(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143435
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電極合剤の製造方法及び導電助剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20241003BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241003BHJP
H01G 11/32 20130101ALI20241003BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20241003BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01G11/32
H01G11/36
H01G11/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056114
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】宮本 典之
(72)【発明者】
【氏名】堀井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 哲行
(72)【発明者】
【氏名】武田 積洋
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB01
5E078AB02
5E078AB03
5E078BA55
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB11
5H050DA10
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA08
5H050EA10
5H050EA15
5H050FA16
5H050FA17
5H050GA10
5H050GA15
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低分散性カーボンを良好に高分散させた電極合剤の製造方法、及びこの電極合剤に含まれる導電助剤の製造方法を提供する。
【解決手段】導電助剤は、粒子の一部が糊状である導電性カーボン1と低分散性カーボン2とを乾式条件下で混合するカーボン混合工程により製造される。電極合剤は、この導電助剤と電極活物質とを乾式条件下で混合する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の一部が糊状である導電性カーボンと低分散性カーボンとを乾式条件下で混合するカーボン混合工程を含むこと、
を特徴とする電極合剤の製造方法。
【請求項2】
酸化処理することで、全体の10質量%以上に親水性部分を含有し、糊状の酸化処理カーボンを形成する酸化工程と、
親水性部分の含有量が別の全体の10質量%未満である粒子状である粒子状カーボンと、前記酸化処理カーボンとを混合することで、前記粒子状カーボンと前記酸化処理カーボンを複合化させ、前記導電性カーボンを得る導電性カーボン作製工程を含むこと、
を特徴とする請求項1記載の電極合剤の製造方法。
【請求項3】
前記カーボン混合工程で得られた導電助剤と電極活物質とを乾式条件下で混合する活物質混合工程と、
を含むこと、
を特徴とする請求項1又は2記載の電極合剤の製造方法。
【請求項4】
前記導電性カーボンは、一次粒子径が12nm以上34nm以下であること、
を特徴とする請求項1又は2記載の電極合剤の製造方法。
【請求項5】
前記低分散性カーボンは、気相法炭素繊維、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブであること、
を特徴とする請求項1又は2記載の電極合剤の製造方法。
【請求項6】
固体電解質を混合する電解質混合工程を含むこと、
を特徴とする請求項3記載の電極合剤の製造方法。
【請求項7】
前記カーボン混合工程以降、前記活物質混合工程前に、前記電解質混合工程を行い、
前記活物質混合工程の後、更に前記電解質混合工程を行うこと、
を特徴とする請求項6記載の電極合剤の製造方法。
【請求項8】
バインダを混合するバインダ混合工程を更に含むこと、
請求項6記載の電極合剤の製造方法。
【請求項9】
粒子の一部が糊状である導電性カーボンと低分散性カーボンとを乾式条件下で混合するカーボン混合工程を含むこと、
を特徴とする導電助剤の製造方法。
【請求項10】
酸化処理することで、全体の10質量%以上に親水性部分を含有し、糊状の酸化処理カーボンを形成する酸化工程と、
親水性部分の含有量が別の全体の10質量%未満である粒子状である粒子状カーボンと、前記酸化処理カーボンとを混合することで、前記粒子状カーボンと前記酸化処理カーボンを複合化させ、前記導電性カーボンを得る導電性カーボン作製工程を含むこと、
を特徴とする請求項9記載の導電助剤の製造方法。
【請求項11】
前記導電性カーボンは、一次粒子径が12nm以上34nm以下であること、
を特徴とする請求項9又は10記載の導電助剤の製造方法。
【請求項12】
前記低分散性カーボンは、気相法炭素繊維、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブであること、
を特徴とする請求項9又は10記載の導電助剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの電極活物質層を形成する電極合剤の製造方法、及び電極合剤に含まれる導電助剤の製造方法に関する。
【0002】
二次電池、電気二重層キャパシタ、レドックスキャパシタ及びハイブリッドキャパシタなどの蓄電デバイスがある。これら蓄電デバイスは、携帯電話やノート型パソコンなどの情報機器の電源、電気自動車やハイブリッド自動車などの低公害車のモーター駆動電源やエネルギー回生システム等のために広く応用が検討されている。これら応用範囲に適用させるためには、蓄電デバイスの更なる高性能化及び小型化の要請に応えなくてはならない。即ち、蓄電デバイスは、更なるエネルギー密度及びサイクル寿命の向上が要望されている。
【0003】
蓄電デバイスは、概略、電解質を一対の電極で挟んで構成される。電極は、エネルギー貯蔵のための活物質層を有する。活物質層内の電極活物質粒子は、電解質中のイオンとの電子の授受を伴うファラデー反応により容量を発現させ、又は電子の授受を伴わない分極等の非ファラデー反応により容量を発現させる。しかし電極活物質粒子は一般に導電性が低い。そこで、電極活物質粒子に導電性カーボンを複合化し、その複合体を活物質層の構成体とすることが検討されている。
【0004】
導電性カーボンは、電極の導電性を向上させる。即ち、導電性カーボンは、蓄電デバイスの直流内部抵抗(DCIR)及び等価直列抵抗(ESR)の低下に寄与する。但し、導電性カーボンは、蓄電デバイスのエネルギー密度には寄与しない。従って、複合体に占める導電性カーボンを極力少なくする方がよい。換言すると、良好な導電性を発揮させつつ、単位体積当たりの電極活物質粒子ができるだけ多くする方がよい。そこで、少量でも高い導電性を発揮するカーボンナノチューブが注目されている。カーボンナノチューブと電極活物質粒子の複合体は電極密度を高くできる。更に、この複合体は、電極密度を高くしても、低いDCIR及びESRを得ることができる(例えば特許文献1参照)。
【0005】
