(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143441
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】積層フィルムの施工方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/12 20060101AFI20241003BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B7/12
B29C65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056124
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】宮田 涼平
(72)【発明者】
【氏名】細川 武喜
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
4F100AB05B
4F100AK01A
4F100AK12B
4F100AK25C
4F100AK25D
4F100AK45D
4F100AK51A
4F100AL09B
4F100AT00C
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100JB16A
4F100JL11
4F100JL13B
4F211AA15
4F211AA21
4F211AA28
4F211AA29
4F211AA31
4F211AA45
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH43
4F211AR07
4F211AR12
4F211AR14
4F211TA03
4F211TC01
(57)【要約】
【課題】積層フィルムの施工作業を簡便にし且つ施工後のフィルム浮きを防ぐことができる積層フィルムの施工方法を提供する。
【解決手段】粘着層は、被着体の表面に配置される施工液を吸収可能であり、被着体に積層フィルムを貼着した場合のAF(0)とAF(24)とは、以下の関係を満たし、78.0≦[{AF(24)-AF(0)}/AF(24)]×100≦98.0、AF(0)は、剥離速度が10[mm/min]の条件での貼着直後の被着体に対する積層フィルムの粘着力を示し、AF(24)は、剥離速度が10[mm/min]の条件で貼着から24時間後の被着体に対する積層フィルムの粘着力を示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に対する積層フィルムの施工方法であって、
前記被着体の表面に施工液を配置する工程、及び、
前記施工液が配置された前記被着体の表面に前記積層フィルムを貼着する工程を有し、
前記積層フィルムは、
樹脂層と、
前記被着体に前記樹脂層を貼着するために前記樹脂層下に配置された粘着層と、
前記樹脂層上に形成された表面保護層と、を有し、
前記粘着層は、前記被着体の表面に配置される前記施工液を吸収可能であり、
前記被着体に前記積層フィルムを貼着した場合のAF(0)とAF(24)とは、以下の関係を満たし、
78.0≦[{AF(24)-AF(0)}/AF(24)]×100≦98.0
AF(0)は、剥離速度が10[mm/min]の条件での貼着直後の前記被着体に対する前記積層フィルムの粘着力を示し、AF(24)は、剥離速度が10[mm/min]の条件で貼着から24時間後の前記被着体に対する前記積層フィルムの粘着力を示す、
ことを特徴とする積層フィルムの施工方法。
【請求項2】
前記被着体の表面に配置される前記施工液の施工液量は、10[ml/m2]~40[ml/m2]の範囲内である、請求項1に記載の積層フィルムの施工方法。
【請求項3】
前記施工液は、プロセスオイル又は界面活性剤水溶液である、請求項1に記載の積層フィルムの施工方法。
【請求項4】
前記被着体は、ポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂から構成される、請求項1~3の何れか一項に記載の積層フィルムの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被着体に対して積層フィルムを貼着する手順が確立されている。例えば、特許文献1には、積層フィルムの施工時、積層フィルムと、被着体の表面との間に界面活性剤水溶液を介在させることで、被着体に対する積層フィルムの位置合わせを可能にする粘着性フィルムの貼着方法が記載されている。
【0003】
