施形態における組合せダイス400について説明する。上記各実施形態では、第1ダイス20及び第2ダイス30が平面視略長方形状とされる場合について説明したが、これに対して第4実施形態では、第1ダイス420及び第2ダイス430が正面視円筒形状とされる場合について説明する。
図5(a)は、第4実施形態における組合せダイス400の正面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のVb-Vb線における組合せダイス400の断面図である。
【0054】
組合せダイス400は、被加工物にスプライン形状を転造する第1ダイス420及び第2ダイス430と、その第1ダイス420及び第2ダイス430の間に挟持され、スプライン部分に溝形状を転造する溝プレート440とを備え、それらがボルト及び固定具50により固定されている。
【0055】
第1ダイス420及び第2ダイス430は、被加工物にスプラインを転造する歯形が形成される外周面である転造面421,431と、周方向の一部にキー溝424a,434aが形成される内周面424,434と、第1ダイス420及び第2ダイス430が互いに対向する対向面29,39と、その対向面29,39の反対側の側面28,38とを有する円筒状とされる。
【0056】
一対の組合せダイス400に挟持される被加工物が相対的に転動移動されることにより溝付きスプラインが被加工物の外周面に転造される。被加工物の外周面の溝は、溝プレート440の転造部441により転造される。なお、本実施形態では、一対の組合せダイス400に挟持されて被加工物が転造されるが、3つの組合せダイス400に挟持されても良い。
【0057】
第1ダイス420には、側面28から対向面29まで貫通する複数のボルト孔22(本実施形態では4つ)が周方向に所定の距離だけ離間されて設けられ、第2ダイス430には、側面38から対向面39まで貫通する複数のボルト孔が周方向に所定の距離だけ離間されて設けられる。
【0058】
第1ダイス420及び第2ダイス430には、固定具50が嵌装される複数の固定孔23,33(本実施形態では2つ)が周方向に所定の距離だけ離隔されて設けられる。固定孔23,33は、側面28,38から対向面29,39まで貫通する。固定孔23,33のそれぞれの対向面29,39側には、固定具50が嵌装される断面円形の嵌装孔23a,33aが形成され、側面28,38側には、座面を有する座グリ部23b,33bが形成される。座グリ部23b,33bの内周面には、めねじが側面28,38から座面の手前まで形成され、おねじが形成されたねじ部材60が螺合される。
【0059】
溝プレート440は、第1ダイス420及び第2ダイス430の対向面29,39に挟持される円筒板状の部材であり、合金工具鋼または高速度工具鋼等の金属材料で形成される。溝プレート440は、第1ダイス420及び第2ダイス430に固定された状態で、第1ダイス420及び第2ダイス430の転造面421,431から径方向外方に突出すると共に被加工物の外周面に溝を転造する転造部441と、第1ダイス420及び第2ダイス430の対向面29,39と対向する側面45,45と、キー溝444aが形成される内周面444とを有する。
【0060】
また、溝プレート440には、第1ダイス420及び第2ダイス430に固定された状態で、第1ダイス420のボルト孔22および第2ダイス430のボルト孔に対応する位置にボルト孔が、第1ダイス420及び第2ダイス430の嵌装孔23a,33aに対応する位置に嵌装孔43が、それぞれ設けられる。嵌装孔43の形状および大きさは、第1ダイス20及び第2ダイス30の嵌装孔23a,33aの形状および大きさと同一とされる。
【0061】
第1ダイス420、第2ダイス430及び溝プレート440は、キー溝424a,434a,444aを転造盤(図示せず)のアーバに設けられた凸部に嵌めて、転造盤に取り付けられる。
【0062】
第4実施形態における再研磨後の組合せダイス400の固定方法は、第1実施形態における再研磨後の組合せダイス10の固定方法と同様であるので、その詳細な説明は省略する。ただし、この場合、第1ダイス420及び第2ダイス430は、同一の支持軸により同時に再研磨されるので、転造面421,431の再研磨代が同一となる。従って、転造面421,431、転造部441の位置合わせは、内周面424,434,444と、キー溝424a,434a,444aとを基準にして行われる。
【0063】
ここで、キー溝424a,434a,444aを基準として位置合わせされるが、周方向に多少の位置ずれが発生するため、嵌装孔23a,33aを拡大させる必要がある。第4実施形態の組合せダイス400によれば、転造面421,431が正面視円筒形状の丸ダイスであっても、第1実施形態の組合せダイス10が奏する効果と同様に、繰り返し転造面421,431の再研磨を行ったとしても、固定具50の交換を不要とできる。