カーボンナノチューブは、ファンデルワールス力により凝集し、多数集まったバンドル構造を採り易い。換言すれば、カーボンナノチューブは分散し難い低分散性カーボンの一種である。そこで、バンドル構造を解して均一に分散させた状態で、電極活物質粒子と複合化する必要がある。
【0006】
カーボンナノチューブ等の低分散性カーボンを分散させる方法として、湿式混合法が知られており、低分散性カーボンを濃硫酸や濃硝酸の混合溶液中に添加し、高出力の超音波を照射する。また、低分散性カーボンの分散を維持するために、分散液に分散剤等の分散を安定化する物質を混合しておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、環境配慮が重要視されている。電極活物質粒子とカーボンナノチューブとを湿式で混合させる方法は、廃液等が生じる。そこで、電極活物質粒子とカーボンナノチューブとを乾式で混合させる方法が検討されている。
【0009】
しかしながら、乾式の混合方法では、超音波の照射による分散方法を採ることができず、また分散剤を固体中に均一かつ微細に存在させることができない。従って、乾式の混合方法では、カーボンナノチューブ等の低分散性カーボンを高分散させ、また凝集を抑制することが難しかった。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、低分散性カーボンを良好に高分散させた電極合剤の製造方法、及びこの電極合剤に含まれる導電助剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本実施形態の電極合剤の製造方法は、粒子の一部が糊状である導電性カーボンと低分散性カーボンとを乾式条件下で混合するカーボン混合工程を含む。
【0012】
酸化処理することで、全体の10質量%以上に親水性部分を含有し、糊状の酸化処理カーボンを形成する酸化工程と、親水性部分の含有量が別の全体の10質量%未満である粒子状である粒子状カーボンと、前記酸化処理カーボンとを混合することで、前記粒子状カーボンと前記酸化処理カーボンを複合化させ、前記導電性カーボンを得る導電性カーボン作製工程を含むようにしてもよい。
【0013】
前記カーボン混合工程で得られた導電助剤と電極活物質とを乾式条件下で混合する活物質混合工程と、を含むようにしてもよい。
【0014】
前記導電性カーボンは、一次粒子径が12nm以上34nm以下であるようにしてもよい。
【0015】
前記低分散性カーボンは、気相法炭素繊維、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブであるようにしてもよい。
【0016】
固体電解質を混合する電解質混合工程を含むようにしてもよい。
【0017】
前記カーボン混合工程以降、前記活物質混合工程前に、前記電解質混合工程を行い、前記活物質混合工程の後、更に前記電解質混合工程を行うようにしてもよい。
【0018】
バインダを混合するバインダ混合工程を更に含むようにしてもよい。
【0019】
また、上記課題を解決すべく、本実施形態の導電助剤の製造方法は、粒子の一部が糊状である導電性カーボンと低分散性カーボンとを乾式条件下で混合するカーボン混合工程を含む。
【0020】
酸化処理することで、全体の10質量%以上に親水性部分を含有し、糊状の酸化処理カーボンを形成する酸化工程と、親水性部分の含有量が別の全体の10質量%未満である粒子状である粒子状カーボンと、前記酸化処理カーボンとを混合することで、前記粒子状カーボンと前記酸化処理カーボンを複合化させ、前記導電性カーボンを得る導電性カーボン作製工程を含むようにしてもよい。
【0021】
前記導電性カーボンは、一次粒子径が12nm以上34nm以下であるようにしてもよい。
【0022】
前記低分散性カーボンは、気相法炭素繊維、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブであるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、乾式の混合方法において低分散性カーボンが高分散し、また高分散した状態が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】電極合剤の製造方法を示す第1のフローチャートである。
【
図4】電極合剤の製造方法を示す第2のフローチャートである。
【
図5】電極合剤の製造方法を示す第3のフローチャートである。
【
図6】(a)は比較例1の導電助剤の粒度分布であり、(b)は実施例1の導電助剤の粒度分布である。
【
図7】(a)は比較例1の導電助剤の粒度分布であり、(b)は実施例2の導電助剤の粒度分布である。
【
図8】(a)は比較例1の導電助剤の粒度分布であり、(b)は実施例3の導電助剤の粒度分布である。
【
図9】(a)は比較例1の導電助剤の粒度分布であり、(b)は実施例4の導電助剤の粒度分布である。
【
図10】電極合剤の表面のSEM写真であり、(a)は実施例1であり、(b)は実施例2であり、(c)は比較例1である。
【
図11】電極合剤の表面のSEM写真であり、(a)は実施例3であり、(b)は実施例4であり、(c)は比較例1である。
【
図12】電極合剤の表面のSEM写真であり、(a)は実施例1であり、(b)は実施例2であり、(c)は実施例3であり、(d)は比較例1である。
【
図13】電極合剤の各製造方法における各実施例のペレット密度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る電極合剤の製造方法及びこれに含まれる導電助剤の製造方法の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでない。
【0026】
(電極合剤)
本実施形態に係る電極合剤は、電極の活物質層を形成する合剤であり、蓄電デバイスの電極の製造に用いられる。蓄電デバイスは、電気エネルギーを充放電する受動素子であり、例えば、二次電池、電気二重層キャパシタ、レドックスキャパシタ及びハイブリッドキャパシタが挙げられる。
【0027】
蓄電デバイスは、大別すると、一対の電極、及び電極間に介在する電解質とを備えている。電極合剤は、一対の電極のうちの正極ないしは陽極又は負極ないしは陰極の一方又は両方の活物質層に適用される。
【0028】
活物質層は、電極合剤を集電体に塗布及び乾燥させることで形成される。集電体は、導電体であり、活物質層の支持基板ともなる。活物質層は、集電体の片面又は両面に形成される。即ち、電極合剤は、集電体の片面又は両面に塗布される。この電極合剤により形成された活物質層は、エネルギー貯蔵層となる。
【0029】
尚、集電体としては、例えば白金、金、ニッケル、アルミニウム、チタン、鋼、カーボンなどの導電材料が使用される。集電体の形状は、膜状、箔状、板状、網状、エキスパンドメタル状、円筒状などの任意の形状を採用することができる。
【0030】
電極合剤には、電極活物質及び導電助剤が含まれる。電極合剤には、更に固体電解質及びバインダが含まれていてもよい。電極活物質は、電解質中のイオンとの電子の授受を伴うファラデー反応により容量を発現させ、又は電子の授受を伴わない分極等の非ファラデー反応により容量を発現させる。導電助剤は、導電性のカーボンであり、電極活物質と複合化される。固体電解質は、疑似固体電解質でもよく、即ち、イオン液体と酸化物ナノ粒子の成分比が調整されることで擬似的に固体粉末状又はゲル状にした電解質でもよい。
【0031】