特許文献2には、積層フィルムの粘着材層の一面に水溶性フィルムを設け、積層フィルムの施工時、積層フィルムの水溶性フィルム面及び/又は被着体表面に噴霧された施工液を水溶性フィルムが吸収することで、被着体と積層フィルムとの間の滑り性が向上し、被着体に対して積層フィルムを位置合わせしやすくなる粘着性フィルムの被着体への貼着方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59-41376号公報
【特許文献2】特許第7022507号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2のように、施工液を用いて被着体に積層フィルムを貼着する手順では、スキージ等の道具を用いて施工液を取り除く作業が必要になるため、積層フィルムの施工者による作業負担が増加するという問題がある。また、スキージ等の道具を用いて施工液を取り除くため、被着体の表面には、施工液が存在する部分と存在しない部分とが併存する状態となり、被着体に対する積層フィルムの位置合わせのために積層フィルムの貼り合わせを再度行うと、ショックラインやエア溜まりができ、外観不良が生じるという問題がある。
【0006】
また、施工液を用いず被着体に積層フィルムを貼着する手順でも、様々な問題が発生する。例えば、粘着力の高い積層フィルムを用いる場合、積層フィルムの位置合わせや貼り直しが困難になる。また、粘着力の低い積層フィルムを用いる場合、積層フィルムの位置合わせや貼り直しが容易となるが、一定時間経過後に被着体の端部から積層フィルムが剥離し、フィルム浮きが発生する虞がある。
【0007】
本発明は、積層フィルムの施工作業を簡便にし且つ施工後のフィルム浮きを防ぐことができる積層フィルムの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る積層フィルムの施工方法は、被着体に対する積層フィルムの施工方法であって、被着体の表面に施工液を配置する工程、及び、施工液が配置された被着体の表面に積層フィルムを貼着する工程を有し、積層フィルムは、樹脂層と、被着体に樹脂層を貼着するために樹脂層下に配置された粘着層と、樹脂層上に形成された表面保護層と、を有し、粘着層は、被着体の表面に配置される施工液を吸収可能であり、被着体に積層フィルムを貼着した場合のAF(0)とAF(24)とは、以下の関係を満たし、78.0≦[{AF(24)-AF(0)}/AF(24)]×100≦98.0、AF(0)は、剥離速度が10[mm/min]の条件での貼着直後の被着体に対する積層フィルムの粘着力を示し、AF(24)は、剥離速度が10[mm/min]の条件で貼着から24時間後の被着体に対する前記積層フィルムの粘着力を示す、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一側面に係る積層フィルムの施工方法において、被着体の表面に配置される施工液の施工液量は、10[ml/m2]~40[ml/m2]の範囲内であることが好ましい。
【0010】
本発明の一側面に係る積層フィルムの施工方法において、施工液は、プロセスオイル又は界面活性剤水溶液であることが好ましい。
【0011】
本発明の一側面に係る積層フィルムの施工方法において、被着体は、ポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂から構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る積層フィルムの施工方法は、積層フィルムの施工作業を簡便にし且つ施工後のフィルム浮きを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】被着体に積層フィルムが施工された状態を示す図である。
【
図2】被着体に積層フィルムを施工する一連の施工工程の流れを示すフローチャートである。
【
図3】各実施例及び比較例における被着体及び積層フィルムのそれぞれの組成、並びに、積層フィルムに関する検証試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0015】
図1は、被着体10に積層フィルム20が施工された状態を示す図である。
【0016】
被着体10は、道路、線路又は空港施設等に設置され、道路や線路等の通路に設けられる遮音壁の一部として設けられる透光板に用いられる。被着体10は、ポリカーボネート(PC:Polycarbonate)樹脂又はアクリル(PMMA:Poly Methyl Methacrylate)樹脂から構成され、被着体10の厚さは、遮音壁としての遮音性能を満足するために、少なくとも5[mm]である。
【0017】
積層フィルム20は、被着体10の保護並びに被着体10の飛散及び落下等を目的として、被着体10の表面に貼着される粘着フィルムである。積層フィルム20は、可撓性を有しているため、外力によりしなやかにたわむ。このため、積層フィルム20は、被着体10の表面が複雑な形状を有していても、被着体10の表面に貼着しやすい。積層フィルム20は、樹脂層21、粘着層22及び表面保護層23等により構成される。樹脂層21、粘着層22及び表面保護層23は、いずれも透光性を有している。