【0064】
次に、
図6(a)から
図6(d)を参照して、第5実施形態から第8実施形態における組合せダイス500,600,700,800について説明する。上記各実施形態では、嵌装孔23a,33a,43が断面円形とされ、固定部材51,251が略円柱状とされる場合について説明したが、この場合、転造加工の振動により、固定部材51,251が嵌装孔23a,33a,43の周方向へ移動する虞がある。これに対して第5実施形態から第8実施形態では、固定部材551,51,751,851の嵌装孔543,643,743,43の周方向への移動が規制される場合について説明する。
【0065】
まず、
図6(a)を参照して、第5実施形態における組合せダイス500について説明する。
図6(a)は、第5実施形態における組合せダイス500の部分断面図である。
図6(a)は、
図3(a)のIIIb-IIIb線における部分断面図(
図3(b))に対応する(
図6(b)から
図6(d)において同様)。
【0066】
第5実施形態では、第1ダイス、第2ダイスの嵌装孔(図示せず)および溝プレート540の嵌装孔543が同一の大きさ且つ同形状の断面視六角形状とされ、固定具550の一対の固定部材551の外形面551bの上下方向(矢印U-D方向)に形成される4面が嵌装孔543の内面の上下方向に形成される4面に平行とされ当接される形状とされる。この場合、再研磨後のそれぞれの嵌装孔は、内面の各辺の長さの比を保った状態で拡大加工される。
【0067】
この場合、上記各実施形態と同様に、第1ダイス、第2ダイスの嵌装孔および溝プレート540の嵌装孔543が貫通する形状とされるので、真円以外の形状(本実施形態では六角形状)であっても、ワイヤカット加工により高精度な孔を拡大加工することができる(以下、第6実施形態から第7実施形態において同様)。
【0068】
ここで、第1ダイス及び第2ダイスへの転造加工による反力が異なる場合、第1ダイス及び第2ダイスが相対移動させる方向に荷重がかかる。このとき、第1ダイス及び第2ダイスの嵌装孔に嵌装される固定部材551にも第1ダイス及び第2ダイスが相対移動する方向に移動させる荷重がかかり、その結果、固定部材551を周方向に移動させようとする。これに対して、第5実施形態の組合せダイス500によれば、それぞれの嵌装孔および固定部材551の形状により固定部材551がそれぞれの嵌装孔の周方向へ移動することを規制することができるので、固定部材551により転造面に直交する方向(上下方向(矢印U-D方向))へ第1ダイス、第2ダイス及び溝プレート540を固定する方向を維持し易くできる。よって、転造加工による相対移動および振動により固定が緩くなるのを抑制できる。
【0069】
次に、
図6(b)を参照して、第6実施形態における組合せダイス600について説明する。
図6(b)は、第6実施形態における組合せダイス600の部分断面図である。
【0070】
第6実施形態では、第1ダイス、第2ダイスの嵌装孔(図示せず)および溝プレート640の嵌装孔643が同一の大きさ且つ同形状の断面視長孔形状とされる。長孔の上下方向(矢印U-D方向)に位置する部分の内面は、固定具50の固定部材51の外形面51bと同一の形状とされ、長孔の左右方向(矢印L-R方向)に位置する部分の内面は、上下方向に延びる平行な直線状とされる。この場合、再研磨後のそれぞれの嵌装孔は、上下方向にのみ固定部材51の外形面51bと同一の形状として拡大加工される。
【0071】
第6実施形態の組合せダイス600によれば、それぞれの嵌装孔および固定部材51の形状により固定部材51がそれぞれの嵌装孔の周方向へ移動することを規制することができる。さらに、第5実施形態の組合せダイス500に比べて、固定部材51に略円柱状の部材を使用できるので、固定部材51を容易に製造できる。
【0072】
次に、
図6(c)を参照して、第7実施形態における組合せダイス700について説明する。
図6(c)は、第7実施形態における組合せダイス700の部分断面図である。
【0073】
第7実施形態では、第1ダイス、第2ダイスの嵌装孔(図示せず)および溝プレート640の嵌装孔743の内周面のうちの上下方向(矢印U-D方向)に位置する部分の内周面には、径方向外方に凹む凹部743aが形成され、固定具750の一対の固定部材751の外形面751bのうちの上下方向に位置する部分の外形面751bには、径方向外方に突出する凸部751b1が形成される。凸部751b1は、凹部743aの形状に対応する。この場合、再研磨後のそれぞれの嵌装孔は、凹部743aが内周面に形成される形状として拡大加工される。
【0074】
第7実施形態の組合せダイス700によれば、それぞれの嵌装孔および固定部材751の形状により固定部材751がそれぞれの嵌装孔の周方向へ移動することを規制することができる。