電極合材は、プレス処理によって圧力が印加され、加圧成型されペレット状の電極を得る。加圧成型された電極合材と共に集電体を、加圧することで電極を得る。電極合材と集電体を共に加圧することで電極を得てもよい。または、電極合材が圧延処理によって引き延ばされ、シート状に形成され。集電体上に圧力を印加する方法や接着材などにより電極合材が集電体と一体となり電極を得る。なお、集電体上で電極合材に圧力を印加することで、電極を得てもよい。
【0032】
圧延処理により活物質層に加えられる圧力は、一般には50000~1000000N/cm2、好ましくは100000~500000N/cm2の範囲である。また、圧延処理の温度には特別な制限がなく、処理を常温で行っても良く加熱条件下で行っても良い。
【0033】
尚、電極合剤は、導電助剤と電極活物質とを乾式条件下での混合による電極合材の製造方法を示すが、これに限らず、導電助剤と電極活物質と溶媒及び希釈液とを加え、更には必要に応じてバインダと固体電解質を加え、湿式条件下での混合によって電極合材を製造してもよい。この場合、電極合剤はスラリー状となり、集電体上に塗布して乾燥させ、形成された活物質層に圧延処理により圧力を印加して電極を得るようにしてもよい。もっとも、圧粉成形又はシート成形のような乾式製法によれば、生産工程中の廃液量の抑制による環境負荷を下げることができる。
【0034】
(電極活物質粒子)
詳細には、二次電池の正極に用いられる電極活物質としては、まず、層状岩塩型LiMO2、層状Li2MnO3-LiMO2固溶体、及びスピネル型LiM2O4(式中のMは、Mn、Fe、Co、Ni又はこれらの組み合わせを意味する)が挙げられる。これらの具体的な例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiNi4/5Co1/5O2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi1/2Mn1/2O2、LiFeO2、LiMnO2、Li2MnO3-LiCoO2、Li2MnO3-LiNiO2、Li2MnO3-LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、Li2MnO3-LiNi1/2Mn1/2O2、Li2MnO3-LiNi1/2Mn1/2O2-LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiMn2O4、LiMn3/2Ni1/2O4が挙げられる。また、イオウ及びLi2S、TiS2、MoS2、FeS2、VS2、Cr1/2V1/2S2などの硫化物、NbSe3、VSe2、NbSe3などのセレン化物、Cr2O5、Cr3O8、VO2、V3O8、V2O5、V6O13などの酸化物の他、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiVOPO4、LiV3O5、LiV3O8、MoV2O8、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4、LiFePO4、LiFe1/2Mn1/2PO4、LiMnPO4、Li3V2(PO4)3などの複合酸化物が挙げられる。
【0035】
二次電池の負極に用いられる電極活物質の例としては、Fe2O3、MnO、MnO2、Mn2O3、Mn3O4、CoO、Co3O4、NiO、Ni2O3、TiO、TiO2、SnO、SnO2、SiO、SiO2、RuO2、WO、WO2、ZnO等の酸化物、Sn、Si、Al、Zn等の金属、LiVO2、Li3VO4、Li4Ti5O12などの複合酸化物、Li2.6Co0.4N、Ge3N4、Zn3N2、Cu3Nなどの窒化物が挙げられる。
【0036】
電気二重層キャパシタの分極性電極における電極活物質としては、比表面積の大きな活性炭、グラフェン、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、フェノール樹脂炭化物、ポリ塩化ビニリデン炭化物、微結晶炭素などの炭素材料が例示される。ハイブリッドキャパシタでは、二次電池のために例示した正極に用いられる活物質を正極のために使用することができ、この場合には負極が活性炭等を用いた分極性電極により構成される。また、二次電池のために例示した負極活物質を負極のために使用することができ、この場合には正極が活性炭等を用いた分極性電極により構成される。
【0037】
レドックスキャパシタの正極における電極活物質としては、RuO2、MnO2、NiOなどの金属酸化物を例示することができ、負極における電極活物質粒子としては、RuO2等の活物質と活性炭等の分極性材料により構成される。
【0038】
尚、リチウムイオン二次電池の負極側の電極活物質、電気二重層作用を奏する正極と組み合わせたハイブリッドキャパシタの負極側の電極活物質としては、Si系化合物も好適である。Si系化合物は、Si又はSiOといったSiOx(0≦x<2)で表される化合物である、Ti又はP等の異種元素がドープされていてもよく、更に表面がカーボンによって被覆されていてもよい。特に、電極活物質としてはSiO粒子が好適である。
【0039】
特に、SiOは、重量当たりの理論上の比容量が大凡2000mAhg-1、及び作動電位が約0.5V(vs. Li/Li+)である。即ち、グラファイトと比べて比容量が断然大きく、グラファイトと同じく作動電位は低いが、作動電位が約0.05V(vs. Li/Li+)のグラファイトのように極端な低さではない。また、SiOは、入手容易性や環境低負荷性もある。
【0040】
電極活物質の形状や粒径には限定がない。但し、電極活物質の平均粒径は2μm超25μm以下が好ましい。この比較的大きな平均粒径を有する電極活物質は、それ自体で電極密度を向上させる。電極活物質の平均粒径は、光散乱粒度計を用いた粒度分布の測定における50%径(メディアン径)を意味する。
【0041】
(導電助剤)
図1は、導電助剤の製造方法を示す模式図である。導電助剤は、導電性カーボン1と繊維状カーボン2を複合化したカーボン複合体である。繊維状カーボン2は、低分散性カーボンの一種であるが、導電性カーボン1が周囲に付着することで、ファンデルワールス力による凝集が阻止されて分散している。導電性カーボン1は、粒子の一部が糊状の粒子である。この導電性カーボン1は、酸化処理カーボン3と粒子状カーボン4との複合体である。
【0042】
より詳細には、繊維状カーボン2は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ(以下、CNF)、気相法炭素繊維などの繊維状炭素を挙げることができる。カーボンナノチューブは、グラフェンシートが1層である単層カーボンナノチューブ(SWCNT)でも、2層以上のグラフェンシートが同軸状に丸まり、チューブ壁が多層をなす多層カーボンナノチューブ(MWCNT)でもよく、それらが混合されていてもよい。
【0043】
繊維状カーボン2の外径は、1~150nm、好ましくは1~70nm、さらには1~40nmの範囲にあることが好ましい。また、繊維状カーボン2の長さは1~500μm、好ましくは5~400μm、さらには5~200μmの範囲にあるものが好ましい。これら範囲よりも小さいと電極密度が上がりにくくなる。
【0044】
また、カーボンナノチューブのグラフェンシートの層数が少ないほど、カーボンナノチューブ自身の容量密度が高いため、層数が50層以下、好ましくは10層以下の範囲のカーボンナノチューブが容量密度の点から好ましい。なお、この繊維状カーボン2に対しても、繊維状カーボン2の先端や壁面に穴をあける開口処理や賦活処理を用いても良い。
【0045】