【0018】
樹脂層21は、過度の濁り、沈殿物及び著しいブツが含まれないことが好ましい。ブツとは、ほこり、繊維くず及び虫等の微小物のことである。例えば、樹脂層21は、熱可塑性エラストマー(TPE:Thermoplastic Elastomer)、ポリカーボネート(PC:Polycarbonate)、ポリエチレンテレフタラート(PET:Polyethylene Terephthalate)又はアクリル(PMMA:Poly Methyl Methacrylate)等の樹脂により構成される。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタン(TPU:Thermoplastic Polyurethane)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO:Thermoplastic Olefin)、熱可塑性ポリエステル(TPE:Thermoplastic Polyester)、熱可塑性ポリアミド(TPA:Thermoplastic Polyamide)及びポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)を含む。樹脂層21の厚さは、38[μm]~1000[μm]の範囲内であることが好ましい。
【0019】
粘着層22は、樹脂層21下に配置される。粘着層22は、被着体10に樹脂層21を貼着するための接着剤として機能し、被着体10と樹脂層21とを強固に接着可能である。粘着層22は、熱可塑性エラストマー(TPE:Thermoplastic Elastomer)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はエポキシ樹脂、並びに、粘着付与剤(タッキファイヤ)及び軟化剤等により構成される。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリスチレン(スチレン系エラストマー)(TPS:Thermoplastic Polystyrene)、熱可塑性ポリウレタン(TPU:Thermoplastic Polyurethane)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO:Thermoplastic Olefin)、熱可塑性ポリエステル(TPE:Thermoplastic Polyester)、熱可塑性ポリアミド(TPA:Thermoplastic Polyamide)、ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)及びポリビニルブチラール(PVB:Polyvinyl Butyral)等を含む。中でも、熱可塑性ポリスチレンは、耐熱性・耐候性・耐薬品性の観点から好ましい。粘着付与剤は、テルペン樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、石炭樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等から選ばれる1種以上の樹脂を含む。テルペン樹脂としては、例えばα-ピネン系テルペン樹脂、β-ピネン系テルペン樹脂、ジペンテン系テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、及び水素添加テルペン樹脂等を用いることができる。ロジン樹脂としては、例えばガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、及び変性ロジン等がある。石油樹脂としては、例えば脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、共重合系(C5/C9系)石油樹脂、脂環族系(水素添加系、ジシクロペンタジエン(DCPD)系)石油樹脂、及びスチレン系(スチレン系、置換スチレン系)石油樹脂等を用いることができる。石炭樹脂としては、例えばクマロン・インデン樹脂等を用いることができる。軟化剤は、粘着層22の可塑性を高めて施工者による積層フィルム20の施工作業の効率を向上させつつ、樹脂層21の硬度を下げるために用いられ、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、液状ポリブテン又は液状ポリイソブチレン等から選ばれる1種以上のプロセスオイルを含む。また、粘着層22の厚さは、25[μm]~3000[μm]の範囲内であることが好ましい。
【0020】