【0075】
次に、
図6(d)を参照して、第8実施形態における組合せダイス800について説明する。
図6(d)は、第8実施形態における組合せダイス800の部分断面図である。
【0076】
第8実施形態では、固定具850の一対の固定部材851の外形面851bのうちの上下方向に位置する部分の外形面851bには、それ以外の部分よりも面粗度の粗い粗面部851b1が形成される。
【0077】
第8実施形態の組合せダイス800によれば、粗面部851b1により固定部材851がそれぞれの嵌装孔の周方向へ移動することを規制することができる。さらに、第5実施形態から第7実施形態における組合せダイス500,600,700に比べて、それぞれの嵌装孔を複雑な形状にすることを不要にできる。
【0078】
上記第6実施形態から第8実施形態における組合せダイス600,700,800によれば、上下方向(矢印U-D方向)へ各ダイス及び溝プレートを固定したまま、固定部材(51,751,851)の嵌装孔(643,743,43)の周方向への移動が規制されるので、上記第5実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0079】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0080】
上記各実施形態では、組合せダイス10,200,300,400,500,600,700,800が溝プレート40,440,540,640,740を備える場合について説明したが、溝プレート40,440,540,640,740は省略しても良い。または、溝プレート40,440,540,640,740に代えて、被加工物の外周面を転造するための転造面を有する1又は複数の第3ダイスとしても良い。
【0081】
上記各実施形態では、転造面21,31又は転造面421,431が被加工物の外周面にスプライン形状を転造する場合について説明したが、転造面21,31又は転造面421,431が被加工物の外周面にねじ形状を転造するもの、又は、ねじ形状およびスプライン形状を転造するものの組合せであっても良い。
【0082】
転造面21,31又は転造面421,431が被加工物の外周面にねじ形状を転造するものである場合、転造面21,421と転造面31,431とでねじれ角が異なるものであっても良い。
【0083】
また、さらに、転造面21,31のどちらか一方の転造面とその他方の転造面とで傾斜する角度が異なるもの、及び、どちらか一方の転造面とその他方の転造面とで谷の深さが異なるものの組み合わせであっても良い。
【0084】
上記各実施形態では、ねじ部材60が固定孔23,33に配設される場合について説明したが、ねじ部材60を省略しても良い。
【0085】
上記各実施形態では、ねじ部材60に突出部62が一体に形成される場合について説明したが、ねじ部材60と突出部とが別体とされるものであっても良い。この場合、ねじ部材60の基部61の端面と固定部材51の他端面51dとの間に突出部が挟持されて配設される。突出部により一対の固定部材51を互いに近づく方向に押し込み易くできる。また、突出部は、スプリングワッシャとされることが好ましい。この場合、ねじ部材60の端面にスプリングワッシャによる軸直方向の反発力を作用させて、ねじ部材60を緩み難くできる。
【0086】
第5実施形態では、嵌装孔543及び一対の固定部材551の外形面551bの形状が六角形状とされる場合について説明したが、嵌装孔543及び一対の固定部材551の外形面551bの形状が六角形状以外の多角形状とされても良い。この場合であっても、固定具50,550の周方向の規制をすることができる。よって、第5実施形態の組合せダイス500の奏する効果と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0087】
10,200,300,400,500,600,700,800 組合せダイス
20,420 第1ダイス(ダイス)
23 固定孔(孔)
23a 嵌装孔
23b 座グリ部(ねじ穴)
30,230,330,430 第2ダイス(ダイス)
33,233,333 固定孔(孔)
33a 嵌装孔
33b 座グリ部(ねじ穴)
40,440,540,640,740 溝プレート(ダイス)
43,743 嵌装孔(孔)
50,250,550,750,850 固定具
51,251,551,751,851 固定部材
51b,251b,751b,851b 外形面
60 ねじ部材
62 突出部
543 嵌装孔(孔、規制手段)
551b 外形面(規制手段)
643 嵌装孔(孔、規制手段)
743a 凹部(規制手段)
751b1 凸部(規制手段)
851b1 粗面部(規制手段)
矢印F-B 前後方向(対向方向)
矢印L-R 左右方向(転造方向)