導電助剤を構成する導電性カーボン1において、酸化処理カーボン3は、多孔質炭素粉末、ケッチェンブラック、空隙を有するファーネスブラック、カーボンナノファイバ及びカーボンナノチューブのような空隙を有するカーボンを原材料とし、粒子表面に親水性に富む部分を有する。親水性部分の含有量は、酸化処理カーボン3全体の10質量%以上であるのが好ましい。親水性部分の含有量が全体の12質量%以上30質量%以下であるのが特に好ましい。
【0046】
親水性部分は、酸化処理によってもたらされ、カーボンにヒドロキシ基、カルボキシ基やエーテル結合が導入された部分、またカーボンの共役二重結合が酸化されて炭素単結合が生成された部分、及び部分的に炭素間結合が切断された部分である。pH11のアンモニア水溶液20mLに0.1gのカーボンを添加し、1分間の超音波照射を行ない、得られた液を5時間放置して固相部分を沈殿させる。沈殿せずにpH11のアンモニア水溶液に分散している部分が親水性部分と言える。
【0047】
5時間放置して固相部分の沈殿させた後、上澄み液を除去した残余部分を乾燥させ、乾燥後の固体の重量を測定する。乾燥後の固体の重量を最初のカーボンの重量0.1gから差し引いた重量が、pH11のアンモニア水溶液に分散している親水性部分の重量である。そして、親水性部分の重量の最初のカーボンの重量0.1gに対する重量比が、カーボンにおける親水性部分の含有量である。
【0048】
酸化処理カーボン3は、この比率で親水性部分を有するため、糊状に広がり易くなっている。そのため、酸化処理カーボン3は粒子状カーボン4の表面に沿って延びて複合化され易く、また導電性カーボン1は、繊維状カーボン2の表面に沿って延びて複合化され易くなる。そのため、導電性カーボン1は、繊維状カーボン2の凝集を抑制し、分散を促進する。
【0049】
尚、糊状とは、倍率25000倍で撮影したSEM写真において、酸化処理カーボン3の一次粒子に粒界が認められず、非粒子状の不定形なカーボンが繋がっている状態を意味する。
【0050】
酸化処理カーボン3の空隙としては、BET法で測定した比表面積が300m2/g以上が好ましい。このような空隙を有すると、酸化処理によって糊状に変化する特性を与えやすくなる。なかでも、原材料としてはケッチェンブラックや空隙を有するファーネスブラックなどの球状の粒子が好ましい。
【0051】
粒子状カーボン4とは、糊状に拡がった酸化処理カーボン3と区別する意味であり、親水性部分の含有量が別の導電性カーボン全体の10質量%未満であり、酸化処理カーボン3と比べて糊状に変化し難い。10質量%未満であれば、酸化処理されていても未酸化であってもよい。
【0052】
この粒子状カーボン4は、従来の蓄電デバイスの電極のために使用されているケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック、フラーレン、グラフェン、無定形炭素、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化ケッチェンブラック、メソポーラス炭素等が使用される。
【0053】
粒子状カーボン4は、粒子形状が球状形状であることが好ましく、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック、フラーレン、メソポーラス炭素、及び人造黒鉛を挙げることができる。また、粒子状カーボン4は、酸化処理カーボン3より高い導電率を有する導電性カーボンが使用されるのが好ましく、特にファーネスブラックの使用が好ましい。
【0054】
このような導電助剤の製造方法について説明する。酸化処理カーボン3は、カーボン原料の酸化処理により作製される。公知の酸化方法が特に限定なく使用できる。例えば、酸又は過酸化水素の溶液中でカーボン原料を処理することにより、酸化処理カーボン3が得られる。酸としては、硝酸、硝酸硫酸混合物、次亜塩素酸水溶液等が使用できる。また、カーボン原料を酸素含有雰囲気、水蒸気、二酸化炭素中で加熱することにより、酸化処理カーボン3が得られる。さらに、カーボン原料の酸素含有雰囲気中でのプラズマ処理、紫外線照射、コロナ放電処理、グロー放電処理により、酸化処理カーボン3を得ることができる。酸化処理の強度を強めていくと、親水性部分の割合が増加する。
【0055】
全体の10質量%以上の親水性部分を含む酸化処理カーボン3は、
(a)空隙を有するカーボン原料を酸で処理する工程、
(b)酸処理後の生成物と遷移金属化合物とを混合する工程、
(c)得られた混合物を粉砕し、メカノケミカル反応を生じさせる工程、
(d)メカノケミカル反応後の生成物を非酸化雰囲気中で加熱する工程、及び、
(e)加熱後の生成物から、上記遷移金属化合物及び/又はその反応生成物を除去する工程
を含む製造方法によって、好適に得ることができる。
【0056】
(a)工程では、空隙を有するカーボン原料、好ましくはケッチェンブラックを酸に浸漬して放置する。この浸漬の際に超音波を照射しても良い。酸としては、硝酸、硝酸硫酸混合物、次亜塩素酸水溶液等のカーボンの酸化処理に通常使用される酸を使用することができる。浸漬時間は酸の濃度や処理されるカーボン原料の量などに依存するが、一般に5分~5時間の範囲である。酸処理後のカーボンを十分に水洗し、乾燥した後、(b)工程において遷移金属化合物と混合する。
【0057】
(b)工程においてカーボン原料に添加される遷移金属化合物としては、遷移金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩等の無機金属塩、ギ酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド等の有機金属塩、或いはこれらの混合物を使用することができる。これらの化合物は、単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。異なる遷移金属を含む化合物を所定量で混合して使用しても良い。また、反応に悪影響を与えない限り、遷移金属化合物以外の化合物、例えば、アルカリ金属化合物を共に添加しても良い。酸化処理カーボン3は、蓄電デバイスの電極の製造において、電極活物質粒子と混合されて使用されることから、活物質を構成する元素の化合物をカーボン原料に添加すると、活物質に対して不純物となりうる元素の混入を防止することができるため好ましい。
【0058】
(c)工程では、(b)工程で得られた混合物を粉砕し、メカノケミカル反応を生じさせる。この反応のための粉砕機の例としては、ライカイ器、石臼式摩砕機、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、ローラミル、攪拌ミル、遊星ミル、振動ミル、ハイブリダイザー、メカノケミカル複合化装置及びジェットミルを挙げることができる。粉砕時間は、使用する粉砕機や処理されるカーボンの量などに依存し、厳密な制限が無いが、一般には5分~3時間の範囲である。(d)工程は、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの非酸化雰囲気中で行われる。加熱温度及び加熱時間は使用される遷移金属化合物に応じて適宜選択される。続く(e)工程において、加熱後の生成物から遷移金属化合物、及び/又は、遷移金属化合物の反応生成物を酸で溶解する等の手段により除去した後、十分に洗浄し、乾燥することにより、全体の10質量%以上の親水性部分を含む酸化処理カーボンを得ることができる。
【0059】