表面保護層23は、樹脂層21を保護するために、樹脂層21上に形成される。表面保護層23は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン系樹脂又はフッ素系樹脂等により構成される。さらに、表面保護層23は、表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。表面保護層23の厚さは、1[μm]~100[μm]の範囲内であることが好ましい。
【0021】
図2は、被着体10に積層フィルム積層フィルム20を施工する一連の施工工程の流れを示すフローチャートである。
【0022】
まず、被着体10の表面に積層フィルム20を貼着する前に、被着体10の表面に施工液を配置する工程が実施される(ステップS101)。被着体10の表面には、塗布又は噴霧によって施工液が配置される。施工液は、プロセスオイル又は界面活性剤水溶液である。界面活性剤の種類としては、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤が好ましい。例えば、アニオン界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型、多価アルコール型等が挙げられる。界面活性剤水溶液の濃度は、5%以下が好ましい。プロセスオイルは、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、冷凍機油、ギア油及びエンジンオイル等を含む。被着体10に対する積層フィルム20の施工時、積層フィルム20と、被着体10の表面との間に施工液を配置させることで、被着体10に対する積層フィルム20の貼り直し及び位置合わせを可能にする。
【0023】
最後に、施工液が配置された被着体10の表面に積層フィルム20を貼着する工程が実施され、一連の施工工程が終了される(ステップS102)。これにより、積層フィルム20を施工した積層体1が完成する。この被着体10の表面に積層フィルム20を貼着する工程において、被着体10の表面に配置された施工液は、粘着層22によって吸収される。通常、スキージ等の道具を用いて施工液を取り除くため、被着体の表面には施工液が存在する部分と存在しない部分とが併存する状態となる。一方、被着体10の表面に配置された施工液は粘着層22によって吸収されるため、被着体10の表面に存在する施工液のムラを無くすことができる。これにより、被着体10に対する積層フィルム20の貼り直し及び位置合わせに起因するショックラインやエア溜まりの発生を抑制することができる。また、被着体10に対する積層フィルム20の位置合わせのために被着体10上で積層フィルム20をスライドさせること等で気泡を除去できるため、エア抜け性を向上させることができる。
【0024】
積層フィルム20は、施工時、容易に貼り直し、位置合わせ及び気泡除去が可能であり且つショックラインが全く発生せず、施工後、フィルム浮きが発生しにくくするために、以下の条件を満足することが好ましい。
78.0≦指標値I≦98.0
ここで、I=[{AF(24)-AF(0)}/AF(24)]×100であり、AF(0)は積層フィルム20を被着体10に貼着した直後の積層フィルム20の粘着力であり、AF(24)は積層フィルム20を被着体10に貼着してから24時間経過した後の積層フィルム20の粘着力である。
【0025】
また、経験上、被着体10の表面に配置される施工液の施工液量は、10[ml/m2]~40[ml/m2]の範囲内とすることが好ましい。これにより、積層フィルム20の張り直し、位置合わせ、エア抜け性、ショックライン、フィルム浮きをより好ましい状態にすることが可能となる。
【0026】
特に、被着体10の表面に積層フィルム20を貼着する工程において、施工液として水ではなくプロセスオイル又は界面活性剤水溶液を用いることで、積層フィルム20の施工後の粘着力が高く維持され、積層フィルム20の施工後のフィルム浮きを防止できる。
【実施例0027】
図3は、各実施例及び比較例における被着体10及び積層フィルム20のそれぞれの組成、並びに、積層フィルム20に関する検証試験の結果を示す図である。
【0028】
各実施例及び比較例において、
図2に示す施工工程によって、
図3に示す組成の積層フィルム20を上記被着体10に貼着した。被着体組成の「PC」はポリカーボネート樹脂を指し、「PMMA」はアクリル樹脂を指す。樹脂層組成の「TPU」は、熱可塑性ポリウレタンを指す。粘着層組成の「TPS」は、スチレン系エラストマー(熱可塑性ポリスチレン)を指す。表面保護層組成の「PMMA」は、アクリル樹脂を指す。
【0029】
実施例1~4、6及び比較例2では、積層フィルム20を被着体10に貼着する工程において、施工液として、パラフィン系プロセスオイルを用いた。実施例5では、積層フィルム20を被着体10に貼着する工程において、施工液として、界面活性剤水溶液を用いた。例えば、ノニオン界面活性剤(花王製エマルゲンPP-290)の1%水溶液等を用いた。