この製造方法では、(c)工程において、遷移金属化合物がメカノケミカル反応によりカーボン原料の酸化を促進するように作用し、カーボン原料の酸化が迅速に進む。この酸化によって、全体の10質量%以上の親水性部分を含む酸化処理カーボン3が得られる。
【0060】
このようにして作製された酸化処理カーボン3に対して粒子状カーボン4を混合することで、導電性カーボン1を得る。混合方式は、乾式が好ましく、ライカイ器、石臼式摩砕機、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、ローラミル、攪拌ミル、遊星ミル、振動ミル、ハイブリダイザー、メカノケミカル複合化装置及びジェットミルを使用することができる。
【0061】
この乾式混合の過程で、粒子状カーボン4の表面に酸化処理カーボン3が付着し、酸化処理カーボン3の糊状化が部分的に進行して、少なくとも一部が糊状に変化した導電性カーボン1が得られる。酸化処理カーボン3と粒子状カーボン4との割合は、質量比で、1:9~9:1の範囲が好ましく、5:5がより好ましい。
【0062】
そして、導電性カーボン1の一次粒子径は、12nm以上34nm以下であることが好ましい。導電性カーボン1の一次粒子径がこの範囲にあると、繊維状カーボン2の凝集を良好に抑制できる。導電性カーボン1の一次粒子径が44nm以上であっても、繊維状カーボン2の凝集抑制効果は得られるが、12nm以上34nm以下の範囲では、44nmの場合と比べて凝集抑制効果が著しい。
【0063】
導電性カーボン1が44nm以上の場合であっても、導電性カーボン1は、酸化処理カーボン3を用いて繊維状カーボン2に付着し、繊維状カーボン2間に介入して、繊維状カーボン2を分離させる。但し、一部に導電性カーボン1同士が酸化処理カーボン3を介した付着が生じる。そのため、導電性カーボン1を介した繊維状カーボン2同士の近接が生じ、凝集抑制効果が12nm以上34nm以下と比べて低下したものと考えられる。
【0064】
このような導電性カーボン1に対して繊維状カーボン2を乾式で混合する。乾式混合では、例えばジルコニアビーズ等を加えて、攪拌機で混練する。この混練により、導電性カーボン1の酸化処理カーボン3部分が繊維状カーボン2の周囲に付着する。混練により解繊した繊維状カーボン2間に導電性カーボン1が入り込み、繊維状カーボン4は分散したままで凝集が抑制される。
【0065】
このように作製された導電性カーボン1を用いた電極合剤の製造方法は次の通りである。
図2は、電極合剤の製造方法を示す第1のフローチャートである。
図2に示すように、導電性カーボン1と繊維状カーボン2とを乾式混合して導電助剤を作製する(ステップS01)。導電助剤は、電極活物質粒子に対して1wt%以上5wt%以下の割合で電極合剤に含まれるように調整されるとよい。
【0066】
ステップS01において、電極活物質と導電助剤との質量比は、90:10~99.5:0.5の範囲であるのが好ましく、95:5~99:1の範囲であるのがより好ましい。導電助剤の割合が上述の範囲より少ないと、活物質層の導電度が不足し、また導電性カーボン1による電極活物質の被覆率が低下してサイクル特性が低下する傾向がある。また、導電助剤の割合が上述の範囲より多いと、電極密度が低下し、蓄電デバイスのエネルギー密度が低下する傾向がある。
【0067】
次に、この導電助剤が投入されている乾式の攪拌機内に、固体電解質を追加投入して混合する(ステップS02)。ステップS02において、固体電解質は、電極合剤の製造工程中に投入及び混合する全量のうちの半分がよい。即ち、この電極合剤の製造方法では最終工程で、残りの半分量の固体電解質を追加投入及び混合する。
【0068】
尚、固体電解質としては、特に限定はないが、二次電池の場合、硫化物系固体電解質と酸化物系固体電解質が挙げられる。硫化物系固体電解質としては、例えば、LGPS型固体電解質してLi10GeP2S12、アルジロダイト型固体電解質としてLi3PS4、Li7P3S11、Li6PS5Cl、ガラス系固体電解質としてP2S5-Li2O、LiS-P2S5、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiCl-Li2S-SiS2、LiI-Si2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI-LiBr、LiI-Li2S-P2S5、Li2S-B2S3、LiI-Li2S-P2O5、Li2S-Li3PO4-SiS2、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-GeS2、Li2S-P2S5-GeS2等などが挙げられる。
【0069】
酸化物系固体電解質としては、例えば、ナシコン型(NASICON型)の構造を有するリン酸化合物若しくはその一部を他の元素で置換した置換体が挙げられる。ナシコン型の固体電解質としては、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、Na3Zr2Si2PO12、Na3.2Zr1.3Si2.2P0.8O10.5、Na3Zr1.6Ti0.4Si2PO12、Na3Hf2Si2PO12、Na3.4Zr0.9Hf1.4Al0.6Si1.2P1.8O12、Na3Zr1.7Nb0.24Si2PO12、Na3.6Ti0.2Y0.8Si2.8O9、Na3Zr1.88Y0.12Si2PO12、Na3.12Zr1.88Y0.12Si2PO12、Na3.6Zr0.13Yb1.67Si0.11P2.9O12等があげられる。Li7La3Zr2O12を基本組成とするリチウムイオン伝導体等のガーネット型の構造又はガーネット型に類似の構造を有するリチウムイオン伝導体等も挙げられる。また、ペロブスカイト構造又はペロブスカイトに類似の構造を有する酸化物系固体電解質を用いることもできる。例えば、酸化物系固体電解質としてはLi5La3Ta2O12、Li7Zr2O12、Li7La3Zr2O12、LiTi(PO4)3、LiGe(PO4)3、LiLaTiO3、Li6BaLa2Ta2O12等を用いてもよい。
【0070】
また、固体電解質としては、電気二重層キャパシタの場合、特に限定はないが、例えば、La2/3-xLi3xTiO3(0<x<1.7)で表されるペロブスカイト型の無機固体電解質が挙げられる。このペロブスカイト型の無機固体電解質の具体例としては、例えば、La0.5Li0.5TiO3である。他にも、ペロブスカイト型の無機固体電解質として、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、Na1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、Li1.3Y0.3Ti1.7(PO4)3、Li1.2Ga0.2Ti1.8(PO4)3が用いられてもよい。
【0071】
また、固体電解質としては、レドックスキャパシタの場合、特に限定はないが、例えば、プロトン伝導体として水素を含む非晶質半導体などがあげられる。水素を含む非晶質半導体としては、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、または非晶質ゲルマニウムがある。または、水素を含む非晶質半導体としては水素を含む酸化物半導体があり、水素を含む酸化物半導体としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化スズ、または酸化インジウムが挙げられる。
【0072】
固体電解質を投入した後は、乾式の攪拌機内に、電極活物質を追加投入して混合する(ステップS03)。導電助剤と電極活物質との乾式混合では、酸化処理カーボン3が電極活物質の表面に付着し、導電性カーボン1が電極活物質粒子の表面を覆うため、電極活物質の凝集が抑制される。また、混合の過程で酸化処理カーボン3に及ぼされる圧力により、酸化処理カーボン3の少なくとも一部が繊維状カーボン2と電極活物質に対して糊状に広がり、これにより活物質複合体が生成される。尚、電極活物質の平均粒径は2μmより大きく25μm以下であると、その押圧力により酸化処理カーボン3の糊状化を促進させる。
【0073】
図3は、ステップ3において作製される複合体を示す模式図である。
図3に示すように、導電助剤中の繊維状カーボン2は、導電性カーボン1が付着することで分散を維持しつつ、導電性カーボン1を介して電極活物質の粒子6(以下、電極活物質粒子6という)に付着している。
【0074】
このため、電極活物質粒子6間は、優れた電子パスである繊維状カーボン2によって結ばれる。そして、繊維状カーボン2も導電性カーボン1も双方とも炭素を主材としているので、接触面で馴染みやすく、電子受渡しの相性は良い。また、導電性カーボン1は、電極活物質粒子6に綿密に付着している。そのため、繊維状カーボン2と電極活物質粒子6との間で行われる電子の受渡しと比べて、電極活物質粒子6に容易に電子を受け渡す。そのため、この複合体の構造は、電極の低抵抗化に寄与する。
【0075】
図2に戻り、電極活物質を追加投入して混合した後(ステップS03)、乾式の攪拌機内に、固体電解質を再び追加投入して混合する(ステップS04)。固体電解質の投入混合を2度に分け、電極活物質粒子6と導電性カーボン1との乾式混合を挟むことで、電極密度が最も向上する。
【0076】
ここで、固体電解質を2回に分けて投入及び混合することで、電極活物質と固体電解質との導電性の接触状態が良好になる。即ち、電極活物質と固体電解質との間に良好な導電パス形成され、低抵抗化すると共に電気伝導率が良好になる。推測であり、これに限定されるものではないが、この理由は次の通りである。即ち、まず、乾式条件下において導電助剤が電極活物質の表面全体を覆ってしまうと、導電助剤に阻まれて、電極活物質と固体電解質とのイオンパスが形成され難くなる。また、電極活物質表面の固体電解質の量が多く、固体電解質による被覆厚さが厚いと、導電助剤が電極活物質と接触し難くなり、この場合には、導電助剤と電極活物質の導電パスが形成し難くなる。そこで、ステップS02における固体電解質の投入及び混合により、電極活物質の表面に固体電解質の一部を接触させる。その後、導電助剤を混合することで、電極活物質表面に固体電解質とのイオンパスを形成しつつ、導電助剤によって活物質表面及び活物質間に導電パスも形成することができる。そして、ステップS04の固体電解質を加えることで、電極活物質と導電助剤と固体電解質との間を埋めるように固体電解質を充填することができ、電極合材の電気伝導率は良好になる。
【0077】
このようにして電極合剤を作製した後は、電極合剤にバインダ、溶媒及び希釈液を加えて、スラリー状にする。希釈液は最後に加えられる。そして、集電体上にスラリーを塗布して乾燥させた後、活物質層に圧延処理により圧力を印加して電極を得る。スラリーをシート状又はペレット状に成形して乾燥させた後、ロールやプレス等によって集電体と一体化させてもよい。
【0078】
バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニル、カルボキシメチルセルロースなどの公知のバインダが使用される。バインダの含有量は、電極合剤の総量に対して1~30質量%であるのが好ましい。1質量%以下であると活物質層の強度が十分でなく、30質量%以上であると、電極の放電容量が低下する、内部抵抗が過大になるなどの不都合が生じる。溶媒としては、N-メチルピロリドン等の電極材料中の他の構成要素に悪影響を及ぼさない溶媒を特に限定なく使用することができる。混合物中の各構成要素が均一に混合されれば、溶媒の量には特に限定がない。
【0079】
圧延処理では、活物質層が加圧されることで、少なくとも一部が糊状に変化した酸化処理カーボン3がさらに広がって、電極活物質粒子6の間に形成される間隙部、また電極活物質粒子6の表面に存在する孔の内部にも押し出されて緻密に充填される。そのため、電極における単位体積あたりの活物質量が増加し、電極密度が増加する。また、緻密に充填された糊状の酸化処理カーボン3は、導電剤として機能するのに十分な導電性を有する。
【0080】
また、活物質層に圧力を加えていくと、電極活物質粒子6上の酸化処理カーボン3が圧延により糊状に広がる過程で、一部は繊維状カーボン4にも到達する。そのために活物質層の低抵抗化が促進する。
【0081】
尚、活物質層の乾燥は、必要に応じて減圧・加熱して溶媒を除去すれば良い。圧延処理により活物質層に加えられる圧力は、一般には50000~1000000N/cm2、好ましくは100000~500000N/cm2の範囲である。また、圧延処理の温度には特別な制限がなく、処理を常温で行っても良く加熱条件下で行っても良い。
【0082】
図4は、電極合剤の製造方法を示す第2のフローチャートである。
図4に示すように、固体電解質の投入は1回としてもよい。即ち、導電性カーボン1と繊維状カーボン2とを乾式混合して導電助剤を作製する(ステップS11)。この導電助剤が投入されている乾式の攪拌機内に、活物質層に含める予定の全量の固体電解質を追加投入して混合する(ステップS12)。そして、固体電解質を投入した後は、乾式の攪拌機内に、電極活物質を追加投入して混合する(ステップS13)。これにより、電極合剤を製造することもできる。
【0083】
図5は、電極合剤の製造方法を示す第3のフローチャートである。
図5に示すように、固体電解質は活物質層内に必須ではない。導電性カーボン1と繊維状カーボン2とを乾式混合して導電助剤を作製した後(ステップS101)、乾式の攪拌機内に、電極活物質を追加投入して混合することで(ステップS102)、電極合剤の製造を完了させてもよい。
【0084】
このように、粒子の一部が糊状である導電性カーボン1と繊維状カーボン2とを乾式条件下で混合するカーボン混合工程によって、繊維状カーボン2は分散を維持して、凝集が抑制される。そのため、電極活物質粒子6と導電助剤とを乾式で混合しても凝集体の発生量を抑制できる。従って、乾式で環境に配慮しつつ、活物質層の電極密度を高めることができる。
【0085】
尚、導電助剤には繊維状カーボン2に代えて他種の低分散性カーボンを加えてもよい。各種の低分散性カーボンの凝集を導電性カーボン1によって抑制でき、乾式で環境に配慮しつつ、活物質層の電極密度を高めることができる。低分散性カーボンとしては、グラフェン、単層グラフェン、多積層グラフェン、還元型の酸化グラフェン、グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレットなどが挙げられる。さらに低分散性カーボンとしては、フラーレン、C60フラーレン、C70フラーレン、一部の炭素が修飾されたエステル基などの官能基を有するフラーレン誘導体、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛などが挙げられる。
【0086】
導電性カーボン1は、一次粒子径が12nm以上34nm以下であることが好ましい。導電性カーボン1の一次粒子径がこの範囲内であると、電極合剤内に発生する凝集体の量を良好に抑制することができる。
【実施例0087】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