【0030】
比較例1では、積層フィルム20を被着体10に貼着する工程において、施工液を用いない。すなわち、積層フィルム20は、被着体10に対して直貼りされる。
【0031】
比較例3では、積層フィルム20を被着体10に貼着する工程において、施工液として、水を用いた。すなわち、積層フィルム20は、被着体10に対して水貼りされる。
【0032】
ここで、上記実施例及び比較例での施工例において、被着体10から積層フィルム20を引き剥がす剥離試験を行った。剥離試験では、島津製作所製の精密万能試験機を用いて、剥離速度が10[mm/min]の条件で180度剥離した際の粘着力を測定した。剥離試験では、被着体10に貼着した直後の積層フィルム20を被着体10から引き剥がす第1剥離試験と、被着体10に貼着してから24時間経過した後の積層フィルム20を被着体10から引き剥がす第2剥離試験とを行った。第1剥離試験によって、積層フィルム20を被着体10に貼着した直後の積層フィルム20の粘着力AF(0)が得られた。また、第2剥離試験によって積層フィルム20を被着体10に貼着してから24時間経過した後の積層フィルム20の粘着力AF(24)が得られた。
【0033】
また、上記実施例及び比較例ごとに以下の評価を行った。
【0034】
被着体10に対する積層フィルム20の施工時における貼り直しの容易性を評価した。評価基準は、以下の通りである。
〇:容易に貼り直し可能
△:貼り直し可能であるが容易でない(一部力をかける必要がある)
×:貼り直し不可又は貼り直しによってショックラインやエア溜まりが生じる
【0035】
被着体10に対する積層フィルム20の施工時における位置合わせの容易性を評価した。評価基準は、以下の通りである。
〇:容易に位置合わせ可能
△:位置合わせ可能であるが容易でない(一部浮かせないと位置合わせができない)
×:位置合わせ不可
【0036】
被着体10に対する積層フィルム20の施工時における気泡除去の容易性(エア抜け性)を評価した。評価基準は、以下の通りである。
〇:容易に気泡除去可能
△:気泡除去可能であるが容易でない(スキージ等の治具を必要とする)
×:気泡除去不可
【0037】
被着体10に対する積層フィルム20の施工時におけるショックラインやエア溜まりの発生の程度を評価した。評価基準は、以下の通りである。
〇:ショックラインが全く発生しない
△:ショックラインが発生しにくい(本数:1本以下)
×:ショックラインが発生する
【0038】
被着体10に対する積層フィルム20の施工後におけるフィルム浮きの発生の程度を評価した。評価基準は、以下の通りである。
〇:フィルム浮きが発生しにくい
△:フィルム浮きが一部発生する
×:フィルム浮きが全面に発生する
【0039】
上記積層フィルム20の各評価に基づいて、積層フィルム20の施工容易性及び施工後の接着性を総合的に評価した。評価基準は、以下の通りである。
OK:全ての評価が「〇」、施工が容易且つ施工後の接着良好
NG:評価のうち少なくとも一つが「△」又は「×」、施工が困難及び/又は施工後の接着不良が発生
【0040】
図3の実施例1~6及び比較例1~4からわかるように、指標値Iが「78.0≦指標値I≦98.0」の範囲内にある場合、積層フィルム20は、施工時、容易に貼り直し、位置合わせ及び気泡除去が可能であり且つショックラインが全く発生せず、施工後、フィルム浮きが発生しにくいことがわかった。さらに、施工後の被着体10の表面に施工液が残らないこともわかった。
【0041】
また、被着体10の表面に配置される施工液の施工液量が10[ml/m2]~40[ml/m2]の範囲内にある場合、積層フィルム20は、施工時、容易に貼り直し、位置合わせ及び気泡除去が可能であることがわかった。さらに、施工後の被着体10の表面に施工液が残らないこともわかった。なお、施工液の施工液量が10[ml/m2]よりも少ない場合、施工液が少ないため、積層フィルム20は、貼り直し、位置合わせ及び気泡除去が困難となる。また、施工液の施工液量が40[ml/m2]よりも多い場合、積層フィルム20は、粘着層22により施工液を吸収しきれず、粘着層22と被着体10との界面に施工液が存在するため、経時でのフィルム浮きが発生する。
【0042】
また、施工液としてプロセスオイル又は界面活性剤水溶液を用いることで、積層フィルム20は、施工後の粘着力を高く維持でき、積層フィルム20の施工後のフィルム浮きを防止できることがわかった。
【0043】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した各部の処理は、本発明の範囲において、適宜に異なる順序で実行されてもよい。また、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。