60%硝酸300mLに粒径が約40nmのケッチェンブラックを10gを添加し、得られた液に超音波を10分間照射した後、ろ過してケッチェンブラックを回収した。回収したケッチェンブラックを3回水洗し、乾燥することにより、酸処理ケッチェンブラックを得た。
【0089】
この酸処理ケッチェンブラック3gと、Fe(CH3COO)を21.98gと、Li(CH3COO)を0.77gと、C6H8O7・H2Oを1.10gと、CH3COOHを1.32gと、H3PO4を1.31gと、蒸留水120mLとを混合し、得られた混合液をスターラーで1時間攪拌した後、空気中100℃で蒸発乾固させて混合物を採集した。次いで、得られた混合物を振動ボールミル装置に導入し、20Hzで30分間の粉砕を行なった。粉砕後の粉体を、窒素中700℃で3分間加熱し、酸化処理したケッチェンブラックにLiFePO4が担持された複合体を得た。
【0090】
濃度30%の塩酸水溶液100mLに、得られた複合体1gを添加し、得られた液に超音波を15分間照射させながら複合体中のLiFePO4を溶解させ、残った固体をろ過し、水洗し、乾燥させた。乾燥後の固体の一部を、TG分析により空気中900℃まで加熱し、重量損失を測定した。重量損失が100%、すなわちLiFePO4が残留していないことが確認できるまで、上述の塩酸水溶液によるLiFePO4の溶解、ろ過、水洗及び乾燥の工程を繰り返し、LiFePO4が除去された酸化処理カーボン3を得た。
【0091】
次いで、得られた酸化処理カーボン3の0.1gをpH11のアンモニア水溶液20mLに添加し、1分間の超音波照射を行なった。得られた液を5時間放置して固相部分を沈殿させた。固相部分の沈殿後、上澄み液を除去した残余部分を乾燥させ、乾燥後の固体の重量を測定した。乾燥後の固体の重量を最初の酸化処理カーボン3の重量0.1gから差し引いた重量の最初の酸化処理カーボン3の重量0.1gに対する重量比を、酸化処理カーボン3における「親水性部分」の含有量とした。その結果、酸化処理カーボンにおける親水性部分の重量比は、15質量%であった。
【0092】
次に、得られた酸化処理カーボン3と粒子状カーボン4であるファーネスブラックとを乾式混合した。酸化処理カーボン3と粒子状カーボン4とを1:9の質量比でボールミルに導入した。粒子状カーボン4の一次粒子の平均粒子径は12nmである。当初の粒径が約40nmであったケッチェンブラックは、酸化処理カーボン3に加工され、また粒子状カーボン4と共に混練されることにより、細かく分断されながら粒子状カーボン4と複合化した。その結果、一次粒子の平均粒子径が12nmの導電性カーボン1が得られた。
【0093】
尚、導電性カーボン1の1次粒子径は、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した。導電性カーボン1のTEM像から個々の単位粒子の直径を測定し、一定個数以上の平均値を一次粒子径とすればよい。実際には、1000個の単位粒子を測定し、一次粒子の平均粒子径を求めることで導電性カーボン1の一次粒子径を得た。つまり、実施例1に示す導電性カーボン1の一次粒子径は12nmである。
【0094】
この導電性カーボン1と繊維状カーボン2を乾式混合した。繊維状カーボン2としては気相法炭素繊VGCF(昭和電工株式会社)を用いた。0.1gの導電性カーボン1と0.1gの繊維状カーボン2とを50ccのバイアルビンに投入し、更に直径1φのジルコニウムボールを6g投入し、乾式混練装置(株式会社シンキー社製、型番ARE-310)で乾式にて混合した。これにより、導電性カーボン1が繊維状カーボン2に付着して成る実施例1の導電助剤を得た。
【0095】
次に、電極活物質粒子6と導電助剤とを乾式混合した。電極活物質粒子6は、平均粒子径が5μmのLiNi0.5Mn0.3Co0.2O2粒子である。98質量部の電極活物質粒子6に対して2質量部の導電助剤を混合した。乾式混合では、両者を乳鉢に入れて10分~15分程度の間、乳棒で混練した。これにより、実施例1の電極合剤を完成させた。
【0096】
(実施例2)
更に、実施例2の導電助剤及び電極合剤を作製した。実施例2は、導電性カーボン1の一次粒子の平均粒子径が17nmである点で、実施例1と異なる。その他は、実施例1と同一の製造方法及び製造条件で作製された。実施例2では、実施例1と異なり、一次粒子の平均粒子径が13nmの粒子状カーボン4を用い、酸化処理カーボン3と粒子状カーボン4とを3:7の質量比で混合することで、一次粒子の平均粒子径が17nmの導電性カーボン1を得た。
【0097】
(実施例3)
更に、実施例3の導電助剤及び電極合剤を作製した。実施例3は、導電性カーボン1の一次粒子の平均粒子径が34nmである点で、実施例1と異なる。その他は、実施例1と同一の製造方法及び製造条件で作製された。実施例3では、実施例1と異なり、一次粒子の平均粒子径が34nmの粒子状カーボン4を用い、酸化処理カーボン3と粒子状カーボン4とを1:9の質量比で混合することで、一次粒子の平均粒子径が34nmの導電性カーボン1を得た。
【0098】
(実施例4)
更に、実施例4の導電助剤及び電極合剤を作製した。実施例4は、導電性カーボン1の一次粒子の平均粒子径が44nmである点で、実施例1と異なる。その他は、実施例1と同一の製造方法及び製造条件で作製された。実施例4では、実施例1と異なり、一次粒子の平均粒子径が42nmの粒子状カーボン4を用い、酸化処理カーボン3と粒子状カーボン4とを1:1の質量比で混合することで、一次粒子の平均粒子径が44nmの導電性カーボン1を得た。
【0099】
(比較例1)
実施例1乃至4に対する比較対照として比較例1の導電助剤及び電極合剤を作製した。比較例1の導電助剤は、酸化処理カーボン3が省かれている点が実施例1と異なっている。即ち、粒子状カーボン4であるケッチェンブラックと繊維状カーボン2である単層カーボンナノチューブを乾式で混合し、混合物を比較例1の導電助剤とした。0.1gのケッチェンブラックと0.1gの単層カーボンナノチューブを乳鉢内で乳棒を用いて10~15分程度混練することで、比較例1の導電助剤を作製した。この導電助剤を用いた比較例1の電極合剤の製造方法及び製造条件は、実施例1と同一である。
【0100】
(導電助剤の観察結果)
実施例1乃至4並びに比較例1の導電助剤の粒度分布を測定した。粒度分布は粒度分布計(マイクロトラックベル株式会社製、型番MT3300EXII)を用いて測定した。測定環境は、20℃~25℃の室温であり、測定用溶媒には1wt%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液を使用した。まず、10.00±3.00mgの導電助剤を50ccのサンプル瓶に入れ、5mLのピペットで秤量した測定用溶媒10mLをサンプル瓶に滴下した。測定用溶媒を滴下後、超音波装置(ASU CLEAER、型番ASU-06)を用いて、サンプル瓶中の測定試料を超音波処理で10分間分散させた。そして、超音波処理後、得られた測定試料を粒度分布計で測定した。
【0101】
実施例1乃至4並びに比較例1の導電助剤の粒度分布を測定した結果を
図6乃至
図9に示す。
図6の(a)は比較例1の粒度分布であり、(b)は実施例1の粒度分布である。
図7の(a)は比較例1の粒度分布であり、(b)は実施例2の粒度分布である。
図8の(a)は比較例1の粒度分布であり、(b)は実施例3の粒度分布である。
図9の(a)は比較例1の粒度分布であり、(b)は実施例4の粒度分布である。
【0102】
図6乃至
図8に示すように、導電性カーボン1の一次粒子径が平均34nm以下である実施例1乃至3では、粒度分布は、単一のピークで構成されている。一方、
図6乃至
図8に示すように、導電性カーボン1ではなく、粒子状カーボン4と繊維状カーボン2とを複合化した導電助剤である比較例1では、粒度分布は、粒径8μmのピークと60μmのピークを有している。
【0103】
この
図6乃至
図8の結果が示すように、実施例1乃至4では導電助剤内に凝集体が発生していないことが確認できる。一方、比較例1では粒径が60μm程度の凝集体が発生してしまっていることが確認できる。
【0104】
また、
図9に示すように、導電性カーボン1の一次粒子径が平均44nmである実施例4では、粒度分布は、粒径8μmのピークと15μmのピークを有している。即ち、導電性カーボン1の一次粒子径が平均44nmであると、比較例1と比べると、小さな凝集体の発生に留めることができることが確認できる。換言すれば、導電性カーボン1の一次粒子径が平均34nm以下であると、導電助剤に凝集体が発生しておらず、凝集抑制効果が著しいことが確認された。
【0105】
図10及び11は、実施例1乃至4並びに比較例1の導電助剤の表面を走査型電子顕微鏡を用いて25k倍で撮影したSEM像の写真である。
図10の(a)は実施例1であり、(b)は実施例2であり、(c)は比較例1である。
図11の(a)は実施例3であり、(b)は実施例4であり、(c)は比較例1である。
【0106】
図10及び
図11の(c)の比較例1のSEM像では、ケッチェンブラックの凝集体が多く存在し、ケッチェンブラックの凝集体に繊維状カーボン2の一部が刺さるようにケッチェンブラックの凝集体に接触、又はケッチェンブラックの凝集体に繊維状カーボン2の一部が絡み合うようにケッチェンブラックの凝集体に接触している。そのため、比較例1の繊維状カーボン2の表面にはケッチェンブラックが付着していない部分が存在する。つまり、比較例1のケッチェンブラックと繊維状カーボン2は混合されて接触した状態で存在するだけで、ケッチェンブラックと繊維状カーボン2は複合化せずに独立して存在している。従って、一部の繊維状カーボン2間にはケッチェンブラックが存在せず、一部の繊維状カーボン2の近接し、繊維状カーボン2全体の分散性は悪い。
【0107】
一方、
図10の(a)の実施例1及び(b)の実施例2のSEM像では、導電性カーボン1の凝集が、(c)の比較例1よりも少なくなっており、繊維状カーボン2の表面に導電性カーボン1が付着している。そして、導電性カーボン1と繊維状カーボン2は複合化している。また、
図11の(a)及び(b)の実施例3や実施例4のように、導電性カーボン1の一次粒子径が大きくなった場合でも、
図11の(c)の比較例1と比べて凝集が少なくなっており、導電性カーボン1が繊維状カーボン2の周りに付着し、導電性カーボン1と繊維状カーボンは複合化されている。従って、多くの繊維状カーボン2間に導電性カーボン1がしっかりと入り込み、多くの繊維状カーボン2は離間した状態を保っており、繊維状カーボン2全体の分散性が高くなっている。
【0108】
(電極合剤の観察結果)
次に、実施例1乃至3並びに比較例1の電極合剤の表面を走査型電子顕微鏡を用いて1.50k倍で観察した。
図12は、このSEM観察の結果を示すSEM像の写真であり、(a)は実施例1であり、(b)は実施例2であり、(c)は実施例3であり、(d)は比較例4である。
【0109】
図12に示すように、実施例1乃至3の導電助剤に導電性カーボン1を含めた場合には、電極合剤中にも凝集体が発生していなかった。一方、
図12の(d)が示すように、導電性カーボン1と繊維状カーボン2とを複合化しない場合には、電極合剤中にも凝集体が散見された。
【0110】
(実施例5)
次の製造方法により実施例5の電極合剤を作製した。この製造方法は、実施例1と比べて、固体電解質を2回に分けて電極合剤に含めている点で異なっている。また、実施例5では、電極活物質粒子6と導電助剤と固体電解質がそれぞれ67:3:30の比で添加されている。
【0111】
即ち、実施例1と同じ製法及び条件で導電助剤を作製した後、この導電助剤と固体電解質とを乾式で混合した。固体電解質は75mol%Li2S・25mol%P2S5を用いた。75mol%Li2S・25mol%P2S5は、導電助剤に対して5倍の割合、つまり添加する固体電解質の全量の内、半分量を添加した。乾式混合では、両者を乳鉢に入れて10分~15分程度の間、乳棒で混練した。
【0112】
最初に固体電解質を加えた後、実施例1と同種の電極活物質粒子6を追加し、乳鉢内において10分~15分程度の間、乳棒で乾式で混練した。電極活物質粒子6を追加した後、更に固体電解質を加えた。2回目の固体電解質についても1回目と同じ75mol%Li2S・25mol%P2S5を用いた。2回目の固体電解質は、1回目と等量である導電助剤に対して5倍の割合、つまり添加する固体電解質の全量の内、残りの半分量を添加した。乾式混合では、両者を乳鉢に入れて10分~15分程度の間、乳棒で混練した。
【0113】
(実施例6)
また、次の製造方法により実施例6の電極合剤を作製した。この製造方法は、実施例5と比べて、1度で全部の固体電解質を電極合剤に含めている点で異なっている。即ち、実施例1と同じ製法及び条件で導電助剤を作製した後、この導電助剤と固体電解質とを乾式で混合した。固体電解質は75mol%Li2S・25mol%P2S5を用いた。75mol%Li2S・25mol%P2S5は、導電助剤に対して10倍の割合で添加した。乾式混合では、両者を乳鉢に入れて10分~15分程度の間、乳棒で混練した。固体電解質を加えた後、実施例1と同種及び実施例5と同量の電極活物質粒子6を追加し、乳鉢内において10分~15分程度の間、乳棒で乾式で混練した。
【0114】
(実施例7)
また、次の製造方法により実施例7の電極合剤を作製した。この製造方法は、実施例5及び実施例6と比べて、1度で全部の固体電解質を電極合剤に含めつつ、固体電解質と電極活物質粒子6とを同時に電極合剤に含めている点で異なっている。即ち、実施例1と同じ製法及び条件で導電助剤を作製した後、この導電助剤と固体電解質と実施例1と同種及び実施例5と同量の電極活物質粒子6を乾式で混合した。固体電解質は75mol%Li2S・25mol%P2S5を用いた。75mol%Li2S・25mol%P2S5は、導電助剤に対して10倍の割合で添加した。乾式混合では、両者を乳鉢に入れて10分~15分程度の間、乳棒で混練した。
【0115】
(ペレット密度の計測)
実施例5乃至7の電極合剤をペレット化した。電極合剤を2.0g計り取り、20kNの荷重をかけることで、ペレット化した。そして、ペレットを走査型電子顕微鏡で観察することで、ペレットの体積を計測し、計測結果から密度(g/cc)を計算した。
【0116】
実施例5乃至7のペレットの電極密度を
図13に示す。
図13は、電極合剤の各製造方法における各実施例のペレット密度を示すグラフである。
図13に示すように、固体電解質を2回に分けて含有させる製法である実施例5は、ペレットの密度が最も高くなることが確認された。
【0117】
尚、75mol%Li2S・25mol%P2S5を固体電解質に用いて測定を行う他に、硫酸ナトリウムを用いて測定を行ってもよい。硫酸ナトリウムは電気伝導性を有さないものの、固体電解質として知られている75mol%Li2S・25mol%P2S5に、粒形、粒子の大きさ及び粒子の硬さが類似する。そのため、固体電解質の代わりとして用いることで活物質と導電助剤とバインダとの接触状態を確認することができる。